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特許7021243空間出力からスペクトル形状を回復する装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】空間出力からスペクトル形状を回復する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/26 20060101AFI20220208BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220208BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220208BHJP
   G01J 3/36 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
G01J3/26
G03F7/20 502
G03F7/20 521
H01S3/00 G
G01J3/36
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019548411
(86)(22)【出願日】2018-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018025738
(87)【国際公開番号】W WO2018191056
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2019-11-01
(31)【優先権主張番号】62/483,423
(32)【優先日】2017-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/651,935
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513192029
【氏名又は名称】サイマー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】キング,ブライアン,エドワード
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0341602(US,A1)
【文献】特表平11-507143(JP,A)
【文献】特開2014-038042(JP,A)
【文献】国際公開第2016/124659(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00- G01J 3/51
G01M 11/00
G03F 7/20
H01S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームの光学スペクトルを推定する方法であって、
スペクトロメータの個別の空間領域に前記光ビームを投影し、前記空間領域のそれぞれが、スペクトロメータのスペクトル分散装置により分離された、前記光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンを受け取り、前記空間領域のそれぞれは、検出器の1つ以上の結像素子で構成された表面であること、
前記投影した光ビームの特性を前記スペクトロメータの前記個別の空間領域のそれぞれで検出すること、
各成分が1つ以上の空間領域と各スペクトル特徴との関係を提供し、前記スペクトロメータの入出力関係に関連する、2次元行列を受け取ること、及び
前記光ビームの前記光学スペクトルを前記検出した光ビーム特性と、前記受け取った2次元行列と、をともに使用した解析に基づいて推定すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記スペクトロメータの個別の空間領域に前記光ビームを投影することが、
各フィルタリングされたバージョンを異なる方向又は異なる角度に沿って送ることを含む、前記光学スペクトルの前記異なるフィルタリングされたバージョンを分離すること、及び
これらの分離したフィルタリングされたバージョンを各空間領域に投影すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スペクトロメータの個別の空間領域に前記光ビームを投影することが、
互いに干渉する複数の光ビームを生成すること、及び
前記光学スペクトルの前記異なるフィルタリングされたバージョンが、前記スペクトロメータの透過の際の異なる光共振から生じること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記投影した光ビームの特性を前記個別の空間領域で検出することが、前記投影した光ビームを通って延びる少なくとも1つの半径方向経路に沿って前記光ビームの強度を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
試験光ビームを前記スペクトロメータと相互作用させること、
前記試験光ビームのスペクトル特徴を、N個の個別のスペクトル特徴の範囲にわたって変化させること、及び
前記範囲内の各スペクトル特徴について、
前記試験光ビームの特性を各空間領域で検出すること、
前記試験光ビームの前記検出した特性を、前記スペクトロメータの前記入出力関係を捉えた予備2次元行列の前記スペクトル特徴に基づいて割り当てられた列として、前記スペクトロメータのM個の空間領域のそれぞれに記憶すること、及び
前記2次元行列を前記予備2次元行列に基づいて計算すること、
によって前記2次元行列を作成することをさらに含み、
前記2次元行列の行の数及び前記予備2次元行列の列の数はNに等しく、前記2次元行列の列の数及び前記予備2次元行列の行の数はMに等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光ビームの前記光学スペクトルを推定することが、前記2次元行列と前記検出した光ビーム特性との行列乗算を実行することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記個別のスペクトル特徴の数Nが、前記推定した光学スペクトルの解像度を決定する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記スペクトロメータの前記入出力関係を捉えた予備2次元行列の擬似逆行列を計算することによって前記2次元行列を作成すること、
前記2次元行列を記憶すること、をさらに含み、
前記光ビームの前記光学スペクトルを推定することが、前記2次元行列と前記検出した光ビーム特性との行列乗算を実行することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
雑音からの寄与が信号からの寄与を上回る行列積の成分を減らすことによって、雑音の影響を減らすことをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記投影した光ビームの前記検出した特性をアレイに記憶することをさらに含み、前記アレイの行の数が、1つの空間方向の前記スペクトロメータの個別の空間領域の行の数に一致し、前記アレイの列の数が、もう1つの空間方向の前記スペクトロメータの個別の空間領域の列の数に一致する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記推定した光学スペクトルに基づいてスペクトル特徴を計算することをさらに含み、前記スペクトル特徴が、波長及び帯域幅の1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
光ビームの経路にあるスペクトロメータと、
前記スペクトロメータに接続された制御システムと、を備えたメトロロジ装置であって、
前記スペクトロメータが、
前記光ビームを光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンに分離するように構成されたスペクトル分散装置と、
投影した光ビームの経路にあり、個別の空間領域を画定する検出器であって、前記光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンを各空間領域で受け取り、前記投影した光ビームの特性を各個別の空間領域で検出するように構成された検出器と、を備え、
前記各空間領域は、検出器の1つ以上の結像素子で構成された表面であり、
前記制御システムが、
各成分が1つ以上の空間領域と各スペクトル特徴との関係を提供する2次元行列であって、前記スペクトロメータの入出力関係に関連する2次元行列を受け取り、
前記検出した光ビーム特性及び前記受け取った2次元行列を解析し、
前記解析に基づいて前記光ビームの光学スペクトルを推定するように構成された、
メトロロジ装置。
【請求項13】
前記スペクトル分散装置が、
互いに干渉する複数の光ビームを生成することによって、前記光ビームを前記光学スペクトルの前記異なるフィルタリングされたバージョンに角度分離するように構成されたエタロンと、
前記異なるフィルタリングされたバージョンを前記検出器の前記個別の空間領域に投影するように構成されたレンズと、を備えた干渉光学装置を備え、
前記検出器の前記空間領域が、半径方向に沿って中心領域から配置される、
請求項12に記載のメトロロジ装置。
【請求項14】
前記検出器が、一方向に沿って延びるフォトダイオード検出器のアレイを備える、請求項12に記載のメトロロジ装置。
【請求項15】
前記制御システムが、前記検出した前記投影した光ビームの特性をアレイに記憶するように構成されたメモリを備え、前記アレイの行の数が、第1の空間方向の前記検出器の個別の空間領域の行の数に一致し、前記アレイの列の数が、第2の空間方向の前記検出器の個別の空間領域の列の数に一致する、請求項14に記載のメトロロジ装置。
【請求項16】
前記第1の空間方向が半径方向であり、前記第2の空間方向が前記半径方向に垂直である、請求項15に記載のメトロロジ装置。
【請求項17】
前記スペクトロメータが相互作用する試験光ビームを生成するように構成された試験光源と、
前記試験光ビームのスペクトル特徴を制御するスペクトル特徴駆動装置と、
をさらに備えた、請求項12に記載のメトロロジ装置。
【請求項18】
前記スペクトル特徴駆動装置が、前記試験光ビームが前記スペクトロメータと相互作用する間、N個の個別のスペクトル特徴の範囲にわたって前記試験光ビームのスペクトル特徴を変化させるように構成され、
前記検出器が、前記試験光ビームの特性を各空間領域で検出するように構成され、
前記制御システムが、前記試験光源及び前記スペクトル特徴駆動装置に接続され、前記範囲内の各スペクトル特徴について、前記試験光ビームの前記検出した特性を、前記スペクトロメータの前記入出力関係を捉えた予備2次元行列の前記スペクトル特徴に基づいて割り当てられた列として、前記スペクトロメータのM個の空間領域のそれぞれに記憶することによって、前記2次元行列を作成するように構成された、請求項17に記載のメトロロジ装置。
【請求項19】
前記試験光ビームが、前記光ビームの帯域幅よりも5から500,000倍小さい帯域幅を有する、請求項17に記載のメトロロジ装置。
【請求項20】
前記試験光源が単一周波数全固体レーザを含む、請求項17に記載のメトロロジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、RECOVERING SPECTRAL SHAPE FROM SPATIAL OUTPUTという名称の2017年4月9日出願の米国出願第62/483,423号、及びRECOVERING SPECTRAL SHAPE FROM SPATIAL OUTPUTという名称の2017年7月17日出願の米国出願第15/651,935号の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 開示される主題は、例えばエタロンスペクトロメータにより生成された空間出力から光ビームのスペクトル形状を回復し、それにより光ビームの1つ以上のスペクトル特徴(帯域幅又は波長など)を推定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 半導体リソグラフィ(又はフォトリソグラフィ)は、集積回路(IC)の製造に半導体(例えばシリコン)基板(ウェーハとも呼ばれる)上に種々の物理的及び化学的プロセスを実行することを含む。フォトリソグラフィ露光装置又はスキャナは、所望のパターンを基板のターゲット部分上に与える機械である。ウェーハは軸方向に沿って延びる光ビームによって照射され、概ね軸方向に実質的に直交する横平面に沿って延びるようにステージに固定される。光ビームは、例えば約10ナノメートル(nm)から約400nmの深紫外線(DUV)領域の波長を有する。光ビームは、(ウェーハが延在する横平面と直交する)軸方向に沿って移動する。
【0004】
[0004] 光ビームのスペクトル特徴を測定するのにスペクトル解析モジュールが使用され、このように測定されたスペクトル特徴を用いて光ビームの態様を制御する。光ビームを制御することによって、様々なリソグラフィ特性を制御することができる。例えば、ウェーハにおける最小フィーチャサイズ、すなわちクリティカルディメンション(CD)を制御することができる。又は、オーバーレイ、表面粗さ、及び近接効果補正などのパターン特性を制御することができる。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 一部の一般的な態様において、光ビームの光学スペクトルを推定する方法が実行される。この方法は、それぞれが光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンを受け取る、スペクトロメータの個別の空間領域に光ビームを投影すること、投影した光ビームの特性をスペクトロメータの個別の空間領域のそれぞれで検出すること、各成分が1つ以上の空間領域と各スペクトル特徴との関係を提供する2次元行列であって、スペクトロメータの入出力関係に関連する2次元行列を受け取ること、及び光ビームの光学スペクトルを、検出した光ビーム特性と受け取った2次元行列とをともに使用した解析に基づいて推定すること、を含む。
【0006】
