(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】シート部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20220208BHJP
【FI】
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2019532256
(86)(22)【出願日】2017-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2017026919
(87)【国際公開番号】W WO2019021377
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】520027419
【氏名又は名称】▲鶴▼巻 京彦
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼巻 京彦
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-170399(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0002568(KR,A)
【文献】特開平08-207194(JP,A)
【文献】特許第3523946(JP,B2)
【文献】特開平11-059285(JP,A)
【文献】登録実用新案第3201516(JP,U)
【文献】特開平10-287851(JP,A)
【文献】特開2013-254143(JP,A)
【文献】特開2008-233178(JP,A)
【文献】特開平10-247065(JP,A)
【文献】特開2000-043224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B7/02
B32B7/023
B32B3/18
B09F13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部材の製造方法であって、
透過性を有するシート状の基材の面に、着色層を印刷により形成する工程と、
前記着色層の面に、蓄光材料を有する蓄光層を印刷により形成する工程と、を備え、
前記着色層を印刷により形成する工程は、前記基材の面に、少なくとも1つの第1領域と、少なくとも1つの第2領域と、を形成する工程であり、
前記第1領域は、第1の着色層が設けられる領域であり、
前記第2領域は、前記第1領域とは異なる位置に設けられる領域であって、前記第1の着色層よりも光の透過性が高い第2の着色層が設けられる領域である、シート部材の製造方法。
【請求項2】
シート部材の製造方法であって、
シート状の基材の面に、蓄光材料を有する蓄光層を印刷により形成する工程と、
前記蓄光層の面に、着色層を印刷により形成する工程と、を備え、
前記着色層を印刷により形成する工程は、前記基材の面に、少なくとも1つの第1領域と、少なくとも1つの第2領域と、を形成する工程であり、
前記第1領域は、第1の着色層が設けられる領域であり、
前記第2領域は、前記第1領域とは異なる位置に設けられる領域であって、前記第1の着色層よりも光の透過性が高い第2の着色層が設けられる領域である、シート部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄光材料を備えるシート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、蓄光材料を含むインクを用いて印刷する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄光材料はそれ自体が色を有している。例えば、アルミン酸ストロンチウムは白色である。そのため、蓄光材料に加え、さらに顔料や染料を含むインクを用いてシート等に印刷を行った場合、そのシート等における印刷がされた部分は、蓄光材料により濁ったような色味となっていた。
【0005】
本開示の一局面は、蓄光材料による色の影響を低減したシート部材を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの態様は、シート部材であって、透過性を有し、第1の面及び第2の面を有するシート状の基材と、着色層と、蓄光材料を有する蓄光層と、を備える。少なくとも上記第1の面の側には、上記着色層及び上記蓄光層が配置されている。上記シート部材は、上記着色層が上記蓄光層よりも上記基材側に配置される部分、及び、上記基材に上記着色層が配置され、かつ、上記蓄光層が配置されない部分、のうちの少なくともいずれか一方を少なくとも一部に有する。
