(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】身体に着用可能な要素と前記身体に着用可能な要素の使用
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20220208BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20220208BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
H04R1/00 318D
H04R17/00
H04R3/00 310
H04R1/00 328D
(21)【出願番号】P 2019548017
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2018056224
(87)【国際公開番号】W WO2018167053
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2019-09-03
(31)【優先権主張番号】102017105529.0
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518379278
【氏名又は名称】テーデーカー エレクトロニクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ラウフ ヴォルフガンク
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0088380(US,A1)
【文献】特開平10-065996(JP,A)
【文献】特開平06-338640(JP,A)
【文献】特表2004-508695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04R 17/00
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動するように、及びこのようにして音響信号の触覚印象を生成するように構成された少なくとも1つの圧電素子(1)を含む身体に着用可能な要素(11)であって、ここで、前記圧電素子は、前記身体に着用可能な要素に織り込まれたピエゾ活性材料を含む、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項2】
触覚的に知覚可能な信号を前記圧電素子(1)に印加するように配置及び構成される、請求項1に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
前記音響信号の周波数にスケーリング係数を掛けること、及び前記音響信号はそれにより前記触覚的に知覚可能な信号に変換されることにより、前記触覚的に知覚可能な信号は前記音響信号から決定された、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項3】
等価信号を前記圧電素子(1)に印加するように配置及び構成される、請求項1に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
前記等価信号は、伝達関数によって音響信号から前記等価信号を決定することにより、前記音響信号から決定されたものであり、ここで、前記等価信号の形状と強度は前記音響信号と相関し、且つ、前記等価信号は触覚的に知覚可能な信号である、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項4】
請求項
3に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
電子機器(12)は、前記少なくとも1つの圧電素子(1)に前記触覚的に知覚可能な信号又
は前記等価信号の周波数を有する交流電圧を印加するように構成される、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項5】
請求項4に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
前記電子機器は、前記身体に着用可能な要素(11)に組み込まれているか、又は、
前記身体に着用可能な要素(11)は、前記電子機器が組み込まれている外部装置に接続可能である、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項6】
請求項5に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