[0006] 実装形態は以下の特徴の1つ以上を含むことができる。例えば光ビームは、光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンを分離すること、及びこれらの分離したフィルタリングされたバージョンを各空間領域に投影することによってスペクトロメータの個別の空間領域に投影することができる。光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンは、各フィルタリングされたバージョンを異なる方向又は角度に沿って送ることによって分離することができる。
【0007】
[0007] 光ビームは、互いに干渉する複数の光ビームを生成することによってスペクトロメータの個別の空間領域に投影することができ、光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンは、スペクトロメータの透過の際の異なる光共振から生じることができる。
【0008】
[0008] 各空間領域は、検出器の1つ以上の結像素子で構成された表面でよい。
【0009】
[0009] 投影した光ビームの特性は、投影した光ビームを通って延びる少なくとも1つの半径方向経路に沿って光ビームの強度を検出することによって、個別の空間領域で検出することができる。投影した光ビームの特性は、光学スペクトルのフィルタリングされたバージョンによって空間領域に付与されたエネルギーを検出することによって、個別の空間領域で検出することができる。
【0010】
[00010] 方法は、試験光ビームをスペクトロメータと相互作用させること、試験光ビームのスペクトル特徴を、N個の個別のスペクトル特徴の範囲にわたって変化させること、及び範囲内の各スペクトル特徴について、試験光ビームの特性を各空間領域で検出すること、及び試験光ビームの検出した特性をスペクトロメータのM個の空間領域のそれぞれに予備2次元行列の列として記憶すること、によって2次元行列を作成することを含むことができる。列はスペクトル特徴に基づいて割り当てられ、予備2次元行列はスペクトロメータの入出力関係を捉える。2次元行列は、予備2次元行列に基づいて計算することができる。2次元行列の行の数及び予備2次元行列の列の数はNに等しくてよく、2次元行列の列の数及び予備2次元行列の行の数はMに等しくてよい。光ビームの光学スペクトルは、2次元行列と検出した光ビーム特性との行列乗算を実行することによって推定することができる。試験光ビームは、光ビームの帯域幅よりも5から500,000倍小さい帯域幅を有することができる。個別のスペクトル特徴の数Nは、推定した光学スペクトルの解像度を決定することができる。
【0011】
[00011] 方法は、スペクトロメータの入出力関係を捉えた予備2次元行列の擬似逆行列を計算することによって2次元行列を作成すること、及び2次元行列を記憶することを含むことができる。光ビームの光学スペクトルは、2次元行列と検出した光ビーム特性との行列乗算を実行することによって推定することができる。予備2次元行列の擬似逆行列は、予備2次元行列に特異値分解を行うことによって計算することができる。方法は、雑音からの寄与が信号からの寄与を上回る行列積の成分を減らすことによって、雑音の影響を減らすことを含むことができる。
【0012】
[00012] スペクトル特徴は波長であってよく、光学スペクトルは、光ビームの光パワーの異なる波長への分布を記述することができる。
【0013】
[00013] 方法は、投影した光ビームの検出した特性をアレイに記憶すること含むことができる。アレイの行の数は、1つの空間方向のスペクトロメータの個別の空間領域の行の数に一致し、アレイの列の数は、もう1つの空間方向のスペクトロメータの個別の空間領域の列の数に一致する。アレイの列の数は1に等しくてよく、アレイの行の数はMに等しくてよく、2次元行列の列の数はMに等しくてよい。
【0014】
[00014] 方法は、推定した光学スペクトルに基づいてスペクトル特徴を計算すること含むことができる。スペクトル特徴は波長及び帯域幅の1つ以上を含むことができる。
【0015】
[00015] 他の一般的な態様において、メトロロジ装置が光ビームの光学スペクトルを推定するように構成される。装置は、光ビームを光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンに分離するための、及びそれぞれが光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンを受け取る個別の空間領域に光ビームを投影するためのスペクトル分散手段と、投影した光ビームの特性を各空間領域で検出するための検出手段と、処理手段とを備える。処理手段は、各成分が1つ以上の空間領域と各スペクトル特徴との関係を提供する2次元行列であって、スペクトル分散手段の入出力関係に関連する2次元行列を受け取り、検出した光ビーム特性及び受け取った2次元行列を解析し、解析に基づいて光ビームの光学スペクトルを推定するためのものである。
【0016】
[00016] 他の一般的な態様において、メトロロジ装置は光ビームの経路にあるスペクトロメータと、スペクトロメータに接続された制御システムとを備える。スペクトロメータは、光ビームを光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンに分離するように構成されたスペクトル分散装置と、投影した光ビームの経路にあり、個別の空間領域を画定する検出器であって、光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンを各空間領域で受け取り、投影した光ビームの特性を各個別の空間領域で検出するように構成された検出器と、を備える。制御システムは、各成分が1つ以上の空間領域と各スペクトル特徴との関係を提供する2次元行列であって、スペクトロメータの入出力関係に関連する2次元行列を受け取り、検出した光ビーム特性及び受け取った2次元行列を解析し、解析に基づいて光ビームの光学スペクトルを推定するように構成される。
【0017】
[00017] 実装形態は以下の特徴の1つ以上を含むことができる。例えばスペクトル分散装置は、2次元行列に従って光ビームの空間依存スペクトルフィルタリングを行い、光ビームの異なる波長を異なる透過強度で透過させることによって、光ビームを光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンに分離するように構成されてよい。
【0018】
[00018] スペクトル分散装置は干渉光学装置を備えることができる。干渉光学装置は、互いに干渉する複数の光ビームを生成することによって、光ビームを光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンに分離するように構成されたエタロンと、異なるフィルタリングされたバージョンを検出器の個別の空間領域に投影するように構成されたレンズとを備えることができる。エタロンは光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンを角度分離することができ、検出器の空間領域は半径方向に沿って中心領域から配置することができる。2次元行列の行の数はNに等しくてよく、Nは2次元行列の行に記憶されている個別のスペクトル特徴の範囲に等しくてよい。個別のスペクトル特徴の範囲は、エタロンの少なくとも1つの自由スペクトル領域に及ぶことができ、個別のスペクトル特徴の数Nは、推定した光学スペクトルの解像度を決定する。
【0019】
[00019] 検出器はフォトダイオード検出器装置を含むことができる。フォトダイオード検出器装置は、一方向に沿って延びるフォトダイオードアレイを備えることができる。
【0020】
[00020] 検出器は、スペクトル特徴分布により個別の空間領域に付与されたエネルギーを検知することができる。
【0021】
[00021] 制御システムは、検出した投影した光ビームの特性をアレイに記憶するように構成されたメモリを備えることができ、アレイの行の数は、第1の空間方向の検出器の個別の空間領域の行の数に一致し、アレイの列の数は、第2の空間方向の検出器の個別の空間領域の列の数に一致する。第1の空間方向は半径方向であってよく、第2の空間方向は半径方向に垂直であってよい。アレイの列の数は1に等しくてよく、アレイの行の数はMに等しくてよく、2次元行列の列の数はMに等しくてよい。
【0022】
[00022] 試験光源は試験光ビームを生成するように構成されてよい。スペクトロメータは試験光ビームと相互作用することができる。スペクトル特徴駆動装置が試験光ビームのスペクトル特徴を制御することができる。スペクトル特徴駆動装置は、試験光ビームがスペクトロメータと相互作用する間、N個の個別のスペクトル特徴の範囲にわたって試験光ビームのスペクトル特徴を変化させるように構成されてよく、検出器は、試験光ビームの特性を各空間領域で検出するように構成されてよく、制御システムは、試験光源及びスペクトル特徴駆動装置に接続することができる。制御システムは、範囲内の各スペクトル特徴について、試験光ビームの検出した特性を、スペクトロメータの入出力関係を捉えた予備2次元行列のスペクトル特徴に基づいて割り当てられた列として、スペクトロメータのM個の空間領域のそれぞれに記憶することによって、2次元行列を作成するように構成されてよい。
【0023】
[00023] 試験光ビームは、光ビームの帯域幅よりも5から500,000倍小さい帯域幅を有することができる。試験光源は単一周波数全固体レーザを含むことができる
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】[00024] 光源により生成されウェーハに誘導される光ビームのスペクトル特徴を、検出された光ビームの特性及び2次元行列に少なくとも部分的に基づいて測定又は解析するメトロロジ装置のブロック図である。
図2】[00025] 図1のメトロロジ装置が組み込まれたフォトリソグラフィシステムのブロック図である。
図3】[00026] メトロロジ装置が図2のフォトリソグラフィシステムにどのようにして組み込まれるかを示すブロック図である。
図4A】[00027] 光干渉型デバイスであるスペクトロメータを備えた例示的なメトロロジ装置のブロック図である。
図4B】[00028] 図4Aのスペクトロメータで使用可能な例示的な検出器の側面平面図である。
図5】[00029] メトロロジ装置の出力から形成されたフリンジパターンと、2次元行列が計算される予備2次元行列と、光ビームの光学スペクトルとの関係を示す1組のグラフを示す図である。
図6A】[00030] 光ビームの光学スペクトルと、予備2次元行列と、メトロロジ装置の出力から形成されたフリンジパターンとの間の関係をグラフ形式で示した図である。
図6B】[00031] 図6Aの予備2次元行列の擬似逆行列である2次元行列及びメトロロジ装置の出力から形成されたフリンジパターンに基づいて、どのようにして光ビームの光学スペクトルを回復するかをグラフ形式で示した図である。
図7】[00032] 図1又は図4のスペクトロメータのための2次元行列を決定するのに使用される例示的な試験装置のブロック図である。
図8】[00033] 図2のフォトリソグラフィシステムの例示的な制御システムのブロック図である。
図9】[00034] 光ビームを生成する例示的な光源のブロック図である。
図10】[00035] 光ビームの1つ以上のスペクトル特徴を制御するための例示的なスペクトル特徴選択装置のブロック図である。
図11】[00036] 試験制御モジュールにより行われる2次元行列を作成する手順のフローチャートである。
図12】[00037] 図1のメトロロジ装置により行われる光ビームの光学スペクトルを推定する手順のフローチャートである。
図13】[00038] 図6Aの予備2次元行列の擬似逆行列として計算された図6Bの2次元行列を示す例示的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[00039] 図1を参照すると、メトロロジ装置100は、スペクトロメータ115と、スペクトロメータ115と通信するメトロロジ制御モジュール105とを備える。メトロロジ制御モジュール105は、スペクトロメータ115からの出力及びスペクトロメータ115の入出力関係に関連する2次元行列120の解析に少なくとも部分的に基づいて、パルス光ビーム110’の光学スペクトル107を直接回復する(又は特徴付ける)。
【0026】
[00040] パルス光ビーム110’の光学スペクトル107は、パルス光ビーム110’の光エネルギー、強度、又はパワーをどのようにして異なる波長(又は光周波数)に分布させるかについての情報を含む。光ビーム110’の光学スペクトル107は図式的に描かれており、スペクトル強度150は波長155又は光周波数の関数としてプロットされている。光ビーム110’のスペクトル特徴は光学スペクトル107の態様又は表現を含む。例えば特定の強度値における波長はスペクトル特徴である(ピーク強度における波長160など)。別の例として、光学スペクトル107の形状の幅165はスペクトル特徴である。この幅は帯域幅といわれることもある。したがって、光ビーム110’の光学スペクトル107を回復又は推定することによって、これら1つ以上のスペクトル特徴を計算することができる。
【0027】
[00041] 同様に図2を参照すると、メトロロジ装置100に誘導される光ビーム110’は、フォトリソグラフィ露光装置(すなわちスキャナ)205内の半導体基板(ウェーハ)200に誘導されるパルス光ビーム110から分離される。このため、図3にも示されているように、ビームスプリッタなどのビーム分離器260を使用して、光ビーム110’の形態をとる光ビーム110の一部を取り除き、メトロロジ装置100に誘導することができる。一部の実装形態では、パルス光ビーム110の大部分はフォトリソグラフィ露光装置205に誘導される。例えばビーム分離器260は、パルス光ビーム110の一部(例えば1~2%)をメトロロジ装置100に誘導し、結果としてパルス光ビーム110’のパワーはパルス光ビーム110のパワーの約1~2%である。
【0028】
[00042] 光ビーム110及びウェーハ200は互いに対してスキャン(移動)されることによってウェーハ200上にマイクロ電子フィーチャをパターン付与する。光ビーム110のスペクトル特徴は、ウェーハ200での結像品質に直接的な影響を与える。光ビーム110のスペクトル特徴は、任意の適切な1つ以上のメトリックを使用して定量化することができ、これらのメトリックは、ウェーハ200へのパターン付与中に光ビーム110のスペクトル特徴を制御するために光ビーム110を調整する必要があるかどうか判断するために、メトロロジ制御モジュール105が測定及び解析することができる。
