(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】金属ストリップの連続処理ラインの急速冷却方法及び急速冷却部
(51)【国際特許分類】
C21D 9/573 20060101AFI20220208BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C21D9/573 101Z
C21D1/00 123A
(21)【出願番号】P 2019531791
(86)(22)【出願日】2017-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2017082073
(87)【国際公開番号】W WO2018108747
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-01
(32)【優先日】2016-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512128232
【氏名又は名称】フィブ スタン
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】コード,フローラン
(72)【発明者】
【氏名】マガドウ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ローダンスキー,ミロスラ
(72)【発明者】
【氏名】オルスキー,ジャロスラ
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-153236(JP,A)
【文献】特開昭60-184635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/573
C21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続金属ストリップ処理ラインの急速冷却部であって、前記急速冷却部は、ノズル(2)を使用して
液体(19)又はガスと
液体との混合物(20)を噴霧することによりストリップ(1)を冷却するように構成され、前記ノズル(2)は、ストリップ移動平面に対して前記ストリップの各側に位置する、急速冷却部であって、前記冷却部は、ストリップ移動方向(F)に沿って、少なくとも1つの平坦スプレー(16)ノズル(11)の列(6)、次に、少なくとも1つの円錐スプレー(17)ノズル(12)の列(7)を含み、前記ノズルの列(6、7)は、前記ストリップ移動平面に対して横断方向に配置され、
前記急速冷却部は、前記ストリップ(1)を下から上に垂直に移動するように構成され、前記ストリップ移動方向(F)において平坦スプレーノズル(11)の列(6)から上流に平坦スプレー(15)ノズル(10)の列(5)を含み、前記平坦スプレー(15)は、前記ストリップ(1)に横断し直交する平面に対して15°を超える角度Bで長手方向に傾斜することを特徴とする、急速冷却部。
【請求項2】
前記ストリップ移動方向において、少なくとも1つの平坦スプレー(16)ノズル(11)の列(6)は、単一流体
を噴霧する単一流体ノズルの列であり、少なくとも1つの円錐スプレー(17)ノズル(12)の列(7)は、単一流体
を噴霧する単一流体ノズルの列であり、前記急速冷却部は、デュアル流体
を噴霧するデュアル流体ノズルの列である、少なくとも1つのスプレー(18)ノズル(13)の列(8)も含み、前記ストリップ移動方向(F)において、列(8)の次に、少なくとも1つの円錐スプレー(17)ノズル(12)の列(7)が続き、前記ノズル(13)の列(8)は、前記ストリップ移動平面に対して横断方向に配置し、前記単一流体ノズル(11、12)は、前記ストリップ上に
液体を噴霧するように構成され、前記デュアル流体ノズル(13)は、ガスと
液体との混合物から構成したミストを前記ストリップ上に噴霧するように構成される、請求項1に記載の急速冷却部。
【請求項3】
