(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】ねじピックアップ特徴部を備えた電動ねじ回し
(51)【国際特許分類】
B25B 23/10 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
B25B23/10 E
(21)【出願番号】P 2019563213
(86)(22)【出願日】2018-05-04
(86)【国際出願番号】 EP2018061463
(87)【国際公開番号】W WO2018210584
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-30
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ザンダー ハンス ヨハン アルフレド
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-277431(JP,A)
【文献】特開平10-156741(JP,A)
【文献】国際公開第2009/022420(WO,A1)
【文献】米国特許第4924732(US,A)
【文献】実公昭46-35987(JP,Y1)
【文献】特開2001-121440(JP,A)
【文献】米国特許第3275047(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/10
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
準大気圧供給源に連通するように配置された真空チャンバ(31)を有するハウジング(10)と、モーターと、駆動スピンドル(22)と、前記駆動スピンドル(22)に結合されたねじ係合ビット(24)と、前記ビット(24)を取り囲む吸引ノズル(28)と、前方端部(26a)及び前記駆動スピンドル(22)に結合された後方端部(26b)を有するビット支持スリーブ(26)とを備える電動ねじ回しであって、
前記ビット支持スリーブ(26)の前記後方端部(26b)は、前記真空チャンバ(31)によって取り囲まれ、前記ビット支持スリーブ(26)の前記前方端部(26a)は、
前記ビット支持スリーブと前記吸引ノズルとの間に軸方向のオーバーラップが存在しないように、シール要素(32)によって前記吸引ノズル(28)と接触状態にあり、
前記吸引ノズル(28)は、前記吸引ノズルの内面に配置された少なくとも1つの内部通路(47a-d)を備え、
前記ビット支持スリーブ(26)は、
前記吸引ノズル(28)内の前記少なくとも1つの内部通路(47a-d)と連通するための、前記スリーブ(26)の内面に配置されかつ前記後方端部(26b)から前記前方端部(26a)に延びる少なくとも1つの長手方向の内部通路(44a-d)を備え、前記少なくとも1つの通路(44a-d)は、前記真空チャンバ(31)から前記吸引ノズル(28)に延びる、
ことを特徴とする電動ねじ回し。
【請求項2】
前記吸引ノズル(28)は、前記ビット(24)と共回転するようにロック装置(27)を用いて固定される、請求項1に記載の電動ねじ回し。
【請求項3】
前記ビット(24)は、小径の前方端部(24a)及び大径の後方端部(24b)を有し、前記後方端部(24b)は、前記ビット支持スリーブ(26)の中に延び、前記駆動スピンドル(22)上の対応するカップリング部分(21)と係合するカップリング部分(23)を備える、請求項1又は2に記載の電動ねじ回し。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじピックアップ特徴部を備えた電動ねじ回しに関する。
詳細には、本発明は、真空作動式ねじピックアップ装置を有する電動ねじ回しに関し、取り付けられるねじは、このねじピックアップ装置によって、予締め付けシーケンスにおいてビットと係合状態にされる。この形式のねじ回しは、ハウジングと、駆動スピンドルに駆動結合したモーターと、駆動スピンドルに結合したねじ係合ビットと、駆動スピンドルに結合したビット支持スリーブと、ビットを取り囲む吸引ノズルとを備え、ハウジングは、一方側で準大気圧供給源、他方側で吸引ノズルに連通する真空チャンバを備える。
【背景技術】
【0002】
上記形式の従来式電動ねじ回しでは、狭い又は窮屈なねじ位置にアクセスするのに問題がある。これは、これらの工具において、真空チャンバを含むハウジングが、真空チャンバがビットを取り囲む吸引ノズルに直接連通する、前方延長位置に達することに起因する。これは、ハウジングの比較的幅広の前方部分が、ねじ位置を取り囲む構造部分に容易に当接し、結果的にビットが、締結されるねじに到達するのを妨害することを意味する。従って、従来のねじ回しのハウジング及び真空チャンバ構成は、狭い又は窮屈なねじ位置へのアクセス容易性に関して制約をもたらす欠点がある。