【0029】
[00043] 光ビーム110の帯域幅は光学スペクトル107の幅165の測度であり、この幅165はレーザ光の波長、周波数、又は波数の点から付与することができる。光ビームの帯域幅を推定するのに光学スペクトル107の詳細に関連する任意の好適な数学的枠組み(すなわち、メトリック)を使用することができる。例えば、光ビームの帯域幅を特徴付けるのに、スペクトル形状の最大ピーク強度のフラクション(X)における光学スペクトル107の全幅(FWXMと称する)を使用することができる。一例として、一般的に使用されるスペクトル形状の特徴付けでは、フラクションXは50%であり、各メトリックは半値全幅(FWHM)といわれる。他の例として、光ビームの帯域幅を特徴付けるのに、積分スペクトル強度のフラクション(Y)を含む光学スペクトル107の幅(EYと称する)を使用することができる。一実施例では、光ビーム110のスペクトル特性を特徴付けるのに一般的に使用されるフラクションYは95%である。
【0030】
[00044] 上述のように、メトロロジ装置100は、スペクトロメータ115からの出力を解析するために、スペクトロメータ115からの出力だけでなく2次元行列120をも使用することによって、ウェーハ200のパターニングを制御するために上記の光ビーム110のスペクトル特徴を測定又は解析する正確な方法を提供する。
【0031】
[00045] 図1を再度参照すると、スペクトロメータ115は、スペクトル分散装置125と、複数の個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)(ここでiは個別の空間領域の総数である)を有する検出器130とを備える。スペクトル分散装置125は、光ビーム110’を、光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)(ここでjは光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョンの総数である)に分離するように構成された任意のデバイスである。スペクトル分散装置125は、2次元行列120に従って他のものよりも光ビーム110’の特定の波長又はスペクトル特徴を優先的に透過させる。スペクトル分散装置125は、これらの異なるフィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)を検出器130の個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)に投影する。スペクトル分散装置125は、2次元行列120に従って光ビーム110’の空間依存スペクトルフィルタリングを行い、光ビーム110’の異なる波長を異なる透過強度で透過させることによって、光ビーム110’を異なるフィルタリングされたバージョンに分離する。
【0032】
[00046] 個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)は、光ビーム110’が進んでいる方向に垂直な平面に沿って延在することができる。例えば光ビーム110’の大まかな方向がZ方向に沿っており、検出器130に誘導される異なるフィルタリングされたバージョンが概ねZ方向に沿って進む場合は、空間領域135(1)、135(2)、...135(i)は、Z方向と垂直な平面(例えばX-Y平面)内に位置することができる。個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)は、この平面内に任意の形状に配置することができる。例えば個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)は、アレイ状に配置することができる。アレイはX方向とY方向の両方向に沿って延びる2次元アレイでよい。アレイは、X-Y平面又は半径方向に沿って位置する方向にそって延びる1次元アレイでもよい。
【0033】
[00047] 個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)の総数iは、検出器130の設計、スペクトル分散装置125の設計、スペクトル分散装置125の性能、及び光ビーム110’のスペクトル特徴に依存する。個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)の総数iは、2から数十、数百、又は数千までの任意の値でよい。例えば個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)の数iは、異なるフィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)の数jに対応することができる。個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)の総数iはいくつかの要因によって制約される。例えば検出器130及び個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)は、光ビーム110’の波長に敏感である必要があり、光ビーム110’がDUV波長範囲にある場合は、検出器130はDUV波長を有する光に敏感でなければならない。さらに、個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)の総数iはまた、検出器130の最大読み出し速度及び光ビーム110’のパルス間隔によって制約される。光ビーム110’のパルスが6kHzの速度で生成され、光ビーム110’がDUV範囲の波長を有する例では、総読み出し時間Rは(空間領域における連続パルス間の間隔である)約167マイクロ秒(μs)である。ピクセルあたりの読み出し周波数Pと個別の空間領域の数Nの関係は、N(1/P)<Rの関係を満たす必要があり、これによって次の読み出しが行われる前に1つの読み出しからのデータを記憶及び/又は処理するのに十分な時間が与えられる。Rが約167μsで、ピクセルあたりの読み出し周波数Pが10MHzの場合は、個別の空間領域の総数iは1024となり得る。この例では、1024(1/10MHZz)が約102μsであり、167μsより短い。
【0034】
[00048] 光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)は、光ビーム110’のスペクトル特徴(波長)の値に基づいてスペクトル分散装置125により分離された光ビーム110’の強度の分布である。フィルタリングされたバージョン140(1)は、空間領域135(1)に投影されたバージョンと定義することができ、同様に、各フィルタリングされたバージョン140は、特定の空間領域135に投影されたフィルタリングされたバージョンと定義することができる。
【0035】
[00049] 一部の実装形態では、スペクトル分散装置125は、互いに光干渉する複数の光ビームを生成することによって光ビーム110’を光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)に分離する光干渉型デバイスである。光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)は、スペクトロメータ115の出力又は透過における異なる光共振から生じる。典型的な光干渉型デバイスはエタロン又は格子である。このようなデバイスは、異なるフィルタリングされたバージョンを検出器130の個別の空間領域に投影するように構成されたレンズと併用することができる。レンズは、光を検出器130の空間領域と一致する焦点面に結像するようにエタロンの出力に配置することができる。典型的な光干渉型デバイスは図4A及び4Bを参照して以下で考察される。
【0036】
[00050] 他の実装形態では、スペクトル分散装置125は、光ビーム110’を屈折という光学現象を用いて光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョンに分離する光分散型デバイスである。典型的な光分散型デバイスはプリズムであり、光ビーム110’の異なる波長は、プリズムの材料の屈折率が光ビーム110’の波長によって変化するためプリズムを通して異なる角度で屈折される。
【0037】
[00051] 検出器130は、光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)を各空間領域135(1)、135(2)、...135(i)で受け取り、投影された光ビームの特性(強度など)を各空間領域135(1)、135(2)、...135(i)で検出するように構成される。例えば検出器130は、各光学スペクトルのフィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)によって各空間領域135(1)、135(2)、...135(i)に付与されたエネルギーを検出又は検知することができる。空間領域135(1)、135(2)、...135(i)は、スペクトル特徴分布の光子が衝突及び相互作用する任意の表面又は領域であり、空間領域はメトロロジ制御モジュール105によるさらなる処理のために光子のエネルギーを電流に変換することができる。
【0038】
[00052] 一部の実装形態では、検出器130は、各フォトダイオードが個別の空間領域の機能を果たすフォトダイオードアレイを有するフォトダイオード検出器を備える。他の実装形態では、検出器130は、その各領域が個別の空間領域に対応する単一の光検出器(抵抗性光電陰極など)を備える。検出器130の各空間領域135(1)、135(2)、...135(i)は、検出器130の1つ以上の結像素子又は個別の検出領域(例えばフォトダイオード)から構成された表面でよい。検出器130の出力は電流、電荷、又は電圧の形態でよい。
【0039】
[00053] メトロロジ制御モジュール105は通常、検出器130からの検出された特性を記憶するメモリを備える又はこのメモリにアクセスすることができる。さらに、メモリは2次元行列120を記憶することができる、又はメトロロジ制御モジュール105は外部メモリから2次元行列120を受け取るための入力モジュールを備えることができる。
【0040】
[00054] 図3を参照すると、必須ではないが、メトロロジ装置100はいくつかある特徴の中で特にビームホモジナイザを備えたビーム生成システム300を備えることができる。ビーム生成システム300は、光ビーム110’がスペクトロメータ115に入る前に光ビーム110’の態様を変化させる。例えばビームホモジナイザは、スペックルノイズを低減し、パルス光ビーム110’のビーム均質化を向上させ、光ビーム110’の異なる空間部分のスペクトロメータ115への均一なサンプリングを保証する。ビーム生成システム300は、パルス光ビーム110’の態様を変化させるための他の要素又はコンポーネントを備えることができる。例えばビーム生成システム300はまた、1つ以上のパルスストレッチャシステムと、1つ以上のディフューザシステムと、1つ以上の空間調整システムとを備えることができる。
【0041】
[00055] 図2を再度参照すると、メトロロジ装置100はフォトリソグラフィシステム210に組み込まれ、ウェーハ200にパターン形成するのに使用される光ビーム110のスペクトル特徴を測定又は解析する正確な方法を提供する。フォトリソグラフィシステム210は、制御システム265の制御下で光ビーム110を生成する光源217(エキシマ光源など)を備える。制御システム265は、それぞれがフォトリソグラフィシステム210の一部の態様を制御するように設計又は特化されたサブコントローラの一セットの表現と考えることができる。例えば制御システム265は、光源217を制御するための専用のサブコントローラと、メトロロジ制御モジュール105と連動する専用のコントローラとを備えることができる。他のサブコントローラも可能であり、各種のサブコントローラを同じ場所に配置したり相互に分離したりすることができる。
【0042】
[00056] 一部の実装形態では、光ビーム110は連続光ビームでよい。これは光源217が光ビーム110を連続的に発することを意味する。
【0043】
[00057] 本明細書に記載の実装形態では、光ビーム110はパルスで形成される。これは光源217が光ビーム110を連続モードではなく光パルスの形態で発することを意味する。
【0044】
[00058] 光ビーム110のパルスは、名目上は深紫外線(DUV)領域の中心波長である、例えば約10ナノメートル(nm)から約400nmの間の波長を有する。一部の実装形態ではパルスの波長は約248nmであり、一方、他の実装形態ではパルスの波長は約193nmである。この例では、メトロロジ装置100は光源217の出力に、又は光源217内の適当な場所(ガス放電増幅器の直後など)に配置される。代替的に、メトロロジ装置100をフォトリソグラフィシステム210内の他の場所に配置すること、又はフォトリソグラフィシステム210内の異なる場所に配置された複数のメトロロジ装置100を備えることが可能である。
【0045】
[00059] 一部の実装形態では、光源217は連続波ではなく光パルスの形態の光を発する。したがって、光源217は短時間のエネルギーパルスを発する。このような周期パルスはパルス列と見なされ、光ビーム110を形成することができる。パルスの持続時間(パルス幅又はパルス長とも呼ばれる)は、パルスのパワーがその最大値のある割合(例えば半分)を連続して上回り続けている時間と定義することができる。パルスの持続時間を決定するのに使用可能な別のメトリックは、パルスの統合された形状のフラクション(Y)を含むパルスの幅である。さらに別のメトリックは時間積分二乗メトリックである。
【0046】
[00060] 光ビーム110は、ビーム誘導光学系及びビーム修正光学系を備え得るビーム生成システム220によってフォトリソグラフィ露光装置205に誘導される。具体的には、フォトリソグラフィ露光装置205内で、パルス光ビーム110は光学装置に誘導され、この光学装置は、光ビーム110をウェーハ200に誘導する前に必要に応じて光ビーム110を生成し修正するように構成される。光ビーム110及びウェーハ200は、リソグラフィコントローラ225の制御下で互いに対してスキャン(移動)され、これによってウェーハ200上にマイクロ電子フィーチャがパターン付与される。ウェーハ200上にパターン付与されたマイクロ電子フィーチャのサイズは光ビーム110の波長に依存し、より低い波長は、より小さい最小サイズのマイクロ電子フィーチャを実現するための可能な方法の1つである。光ビーム110の波長が248nm又は193nmであるとき、マイクロ電子フィーチャの最小サイズは、例えば50nm未満である可能性がある。ウェーハ200における光ビーム110のパルスの焦点位置は光ビーム110の波長と相関する。さらに、光ビーム110の帯域幅は、これらのフィーチャのクリティカルディメンション(CD)や他のプロセス特性に影響を与えることができる。