【0007】
このように構成されたシート部材によれば、シート部材を見る者が、上述した第2の面側から当該シート部材を見たときには、基材を通して、着色層の少なくとも一部が蓄光層により覆われることなく視認される。
【0008】
よって、このシート部材によれば、蓄光材料による色の影響を低減して着色層の色味を十分に視認することができる。
なお、上述したシート部材は、基材における上記第2の面を表側として使用するものであってもよい。
【0009】
本開示の他の一つの態様は、シート部材であって、第1の面及び第2の面を有するシート状の基材と、着色層と、蓄光材料を有する蓄光層と、を備える。少なくとも上記第1の面の側には、上記着色層及び上記蓄光層が配置されている。上記シート部材は、上記蓄光層が上記着色層よりも上記基材側に配置される部分、及び、上記基材に上記着色層が配置され、かつ、上記蓄光層が配置されない部分、のうちの少なくともいずれか一方を少なくとも一部に有する。
【0010】
このように構成されたシート部材によれば、シート部材を見る者が、上述した第2の面の反対側から当該シート部材を見たときには、着色層の少なくとも一部は、蓄光層により覆われることなく視認される。よって、このシート部材によれば、蓄光材料による色の影響を低減して着色層の色味を十分に視認することができる。
【0011】
なお、上述した他の一つの態様のシート部材は、基材における上記第2の面を裏側として使用するものであってもよい。
また、上述した各シート部材は、第1の着色層が設けられる少なくとも1つの第1領域と、上記着色層が設けられない領域、及び、上記第1の着色層よりも光の透過性が高い第2の着色層が設けられる領域、のうちの少なくともいずれか一方である少なくとも1つの第2領域と、を少なくとも有していてもよい。上記少なくとも1つの第1領域及び上記少なくとも1つの第2領域のうちの少なくともいずれか一方は、複数に分散して配置されていてもよい。上記蓄光層は、上記少なくとも1つの第2領域の少なくとも一部に配置されていてもよい。
【0012】
このように構成することで、蓄光層により放出された光の少なくとも一部を、光を透過しやすい第2領域を通過して外部から視認させることが可能となる。その結果、シート部材の発光による明るさの向上や、効率的な蓄光層の配置による蓄光材料の使用量の削減に伴うコストダウンなどを実現できる。
【0013】
本開示の他の1つの態様は、透過性を有するシート状の基材の面に、着色層を印刷により形成する工程と、上記着色層の面に、蓄光材料を有する蓄光層を印刷により形成する工程と、を備えるシート部材の製造方法である。
【0014】
また本開示の他の1つの態様は、シート状の基材の面に、蓄光材料を有する蓄光層を印刷により形成する工程と、上記蓄光層の面に着色層を印刷により形成する工程と、を備えるシート部材の製造方法である。
【0015】
これらの製造方法であれば、蓄光材料による色味を低減したシート部材を、印刷により製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図10】グラビア印刷によるシート部材の製造方法を説明する図である。
【
図11】シート部材に対する着色層の形成例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0017】
11…基材、11a…第1の面、12…着色層、13…蓄光層、101,102,103,104,105,107,108,109…シート部材、101a,102a,103a,104a,107a,108a,109a…表側面、107b,108b,109b…裏側面、201…インク、202…インク、211…圧着ローラー、212…版、213…ドクターブレード
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。なお以下の実施形態は本開示の一形態に過ぎず、本開示は以下の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。また図面に開示されるシート部材は模式的なものであって、シート部材の形状及び厚さは図示されるものに限定されることはない。
【0019】
[1.シート部材の構成]
本開示のシート部材101の一例を
図1に示す。
図1に示されるシート部材101は、基材11と、着色層12と、蓄光層13と、を備える。なおシート部材とは、厚みが小さく広さを有する、紙、布、プラスチックフィルムのような形状の部材である。