前記急速冷却部は、前記ストリップ移動方向(F)において他の平坦スプレーノズル(10)から上流に平坦スプレー(14)ノズル(9)の列(4)も含み、前記平坦スプレー(14)は、前記ストリップ(1)に横断し直交する平面に対して角度Cで長手方向に傾斜し、前記角度Cは前記角度Bを超える、請求項
2に記載の急速冷却部。
【請求項4】
前記平坦スプレーノズル(9、10、11)は、前記ストリップ(1)に横断し直交する平面に対して横断方向に傾斜し、前記平坦スプレー(14、15、16)が、前記平面に対して5°を超え15°未満の角度Aで傾斜する、請求項1から
3のいずれか1項に記載の急速冷却部。
【請求項5】
前記
液体(19)又は前記ガスと
液体との混合物(20)は、前記ストリップ(1)を酸化させない、請求項1から
4のいずれか1項に記載の急速冷却部。
【請求項6】
連続金属ストリップ処理ラインの急速冷却方法であって、前記急速冷却方法は、ノズルを使用して
液体又はガスと
液体との混合物を噴霧することによりストリップを冷却するように構成され、前記ノズルは、ストリップ移動平面に対して前記ストリップの各側に位置する、急速冷却方法であって、前記冷却方法は、前記ストリップ移動方向に沿って、平坦スプレーノズルの列から少なくとも1回噴霧すること、次に、円錐スプレーノズルの列から少なくとも1回噴霧することを含み、前記ノズルの列は、前記ストリップ移動平面に対して横断方向に配置すること
、
前記ストリップを下から上に垂直に移動するように構成され、前記ストリップ移動方向において平坦スプレーノズルの列から上流に平坦スプレーノズルの列を含み、前記平坦スプレーは、前記ストリップに横断し直交する平面に対して15°を超える角度Bで長手方向に傾斜することを特徴とする、急速冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップの連続生産ラインに関する。詳しくは、鋼ストリップ(鋼帯)の焼鈍ライン又は亜鉛めっきラインの急速冷却部に関する。そこでは、該ストリップは、400℃/秒から1200℃/秒の間の速度で冷却される。
【背景技術】
【0002】
前記ストリップは、典型的には、約800℃の温度で前記冷却部に入り、周囲温度又は中間温度の温度付近で出る。この冷却ステージは、所望する冶金的及び機械的性質を得るために、きわめて重要である。優れた機械的性質を有しながら、合金元素の使用を低減して、特に鋼のコストを低減するために、鋼を得るには、約1000℃/秒で非常に速い冷却速度が必要となる。この速度は、特にマルテンサイトを形成するために高い温度、特にストリップが約800℃と500℃の間にあるときに特に必要である。この温度範囲においては、いわゆるライデンフロスト効果により、水冷中に高い冷却速度に達することは特に困難となる。いわゆるライデンフロスト効果は、蒸気の薄い層をストリップの表面に形成し、冷却流体とストリップの間の熱交換を制限する。
【0003】
前記ストリップは優れた機械的性質を備え、しばしば骨格部材を構成するため、ストリップは頻繁に厚くなり、厚さ2mm又はそれを超える厚さになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、同じ施設において同じ冷却速度を必要としない他のタイプの鋼を生産することができるようにするために、ラインのフレキシビリティと操作の容易性を確保しつつ、比較的厚いストリップを非常に急速に冷却することは困難である。フレキシビリティの基準に加えて、ストリップ全体にわたって均一な冶金的及び機械的性質を確保するには冷却が均一であることも重要である。
【0005】
連続ラインにおいて鋼ストリップを冷却するためには、2つの主要なタイプの技術があり、それはガス冷却と水冷却である。
【0006】
ガス冷却は、前記冷却速度に達することはできない。実際、非常に高い水素含量及び非常に高いブロー速さをもってさえも、前記技術は2mm厚のストリップに対して約100℃/秒に制限される。
【0007】
水冷却の中には、3つのタイプの技術がある。
・ストリップにガスと水の混合物を噴霧するデュアル流体ノズルを通じて水ミストを噴霧する冷却
・ストリップに水だけを噴霧する単一流体ノズルを通じて水を噴霧する冷却
・撹拌の有無にかかわらず、タンクに含まれる水に浸すことを通じて浸漬