前記電子機器は、前記音響信号からの信号処理の範囲内で、前記触覚的に知覚可能な信号又は前記等価信号を生成することができる、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
前記音響信号は記録されたオーディオ信号である、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか一項に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
当該身体に着用可能な要素(11)又は請求項4に記載の前記電子機器は、請求項7に記載の前記記録されたオーディオ信号が蓄積されるメモリを含む、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
前記音響信号は、リアルタイム送信外部ノイズ源から発生する、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項10】
請求項4~6、9のいずれか一項に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
当該身体に着用可能な要素(11)又は請求項4に記載の前記電子機器は、請求項9に記載の前記外部ノイズ源から前記音響信号を受信するように構成されたマイクロホンを含む、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
前記圧電素子(1)は、異なるサイズの振幅で振動するように、及びそれにより前記音響信号の異なるボリュームを触覚的に再現するように構成されている、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
前記少なくとも1つの圧電素子(1)は、異なる周波数で振動するように構成されている、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
ここで、前記少なくとも1つの圧電素子(1)は、その中で内部電極(4,5)と圧電層(8)が積層方向(S)に交互に積層された、基体(2)と、補強ユニット(3)とを有し、ここで、前記補強ユニット(3)は、前記基体(2)の上側に配置され、且つ、
前記積層方向(S)に垂直な方向における前記基体(2)の長さの変化を、積層方向(S)における前記補強ユニット(3)の長さの変化に変換するように、構成されている、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項14】
請求項13に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
前記補強ユニット(3)は円錐台形シートを有する、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
ここで、前記身体に着用可能な要素(11)は複数の圧電素子(1)を含み、それぞれが振動するように、及びこのようにして音響信号の触覚印象を生成するように構成された、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、
当該身体に着用可能な要素は、衣服のこと、例えばシャツ、靴下、VRアプリケーション用スーツ、ダイビングスーツ、フライトスーツ、若しくはスポーツスーツのことであるか、又は、
当該身体に着用可能な要素はアクセサリのこと、指輪、時計、宝飾品、医療補助具、ベルト、ヘッドフォン、眼鏡、接着要素、絆創膏若しくは医療機器の電極、手袋、チェストストラップ、若しくはカフスのことである、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の身体に着用可能な要素(11)であって、前記圧電素子はセラミックアクチュエータ、ピエゾ活性ポリマー材料を含むアクチュエータ又はピエゾ抵抗性ポリマー材料を含むアクチュエータである、身体に着用可能な要素(11)。
【請求項18】
音楽を触覚的に知覚可能にするための、請求項1~17のいずれか一項に記載の身体に着用可能な要素(11)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響信号を触覚的に知覚することを可能にする身体に着用可能な要素に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような要素には、さまざまな応用可能性が考えられる。当該要素は、ろう者や難聴者がメロディーを知覚できるようにするために使用できる。さらに、当該要素は、聴覚を再学習するための治療のサポートとして使用できる。また、仮想現実アプリケーションの分野では、当該要素は、触覚印象を作成することにより、当該要素の着用者の仮想現実を触覚的に知覚するために使用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
