IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロケート・セラピューティクス・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-足場材料、方法および使用 図1
  • 特許-足場材料、方法および使用 図2
  • 特許-足場材料、方法および使用 図3
  • 特許-足場材料、方法および使用 図4
  • 特許-足場材料、方法および使用 図5
  • 特許-足場材料、方法および使用 図6
  • 特許-足場材料、方法および使用 図7
  • 特許-足場材料、方法および使用 図8
  • 特許-足場材料、方法および使用 図9
  • 特許-足場材料、方法および使用 図10
  • 特許-足場材料、方法および使用 図11
  • 特許-足場材料、方法および使用 図12
  • 特許-足場材料、方法および使用 図13
  • 特許-足場材料、方法および使用 図14
  • 特許-足場材料、方法および使用 図15
  • 特許-足場材料、方法および使用 図16
  • 特許-足場材料、方法および使用 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】足場材料、方法および使用
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/14 20060101AFI20220208BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 27/10 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220208BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220208BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20220208BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20220208BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20220208BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20220208BHJP
   C08J 3/03 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A61L27/14
A61K9/10
A61K47/14
A61K47/10
A61L27/10
A61L27/44
A61L27/54
A61L27/50 100
A61L27/56
A61L27/38 111
A61P43/00 105
A61P19/08
C08K5/10
C08K5/05
C08K3/30
C08K3/32
C08J3/03 CFD
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019501766
(86)(22)【出願日】2017-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 GB2017050815
(87)【国際公開番号】W WO2017163072
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】1605122.9
(32)【優先日】2016-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1606395.0
(32)【優先日】2016-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516041988
【氏名又は名称】ロケート・バイオ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Locate Bio Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】レオナルディ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】コックス,ヘレン シー.
(72)【発明者】
【氏名】キャリー,シオバン
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ロマス,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】シェイクシェフ,ケビン エム
(72)【発明者】
【氏名】カーク,ロビン エー
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/100506(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2125048(EP,A1)
【文献】国際公開第2015/019109(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L、A61K、A61P、C08K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場材料を形成する方法であって、前記方法は:
ポリマー微粒子を提供することと;
薬剤を提供することと;
前記ポリマー微粒子を液体担体中に懸濁させポリマー微粒子懸濁液である足場材料を形成することであって、前記足場材料が前記液体担体中に可塑剤を含むことと、を含み
前記液体担体中の記可塑剤は:
アルコール、またはポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのコポリマーと;
TEC(クエン酸トリエチル)またはトリアセチン(TA)と、を含む、方法。
【請求項2】
硬化してポリマー微粒子の固体足場となるように前記ポリマー微粒子懸濁液を硬化する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
足場を形成するための足場材料であって、前記足場材料は:
ポリマー微粒子と;
薬剤と;
前記ポリマー微粒子を懸濁した液体担体であって、前記足場材料が前記液体担体中に可剤を含むことと、を含み
記液体担体中の記可塑剤は:
アルコール、またはポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのコポリマーと;
TEC(クエン酸トリエチル)またはトリアセチン(TA)と、を含む、足場材料。
【請求項4】
対象に薬剤の送達を必要とする治療方法で使用するための、請求項3に記載の足場材料であって、前記薬剤が前記足場材料内のポリマー微粒子内に配置される、足場材料を提供することと;治療の方法が、前記足場材料を対象に投与することと;前記足場材料を前記対象中で固化/自己組織化させ足場を形成することと;前記足場材料内に含まれる前記薬剤を前記対象内の投与部位に放出させることとを含む、足場材料。
【請求項5】
前記ポリマー微粒子の足場が多孔性であり、任意で前記足場が少なくとも約50%の細孔容積を有する、請求項3または4に記載の足場材料。
【請求項6】
前記足場材料が硬化前に注射可能である、請求項3~5のいずれか1項に記載の足場材料。
【請求項7】
前記ポリマー微粒子が一体になり、架橋/相互連結すると、隣接するポリマー微粒子間に必然的に存在する空間の結果として、得られた足場に細孔が形成される、請求項3~6のいずれか1項に記載の足場材料。
【請求項8】
前記足場がex situで形成され;
または前記足場を形成する前記足場材料の硬化がin situである、請求項4~7のいずれか1項に記載の足場材料。
【請求項9】
前記足場材料が硬化前にフィルム状に展延されたものである、請求項4~8のいずれか1項に記載の足場材料。
【請求項10】
前記足場材料が天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子を含み、前記天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子が、前記ポリマー微粒子内に封入され、任意で前記非ポリマー粒子がセラミックを含むか、またはセラミックからなる、請求項3~9のいずれか1項に記載の足場材料。
【請求項11】
記ポリマー微粒子が、300~500μm;または20μm~100μmのそれらの最長寸法のサイズを有する、請求項3~10のいずれか1項に記載の足場材料。
【請求項12】
前記足場材料中の担体対ポリマー微粒子の重量比が少なくとも1.5:1である、請求項3~11のいずれか1項に記載の足場材料。
【請求項13】
生存細胞が前記足場材料中に提供される、請求項3~12のいずれか1項に記載の足場材料。
【請求項14】
請求項3~13に記載の足場材料から足場を形成するために使用するキットであって:
ポリマー微粒子と;
薬剤と;
可塑剤を含む担体溶液と、を含み、
前記担体溶液中の前記可塑剤は:
アルコール、またはポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのコポリマーと;
TEC(クエン酸トリエチル)またはトリアセチン(TA)と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場、ならびに組織および骨修復におけるこのような足場の使用、ならびに対象の標的部位に薬剤を送達するための送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療の分野では、組織修復を刺激および支持する新たな臨床手技のための多くの機会がある。臨床機会の例は、梗塞後の心筋の再生、脊椎固定術における骨成長の誘導、糖尿病性足部潰瘍の治癒および脳卒中による損傷の限定または、もしかすると、回復を含む。処置が治癒を促進することができる組織の例は、とりわけ、脳組織、肝臓組織および膵臓組織である。
【0003】
組織治癒が重要な領域の1つとしては、例えば骨障害を有する人々のための骨治癒である。骨治癒は、外傷、感染、外科的介入または疾患の後で、身体が骨の修復を促進する生理学的プロセスである。生理学的治癒プロセスは非常に長い期間を必要とすることがあり、多くの場合、元の骨特性を再確立することはできない。このため、骨治癒を促進し、改善する治療法は、骨障害を有する人々にとって極めて重要である。通常、これらの治療は、骨伝導性、骨誘導性および骨形成性のアプローチを提示する。
【0004】
多くの骨伝導アプローチでは、金、ステンレス鋼、チタン、天然/合成ポリマー、およびセラミックのような様々な代替物が試されてきた。骨再生のためのこれらの材料の使用に関する主な懸念は、血管新生、統合、およびリモデリングを受ける能力が低いことであった。これは、応力遮蔽にて明らかなように、負荷を受けたインプラントの構造的故障、または周囲の骨の病理学的変化をもたらす可能性がある。他の問題は、炎症性瘢痕、隣接組織における新生物増殖性反応および感染である。生体活性代替物が、それらの高い骨誘導能およびリモデリング特性のために、有望な結果を伴って使用されている。これは、骨障害を治療するための組織工学技術(生物学的に増強された同種異系移植、細胞ベースの治療、および遺伝子ベースの治療)の進化をもたらした。組織工学は、生体材料、細胞、および因子を単独でおよび組み合わせて使用して、生体組織の設計、構築、改質、および成長に科学的原理を適用することとして定義されている。これには骨形成細胞集団および骨誘導性生体活性因子を有する骨伝導性生体材料骨格の使用が含まれる。これらのアプローチはすべて、効果的な治療法が現在存在しない疾患の処置能力を著しく増加させる可能性を秘めている。
【0005】
足場は、血管新生および組織形成に適切な機械的環境、構造および界面化学をもたらし得る。再生剤(たとえば成長因子)の局在化はまた、足場を用いて達成することができる。薬物または細胞の送達システムとしての足場の使用は大きな可能性を有するが、薬剤(たとえば成長因子として作用するタンパク質)または細胞の適切な放出速度を達成しつつ、組織の種類に対して足場の多孔度、強度および分解速度を調整する必要性のために、非常に難解でもある。in vivoでの修復および/または再生のための送達システムとしての足場の使用におけるさらなる複雑化要因は、投与経路の問題である。多くの臨床例において、修復を必要とする組織の部位は、アクセス困難(たとえば脳卒中治療における脳内または梗塞後処置における心筋)であるか、またはサイズおよび形状が未知のものである。したがって、低侵襲手技により投与することができる改善された注射可能足場の必要性がある。
【0006】
広い意味で、足場は典型的には、広く相互接続された細孔を有する予め形成された水不溶性のマトリックスまたはハイドロゲルである。このような足場は、強化したin vivoでの組織修復および/または再生のために患者に埋め込まれる。
【0007】
埋め込みに関しては、予め形成された水不溶性のマトリックスを体内の腔を充填するように形づくられなければならず、腔寸法の知識を必要とし、充填することができる腔の形状を限定する。加えて、足場の送達には観血法が必要である。
【0008】
対照的に、シリンジを介して体内に直接に送達することができる、いくつかのハイドロゲル材料が設計されてきた。誘発シグナル、たとえば、温度変化またはUV露光後に、体内においてゲルが形成される。このようなシステムは、腔寸法の予備知識がなくても、いかなる形状の腔も充填することができるという利点を有する。しかし、このようなハイドロゲルは、広く相互接続された多孔質ネットワークを欠き、したがって、ゲルからの薬剤の放出は低い拡散特性によって限定的である。さらに、ハイドロゲルの機械的強度が低いことは、使用中に加えられる圧縮力にしばしば耐えられないことを意味し、さらに、ゲル中の薬剤は実際にはハイドロゲルから押し出されることがあるため、これは望ましくない送達特性をもたらすことがある。
【0009】
身体適用後に固化する吸収性パテまたは吸収性ペーストは有望なアプローチである。この分野は、学術的にも工業的にも広く研究されており、C-Graft Putty(商標)、Grafton(登録商標)などのいくつかの製品が既に商品化されている。このようなアプローチの成功における主な障害は、望まれる作用部位への材料の送達および保持、ならびに外科手術前のこれらの展性である。
【0010】
国際公開第2008093094号および国際公開第2004084968号(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)は、PLGAおよびPLGA/PEGポリマーブレンドなどのポリマーペレットから組織足場を形成するための組成物および方法を記載する。そのような足場は、組織修復の部位にin situで硬化する前に、形成または注射することができるように開発されている。in situでの硬化は、例えば、体温でのペレットの相互連結/架橋のためにペレットのガラス転移温度を利用し調整することによって、達成することができる。相互連結事象は、溶媒による可塑化などの非温度関連方法によってもまた促進することができる。多孔質構造は、ペレット間に隙間を残し、必要に応じて多孔質ポリマーペレットをさらに提供することによって達成される。得られた足場は、特に骨などの結合組織の組織修復に有用な高い圧縮強度を維持しながらも、細胞増殖および薬剤送達に有用な多孔度をも維持する。しかしながら、本発明の目的は、組織修復に使用する足場材料を形成するための改善された組成物、方法およびプロセスを提供することである。
【0011】
本発明の目的は、組織修復に使用する足場材料を形成するための改善された方法および処理を提供することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、in situで薬剤を制御放出するための足場材料を形成する方法が提供され、方法は:
ポリマー微粒子を提供することと;
粉末形態である薬剤を提供することと;
ポリマー微粒子を粉末剤と混合することと;
混合物を液体担体中に懸濁させポリマー微粒子懸濁液である足場材料を形成することと;任意に
足場材料が硬化してポリマー微粒子の固体足場になるように足場材料を硬化することと、を含み、粉末剤はポリマー微粒子の足場中に封入される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、in situで薬剤を制御放出するための足場を形成する方法が提供され、方法は:
ポリマー微粒子を提供することと;
粉末形態である薬剤を提供することと;
ポリマー微粒子を薬剤と混合することと;
混合物を液体担体中に懸濁させポリマー微粒子懸濁液である足場材料を形成することと;
足場材料がポリマー微粒子の固体足場になるように足場材料を硬化することと、を含み、粉末剤はポリマー微粒子の足場の中に封入される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、足場材料を形成する方法が提供され、方法は:
ポリマー微粒子を提供することと;
ポリマー微粒子を液体担体中に懸濁させポリマー微粒子懸濁液である足場材料を形成することであって、液体担体は可塑剤を含むことと;
任意にポリマー微粒子懸濁液がポリマー微粒子の固体足場になるように、ポリマー微粒子懸濁液を硬化することと、を含む。
【0015】
本発明の別の態様によれば、足場材料を形成する方法が提供され、方法は:
ポリマー微粒子を提供することと;
ポリマー微粒子を液体担体中に懸濁させポリマー微粒子懸濁液である足場材料を形成することであって、足場材料はポリマー微粒子および/または液体担体中に第1の可塑剤を含み、第2の可塑剤を液体担体中に含むことであり、
第1の可塑剤は、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸、トリアセチン、NMP、DMSO、およびPEGのうちのいずれか1つから選択され;第2の可塑剤は、PEG、DMSO、NMP、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸、およびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択され、第1および第2の可塑剤は異なることと;
任意にポリマー微粒子懸濁液がポリマー微粒子の固体足場になるように、ポリマー微粒子懸濁液を硬化することと、を含む。
【0016】
本発明の別の態様によれば、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子成分を含む足場材料を形成する方法が提供され、方法は:
ポリマーと天然ポリマーまたは非ポリマー粒子とをブレンドすることと;
ブレンドから天然ポリマーまたは非ポリマー粒子がその中に封入されたポリマー微粒子を形成することと;
任意にポリマー微粒子を液体担体中に懸濁させポリマー微粒子懸濁液を形成することと;
任意にさらに、ポリマー微粒子懸濁液がポリマー微粒子の固体足場になるように、ポリマー微粒子懸濁液を硬化することと、を含む。
【0017】
本発明の別の態様によれば、5分未満で硬化することができる足場材料を形成する方法が提供され、足場材料は本明細書の発明の方法のいずれかによって提供され、可塑剤は担体中に約4%~約6%(w/v)の範囲で提供される可塑剤である。