【0008】
デュアル流体ノズルを通じて水ミストを噴霧する冷却は、非常にフレキシブルであるが性能が制限されている。最大の性能は約5バールの標準的な水圧で2mm厚のストリップに対し約500℃/秒の上限が定められる。またストリップがライデンフロスト温度より上であるとき、この冷却速度は低くなる。この技術の有利な点は非常にフレキシブルであることである。ガス圧と水圧を調節することにより、最大値に至る冷却範囲の全体をカバーすることが可能である。
【0009】
単一流体ノズルを通じて水を噴霧する冷却は、一般に同じ特徴を有する。冷却の制限は、通常の圧力範囲、すなわち約5バールで約500℃/秒である。主要な違いは、この冷却方法はよりフレキシブルではなく、特に低い冷却速度に対してそうである。うまく働くためには、ノズルの水圧はある値、約0.5バールより下がることはできない。この圧力では、2mm厚のストリップに対し既に100℃/秒を超えている。それゆえ、この技術はガス冷却に匹敵する速度で遅い冷却を提供することはできない。
【0010】
ある撹拌条件にて、タンク缶内への浸漬を通じての冷却は、2mm厚のストリップに対し約1000℃/秒の冷却性能に達する。しかしながら、この技術の主たる欠点はそのフレキシビリティの欠如である。実際、いったんストリップが水タンクに入ると、冷却速度及びストリップの最終温度を調節することは非常に困難である。タンクの撹拌、水温又は浸漬したストリップの長さを調節することは可能である。しかし、このことはストリップの冷却速度に対して中等度の影響がある。さらに、横断方向に冷却を調節することは不可能である。そのうえ、この技術はコストのかかる浸漬ロールを必要とする。最後になるが、徐冷を必要とするストリップに対して、前記タンクは排水又はバイパスされなければならず、これは非常に重要なプロセスである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、2mm厚のストリップを、800~500℃の温度範囲で、1000℃/秒に至る広範囲の冷却速度にて冷却するために使用することができ、ストリップ全体にわたり均一な冷却効率の横断方向への調節を可能にする。
【0012】
本発明の1つの態様は、連続金属ストリップ処理ラインの急速冷却部であって、前記急速冷却部は、ノズルを使用して液体又はガスと液体との混合物を噴霧することによりストリップを冷却するように構成され、前記ノズルは、ストリップ移動平面に対して前記ストリップの各側に位置する、急速冷却部である。前記冷却部は、ストリップ移動方向に沿って、少なくとも1つの平坦スプレーノズルの列、次に、少なくとも1つの円錐スプレーノズルの列を含み、前記ノズルの列は、前記ストリップ移動平面に対して横断方向に配置される。
【0013】
有利には、前記ストリップ移動方向において、少なくとも1つの平坦スプレーの列は、単一流体とすることができる。
【0014】
少なくとも1つの円錐スプレーの列は、単一流体とすることができる。
【0015】
また、前記急速冷却部は、少なくとも1つのデュアル流体スプレーノズルの列を含み、前記移動方向において、該列の次に、少なくとも1つの円錐スプレーノズルの列が続くことができる。前記ノズルの列は、前記ストリップ移動平面に対して横断方向に配置することができる。
【0016】
前記単一流体ノズルは、前記ストリップ上に液体を噴霧するように構成することができる。
【0017】
前記デュアル流体ノズルは、ガスと液体との混合物から構成したミストを前記ストリップ上に噴霧するように構成することができる。
【0018】
実施形態に基づけば、本発明の冷却部は、前記ストリップが下から上に垂直に移動するように構成される。
【0019】
前記ストリップ移動方向において前記平坦スプレーノズルの列から上流に、前記冷却部は、他の平坦スプレーノズルの列を含むことができ、該スプレーは、前記ストリップに横断し直交する平面に対して15°を超える角度Bで長手方向に傾斜する。
【0020】
有利には、前記ストリップ移動方向において他の平坦スプレーノズルから上流に、前記急速冷却部は、平坦スプレーノズルの列をさらに含むことができ、該スプレーは、前記ストリップに横断し直交する平面に対して角度Cで長手方向に傾斜し、前記角度Cは前記角度Bを超える。