今や本発明の課題は、音響信号を触覚的に知覚することを可能にする身体に着用可能な要素を提供することである。この場合、前記身体に着用可能な要素は、可能な限り短い応答時間で音響信号の周波数の急速な変化を再現できるように設計する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1に記載の身体に着用可能な要素によって達成される。
【0005】
振動するように、及びこのようにして音響信号の触覚印象を生成するように構成された少なくとも1つの圧電素子を含む、着用可能な要素が提案されている。
【0006】
圧電素子は、反応時間が速いという特徴があり、したがって、周波数が変化する音の高速シーケンスを触覚信号として再現するのに適している。その場合、圧電素子は、触覚印象としてメロディーを再現するのにも適している場合がある。振動させることもできる機械要素、例えば、機械的又は電気的に振動する可能性のある、振動する細かいモーターや膜、は通常、所望の振動振幅に達する前に過渡時間がある。対照的に、前記圧電素子は非常に短い反応時間を特徴とする。
【0007】
前記圧電素子は、音響信号のリズムとメロディーの両方を触覚的に知覚可能にするように適合されてもよい。本書においてリズムは、音響信号のトーンの時系列であると理解されている。メロディーは、音響信号のトーンの異なるピッチから生じる。前記圧電素子は、前記圧電素子の異なる振動周波数によって前記音響信号の異なるピッチ又は周波数を触覚的に再現するように構成されてもよい。リズムは、前記圧電素子の振動の間隔又は休止によって表すことができる。さらに、前記圧電素子の振動振幅を介して前記音響信号のダイナミクスを触覚的に再現することも可能である。
【0008】
本書で身体に着用可能な要素として、多かれ少なかれぴったりとフィットする人体を取り巻く人工シェルとして適しているすべての材料を考慮することができる。例えば、これは身体に着用可能な要素と見なされるチェストストラップである。
【0009】
前記身体に着用可能な要素は、前記音響信号の周波数にスケーリング係数を掛けること、及び前記音響信号はそれにより触覚的に知覚可能な信号に変換されることにより、前記音響信号から決定された信号を、前記圧電素子に印加するように配置及び構成されてもよい。
【0010】
あるいは、前記身体に着用可能な要素は、前記圧電素子に等価信号を印加するように配置及び構成されてもよい。前記等価信号(das)は、伝達関数を用いて前記音響信号から前記等価信号を決定することにより、前記音響信号から決定された。ここで、前記等価信号の形状と強度は前記音響信号と相関し、且つ、前記等価信号は触覚的に知覚可能な信号である。前記伝達関数とは、前記音響信号を、その形状と強度が前記音響信号と相関する等価信号に変換するほぼ任意の関数のことであり得る。
【0011】
前記身体に着用可能な要素は、前記音響信号の周波数にスケーリング係数を乗算するように、及びそれにより前記音響信号を触覚的に知覚可能な信号に変換するように構成された電子機器を含んでもよい。前記触覚的に知覚可能な周波数は音響的に知覚可能な周波数スペクトルの周波数よりも低いため、前記スケーリング係数は好ましくは1未満である。
【0012】
前記音響信号に固定スケーリング係数を掛けることにより、前記音響信号は、高音と低音の差が持続するように、触覚的に知覚可能な信号に変換することができる。例えば、前記音響信号の第2のトーンよりも高い前記音響信号の第1のトーンは、前記触覚的近く可能な信号の第2のトーンよりも同様に高い前記触覚的に知覚可能な信号の第1のトーンに対応してもよく、これもまた、前記音響信号の第2のトーンに対応する。
【0013】
前記電子機器は、前記少なくとも1つの圧電素子に前記触覚的に知覚可能な信号の周波数の交流電圧を印加するように構成されてもよい。したがって、圧電素子を励起して、それぞれの周波数で振動させることができる。特に、異なる周波数の交流電圧を前記圧電素子に印加するように前記電子機器を設計できる。
【0014】
前記電子機器は前記身体に着用可能な要素に組み込まれることができる。あるいは、前記身体に着用可能な要素は、その中に前記電子機器が組み込まれている外部装置に接続可能であってもよい。前記外部装置は、例えば、携帯電話、時計、又は外部制御装置であり得る。
【0015】
前記電子機器は、前記音響信号からの信号処理の範囲内で、前記触覚的に知覚可能な信号を生成することができる場合がある。
【0016】
前記音響信号は記録されたオーディオ信号であってもよい。前記身体に着用可能な要素又は前記電子機器は、その中に前記記録されたオーディオ信号が蓄積されるメモリを含んでもよい。