【0020】
<基材>
基材11は、シート状の部材である。基材11は光の透過性を有する構成、及び、光の透過性を有さない構成、のいずれともすることができる。シート部材101を見る者により、基材11自体を通して着色層12及び蓄光層13が視認される場合には、基材11を、透過性を有する部材としてもよい。例えば、基材11を通して後述する蓄光材料が放つ光を視認することができる程度の透過率を、基材11が有していてもよい。
【0021】
基材11の材料としては、例えば、透明又は半透明の薄板状の樹脂やガラスなどを採用することができる。具体的には、基材11の材料として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、アクリル、セロファン、ポリスチレン、及び和紙などが挙げられる。基材11を通さずに着色層12及び蓄光層13を視認させる場合には、基材11の材料、組成などは特に限定されない。
【0022】
<着色層>
着色層12は、赤や青など色彩を示す顔料や染料などを含み、それらの色味を外部から視認できるように構成された層である。着色層12を、例えば、一般的な印刷用インクを用いて形成することができる。また、着色層12として、着色されたフィルムなどを用いてもよい。
【0023】
着色層12は、光の透過性を有するように構成されていてもよい。そのように構成することで、例えば着色層12と蓄光層13とが積層される場合であっても、シート部材を見る者は、着色層12の側から蓄光層13の光を視認することができる。
【0024】
<蓄光層>
蓄光層13は、蓄光材料と、蓄光材料を保持する保持材料と、を有する。
蓄光材料は、可視光やUV光などの光や電磁波を蓄え、発光する性質を有する材料である。例えばアルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4など)を主体として、これにセリウム、ユーロピウム、ネオジム、ディスプロシウムなどの発光状態等を変化させるための材料を添加した蓄光材料を用いることができる。しかし、蓄光材料はこれらに限定されない。
【0025】
保持材料は、蓄光材料を保持すると共に、蓄光材料の蓄光や発光を可能とするために光の透過性を有する材料である。保持材料の例としては、光沢ワニス、艶消しワニス、耐摩ワニス、静電防止ワニス、ブロッキング防止ワニス、乾性油、塗料、及び接着剤などが挙げられる。
【0026】
[2.蓄光層及び着色層の具体的な配置]
着色層及び蓄光層は、基材における同一の面に配置することができる。この着色層及び蓄光層が配置される面を、以下、第1の面と記載する。また、基材における第1の面の裏側の面を、以下、第2の面と記載する。第2の面は、本開示の着色層及び蓄光層が必ずしも形成されていなくてもよい面であるが、第2の面にも着色層及び蓄光層のいずれかが設けられていてもよい。
【0027】
着色層及び蓄光層の配置は、基材における第2の面がシート部材全体としての表側面であるか裏側面であるかであるかによって、異なる態様とすることができる。以下、それらの場合ごとに説明する。なお、表側面及び裏側面とは、配置に起因する作用・機能との関係で便宜的に定義したにすぎず、シート部材の使用上の態様を説明するものではない。つまり、実際には表側面を裏側として使用することに何ら制限はない。
【0028】
[2-1.第2の面がシート部材の表側面である場合]
第2の面がシート部材の表側面である場合には、基材を通して、着色層及び蓄光層を好適に視認することができる。
【0029】
シート部材は、着色層が蓄光層よりも基材側に配置される部分、及び、基材に着色層が配置され、かつ、蓄光層が配置されない部分、のうち少なくともいずれか一方を少なくとも一部に有する。言い換えると、着色層12の少なくとも一部は、該着色層と基材との間に蓄光層が存在しないように配置される。以下に具体例を挙げる。
【0030】
図1のシート部材101では、基材11の第1の面11a上に着色層12が形成され、さらにその着色層12を覆うように、蓄光層13が形成される。第1の面11aの裏側は、シート部材101の表側面101aとなる。すなわち、基板11の第2の面が表側面101aである。
【0031】
このようなシート部材101では、着色層12が蓄光層13よりも表側面101aから見て前面に位置するため、蓄光層13に含まれる蓄光材料自体の色が着色層12の色味に与える影響が抑制される。また、蓄光層13の光も着色層12を通して表側面101aから視認することができる。
