(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】二水素の製造装置、そのような装置を用いた二水素の製造方法及びそのような装置の利用法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/02 20060101AFI20220208BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C01B3/02 Z
C01B3/56 Z
(21)【出願番号】P 2019541847
(86)(22)【出願日】2016-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2016074940
(87)【国際公開番号】W WO2018072816
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2019-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】515078420
【氏名又は名称】ウ.テ.イ.ア.-エバリュアシオン テクノロジク,アンジェニリ エ アプリカシオン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ ルぺ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ サジェ
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-277479(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02983203(FR,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0284198(US,A1)
【文献】特開2005-112956(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02690162(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0043194(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0228062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 3/58
C10B 1/00 - 57/18
C10K 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割された固体の形態の物質に熱処理を施すことによって二水素ガス(G)を生成する装置であって、前記装置は、
‐筐体(1)であって、前記物質を前記筐体(1)に供給するための入口(4)と、処理済みの前記物質から残留物を回収する低部出口(6)と、前記物質の処理から生じるガスを抽出する高部出口(11)と、を有する筐体(1)と、
‐前記筐体の前記入口と前記筐体の前記低部出口との間で前記物質を搬送する搬送手段であって、前記筐体内で回転軸(X)回りに回転するように取り付けられたスクリュー(10)を具備し、前記スクリューを回転駆動する手段を備える、搬送手段と、
‐ジュール効果によって前記スクリューを加熱する加熱手段であって、前記加熱手段は、電流を発生させる電流発生手段と、前記電流発生手段の2つの極性に前記スクリューの両端を接続する手段とを備え、前記加熱手段は、前記物質を熱分解するために、前記物質に熱処理を施すことを可能にし、前記スクリューは、700°Cから1200°Cの範囲
の高温に耐えるように適合されている、加熱手段と、
‐前記ガス中に存在する不純物を除去する不純物除去ユニット(12)であって、前記筐体の前記高部出口に接続される不純物除去ユニット(12)と、を具備する、装置。
【請求項2】
前記不純物除去ユニット(12)からの出口にてガスを精製する精製システム(21)であって、前記不純物除去ユニット(12)に接続される精製システム(21)をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記筐体の前記入口(4)に接続された入口チムニースタック(5)であって、前記筐体への空気の流入を制限するように前記筐体の前記入口に接続された密封接続手段(2)を備える入口チムニースタック(5)を備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記筐体の前記低部出口に接続された出口チムニースタック(7)であって、前記筐体への空気の流入を制限するように前記筐体の前記低部出口(6)に接続された密封接続手段(8)を備える出口チムニースタック(7)を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記不純物除去ユニット(12)は、