【0021】
前記平坦スプレーノズル、より詳しくは前記列及び/又は他の列及び/又はさらなる列のものは、前記ストリップに横断し直交する平面に対して横断方向に傾斜し、前記平坦スプレーは、前記平面に対して5°を超え15°未満の角度Aで傾斜することができる。
【0022】
また、本発明は、液体又はガスと液体との混合物は、前記ストリップを酸化させないという特徴を有することができる。
【0023】
好ましくは、前記ストリップ移動方向において、前記冷却部は、平坦スプレーノズルから上流に位置する円錐スプレーノズルを有していない。
【0024】
好ましくは、前記ストリップ移動方向において、本発明の前記冷却部における各円錐スプレーノズルは、各平坦スプレーノズルの下流に配置される。
【0025】
好ましくは、前記ストリップ移動方向において、前記冷却部は、円錐スプレーノズルの下流に平坦スプレーノズルを有していない。
【0026】
好ましくは、前記ストリップ移動方向において、本発明の前記冷却部における各平坦スプレーノズルは、各円錐スプレーノズルの上流に配置される。
【0027】
本発明の別の態様は、連続金属ストリップ処理ラインの急速冷却方法であって、前記急速冷却方法は、ノズルを使用して液体又はガスと液体との混合物を噴霧することによりストリップを冷却するように構成され、前記ノズルは、ストリップ移動平面に対して前記ストリップの各側に位置する、急速冷却方法である。前記冷却方法は、前記ストリップ移動方向に沿って、平坦スプレーノズルの列から少なくとも1回噴霧すること、次に、円錐スプレーノズルの列から少なくとも1回噴霧することを含み、前記ノズルの列は、前記ストリップ移動平面に対して横断方向に配置される。
【0028】
好ましくは、前記ストリップの長手方向部上において、平坦スプレーノズルの列の噴霧の前に、円錐スプレーノズルの列の噴霧はない。
【0029】
好ましくは、前記ストリップの長手方向部上において、円錐スプレーノズルの列の噴霧の後に、平坦スプレーノズルの列の噴霧はない。
【0030】
本発明は、2つの連続したステージにおいて、1000℃/秒を超えて、800℃から500℃の間で2mm厚のストリップを超急速冷却することを含む。最初に、ストリップは、約10バールの高圧水が供給される単一流体平坦スプレーノズルの第1の列の前を通る。この平坦スプレーノズルは、ストリップに正確かつ確実に影響を与え、その結果、急速冷却を確実なものにする。このノズルは、ストリップに正確に、つまりストリップ表面の小さな部分に当てるので、ターゲットとなるストリップの表面をカバーするのに速い水の流れ、そのため水ポンプによる高エネルギー消費を必要とする。
【0031】
ライデンフロスト温度に達すると、ストリップを冷却するのは容易である。これは通常同じ圧力で単一流体の円錐スプレーノズルで冷却を続けるからである。円錐スプレーノズルは、分布の向上及びストリップの被水を確実にするため、その中間温度から優先順位が付けられる。加えて、円錐スプレーノズルは、性能/通水の観点からより有効であり、特にストリップが低い温度のときに有効である。それは、水ポンプによる通水を減少させ、それゆえエネルギー消費を減少させるのに役立つ。
【0032】
ストリップの冷却速度は、本発明の急速冷却部に沿って、同一の冷却速度にて平坦スプレーノズル及び円錐スプレーノズルを用いて一定に維持することができ、又は、鋼のタイプと所望する機械的特性に基づいて変更しうる。
【0033】
ストリップの温度が500℃又はそれより下に下がると、周囲温度又は所望の中間温度への冷却は、ストリップにガスと水の混合物を噴霧するデュアル流体ノズルを使用して水ミストを噴霧することにより行うことができる。この冷却方法の組み合わせは、包括的なフレキシビリティを確実なものにする。
【0034】
超急速冷却を必要とする、より薄いストリップに対しては、前記ラインの速度及び/又は前記平坦スプレー及び円錐スプレーの単一流体ノズルの水圧を適合させることが必要なだけである。
【0035】