【0018】
本発明の別の態様によれば、約5~約15分の足場硬化時間を有する足場材料を形成する方法が提供され、足場材料は本明細書の発明の方法のいずれかによって提供され、可塑剤は担体中に約2.5%~約3.5%(w/v)の範囲で提供される可塑剤である。
【0019】
本発明の別の態様によれば、60分超の足場硬化時間を有する足場材料を形成する方法が提供され、足場材料は本明細書の発明の方法のいずれかによって提供され、可塑剤はTAまたはTECであり、担体中に約0.5%~約1%(w/v)の範囲で提供される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、35℃未満の足場硬化温度を有する足場材料を形成する方法が提供され、足場材料は本明細書の発明の方法のいずれかによって提供され、可塑剤はTAまたはTECであり、担体中に約3%~約5%(w/v)の範囲で提供され;
あるいは2つの可塑剤が提供され、担体中に少なくとも1つの可塑剤を有し、可塑剤の総含有量が4%または5%(w/v)を超えなくてもよく、1つの可塑剤はTAまたはTECであり、任意にTAまたはTECは担体の最大2%(w/v)で提供される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、35℃超、たとえば約37℃の足場硬化温度を有する足場材料を形成する方法が提供され、足場材料は本明細書の発明の方法のいずれかによって提供され、可塑剤はTAまたはTECであり、約0.5%~約1%(w/v)の範囲で提供される。
【0022】
本発明の別の態様によれば、ポリマー微粒子足場形成特性を選択するためのシステムであって:
(a)所望の足場硬化温度を選択し、適切な足場硬化温度を提供するように構成された、本明細書の発明による足場材料を形成する方法を実施すること;または
(b)所望の足場硬化時間を選択し、適切な足場硬化時間を提供するように構成された、本明細書の発明による足場材料を形成する方法を実施すること;または
(c)足場を硬化する前に足場材料の所望のヤング弾性率を選択し、足場材料の適切なヤング弾性率を提供するように構成された、本明細書の発明による足場材料を形成する方法を実施することを含むシステムが提供される。
【0023】
本発明の別の態様によれば、1次薬剤放出動態を有する足場を形成するのに適した足場材料を形成する方法が提供され、足場材料は、本明細書の発明の方法によって提供され、薬剤は、ポリマーとブレンドして足場材料のポリマー微粒子を形成する前に粉末として提供される。
【0024】
本発明の別の態様によれば、薬剤の制御放出のための足場を形成するための足場材料が提供され、足場材料は:
ポリマー微粒子と;
薬剤が粉末形態であり、ポリマー微粒子中および間に封入された薬剤と;
ポリマー微粒子を懸濁させる液体担体と、を含む。
本発明の別の態様によれば、足場を形成するための足場材料が提供され、足場材料は:
ポリマー微粒子と;
天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子(例えばセラミック)であって、ポリマー微粒子内に封入された天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子と;任意に
ポリマー微粒子を懸濁する液体担体と、を含む。
【0025】
本発明の別の態様によれば、足場を形成するための足場材料が提供され、足場材料は:
ポリマー微粒子と;
ポリマー微粒子を懸濁させる液体担体であって、可塑剤を含む液体担体と;を含み、任意に第2の可塑剤は、担体および/またはポリマー微粒子中に提供される。
【0026】
さらに別の態様によれば、本発明は、本発明のいずれかの方法によって製造された足場材料を提供する。
【0027】
さらに別の態様によれば、本発明は、本発明のいずれかの方法によって製造された足場を提供する。
【0028】
本発明の別の態様によれば、薬剤の制御放出のための足場が提供され、足場は:
架橋/相互連結されたポリマー微粒子と;
薬剤と、を含み、薬剤は粉末形態であり、ポリマー微粒子の中および間に封入される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、骨修復のための足場が提供され、足場は:
架橋/相互連結されたポリマー微粒子と;
天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子(例えばセラミック)を含み、天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子はポリマー微粒子内に封入される。
【0030】
さらなる態様では、本発明は、薬剤が足場材料内のポリマー微粒子内に配置される足場材料を提供することと;足場材料を対象に投与することと;足場材料を対象中で固化/自己組織化させ足場を形成することと;足場材料内に含まれる薬剤を対象内の投与部位に放出させることとを含む、対象に薬剤を送達する方法が提供される。
【0031】
本発明の別の態様によれば、本発明による足場または足場材料の投与を含む処置方法が提供される。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、標的への薬剤の送達に使用するためのキットであって:
ポリマー微粒子と;
粉末化剤と;
担体溶液と;任意に
ポリマー微粒子、粉末化剤、および担体を混合するための説明書を含むキットを提供する。
【0033】
別の態様によれば、本発明は、足場を形成するのに使用するためのキットであって:
ポリマー微粒子と;
天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子と;
担体溶液と;任意に
ポリマー微粒子、天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子、および担体を混合するための説明書を含むキットを提供する。
【0034】
別の態様によれば、本発明は、足場を形成するために使用するキットであって:
ポリマー微粒子と;
可塑剤を含む担体溶液と;任意に第2の可塑剤を含むポリマー微粒子および/または担体;任意にさらにポリマー微粒子、粉末化剤、および担体を混合するための説明書を含むキットを提供する。
【0035】
本発明は、異なる時間および異なる温度で硬化することができる再吸収性の足場材料を記載する。そのようなペーストは、単独で使用する場合は組織形成のための足場支持体を提供し、または細胞、脱細胞マトリックス(DCM)および成長因子などの薬物または生体活性代替物と共に使用する場合は骨誘導性および骨形成効果を提供し得る。異なる温度下でのペースト硬化の制御は、注射可能なペーストに有用であり得る。例えば、硬化が体温(37℃)で行われる場合、前記ペーストは、室温での注射前に急いで取り扱わなくてよい。異なる時間下でのペースト硬化の制御は、パテを作るのに有用であり得る。実際、数分後に硬化するペーストは、必要に応じて、異なる形状にして投与することが可能なパテを形成することができる。本明細書の発明はさらに、粒子サイズ、薬剤充填方法、ポリマーの種類、可塑剤の種類および濃度ならびにブレンド組成物の製剤変数を変えることによって薬物放出を制御する能力を提供する。
【0036】
本発明は、単なる例として、以下の添付図面により例示される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】凝集試験の実験条件:浸漬したアルミニウム箔およびペーストを有する篩メッシュ/トレイを示す図である。
図2】室温または37℃で15分間焼結した後のPLGA50:50(50-100μmMPs)の質量損失を示す図である。
図3】室温または37℃で15分間焼結した後の75.6%w/wPLGA50:50、5.2%w/wPEG400、20%w/wSIM(300-400μm HMEペレット)の質量損失を示す図である。
図4】室温または37℃で15分間焼結した後の46.5%w/wPLGA95:5、3.25%w/wPEG400、50%w/wCS(300-400μm HMEペレット)の質量損失を示す図である。
図5】室温または37℃で15分間焼結した後の46.5%w/wPLGA95:5、3.25%w/wPEG400、50%w/wβ-TCP(300-400μm HMEペレット)の質量損失を示す図である。
図6】異なる時点で焼結した後の75.6%w/wPLGA50:50、5.2%w/wPEG400、20%w/wSIM(300-400μm HMEペレット)の質量損失を示す図である。
図7】6×12mmの足場を示す図である。
図8】32℃または37℃の両方で15分および2時間焼結した後の6×12の円筒状PLGA50:50(50-200μm)足場の機械的特性(N=3±1SD)を示す図である。
図9】湿式(PBSに浸漬)またはダンプ(加湿袋に密封)のいずれかで37℃で24時間焼結後の、3%TECで焼結したPLGA50:50(50-200μm)の足場の機械的特性(N=3±1SD)を示す図である。
図10】37℃で時間経過させたPLGA/CS(50-200μm)足場のダンプ焼結条件(37℃、≧90%湿度)および湿式条件(37℃リン酸緩衝食塩水、PBSに完全に浸漬)の24時間値のヤング弾性率を示す図である。
図11】粘度測定のための実験的セットアップの概略図を示す図である。
図12】異なる担体:ポリマー比および様々な濃度のTECまたは10%エタノールを使用した、室温で45°で60秒間のパテの流動距離を示す図である。
図13】50%CaSO4を含むペーストおよびブランクPLGAペースト材料のt=0分での、45°で60秒間のペーストの流動距離を示す図である。
図14】室温または37℃で15分間焼結した後の74.8%w/wPLGA50:50、5.2%w/wPEG400、20%w/wSIM(300-400μm HMEペレット)の質量損失を示す図である。
図15】室温または37℃で15分間焼結した後の46.75%w/wPLGA95:5、3.25%w/wPEG400、50%w/wCS(300-400μm HMEペレット)の質量損失を示す図である。
図16】室温または37℃で15分間焼結した後の46.75%w/wPLGA95:5、3.25%w/wPEG400、50%w/wβ-TCP(300-400μm HMEペレット)の質量損失を示す図である。
図17】異なる時点で焼結した後の74.8%w/wPLGA50:50、5.2%w/wPEG400、20%w/wSIM(300-400μm HMEペレット)の質量損失を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
定義
「足場材料」という用語は、足場、すなわちプレ足場材料を形成することができる組成物を指すことを意図している。例えば、足場材料は、足場に硬化することができる組成物を含んでよい。足場材料自体は、本明細書の方法にしたがって足場材料が足場を形成するまで足場の構造を有していても、有していなくてもよい。「足場を形成することができる組成物」への言及は、さらなる介入/処理工程または構成要素なしに足場を形成する能力を含み得る。代替実施形態では、「足場を形成することができる組成物」への言及は、本明細書の本発明によるさらなる介入/処理工程に続いて、および/または本明細書の本発明による成分の添加に続いて足場を形成する能力を含み得る。
【0039】
「足場」(用語「マトリックス」と置き換え可能)という用語は、例えば細胞を支持するのに適し得る、三次元構造を有する材料の固体塊を意味すると理解される。本発明の実施形態では、足場は、相互接続した細孔または隙間を有する多孔質であってもよい。
【0040】
「室温」という用語は、約15℃~約25℃、例えば約20℃~約25℃の温度を指すことを意図している。
【0041】
本明細書における「硬化」という用語は、足場材料を固体足場に固化させる、または別の方法で固定する行為を指すことを意図している。この硬化は、例えば温度および/または圧力のような条件の変化によって積極的に促進され得る。一実施形態では、硬化は焼結によって達成される。一実施形態では、硬化は、硬化剤および/または条件の追加によって達成される。別の実施形態では、足場材料を固体足場に硬化させることは、受動的な工程であってもよく、例えば足場材料の粒子/ペレットは接触時に自発的に相互連結してもよい。これは、接触時即座に、または例えば一定期間にわたり相互連結してもよい。一実施形態において、硬化は、粒子/ペレットからの可塑剤の浸出によって促進され得る。硬化は、身体または組織への投与/移植によって促進され得る。
【0042】
本明細書における「焼結」という用語は、材料の固体塊を熱および/または圧力によって、液化点までそれを溶融させることなく圧縮し形成するプロセスを指すことを意図している。例えば、焼結は鉱床で自然に起こり得る。
【0043】
本明細書における「固化」または「固化する」という用語は、流動性状態(例えば、容器の形状をとってもよい)から非流動性状態への状態の変化を指すことを意図している。ここで足場材料のペレットおよび/または粒子は相互接続し、互いに対する位置で硬化する。本発明の目的のために、パテまたはゲル材料は固化材料とみなされてもよい。「流動性」という用語は、相互接続せずに流動することができる液体または固体粒子、ペレットもしくは粉末を含み得る。
【0044】
「可塑剤」は、その可撓性、柔軟性、膨張性または加工性を増加させるために、典型的にはポリマーに組み込まれる物質である。可塑剤は、ポリマー分子を結びつける結合を弱めることができ、熱的および/または機械的特性に影響を及ぼし得る。可塑剤は、薬学的に許容される可塑剤であってもよい。可塑剤は、エタノールなどのポリマー溶媒、例えば本明細書に記載のポリマーの溶媒であってもよい。
【0045】
「相互連結」または「相互連結する」という用語は、粒子/ペレットが物理的に接続し、一体に保持される(すなわち相互作用して互いに粘着する)ことを指すことを意図している。相互連結は、ポリマーペレット/粒子またはポリマーペレット/粒子の成分間の共有結合、非共有結合、静電結合、イオン結合、接着、凝集または絡み合い相互作用によって達成することができる。ペレット/粒子は、架橋/相互連結していてもよい。
【0046】
足場を形成する方法
本発明の第1の態様によれば、in situで薬剤を制御放出するための足場材料を形成する方法が提供され、方法は:
ポリマー微粒子を提供することと;
粉末形態である薬剤を提供することと;
ポリマー微粒子を粉末剤と混合することと;
混合物を液体担体中に懸濁させ、ポリマー微粒子懸濁液である足場材料を形成することと;任意に
足場材料がポリマー微粒子の固体足場になるように足場材料を硬化することと、を含み、粉末剤はポリマー微粒子の足場中に封入される。
【0047】
本発明の別の態様によれば、in situで薬剤を制御放出するための足場を形成する方法が提供され、方法は:
ポリマー微粒子を提供することと、
粉末形態である薬剤を提供することと;
ポリマー微粒子を薬剤と混合することと;
混合物を液体担体中に懸濁させポリマー微粒子懸濁液である足場材料を形成することと;
足場材料がポリマー微粒子の固体足場になるように足場材料を硬化することと、を含み、粉末剤はポリマー微粒子の足場中に封入される。
【0048】
有利には、薬剤を粉末形態で供給することで依然として足場形成を可能にし、in situでの薬剤の好ましい放出プロファイルもまた可能にする。例えば、粉末形態の薬剤(結晶など)が担体および/または処置される患者の体液中に可溶化されるとき、薬剤は利用可能となり得る。したがって、足場の移植/注射に続くより長い持続放出(すなわち、1次動態放出プロファイル)に続いて、薬剤のバースト放出を提供することができる。
【0049】
足場および足場材料
足場材料は、外科手術もしくは治療によるヒトもしくは動物の身体の処置方法において、またはヒトもしくは動物の身体で実施される診断方法における使用のためであってよい。足場材料は、医薬用途のためのものであってもよく、または美容外科手術用途のためのものであってもよい。
【0050】
一実施形態では、ポリマー微粒子の足場は多孔性である。細孔は、ポリマー微粒子内の空隙またはポリマー微粒子間の隙間によって形成されてもよい。一実施形態では、細孔は、ポリマー微粒子内の空隙およびポリマー微粒子間の隙間によって形成される。細孔は、足場を形成するために使用されるポリマー微粒子の間に残された隙間によって形成されてもよい。
【0051】
足場は、少なくとも約50%の細孔容積(すなわち、多孔度)を有してもよい。細孔は、約100ミクロンの平均直径を有し得る。足場はナノメートルからミリメートルの範囲の細孔を有し得る。足場は、約20~約50ミクロン、あるいは約50~120ミクロンの細孔を有し得る。一実施形態では、足場は、平均サイズが100ミクロンの細孔を有する。足場は、少なくとも約30%、約40%、約50%またはそれ以上の細孔容積を有し得る。一実施形態では、足場の多孔度は30%~70%であってよい。別の実施形態において、足場の多孔度は、40%~65%であってよい。別の実施形態において、足場の多孔度は、40%~60%であってよい。別の実施形態において、足場の多孔度は、50%~60%であってよい。足場は、足場300mmあたり少なくとも90mmの細孔容積を有し得る。別の実施形態において、足場は、足場300mmあたり少なくとも120mmの細孔容積を有し得る。別の実施形態では、足場は、足場300mmあたり少なくとも150mmの細孔容積を有し得る。
【0052】
当業者であれば分かるように、細孔容積および細孔サイズは、マイクロコンピュータ断層撮影法(microCT)および/または走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて決定することができる。たとえば、SEMは、Philips 535M SEM機器を用いて行うことができる。
【0053】
ポリマー微粒子懸濁液は注射可能であってもよい。注射可能足場材料は、足場を形成するための対象への注射の際に/または注射後に硬化(固化/自己組織化)し得ることができる。一実施形態では、足場材料は、ヒトまたは非ヒト動物の体内へ、注射によって投与されることが意図される。足場材料を注射する場合、足場を位置決めするための侵襲的外科手術の必要性がなくなる。足場材料は、ヒトまたは非ヒト動物へ、好ましくは注射によって組成物の投与を可能にするのに十分な粘性であり得る。
【0054】
投与後に固化/硬化して足場を形成する足場材料を使用することにより、配置される場所の形状、例えば配置される組織空洞の形状に一致する足場を形成することができる。これは、投与に先立って特定の形状に製造されなければならず、腔内のボトルネックを通して挿入できず、腔洞を充填するために膨張することができない、投与前に製造された足場の問題を克服する。
【0055】
足場材料は、室温で投与されるように構成することができる。したがって、足場材料は、室温で粘性であってよい。あるいは、足場材料は、投与のために室温より高い温度、例えば体温(約37℃)以上に加熱してもよい。足場材料は、ヒトまたは非ヒト動物への投与を助けるために、この温度で流動性または粘性であり得る。
【0056】