【0017】
前記音響信号は、リアルタイム送信外部ノイズ源から来る場合がある。前記身体に着用可能な要素又は前記電子機器は、前記外部ノイズ源から前記音響信号を受信するように構成されたマイクロホンを含むことができる。
【0018】
前記圧電素子は、異なるサイズの振幅で振動するように、及びそれにより前記音響信号の異なるボリュームを触覚的に再現するように構成されてもよい。したがって、強い振動は、前記身体に着用可能な要素の着用者からの大きな信号に関連付けられ得る。弱い振動は、前記身体に着用可能な要素の着用者からの弱い信号に関連している場合がある。
【0019】
前記少なくとも1つの圧電素子は、異なる周波数で振動するように構成されてもよい。好ましくは、前記圧電素子は、触覚印象を生成するために、それによって前記圧電素子が振動する周波数が、前記圧電素子の共振周波数から遠く離れるように、構成される。したがって、周波数依存的に振動振幅を変化させる共振効果はない。前記圧電素子が異なる周波数で振動するように構成されている場合、前記身体に着用可能な要素の着用者に対して、前記音響信号の異なる周波数を触覚的に再現することができる。
【0020】
前記身体に着用可能な要素は、その中に前記音響信号が蓄積されるメモリを含んでもよい。さらに、前記音響信号に対応する前記触覚信号は前記メモリ内に保存できるため、これを再計算する必要はない。いくつかの音響信号と、場合によっては前記それと関連する触覚信号とを前記メモリ内に保存できる。メモリに保存された信号は、例えば、治療の過程で聴覚の再学習を支援するために使用できる。その際、前記触覚信号は、ユーザーに1回又は繰り返し提示できる。
【0021】
代替的又は追加的に、前記身体に着用可能な要素は、前記音響信号を受信するように構成されたマイクロホンを含んでもよい。したがって、前記身体に着用可能な要素のすぐ近くで現在発生している音響信号は、前記身体に着用可能な要素の着用者に、触覚的に知覚可能にすることができる。そのような身体に着用可能な要素は、特に音楽の触覚再生のために考えられる。例えば、コンサート中にそれを着用できる。
【0022】
前記少なくとも1つの圧電素子は、基体と補強ユニットとを有してもよい。前記基体において内部電極と圧電層とが積層方向に交互に積層されてもよい。前記補強ユニットは、前記基体の上側に配置することができる。前記補強ユニットは、前記積層方向に垂直な方向における前記基体の長さの変化を、積層方向における前記補強ユニットの長さの変化に変換するように構成されてもよい。特に、前記補強ユニットは、前記基体の振動を増幅するように、及びその際特に振動の振幅を増加させるように設計されてもよい。前記補強ユニットは、それが前記基体の振動振幅を増幅するように、前記基体に取り付けられてもよい。この目的のために、前記補強ユニットは、例えば、円錐台形シートを有していてもよい。前記シートは、例えばチタンから成り得る。前記補強ユニットは、純粋に機械的な要素であってもよい。したがって、前記補強ユニットは、機械的補強ユニットとも呼ばれ得る。
【0023】
前記身体に着用可能な要素は、それぞれが、振動するように、及びこのようにして音響信号の触覚印象を生成するように構成された、複数の圧電要素を含んでいてもよい。これらの圧電素子の各々は、その際前記電子機器(ELektronik)によって制御できる。これらの圧電素子の各々は、この方法でさまざまな音の周波数、リズム、音量を再生するため、異なる周波数で、異なる時間間隔で、及び異なる振幅で振動するように構成されてもよい。
【0024】
前記身体に着用可能な要素は、例えば、衣服又はアクセサリであってもよい。前記衣服は、シャツ、靴下、VRアプリケーション用スーツスーツ、ダイビングスーツ、フライトスーツ、又はスポーツスーツである。前記アクセサリは、例えば、指輪、時計、宝飾品、治療補助具(Heilbehelf)、ベルト、ヘッドフォン、眼鏡、接着要素、例えば絆創膏又は医療機器の電極など、手袋、チェストストラップ、又はカフスである。好ましくは、前記圧電素子は、前記着用者の触覚的に特に敏感な場所に位置する前記身体に着用可能な要素上の位置に配置される。例えば、指先は特に触覚信号に対して敏感である。腹腔神経叢(Solarplexus)は、低周波数の信号に特に敏感である。
【0025】
前記圧電素子は、セラミックアクチュエータ、ピエゾ活性ポリマー材料を含むアクチュエータ、又はピエゾ抵抗性ポリマー材料を含むアクチュエータであり得る。前記圧電素子は、前記身体に着用可能な要素内に織り込まれた圧電活性材料を含んでもよい。
【0026】
別の態様によれば、本発明は、音楽を触覚的に知覚可能にするための前記身体に着用可能な要素の使用に関する。
【0027】