【0032】
図2のシート部材102では、基材11の第1の面11a上に複数の着色層12が分散して形成される。さらにその着色層12を覆うように、また着色層12が形成されていない部分においても、蓄光層13が形成される。
【0033】
ここでいう分散とは、一定の形状や色彩を形成するための要素となる着色層12が、ばらばらに分かれている状態であってもよい。具体的には、例えば、一定の形状の一例としての四角の形状が、分散した小さな面積の着色層12の集合により形成されているような場合が該当する。分散した状態が視認する者によって容易に判別できる大きさであってもよいし、判別が困難な大きさであってもよい。
【0034】
このようなシート部材102によれば、着色層12による色味を表側面102aから良好に視認することができると共に、蓄光層13の一部が着色層12に覆われずに基材11を介して視認される。このため、蓄光層13による光をより明るく視認することができる。
【0035】
シート部材102を上方、つまり表側面102a側から見たとき、即ちシート部材102を平面として把握できる視点で見たときに、着色層12が設けられる領域が第1領域に相当し、着色層12が設けられていない領域が第2領域に相当する。
【0036】
なお、第1領域とは、シート部材において、第1の着色層が設けられる領域である。また、第2領域とは、シート部材において、第1の着色層が設けられていない領域、及び、第1の着色層よりも光の透過性が高い第2の着色層が設けられる領域、のうちの少なくともいずれか一方の領域である。蓄光層13を考慮しない場合に、第2領域では第1領域よりも高い透過性で蓄光層13による光が透過する。第1の着色層及び第2の着色層のそれぞれは、光の透過性が互いに異なっていれば、その具体的な色は特に限定されない。
【0037】
図3のシート部材103では、基材11の第1の面11a上に複数の着色層12が分散して形成され、さらにその着色層12と厚さ方向に重ならないように、複数の蓄光層13が形成される。
【0038】
このようなシート部材103によれば、着色層12の色味を損なわないうえ、蓄光層13による光を着色層12に妨げられることなく表側面103a側から効率的に視認することができる。
【0039】
なお、着色層12と蓄光層13の一部とが厚さ方向に重なっていてもよい。その場合に、着色層12が表側面103a側に配置されれば色味が際立ち、蓄光層13が表側面103a側に配置されれば明るさが際立つこととなる。
【0040】
図4のシート部材104では、基材11の第1の面11a上に色の濃さが異なる2つの着色層12a及び12bが形成されており、さらにその着色層12bの上に、蓄光層13が形成される。着色層12bは、着色層12aと比較して相対的に色が薄く、光の透過性が高い。
【0041】
このようなシート部材104によれば、光の透過性の高い着色層12bの存在する領域に蓄光層13が配置されるため、表側面104a側から蓄光層13による光を効率的に視認することができる。光の透過性が異なるならば、着色層12aは着色層12bとは異なる色を示すものであってもよい。
【0042】
なおシート部材104においては、着色層12aが設けられる領域が第1領域に相当し、着色層12bが設けられる領域が第2領域に相当する。蓄光層13を考慮しない場合に、第2領域は第1領域よりも高い透過性で光が透過する。
【0043】
次に、
図5及び
図6の平面図を用いてシート部材の形態を説明する。
図5のシート部材103は、
図3のシート部材103のように、複数の着色層12と複数の蓄光層13とが重ならないように配置される場合の一例である。
図6に示すシート部材105のように、蓄光層13が複数の着色層12の間に隙間無く配置されていてもよい。
【0044】
着色層12と蓄光層13との一部が重なっていてもよい。また、必ずしも全ての範囲で着色層12が蓄光層13よりもシート部材の表側面側に配置されていなくてもよく、着色層12の一部では蓄光層13が着色層12よりもシート部材の表側面側に配置されていてもよい。
【0045】
[2-2.第2の面がシート部材の裏側面である場合]
第2の面がシート部材の裏側面である場合には、シート部材の表側から、基材を通さずに着色層及び蓄光層を視認することができる。このため、基材は必ずしも透過性を有する部材でなくともよい。
【0046】