【0047】
[00061] 種々の擾乱(例えば温度勾配、圧力勾配、光学的歪など)が光源217及び光ビーム110に作用して、光ビーム110のスペクトル特徴(帯域幅や波長など)又はエネルギーなどの特性を変化させる。例えば光源217内の、又は光ビーム110と相互作用する光学コンポーネントにおける熱レンズ効果により引き起こされる波面歪が光ビーム110の帯域幅を増加させる可能性がある。別の例として、光源217の利得媒体中で光ビーム110と相互作用する光学コンポーネントにより引き起こされる色収差が光ビーム110の帯域幅を増加させる可能性がある。したがって、フォトリソグラフィシステム210は、例えば(光ビーム110の1つ以上のスペクトル特徴を調整するように構成された)スペクトル特徴選択システム230及び(光ビーム110の1つ以上の特性を測定するように構成された)メトロロジ装置100などの他のコンポーネントを備える。制御システム265とともに、これらのコンポーネントは、擾乱が光ビーム110に及ぼす影響を判定し、このような擾乱が光ビーム110に及ぼす影響を補正するのに併用される。
【0048】
[00062] 図示されていないが、フォトリソグラフィシステム210は、光ビーム110の他の態様を測定するための、又はスキャナ205の他の態様を測定するためのメトロロジ装置100以外の他の測定システムを備えることができる。
【0049】
[00063] 図4A及び4Bを参照すると、例示的なメトロロジシステム400は、互いに光干渉する複数の光ビームを生成することによって光ビーム110’を光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)、...440(j)に分離する光干渉型デバイスであるスペクトロメータ415を備える。スペクトロメータ415は、スペクトル分散装置125であるエタロン装置425と、フォトダイオードアレイでよい検出器430とを備える。
【0050】
[00064] エタロン装置425は、光ビーム110’を(図4Aにおいて素子440で表された)光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)などに分離する。エタロン装置425のエタロンの形状に起因して、光学スペクトルのフィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)などは光ビーム110’の中心軸からX-Y像平面に沿って半径方向外側に延びる。これらのフィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)などは像平面全体に広がり、スペクトル特徴の主成分が建設的干渉を有する複数の次数に対応する特定の半径値に局在しているように見える。光ビーム110’の帯域幅がエタロンの自由スペクトル領域よりはるかに小さい場合は、1つの特定次数は像平面の半径と最大透過波長との間に特異な関係を有する。フィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)などをX-Y像平面から見ると、パターン474の全体形状は、特定のフィルタリングされたバージョン440(1)の光ビーム110’の強度値が特定リングの周囲に沿ってほぼ一定のままの不鮮明な同心リングのように見える。別な言い方をすれば、フィルタリングされたバージョン440(1)は、所与の周囲に沿った全ての点で同じかほぼ同じである。
【0051】
[00065] エタロン装置425は、入力レンズ462と、光周波数分離装置(エタロンなど)463と、出力レンズ464とを備える。入力レンズ462の焦点面に、焦点面からの各点が点光源の機能を果たすように開口449を配置することができ、結果として入力レンズ462はエタロン463に入る前にパルス光ビーム110’を平行にする機能を果たす。出力レンズ464は、出力レンズ464の焦点面が検出器430の空間領域435(1)、435(2)、...435(i)に重なるように、エタロン463の出口に配置される。
【0052】
[00066] 一部の実装形態では、エタロン463は、短い距離(例えば数十又は数百ミクロン、ミリメートル、又はセンチメートル)だけ離間し得る、反射面が互いに向き合う1対の部分反射ガラス又は光学平面463A、463Bを含む。他の実装形態では、エタロン463は、2つの平行な反射面を有する単一のプレートを備える。平面463A、463Bは、後面がスプリアス干渉フリンジを生成するのを防ぐためにくさび形状に作られてよく、後面はまた反射防止コーティングを有することが多い。光ビーム110’は、対の平面463A、463Bを通過する際、多重反射され、複数の透過光線、具体的には光学スペクトル107の複数の異なるフィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)などを生成し、これらのフィルタリングされたバージョンが出力レンズ464によって集められ、検出器430の空間領域435(1)、435(2)、...435(i)に運ばれる。各空間領域435(i)は光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョン440(j)を受け取る。スペクトロメータ415はまた、必要に応じて、空間領域435(1)、435(2)などが出力レンズ464の焦点面にあるようにするために出力レンズ464と検出器430の間に光学リレーを備えることができる。
【0053】
[00067] エタロン463は光ビーム110’と相互作用し、光学スペクトル107の複数のフィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)など(例を図4Bに概略的に示す)を出力する。光学スペクトル107のフィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)などは、パルス光ビーム110’の光エネルギー又はパワー(スペクトル強度)の値がどのようにして異なる波長に分配されるかに対応する。これらのフィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)などは、各空間領域435(1)、435(2)などが異なるフィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)などを受け取るように分離される。したがって、エタロン463は、パルス光ビーム110’のスペクトル情報(波長など)を、検出器430により検知又は検出可能な空間情報に変換する。エタロン463の設計に起因して、変換は、スペクトル情報(波長など)を検出器430がスペクトル情報を監視できるように空間内の異なる角度位置又は半径方向位置にマップする
【0054】
[00068] 上述のように、エタロン463は、光学スペクトルのフィルタリングされたバージョンとして、同心リングの一セットの外観をとる干渉パターン474を生成する。リングの鮮明さはエタロン1863の平面463A、463Bの反射性に依存する。したがって、平面463A、463Bの反射性が高い(結果としてエタロンが高い品質(Q)係数を有する)場合、光ビーム110’が単色光ビームであるとき、エタロン463は暗い背景に対して狭く明るいリングの一セットを生成する。エタロン463から透過されたフィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)などはその各空間領域435(1)、435(2)などに衝突する。干渉パターン474のリングの各部分は、特定波長のためだけの最大透過に対応する。さらに、リングの半径方向幅は、干渉パターン474の幾何学的中心(GC)からの距離とともに減少する。
【0055】
[00069] 検出器430は、各角度分離された空間領域435(1)、435(2)などで投影された光ビーム110’の特性472を検出する。例えば検出器430は、各空間領域435(1)、435(2)に付与されたエネルギーを特性として検出する。検出された各空間領域435(1)、435(2)などに付与されたエネルギーは、メトロロジ制御モジュール105がアクセス可能なメモリに記憶される。これらの検出されたエネルギー472と空間領域435(1)、435(2)などのプロットがフリンジパターン471を生成する。干渉パターン474の各リングは、フリンジパターン471のフリンジを生成する。したがってフリンジは、干渉パターン474のリングの明るい中心に対応する最大透過を有する湾曲した形状である。フリンジパターン471の最大透過(検出されたエネルギー472の最大値)の位置は、光ビーム110’の波長、光学平面463A、463Bの屈折率、及び光学平面463Aと463Bの分離に少なくとも部分的に依存する。さらに、フリンジパターン471の各フリンジの幅は、空間領域435の干渉パターン474の中心GCからの距離及びエタロン463のフィネスに少なくとも部分的に依存する。エタロン463のフィネスは、共振の帯域幅で割った自由スペクトル領域である。エタロン463のフィネスは、エタロン463内部の損失によって決定され、光学平面463Aと463Bの分離と無関係である。エタロン463のフィネスは、共振の周波数で割った自由スペクトル領域の品質係数倍である。
【0056】
[00070] このフリンジパターン471は、光学スペクトル107に関するいくつかの情報を提供するが、この情報はスペクトロメータ415に関する情報と重ねられる。2次元行列120は、スペクトロメータ115の入出力特性の表現である。したがって、メトロロジ制御モジュール105は、2次元行列120を使用してフリンジパターン471から光学スペクトル107を抽出する。フリンジパターン471は、これらの計算や推定を行うのに完全な干渉パターン474を必要としないため、検出器430の全ての空間領域ではなく、利用可能な一部の空間領域435(1)、435(2)などよって形成することができる。また、検出器430のアクティブエリアよりわずかに大きい領域内にフリンジのみを生成することができる。
【0057】
[00071] 検出器430の空間領域435(1)、435(2)などは光ビーム110’の強度を受け取り、検知する。例えば、1次元(半径方向次元など)に沿った測定に使用可能な適当な検出器430の一種は線形フォトダイオードアレイである。線形フォトダイオードアレイは、1つのパッケージに等間隔に直線状に形成された同じサイズの複数の要素から構成される。フォトダイオードアレイは光ビーム110’の波長に敏感であり、光ビーム110’が深紫外線領域の波長を有する場合は、フォトダイオードアレイは深紫外線領域の波長を有する光に敏感である。別の例として、検出器430は、2次元電荷結合素子(CCD)や2次元相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサなどの2次元センサでよい。検出器430は、十分に速い速度、例えば検出器430全体について約6kHzでデータを読み出しできる必要がある。
【0058】
[00072] メトロロジ制御モジュール105は、検出器430の出力と制御システム265とに接続され、制御システム265は、光源217、及びパルス光ビーム110に光学的に結合されたスペクトル特徴選択システム230と通信する。メトロロジ制御モジュール105は、検出器430からの出力及び2次元行列120を使用して光ビーム110の光学スペクトル107を推定する。さらに、メトロロジ制御モジュール105は、光ビーム110の各パルス、又は光ビーム110のパルスの一セットの測定、解析、及び計算を実行することができる。
【0059】
[00073] 典型的なフリンジパターン571が図5に示されている。フリンジパターン571は、光ビーム110’のスペクトロメータ415との相互作用に起因して作成され、検出された特性572を検出器430の空間領域435(i)の関数として示す。以上で考察したように、2次元行列120はスペクトロメータ415の入出力関係に関連する。さらに、2次元行列120は、スペクトロメータ415の入出力関係を捉えた予備2次元行列に基づいて作成される。この予備2次元行列520pは図5に示されている。予備2次元行列520pは、それぞれが空間領域435(1)、435(2)などに対応する検出器430の空間領域557に、どのようにして光ビーム110’の特定のスペクトル特徴556(波長など)がマップされるかを記述している。予備2次元行列520p上に示されている可視線は、行列520p内の要素が一定値を有する等高線である。等高線の値は線の幅で表されている。つまり、より細い線がより小さい値を表し、より太い線がより大きい値を表す。簡潔にするために、等高線はほんのわずかしか示されていないが、等高線の数は示されているよりも大幅に多いと見られる。
【0060】
[00074] 例えば、(光学スペクトル107に示されている)光ビーム110’の波長λ(s)での強度は空間領域435(i)にマップされ、マップされた強度の大きさはその波長における行列520pの値に比例する。したがって、光ビーム110’の各波長は独自のフリンジパターンを生成する。一例として、光ビーム110’の波長λ(s)での強度は、スペクトロメータ415によって予備2次元行列520pの最大値に対して空間領域535(s1)、535(s2)、535(s3)にマップされる。したがって、フリンジパターン571は、光ビーム110’のマップされた各波長に対応するフリンジパターンの重ね合わせである。別な言い方をすれば、フリンジパターン571の各空間領域435は、その空間領域435と関連付けられた各フィルタリングされたバージョンの統合エネルギーに対応する。
【0061】