足場材料は、約4mm以下のオリフィスを有するシリンジから、通常の圧力(例えば、平均的な人の手によって合理的に圧力を加えることができる)を使用して投与することが可能な粘度を有し得る。オリフィスのサイズは医学的用途に依存し、例えば、多くの骨用途では、約2mm~約4mmのオリフィスを有するシリンジが使用されるが、他の用途ではより小さいオリフィスが好ましい場合がある。「通常の圧力」という用語は、組成物を患者に投与するヒトが片手で加えられる圧力であってもよい。
【0057】
足場材料は、それが投与されたときに水のように直ちに散逸することなく、代わりにそれが投与された部位の形を採るように、十分な粘度を有していてもよい。担体および薬剤の一部または全部は、足場から時間とともに散逸することがある。一実施形態では、足場材料は十分に粘性であり、投与されると、注射可能足場材料は注射された場所に実質的に留まり、すぐに散逸しない。一実施形態では、足場は、足場材料が実質的に散逸する前に足場を形成するか、または形成するように構成される。特定の部位への注射など、供給された足場材料の約50重量%、60重量%、70重量%、80重量%または90重量%超が部位に残り、その部位に足場を形成し得る。
【0058】
ポリマー微粒子は、焼結により相互連結して固体足場に硬化し得ることができる。足場材料は、体内に注射されると投与後の温度上昇(例えば、室温から体温への温度上昇)によって自発的に固化し得ることができる。この温度上昇は、足場材料を相互作用させて足場を形成させ得る。
【0059】
足場材料が固化して足場を形成するとき、足場は、懸濁または変形可能な粘性状態から、形成された足場が自己支持性でありその形状を保持する固体状態へと変化し得る。形成された固体足場は、その意図される用途に依存して、脆いかまたはより柔軟であり得る。足場は、破砕することなく圧縮可能であり得る(例えば、スポンジの稠度)。
【0060】
足場材料の固化(すなわち足場材料からの足場の形成/硬化)を任意の適切な手段によって誘発してよく、例えば、温度の変化、pHの変化、機械的な力(圧縮)の変化、または相互連結、架橋、硬化もしくはゲル化剤、もしくは触媒の導入によって固化を誘発してもよい。
【0061】
一実施形態では、固化は、それらが架橋/相互連結して足場を形成するような、ポリマー微粒子との可塑剤相互作用によって誘発される。特に、可塑剤は、表面Tgが減少し、それによってポリマー微粒子が共に粘着/架橋/相互連結することを可能にするように、ポリマー微粒子の表面化学を変えることができる。
【0062】
言い換えれば、ポリマー微粒子は、温度の変化、pHの変化、機械的な力の変化(圧縮)、または相互連結、架橋剤、硬化剤もしくはゲル化剤、もしくは触媒の導入によって足場に硬化/固化することができる粒子、例えば個別の粒子であってよい。
【0063】
足場材料を、たとえば、ポリマー鎖の物理的絡み合い、アクリレートポリマーのUV架橋、チオレートまたはアクリレートポリマーのマイケル付加反応、ビニルスルホンによって架橋されたチオレートポリマー、ビニルスルホンのスクシニメート(succinimate)による架橋、ヒドラジンによる架橋、熱的に誘導されたゲル化、酵素による架橋(たとえば、フィブリノーゲンへのトロンビンの添加)、塩またはイオン(特にCa2+イオン)の添加による架橋、イソシアネート(たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネート)による架橋を含む種々の方法によって架橋してもよい。
【0064】
足場材料は、相互作用して足場を形成することができる個別の粒子を含む。この相互作用により、粒子が架橋することができ、ここで粒子が物理的に接続されて一体に保持される。架橋は、粒子または粒子の成分間の共有結合、非共有結合、静電結合、イオン結合、接着、凝集または絡み合い相互作用によって達成することができる。
【0065】
一実施形態では、個別の粒子は、粒子が物理的に接続されて一体に保持されるように架橋することができる。粒子は適切には、粒子が物理的に接続されて一体に保持されるように、架橋することができるポリマー微粒子であってもよい。
【0066】
足場を確実に形成し得るための粒子の特徴は、ガラス転移温度(Tg)であり得る。室温(例えば、約24℃)を超えるTgを有するポリマー微粒子を選択することにより、室温でポリマー微粒子はそのTg未満であり、個別の粒子として挙動するが、より高い温度にさらされると(たとえば体内で)、ポリマー微粒子は軟化してその近隣接物と相互作用/粘着する。一実施形態では、約25℃~50℃、たとえば約27℃~50℃、たとえば約30℃~45℃、たとえば35℃~40℃、たとえば約37℃~40℃のTgを有するポリマー微粒子が用いられる。
【0067】
当業者であれば理解するように、ガラス転移温度は示差走査熱量測定(DSC)またはレオロジー試験によって測定することができる。特に、ガラス転移温度は第1の加熱走査において走査速度10℃/分のDSCによって決定してもよく、ここでガラス転移はエンタルピー変化の中間点とみなされる。適切な装置は、Perkin Elmer(Bucks、英国)DSC-7である。
【0068】
言い換えれば、足場の形成は、ポリマー微粒子をそのTg未満の温度からより高い温度への温度変化にさらすことによって引き起こされる。より高い温度は必ずしもそのTgに等しいかまたはそれより高い必要はない。そのTgに向かう任意の温度上昇は、ポリマー微粒子間に必要とされる相互作用を誘発することができる。一実施形態では、足場の形成は、ポリマー微粒子をそのTg未満の温度からより高い温度への温度変化にさらすことによって引き起こされ、ここでより高い温度はそのTgより50℃以下だけ低い、たとえばそのTgより30℃以下だけ低いまたはそのTgより20℃以下だけ低いまたはそのTgより10℃以下だけ低い。
【0069】
一実施形態では、ポリマー微粒子が体内への注射時にそのTg温度に近いかまたはそれ以上に上昇する場合、ポリマー微粒子は1つ以上の他のポリマー微粒子と架橋/相互連結して足場を形成する。架橋/相互連結とは、隣接するポリマー微粒子が一体に連結することを意味する。例えば、ポリマー微粒子は、あるポリマー微粒子の表面におけるポリマー鎖と別のポリマー微粒子の表面におけるポリマー鎖との絡み合いによって架橋/相互連結することができる。隣接するポリマー微粒子間に接着、凝集または融合が存在してもよい。
【0070】
ポリマー微粒子が一体になり、架橋/相互連結すると、隣接するポリマー微粒子間に必然的に存在する空間の結果として、得られた足場に細孔が形成される。ポリマー微粒子間のそのような空間/隙間は、ヒドロゲルまたは他の構造材料で充填されていなくてもよい。しかしながら、ポリマー微粒子間のそのような空間/隙間は、液体担体で充填されてもよい。
【0071】
一実施形態では、足場材料は、相互作用して約35℃~約40℃のTgを有する足場を形成することができる個別のポリマー微粒子、および約40℃のTgを有する他の個別のポリマー微粒子を含む。送達のための薬剤は、粒子タイプの一方のみまたは両方に組み込んでもよい。好ましくは、送達のための薬剤は、少なくとも40℃を超えるTgを有する個別の粒子に組み込まれる。
【0072】
足場は、熱の発生または有機溶媒の損失なしに形成され得る。
【0073】
ヒトまたは非ヒト動物に投与された足場材料からの足場の形成は、約20秒~約24時間、あるいは約1分~約5時間、あるいは約1分~約1時間、あるいは約30分未満、あるいは約20分未満であり得る。一実施形態では、固化は投与から約1分~約20分間の間に生じる。
【0074】
足場材料は、約20%~約80%のポリマー微粒子および約20%~約80%の担体を含むことができ、約30%~約70%のポリマー微粒子および約30%~約70%の担体、例えば、足場材料は、約40%~約60%のポリマー微粒子および約40%~約60%の担体を含むことができ、足場材料は、約50%のポリマー微粒子および約50%の担体を含むことができる。上記パーセントはすべて、重量パーセントを指す。
【0075】
一実施形態では、足場材料を用いて、2MPaを超える圧縮荷重に耐えることができる(したがって骨用途に好適な)足場を形成することができる。足場の圧縮強度は、in situでの足場の特性であり得る。さらに、足場の圧縮強度は、約37℃の湿潤環境(例えば、湿度100%)で少なくとも24時間焼結した後、in vitroで測定された足場の特性であり得る。 別の実施形態では、足場は、約37℃の湿潤環境(例えば、湿度100%)で2時間焼結した後に、少なくとも0.5MPaの圧縮強度を有してもよい。
【0076】
本発明の他の態様および実施形態では、2MPaのような顕著な圧縮強度を必要としないことがある。例えば、足場のフィルム(すなわち、実質的に薄いフィルム)が望ましい用途では、足場の圧縮強度のレベルは、関連するパラメータではないことがある。例えば、いくつかの用途では、足場がある程度柔軟性であることが望ましい場合がある。したがって、本発明はまた、実質的に可撓性の足場材料を包含する。そのような可撓性足場材料は、屈曲または折り畳まれたときにひび割れ、裂けおよび破れのないように、柔軟であり得る。一実施形態では、足場はパテ稠度を有する。一実施形態では、足場は、足場の硬化後にその可撓性を維持することができる。あるいは、足場は硬質(例えば、平均的な成人の手で圧縮可能または可鍛可能ではない)であってもよい。足場のフィルムが形成される実施形態では、足場は、破砕することなくチューブに巻き込むために十分に可撓性であり得る。
【0077】
足場は、破砕することなく圧縮可能であり得る(例えば、スポンジの稠度)。
【0078】
一実施形態では、足場は、(例えば、治療される身体/傷害の外側の)ex situで形成される。一実施形態では、足場材料を、硬化する前にフィルム、すなわち実質的に薄いフィルムに展延してもよい。フィルムは、硬化前に足場材料を表面上に展延することによって形成することができる。展延は、足場材料を表面に塗り、巻き込み、または注射して、足場材料のフィルムを形成することを含んでよい。足場のフィルムの形成は、足場の柔軟な膜を提供し得る。一実施形態において、足場のフィルムの厚さは、10mm以下であり得る。別の実施形態では、足場のフィルムの厚さは、8mm以下であり得る。別の実施形態では、足場のフィルムの厚さは、6mm以下であり得る。別の実施形態では、足場のフィルムの厚さは、5mm以下であり得る。別の実施形態では、足場のフィルムの厚さは、2mm~10mmであり得る。
【0079】
別の実施形態では、足場のフィルムの厚さは、2mm未満であり得る。例えば、足場のフィルムの厚さは、100ミクロン~2mmであり得る。別の実施形態では、足場のフィルムの厚さは、100ミクロン~1mmであり得る。別の実施形態では、足場のフィルムの厚さは、150ミクロン~1mmであり得る。別の実施形態では、足場のフィルムの厚さは、200ミクロン~1mmであり得る。別の実施形態では、足場のフィルムの厚さは、500ミクロン~1mmであり得る。厚さが2mm未満、例えば100~500ミクロン、または100ミクロン~1mmの実施形態では、約20~30ミクロンのポリマー粒子が提供され得る。あるいは、20~100ミクロンのサイズ範囲のポリマー微粒子を使用して、300ミクロンから1mm以上の厚さの足場のフィルムを形成することができる。足場を形成するために使用される3つのポリマー微粒子を組み合わせたサイズと、少なくとも同じ厚さの足場のフィルムが形成され得る。
【0080】
足場材料をフィルムに展延する方法では、足場材料はより小さなポリマー微粒子を含むことができ、例えばポリマー微粒子は100μm以下であり得る。別の実施形態では、ポリマー微粒子は50μm以下であり得る。例えば、ポリマー微粒子は、約20μm~約100μm、あるいは約20μm~約50μm、あるいは約20μm~約30μmであり得る。加えて、またはこれに代えて、足場材料をフィルムに展延する方法では、足場材料は、1.2:1またはそれ以上の担体対ポリマー微粒子比を有し得る。加えて、またはこれに代えて、足場材料をフィルムに展延する方法では、足場材料は、1.5:1またはそれ以上の担体対ポリマー微粒子比を有し得る。加えて、またはこれに代えて、足場材料をフィルムに展延する方法では、足場材料は、約2:1の担体対ポリマー微粒子比を有し得る。加えて、またはこれに代えて、足場材料をフィルムに展延する方法では、足場材料は、約1.2:1~約2:1の担体対ポリマー微粒子比を有し得る。
【0081】
ポリマー微粒子
ポリマー微粒子は、例えば任意の担体と混合する前に、乾燥状態で提供されてもよい。ポリマー微粒子は、少なくとも部分的に担体中に分散可能であってもよい。ポリマー微粒子は、37℃以下の温度で担体に可溶性でなくてもよい。
【0082】
ポリマー微粒子は、1つ以上のポリマーを含むか、またはそれらからなることができる。ポリマー(複数可)は、合成ポリマー(複数可)であってもよい。ポリマー微粒子は、ポリ(α-ヒドロキシ酸)たとえばポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリD,L-乳酸(PDLLA)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ乳酸またはポリグリコール酸、ポリ-ラクチドポリ-グリコリドコポリマーおよびポリ-ラクチドポリ-グリコリドポリエチレングリコールコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエステル、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(3-ヒドロキシ-ブチレート)、ポリ(s-カプロン酸)、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(オルトエステル)、ポリオール/ジケテンアセタール付加ポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(セバシン酸無水物)(PSA)、ポリ(カルボキシビスカルボキシフェノキシホスファゼン)(PCPP)、ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)メタン](PCPM)、SA、CPPおよびCPMのコポリマー(TamatおよびLanger Journal of Biomaterials Science Polymer Edition、3、315~353.1992に、およびDombによりThe Handbook of Biodegradable Polymersの8章、Domb A JおよびWiseman R M編、Harwood Academic Publishersに記載されている)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(偽アミノ酸)、ポリホスファゼン、ポリ[(ジクロロ)ホスファゼン]の誘導体、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリホスフェート、たとえば商標名Pluronics(商標)で販売されているポリエチレングリコールポリプロピレンブロックコポリマー、天然または合成ポリマー、たとえば、絹、エラスチン、キチン、キトサン、フィブリン、フィブリノーゲン、多糖(ペクチンを含む)、アルギネート、コラーゲン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、これらのポリマーのうちいずれかのモノマーから調製されたコポリマー、それらのポリマーのランダムブレンド、任意の好適なポリマーおよびその混合物または組み合わせを含む群から選択される1種以上のポリマーを含んでいてもよい。
【0083】
ポリマー微粒子は、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、たとえばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリD,L-乳酸(PDLLA)、ポリ-ラクチドポリ-グリコリドコポリマー、およびそれらの組み合わせを含む群から選択されるポリマーを含んでいてもよい。一実施形態では、ポリマー微粒子はPLGAを含む。
【0084】
ポリマー微粒子は、ポリ(α-ヒドロキシ酸)とポリ(エチレングリコール)(PEG)とのブレンドであるポリマー、たとえばグリコール酸および/または乳酸をベースとするポリマーまたはコポリマーのPEGとのブレンドを含んでいてもよい。別の実施形態では、ポリマー微粒子はPEGを含まなくてもよい。別の実施形態では、ポリマー微粒子は、PEGを実質的に含まなくてもよく、例えば、ポリマー微粒子は、2%未満のPEGを含み得る。別の実施形態では、ポリマー微粒子は、1.5%未満のPEGを含み得る。別の実施形態では、ポリマー微粒子は、1%未満のPEGを含み得る。別の実施形態ではポリマー微粒子は、0.5%未満のPEGを含み得る。別の実施形態では、ポリマー微粒子は、0.2%未満のPEGを含み得る。
【0085】
一実施形態では、ポリマー微粒子はPLGA95:5を含む。あるいは、ポリマー微粒子はPLGA50:50を含み得る。あるいは、ポリマー微粒子はPLGA85:15を含み得る。あるいは、ポリマー微粒子はPLGA50:50~PLGA95:5の任意のPLGAを含み得る。あるいは、ポリマー微粒子はPLGA65:35を含み得る。あるいは、ポリマー微粒子はPLGA72:25を含み得る。上記のPLGAの実施形態の間のモノマー比を有するPLGAもまた考慮され得る。
【0086】
PEGがポリマー微粒子中に可塑剤として提供される実施形態では、PEGはポリマー微粒子含有量の10%までであり得る。あるいは、PEGはポリマー微粒子含有量の8%までであり得る。あるいは、PEGはポリマー微粒子含有量の6%までであり得る。あるいは、PEGはポリマー微粒子含有量の3%までであり得る。あるいは、PEGはポリマー微粒子含有量の2%までであり得る。あるいは、PEGはポリマー微粒子含有量の1%までであり得る。あるいは、PEGはポリマー微粒子含有量の1~10%であり得る。あるいは、PEGはポリマー微粒子含有量の5~8%であり得る。あるいは、PEGはポリマー微粒子含有量の6~7%であり得る。あるいは、PEGはポリマー微粒子含有量の2~6%であり得る。あるいは、PEGはポリマー微粒子含有量の3~4%であり得る。あるいは、PEGはポリマー微粒子含有量の約6.5%であり得る。
【0087】
PEGがポリマー微粒子中に可塑剤として提供される実施形態では、PEGは、1000Da以下の分子量を有することができる。あるいは、PEGは800Da以下である。あるいは、PEGは600Da以下である。一実施形態では、PEGはPEG400である。
【0088】
ポリマー微粒子は、PEGであってもそうでなくてもよい可塑剤を含み得る。可塑剤は、低分子量PLGAなどのPLGA、例えば、10KDa未満のPLGAを含むことができる。加えて、またはこれに代えて、可塑剤は、PLGAのモノマー(すなわち、DL-ラクチドおよび/またはグリコリド)を含み得る。
【0089】
ポリマー微粒子は、任意にグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノマーエーテル、プロピレングリコール、ソルビトールソルビタン溶液、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、ひまし油、ジアセチルモノグリセリド、ジブチルセバケート、ジエチルフタレート、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、またはそれらの組み合わせから選択される可塑剤を含むことができ、任意に可塑剤は1~10%w/wの量で提供される。