シート部材は、蓄光層が着色層よりも基材側に配置される部分、及び、基材に着色層が配置され、かつ、蓄光層が配置されない部分、のうちの少なくともいずれか一方を少なくとも一部に有する。言い換えると、着色層の少なくとも一部は、該着色層を基準として基材の位置する側の反対側に蓄光層が存在しないように配置されている。
【0047】
図7のシート部材107では、基材11の第1の面11a上に蓄光層13が形成され、さらにその蓄光層13の上に、着色層12が形成される。基材11における第1の面11aと、シート部材107の表側面107aと、は基材11を基準として同じ側に存在する。
【0048】
なお、基板11における第1の面11aとは異なる第2の面が、シート部材107の裏側の面である裏側面107bである。
このようなシート部材107では、着色層12が蓄光層13よりも表側面107a側から見て前面に位置するため、蓄光層13に含まれる蓄光材料自体の色が着色層12の色味に与える影響が抑制される。また、蓄光層13の光も着色層12を通して表側面107aから視認することができる。
【0049】
図8のシート部材108では、基材11の第1の面11a上に蓄光層13が形成され、蓄光層13の上に着色層12が分散して形成される。
このようなシート部材108によれば、着色層12による色味を表側面108aから良好に視認することができると共に、蓄光層13の一部が着色層12に覆われずに基材11を介して視認されるため、蓄光層13による光をより明るく視認することができる。なお、基板11における第2の面が、シート部材108の裏側の面である裏側面108bである。
【0050】
図9のシート部材109について説明する。シート部材109では、基材11の第1の面11a上に複数の蓄光層13が分散して形成される。またシート部材109では、蓄光層13が存在しない領域に、相対的に色の濃い複数の着色層12aが形成される。またシート部材109では、蓄光層13の上に、相対的に色が薄く透過性の高い複数の着色層12bが形成される。
【0051】
このようなシート部材109によれば、光の透過性の高い着色層12bの存在する領域に蓄光層13が配置されるため、蓄光層13による光を表側面109aから効率的に視認させることができる。光の透過性が異なるならば、着色層12aと着色層12bとは異なる色を示すものであってもよい。なお、基板11における第2の面が、シート部材109の裏側の面である裏側面109bである。
【0052】
なお、着色層12aが設けられる領域が第1領域に相当する。着色層12bが設けられる領域が第2領域に相当する。
以上説明した
図1~
図9のシート部材の形態は例示にすぎず、シート部材はこれ以外にも様々な構成とすることができる。また例示したシート部材の形態が、1つのシート部材において混在していてもよい。また、シート部材を、
図3のシート部材103の表裏を逆にした構成としてもよい。また、第2の面が裏側面であるシート部材も、
図5及び
図6に示すシート部材のように、着色層12及び蓄光層13のうちの少なくともいずれか一方が分散した形態にしてもよい。
【0053】
[3.シート部材の製造]
シート部材の具体的な製造方法は特に限定されず、例えば蓄光層13や着色層12の具体的な構成に合わせた適切な方法を採用することができる。
【0054】
着色層12がインク層により構成される場合には、例えば着色層12を印刷により基材11の上に形成することができる。
蓄光層13は、蓄光材料を含む保持材料を基材11に塗布したり印刷したりすることで形成することができる。また、蓄光層13を構成するフィルムを作成し、そのフィルムを基材11に重ね合わせてもよい。
【0055】
着色層12及び蓄光層13を印刷により基材11の上に形成する場合、蓄光材料を含むインクを用いる様々な方法で印刷が可能である。具体的には、印刷方法として、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、パッド印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などが例示される。なお、グラビア印刷を行うことで、一度の製造工程でシート部材の製造が可能となり都合がよい。
【0056】
上述した第2の面がシート部材の表側面であるシート部材をグラビア印刷により製造する場合について説明する。
図10に示すように、まず、着色層12を形成するためのインク201を用い基材11に着色層12の印刷を行う。印刷には、圧着ローラー211、版212及びドクターブレード213等を利用できる。この工程を印刷の色数などに応じて必要な回数実行した後、蓄光層13を形成するためのインク202(蓄光材料を含むメジューム等)によって基材11に蓄光層13を印刷することができる。