前記ガスを分解する分解手段(13;113)を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記不純物除去ユニット(12)は、前記ガス中に存在する粉塵、固体粒子と、半結晶性炭素をベースとした粒子とを濾過する濾過手段(19)を備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記濾過手段(19)は、前記分解手段からの出口に接続される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記濾過手段(19)は、高温サイクロン又は高温セラミックフィルタ又は活性炭フィルタを具備する、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記精製システムは単一精製段階を具備する、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記精製システム(21)は圧力スイング吸着装置(34)を備える、請求項2又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記精製システム(21)からの排出ガスが、前記物質の処理から生じるガスを処理するために前記不純物除去ユニット(12)によって使用される、請求項2、9又は10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記筐体(1)に供給する前記物質は、RDF材料タイプ又はポリマー材料タイプである、請求項1~11のいずれか1項に記載の装置の利用。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の装置から二水素ガス(G)を製造する方法であって、前記方法は、
前記物質を熱分解するステップと、
前記ガス中に存在する前記不純物を除去するステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二水素ガス、即ち、水素を主成分とするガスを製造する装置に関する。本発明はこのほか、ごみ固形燃料(RDF)材料タイプ又はポリマー材料タイプの物質をリサイクルするそのような装置の利用法に関する。本発明はこのほか、そのような装置を用いることによって二水素ガスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二水素は、工業、特に化学工業及び石油化学工業の多くの分野、例えば、炭化水素を精製する分野にて使用される。二水素を燃料としての使用することは、想定されることがますます多くなっており、自動車分野でも燃料電池の分野でも使用されている。
【0003】
天然の二水素埋蔵物が存在するが、使用される二水素のほとんどは、きわめて軽量のガスである二水素を抽出し貯蔵することが比較的困難であることを考えると、工業的に製造された二水素である。
【0004】
このため、二水素ガスを比較的簡単な方法で製造することを可能にする装置に対する需要が継続的に存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、二水素ガスを発生させることを可能にする装置のほか、RDF材料タイプ又はポリマー材料タイプの物質をリサイクルするその装置の利用法を提供することである。本発明の別の目的は、そのような装置を用いて二水素ガスを製造する方法を提案することである。
【0006】
この目的を達成するために、分割された固体の形態の物質に熱処理を施すことによって二水素ガスを生成する装置が提供される。この装置は、
‐筐体であって、物質を筐体に供給するための入口と、処理済みの物質から残留物を回収する低部出口と、物質の処理から生じるガスを抽出する高部出口と、を有する筐体と、
‐筐体の入口と筐体の低部出口との間で物質を搬送する搬送手段であって、筐体内で回転軸回りに回転するように取り付けられたスクリューを具備し、スクリューを回転駆動する手段を備える、搬送手段と、
‐ジュール効果によってスクリューを加熱する加熱手段と、
‐ガス中に存在する不純物を除去する不純物除去ユニットであって、筐体の高部出口に接続される不純物除去ユニットと、を具備する。
【0007】
結果として、物質は分割された固体の形態で筐体の入口を介して導入され、スクリューは分割された固体を筐体の低部出口に向かって連続的に押圧する。ジュール効果によってスクリューを有利に加熱することができることから、分割された固体は非常に急速に加熱され、スクリューの回転に固着することなく変形し、それによって、ユニットによって処理されると、予期しない方法で高含有量の二水素を生じるガスを発生する。
【0008】
本出願人によって実施された実験では、供給物質に応じて、除去ユニットからの出口での二水素含有量を約60%とすることが可能であった。
【0009】
このため、本発明によって得られる高濃度の二水素を有するガスは、天然の二水素ガスに代わる非常に優れた代替物である。