【0090】
ポリマー微粒子は、任意にグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノマーエーテル、プロピレングリコール、ソルビトールソルビタン溶液、またはそれらの組み合わせから選択される可塑剤を含むことができ、任意に可塑剤は1~10%w/wの量で提供される。ポリマー微粒子は、任意にアセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、ひまし油、ジアセチルモノグリセリド、ジブチルセバケート、ジエチルフタレート、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、またはそれらの組み合わせから選択される可塑剤を含むことができ、任意に可塑剤は1~10%w/wの量で提供される。
【0091】
ポリマー微粒子は、生体適合性および/または生分解性でもよい。ポリマー微粒子に用いられるポリマーを制御することにより、足場分解の速度を制御してもよい。
【0092】
足場材料は、1つ以上のタイプのポリマーから作製された1つ以上のタイプのポリマー微粒子を含むことができる。さらに、足場材料は、天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子を含み得る。天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、微粒子であってもよい。
【0093】
非ポリマー粒子は、セラミックを含むか、またはセラミックからなることができる。セラミックは、硫酸カルシウム(CS)またはβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)を含むかまたはそれからなることができる。別の実施形態では、天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、結晶化糖分子(例えば、マンニトールの結晶化粒子)を含み得る。他の糖粒子、例えばグルコースを提供することができる。
【0094】
一実施形態では、天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、抗酸化剤を含んでよい。一実施形態では、天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、シリカ置換セラミックを含んでよい。一実施形態では、天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、α-リン酸三カルシウムを含んでよい。一実施形態では、天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、ヒドロキシアパタイトを含んでよい。一実施形態では、天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、リン酸カルシウムを含んでよい。異なる天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子の組み合わせが考慮されてもよい。
【0095】
天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、ポリマー微粒子と比較して(集団内の平均粒子サイズにしたがって)実質的に類似または等しいサイズであってよい。別の実施形態では、天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、ポリマー微粒子と比較して(集団内の平均粒子サイズにしたがって)より小さいサイズでもよい。例えば、一実施形態では、天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、粉末形態であってもよい。粉末形態は、集団内の平均粒子サイズにしたがって、約250ミクロン未満の粒子を含んでよい。別の実施形態では、粉末形態は、集団内の平均粒子サイズにしたがって、約150ミクロン未満の粒子を含んでよい。別の実施形態では、粉末形態は、集団内の平均粒子サイズにしたがって、約20~250ミクロンの粒子を含んでよい。
【0096】
一実施形態では、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子はポリマー微粒子内に封入される。封入は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子の存在下でのポリマー微粒子の形成によって提供することができる。例えば、封入は、ポリマー微粒子を形成するためのポリマーと、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子との同時押出しによって生じてもよい。非ポリマー粒子は、本明細書の本発明の方法にしたがってポリマー微粒子内に提供されてもよい。
【0097】
足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を1%~55%含んでもよい。別の実施形態では、足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を1%~50%含んでもよい。別の実施形態では、足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を1%~55%含んでもよい。別の実施形態では、足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を10%~50%含んでもよい。別の実施形態では、足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を20%~50%含んでもよい。別の実施形態では、足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を30%~50%含んでもよい。別の実施形態では、足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を40%~50%含んでもよい。
【0098】
天然ポリマーまたは非ポリマー粒子がポリマー微粒子内に封入される実施形態では、ポリマー微粒子は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を1%~55%(w/w)含んでもよい。あるいは、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子がポリマー微粒子内に封入される実施形態では、ポリマー微粒子は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を20%~55%(w/w)含んでもよい。あるいは、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子がポリマー微粒子内に封入される実施形態では、ポリマー微粒子は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を20%~50%(w/w)含んでもよい。あるいは、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子がポリマー微粒子内に封入される実施形態では、ポリマー微粒子は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を30%~50%(w/w)含んでもよい。あるいは、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子がポリマー微粒子内に封入される実施形態では、ポリマー微粒子は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を40%~50%(w/w)含んでもよい。
【0099】
天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子が足場材料に提供される実施形態では、足場材料は、担体中に40%v/v未満の可塑剤を含んでもよい。天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子が足場材料に提供される別の実施形態では、足場材料は、担体中に39%v/v未満の可塑剤を含んでもよい。天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子が足場材料に提供される別の実施形態では、足場材料は、担体中に35%v/v未満の可塑剤を含んでもよい。天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子が足場材料に提供される別の実施形態では、足場材料は、担体中に30%v/v未満の可塑剤を含んでもよい。あるいは、可塑剤含有量は、担体の20%、15%、10%または5%v/v未満であってもよい。天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子が足場材料に提供される実施形態では、足場材料は、担体中に約1%v/vの可塑剤を含んでもよい。
【0100】
2つ以上のタイプのポリマー微粒子が使用される場合、各ポリマー微粒子は異なる固化特性または硬化特性を有し得る。例えば、ポリマー微粒子は、類似のポリマーから作製することができるが、異なるゲル化pHまたは異なる融解温度またはガラス転移点を有し得る。
【0101】
一実施形態では、ポリマー粒子が足場を形成するために、ポリマー微粒子の周囲の温度、例えば組成物が投与されるヒトまたは非ヒト動物における温度は、ポリマー微粒子のガラス転移温度とほぼ等しいか、またはそれより高い。そのような温度で、ポリマー微粒子は、1つ以上の他のポリマー微粒子と架橋/相互連結して足場を形成することができる。架橋/相互連結とは、隣接するポリマー粒子が一体に連結されるようになることを意味する。例えば、ポリマー粒子は、あるポリマー微粒子の表面におけるポリマー鎖と別のポリマー微粒子の表面におけるポリマー鎖との絡み合いによって架橋/相互連結することができる。隣接するポリマー微粒子間に接着、凝集または融合が存在し得る。
【0102】
足場材料は、体温に近いかまたは体温よりわずかに高い(たとえば約30℃~45℃、たとえば約35℃~40℃、たとえば約37℃~40℃)ガラス転移温度(Tg)を有するポリマーまたはポリマーブレンドから形成されたポリマー微粒子を含むことができる。したがって、室温ではポリマー微粒子はそのTgより低く、個別のポリマー微粒子として挙動するが、体内ではポリマー微粒子は軟化してその隣接物と相互作用/粘着する。好ましくは、足場形成は室温から体温への温度上昇の15分以内に始まる。
【0103】
ポリマー微粒子を、約35℃~40℃、たとえば約37℃~40℃のTgを有するポリマーから形成してもよく、ポリマーはポリ(α-ヒドロキシ酸)(たとえば、PLA、PGA、PLGAもしくはPDLLAまたはこれらの組み合わせ)、またはこれとポリ(エチレングリコール)(PEG)とのブレンドである。体温では、これらのポリマー微粒子は相互作用して足場を形成できる。足場材料は、ポリ(α-ヒドロキシ酸)/PEG粒子のみを含んでいるか、または他の粒子タイプを含んでいてもよい。
【0104】
ポリマー微粒子は、体温またはそれを超えるTgを有するポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)およびポリ(エチレングリコール)(PEG)のブレンドから形成してもよい。体温では、これらのポリマー微粒子は相互作用して足場を形成でき、このプロセスの間にPEGがポリマー微粒子表面から失われてもよく、これはTg上昇および足場構造硬化の効果をもち得る。足場材料は、PLGA/PEG微粒子のみを含んでいるかまたは他の粒子タイプを含んでいてもよい。別の実施形態では、足場材料は、PLGA微粒子のみを含み得る。別の実施形態では、ポリマー微粒子などの足場材料は、PEGなどの可塑剤を実質的に含まなくてもよい。
【0105】
有利には、PEGなどの可塑剤を実質的に含まないポリマー微粒子を提供することは、製造プロセスからより無駄を無くし、ポリマー微粒子の室温安定性を改善する。例えば、PLGA/PEG400ブレンドのような典型的なポリマー微粒子の低いガラス転移温度のために、それらは冷蔵庫または冷凍庫に貯蔵する必要がある。対照的に、実質的に可塑剤を含まないポリマー微粒子は、室温で貯蔵することができる。そのような可塑剤を含まないポリマー微粒子であっても、本明細書に記載されるような担体中に可塑剤を使用して足場を硬化し得ることができる。
【0106】
足場材料は、温度感受性ポリマー微粒子と非温度感受性粒子との混合物を含んでいてもよい。好ましくは、非温度感受性粒子は、組成物が使用されることを意図した温度より高いガラス転移温度を有する粒子である。温度感受性ポリマー微粒子と非温度感受性粒子との混合物を含む組成物において、温度感受性ポリマー微粒子対非温度感受性粒子の比は約3:1以下、たとえば、4:3であり得る。温度感受性ポリマー微粒子は、組成物の温度がこれらのポリマー微粒子のガラス転移温度にまたはそれを超えて上昇すると、互いに架橋または相互連結し得ることができる。温度感受性ポリマー微粒子対非温度感受性粒子の比を制御することにより、得られる足場の多孔度を操作することが可能である。
【0107】
一実施形態において、セラミック粒子は、足場材料中にさらに存在してもよい。これは、典型的には非温度感受性粒子タイプである。代わりにまたは加えて、足場材料中のポリマー微粒子は、それ自体がセラミック成分を含有してもよい。これは、典型的には非温度感受性粒子タイプである。
【0108】
個別の粒子として、またはポリマー微粒子内のセラミック材料含有物のいずれかとしては、骨伝導性を増強するおよび/または骨誘導性を付加することができる。
【0109】
粒子は、固体外表面をもつ固体であってもよいし、多孔質であってもよい。粒子は形状が不規則または実質的に球形でもよい。
【0110】
ポリマー微粒子は、約300~約500μmの最長寸法のサイズを有し得る。あるいは、300~5000μmのサイズ範囲のポリマー微粒子を「ポリマーペレット」と呼んでもよい。別の実施形態では、ポリマー微粒子は100μm以下であってもよい。別の実施形態では、ポリマー微粒子は50μm以下であってもよい。例えば、ポリマー微粒子は、約20μm~約100μm、あるいは約20μm~約50μm、あるいは約20μm~約30μmであってもよい。ポリマー粒子のサイズは、ポリマー微粒子の集団の平均サイズを指してもよい。
【0111】
ポリマー微粒子は、それらの最長寸法、またはそれらが実質的に球形である場合にはその直径が約3000μm未満、および任意に約1μm超のサイズを有することができる。一実施形態では、粒子は、その最長寸法またはその直径が約1000μm未満のサイズを有する。ポリマー微粒子は、約50μm~約500μm、あるいは約100μm~約500μmの最長寸法またはその直径のサイズを有することができる。所望のサイズのポリマー微粒子は、約50μmの孔サイズを有する篩またはフィルタを通過することができないが、約500μmの孔サイズを有する篩またはフィルタを通過する。あるいは、所望のサイズのポリマー微粒子は、約200μmの孔サイズを有する篩またはフィルタを通過することができないが、約500μmの孔サイズを有する篩またはフィルタを通過する。
【0112】
ポリマー微粒子のサイズは、意図された用途または必要とされる足場のタイプについて、当業者によって有利に選択され得る。例えば、ペレットサイズ(例えば、300~5000μm)のポリマー微粒子の使用は、より小さいポリマー微粒子の使用と比較して、ポリマー微粒子間の隙間がより大きくなり得る、増加した多孔度のためであってよい。このようなサイズ制御は、薬剤放出速度を制御することができ、より大きなペレットサイズの粒子の選択によってより速い放出速度を提供することができる。
【0113】
担体
一実施形態では、担体は水性担体、例えば水である。担体は、水性溶液もしくは懸濁液、たとえば生理食塩水、血漿、骨髄穿刺液、バッファー、たとえばハンクス緩衝塩溶液(HBSS)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、リンゲルバッファー、クレブスバッファー、ダルベッコPBS、もしくは通常のPBS;疑似体液、血漿血小板濃縮液または組織培養培地であってよい。
【0114】
担体は1種以上の懸濁化剤を任意に含有していてもよい。懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、マンニトール、ポリソルベート、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アルブミン、アルギネート、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシルエチルメチルセルロース(HEMC)、ベントナイト、トラガント、デキストリン、ゴマ油、アーモンド油、スクロース、アカシアゴムおよびキサンタンゴムならびにこれらの組み合わせから選択してもよい。一実施形態では、担体はCMCを含む。
【0115】
CMCは、担体中に0.1%~4%w/vの量で提供され得る。CMCは、担体中に0.1%~3.5%w/vの量で提供され得る。CMCは、担体中に0.1%~3%w/vの量で提供され得る。CMCは、担体中に0.1%~2.5%w/vの量で提供され得る。CMCは、担体中に0.5%~1%w/vの量で提供され得る。
【0116】
担体は、足場材料の流動性を増強するためのポリマーをさらに含んでもよい。例えば、ポリマーはPluronic F127のようなPluronicを含んでもよい。足場材料の流動性を増強するためのPluronic F127のようなポリマーは、担体中に約1%w/vの量で提供されてよい。足場材料の流動性を増強するためのPluronic F127のようなポリマーは、担体中に約0.5~2%w/vの量で提供されてよい。
【0117】
担体は、1種以上の可塑剤を含んでよい。可塑剤は、担体自体に直接添加することができ、例えばポリマー微粒子からの拡散のみによって担体中に可塑剤を供給することはできない。一実施形態では、担体およびポリマー微粒子の両方が、PEGなどの可塑剤を含むことができる。別の実施形態では、PEGなどの可塑剤は、担体のみに含まれ、ポリマー微粒子には含まれなくてもよい。別の実施形態では、PEGなどの可塑剤は、ポリマー微粒子のみに含まれ、担体には含まれなくてもよい。
【0118】
担体中の可塑剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリ(乳酸)もしくはポリ(グリコール酸)またはこれらのコポリマー、ポリカプロラクトンおよびこれらのポリマーの低分子量オリゴマー、または従来の可塑剤、たとえば、アジペート、ホスフェート、フタレート、サバケート(sabacate)、アゼレートおよびシトレートから選択されてよい。可塑剤はまたアルコールたとえばエタノールまたはメタノールであってもよい。一実施形態では、担体はエタノールを含んでよい。一実施形態では、担体中の可塑剤はPEGを含まない。別の実施形態では、担体中の可塑剤はPEGを含む。