徐冷を必要とするストリップに対しては、前記平坦スプレー単一流体ノズル及び円錐スプレー単一流体ノズルを閉じて、ガスと水の混合物を噴霧するデュアル流体ノズルだけを使用することができる。前記平坦スプレー単一流体ノズル及び円錐スプレー単一流体ノズルを含む冷却ゾーンは短いので(1メータから最大2メータ)、前記ゾーンを止めて、ガスと水の混合物を噴霧するデュアル流体ノズルで冷却プロセス全体を完遂することは全く可能なことである。
【0036】
本発明におけるノズルは選択的なノズルであり、ストリップ幅の一部のみをカバーする。それゆえ、横断方向の微妙な冷却の調節が可能である。これは、冷却にストリップ全幅又はかなりの幅、例えば、ストリップ幅の半分をカバーするノズルを使用しているときは不可能である。幅が狭いストリップに対しては、選択的なノズルの使用により、噴霧フロー及びポンプの電気消費を制限し、ストリップ幅を超えるノズルの使用を中止することができる。
【0037】
2つの連続した列は、前記ノズルは理想的には、冷却の均一性を高めるために、横断方向に千鳥状(staggered)の列として配置される。加えて、ノズル間の千鳥状配置は、互いに対向する2つのノズルを有することを避けるため、ストリップの各側でオフセットとする。
【0038】
下から上に移動するストリップに対しては、第1の単一流体平坦スプレーノズルから上流にウォーターナイフシステムを加えて、それによって冷却が明確に開始し、上に配置されたノズルからの水流出による影響を受けないようにすることが重要である。流出はストリップが第1のノズルに近づく前に、遅くて不均一な冷却をもたらすであろう。このことは、ストリップの機械的及び冶金的性質を低下させることになる。上から下に移動しているストリップに対しては、冷却を明確に停止して水流出を避けるために、前記冷却部の出口における最後のノズルの列の後に、ウォーターナイフシステムを配置することが理想的である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明は、前記構成の他に、添付図面を参照して記載されるアセンブリの例に関して、以下に明瞭に述べられる他の構成からなるが、決して限定的なものではない。
【0040】
【
図1】本発明の1つの実施例に関し、冷却部におけるストリップの概略断面図。
【
図2】
図1の本発明の1つの実施例に関し、冷却部におけるストリップの概略長手方向断面図。
【
図3】
図1及び2の本発明の1つの実施例に関し、冷却部の概略長手方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
この実施態様は非限定的であり、特徴の選択が技術的有利な点又は従来技術から本発明を区別するのに十分であるときは、記載されている他の特徴から分離して、記載又は一般化されているように以下に記載されている特徴の選択を含む、特に本発明の各種態様がありうる。
【0042】
添付図面である
図1の略図は、本発明の1つの実施例として、ストリップ1の各側に配置されたノズル2を通じて
液体の噴霧での冷却中におけるストリップ1の概略断面を示している。図面の理解を容易にするため、ストリップにわたって少数のノズルだけを記載してある。ノズル間の横断方向のピッチ及びノズルとストリップの間の距離は、ストリップの全体表面をカバーし、均一の横断方向の冷却を得るために、スプレー開き角度3に基づき調節される。この図から分かるように、ストリップにわたって横断方向への噴霧をカバーする。このカバーは、ストリップの均一な横断方向の冷却を確実にしつつ、噴霧によって十分にストリップ全体がカバーされるのを確実にするのに必要とされるように限定される。
【0043】
添付図面の
図2の略図は、本発明の1実施例として、
液体を噴霧することを通じて、冷却部を通って移動するストリップ1の一方の側の一部を長手方向に概略的に示している。この実施例では、ストリップは下から上に移動する。冷却部に入ることにより、ストリップは最初に平坦スプレー14,15を有するノズル9,10の2つの列4,5のそばを高フロー速度で通過する。これは流出に起因するストリップ上の