[00075] 予備2次元行列520p内の各成分は、光ビーム110’の特定のスペクトル特徴556及び検出器430の特定の空間領域557における強度を示す。予備2次元行列520p中の成分の一部は低値であるが、これは光ビーム110’の特定のスペクトル特徴556及び検出器430の特定の空間領域557における強度がゼロに近い又はほとんどゼロである(例えば最も明るい等高線はこのような低値に対応する可能性がある)。一方、予備2次元行列520p中の成分の一部は高値であるが、これは光ビーム110’の特定のスペクトル特徴556及び検出器430の特定の空間領域557における強度がゼロでなくかつ実質的にゼロより大きい。このような高値領域は、図5の予備2次元行列520p中の暗い線で示されている。予備2次元行列520p中の暗い線と空きスペースの形状は、面平行なエタロン463を有するスペクトロメータ415の設計を表す。さらに、この例示的な予備の2次元行列520pでは、次のことが想定されている。すなわち、検出器430が出力レンズ464の焦点面にあること、フリンジパターン474が横方向に検出器430を中心とすること、及びフリンジパターン474の中心GCが検出器430上に位置すること。フリンジパターン474の中心GCが検出器430上に位置することは必須ではない。
【0062】
[00076] 図6Aを参照すると、光学スペクトル107と、予備2次元行列520pと、フリンジパターン571との関係が示されており、この関係は行列の乗算で表すことができる。空間領域435(m)におけるフリンジパターン571の振幅F間の数学的表現は次のように書くことができる。
[00077]
【数1】

[00078] 式中、S(λk)はλkに等しい波長λ555での(光学スペクトル107から決定された)スペクトル強度550であり、A(m,k)は波長λkと空間領域435(m)との(行列520pから決定された)マッピングである。この方程式は、第1種フレドホルム積分方程式の離散バージョンである。行列乗算の観点から、この方程式はより簡単にF=A×Spと書くことができ、式中Fはフリンジパターン571であり、Aは行列520pであり、Spは光学スペクトル107である。図6Aでは、簡潔にするために、最大値を有する等高線しか示されていない。
【0063】
[00079] 理想的な面平行エタロンとして設計されたエタロン463の場合の行列A520pの一例として、相対エタロン透過(スペクトル分散装置425の入出力関係)は次式によって与えられる。
[00080]
【数2】

[00081] 式中、Inormは規格化因子であり、Fはエタロン463のフィネス係数であり、nは平面463A、463Bの反射面間の材料の屈折率であり、deは平面463A、463Bの反射面間の距離であり、Rは空間領域435の半径方向距離であり、空間領域435と干渉パターン474の中心GCとの間の距離である。さらに、検出器430は出力レンズ464の焦点面に配置され、焦点面は出力レンズ464から距離fDのところに位置する。
【0064】
[00082] フリンジパターン571及び行列A520pからスペクトルSp107を回復するために、この方程式の両側に2次元行列
を乗じて、
とすべきである。ここで2次元行列520は予備2次元行列520pの擬似逆行列である。したがって、スペクトルSp107は、この行列関係
によって与えられる。図6Bはこの関係を行列形式で示している。図6Bに表された2次元行列
は、簡潔にするために最大値の等高線しか示されていないが、示されているよりも多くの構造を含むことができる。2次元行列
の計算は、メトロロジシステム100及びフォトリソグラフィシステム210の他の態様を説明した後に、以下でさらに詳しく考察される。
【0065】
[00083] 一部の実装形態では、2次元行列520は、エタロン463の1つの自由スペクトル領域FSRのためのマッピングを示す。つまり、2次元行列520で使用される個別のスペクトル特徴556の領域はエタロン463の1つの自由スペクトル領域FSRに及ぶ。結果として生じるエタロン463の1つのFSRから生成される行列A520pを使用して、他の波長及び自由スペクトル領域からの情報を回復することができ、その結果、たった1つのFSRの測定でも全体的なスペクトル回復に十分である。
【0066】
[00084] 以上で考察したように、光ビーム110’のエタロン463との相互作用から形成される光ビームは互いに光干渉する。これらの光ビームが互いに一致した位相で出ていく場合には、エタロン463の出力は干渉最大であり、これらの光ビームが互いにずれた位相で出ていく場合には、エタロン463の出力は干渉最小である。結果は図4Aに示す円形のフリンジパターン474である。エタロン463の自由スペクトル領域FSRは、2つの連続する透過光強度最大値(又は最小値)間の波長(又は光周波数)間隔である。FSRは、元のフリンジパターンを正確に再現するために同調させなければならない光ビーム110’の波長の量である。一例では、エタロン463のFSRは3ピコメートル(pm)である。
【0067】
[00085] また、2次元行列
を計算できる前に、スペクトロメータ415のための予備2次元行列A520pを決定しなければならない。図7を参照すると、スペクトロメータ415のための予備2次元行列A520pを決定するのに試験装置700を使用する。試験装置700は、任意のスペクトロメータ115のための予備2次元行列A120pを決定するのに使用することができる。
【0068】
[00086] 試験装置700は、試験光ビーム711を生成するように構成された試験光源718と、試験光ビーム711のスペクトル特徴(波長など)を制御するためのスペクトル特徴装置731とを備える。スペクトル特徴装置731及び検出器430には試験制御モジュール740が接続される。試験光ビーム711は、試験制御モジュール740により制御されるようにスペクトロメータ415と相互作用し、試験制御モジュール740は、検出器430からの出力を受け取って予備2次元行列A520pを作成する。
【0069】
[00087] 一部の実装形態では、試験光源718は、関心のあるスペクトル領域にわたって波長を変更することができる波長可変レーザである。例えば、試験光源718は単一周波数全固体レーザでよい。試験光源718により生成される試験光ビーム711は、光ビーム110’に対する準単色光ビームと見なすことができる。これは試験光ビーム711の帯域幅が光ビーム110’の帯域幅よりもはるかに小さいことを意味する。例えば試験光ビーム711の帯域幅は光ビーム110’の帯域幅の20%と同じくらいの大きさでよい。試験光ビーム711の帯域幅の一般的な範囲は、光ビーム110’の帯域幅よりも5~500,000倍小さい。
【0070】
[00088] スペクトル特徴装置731は試験制御モジュール740によって制御され、試験光ビーム711のスペクトル特徴(波長など)を、光ビーム110’の光学スペクトル107のスペクトル特徴の範囲に対応するスペクトル特徴の範囲にわたって変化させる、又は選択する。これが行われるのは、試験光ビーム711がスペクトロメータ415と相互作用している間、検出器430が各個別の空間領域435(1)、435(2)などに投影された試験光ビーム711の特性を記録している間、及び試験制御モジュール740が記録された特性の値を検出器430から受け取って記憶する間である。例えば試験光源718がレーザダイオードなどの半導体レーザである場合は、スペクトル特徴装置731はレーザダイオードの温度を変化させる温度コントローラでよい。別の例として、試験光源718がレーザダイオードである場合は、スペクトル特徴装置731は半導体ダイオードへの電流を制御する電流コントローラでよい。別の例として、スペクトル特徴装置731は、回折格子などの光フィードバック機構の機械的配向、又は試験光ビームを回折格子上に誘導する光学系でよい。
【0071】
[00089] 次に、メトロロジ装置100及び試験装置700の動作を考察する前に、フォトリソグラフィシステム210を詳細に説明する。
【0072】
[00090] 図8を参照して、本明細書に記載のシステム及び方法の態様に関連する制御システム265についての詳細を説明する。制御システム265は図8に示されていない他の特徴を含むこともできる。一般に、制御システム265は、デジタル電子回路、コンピュータハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちの1つ以上を備える。
【0073】
[00091] 制御システム265はメモリ800を備え、メモリ800は読み出し専用メモリ及び/又はランダムアクセスメモリでよい。コンピュータプログラム指示及びデータを有形で組み込むのに好適な記憶装置は、例として、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリ装置、内部ハードディスク及び脱着式ディスクなどの磁気ディスク、磁気光学ディスク、及びCD-ROMディスクを含む、全ての形態の不揮発性メモリを含む。以上で考察したように、一部の実装形態では、行列120はメモリ800内に記憶される。制御システム265はまた、1つ以上の入力デバイス805(キーボード、タッチスクリーン、マイクロホン、マウス、ハンドヘルド入力デバイスなど)と、1つ以上の出力デバイス810(スピーカーやモニタなど)とを備えることができる。
【0074】
[00092] 制御システム265は、1つ以上のプログラマブルプロセッサ815と、プログラマブルプロセッサ(プロセッサ815など)により実行される機械可読記憶デバイス内に有形に組み込まれた1つ以上のコンピュータプログラム製品820とを備える。1つ以上のプログラマブルプロセッサ815は、それぞれ指示のプログラムを実行して、入力データを操作して適切な出力を生成することによって所望の機能を実行することができる。通常、プロセッサ815は、メモリ800から指示及びデータを受け取る。以上のうちのいずれかを、特殊設計ASIC(特定用途向け集積回路)が補完しても内蔵してもよい。
【0075】
[00093] 制御システム265は、いくつかあるコンポーネントの中で特に、スペクトル特徴モジュール825と、リソグラフィモジュール830と、決定モジュール835と、試験制御モジュール740と、光源モジュール850と、ビームモジュール860とを備える。これらのモジュールのそれぞれは、プロセッサ815などの1つ以上のプロセッサにより実行される一セットのコンピュータプログラム製品でよい。さらに、モジュール825、830、835、740、850、860はいずれもメモリ800内に記憶されているデータにアクセスすることができる。
【0076】
[00094] スペクトル特徴モジュール825は、メトロロジ制御モジュール105からの出力を受け取り、1つ以上のスペクトル特徴がスペクトル特徴の許容範囲から外れているかどうかを判定する。試験制御モジュール740は、試験装置700と連動し、結果として試験光源718の動作を制御する。試験制御モジュール740は、スペクトロメータ115からの出力と、どのようにして試験光源718を制御するかについての情報とを使用して行列120を作成する。リソグラフィモジュール830は、フォトリソグラフィ露光装置205のリソグラフィコントローラ225からの情報を受け取る。光源モジュール850は、光源217及びスペクトル特徴選択装置230の1つ以上に接続される。ビームモジュール860はビーム生成システム220の1つ以上のコンポーネントに接続される。制御システム265内のモジュール間の接続、及び制御システム265内のモジュールとフォトリソグラフィシステム210の他のコンポーネントとの接続は、有線でも無線でもよい。決定モジュール835は、他のモジュール(モジュール825及び830など)の1つ以上からの出力を受け取り、どの1つ以上のモジュール(試験制御モジュール740、ビームモジュール860、又は光源モジュール850など)をアクティブ化する必要があるかを決定する。
【0077】
[00095] 図8にはごくわずかなモジュールしか示されていないが、制御システム265は他のモジュールを備えることもできる。また、制御システム265は、全てのコンポーネントが同一の場所に配置されているかのようなボックスとして表されているが、空間的又は時間的に物理的に互いに離れたコンポーネントから構成することができる。例えば光源モジュール850は、光源217又はスペクトル特徴選択装置230と物理的に同一の場所に配置することができる。別の例として、試験制御モジュール740は試験装置700と物理的に同一の場所に配置することができ、空間的及び時間的に制御システム265の他のコンポーネントから分離することができる。
【0078】
[00096] 一般に、制御システム265は、光ビーム110に関する少なくとも一部の情報をメトロロジ装置100から受け取り、スペクトル特徴モジュール825は、その情報を解析して、フォトリソグラフィ露光装置205に供給された光ビーム110の1つ以上のスペクトル特徴(例えば帯域幅)をどのようにして調整するかを決定する。この決定に基づいて、制御システム265は、スペクトル特徴選択装置230及び/又は光源217に信号を送信して制御モジュール850を介して光源217の動作を制御する。一般に、スペクトル特徴モジュール825は、光ビーム110の1つ以上のスペクトル特徴(例えば波長及び/又は帯域幅)を推定するのに必要とされる解析を行う。スペクトル特徴モジュール825の出力は、決定モジュール835に送信されるスペクトル特徴の推定値である。
【0079】
[00097] スペクトル特徴モジュール825は、推定されたスペクトル特徴を受け取るために接続され、同様にスペクトル特徴目標値を受け取るために接続された比較ブロックを備える。一般に、比較ブロックは、スペクトル特徴目標値と推定値との差を表すスペクトル特徴誤差値を出力する。決定モジュール835は、スペクトル特徴誤差値を受け取り、スペクトル特徴を調整するためにいかに最も上手くシステム210を補正するかを決定する。したがって、決定モジュール835は光源モジュール850に信号を送信し、光源モジュール850は、スペクトル特徴誤差値に基づいてスペクトル特徴選択装置230(又は光源217)をどのようにして調整するかを決定する。光源モジュール850の出力はスペクトル特徴選択装置230に送信される一セットのアクチュエータコマンドを含む。例えば光源モジュール850は、このコマンドをスペクトル特徴選択装置230の制御モジュールに送信し、制御モジュールは装置230内の駆動システムに接続される。
【0080】