【0119】
一実施形態では、担体中の可塑剤は、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸、およびトリアセチン、またはその組み合わせのうちのいずれか1つから選択することができる。一実施形態では、担体中の可塑剤は、TEC(クエン酸トリエチル)を含むか、またはそれからなっていてもよい。一実施形態では、担体中の可塑剤は、トリアセチンを含むか、またはそれからなっていてもよい。
【0120】
一実施形態では、担体は、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸、およびトリアセチン、またはその組み合わせのうちのいずれか1つから選択される第1の可塑剤を含み、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸、およびトリアセチン、またはその組み合わせのうちのいずれか1つから選択される第2の可塑剤を含み、ここで第1および第2の可塑剤は異なる。
【0121】
有利には、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸、およびトリアセチン、またはその組み合わせのうちのいずれか1つから選択される担体中の可塑剤、特にそのような2つの可塑剤を提供することは、提供されるポリマー微粒子に実質的に可塑剤を含まない、例えばPEGを含まないようにする。上述したように、これは、PEGのような可塑剤がポリマー微粒子中に存在しない場合、足場材料を固体足場に硬化することを可能にする。したがって、ポリマー微粒子は製造がより容易で経済的であり、室温で貯蔵することができる。
【0122】
第1の可塑剤が担体に提供されてよく、第1の可塑剤はクエン酸トリエチルであり、および第2の可塑剤が担体に提供されてよく、第2の担体はエタノールを含む。
【0123】
2つの可塑剤を含む一実施形態では、第1の可塑剤は担体に提供され、第2の可塑剤は担体および/またはポリマー微粒子に提供されてよい。2つの可塑剤を含む一実施形態では、第1の可塑剤は担体に提供され、第2の可塑剤は担体および/またはポリマー微粒子に提供されるPEGであってよい。2つの可塑剤を含む一実施形態では、第1の可塑剤は担体に提供され、第2の可塑剤はポリマー微粒子に提供されるPEGであってよい。
【0124】
2つの可塑剤を含む実施形態では、第1の可塑剤は、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸、およびトリアセチンのうちのいずれか1つから選択することができ、第2の可塑剤は、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸、およびトリアセチンのうちのいずれか1つから選択することができ、第1および第2の可塑剤は異なる。
【0125】
担体は、薬剤の安定性を改善するために、他の公知の医薬品賦形剤を含んでいてもよい。
【0126】
担体は、0.5%~40%w/vの可塑剤を含み得る。あるいは、担体は、0.5%~30%w/vの可塑剤を含み得る。別の実施形態では、担体は、0.5%~20%w/vの可塑剤を含み得る。あるいは、担体は、0.5%~15%w/vの可塑剤を含み得る。担体は、0.5%~10%w/vの可塑剤を含み得る。あるいは、担体は、0.5%~8%w/vの可塑剤を含み得る。あるいは、担体は、0.5%~6%w/vの可塑剤を含み得る。あるいは、担体は、0.5%~5%w/vの可塑剤を含み得る。あるいは、担体は、1%~6%w/vの可塑剤を含み得る。あるいは、担体は、2%~6%w/vの可塑剤を含み得る。あるいは、担体は、約0.5%、0.79%、1%、2%、3%、4%、5%または6%w/vの可塑剤を含み得る。可塑剤がTECまたはTAである実施形態では、TECまたはTAは、担体中に0.5%~10%w/vの量で提供され得る。あるいは、可塑剤がTECまたはTAである実施形態では、TECまたはTAは、担体中に0.5%~8%w/vの量で提供され得る。あるいは、可塑剤がTECまたはTAである実施形態では、TECまたはTAは、担体中に0.5%~6%w/vの量で提供され得る。あるいは、可塑剤がTECまたはTAである実施形態では、TECまたはTAは、担体中に0.5%~5%w/vの量で提供され得る。あるいは、可塑剤がTECまたはTAである実施形態では、TECまたはTAは、担体中に1%~6%w/vの量で提供され得る。あるいは、可塑剤がTECまたはTAである実施形態では、TECまたはTAは、担体中に2%~6%w/vの量で提供され得る。あるいは、可塑剤がTECまたはTAである実施形態では、担体は、約0.5%、0.79%、1%、2%、3%、4%、5%、または6%w/vのTECまたはTAを含み得る。
【0127】
可塑剤が安息香酸である実施形態では、安息香酸は担体中に0.1%~3%w/vの量で提供され得る。可塑剤がエタノールである実施形態では、エタノールは担体中に0.1%~20%w/vの量で提供され得る。可塑剤がNMP(N-メチル-2-ピロリドン)である実施形態では、NMPは担体中に0.1~90%w/vの量で提供されてもよく、NMPは、1%~90%w/v、または10%~80%w/v、または約78%w/vの量で提供されてもよい。可塑剤がDMSOである実施形態では、DMSOは担体中に0.1%~10%w/vの量で提供され得る。可塑剤がPEG400などのPEGである実施形態では、PEGは担体中に0.1%~30%w/vの量で提供されてもよい。可塑剤がグリセリンである実施形態では、グリセリンは担体中に0.1%~25%w/vの量で提供され得る。
【0128】
一実施形態では、放出速度にさらに影響を与えるために、1種以上の追加的な賦形剤または送達増強剤、たとえば界面活性剤および/またはハイドロゲルを、足場材料中に、たとえば担体中に含んでいてもよい。
【0129】
担体はポリマー微粒子と相互作用することができる。担体は、ポリマー微粒子と相互作用して、足場の形成を防止または遅れさせ、足場が形成される前にヒトまたは非ヒト動物にポリマー微粒子を投与することができる。担体は、担体中への懸濁による粒子の分離によってポリマー微粒子間の相互作用を防止することができる。担体は、投与前の足場の形成を完全に防止するか、または形成を単に遅らせることができ、例えば、投与前に足場形成が開始されるが完全に形成はされない。一実施形態では、組成物は、担体がなければポリマー微粒子に足場を形成させたであろう温度にあっても、足場の形成を防止するのに十分な担体を含む。一実施形態において、組成物は、担体がなければポリマー微粒子に足場を容易に形成させたであろう温度にあっても、足場が容易に形成しないように、たとえばあるタイムスケールたとえば1時間から5時間にわたり形成しないように、足場の形成を遅らせるのに十分な担体を含む。
【0130】
担体はポリマー微粒子と相互作用してポリマー微粒子表面を膨潤させてもよいが、個別のポリマー微粒子のままであり、これにより注射による投与を可能にする。しかし、組成物が投与されて担体が散逸し始めると、粒子は脱膨潤し始めるであろう。脱膨潤は粒子の連結を助けるであろう。
【0131】
担体とポリマー微粒子との相互作用がポリマー微粒子のガラス転移温度を変化させることもある。たとえば、相互作用はガラス転移温度を低下させることもある。担体とポリマー微粒子との相互作用がポリマー微粒子表面のガラス転移温度を変化させることもある。例えば、相互作用は、ポリマー微粒子の表面のガラス転移温度を低下させることもある。
【0132】
担体は、ポリマー微粒子をヒトまたは非ヒト動物に、例えば注射によって投与することを可能にするための潤滑剤として作用することができる。担体は、足場材料がシリンジから投与されるときに潤滑を提供することができる。担体は、シリンジから投与されるポリマー微粒子に対する剪断損傷を低下または防止するのに役立ち得る。
【0133】
足場材料中の担体対ポリマー微粒子の比は、少なくとも1:1であり得る。足場材料中の担体対ポリマー微粒子の比は、少なくとも1.5:1であり得る。足場材料中の担体対ポリマー微粒子の比は、少なくとも1.2:1であり得る。一実施形態では、足場材料中の担体対ポリマー微粒子の比は、0.7:1~2:1であり得る。
【0134】
担体はさらに緩衝剤を含んでよい。例えば、TECおよびTAのような可塑剤は酸性であってもよく、このような成分の酸性度を低下させるために緩衝剤を提供してもよい。任意の適切な緩衝液、例えばPBS、トリス緩衝液、または重炭酸ナトリウムを提供することができる。
【0135】
薬剤
薬剤または粉末化剤の粉末形態に関しては、粉末は乾燥粉末であってもよい。例えば、乾燥粉末は実質的に水分を含まない。あるいは、乾燥という用語は、0.5Aw未満、または0.3Aw未満、または0.1Aw未満の水分活性であり得る。
【0136】
粉末化剤は、結晶形、半結晶形または非晶質形であってもよい。一実施形態では、粉末化剤は結晶形であってもよい。
【0137】
一実施形態では、粉末化剤は、ポリマー微粒子の足場中に封入され、追加の薬剤がポリマー微粒子内に封入され得る。追加の薬剤は、任意の形態、例えば液体形態、例えば溶液または懸濁液、ペースト、ゲル、または粉末形態であってもよい。追加の薬剤は、粉末剤に対して異なる薬剤であってもよい。あるいは、追加の薬剤は、粉末剤と同じ薬剤であってもよいが、溶液または懸濁液、ゲルまたはペースト(すなわち、追加の薬剤は粉末形態でなくてもよい)のような異なる形態であってもよい。粉末形態、液体形態、ペースト形態またはゲル形態のような薬剤の形態への言及は、混合物またはブレンドへの添加時点での薬剤の状態を指してもよい(すなわち、続く使用(例えば、足場形成の後にin situ)での薬剤形態を意味することを意図するものではない)。
【0138】
追加の薬剤は、ポリマー微粒子の形成中に、例えばポリマー微粒子に押し出すポリマーに添加することによって、ポリマー微粒子中に提供されてもよい。
【0139】
一実施形態では、薬剤は、ポリマー微粒子の足場中に封入される粉末化剤としてのみ提供される。例えば、他の薬剤または薬剤形態は、例えば、ポリマー微粒子中には提供されていない。
【0140】
本明細書の本発明の他の態様および実施形態は、薬剤の放出のための足場材料中に薬剤を供給することによって実施され得るが、薬剤は粉末形態で添加される必要はない。したがって、本発明のいくつかの態様および実施形態は、足場材料中に非粉末形態で薬剤を提供してもよい。例えば、薬剤は担体中に可溶化され得る。それに加えてまたはこれに代えて、薬剤はポリマー微粒子中に提供/封入されてもよい。別の実施形態では、薬剤は担体に対して個別の液相として足場材料に提供されてもよい。
【0141】
薬剤は、治療的、予防的または診断的に活性な物質であってもよい。これは、任意の生物活性剤であってもよい。
【0142】
別の実施形態では、粉末化剤は、治療剤、予防剤または診断的に活性な物質であり得る第1の粉末化剤を増強または保護するために提供される非治療剤、例えば保護剤または第2剤であり得る。一実施形態では、第1の粉末化剤の機能の安定性を増強するために、第2の粉末化剤を提供することができる。粉末化剤は、シクロデキストリンを含んでよい。
【0143】
一実施形態では、粉末化剤はカルボキシメチルセルロース(CMC)を含んでもよい。足場硬化特性を変更するために、粉末化CMCの供給を提供することができる。
【0144】
送達のための薬剤は、薬物、細胞、シグナル伝達分子、たとえば成長因子または任意の他の好適な薬剤でもよい。たとえば、薬剤は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖、抗体、核酸、抗生物質、抗真菌薬、成長因子、栄養素、酵素、ホルモン、ステロイド、合成材料、接着分子、着色料/色素(同定のために用いてもよい)、放射性同位元素(分解のX線検出および/またはモニタリングのためのものでもよい)、および他の好適な構成物、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0145】
追加してもよい他の薬剤には、上皮成長因子、血小板由来成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子、インスリン様成長因子、神経成長因子、肝細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子および他の骨形成タンパク質、サイトカイン、たとえばインターフェロン、インターロイキン、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、エストロゲン、テストステロン、キナーゼ、ケモキナーゼ、グルコースまたは他の糖、アミノ酸、石灰化因子、ドーパミン、アミンリッチオリゴペプチド、たとえば接着タンパク質たとえばフィブロネクチンおよびラミニンに存在するヘパリン結合ドメイン、他のアミン、タモキシフェン、シスプラチン、ペプチドならびにある種のトキソイドを含むがこれらに限定されない。加えて、薬物(スタチンおよびNSAIDを含む)、ホルモン、酵素、栄養素または他の治療用の薬剤もしくは因子またはこれらの混合物を含ませてもよい。
【0146】
薬剤は、DNA、RNA、またはプラスミドなどの核酸を含んでよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、送達のための薬剤は、スタチン、たとえばシンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチンまたはロスバスタチンである。スタチンはシンバスタチンであってもよい。薬剤がスタチンである実施形態は、整形適応での処置、頭蓋顎顔面外科手術および歯学に特に好適である。
【0148】
薬剤がポリマー微粒子の一部である(すなわち封入されている)実施形態では、薬剤は微粒子の含有量の50%までであり得る。薬剤がポリマー微粒子の一部である(すなわち封入されている)別の実施形態では、薬剤は微粒子の含有量の40%までであり得る。薬剤がポリマー微粒子の一部である(すなわち封入されている)別の実施形態では、薬剤は微粒子の含有量の30%までであり得る。薬剤がポリマー微粒子の一部である(すなわち封入されている)別の実施形態では、薬剤は微粒子の含有量の20%までであり得る。薬剤がポリマー微粒子の一部である(すなわち封入されている)別の実施形態では、薬剤は微粒子の含有量の10%までであり得る。薬剤がポリマー微粒子の一部である(すなわち封入されている)別の実施形態では、薬剤は微粒子の含有量の10%~50%であり得る。薬剤がポリマー微粒子の一部である(すなわち封入されている)別の実施形態では、薬剤はポリマー微粒子の含有量の1%~50%であり得る。薬剤がポリマー微粒子の一部である(すなわち封入されている)別の実施形態では、薬剤はポリマー微粒子の含有量の0.1%~50%であり得る。薬剤がポリマー微粒子の一部である(すなわち封入されている)別の実施形態では、薬剤はポリマー微粒子の含有量の0.5%~50%であり得る。薬剤がポリマー微粒子の一部である(すなわち封入されている)別の実施形態では、薬剤はポリマー微粒子の含有量の0.1%~1%であり得る。薬剤がポリマー微粒子の一部である(すなわち封入されている)別の実施形態では、薬剤はポリマー微粒子の含有量の0.5%~10%であり得る。薬剤がポリマー微粒子の一部である(すなわち封入されている)別の実施形態では、薬剤はポリマー微粒子の含有量の0.1%~20%であり得る。パーセントはw/wであってもよい。
【0149】
薬剤が担体中に提供される実施形態では、薬剤は担体の含有量の75%までであり得る。薬剤が担体中に提供される別の実施形態では、薬剤は担体の含有量の60%までであり得る。薬剤が担体中に提供される別の実施形態では、薬剤は担体の含有量の50%までであり得る。薬剤が担体中に提供される別の実施形態では、薬剤は担体の含有量の40%までであり得る。薬剤が担体中に提供される別の実施形態では、薬剤は担体の含有量の30%までであり得る。薬剤が担体中に提供される別の実施形態では、薬剤は担体の含有量の20%までであり得る。薬剤が担体中に提供される別の実施形態では、薬剤は担体の含有量の10%までであり得る。薬剤が担体中に提供される別の実施形態では、薬剤は、担体の含有量の10%~75%、または担体の含有量の20%~50%であり得る。パーセントはw/vであってもよい。
【0150】
薬剤が粉末形態であり、硬化前にポリマー微粒子と混合される実施形態において、薬剤は、足場材料の含有量の75%までであり得る。薬剤が粉末形態であり、硬化前にポリマー微粒子と混合される別の実施形態において、薬剤は、足場材料の含有量の60%までであり得る。薬剤が粉末形態であり、硬化前にポリマー微粒子と混合される別の実施形態において、薬剤は、足場材料の含有量の50%までであり得る。薬剤が粉末形態であり、硬化前にポリマー微粒子と混合される別の実施形態において、薬剤は、足場材料の含有量の40%までであり得る。薬剤が粉末形態であり、硬化前にポリマー微粒子と混合される別の実施形態において、薬剤は、足場材料の含有量の30%までであり得る。薬剤が粉末形態であり、硬化前にポリマー微粒子と混合される別の実施形態において、薬剤は、足場材料の含有量の20%までであり得る。薬剤が粉末形態であり、硬化前にポリマー微粒子と混合される別の実施形態では、薬剤は、足場材料の含有量の10%~75%、または足場材料の含有量の20%~50%、あるいは足場材料の含有量の20%~30%であり得る。
【0151】
薬剤放出は制御され、すなわち、薬剤の全てが1回に大用量で放出され得るわけではない。製造された足場は、担体からの薬剤放出の動態が制御されることを可能にする。放出速度は、足場の細孔のサイズおよび/または数、および/または足場の分解速度を制御することによって制御することができる。制御し得る他の因子は、担体に含まれるいずれかの懸濁化剤の濃度、組成物の粘度または生理化学的特性、および担体の選択である。
【0152】
薬剤は、細孔を通した薬剤の拡散;多孔度の増加および薬剤を運ぶ流体の流出改善をもたらす足場の分解;ならびにポリマー微粒子からの薬剤の物理的放出、のうち1種以上によって放出されてもよい。足場における細孔のサイズおよび/または数、および/または足場の分解速度が、所望の放出速度を達成するような出発材料の適切な選択によって容易に選択されうることを理解することは、当業者の能力の範囲内である。
【0153】
足場からの薬剤の拡散は、濃度勾配によって駆動される拡散および足場を通り抜ける体液の自然な流れにより起こり得る。
【0154】
薬剤は、所望の局所的または全身性の生理的または薬理学的効果を有するのに有効な量で放出され得る。
【0155】
足場は、ある時間、例えば少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、または少なくとも約24時間薬剤の放出を持続させることができる。一実施形態では、持続放出は少なくとも48時間にわたり得る。別の実施形態では、持続放出は、少なくとも1週間にわたり得る。別の実施形態では、持続放出は、少なくとも10日間にわたり得る。
【0156】
薬剤の送達は、足場から足場を取り巻く環境、たとえば周囲の組織へ薬剤が放出され得ることを意味する。
【0157】
形成された足場は、足場からの薬剤の実質的にゼロ次または一次の放出速度を可能にし得る。ゼロ次放出速度は、規定時間にわたる薬剤の一定放出である。一次放出速度は、「バースト放出」と見なすこともできる。