液体を除去する機能をもつ。このことは、ストリップに沿って配置される平坦スプレーの2つの列4,5の上に配置されるノズルによりストリップ上に噴霧される
液体に起因している。ストリップ上のこの
液体は、冷却方向Fにおいて下流に位置する冷却ノズルスプレーの列のストリップに対する効果を制限するため、除去される必要がある。加えて、流出に起因するストリップ上の
液体は、最初のノズルの列に到達する前に、ストリップを冷却し始めるであろう。それゆえ、冷却の程度がより減少するであろうし、一方、特により劣った機械的性質をもつ冶金相、例えば、パーライトの形成を避けることを、冷却の開始において非常に急速に行うことがしばしば必要となる。ストリップが上から下に移動する前記冷却部においては、ストリップは冷却部に入るときに
液体でカバーされていないので、前記ノズルの列は必要とされない。平坦スプレーの前記2つの列は、ストリップに横断し直交する平面に対して、ストリップの移動方向における長手方向に傾斜している。平坦スプレー14の最初の列4の傾斜角度は、ストリップから
液体を除去することを促すため、第2の列5よりも大きい。例として、平坦スプレーの第2の列5は15°の角度Bで傾斜し、第1の列は45°の角度Cで傾斜する。
【0044】
ストリップFの移動方向において、ストリップはその後平坦スプレー16の4つの連続した列6を通過する。これらのスプレーはストリップの急速冷却を確実なものとする。それらはストリップの表面に対して垂直であり、ストリップに横断し直交する平面に対して、角度Aで横断方向にわずかに傾斜させてスプレー間の相互作用を制限しつつ、ストリップの全幅が前記スプレーでカバーされることを確実にしている。この傾斜角度は、ストリップの幅にわたってノズル数の上昇を避けるため、また、ノズルの2つの列のスプレー間の相互作用を避けるのに必要とされるノズルの2つの列の間の横断方向の距離の上昇を避けるため制限される。この傾斜角度は、5°から15°の間であり、理想的には8°である。平坦スプレー16のノズル11の連続した列6の数は、所望するストリップの冷却プロファイル、ストリップの特徴、特にその最大厚さ、ストリップ移動の最大速度、及び前記スプレーの特徴、特に液体のフロー及び速度に応じて決定される。
【0045】
その後、ストリップは、円錐スプレー17の4つの連続した列7を通過する。これらのスプレーはストリップの表面に対して垂直である。繰り返すが、平坦スプレー17のノズル12の連続した列7の数は、所望するストリップの冷却プロファイル、ストリップの特徴、ストリップの最大移動速度、及び前記スプレーの特徴に応じて決定される。
【0046】
加えて、ストリップ表面のスプレー密度、特にストリップの長手方向におけるノズルの列7の間の距離は、所望するストリップの冷却プロファイル及びスプレー熱交換性能に基づき決定される。
【0047】
ノズル供給圧力及び冷却流体温度は、所望する冷却速度を得るために調節しうるパラメータである。これらのパラメータは、所望する温度目標に応じて、前記冷却部に沿って一定に保持することができ、あるいは、変更することができる。ノズル9,10の供給圧力は、流出水の除去を促すため、高くすることができる。
【0048】
ストリップとノズルの間の距離は、いくつかのパラメータ、特にスプレーの特徴、ストリップのフラッタリング及び管理のために必要なアクセスを考慮して規定される。この距離は、例えば、150mmと300mmの間である。ノズル間のピッチ及びノズル供給圧力を規定することは明らかに考慮される。
【0049】
添付図面の
図3の略図は、
図2に示した冷却部を移動するストリップ1の一部の長手方向及び横方向からの概略を示している。この図は、ストリップFの移動方向における2つの最初のノズルの列の長手方向の傾斜をより明瞭に示しており、他のノズルはストリップに対して垂直である。
【0050】