【0010】
さらに、本発明の出口での二水素ガスは、容器(シリンダ、タンクなど)又はガス分配ネットワークに直接注入するのに適している。
【0011】
また、本発明は、バイオマスなどのあらゆる種類の物質を供給することができ、RDF材料タイプの物質又はプラスチックなどのポリマー材料タイプの物質に特に有利であることがわかる。これは、廃棄物、特に発酵させるのには適しておらず、リサイクル方法があまり開発されていない廃棄物をリサイクルするという、今後ますます重要になる状況にて特に有利であることがわかっている。
【0012】
本発明の意図では、用語「二水素ガス」は、その主成分として二水素を有するガスを表すために使用されるが、このガスは、メタンのような他の成分を少しずつ含むことがあることを理解する必要がある。
【0013】
本発明の特定の態様では、装置は、除去ユニットからの出口にて、二水素ガスを精製するシステムをさらに備え、この精製システムは除去ユニットに接続される。
【0014】
特定の実装形態では、装置は、筐体の入口に接続された入口チムニースタックであって、筐体への空気の流入を制限するように筐体の入口に接続された密封接続手段を備える入口チムニースタックを備える。
【0015】
本発明の特定の態様では、装置は、筐体の底部出口に接続された出口チムニースタックであって、筐体への空気の流入を制限するように筐体の低部出口に接続された密封接続手段を備える出口チムニースタックを備える。
【0016】
本発明の特定の態様では、不純物除去ユニットは、ガスを分解する分解手段を備える。
【0017】
本発明の特定の態様では、不純物除去ユニットは、ガス中に存在する粉塵及び固体粒子を濾過する濾過手段を備える。
【0018】
本発明の特定の態様では、濾過手段は、高温サイクロン又は高温セラミックフィルタ又は活性炭フィルタを備える。
【0019】
本発明の特定の態様では、精製システムは単一の精製段階を備える。
【0020】
本発明の特定の態様では、精製システムは圧力スイング吸着装置を備える。
【0021】
特定の実装形態では、浄化システムからの排出ガスが、物質の処理から生じるガスを処理するために除去ユニットによって使用される。
【0022】
さらに、本発明は、RDF材料タイプ又はポリマー材料タイプの物質をリサイクルする上記の特定の装置の利用法を提供する。
【0023】
さらに、本発明はこのほか、そのような装置から二水素ガスを製造する方法を提供する。この方法は、
‐物質を熱分解するステップと、
‐ガス中に存在する不純物を除去するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、添付の図面を参照した以下の説明に照らして、いっそうよく理解することができる。
【
図1】本発明の特定の非限定的な実施形態での装置の概略図。
【
図3】
図2に示す炉の変形例を構成する分解炉の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照すると、本発明の特定の実施形態での装置は、分割された固体の形態の物質に施される熱処理、具体的には熱分解によって二水素ガスを生成するのに役立つ。
【0026】
例として、物質はポリマー材料で作成されてもよい。この物質は、典型的には、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートを主成分として含むプラスチック材料である。特定の方法では、分割された固体は顆粒又はペレットと呼ばれる三次元顆粒の形態である。この分割された固体の最大寸法は、好ましくは2ミリメートル(mm)から30mmの範囲内にある。本発明の装置は、一般的な方向が原則的に水平であり、(本明細書には示されていない)スタンドによって地面の上方に保持される筐体1を備える。筐体1は、この例では単一のユニットを含む外側シェルであって、一例として金属、特に非磁性ステンレス鋼から作成された外側シェルを有する。特定の実施形態では、筐体1はこのほか、耐火材料製のユニットの形態の内側シェルを有する。筐体1の両端には機器ボックス3が固定される。
【0027】
この例では、筐体1は、筐体1に物質を供給するための入口4を有する。この入口4は、筐体1のカバー内、実質的に筐体1の第1の端部に配置される。
【0028】
当然のことながら、筐体1の底部及びカバーは、筐体1が起立している地面に対して規定される。
【0029】
特定の実施形態では、装置は、筐体の入口4に接続される入口チムニースタック5を有する。
【0030】
好ましくは、入口チムニースタック5は、筐体1への空気の進入を制限するように筐体1の入口4に接続された密封接続手段2を有する。記載されていないが、空気が筐体を出るガスの二水素含有量を減らすであろう。密封接続手段2はこのほか、筐体1内に注入される物質の流速を制御するのに役立つ。一例として、この密封接続手段2は、入口チムニースタック5と筐体1の入口4との間に配置されて弁によって制御されたエアロックを備える。