【0158】
一実施形態では、初期1日目バースト放出は総内包量の約25~33%未満(約20%未満、例えば約10%未満、あるいは約5%未満など)である。そして、この初期バースト後の放出は、1日当たり1~2%約14日間であってもよい(約0.5~2mcg/日に等しくてもよい)。薬物の放出は、少なくとも14日間続いてもよい。薬物の放出は、少なくとも20日、30日、40日または50日間続いてもよい。いくつかの実施形態では、放出は約14~56日間続く。いくつかの実施形態では、放出は56日間を超えて続く。
【0159】
他の実施形態では、放出動態は、初期放出または長期放出のいずれかを効果的に増加させ、あらゆる治療遅滞期を回避するのに役立ち得る、混合分子量PLGAポリマーの使用によって改質することができる(European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics Volume 50、Issue 2、2000年9月、263-270頁)。
【0160】
他の実施形態では、他の放出調整剤を用いて放出動態を調整してもよい。例えば、足場の細孔内に存在するカルボキシメチル(methy)セルロース含有液相の粘度を調整してもよい。
【0161】
本発明の足場材料とともにいかなる動物細胞を用いることもできる。用いてもよい細胞の例として、骨細胞、骨細胞前駆細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、皮膚細胞、内皮細胞、腸細胞、腸管細胞、心血管細胞、心筋細胞、コンドロサイト細胞、肺細胞、胎盤細胞、羊水細胞、絨毛性細胞、胎児細胞または幹細胞が挙げられる。幹細胞が使用される場合、好ましくは非胚性幹細胞が使用される。細胞は、足場形成の部位への送達のために含まれていてもよく、または、たとえば、足場のコロニー形成を促進するために、足場に保持されるよう含まれることを意図されていてもよい。
【0162】
一実施形態において、生存細胞は、例えば、足場材料の形成/硬化の前に、足場材料内に提供される。例えば、硬化前に生存細胞を足場材料に添加してもよい。
【0163】
一実施形態では、細胞接着を増強するために、細胞を導入する前にポリマー微粒子の表面を処理することができる。表面処理は、ポリマー微粒子の表面を、細胞接着を増強または促進することができる薬剤でコーティングするためのコーティング技術を含み得る。それに加えて、またはこれに代えて、表面処理は、ポリマー微粒子の表面に対する物理的または化学的修飾を含んでもよい。表面コーティングにおいて、ポリマー微粒子は、表面電荷、親水性および/または受容体結合部分を変えることによって、それらの生物学的相互作用を変化させる材料でコーティングすることができる。そのような例として、化学プラズマ、ペプチドまたは炭水化物、フィブロネクチンまたはビトロネクチンまたはそのフラグメント、ポリ-L-オルニチン、ポリリシンおよび/またはポリアリルアミンなどの細胞外マトリックス成分が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、表面の物理的/化学的修飾において、ポリマー微粒子表面は、NaOH溶液のようなアルカリ溶液で処理することによって修飾することができる。一実施形態では、表面の物理的/化学的修飾において、ポリマー微粒子表面を、アルコール、酸または塩基で処理することによって粗くすることができる。別の実施形態では、表面の物理的/化学的修飾において、ポリマー微粒子表面を、水-アルコール性アルカリ溶液で処理することにより、より親水性でより粗くすることができる。
【0164】
硬化
一実施形態では、足場を形成するための足場材料の硬化はin situで行われる。例えば、硬化は投与後、例えば骨欠損内で行うことができる。あるいは、硬化は、例えば体の外側に足場を提供するために、ex situで提供されてもよい。一実施形態では、足場材料の硬化は、約37℃で足場を形成する。一実施形態では、足場材料の硬化は、約35℃以下で足場を形成する。足場材料の硬化は、湿度の高い環境、例えば100%の湿度、あるいは少なくとも90%の湿度で足場を形成し得る。足場を形成する足場材料の硬化は、溶液中に沈めている間に行うことができる。本明細書における硬化への言及は、焼結を指す場合もある。
【0165】
その他の態様
本発明の別の態様によれば、足場材料を形成する方法が提供され、方法は:
ポリマー微粒子を提供することと;
ポリマー微粒子を液体担体中に懸濁させポリマー微粒子懸濁液である足場材料を形成することであって、液体担体は可塑剤を含むことと;
任意に、ポリマー微粒子懸濁液がポリマー微粒子の固体足場になるように、ポリマー微粒子懸濁液を硬化することと、を含む。
【0166】
有利には、本明細書の発明の方法は、当業者が適切な足場特性または硬化特性を選択することを可能にし、例えば、TECのような可塑剤を液体担体に使用する場合、PLGA/セラミックブレンドから製造された粒子を15分以内に焼結して足場を形成することが可能である。さらに有利には、非常に低い濃度の可塑剤を本発明の方法にしたがって使用することができる。TECのような可塑剤の濃度を選択することによって、足場材料の硬化特性を制御することが可能である。
【0167】
一実施形態では、担体中のTECまたはTAの濃度は、0.79%~6%w/vで有り得る。一実施形態では、担体中のTECまたはTAの濃度は、約0.79%w/vで有り得る。一実施形態では、担体中のTECまたはTAの濃度は、1%または1%w/v未満であり得る。一実施形態では、担体中のTECまたはTAの濃度は、6%w/v未満で有り得る。一実施形態では、担体中のTECまたはTAの濃度は、5%w/v未満で有り得る。一実施形態では、担体中のTECまたはTAの濃度は、2~5%w/vで有り得る。一実施形態では、担体中のTECまたはTAの濃度は、約2.5%または3%w/vで有り得る。一実施形態では、担体中のTECまたはTAの濃度は、約4%または5%w/vで有り得る。
【0168】
一実施形態では、担体中の安息香酸の濃度は、0.79%~6%w/vで有り得る。一実施形態では、担体中の安息香酸の濃度は約0.79%w/vで有り得る。一実施形態では、担体中の安息香酸の濃度は、1%w/vまたは1%w/v未満であり得る。一実施形態では、担体中の安息香酸の濃度は、6%w/v未満で有り得る。一実施形態では、担体中の安息香酸の濃度は、5%w/v未満で有り得る。一実施形態では、担体中の安息香酸の濃度は2~5%w/vで有り得る。一実施形態では、担体中の安息香酸の濃度は、約2.5%または3%で有り得る。一実施形態では、担体中の安息香酸の濃度は、約4%または5%w/vで有り得る。
【0169】
一実施形態では、担体中の可塑剤は第1の可塑剤および第2の可塑剤であってよく、担体および/またはポリマー微粒子中に提供され、第1および第2の可塑剤は異なる。第2の担体は、PEG、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸、およびトリアセチンのいずれか1つから選択することができ、第1および第2の可塑剤は異なる。
【0170】
一実施形態では、ポリマー微粒子はPEGを含まなくてもよい。ポリマー微粒子は実質的にPEGを含まなくてもよい。一実施形態では、ポリマー微粒子は、0.5%未満のPEG、または0.2%未満のPEG、または0.1%未満のPEGを含み得る。
【0171】
本発明の別の態様によれば、足場材料を形成する方法が提供され、方法は:
ポリマー微粒子を提供することと;
ポリマー微粒子を液体担体中に懸濁させポリマー微粒子懸濁液である足場材料を形成することであって、足場材料はポリマー微粒子および/または液体担体中に第1の可塑剤を含み、第2の可塑剤を液体担体中に含むことであり、
第1の可塑剤は、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸、トリアセチン、NMP、DMSO、およびPEGのうちのいずれか1つから選択され;第2の可塑剤は、PEG、DMSO、NMP、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸、およびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択され、第1および第2の可塑剤は異なることと;
任意にポリマー微粒子懸濁液がポリマー微粒子の固体足場になるように、ポリマー微粒子懸濁液を硬化することと、を含む。
【0172】
一実施形態では、第1の可塑剤はクエン酸トリエチルであり、第2の可塑剤はエタノールである。別の実施形態では、第1の可塑剤はトリアセチンであり、第2の可塑剤はエタノールである。一実施形態では、第1の可塑剤はクエン酸トリエチルまたはトリアセチンであり、第2の可塑剤はポリマー微粒子中のPEGである。
【0173】
一実施形態では、第1の可塑剤はTEC(クエン酸トリエチル)を含み、第2の可塑剤はPEG、DMSO、NMP、エタノール、安息香酸およびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択される。別の実施形態では、第1の可塑剤はエタノールを含み、第2の可塑剤はPEG、DMSO、NMP、TEC(クエン酸トリエチル)、安息香酸およびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択される。別の実施形態では、第1の可塑剤は安息香酸を含み、第2の可塑剤はPEG、DMSO、NMP、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノールおよびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択される。別の実施形態では、第1の可塑剤はトリアセチンを含み、第2の可塑剤はPEG、DMSO、NMP、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノールおよび安息香酸のいずれか1つから選択される。別の実施形態では、第1の可塑剤はNMPを含み、第2の可塑剤はPEG、DMSO、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸およびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択される。別の実施形態では、第1の可塑剤はDMSOを含み、第2の可塑剤はPEG、NMP、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸およびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択される。別の実施形態では、第1の可塑剤はPEGを含み、第2の可塑剤はDMSO、NMP、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸およびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択される。
【0174】
一実施形態では、第2の可塑剤はTEC(クエン酸トリエチル)を含み、第1の可塑剤はPEG、DMSO、NMP、エタノール、安息香酸およびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択される。別の実施形態では、第2の可塑剤はエタノールを含み、第1の可塑剤はPEG、DMSO、NMP、TEC(クエン酸トリエチル)、安息香酸およびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択される。別の実施形態では、第2の可塑剤は安息香酸を含み、第1の可塑剤はPEG、DMSO、NMP、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノールおよびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択される。別の実施形態では、第2の可塑剤はトリアセチンを含み、第1の可塑剤はPEG、DMSO、NMP、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノールおよび安息香酸のいずれか1つから選択される。別の実施形態では、第2の可塑剤はNMPを含み、第1の可塑剤はPEG、DMSO、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸およびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択される。別の実施形態では、第2の可塑剤はDMSOを含み、第1の可塑剤はPEG、NMP、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸およびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択される。別の実施形態では、第2の可塑剤はPEGを含み、第1の可塑剤はDMSO、NMP、TEC(クエン酸トリエチル)、エタノール、安息香酸およびトリアセチン(TA)のいずれか1つから選択される。
【0175】
第1および第2の可塑剤が提供される実施形態では、ポリマー微粒子はPEGを含まなくてもよい。第1および第2の可塑剤が提供される実施形態では、ポリマー微粒子は実質的にPEGを含まなくてもよい。第1および第2の可塑剤が提供される別の実施形態では、ポリマー微粒子は、0.5%w/w未満のPEG、または0.2%w/w未満のPEG、または0.1%w/w未満のPEGを含み得る。
【0176】
本発明による2つ以上の可塑剤を提供することにより、足場材料の固体足場へのより著しい硬化制御が可能になる。例えば、足場材料中の担体対ポリマー微粒子の比は、足場硬化時間を不注意に長くすることもなく増加させることができる。したがって、本発明は、高い担体対ポリマー微粒子比を可能にする。一実施形態では、担体対ポリマー微粒子比は、少なくとも0.7:1v/wである。別の実施形態では、担体対ポリマー微粒子比は、少なくとも1:1v/wである。別の実施形態では、担体対ポリマー微粒子比は、少なくとも1.2:1v/wである。別の実施形態では、担体対ポリマー微粒子比は、少なくとも1.5:1v/wである。別の実施形態では、担体対ポリマー微粒子比は、少なくとも1.8:1v/wである。別の実施形態では、担体対ポリマー微粒子比は少なくとも2:1v/wである。別の実施形態では、担体対ポリマー微粒子比は、約1.2:1v/w~約2:1v/wの間である。
【0177】
有利には、本発明の高い担体対ポリマー微粒子比は、硬化時間を長くすることなく、より低い粘度の足場材料を提供することを可能にし得る。本発明において達成可能な、より高い担体対ポリマーの粒子比は、足場材料を硬化前により流動性または可鍛性にすることを可能にする。有利には、足場材料は、足場材料のより低い粘度のために、硬化前に注入することがより容易であり得る。さらに、足場材料は、修復すべき骨欠損のような形状をより形成可能であり得る。より高い担体対ポリマー微粒子比はまた、薄膜/フィルム足場層が必要とされる用途のための足場材料の薄膜またはフィルムの形成を助ける。したがって、低粘度の足場材料は、足場に硬化する前にフィルムに広げてもよい。
【0178】
本発明の別の態様によれば、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子成分を含む足場材料を形成する方法が提供され、方法は:
ポリマーと天然ポリマーまたは非ポリマー粒子とをブレンドすることと;
ブレンドから天然ポリマーまたは非ポリマー粒子がその中に封入されたポリマー微粒子を形成することと;
任意に、ポリマー微粒子を液体担体中に懸濁させポリマー微粒子懸濁液を形成することと;
任意にさらに、ポリマー微粒子懸濁液がポリマー微粒子の固体足場になるように、ポリマー微粒子懸濁液を硬化することと、を含む。
【0179】
ポリマー微粒子のポリマー中の天然ポリマーまたは非ポリマー粒子の封入は、ポリマーが天然ポリマーまたは非ポリマー粒子中、および周囲に分散されることを含むと理解される(例えば、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子上のポリマー表面コーティングだけではなく)。例えば、ポリマー微粒子は、ポリマー中に完全に封入された天然ポリマーまたは非ポリマー粒子、およびポリマー微粒子の表面に露出した天然ポリマーまたは非ポリマー粒子を含むことができる。例えば、ポリマー微粒子は、複数の天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子が内部に封入された離散粒子であってもよい。
【0180】
一実施形態では、セラミック粒子のような非ポリマー粒子が提供される。
【0181】
一実施形態では、ポリマーを天然ポリマーまたは非ポリマー粒子とブレンドすることは、ポリマーを天然ポリマーまたは非ポリマー粒子と乾式混合する工程を含み得る。ポリマーと天然ポリマーまたは非ポリマー粒子との乾燥混合物をホットメルト押出しし、押出物をペレット化して天然ポリマーまたは非ポリマー粒子が内部に封入されたポリマー微粒子を形成することができる。
【0182】
ポリマーと天然ポリマー粒子との乾燥混合物は、それらを物理的に混合することによって一緒にブレンドすることができる。ポリマーと天然ポリマーまたは非ポリマー粒子との乾燥混合物は、それらを溶液中で混合し、噴霧乾燥することによって一緒にブレンドすることができる。ポリマーと天然ポリマーまたは非ポリマー粒子との乾燥混合物は、ポリマーを天然ポリマーまたは非ポリマー粒子に噴霧コーティングすることによって一緒にブレンドすることができる。ポリマーと天然ポリマーまたは非ポリマー粒子との乾燥混合物は、それらを有機溶媒中で混合し、無機相を有するエマルションを形成することによって一緒にブレンドすることができる。ポリマーと天然ポリマーまたは非ポリマー粒子との乾燥混合物は、それらを有機溶媒中で混合し、プリル化することによって一緒にブレンドすることができる。
【0183】
封入された天然ポリマーまたは非ポリマー粒子を含むポリマー微粒子は、それらの最長寸法にわたって測定すると、平均として約300~約400ミクロンのサイズであってよい。天然ポリマーまたは非ポリマー粒子は、ポリマー微粒子とサイズが実質的に等しいかまたは類似していてもよく、例えば、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子は、それらの最長寸法にわたって測定すると、平均で約300~約400ミクロンのサイズであってよい。あるいは、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子は、それらの最長寸法にわたって測定すると、平均で約20ミクロン~約500ミクロンのサイズであってもよい。
【0184】
より小さい粒子が必要とされる場合、凍結粉砕のさらなる工程が提供され得る。したがって、本方法は、ポリマー微粒子を凍結粉砕し、より小さなポリマー微粒子を形成することをさらに含んでもよい。より小さいポリマー微粒子は、100μm以下であり得る。別の実施形態では、より小さいポリマー微粒子は、50μm以下であり得る。例えば、より小さいポリマー微粒子は、約20μm~約100μm、あるいは約20μm~約50μm、あるいは約20μm~約30μmであり得る。ポリマー粒子のサイズは、ポリマー微粒子の集団の平均サイズを指してもよい。