【0057】
このように、透過性を有するシート状の基材の1つの面に、着色層を印刷により形成する工程と、形成された着色層の面に蓄光材料を有する蓄光層を印刷により形成する工程と、を行うことで、シート部材を形成することができる。
【0058】
なお、着色層12の上に蓄光層13を積層してもよいし、積層しなくてもよい。
また、上述した第2の面がシート部材の裏側面であるシート部材の場合は、上述した工程とは逆に、まず、インク202にて印刷を行い蓄光層13を形成する。その後、着色層12を形成するためのインクによって着色層12の印刷を行うことができる。
【0059】
このように、シート状の基材の1つの面に、蓄光材料を有する蓄光層を印刷により形成する工程と、形成された蓄光層の面に着色層を印刷により形成する工程と、を行うことで、シート部材を形成することができる。
【0060】
なお、蓄光層13の上に着色層12を積層してもよいし、積層しなくてもよい。
[4.色の調整]
蓄光層13による光を強くしたい場合、
図11に示すように、グラビア印刷の版の掘り方を調整し、網点の大きさを小さくする事で、光を強く見せることができる。同様に、網点の間隔を大きくすることでも、光を強く見せることができる。これらの場合、視認される色は薄く感じられる。
【0061】
また、グラビア印刷の色の印刷時に色インクにメジュームを加えて印刷する事で、着色層12の視認される色が薄くなる。その結果、蓄光層13による光を強く見せることができる。
【0062】
また、白濁したシートを作成したい場合は、白濁したインクによって着色層12及び蓄光層13の少なくともいずれか一方を印刷する事で再現できる。蓄光層13を形成するための蓄光インクにカラー顔料を混ぜて蓄光層13を印刷してもよい。
【0063】
[5.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(5a)基材における第1の面11aの裏面である第2の面をシート部材の表側面としたときには、シート部材を表側面から見たとき、着色層の少なくとも一部が蓄光層により覆われることなく、前面に位置することとなる。このため、上記のシート部材によれば、蓄光材料による色の影響が低減されるので、着色層の色味を十分に視認することができる。
【0064】
(5b)一方、第2の面をシート部材の裏側面としたときにも同様に、シート部材を表側面から見たとき、着色層の少なくとも一部が蓄光層により覆われることなく、前面に位置することとなる。このため、上記シート部材によれば、蓄光材料による色の影響が低減されるので、着色層の色味を十分に視認することができる。
【0065】
(5c)着色層12及び蓄光層13を印刷により形成することで、容易に本開示のシート部材を製造することができる。なおグラビア印刷にて着色層12及び蓄光層13を印刷することにより、一度の印刷操作でシート部材を製造することができる。
【0066】
(5d)上述した第2領域、即ち着色層12による光の透過が阻害されにくい範囲において、蓄光層13を設けることにより、光を明るく見せることができる。また、第2領域において重点的に蓄光層13を設けることにより、着色層12により低減される光の放射分を低減できる。
【0067】
[6.その他の実施形態]
以上本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0068】
(6a)着色層12は、蓄光材料を含んでいてもよい。この場合、着色層12に含有される蓄光材料は蓄光層13と比較して少なくてもよい。このような着色層12を有するシート部材では、蓄光層13に含まれる蓄光材料と同量の蓄光材料が着色層12に含まれる場合と比較して、蓄光材料が着色層12の色味に与える影響が抑制される。また着色層12において、蓄光材料による発光の効果を得ることができる。
【0069】
(6b)基材11、着色層12、及び蓄光層13を構成する各材料は上記実施形態に記載された内容に限定されず、他の材料の追加等、適宜調整を行うことができる。また基材11、着色層12、及び蓄光層13の間に、上述した着色層12及び蓄光層13以外の層や物質が配置されていてもよい。
【0070】
(6c)上記実施形態では、着色層12よりも前面に蓄光層13が配置されない構成を例示したが、シート部材の一部において、蓄光層13が着色層12よりも前面に配置されていてもよい。なお、蓄光層13が前面に配置される割合が小さいほど、蓄光材料の色によるシート部材全体の色彩への影響を低減できる。