[00098] また、リソグラフィモジュール830は、例えばフォトリソグラフィ露光装置205のリソグラフィコントローラ225からの指示を受け取って、パルス光ビーム110の1つ以上のスペクトル特徴を変化させること、又は光ビーム110のパルス繰り返し速度を変化させることができる。リソグラフィモジュール830は、いかにしてスペクトル特徴を調整するかを決定するためのこれらの指示についての解析を行って、解析結果を決定モジュール835に送信する。制御システム265は光源217を所与の繰り返し速度で動作させる。所与の繰り返し速度はパルスが生成される速度である。より具体的には、フォトリソグラフィ露光装置205は、あらゆるパルスについて(すなわちパルス間基準で)制御システムによって(リソグラフィモジュール830を介して)トリガ信号を光源217に送信し、これらのトリガ信号間の時間間隔は任意でよいが、フォトリソグラフィ露光装置205がトリガ信号を一定間隔で送信する場合は、これらの信号の速度は繰り返し速度である。繰り返し速度はフォトリソグラフィ露光装置205によって要求される速度でよい。
【0081】
[00099] 図9を参照すると、一部の実装形態において光源217は典型的な光源917である。光源917は、パルス光ビームを光ビーム110として生成するパルスレーザ源である。光源917は、シード光ビーム910Aをパワー増幅器(PA)910に提供する主発振器(MO)900を備えた2段階レーザシステムである。主発振器900は、通常、増幅が行われる利得媒体と、光学共振器などの光学フィードバック機構とを備える。パワー増幅器910は、通常、主発振器900からのシードレーザビーム910Aでシードされるときに増幅が行われる利得媒体を備える。パワー増幅器910は、再生リング共振器として設計されるパワーリング増幅器(PRA)でよい。この場合、十分な光学フィードバックをリング設計から提供することができる。スペクトル特徴選択装置230は、主発振器900から光ビーム110Aを受け取り、比較的低い出力パルスエネルギーにおける光ビーム110Aの中心波長及び帯域幅などのスペクトル特徴の微調整を可能にする。パワー増幅器910は、主発振器900からシード光ビーム910Aを受け取り、この出力を増幅してフォトリソグラフィで使用する出力に必要なパワーを得る。
【0082】
[000100] 一部の実装形態では、主発振器900は、2つの細長い電極を有する排出チャンバと、利得媒体として機能するレーザガスと、電極間でこのガスを循環させるファンとを備える。排出チャンバの一方の側のスペクトル特徴選択装置230と排出チャンバの第2の側の出力カプラ915との間にレーザ共振器が形成され、シード光ビーム910Aがパワー増幅器910に出力される。
【0083】
[000101] 他の実装形態では、主発振器900は利得媒体として固体材料を含む。使用可能な固体媒体は、レアアースや遷移金属イオンがドープされた水晶やガラス、又は半導体レーザを含む。固体利得媒体を使用する主発振器900はシード光ビーム910Aを生成する。固体利得媒体は、フラッシュランプやアークランプで、又はレーザダイオードやチタン(Ti)サファイア(Ti:サファイア)レーザを用いて光学的に励起することができる。典型的な固体利得媒体は、ネオジムがドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)、ネオジムがドープされたイットリウムリチウムフッ化物(Nd:YLF)、又はTi:サファイアでよい。固体利得媒体は、高度に時間的に(かつ空間的に)コヒーレントであり、かつ狭帯域幅を有する単一モード出力を生成することができる。主発振器900の固体利得媒体から出力されるシード光ビーム910Aは、所望の波長でない波長でよい(例えばDUV波長範囲の外でもよい)。この場合、シード光ビーム910Aは、パワー増幅器910に誘導されたシード光ビーム910Aが所望のDUV波長となるように、1つ以上の波長変換素子を通して誘導することができる。例えば主発振器900内で固体利得媒体から出力されたシード光ビーム910Aが(例えばTi:サファイア利得媒体のように)約773.6nmの波長である場合は、シード光ビーム910Aを2つの波長変換素子を通して誘導して波長を約193.4nmに変換することができる。1つ以上の波長変換素子は、和周波発生などの非線形光学技術を用いて波長を所望の波長に変換することができる。
【0084】
[000102] 光源917はまた、出力カプラ915からの出力を受け取るメトロロジモジュール(線幅中心解析モジュールすなわちLAM)920と、必要に応じてビームのサイズ及び/又は形状を修正する1つ以上のビーム修正光学システム925とを備えることができる。メトロロジモジュール920は、シード光ビームの波長(例えば、中心波長)を測定するのに使用可能な一種の測定システムの例である。一部の実装形態では、メトロロジ装置100はメトロロジモジュール920として機能することができる。これらの実装形態では、光ビーム110’は、シード光ビーム910Aから分離された光ビームである。
【0085】
[000103] パワー増幅器910は、パワー増幅器排出チャンバを備え、これが再生リング増幅器である場合、パワー増幅器はまた、排出チャンバに光ビームを反射して戻し、循環路を形成するビームリフレクタ又はビーム回転デバイス930を備える。パワー増幅器排出チャンバは、一対の細長い電極と、利得媒体として機能するレーザガスと、電極間でガスを循環させるためのファンとを備える。シード光ビーム910Aは、反復的にパワー増幅器910を通過することによって増幅される。ビーム修正光学システム925は、シード光ビーム910Aを入力結合し、パワー増幅器からの増幅放射の一部を出力結合する手段(例えば、部分反射ミラー)を提供することにより、出力光ビーム110を形成する。
【0086】
[000104] 主発振器900及びパワー増幅器910の排出チャンバで使用されるレーザガスは、所要の波長及び帯域幅周辺のレーザビームを生成するのに好適な任意のガスでよい。例えば、レーザガスは、約193nmの波長の光を発するフッ化アルゴン(ArF)又は約248nmの波長の光を発するフッ化クリプトン(KrF)でよい。
【0087】
[000105] メトロロジモジュール920は、主発振器900の出力(光ビーム910A)の波長(例えばピーク波長)を監視する。メトロロジモジュール920は光源217内の他の位置に配置することができる。さらに、メトロロジ装置100は、パワー増幅器910の出力の1つ以上のビーム修正光学システム925の前又は後に配置することができる。
【0088】
[000106] パワー増幅器910により生成されるパルスの繰り返し速度は、フォトリソグラフィ露光装置205のコントローラ225からの指示の下で主発振器900が制御システム265により制御される繰り返し速度によって決定される。パワー増幅器910から出力されるパルスの繰り返し速度は、フォトリソグラフィ露光装置205により見られる繰り返し速度である。
【0089】
[000107] 以上で考察したように、光学要素のみを使用した帯域幅の粗い制御と細かい制御が共に可能である。一方、スペクトル特徴選択システム230内のプリズムの角度を調整することによって粗く広い範囲の帯域幅を制御しながら、主発振器900及びパワー増幅器910内の電極の活性化間の差動タイミングを制御することによって、細かく狭い範囲の帯域幅を迅速に制御することができる。
【0090】
[000108] 図10を参照すると、一部の実装形態において、スペクトル特徴選択装置230は、パルス光ビーム110Aと光学的に相互作用するように配置された一セットの光学的特徴又はコンポーネント1000、1005、1010、1015、1020と、ファームウェアとソフトウェアの任意の組み合わせの形態をとる電子回路を備えた制御モジュール1050とを備える。光学コンポーネント1000、1005、1010、1015、1020は、スペクトル特徴粗調整システムを提供するように構成することができ、このようなコンポーネントの調整が十分に迅速である場合は、スペクトル特徴微調整システムを提供するように構成することができる。図10に示されていないが、スペクトル特徴選択装置230は、スペクトル特徴を細かく制御するために他の光学的特徴や他の非光学的特徴を備えることができる。
【0091】
[000109] 制御モジュール1050は、各光学コンポーネント1000、1005、1010、1015、1020に物理的に結合された1つ以上の駆動システム1000A、1005A、1010A、1015A、1020Aに接続される。装置230の光学コンポーネントは、格子とすることができる分散光学素子2000と、プリズムとすることができる一セットの屈折光学素子1005、1010、1015、1020からなるビームエキスパンダ1001とを備える。格子1000は、光ビーム110Aを分散及び反射させるように設計された反射格子でよい。したがって、格子1000は、DUV範囲の波長を有するパルス光ビーム110Aと相互作用するのに適した材料で作られる。プリズム1005、1010、1015、1020のそれぞれは、光ビーム110Aがプリズムの本体を通過するときに光ビーム110Aを分光し方向転換する機能を果たす透過性プリズムである。プリズムのそれぞれは、光ビーム110Aの波長の透過を可能にする材料(例えばフッ化カルシウムなど)で作ることができる。4個の屈折光学素子1005、1010、1015、1020が示されているが、4個よりも少ない又は4個よりも多い屈折光学素子をビームエキスパンダ1001で使用することができる。
【0092】
[000110] パルス光ビーム110Aは、開口1055から装置230に入り、その後、プリズム1020、プリズム1010、及びプリズム1005をこの順番で通って移動した後、格子1000の回折面1002に衝突する。ビーム110Aが連続したプリズム1020、1015、1010、1005を通過するごとに、光ビーム110Aは光学的に拡大され、次の光学コンポーネントに向けて方向転換(ある角度で屈折)される。光ビーム110Aは、格子1000から回折及び反射され、プリズム1005、プリズム1010、プリズム1015、及びプリズム1020をこの順番で戻った後、光ビーム110Aが装置230を出るときに開口1055を通過する。
【0093】
[000111] ビームエキスパンダ1001のプリズム(プリズム1005、1010、1015、1020のいずれか1つでよい)の回転は、光ビーム110Aがその回転したプリズムの入射表面に衝突する入射角度を変化させる。さらに、その回転したプリズムを通過した光ビーム110Aの2つの局所的光学的品質、すなわち光学倍率及びビーム屈折角は、その回転したプリズムの入射表面に衝突する光ビーム110Aの入射角の関数である。プリズムを通過した光ビーム110Aの光学倍率は、そのプリズムを出た光ビーム110Aの横幅のそのプリズムに入る光ビーム110Aの横幅に対する比率である。
【0094】
[000112] ビームエキスパンダ1001内の1つ以上のプリズムにおける光ビーム110Aの局所的光学倍率の変化は、ビームエキスパンダ1001を通過する光ビーム110Aの光学倍率OM1065の全体的な変化を引き起こす。ビームエキスパンダ1001を通過する光ビーム110Aの光学倍率OM1065は、ビームエキスパンダ1001を出た光ビーム110Aの横幅Woのビームエキスパンダ1001に入る光ビーム110Aの横幅Wiに対する比率である。また、ビームエキスパンダ1001内の1つ以上のプリズムを通過した局所的ビーム屈折角の変化は、格子1000の表面1002における光ビーム110Aの入射角1062の全体的な変化を引き起こす。
【0095】
[000113] 光ビーム110Aの波長は、光ビーム110Aが格子1000の回折面1002に衝突する入射角1062を変化させることによって調整可能である。光ビーム110Aの帯域幅は、光ビーム110の光学倍率1065を変化させることによって調整可能である。
【0096】
[000114] 装置230は、光ビーム110Aが格子1000の回折面1002に衝突する入射角1062を調整することによって、光源217の1つ以上の共振器内で生成される光ビーム110Aの波長を調整するように設計される。具体的には、これはプリズム1005、1010、1015、1020及び格子1000の1つ以上を回転させて、光ビーム110Aの入射角1062を調整することによって行うことができる。
【0097】
[000115] さらに、光源217により生成される光ビーム110Aの帯域幅は、光ビーム110Aの光学倍率OM1065を調整することによって調整される。光ビーム110Aの帯域幅は、プリズム1005、1010、1015、1020の1つ以上を回転させることによって調整することができ、これによって光ビーム110Aの光学倍率1065を変化させる。特定のプリズムの回転は、そのプリズムにおける局所的ビーム屈折角と局所的光学倍率の両方の変化を引き起こすため、この設計では波長の制御と帯域幅の制御が連動する。
【0098】
[000116] また、光ビーム110Aの帯域幅は、プリズム1020の回転に比較的敏感であり、プリズム1005の回転に比較的鈍感である。これはプリズム1020の回転による光ビーム110Aの局所的光学倍率のいずれの変化も、回転したプリズム1020と格子1000の間にある他のプリズム1015、1010、及び1005の光学倍率の変化の積が掛けられ、光ビーム110Aはプリズム1020を通過した後にこれら他のプリズム1015、1010、1005を通って移動しなければならないためである。一方、光ビーム110Aの波長は、プリズム1005の回転に比較的敏感であり、プリズム1020の回転に比較的鈍感である。例えば、波長を変化させずに帯域幅を変化させるには、入射角1062を変化させずに光学倍率1065を変化させるべきであり、これはプリズム1020の回転量を大きくし、プリズム1005の回転量を小さくすることによって達成することができる。
【0099】
[000117] 制御モジュール1050は、各光学コンポーネント1000、1005、1010、1015、1020に物理的に結合された1つ以上の駆動システム1000A、1005A、1010A、1015A、1020Aに接続される。光学コンポーネントのそれぞれに対して駆動システムが示されているが、装置230内の一部の光学コンポーネントは静止状態に保たれるか又は駆動システムに物理的に結合されない可能性もある。例えば一部の実装形態では、格子1000は静止状態に保たれる可能性があり、プリズム1015は静止状態に保たれ、駆動システムに物理的に結合されない可能性がある。
【0100】
[000118] 駆動システム1000A、1005A、1010A、1015A、1020Aのそれぞれは、各光学コンポーネントに接続された1つ以上のアクチュエータを備える。光学コンポーネントの調整は、光ビーム110Aの特定のスペクトル特徴(波長及び/又は帯域幅)の調整をもたらす。制御モジュール1050は、駆動システムの1つ以上を動作させる又は制御する特定のコマンドを含む制御信号を制御システム265から受け取る。駆動システムは協働するように選択及び設計することができる。