【0185】
足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を1%~55%含むことができる。別の実施形態では、足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を1%~50%含むことができる。別の実施形態では、足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を1%~55%含むことができる。別の実施形態では、足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を10%~50%含むことができる。別の実施形態では、足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を20%~50%含むことができる。別の実施形態では、足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を30%~50%含むことができる。別の実施形態では、足場材料は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を40%~50%含むことができる。パーセントはw/wであってもよい。
【0186】
一実施形態では、ポリマー微粒子は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を1%~55%(w/w)含むことができる。~あるいは、ポリマー微粒子は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を20%~55%(w/w)含むことができる。あるいは、ポリマー微粒子は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を20%~50%(w/w)含むことができる。あるいは、ポリマー微粒子は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を30%~50%(w/w)含むことができる。あるいは、ポリマー微粒子は、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を40%~50%(w/w)含むことができる。
【0187】
天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を含む足場材料は、担体中に40%w/v未満の可塑剤を含むことができる。別の実施形態では、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を含む足場材料は、担体中に38%w/v未満の可塑剤を含むことができる。別の実施形態では、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を含む足場材料は、担体中に35%w/v未満の可塑剤を含むことができる。別の実施形態では、天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を含む足場材料は、担体中に30%w/v未満の可塑剤を含むことができる。あるいは、可塑剤含有量は、担体中で20%、15%、10%または5%w/v未満であってもよい。天然ポリマーまたはセラミックなどの非ポリマー粒子を含む足場材料は、担体中に約1%w/vの可塑剤を含むことができる。
【0188】
天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、微粒子であってもよい。非ポリマー粒子は、セラミックを含むかまたはセラミックからなることができる。セラミックは、硫酸カルシウム(CS)またはβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)を含むかまたはそれからなることができる。別の実施形態では、天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、結晶化糖分子、例えば、マンニトールの結晶化粒子を含み得る。グルコースのような他の糖粒子が提供されてもよい。一実施形態では、天然ポリマー粒子または非ポリマー粒子は、抗酸化剤を含み得る。
【0189】
可塑剤はPEGを含むことができる。ホットメルト押出のための混合物は、PEGを含むことができる。
【0190】
天然ポリマー粒子および非ポリマー粒子の両方は、ポリマーをポリマー微粒子中に封入するために提供されてもよい。
【0191】
天然ポリマーまたは非ポリマー粒子とブレンドするためのポリマーは、混合物の少なくとも30%を構成することができる。別の実施形態では、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子とブレンドするためのポリマーは、混合物の少なくとも40%を構成することができる。別の実施形態では、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子とブレンドするためのポリマーは、混合物の少なくとも45%を構成することができる。別の実施形態では、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子とブレンドするためのポリマーは、混合物の少なくとも48%または49%を構成することができる。別の実施形態では、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子とブレンドするためのポリマーは、混合物の少なくとも50%を構成することができる。別の実施形態では、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子とブレンドするためのポリマーは、混合物の少なくとも60%、70%、または80%を構成することができる。別の実施形態では、天然ポリマーまたは非ポリマー粒子とブレンドするためのポリマーは、混合物の少なくとも90%を構成することができる。
【0192】
一実施形態では、ポリマー微粒子は、約10%~約50%の天然ポリマーまたは非ポリマー粒子;約40%~85%のポリマー;および約1%~約10%の可塑剤を含んでよく、総量は100%を超えない。
【0193】
足場形成特性を変更する方法/システム
有利には、ある範囲の濃度の担体中の可塑剤の使用は、好ましい硬化温度または好ましい硬化時間が達成され得るように、本発明による足場材料の足場硬化特性を制御することができる。
【0194】
本発明の別の態様によれば、5分未満で硬化することができる足場材料を形成する方法が提供され、足場材料は本明細書の発明の方法のいずれかによって提供され、可塑剤は担体中に約4%~約6%w/vの範囲で提供される。
【0195】
本発明の別の態様によれば、約5~約15分の足場硬化時間を有する足場材料を形成する方法が提供され、足場材料は本明細書の発明の方法のいずれかによって提供され、可塑剤は担体中に約2.5%~約3.5%w/vの範囲で提供される。
【0196】
本発明の別の態様によれば、60分超の足場硬化時間を有する足場材料を形成する方法が提供され、足場材料は本明細書の発明の方法のいずれかによって提供され、可塑剤はTAまたはTECであり、担体中に約0.5%~約1%w/vの範囲で提供される。
【0197】
本発明の別の態様によれば、35℃未満の足場硬化温度を有する足場材料を形成する方法が提供され、足場材料は本明細書の発明の方法のいずれかによって提供され、可塑剤はTAまたはTECであり、担体中に約3%~約5%w/vの範囲で提供され;
あるいは2つの可塑剤が提供され、担体中に少なくとも1つの可塑剤を有し、可塑剤の総含有量が4%または5%w/vを超えなくてもよく、1つの可塑剤はTAまたはTECであり任意に、TAまたはTECは担体の最大2%w/vで提供される。
【0198】
本発明の別の態様によれば、35℃超、たとえば約37℃の足場硬化温度を有する足場材料を形成する方法が提供され、足場材料は本明細書の発明の方法のいずれかによって提供され、可塑剤はTAまたはTECであり、約0.5%~約1%w/vの範囲で提供される。
【0199】
本発明の別の態様によれば、ポリマー微粒子足場形成特性を選択するためのシステムであって:
(a)所望の足場硬化温度を選択し、適切な足場硬化温度を提供するように構成された、本明細書の発明による足場材料を形成する方法を実施することと;または
(b)所望の足場硬化時間を選択し、適切な足場硬化時間を提供するように構成された、本明細書の発明による足場材料を形成する方法を実施することと;または
(c)足場を硬化する前に足場材料の所望のヤング弾性率を選択し、足場材料の適切なヤング弾性率を提供するように構成された、本明細書の発明による足場材料を形成する方法を実施することと、を含むシステムが提供される。
【0200】
本発明の別の態様によれば、1次薬剤放出動態を有する足場を形成するのに適した足場材料を形成する方法が提供され、足場材料は、本明細書の発明の方法によって提供され、薬剤は、ポリマーとブレンドして足場材料のポリマー微粒子を形成する前に粉末として提供される。
【0201】
本明細書の発明の態様による足場を形成する方法は、足場材料を組織の修復または置換のための部位に投与/塗布することによって足場を硬化する工程を含み得る。組織の修復または置換のための部位は、in situでの組織、患者の体内での、またはin vitro/ex situでの組織中であってもよい。本出願は、修復または置換のための部位への移植、注射、または成形など、本明細書に記載の方法によって行うことができる。
【0202】
組成物-足場材料プレ足場形成
さらに別の態様によれば、本発明は、本発明のいずれかの方法によって製造された足場材料を提供する。
【0203】
本発明の別の態様によれば、薬剤の制御放出のための足場を形成するための足場材料が提供され、足場材料は:
ポリマー微粒子と;
薬剤が粉末形態であり、ポリマー微粒子中および間に封入された薬剤と;
ポリマー微粒子を懸濁する液体担体と、を含む。
本発明の別の態様によれば、足場を形成するための足場材料が提供され、足場材料は:
ポリマー微粒子と;
天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子(例えばセラミック)であって、ポリマー微粒子内に封入された天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子と;任意に
ポリマー微粒子を懸濁する液体担体と、を含む。
【0204】
一実施形態において、足場または足場材料は、骨修復に適していてもよい。
【0205】
本発明の別の態様によれば、足場を形成するための足場材料が提供され、足場材料は:
ポリマー微粒子と;
ポリマー微粒子を懸濁させる液体担体であって、可塑剤を含む液体担体と;を含み、任意に第2の可塑剤は、担体および/またはポリマー微粒子中に提供される。
【0206】
足場(ポストフォーメーション)
さらに別の態様によれば、本発明は、本発明の任意の方法によって製造された足場を提供する。
【0207】
本発明の別の態様によれば、薬剤の制御放出のための足場が提供され、足場は:
架橋/相互連結されたポリマー微粒子と;
薬剤が粉末形態であり、ポリマー微粒子中および間に封入された薬剤と、を含む。
【0208】
本発明の別の態様によれば、骨修復のための足場が提供され、足場は:
架橋/相互連結されたポリマー微粒子と;
天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子(例えばセラミック)を含み、天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子はポリマー微粒子内に封入される。
【0209】
さらなる態様では、本発明は、対象に薬剤を送達する方法であって、薬剤が足場材料内のポリマー微粒子内に配置される、足場材料を提供することと;足場材料を対象に投与することと;足場材料を対象中で固化/自己組織化させ足場を形成することと;足場材料内に含まれる薬剤を対象内の投与部位に放出させることと、を含む方法を提供する。
【0210】
さらなる態様では、本発明は、対象に薬剤を送達する方法であって、薬剤が足場材料内のポリマー微粒子中に配置される、足場材料を提供することと;足場材料を対象に投与することと;足場材料を対象中で固化/自己組織化させ足場を形成することと;足場材料内に含まれる薬剤を対象内の投与部位に放出させることと、を含む方法を提供する。
【0211】
この方法は、in vivoまたはin vitroで組織上で実施することができる。
【0212】
薬剤(ポリマー微粒子内に封入された)は、任意に、対象に投与する直前に足場材料に添加されてもよい。
【0213】
一実施形態では、工程d)において、薬剤の放出は少なくとも12時間にわたって持続する。
【0214】
足場材料または足場は、神経変性障害(たとえば、脳卒中後、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病)、骨関係の障害(変形性関節症、脊椎円板萎縮症、充填を必要とする骨腔、再生または修復を必要とする骨折を含む)、熱傷、がん、肝臓障害(肝萎縮症を含む)、腎臓障害(腎臓の萎縮症を含む)、膀胱、尿管または尿道の障害(再構築を必要とする損傷した尿管または損傷した膀胱、膀胱または子宮のヘルニアを含む)、真性糖尿病、IVF処置を必要とする不妊症、筋消耗障害(筋ジストロフィーを含む)、心障害(たとえば、心筋梗塞後の損傷した心臓組織、うっ血性心疾患)、眼障害(たとえば、損傷または罹患した角膜)、再生または修復を必要とする損傷した脈管構造、潰瘍、および再生または再構築を必要とする損傷した組織(再生または再構築を必要とする損傷した臓器、および再生または再構築を必要とする損傷した神経を含む)から選択される状態の処置または予防の方法に使用されてよい。
【0215】
いくつかの実施形態では、処置は歯科的骨修復、たとえば歯隆線回復である。他の実施形態では、処置は癒合不能骨折の修復である。他の実施形態では、処置は脊椎固定術である。
【0216】
歯科的骨移植置換は、追加的な骨支持を必要とするインプラント手技において主に用いられる。骨再生は、先進的な製品によって強化され、それがなされなければこのような処置を受けることができない患者において歯科的骨移植手技が行われるようにする。全歯科インプラント症例のおよそ40%において、適切なインプラント同化を保証するのに十分な骨が存在せず、骨移植置換が必要とされる。抜歯は歯槽骨の増悪をもたらし、残存隆起再吸収(RRR)と呼ばれる慢性進行性状態をもたらすことがある。標準骨移植オプションは、二次病変、免疫学的拒絶および長期成績不良をもたらす。非免疫原性送達システムから放出される骨誘導性因子が解決策となりうる。
【0217】
移植技法は、インプラントの候補患者群を拡大して、重度の骨再吸収のため歯科インプラント術には不適な候補であった全歯欠損患者からなる、かなりの規模の集団を含めることが可能となっている。
【0218】
骨折後の骨治癒に積極的に影響を与え、その後骨癒合に必要な時間を短縮する処置は非常に重要である。生きた組織を再露出させ、骨誘導性移植材料を挿入するためには、癒合不能における外科的介入が必要である。自家移植または同種異系移植材料を使用する場合、この処置は70~80%の症例で成功し、患者1人当たり推定14,000ドルの費用がかかる。したがって、より有効な移植材料に大きな関心が寄せられている。
【0219】
脊椎固定術は、椎骨異常たとえば脊柱弯曲症(脊柱側弯症または脊柱後弯症)、椎間板ヘルニア(椎間板切除術後の)または骨折を外科的に処置するために用いられる。この手技は、移植材料(椎弓根スクリュー、プレートまたはケージありまたはなし)または椎骨を一体に融合するための他の装置を用いる。多くの患者は、自家移植収集時から手術後最大2年間ドナー部位疼痛を訴える。これらの合併症は、代替品の探索とその後の使用を促進した。本発明は、本明細書に記載のシステム、組成物および方法の形態のそのような代替物を提供する。
【0220】
本発明のいずれかの方法および/または組成物によって形成された足場または足場材料を用いて、損傷した組織を処置してもよい。特に、足場または足場材料を使用して、損傷した組織における細胞の再成長を促すまたはこれを可能にしてもよい。したがって、本発明は、損傷した組織の再生または再構築を含む、組織損傷の処置に用いてもよい。
【0221】
本発明の足場材料を用いて、疾患または医学的状態の処置、たとえば、それらに限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、変形性関節症、熱傷、脊椎円板萎縮症、がん、肝萎縮症および他の肝臓障害、骨腔充填、骨折の再生または修復、真性糖尿病、尿管または膀胱再構築、膀胱または子宮のヘルニア、IVF処置、筋消耗障害、腎臓の萎縮症、臓器再構築ならびに美容外科手術に使用される足場を製造してもよい。
【0222】
本発明の別の態様によれば、本発明による足場または足場材料の投与を含む処置方法が提供される。
【0223】
さらに別の態様によれば、本発明は、対象、たとえば哺乳類生物を処置して、所望の局所的な生理的または薬理学的効果を得る方法であって、本発明に係る足場材料を、そのような処置を必要としている対象(たとえば生物)における部位に投与することを含む方法を提供する。好ましくは、この方法は、足場から足場形成部位周囲の区域に薬剤を送達する。
【0224】
さらなる態様によれば、本発明は、組織再生および/または組織損傷の処置における注射可能な足場材料としての、本発明に係る足場材料の使用を提供する。
【0225】
本発明の製品は、神経変性障害(たとえば、脳卒中後、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病)、骨関係の障害(変形性関節症、脊椎円板萎縮症、充填を必要とする骨腔、再生または修復を必要とする骨折を含む)、熱傷、がん、肝臓障害(肝萎縮症を含む)、腎臓障害(腎臓の萎縮症を含む)、膀胱、尿管または尿道の障害(再構築を必要とする損傷した尿管または損傷した膀胱、膀胱または子宮のヘルニアを含む)、真性糖尿病、IVF処置を必要とする不妊症、筋消耗障害(筋ジストロフィーを含む)、心障害(たとえば心筋梗塞後の損傷した心臓組織、うっ血性心疾患)、眼障害(たとえば損傷または罹患した角膜)、再生または修復を必要とする損傷した脈管構造、潰瘍および再生または再構築を必要とする損傷した組織(再生または再構築を必要とする損傷した臓器および再生または再構築を必要とする損傷した神経を含む)から選択される状態の処置または予防のために使用してもよい。
【0226】
別の態様によれば、本発明は、標的への薬剤の送達に使用するためのキットであって:
ポリマー微粒子と;
粉末化剤と;
担体溶液と;任意に
ポリマー微粒子、粉末化剤および担体を混合するための説明書、を含むキットを提供する。
【0227】
ポリマー微粒子および粉末化剤は、プレ混合されていてもよい。
【0228】
別の態様によれば、本発明は、足場を形成するのに使用するためのキットであって:
ポリマー微粒子と;