【0031】
一例として、入口チムニースタック5は、供給ホッパーに接続されるか、分割された固体を粉砕するか圧縮するか粒状化するユニットに実際に接続されるか、分割固体を予備調整するユニットに実際に接続される。分割された固体の加熱及び/又は乾燥を実施して温度及び相対湿度の規定値を満たすか、分割された固体を実際に緻密化する。
【0032】
筐体1はこのほか、この例では実質的に筐体1の両端部のうちの第2の端部にて筐体1の底部に配置された低部出口6を有する。特定の実施形態では、装置は、筐体1の低部出口6に接続された出口チムニースタック7を有する。
【0033】
出口チムニースタック7は、筐体1への空気の流入を制限するために、筐体1の低部出口6に接続するための密封接続手段8を有することが好ましい。空気は、筐体1からの出口にてガス中の二水素含有量を減少させることになり、これは望ましくない。このような密封接続手段8はこのほか、筐体1内で熱処理を受ける物質からの残留物の排出速度を制御するのに役立つ。密閉接続手段8は、例えば、出口チムニースタックと低部出口との間に配置されて弁によって制御されるエアロックを備えてもよい。
【0034】
一例として、出口チムニースタック7は、残留物を破壊するか、例えば燃料としての使用に適している可能性がある残留物を、場合によっては1回又は複数回の追加処理ステップによってリサイクルする目的で、残留物を冷却する冷却ユニット9に接続される。
【0035】
さらに、装置は、筐体の入口と筐体の底部出口との間で物質を搬送するための搬送手段を有する。このため、この手段は、この例では2つの機器ボックス3の間の軸Xに沿って筐体1の内側に延在し、筐体1の内側で軸Xを中心に回転するように取り付けられるスクリュー10を備える。一例として、スクリュー10は耐火性ステンレス鋼で作成される。このため、スクリュー10は、典型的には700℃から1200℃の範囲内にある高温に耐えることができる。この例では、スクリュー10は、螺旋コイルの形態であり、その両端が、例えば溶接によってシャフト区間の一方の端部に固定される。シャフト区間のそれぞれは、その他端が、フランジによって、関連する端部機器ボックスを同軸に貫通するシャフトに接続される。
【0036】
搬送手段はこのほか、スクリュー10を軸X周りに回転駆動する回転駆動手段を備え、この回転駆動手段はこの例では機器ボックス3の1つに配置される。本発明の特定の態様によれば、回転駆動手段は、電気モータ14と、モータの出口シャフトと、連動する同軸シャフトの端部との間の機械的接続手段とを備え、同軸シャフトはスクリュー10を駆動する。この例では、回転駆動手段は、例えば可変速ドライブを備えるモータの出口シャフトの回転速度を制御する手段を含む。このため、制御手段は、スクリュー10の回転速度を、搬送物質に適応させる、即ち筐体1内の物質の通過時間を適応させるのに役立つ。
【0037】
装置はこのほか、ジュール効果によってスクリュー10を加熱する加熱手段を有し、この手段はこの例では機器ボックス3内に配置される。特定の実施形態では、加熱手段は、電流を発生させる電流発生手段と、この発生手段の2つの極性にスクリューの両端部を接続する手段と、を備える。この目的のために、軸上の各シャフトは、導電性材料から作成された同軸ドラムに、カーボンブラシを同軸ドラムに電流を供給するために擦り付けた状態で、堅固に固定される。ブラシは、(図示しない)導線によって発電手段に接続される。このため、スクリュー10は軸X全体に沿って同一の電流を流す。
【0038】
スクリュー10は、その軸Xに沿って変化する電気抵抗を提示するように成形され、それによって軸Xに沿って同時に異なる加熱領域を得ることを可能にする。特定の方法では、スクリュー10は、筐体1への入口4の温度が筐体1の出口6、11の温度よりも高くなるような温度プロファイルを有するように成形される。これは、スクリュー10の加熱作用の下で分割された固体が溶融する結果として起こり得るように、プラスチック材料から作成された分割された固体が筐体1内に流入するときにスクリュー10の巻回部に付着するのを制限するのに役立つ。
【0039】
本発明の特定の態様では、加熱手段は、スクリュー10を通過する電流の大きさを調整する調整手段を備える。この例では、調整手段は、電流発生手段と接続手段との間に配置された調光器を備える。このため、調整手段は、スクリュー10に沿って流れる電流を、搬送される物質に適合させることを可能にする。
【0040】
このため、この例の筐体1、搬送手段及び電力供給手段は、筐体1内に導入される物質のための熱分解反応器を形成する。
【0041】
さらに、筐体1はこのほか、物質を熱分解することから生じるガスを抽出する高部出口11を有し、この高部出口11は、この例では実質的に筐体1の両端部のうちの第2の端部にて筐体1のカバーに配置される。この例では、高部出口11は、筐体の入口4に対して筐体1の底部出口から少し上流に位置している。
【0042】