【0101】
[000119] 駆動システム1000A、1005A、1010A、1015A、1020Aのアクチュエータのそれぞれは、各光学コンポーネントを移動又は制御するための機械的装置である。アクチュエータは、モジュール1050からエネルギーを受け取り、そのエネルギーを各光学コンポーネントに付与されるある種の動きに変換する。例えば、駆動システムは、動力装置、及びビームエキスパンダのプリズムの1つ以上を回転させる回転ステージのうちのいずれか1つでよい。駆動システムは、例えば、ステッパモータ、弁、圧力制御装置、圧電装置、リニアモータ、油圧アクチュエータ、ボイスコイルなどのモータを備えることができる。
【0102】
[000120] 格子1000は高ブレーズ角エシェル格子でよく、回折格子の式を満たす任意の入射角1062で格子1000に入射する光ビーム110Aは反射(回折)される。回折格子の式は、格子1000のスペクトル次数と、回折波長(回折ビームの波長)と、光ビーム110Aの格子1000への入射角1062と、格子1000から回折された光ビーム110Aの出射角と、格子1000に入射した光ビーム110Aの縦発散度と、格子1000の回折面の溝間隔との関係を提供する。さらに、光ビーム110Aの格子1000への入射角1062が光ビーム110Aの格子1000からの出射角と等しくなるように格子1000を使用する場合は、格子1000及びビームエキスパンダ(プリズム1005、1010、1015、1020)はリトロー構成に配置され、格子1000から反射した光ビーム110Aの波長はリトロー波長である。格子1000に入射する光ビーム110Aの縦発散度はほとんどゼロであると推定することができる。公称波長を反射するために、格子1000は格子1000に入射した光ビーム110Aに対して整列され、その結果、公称波長はビームエキスパンダ(プリズム1005、1010、1015、1020)を通って後方に反射されて光源217で増幅される。次にリトロー波長は、光ビーム110Aの格子1000への入射角1062を変化させることによって、光源217内の共振器の利得帯域幅全体にわたって同調させることができる。
【0103】
[000121] プリズム1005、1010、1015、1020のそれぞれは、光ビーム110Aが通過する表面内に含まれるように、光ビーム110Aの横断方向に沿って十分に広い。各プリズムは、開口1055から格子1000に向かう経路上で光ビーム110Aを光学的に拡大し、結果として各プリズムは、プリズム1020からプリズム1005へとサイズが連続的に大きくなる。したがって、プリズム1005はプリズム1010より大きく、プリズム1010はプリズム1015より大きく、プリズム1020は最小のプリズムである。波長はプリズム1005を回転させることによって粗く変化させることができ、プリズム1020は(粗く)回転させることができる。光ビーム110Aの入射角1062は、プリズム1005の回転によって変化し、プリズム1020の回転は、プリズム1005の回転がもたらした拡大率の変化を相殺する。プリズム1020は、粗く、広範囲かつ遅い帯域幅制御に使用可能である。これに対して、プリズム1010を制御することによって、帯域幅を微細かつ狭い範囲でより一層迅速に制御することができる。
【0104】
[000122] 2次元行列120、520に関する考察に戻り、図11を参照すると、制御システム265(具体的には試験制御モジュール740)によって2次元行列120又は520を作成する手順1100が行われる。2次元行列120又は520は、一旦作成されると、メモリ800内に記憶することができ、制御システム265のメトロロジ制御モジュール105などの他のコンポーネントが使用することができる。具体的には、2次元行列120、520は予備2次元行列520pに基づいて計算され、予備2次元行列520pの各列はそれぞれ、所与の単色入力光学スペクトルについてスペクトロメータ115又は415の出力を表す。したがって、実際にはスペクトル分散装置125又は425を、スペクトル分散装置125又は425の範囲にある特定波長の波長可変狭線幅レーザで照明し、次に関心のあるスペクトル領域にわたって均一なステップで波長をスキャンする又は増加させることによって、予備2次元行列520pを測定又は作成することが可能である。このスキャンにおける各ステップは、そのステップ番号に対応するフリンジを生成し、そのフリンジは行列520pの第j列である。
【0105】
[000123] 手順1100を説明する際は図7も参照する。試験光ビーム711をスペクトロメータ415と光学的に相互作用させる(1105)。試験制御モジュール740は試験光源718に電気信号を出力してレーザ利得媒体をポンピングし、試験光ビーム711を出力する。さらに、試験光ビーム711は適切な光学コンポーネントを使用してスペクトロメータ415に誘導される。試験光ビーム711はエタロン装置425に誘導され、ここで光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)などに分離され、検出器430の各空間領域435(1)、435(2)などは異なるフィルタリングされたバージョン440(1)、440(2)などを受け取る。
【0106】
[000124] 試験光ビーム711のスペクトル特徴(波長など)は、光ビーム110’が動作する値の範囲内にある1つの値に設定される(1110)。試験光ビーム711の波長は、設定された後に試験制御モジュール740によって制御することができ、試験制御モジュール740は、試験光ビーム711の波長を制御するスペクトル特徴装置731に電気信号を出力することができる。設定されたスペクトル特徴のこの値は記憶される(1115)。例えば行列モジュール855は、スペクトル特徴の値を試験制御モジュール740から受け取り、この値を後で参照するために制御システム265のメモリ800に記憶する。図7を参照すると、手順1100の初めに第1のスペクトル特徴SF(1)が記憶され、予備2次元行列520pの第1列に対応する。この例示的な予備2次元行列520pの列数Nは、手順1100の間に調査されるスペクトル特徴SF(N)の総数に一致し、この調査されたスペクトル特徴の数は、回復された光学スペクトルが1-FSR間隔内のどこかに含まれる可能性があると仮定すると、回復された光学スペクトルがサンプリングされる点の数に一致する。
【0107】
[000125] 試験光ビーム711の特性は、スペクトロメータ415の各空間領域435(1)、435(2)などで検出される(1120)。空間領域435(1)、435(2)などの総数がM(これはiがMであることを意味する)である場合は、試験光ビーム711の特性は、M個の空間領域で検出される。図7を参照すると、特性C(1,1)は第1の空間領域435(1)で検出され、特性C(2,1)は第2の空間領域435(2)で検出され、特性C(M,1)は最後の空間領域435(M)で検出される。
【0108】
[000126] 各空間領域435(1)、435(2)、...435(M)で検出された特性Cは予備2次元行列520pの列として記憶される(1125)。記憶用に割り当てられた列は、(ステップ1115で記憶された)試験光ビーム711のスペクトル特徴の値に基づいている。例えば試験制御モジュール740は、検出器430から特性Cの値を受け取り、特性Cのこれらの値を制御システム265のメモリ800に記憶する。スペクトル特徴SFが範囲内の第1のスペクトル特徴SF(1)である場合は、特性C(1,1)、C(2,1)、...C(M,1)は、予備2次元行列520pの第1の列として記憶される。
【0109】
[000127] 試験制御モジュール740は、試験光ビーム711の全てのスペクトル特徴SFがスペクトロメータ415と相互作用したかどうかを判定する(1130)。したがって、図7の例を用いて、試験制御モジュール740はN個のスペクトル特徴SFの全てがスペクトロメータ415と相互作用したかどうかを判定する。N個のスペクトル特徴SFの全てがスペクトロメータ415と相互作用していた場合は、予備2次元行列520pは完全であり、予備2次元行列520p全体が、後で使用するため、及びメトロロジ制御モジュール105によるアクセスのためにメモリ(メモリ800など)に記憶される(1135)。
【0110】
[000128] N個のスペクトル特徴SFの全てがスペクトロメータ415と相互作用していたわけではない場合(1130)、予備2次元行列520pは完全ではなく、試験光ビーム711のスペクトル特徴SFは可能な値の範囲内の次の値に変更され(1140)、手順1100は前述のように継続する。試験光ビーム711の波長は、試験制御モジュール740の制御下で調整することができ、試験制御モジュール740はスペクトル特徴装置731に送信された電気信号を調整することによって試験光ビーム711の波長を変化させる。行列モジュール855は、スペクトル特徴の新しい値を試験制御モジュール740から受け取り、この値を制御システム265のメモリ800に記憶する(1115)。図7を参照すると、スペクトル特徴SFの最後の値が第1のスペクトル特徴SF(1)であった場合は、スペクトル特徴SFの新しい値は予備2次元行列520pの第2の列に対応する第2のスペクトル特徴SF(2)である。ステップ1115、1120、1125、1130は、特性C(1,N)、C(2,N)、...C(M,N)が予備2次元行列520p(又は120)に最終列として記憶されるまで実行される。
【0111】
[000129] 次に、2次元行列520は予備2次元行列A520pに基づいて計算される(1145)。例えば2次元行列
は、次に述べるように予備2次元行列A520pの擬似逆行列として計算することができる(1145)。予備2次元行列A520pは通常、正則であるか又は正則に近いため、厳密にいうと逆行列
が存在しない可能性がある。一般に、擬似逆2次元行列
は、エタロン463が高い又は無限のフィネスを有する制限的な状況では逆行列
である。この制限的な状況は一般的ではないため、擬似逆2次元行列
は単純な理論を用いて計算することができず、特別な数学理論を用いる必要がある。
【0112】
[000130] 一実装形態では、擬似逆2次元行列
を決定するのに特異値分解が用いられる。特異値分解と呼ばれる、次のような予備2次元行列A520pの因数分解が存在する。
[000131] A=UΣV
[000132] 式中、Σは対角線上に非負実数を持つ対角行列であり、Uは直交行列(つまり実成分を持つ正方行列であり、その共役転置行列UTと等しい逆行列を有する)であり、Vは直交行列である。物理的に、行列Σは、スペクトル特徴(例えば波長)空間から空間領域空間への減衰ファクタである特異値が入力される。行列Uの列は左特異ベクトルであり、空間領域空間の正規直交基底を与える。これらの左特異ベクトルは、空間領域言語の文字と考えることができる。行列VTの列は右特異ベクトルであり、スペクトル特徴空間の正規直交基底を与える。これらの右特異ベクトルはスペクトル特徴空間言語の文字と考えることができる。この実装形態では、擬似逆2次元行列
は次式によって与えられる。
[000133]
[000134] 式中、Σ-1はΣの逆行列である。例えばσjが行列Σの特異値であり、δjkが(j=kのとき値が1で、j≠kのとき値が0の関数である)クロネッカーのデルタである場合は、Σ-1 jk=(1/σ)δjkである。
【0113】
[000135] 一部の実装形態では、擬似逆2次元行列
はムーア-ペンローズの擬似逆計算を用いて決定される。
【0114】
[000136] 図6Bは擬似逆2次元行列
の概略的表現を示すが、実際の擬似逆2次元行列
はより複雑である。予備2次元行列A520pから計算された擬似逆2次元行列
の一例が図13に示されている。この例示的な擬似逆2次元行列
では、暗色の主要な特徴は、フリンジパターン571に対応する波長(スペクトル特徴)を抽出する一方、正及び負の発振(明色の線)は、フリンジを前述の特異値分解プロセスの一部として分解した特異ベクトルの一般的な発振特性を示す。
【0115】
[000137] 擬似逆2次元行列
を決定するための特異値分解を含む手順は雑音増幅を起こしやすい。したがって、雑音を除去するために、擬似逆2次元行列
にフィルタリングを適用することができる。フィルタリングは行列Σ-1中の特定の値を0に置き換えることによって行うことができる。0に置き換えられる値はフリンジパターン571の信号対雑音比に基づいて選ばれる。例えば値Σ-1 jjは、j>jtruncの場合に0に置き換えることができる。ここでjtruncはフリンジパターン571の信号対雑音比に基づいて選ばれる。
【0116】
[000138] 別の例として、フィルタリングはチホノフ正則化法を用いて実行することができる。ここでΣ-1mmは、次式で置き換えられる。
[000139]
【数3】

[000140] 式中、κはフリンジパターン571の信号対雑音比に基づいて選ばれ、σjは行列Σの特異値である。
【0117】
[000141] 2次元行列
は、一旦計算されると(1145)、例えば、後で使用するため、及びメトロロジ制御モジュール105によるアクセスのためにメモリ(メモリ800など)に記憶される(1150)。
【0118】
[000142] 図12を参照すると、光ビーム110’の光学スペクトル107を推定するために手順1200が実行される。光ビーム110’は、各空間領域135(1)、135(2)、...135(i)が光ビーム110’の光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)を受け取るように、スペクトロメータ115の個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)に投影される(1205)。投影された光ビーム110’の特性は空間領域135(1)、135(2)、...135(i)のそれぞれで検出される(1210)。(手順1100から作成された)2次元行列120は受け取られ(1215)、ここで2次元行列120中の各成分は、1つ以上の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)と、各スペクトル特徴との間の関係を提供する。光学スペクトル107は、検出された光ビーム特性(1210)と受け取られた2次元行列120(1215)とをともに使用した解析に基づいて推定される(1220)。
【0119】