天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子と;
担体溶液と;任意に
ポリマー微粒子、天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子、および担体を混合するための説明書を含むキットを提供する。
【0229】
別の態様によれば、本発明は、足場を形成するために使用するキットであって:
ポリマー微粒子と;
可塑剤を含む担体溶液と;任意に第2の可塑剤を含むポリマー微粒子および/または担体;任意にさらにポリマー微粒子、粉末化剤、および担体を混合するための説明書を含むキットを提供する。
【0230】
ポリマー微粒子および粉末化剤は、プレ混合されていてもよい。別の実施形態では、天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子、ポリマー微粒子および粉末化剤はプレ混合されていてもよい。別の実施形態では、天然ポリマー粒子および/または非ポリマー粒子、ポリマー微粒子、担体および粉末化剤はプレ混合されていてもよい。
【0231】
可塑剤は、担体と混合するために個別に提供されてもよい。
【0232】
キットは、足場材料の注射に使用されるシリンジを含んでいてもよい。キットは、足場材料と混合するための細胞および/または活性剤をさらに含み得る。キットは、冷蔵庫または室温で貯蔵することができる。
【0233】
本明細書では、w/vであるパーセントへの言及は、必要に応じてあるいはv/vであってもよい。
【0234】
当業者であれば、本発明の第1の態様または任意の態様または実施形態の任意の特徴を本発明の全ての態様に適用できることを理解するであろう。
【0235】
ここで、本発明の実施形態を例としてのみ、以下の実施例を参照して説明する。
【0236】
実施例
1.発明の概要
本明細書は、異なる時間および異なる温度で硬化することができ、単独で、または薬物、成長因子、遺伝子もしくは細胞と組み合わせて使用するスマートペーストの開発に関する研究を議論する。本実施例では、これらのペーストは、2つの主成分、PLGAまたはPLGA/セラミック粒子および液体担体によって製造された。
【0237】
調べたセラミックは、硫酸カルシウム(CS)およびβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)である。それらは、in vivoで骨形成を誘導し、潜在的な最終製品の全体的なコストを低減するように作用することが以前に示されている。したがって、この適応にセラミックを含めることができる場合、最終製品の特性にどのように影響するかについて調べた。
【0238】
本発明は、2つの異なる可塑剤(TECおよびEtOH)およびそれらの異なる濃度の液体担体を使用することによって前記ペーストの硬化を制御する方法を記載する。それらは、異なる組成およびサイズの粒子で試験されている。
【0239】
本明細書では、TECのような可塑剤を液体担体に使用すると、PEGの使用を避けることができると主張している。このようにして、PLGA/PEG粒子のみならず、PLGA粒子を使用することができる。
【0240】
本明細書はまた、TECのような可塑剤を液体担体に使用すると、PLGA/セラミックブレンドから製造された粒子を焼結することができると主張している。
【0241】
さらに、TECの濃度を選択することによって、TAOS材料の硬化特性を制御することができると主張している。
【0242】
実施例1-時間経過および温度のペースト硬化制御
ペーストは、粒子を液体担体と混合することによって調製し、その硬化を「自家」凝集試験を用いて評価した。要約すると、ペースト焼結後、ペーストを含むアルミニウム箔を篩メッシュ上に置き、約1cmの深さの水に1分間浸漬した(図1)。その後、篩から慎重に取り出した。サンプルを凍結乾燥させ、質量損失が推定できるように秤量した。
【0243】
図2~5は、室温または37℃で15分間焼結した異なるペーストからの質量損失を示す。図6は、37℃で異なる時点(10~60分)で焼結したペーストの質量損失を示す。
【0244】
材料
液体担体:
-0.9%w/v塩化ナトリウム中0.5%w/vCMC、1%w/vPluronic F127。
-0.9%w/v塩化ナトリウム中1%w/vTEC、0.5%w/vCMC、1%w/vPluronic F127。
-0.9%w/v塩化ナトリウム中2.5%w/vTEC、0.5%w/vCMC、1%w/vPluronic F127。
-0.9%w/v塩化ナトリウム中5%w/vTEC、0.5%w/vCMC、1%w/vPluronic F127。
-0.9%w/v塩化ナトリウム中5%w/vEtOH、0.5%w/vCMC、1%w/vPluronic F127。
-0.9%w/v塩化ナトリウム中10%w/vEtOH、0.5%w/vCMC、1%w/vPluronic F127。
【0245】
粒子:
-PLGA50:50(50~100μmMPs)。
-75.6%w/wPLGA50:50、5.2%w/wPEG400、20%w/wSIM(300-400μmHMEペレット)。
-46.5%w/wPLGA95:5、3.25%w/wPEG400、50%w/wCS(300-400μmHMEペレット)。
-46.5%w/wPLGA95:5、3.25%w/wPEG400、50%w/wβ-TCP(300~400μmHMEペレット)。
【0246】
方法
・355μmの篩(Endecotts、BS410/1986)をその専用収集トレイに置いた。
・2×100mgの粒子を、70μlの各液体担体と共にアルミニウム箔(約4×4cm)中に手動で混合した。
・得られたペーストを、密封されたビニール袋の中で、湿度>90%で異なる時間焼結した。
・加湿環境(>90%RH)で室温または37℃で焼結した後、ペーストを含むアルミ箔を篩メッシュ上に置いた。
・サンプルが約1cmの水に浸漬されるまで、約7ml/秒の一定の穏やかな水流(Millipore、Direct-Q(登録商標) 3 UV)を篩メッシュに適用した。
・浸漬後、サンプルを約1分間水頭に浸したまま放置した。
・1分後、篩を篩トレイから取り外し、サンプルを含むアルミニウム箔を篩から注意深く取り除いた。
・サンプルをアルミニウム箔と共に凍結乾燥し、質量損失が推定できるように秤量した。
・篩トレイ(まだ水で満たされている)を視覚的に検査し、その間にサンプルから失われた可能性のある粒子が存在することを確認した。
【0247】
図2は、可塑剤を含む液体担体を使用することで、可塑剤PEG400とブレンドされていないPLGA粒子を使用することが可能であることを示している。これは、ブレンドから可塑剤を除去することにより、製造プロセスからより無駄を無くし、粒子の室温安定性が改善されるために重要である。実際、PLGA/PEG400ブレンドはガラス転移温度が低いため、冷蔵庫または冷凍庫に貯蔵する必要がある。
【0248】
図2~5は、液体担体中のTEC濃度を増加させると、速い硬化特性を有するペーストを製造することを実証する。20%のSIM粒子(図3)を除き、1%のTECを含有する液体担体は、室温ではなく37℃で硬化可能なペーストを与えた。代わりに、5%のTECを含有する液体担体を用いて、非常に速く硬化し、パテ状の稠度を有するペーストが得られた。可塑剤DMSO、PEG400、NMPまたはトリアセチン(TA)を含有する異なる液体担体による同じ硬化条件もまた図4に示されている。図4は、TECおよびTAが同様の挙動を示し、可塑剤の濃度を変えるだけでなく、異なる可塑剤を選択することによっても凝集力を制御できることを示している。
【0249】
図6は、ペーストの凝集力がどのように時間の影響を受け、液体担体中のエタノールの存在がペースト硬化にとって重要ではないことを示している。
【0250】
実施例2-時間経過および温度(強度)のペースト機械的特性制御
ペースト形態足場の機械的特性を評価した。Locate Therapeutics試験プロトコルにしたがって、「Stable Microsystems」テクスチャアナライザを用いて、6×12mm円筒状足場(図7)の足場強度を15分、2および24時間の焼結後に評価した。PLGAまたはPLGA/CS粒子を調べた。
【0251】
材料
液体担体:
-0.9%w/v塩化ナトリウム中の3%w/vTEC、0.5%w/vCMC、1%w/vPluronic F127。
【0252】
粒子:
-PLGA50:50(50-200μmMPs)。
-50%w/wPLGA50:50、50%w/wCS(50-200μmMPs)。
【0253】
方法
PLGAまたはPLGA/CS(50-200μm)MPsを3%TEC担体と1.5:1の比でシリンジで混合し、PTFEの型に注入し、32℃または37℃、15分、2時間または24時間のいずれかで焼結し、PBSに浸漬するか(湿式)、または90%超の湿潤雰囲気中で37℃で密封するかのいずれかで、6×12mmの円筒状足場を製造した(図7)。機械的試験を、テクスチャアナライザを用いてISO規格にしたがって行った。
【0254】
得られた結果は、PLGAおよびPLGA/CS MPsの両方を用いて15分間の焼結後に足場が形成されたことを示す。それにもかかわらず、CSの添加はより弱い足場をもたらした(図8および図10)。
【0255】
PLGA5050を使用した場合、32℃または37℃で15分間の焼結は足場の強度に影響しない。代わりに、2時間の焼結は32℃で最も強い足場を与えた(図8)。
【0256】
ダンプ焼結と湿式焼結の比較(図9~10)は、最も強い足場が湿潤状態で焼結されたものであることを示す。
【0257】
実施例3-時間経過および温度(流動能力)のペースト機械的特性制御
【0258】
材料
液体担体:
-0.9%w/v塩化ナトリウム中の2%w/vTEC、0.5%w/vCMC、1%w/vPluronic F127。
-0.9%w/v塩化ナトリウム中の3%w/vTEC、0.5%w/vCMC、1%w/vPluronic F127。
-0.9%w/v塩化ナトリウム中の4%w/vTEC、0.5%w/vCMC、1%w/vPluronic F127。
-0.9%w/v塩化ナトリウム中の10%w/vEtOH、0.5%w/vCMC、1%w/vPluronic F127。
【0259】
粒子:
-PLGA50:50(50-200μmMPs)。
-50%w/wPLGA50:50、50%w/wCS(50-200μmMPs)。
【0260】
方法
粘度は、45°の角度に設定されたアセテートシート上に400μLの混合パテを噴射することによって測定した。パテはシリンジから一定の速度で直接噴射され、パテがどれだけ遠くまで走ったかを示す第2のマークが付けられる前に、60秒間傾斜を下って流れた。次いで、距離を計算し、平均値を得た。
【0261】
結果は、混合前の担体対ポリマー比の量を減少させることにより、担体成分にかかわらず、はるかに厚いペーストが生成され得ることを示す。可塑剤濃度を増加させることにより、より粘性の初期材料を作ることが可能であるが、材料に依存する限度までであり、その後可塑剤のさらなる増加はほとんど差を生じさせない(図12)。さらなる結果は、硫酸カルシウムの添加が、混合されて注射される材料の流動性に大きな影響を有することを示している(図13)。
【0262】
本技術は、医療分野で利用することができる。用途として、細胞性治療に使用するための注射可能な送達システムが挙げられ、これは、3D組織構造の形成を促進して、機能、例えば歯科、骨欠損、骨折、脊椎融合および軟骨を向上させる。整形外科用材料の市場は広大であり、高齢化社会に沿って成長している。このように、新規で費用対効果の高い治療薬は、医療基準の維持とコストを合理的な水準に維持する上で不可欠である。
【0263】
2.用語
β-TCP:β-リン酸三カルシウム、CMC:カルボキシメチルセルロース、CS:硫酸カルシウム、EtOH:エタノール、F127:Pluronic(登録商標) F127、HME:ホットメルト押出、MPs:微粒子、PEG:ポリエチレングリコール、PLGA:ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、TEC:クエン酸トリエチル
【0264】
参考文献
1-M.Artico、L.Ferrante、F.S.Pastoreら、「Bone autografting of the calvaria and craniofacial skeleton:historical background,surgical results in a series of 15 patients,and review of the literature」、Surgical Neurology、vol.60、no.1、71~79頁、2003年。
2-Y.T.Konttinen、D.Zhao、A.Beklenら、「The microenvironment around total hip replacement prostheses」、Clinical Orthopaedics and Related Research、no.430、28~38頁、2005年。
3-L.G.MercuriおよびA.Giobbie-Hurder、「Long-term outcomes after total alloplastic temporomandibular joint reconstruction following exposure to failed materials」、Journal of Oral and Maxillofacial Surgery、vol.62、no.9、1088~1096頁、2004年。
4-A.M.Pou、「Update on new biomaterials and their use in reconstructive surgery」、Current Opinion in Otolaryngology and Head and Neck Surgery、vol.11、no.4、240-244頁、2003年。
5-R.LangerおよびJ.P.Vacanti、「Tissue engineering」、Science、vol.260、no.5110、920-926頁、1993年。
【0265】
【表1】
「バッチ名」列において、PおよびTはそれぞれPLGA/PEGおよびβ-TCPを指す。
EtOHおよびTECを、それぞれ5%および2.5%の濃度の液体担体中の可塑剤として使用した。
【0266】
実施例-HMEプロセスによるTAOS(商標)微粒子の製造
概要
本実施例は、ホットメルト押出技術を用いてTAOS(商標)微粒子を製造するための一般的なプロトコルを記載する。
【0267】
TAOS(商標)は、セラミックなどの生分解性材料および生体適合性材料(すなわち、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム)およびポリマー(すなわち、PEG、Pluronicsなど)とブレンドすることができるPLGAベースの材料である。TAOS(商標)は、有効成分および生物製剤を送達することができる。
【0268】
各ブレンドは、1つの成分がPLGAである少なくとも2つの成分から構成される。本明細書で説明する方法論は、3つの主な工程から構成される。
-材料の乾式プレ混合
-プレ混合材料のホットメルト押出
-押出物のペレット化
【0269】
本プロトコルを使用して、300~400ミクロンの微粒子が得られる。最小の粒子が必要な場合は、さらなる凍結粉砕工程が必要となる。
【0270】
-材料
PLGA 50:50 4.5A、Evonik、ロット番号LP1042
PLGA 85:15 4A、Evonik、ロット番号LP717
PLGA 95:5 6E、Evonik、ロット番号LP1075
Pluronic F127、Sigma、ロット番号121K0070
PEG 400、Clariant、ロット番号DEG4242071
シンバスタチン、Teva、ロット番号86600300414
硫酸カルシウム(CS)、Sigma-Aldrich、ロット番号MKBR2597V
β-TCP、Plasma-Biotal、ロット番号XRD7065
【0271】
-方法
乾式プレ混合
混合は、少なくとも30gのサンプルを三重の袋中で手作業で混合を行い、より大きな粒子をそれが識別される程度に粉砕し、ブレンドに再混合する。粉砕する凝集塊が硬くなったことが見出されると、ブレンドは850ミクロンのスクリーンに通され、本プロセスで分離された粒子は粉砕され、主材料供給原料と再結合される。次いで、再結合された供給原料は、ホットメルト押出のために十分に混合される。このようにして、各材料の均一な供給が、二軸スクリューミニフィーダーを用いてホットメルト押出機内に達成される。
【0272】
凝集塊は、PEG400または他の粘着性液体材料がPLGAと組み合わせて使用される場合に生じる。
【0273】
PLGA、シンバスタチンおよびPluronic F127は、使用前に500ミクロン未満でなければならない。
【0274】
BTCPおよびCSは、20~52ミクロンの間でなければならない。
【0275】
-ホットメルト押出
次いで、プレ混合された材料は、二軸スクリューミニフィーダーを介してHME供給ゾーンに導入される。材料の押出機への供給速度を1.1~2.3g/分と変化させると、押出物の直径を300~350ミクロンから800~900ミクロンに変化させることが可能である。
【0276】
標準的なHMEバレル温度を下に示す。押出機のスクリュー速度は50rpmに設定する。
【0277】
【表2】
【0278】
-ペレット化
HMEダイゾーンから得られる押出物は、次いで、設定9L1のペレタイザを使用して微粒子に切断される。この設定により、300~400ミクロンの粒子が得られる。
【0279】
ペレタイザは、以下の2つの主要コンポーネントで構成される。
-1つのカッティングホイール
-押出物をカッティングホイールに押し付ける2つの同心ホイール。
カッティングホイールは異なる速度で回転可能である(1~9の制御ダイヤル)。代わりに、2つの同心ホイールは、押出物を4つの異なる速度(1~4の制御ダイヤル)で押すことが可能である。組み合せ9L1において、9はカッティングホイールを指し、1は同心ホイールを指す。
【0280】
調製済みバッチ
上記の方法論を使用して、HMEバッチを製造した:
【0281】
-TAOS-TCP
・PLGA 95:5、PEG 400(6.5%)、TCP(10%)
・PLGA 95:5、PEG 400(6.5%)、TCP(20%)
・PLGA 95:5、PEG 400(6.5%)、TCP(30%)
・PLGA 95:5、PEG 400(6.5%)、TCP(40%)
・PLGA 95:5、PEG 400(6.5%)、TCP(50%)
【0282】
-TAOS-TCP/TAOS-CS/TAOS-Pluronic
・バッチLOC01-PLGA 95:5、PEG 400(6.5%)、TCP(50%)
・バッチLOC02-PLGA 95:5、PEG 400(6.5%)、CS(50%)
・バッチLOC03-PLGA 50:50、PEG 400(6.5%)、Pluronic F127(10%)
・バッチLOC04-PLGA 95:5、PEG 400(6.5%)、Pluronic F127(10%)、シンバスタチン(20%)
【0283】

【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17