以下において、有利な態様が説明される。参照を容易にするために、前記態様には連続した番号が付けられている。態様の特徴は、それらが関連する特定の態様との組み合わせだけでなく、個別にも関連する。
【0028】
1.衣服であって、振動するように、及びこのようにして音響信号の触覚印象を生成するように構成された少なくとも1つの圧電素子(1)を含む、それにより音響信号の触覚印象を生成するように構成された少なくとも1つの圧電素子を含む衣服。
【0029】
2.態様1に記載の衣服であって、ここで、当該衣服は、前記音響信号の周波数にスケーリング係数を掛けるように、及びそれにより前記音響信号を触覚的に知覚可能な信号に変換するように構成された電子機器を含む、衣服。
【0030】
3.態様2に記載の衣服であって、前記電子機器は、前記触覚的に知覚可能な信号の周波数を有する交流電圧を前記少なくとも1つの圧電素子に印加するように構成される、衣服。
【0031】
4.態様1~3のいずれか一項に記載の衣服であって、ここで、前記圧電素子は、異なるサイズの振幅で振動するように、及びそれにより前記音響信号の異なるボリュームを触覚的に再現するように構成される、衣服。
【0032】
5.態様1~4のいずれか一項に記載の衣服であって、ここで、前記少なくとも1つの圧電素子は、異なる周波数で振動するように構成される、衣服。
【0033】
6.態様1~5のいずれか一項に記載の衣服であって、
ここで、当該衣服は、その中に前記音響信号が蓄積されるメモリを含む、及び/又は
ここで、当該衣服は、前記音響信号を受信するように適合されたマイクロホンを含む、衣服。
【0034】
7.態様1~6のいずれか一項に記載の衣服であって、
ここで、前記少なくとも1つの圧電素子は、内部電極と圧電層とが積層方向に交互に積層された基体と、補強ユニットとを含み、ここで、前記補強ユニットは、前記基体の上側に配置され、且つ、前記積層方向に垂直な方向における前記基体の長さの変化を、前記積層方向における前記補強ユニットの長さの変化に変換するように構成される、衣服。
【0035】
8.態様7に記載の衣服であって、
ここで、前記補強ユニットは円錐台形シートを有する、衣服。
【0036】
9.態様1~8のいずれか一項に記載の衣服であって、
ここで、当該衣服は、それぞれが、振動するように、及びこのようにして音響信号の触覚印象を生成するように構成された複数の圧電素子を含む、衣服。
【0037】
10.態様1~9のいずれか一項に記載の衣服であって、
当該衣服は、手袋、チェストストラップ、又は靴下のことである、衣服。
【0038】
11.音楽を触覚的に知覚可能にするための、態様1~10のいずれか一項に記載の衣服の使用。
【0039】
以下において、図面を参照して本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図2】
図2は、衣服の第1の実施形態を示している。
【
図3】
図3は、衣服の第2の実施形態を示している。
【
図4】
図4は、衣服の第3の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、触覚印象を作成するために身体に着用可能な要素で使用できる圧電素子1を断面で示している。
【0042】
前記圧電素子1は、基体2と機械的補強ユニット3とを含む。前記基体2は、積層方向Sに、交互に積層されている第1の内部電極4と第2の内部電極5とを含む。前記内部電極4、5は銅から作られていてもよい。また、前記基体2は、前記第1の内部電極4に電気的に接続された第1の外部電極6を含む。前記基体2はまた、第2の外部電極7を有し、ここで、前記第2の内部電極5は、前記第2の外部電極7と電気的に接触している。前記第1の外部電極6及び前記第2の外部電極7は、前記基体の反対側の側面に配置されており、ここで、前記側面の表面法線は、それぞれ前記積層方向Sに垂直である。
【0043】
さらに、前記基体は圧電層8を含み、ここで、それぞれ1つの圧電層8が2つの内部電極4、5の間に配置される。前記圧電層8は、チタン酸ジルコン酸鉛セラミック(PZTセラミック)で作られていてもよい。前記圧電層8は、積層方向Sにおいて分極されている。前記基体2は、内部電極4、5間に印加される電圧の結果として、前記積層方向Sに垂直な方向の長さの変化を経験するように設計されている。その際、圧電d31効果が使用される。
【0044】
前記基体2は、平らな直方体のデザインを有する。前記基体2は、0.2cm×0.2cmから2.0cm×2.0cmの範囲の寸法の正方形の底面(Grundflaeche)、及び0.2mmから1mmの高さを有してもよい。前記高さは、その場合、前記積層方向Sにおける前記基体2の広がりを示す。前記底面の表面法線は前記積層方向Sを向いている。
【0045】