急速冷却部において下から上に移動するストリップについて本発明の実施例をここに示す。このストリップの超急速冷却は、800℃から500℃の間で1000℃/秒を超えて、2つの連続したステージで実施される。すなわち、最初は、ストリップは、約10バールの高圧水19が供給される、平坦スプレー16の単一流体ノズル11の列6の前を通過する。約500℃の温度から、ストリップの冷却は、同じ圧力で円錐スプレー17のノズル12で続けられる。ストリップの温度が300℃に下がると、周囲温度又は所望の中間温度への冷却は、ストリップにガス(窒素等)と水との混合物20を噴霧する円錐スプレー18のデュアル流体ノズル13の列8を使用して水ミストを噴霧して行うことができる。この冷却方法の組み合わせは、完全なフレキシビリティを確実なものとする。
・超急速冷却を必要とする、より薄いストリップに対しては、ラインの速度及び/又は平坦スプレー及び円錐スプレー単一流体ノズルの水圧を適合させるだけでよい。
・徐冷を必要とするストリップに対しては、平坦スプレー単一流体ノズル及び円錐スプレー単一流体ノズルを停止して、ガスと液体の混合物を噴霧するデュアル流体ノズルを使用するだけにすることが可能である。実際、平坦スプレー単一流体ノズル及び円錐スプレー単一流体ノズルを含む冷却ゾーンは短く(1メートルから最大2メートル)、そのためこのゾーンを完全に停止し、ガスと液体との混合物を噴霧するデュアル流体ノズルで冷却プロセス全体を完遂することが可能である。
【0051】
図2及び3に示した実施例においては、デュアル流体ノズルは選択的であり、円錐スプレーは使用される。このデュアル流体ノズルで得られる、より低い急速冷却に対しては、冷却条件はさほど重要でないので、スリットの全幅又はその一部をカバーするスリットノズルも使用することができる。
【0052】
下から上に移動するストリップのこの実施例においては、最初の単一流体平坦スプレーノズルから上流にウォーターナイフシステムを加え、それにより冷却が明確に開始し、上に配置されるノズルからの水流出によって影響されないようにすることが重要である。流出は、ストリップが最初のノズルに近づく前に、遅くて不均一な冷却をもたらす。このことは、ストリップの機械的及び冶金的性質の低下につながる。ウォーターナイフシステムの平坦スプレー14,15は、ストリップの全幅がスプレーによりカバーされることを確実にしつつ、スプレー間の相互作用を制限するためにわずかに横断方向に傾斜される。
【0053】
このウォーターナイフシステムは、上から下に移動するストリップに対しては不可欠ではない。しかしながら、これらのストリップに対しては、前記冷却部を出る最後のノズルの列の後に、冷却を明確に停止し、水の流出を回避するために、ウォーターナイフシステムを配置することが理想的である。
【0054】
下から上に移動するストリップの冷却に対する本発明の実施例では、冷却システムは以下のように提示される。
・ウォーターナイフの役目を果たす平坦スプレー14,15の単一流体ノズル9,10の2つの列4,5
・平坦スプレー16の単一流体ノズル11の4つの列6
・円錐スプレー17の単一流体ノズル12の4つの列7
【0055】
より詳細には、各列間のピッチ、同じ列の各ノズル間のピッチ及び異なる角度については以下の表に提示される。
【0056】
【0057】
この表では、ノズルの第1の列からの長手方向の距離は、ストリップ上に影響するスプレーのメジアン軸で得られる。全てのノズルに対して、ノズルとストリップの間の距離は250mmである。
【0058】
冷却流体として水を用いるこの構成では、800℃から500℃の間で以下の冷却速度に達することができる。
- 90m/分から130m/分の間の速度で移動する2mm厚のストリップに対しては、ノズルに供給される10バールの圧力で:1400℃/秒
- 240m/分の速度で移動する1mm厚のストリップに対しては、ノズルに供給される10バールの圧力で:1500℃/秒
- 240m/分の速度で移動する1mm厚のストリップに対しては、ノズルに供給される7バールの圧力で:1300℃/秒
【0059】
当然のことながら、本発明は記載された実施例だけに限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく数多くの改変をこれらの実施例に行うことができる。特に、本発明の各種の特徴、形式、改変及び実施形態は、互いに又は相互に排他的でない限り、各種組み合わせにて、互いに組み合わせることができる。