装置はこのほか、ガス中に存在する不純物を除去する不純物除去ユニット12を有する。このユニット12は、(物質の供給及び残留物の除去を不連続に実施することができるように成形される入口4及び低部出口6とは異なり、)ガスが筐体1から連続的に抽出されるように高部出口11に接続される。
【0043】
本発明の特定の態様によれば、不純物除去ユニット12は、この例では筐体1の高部出口11に直接接続されるガス分解手段を備える。
【0044】
このような分解手段は、分解手段からの出口で浄化されたガスを回収するために、ガス中に存在するタール及び油相を分解するのに役立つ。
【0045】
例として、分解手段は分解炉13を備える。
【0046】
図1を参照すると、分解炉13は垂直軸Yを有する管状構造体14を備える。この例では、構造体14は円形の断面(この断面は軸Yに直交する)を呈するようにも形作られる。
【0047】
構造体14は処理対象のガスを挿入する入口15を有し、この例では入口15は筐体1の出口11に接続される。
【0048】
構造体14はこのほか、ガスを排出する出口16を有する。入口15は構造体14の底部に配置され、出口16は構造体14の上部に配置される。
【0049】
特定の方法では、入口15は、構造体14に対して実質的に接線方向に延びる。このため、入口15は、ガスを構造体14の内壁に沿って構造体14内に浸透させるように配置される。これは、ガスが構造体14の内部を螺旋状に流れるようにサイクロン効果を生み出すのに役立つ。これにより、ガスの処理が向上する。
【0050】
好ましくは、出口16はこのほか、構造体14に対して接線方向に配置される。入口15及び出口16は、構造体14全体を処理するガスの流れを促進するため、構造体14に対して半径方向に配置され互いに反対方向に配置されることが好ましい。
【0051】
好ましい方法では、構造体14は耐火材料から作成される。このため、構造体14の内壁は良好な熱放射特性を示す。さらに正確には、この例では、構造体14はセラミック製である。構造体14用に選択されたセラミックは、好ましくは、1平方メートルあたり10キロワット(10kW/m2)~50kW/m2の範囲内にある単位面積あたりの電力密度を有する。例として、選択されたセラミックはアルミナであってもよい。構造体14の材料はこのほか、少なくとも1400℃の温度に耐えることができる耐火コンクリートであり得る。分解炉13はほかにも、処理用ガス中に含まれる粉塵などの寄生固体粒子を排出する排出手段を有する。出願人は、実際には、そのような固体粒子の大部分が、分解プロセス自体によって形成された半結晶質炭素粒子であることを観察した。このため、この装置は、後に任意選択でリサイクルすることができる(RDF又はプラスチック廃棄物に基づく初期物質から)半結晶性炭素粒子を製造するのに役立つ。
【0052】
この目的のために、この例の排出手段は、排出管40と、弁41、例えば、排出管40内に配置された回転式、ギロチン式又は二重エアロック式の弁とを備える。弁41は、酸素が分解を害するであろう構造体14内に、排出管40を介して酸素が流入するのを制限するように、構造体14を確実に密封するのに役立つ。この例の排出管40は、構造体14の底部42から構造体14の外側まで延びる。この例の排出管40は、構造体14の底部42のほぼ中央の端部で開口するように配置される。この例では、排出管40は軸Yに沿って延びる。
【0053】
このため、固体粒子を構造体14から落下させるためには、単に弁40を開くだけで十分である。構造体14の底部42は、漏斗を形成するように、好ましくは凹面状である。この漏斗は、固体粒子をさらに十分に貯蔵するだけでなく、漏斗内に開口する排出管40を介してこのような粒子を排出するのを容易にするのに役立つ。
【0054】
さらに、分解炉13は、処理対象ガスを加熱する加熱手段を有し、この加熱手段は、特に加熱管17を備える。加熱管17は、構造体14と同軸に、構造体14の内側の軸Yに沿って垂直に延びるように形作られる。この例の加熱管17はこのほか、円形断面(軸Yに直交する断面)を呈するように成形される。このため、構造体14及び加熱管17はその間に、ガスのための処理領域43を形成する環状断面(軸Yに直交する断面)の内部空間を形成する。加熱管17はこのほか、その底端部44が閉じられて構造体14の内部に配置されるが、構造体14の底部42には触れないように成形される。これにより、構造体の底部42に固体粒子を堆積させることがさらに容易になり、そのため固体粒子を放出しやすくなる。
【0055】
それにもかかわらず、加熱管17は、構造体14の高さとほぼ同じ軸Yに沿った高さを示し、典型的には構造体14の高さの90%から99%の範囲にある。加熱管の上端部45は、構造体14の天井46の上方で、構造体14の外側に開いている。
【0056】
好ましい方法では、加熱管17はセラミック製である。選択されたセラミックは、好ましくは10kW/m2 ~50kW/m2の範囲内にある単位面積あたりの電力密度を示す。例として、選択されたセラミックはアルミナである。