[000143] スペクトル分散装置125は光ビーム110’に作用して、光ビーム110’を個別の空間領域135(1)、135(2)、...135(i)に投影する(1205)。さらに、スペクトル分散装置125はまた、光ビーム110’の光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)を分離するように作用して、これらの異なる分光フィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)が個別の空間領域に投影されることを可能にする(1205)。異なる分光フィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)は、スペクトル分散装置125によって分離された後、各フィルタリングされたバージョンを異なる方向又は角度に沿って送ることによって投影することができる。例えば図4A及び4Bを参照すると、エタロン463は、光ビーム110’の光学スペクトル107の異なるフィルタリングされたバージョン140(1)、140(2)、...140(j)を分離することができ、出力レンズ464は、各フィルタリングされたバージョンが検出器430の空間領域の1つに衝突するように、異なる角度に沿って各フィルタリングされたバージョンを誘導することができる。
【0120】
[000144] 投影された光ビーム110’の空間領域135で検出される特性(1210)は、フィルタリングされたバージョン140によりその空間領域で付与される光ビーム110’のエネルギーでよい。検出された特性の値は、メトロロジ制御モジュール105が受け取ることができる。これらの検出された特性は、後で解析するためにメモリ800内に又はメトロロジ制御モジュール105がアクセス可能な場所に記憶することができる。検出された特性はアレイ内に記憶することができ、アレイの行の数は1つの空間方向(例えばX方向)のスペクトロメータ115の個別の空間領域の行の数に一致し、アレイの列の数はもう1つの空間方向(例えばY方向)のスペクトロメータ115の個別の空間領域の列の数に一致する。図4A及び4Bに示す例では、i及びjの値がMに等しい場合、列数は1であり、行数はMである。この例において図7を参照すると、予備2次元行列520pの行数もMに等しい(つまり2次元行列520の列数はMに等しい)。さらに、図4A及び4Bに示す例では、第1の空間方向は半径方向に対応する一方、第2の空間方向は半径方向に垂直であると考えられる。この例では列が1つしかないため、アレイはX-Y平面の半径方向に沿った1次元アレイである。
【0121】
[000145] 図5の例では、検出される特性はエネルギー472であり、このとき記憶されているエネルギーのアレイは、これらの検出されたエネルギー472対空間領域435(1)、435(2)などのプロットであるフリンジパターン571として表示することができる。
【0122】
[000146] メトロロジ制御モジュール105は、検出された光ビーム特性(1210)と受け取られた2次元行列120(1220)とをともに使用した解析に基づいて光学スペクトル107を推定することができる(1220)。一部の実装形態では、図6Bを参照すると、メトロロジ制御モジュール105は、2次元行列
と、フリンジパターン571の形態を取り得る検出された光ビーム特性アレイとの行列乗算を行うことによって光学スペクトル107を推定する(1220)。
【0123】
[000147] メトロロジ装置100、及び光ビーム110’の光学スペクトル107を推定する技術の様々な実装形態は、光源217の異なる動作条件下におけるスペクトル形状の類似性についての仮定を最小限又は少なくすることができる。さらに、本明細書に記載の光学スペクトル107の直接回復は、より正確な診断を可能にし、光ビーム110’の帯域幅を推定するための新しいメトリクスを可能にする光学スペクトル107の推定値を生成することができる。他のアプローチ(デコンボリューションなど)と異なり、このメトロロジ装置100及び光学スペクトル107を推定する技術は、検出器430からのデータから切り出した単一のフリンジからではなく、むしろフリンジ全体からの情報を抽出することができる。このため、説明される技術は、スペクトル特徴を計算するための相関アプローチ又は光学スペクトル107を推定するためのデコンボリューションアプローチより雑音に耐性を示すことができる。
【0124】
[000148] 2次元行列A120により提供されるマッピングは、2つの異なる情報領域の間にある。一方の領域はスペクトル特徴(波長)領域であり、他方の領域は空間領域である。これはデータを波長空間から波長空間にマップするデコンボリューション技術と異なる。さらに、2次元行列A120中の値は各空間領域で検出された光ビーム110’の特性に対応し、特性の値はその特性が検出された空間領域によって変化する。これは(2次元行列A120で表される)マッピングのカーネルが一定ではなく、特性が検出された検出器430上の位置に依存することを意味する。
【0125】
[000149] また、本明細書に記載の技術は、エタロン463の自由スペクトル領域(FSR)より小さい波長の変化に関する情報を提供する。したがって、光ビーム110’の異なる波長が、異なる波長インデックスを中心とする光学スペクトルを提供する。これは波長のより迅速な同調や調整を必要とする将来の用途での帯域幅メトロロジに有利な可能性がある。
【0126】
[000150] 本明細書に記載の技術では、システムの雑音はフーリエ空間周波数にではなく、むしろ空間領域空間とスペクトル特徴空間のマッピングに固有の基底特異ベクトルに分解される。(デコンボリューション技術とは対照的に)雑音成分を分解したのと同じ任意の雑音除去が適用される。このような雑音除去は、以上で考察したようにフレドホルム積分方程式を反転させる際に必要である。
【0127】
[000151] 他の実装形態も以下の請求項の範囲内にある。
【0128】
[000152] 例えば一部の実装形態では、光源217は、以上で考察したように光をパルス状にではなく連続波で発する。本発明の他の態様は、以下の番号が付いた条項に提示される。
【0129】
条項1
光ビームの光学スペクトルを推定する方法であって、方法が、
それぞれが光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンを受け取る、スペクトロメータの個別の空間領域に光ビームを投影すること、
投影した光ビームの特性をスペクトロメータの個別の空間領域のそれぞれで検出すること、
各成分が1つ以上の空間領域と各スペクトル特徴との関係を提供する2次元行列であって、スペクトロメータの入出力関係に関連する2次元行列を受け取ること、及び
光ビームの光学スペクトルを検出した光ビーム特性と受け取った2次元行列とをともに使用した解析に基づいて推定すること、
を含む方法。
【0130】
条項2
スペクトロメータの個別の空間領域に光ビームを投影することが、
各フィルタリングされたバージョンを異なる方向又は異なる角度に沿って送ることを含む、光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンを分離すること、及び
これらの分離したフィルタリングされたバージョンを各空間領域に投影すること、
を含む、条項1に記載の方法。
【0131】
条項3
スペクトロメータの個別の空間領域に光ビームを投影することが、
互いに干渉する複数の光ビームを生成すること、及び
光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンが、スペクトロメータの透過の際の異なる光共振から生じること、
を含む、条項1に記載の方法。
【0132】
条項4
投影した光ビームの特性を個別の空間領域で検出することが、投影した光ビームを通って延びる少なくとも1つの半径方向経路に沿って光ビームの強度を検出することを含む、条項1に記載の方法。
【0133】
条項5
投影した光ビームの特性を個別の空間領域で検出することが、光学スペクトルのフィルタリングされたバージョンによって空間領域に付与されたエネルギーを検出することを含む、条項1に記載の方法。
【0134】
条項6
試験光ビームをスペクトロメータと相互作用させること、
試験光ビームのスペクトル特徴を、N個の個別のスペクトル特徴の範囲にわたって変化させること、及び
範囲内の各スペクトル特徴について、
試験光ビームの特性を各空間領域で検出すること、
試験光ビームの検出した特性を、スペクトロメータの入出力関係を捉えた予備2次元行列のスペクトル特徴に基づいて割り当てられた列として、スペクトロメータのM個の空間領域のそれぞれに記憶すること、及び
2次元行列を予備2次元行列に基づいて計算すること、
によって2次元行列を作成することをさらに含み、
2次元行列の行の数及び予備2次元行列の列の数はNに等しく、2次元行列の列の数及び予備2次元行列の行の数はMに等しい、条項1に記載の方法。
【0135】
条項7
光ビームの光学スペクトルを推定することが、2次元行列と検出した光ビーム特性との行列乗算を実行することを含む、条項6に記載の方法。
【0136】
条項8
個別のスペクトル特徴の数Nが、推定した光学スペクトルの解像度を決定する、条項6に記載の方法。
【0137】
条項9
スペクトロメータの入出力関係を捉えた予備2次元行列の擬似逆行列を計算することによって2次元行列を作成すること、
2次元行列を記憶すること、をさらに含み、
光ビームの光学スペクトルを推定することが、2次元行列と検出した光ビーム特性との行列乗算を実行することを含む、
条項1に記載の方法。
【0138】
条項10
予備2次元行列の擬似逆行列を計算することが、予備2次元行列に特異値分解を行うことを含む、条項9に記載の方法。
【0139】
条項11
雑音からの寄与が信号からの寄与を上回る行列積の成分を減らすことによって、雑音の影響を減らすことをさらに含む、条項10に記載の方法。
【0140】
条項12
投影した光ビームの検出した特性をアレイに記憶することをさらに含み、アレイの行の数が、1つの空間方向のスペクトロメータの個別の空間領域の行の数に一致し、アレイの列の数が、もう1つの空間方向のスペクトロメータの個別の空間領域の列の数に一致する、条項1に記載の方法。
【0141】
条項13
アレイの列の数が1に等しく、アレイの行の数がMに等しく、
2次元行列の列の数がMに等しい、
条項12に記載の方法。
【0142】
条項14
推定した光学スペクトルに基づいてスペクトル特徴を計算することをさらに含み、スペクトル特徴が、波長及び帯域幅の1つ以上を含む、条項1に記載の方法。
【0143】
条項15
光ビームの経路にあるスペクトロメータと、
スペクトロメータに接続された制御システムと、を備えたメトロロジ装置であって、
スペクトロメータが、
光ビームを光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンに分離するように構成されたスペクトル分散装置と、
投影した光ビームの経路にあり、個別の空間領域を画定する検出器であって、光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンを各空間領域で受け取り、投影した光ビームの特性を各個別の空間領域で検出するように構成された検出器と、を備え、
制御システムが、
各成分が1つ以上の空間領域と各スペクトル特徴との関係を提供する2次元行列であって、スペクトロメータの入出力関係に関連する2次元行列を受け取り、
検出した光ビーム特性及び受け取った2次元行列を解析し、
解析に基づいて光ビームの光学スペクトルを推定するように構成されたメトロロジ装置。
【0144】
条項16
各空間領域が、検出器の1つ以上の結像素子で構成された表面である、条項15に記載のメトロロジ装置。
【0145】
条項17
スペクトル分散装置が、
互いに干渉する複数の光ビームを生成することによって、光ビームを光学スペクトルの異なるフィルタリングされたバージョンに角度分離するように構成されたエタロンと、
異なるフィルタリングされたバージョンを検出器の個別の空間領域に投影するように構成されたレンズと、を備えた干渉光学装置を備え、
検出器の空間領域が、半径方向に沿って中心領域から配置される、
条項15に記載のメトロロジ装置。
【0146】
条項18
2次元行列の行の数がNに等しく、Nが2次元行列の行に記憶されている個別のスペクトル特徴の範囲に等しく、個別のスペクトル特徴の範囲がエタロンの少なくとも1つの自由スペクトル領域に及び、個別のスペクトル特徴の数Nが、推定した光学スペクトルの解像度を決定する、条項15に記載のメトロロジ装置。
【0147】
条項19
検出器が、一方向に沿って延びるフォトダイオード検出器のアレイを備える、条項15に記載のメトロロジ装置。
【0148】
条項20
制御システムが、検出した投影した光ビームの特性をアレイに記憶するように構成されたメモリを備え、アレイの行の数が、第1の空間方向の検出器の個別の空間領域の行の数に一致し、アレイの列の数が、第2の空間方向の検出器の個別の空間領域の列の数に一致する、条項15に記載のメトロロジ装置。
【0149】
条項21
第1の空間方向が半径方向であり、第2の空間方向が半径方向に垂直である、条項20に記載のメトロロジ装置。
【0150】
条項22
スペクトロメータが相互作用する試験光ビームを生成するように構成された試験光源と、
試験光ビームのスペクトル特徴を制御するスペクトル特徴駆動装置と、
をさらに備えた、条項15に記載のメトロロジ装置。
【0151】
条項23
スペクトル特徴駆動装置が、試験光ビームがスペクトロメータと相互作用する間、N個の個別のスペクトル特徴の範囲にわたって試験光ビームのスペクトル特徴を変化させるように構成され、
検出器が、試験光ビームの特性を各空間領域で検出するように構成され、
制御システムが、試験光源及びスペクトル特徴駆動装置に接続され、範囲内の各スペクトル特徴について、試験光ビームの検出した特性を、スペクトロメータの入出力関係を捉えた予備2次元行列のスペクトル特徴に基づいて割り当てられた列として、スペクトロメータのM個の空間領域のそれぞれに記憶することによって、2次元行列を作成するように構成された、条項22に記載のメトロロジ装置。
【0152】
条項24
試験光ビームが、光ビームの帯域幅よりも5から500,000倍小さい帯域幅を有する、条項22に記載のメトロロジ装置。
【0153】
条項25
試験光源が単一周波数全固体レーザを含む、条項22に記載のメトロロジ装置。



図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13