前記基体2のすぐ上側には、前記機械的補強ユニット3が配置されている。前記機械的補強ユニット3は、チタンシートを有する。前記シートは、実質的に円錐台形状をしている。前記シートは、前記基体2の前記積層方向Sに垂直な方向の長さの変化を、前記補強ユニット3の積層方向Sの長さの変化に変換するように構成されている。
【0046】
前記補強ユニット3は、前記基体2の上側に固定されるエッジ領域9を有する。前記補強ユニット3は、前記エッジ領域9に隣接し、且つ、前記エッジ領域9に対して移動可能な中間領域10をさらに有する。前記補強ユニットは、前記エッジ領域9が一緒に引っ張られるか又は引き離されると、前記中間領域10がかなり上昇又は下降するように成形される。この場合、前記基体2の上部から前記中間領域10の距離が変化する場合がある。したがって、前記内部電極4、5の間に印加される電圧の結果として前記基体2が横方向の収縮を経験する場合、これは前記機械的増幅ユニット3によって、増加した振幅を有する積層方向Sの振動に変換される。
【0047】
第2の補強ユニット3は、本体2の下側に配置されており、それは、前記基体の上部の反対側にある。前記第2の補強ユニット3は、上述した補強ユニット3と同じ構成を有している。
【0048】
代替実施形態において、前記機械的補強ユニット3なしで前記圧電素子1を設計することができる。この場合、圧電素子1の機械的振動は、増幅ユニット3によって増幅されないであろう。ただし、それらは触覚的に知覚可能な印象を作り出すのに十分な振幅を持つ可能性がある。
【0049】
図2は、前記
図1に示される圧電素子1を有する身体に着用可能な要素11の第1の実施例を示す。前記身体に着用可能な要素11は、衣服、特に手袋のことである。前記手袋は5つの圧電素子1をふくむ。前記圧電素子1の各々1は、前記手袋の指先に配置されている。前記身体に着用可能な要素11は、配線13を介して各圧電要素1に接続された電子機器12をさらに含む。
【0050】
前記電子機器12は、前記圧電素子1を駆動するように、及び特に前記内部電極4、5間に電圧を印加するように構成される。これにより、前記圧電素子1の振動が誘発される。この振動は、触覚印象として前記身体に着用可能な要素11の着用者によって知覚され得る。各1本の指先に前記5つの圧電素子1を配置することにより、着用者の各指に異なる触覚印象を生成できる。
【0051】
前記身体に着用可能な要素11は、音響信号の触覚印象を生成するように構成されている。この場合、前記電子機器12は、前記音響信号の周波数にスケーリング係数を掛け、前記音響信号を触覚的に知覚可能な周波数スペクトルに変換するように設計されている。触覚的に知覚可能な周波数は、音響的に知覚可能な周波数よりも低い周波数スペクトルにある。
【0052】
前記電子機器12は、異なる周波数及び異なる振幅で前記圧電素子1を振動させるように構成されてもよい。前記異なる周波数は異なるピッチを可能にし、及びしたがって、前記身体に着用可能な要素11の着用者が、メロディーを触覚的に知覚することを可能にする。前記異なる振幅は、前記音響信号の異なる音量を触覚的に再現することを可能にする。
【0053】
図3は、前記
図1に示される圧電素子1を有する衣服の第2の実施例を示す。前記衣服はチェストストラップのことである。前記チェストストラップは、単一の圧電素子1を含む。前記圧電素子1は、前記衣服の着用者の腹腔神経叢の高さに位置するように前記衣服に配置される。前記衣服は、低音の深い音を触覚的に知覚可能にするのに特に適している。そのような音は、特に腹腔神経叢を介して触覚的に知覚することができる。音響信号の低周波数もこのような衣服なしで触覚的に知覚できることは事実であるが、その場合、第三者にとって不快と知覚される可能性がある特定の最小音量が想定される。前記衣服は、前記音響信号をノイズなしに触覚印象に変換することを可能にする。
【0054】
図4は、
図1の圧電素子1を有する衣服の第3の実施形態を示している。前記衣服はシャツのことである。前記衣服には、8つの圧電素子1が異なる位置に取り付けられている。これらの圧電素子1のそれぞれは、電子機器12によって駆動することができる。
【0055】
図1に示す前記圧電素子1は、あらゆる任意の衣服や任意のアクセサリに使用できる。例えば、
図1に示される前記圧電素子1が織り込まれた靴下も可能である。この場合、これは特に前記靴下の着用者の下側の足に配置することができる。なぜなら、前記足の裏側は特に触覚印象に敏感だからである。
【符号の説明】
【0056】
1 圧電素子
2 基体
3 補強ユニット
4 第1の内部電極
5 第2の内部電極
6 第1の外部電極
7 第2の外側電極
8 圧電層
9 周縁領域
10 中間領域
11 身体に着用可能な要素
12 電子機器
13 配線
S 積層方向