【0057】
加熱手段はこのほか、入口管47を備える。この入口管は、加熱燃料(天然ガス、燃料油、精製合成ガス、あるいは実際に分解炉13自体によって加熱されたガスであって、そのガスの一部は入口管47に供給するために分解炉13の出口16から取り出されるガス、あるいは実際に装置の上流又は下流の他の場所から回収されたガス)のためのものであって、加熱手段の燃焼器48に接続される。燃焼器48自体は加熱管17の上端部46に接続される。加熱手段はこのほか、同じように加熱管17の上端部45に接続された燃焼燃料用の出口管49を備える。
【0058】
好ましくは、加熱手段は、(天然ガス、燃料油、精製合成ガス等のタイプの)加熱管17の加熱を開始するために分解炉13の外部で加熱用燃料を使用することによって始動する。ガスの処理が開始されると、加熱手段は、(以下に説明されるように)加熱管17を加熱するために浄化システム(具体的には浄化段階21)からの出口にて排出ガスEの一部を取り出す。
【0059】
結果として、分解炉13は比較的独立しており、分解の開始を始動するためにのみ外部燃料を必要とする。
【0060】
分解炉13の出口16から処理済みガスを取り出すだけでは燃焼器に供給するのに十分ではない場合には、操作中に外部燃料を使用することもできる。
【0061】
このため、加熱ガス又は燃料と処理対象ガスとの間に物理的な接触がないため、処理対象ガスは間接的に加熱されることが理解され得る。加熱管17及び構造体14の内壁の耐火物のみが処理対象ガスを加熱するのに役立つ。
【0062】
このため、構造体14及び連動する加熱管17の特定の構成は、処理対象ガスが構造体14を通過するその流路全体に沿って閉じ込められる狭い処理領域43を形成するのに役立つ。処理領域43は、構造体14の内部耐火壁によって外部から加熱され、加熱管17によって内部から加熱される。これにより、処理領域全体にわたる処理のためにガスを均一に加熱することが可能になり、それによって望ましくないタール及び油相の良好な分解を確実なものにする。
【0063】
図3を参照すると、変形例では、固体粒子を排出する手段は、排出管及び連動する弁ではなく、フィルタ150を備える。このフィルタは、加熱管117が構造体114内のフィルタ150の内側に延在するように、構造体114の内側で軸Yに沿って垂直に延び、構造体114と同軸であり、加熱管117を有する。この例のフィルタ150はこのほか、円形断面(軸Yに直交する断面)を呈するように成形される。フィルタ150は、先ず構造体114の天井146に固定され、次に構造体114の底部142に固定されるように、構造体114の高さに等しい高さを有する。
【0064】
その結果、構造体114及び加熱管117はその間にガス用の処理領域143を形成する内部空間を形成した状態を維持するが、フィルタ150と加熱管117も同じようにその間にガスフィルタ領域151を形成する。
【0065】
一例として、フィルタ150はセラミック製である。
【0066】
この例では、構造体114の入口115はガスフィルタ領域151内に直接開口するように成形される。この目的のために、入口115は、構造体114の底部142ではこのフィルタ領域151内に開口している。出口116は、フィルタ領域151の外側で処理領域143から開くように成形される。
【0067】
両方の変形例では、分解炉は、ガスを1000℃(摂氏)から1700℃の範囲、好ましくは1000℃から1200℃の範囲の温度にさらすように成形される。分解炉13は、ガスを約1050℃から1200℃の温度にさらすように成形されるのが好ましい。
【0068】
これは、ガスからタール相及び油相を除去するだけでなく、ガス中の二水素を濃縮するのにも役立つ。具体的には、高温のため、他の分子の存在の結果としてガス中に存在するメタンも分解中に反応し、それによってガス中の二水素の割合を増加させるのに役立つ。
【0069】
さらに、この例では、分解炉13は、短い通過時間、典型的には0.5秒から2秒の範囲の通過時間でガスが構造体14を通過するように成形される。
【0070】
この例では、除去ユニット12はこのほか、濾過手段19を含む。この濾過手段は、例えば、ガス中に未だ存在する固体粒子及び粉塵を除去するため、特にガス中に存在する半結晶性炭素粒子を除去するために、分解炉13の出口に直接接続される。濾過手段19は、典型的には、高温サイクロン及び/又は(セラミックフィルタなどの)高温フィルタ及び/又は分解炉13の出口に接続されたチャネルを横切って配置された活性炭フィルタを備える。このため、サイクロン及び/又はフィルタは、高温、典型的には600℃から1000℃の範囲の温度に耐えることができる。
【0071】
除去ユニット12はこのほか、好ましくは、濾過手段19に直接接続された(濾過手段19が動作可能な温度に応じて濾過手段19に対して上流又は下流の)熱交換器20を備え、このため、ガスを装置の下流端に適合する温度に冷却することを可能にする。熱交換器20からの出口でのガスの温度は、500℃から1000℃の範囲内にあり、大気圧よりわずかに低い圧力にある。
【0072】
除去ユニット12からの出口では、ガスは、二水素の含有量がRDF又はプラスチック材料を処理するときには全体積の55%から65%の範囲(バイオマスを処理するときには20%から40%の範囲)にあり、既に高含有量であることを示している。
【0073】
さらに、装置は、除去ユニット12からの出口にてガスを二水素精製する精製システム21を備える。この例では、二水素精製システム21は、熱交換器20の出口に直接接続される。
【0074】
本発明の特定の態様によれば、精製システム21は、ガスを調製する調製段階とガスを精製する精製段階とを有する。
【0075】
一例として、調製段階は、除去ユニット12の出口に接続された第1のガス乾燥手段30を備える。
【0076】
調製段階はこのほか、典型的には過給器31を使用してガスを加圧する手段を備える。過給器31は、典型的にはガス乾燥手段30に接続される。
【0077】
調製段階はこのほか、過給器31からの出口に接続された圧縮器32と、圧縮器32からの出口に接続された第2のガス乾燥手段33とを備える。
【0078】
この調製工程は、典型的にはガス中に存在する水分を除去するほか、ガスが精製段階に到達する前にガスを圧縮するのにも役立つ。
【0079】
特定の方法では、ガス精製段階は圧力スイング吸着装置34を備え、この装置はガス調製段階からの出口に直接接続される。
【0080】
これにより、単一の操作で、実際にはメタンの全てのほか、一酸化炭素、二酸化炭素の全て及びガス中に未だ存在する他の少数成分(たとえば水など)を除去することが可能になる。
【0081】
精製段階からの出口、即ち精製システム21からの出口では、非常に純粋な二水素ガスGがこうして回収される。典型的には、精製システムからの出口でのガスGは、99.9体積%を超える二水素を含む。
【0082】
なお、圧力スイング吸着装置34からの出口での二水素ガスGが、貯蔵することができるか直接使用することができるのに十分なほど純粋である。このため、圧力スイング吸着装置34の後に膜分離機型の他の何らかの機械を必要としない。
【0083】
また、圧力スイング吸着装置34は、(上記のように)例えば分解炉13によって再利用することによって、あるいは実際にそのメタン含有量のためにエネルギー分野で使用することによってリサイクルすることができる、二水素が少なめ(それでもなお約25体積%)の排出ガスEを得るのに役立つ。エネルギー最適化の目的のために、例えばガスエンジン内でのこのガスの燃焼によって電気を発生させることが可能である。
【0084】
次に、上記装置を用いた二水素の製造方法について説明する。
【0085】
最初に、処理対象の物質は分割された固体の形態で入口スタック5に導入され、スクリュー10は分割された固体を筐体1の底部出口6に向かって連続的に押圧する。スクリュー10の温度のために、分割された固体は、漸進的に柔軟になって溶融し、それによって既に二水素を含有するガスを生成する。
【0086】
このように、スクリュー10は、物質に熱処理を施すことにも物質を搬送することにも役立つ。
【0087】
好ましくは、物質の熱処理は、筐体1の内部の高温、典型的には500℃から1000℃の範囲、好ましくは600℃から800℃の範囲の温度にて実施される。
【0088】
好ましくは、装置は、物質が10分から30分の範囲、さらに好ましくは15分から20分の範囲の期間、筐体内に留まるように成形される。
【0089】
これは、物質を効果的に熱分解し、それによって既に非常に高い含有量の二水素を有するガスを筐体1の高部出口11から回収するのに役立つ。
【0090】
次いで、物質の炭素残留物は低部出口6を通して排出される。
【0091】
さらに、筐体1の高部出口11から抽出されたガスは、入口15を介して分解炉13に導入される。並行して、燃焼器48は加熱燃料を燃焼させ、それによって加熱管17内にある加熱ガスを放出する(
図2では三角形で表される)。次いで、この加熱ガスは、加熱管17の上端部15に向かって自然に上昇する前に加熱管17内を下降し、そこで出口管16を介して分解炉13の外部に排出される。加熱ガスの存在及びその移動は、加熱管17をその全高にわたって効果的に加熱することを可能にし、それによって(加熱管17からの)対流及び(構造体14を構成する特定の材料からの)輻射によって処理領域43を加熱する。このため、処理対象ガスは、このガス中に存在する油及びタールを熱分解するのに必要な温度のほか、ガス中の二水素を濃縮するためにメタンを熱分解するのに必要な温度に効果的、迅速かつ均一に加熱される。このため、分解炉13はガスを約1500℃の温度に加熱する。
【0092】
処理対象ガスは、分解炉13内で構造体14への低部入口15と構造体14からの高部出口16との間を自然に流れ、有利には入口15の接線方向の配置によって生じるサイクロン効果の結果として螺旋状に流れる。ガスは処理領域43全体を流れ、それによって、出口16を介して構造体14から排出される前にガスを適切に処理するのに十分な時間が残る。こうして、約60体積%の二水素を含有するガスが分解炉13の出口から回収される。
【0093】
次いで、ガスは除去ユニット12の残りの部分を通過する。このようにして、浄化されたガスが除去ユニット12の出口から回収され、このガスも二水素が濃縮されている。除去装置12からの出口で、このようにして約60体積%の二水素を含むガスが回収される。
【0094】
その後、ガスは、順番に水、二酸化炭素、二窒素及びメタンを除去するのに役立つ精製システム21を通過する。このようにして、その二水素含有量に関しては純度の増したガスGが装置の出口から回収される。
【0095】
精製システム、ひいては装置からの出口でのガスGは、このように非常に高い二水素含有量を有することがわかる。典型的には、装置からの出口でのガスGは、99.99%を超える二水素含有量を示す。
【0096】
当然のことながら、本発明は、説明された実施形態に限定されず、特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲を逸脱することなく、実施形態の変形例を本発明に適用してもよい。
【0097】
特に、この例では、装置に供給される物質は、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートを主成分として含有するプラスチック材料であるが、装置は二水素を生成する他の種類の物質を使用することができる。一例として、物質は、バイオマス、プラスチック廃棄物、ゴム又はエラストマーなどの固体ポリマー、あるいは実際にカードを含む固体、アルミニウムなどの金属材料、あるいは実際に固形ゴミ由来燃料と同等のものであり得る。なお、「バイオマス」という用語は、一般の産業界、特に農業、林業をはじめとする産業からもたらされる可能性のある物質、廃棄物及び残留物の生分解性成分を指す。
【0098】
物質は、単一種類の固体(ポリマー、プラスチック、RDR、バイオマスなど)又は複数種類の固体を含んでもよい。分割された固体は、三次元顆粒の形態又は二次元フレークの形態であってもよい。一般的には、分割された固体は粉末、顆粒、小片、繊維などの形態であってもよい。
【0099】
さらに、筐体と、筐体に連動する搬送手段及び燃料効果加熱手段は、記載されたものとは異なってもよい。例えば、供給入口及び/又は低部出口での密封接続手段は、例えばハッチ又は実際には計量装置のような、エアロック以外の要素を備えてもよい。スクリュー及び連動するジュール効果加熱手段は、スクリューがその軸に沿って異なる加熱領域を同時に提供し、その軸に沿って変化する電気抵抗を示す状態で、物質を段階的に加熱することを可能にするように成形されてもよい。
【0100】
同じように、精製システムは記載されたものとは異なってもよい。例えば、このシステムは、記載されたものとは異なる多数の精製段階を有してもよい。
【0101】
装置は、筐体内の酸素の存在を制限するか排除するために、筐体が不活性ガスで充填されるように成形されてもよい。
【0102】
分解炉は記載されたものとは異なってもよい。このため、記載された構造は円形の断面を呈するが、この構造は楕円形の断面のような異なる断面を呈し得る。それにもかかわらず、円形断面の構造を有することは、処理領域内の熱交換を促進するため好ましい。同じように、加熱管は円形の断面とは異なる断面、例えば、楕円形の断面を呈してもよい。それにもかかわらず、円形断面の加熱管を有することは、処理領域との熱交換を促進するため好ましい。いずれにしても、加熱管と構造体とが同一の断面形状を呈し、それによって処理領域内の熱交換を促進する分解炉にとって好ましい。
【0103】
構造体は本明細書ではアルミナ製であるものとして説明されるが、構造体は他の任意の材料、即ち、別のセラミック、耐火コンクリート、金属又は金属合金などから作成することができる。それにもかかわらず、耐火コンクリート又はセラミックのような耐火材料を使用してガスの処理を促進することが好ましい。さらに、処理対象ガスの性質(特にそれが腐食性であるかどうか)を考慮に入れる必要がある。
【0104】
この例では、加熱管はアルミナ製であるが、加熱管は他の任意の材料、即ち、別のセラミック、耐火コンクリート、金属又は金属合金などから作成することができる。それにもかかわらず、ガスの処理を促進する耐火コンクリート又はセラミックのような耐火材料を使用することが好ましい。さらに、処理対象ガスの性質(特にそれが腐食性であるかどうか)も考慮に入れる必要がある。
【0105】
本明細書のフィルタはアルミナ製であるが、フィルタは他の任意の材料、即ち、別のセラミック、耐火性コンクリート、金属又は金属合金などから作成することができる。それにもかかわらず、ガスの処理を促進する耐火コンクリート又はセラミックのような耐火材料を使用することが好ましい。さらに、処理対象ガスの性質(特にそれが腐食性であるかどうか)も考慮に入れる必要がある。