【0003】
真空ねじピックアップ特徴部を備えた従来の電動ねじ回しに内在する他の問題点は、ビットを取り囲む吸引ノズルが、真空チャンバによってハウジングに剛結合されることであり、これは、ねじ締結時に、ビットと吸引ノズルとの間の相対回転が常にあることを意味する。これは、ねじの揺れをもたらし、ビットとの接触が簡単に外れて最終的に抜け落ち、結果的に望ましくないプロセス妨害をもたらす傾向がある。詳細には、これは、ねじ頭が何らかの幾何学的な不規則性をもつ場合に生じる可能性がある。また、ビットと吸引ノズルとの間の相対回転は、締め付けプロセスの品質に影響を与える傾向にある摩擦力をもたらすことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題点は、特許請求の範囲に定義されたような本発明による電動ねじ回しによって解決及び解消されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
最初に特定された問題点に対する解決策は、準大気圧供給源に連通する真空チャンバを有するハウジングと、駆動スピンドルに駆動結合されたモーターと、駆動スピンドルに結合されたねじ係合ビットと、ビットを取り囲む吸引ノズルと、駆動スピンドルに結合されて真空チャンバで取り囲まれた後方端部及び吸引ノズルと接触状態にある前方端部を有するビット支持スリーブとを備え、ビット支持スリーブは、後方端部から前方端部に延び、真空チャンバからの準大気圧を吸引ノズルに伝達する少なくとも1つの長手方向の内部通路を備えている、電動ねじ回しを提供することで得られる。
【0006】
2番目に特定された問題点に対する解決策は、準大気圧供給源に接続された真空チャンバを有するハウジングと、駆動スピンドルに駆動結合されたモーターと、駆動スピンドルに結合されたねじ係合ビットと、駆動スピンドルに結合されたビット支持スリーブと、ビットを取り囲む吸引ノズルとを備え、吸引ノズルはビットに対してしっかりと固定されかつこれと共回転するようになった、電動ねじ回しを提供することで得られる。
【0007】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の明細書及び特許請求の範囲から明らかになるはずである。
【0008】
本発明の好適な実施形態は、添付図面を参照して以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明による電動ねじ回しの前方端部の側面図である。
【
図3】本発明による電動ねじ回しの前方端を通る長手方向の拡大された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面に例示された電動ねじ回しは、固定具上に支持されかつ前部出力端に真空作動式ねじピックアップ装置を有するように設計されたハウジングを備える。また、ハウジングは、ねじ回しを動力源に接続するための手段及びねじピックアップ装置を準大気圧供給源に接続するための手段を備える。
【0011】
ねじ回しは、前方端において、吸引ノズルによって取り囲まれて、取り付けられることになるねじをピックアップ及び保持して締め付けるためのねじ係合ビットを保持する。
図1に示すように、従来の電動ねじ回しにおいて、ハウジングは、ある程度ねじ係合ビットの出力端に近接した位置にまで延び、吸引ノズルは、ハウジングにしっかり固定される。これは、ねじを狭くて到達が難しい位置に取り付けて締め付ける際に、ハウジングが意図されたねじ位置に隣接する構造部分に簡単に接触し、結果的に当該位置においてねじ回しを使用することを妨げることを意味する。
【0012】
図1の従来の電動ねじ回しに比較すると、
図2に示す本発明のねじ回しは、前方端セクションにおいて非常にスリムなデザインであり、上記の問題点に対する解決策を提示する。
【0013】
詳細には、
図2に示すように、本発明によるねじ回しの前方端セクションは、ハウジング10の一部を形成する真空チャンバ31と、モーターに結合されて真空チャンバ31を貫通して延びる駆動スピンドル22とを備える。駆動スピンドル22は、締め付けられることになるねじに締め付けトルクを伝達するための半月形カップリング25によってねじ係合ビット24に結合される。ビット24は標準型であり、小径の前方部分24aと大径の後方部分24bとを備え、ビット前方部分24aには、実際に使用されるねじに係合するためのグリップパターンが形成される。ビット後方部分24bには半月形カップリング25の一方の半部分23が形成されるのに対して、半月形カップリング25の対応する他方の半部分21は、駆動スピンドル22上に形成される。管状の吸引ノズル28は、ビット前方部分24aを取り囲み、ねじ27の形のロック装置によってビットに対する回転がロックされる。このロック装置により、吸引ノズル28が軸方向にロックされるだけでなく、締め付け作業時にビット24と共回転することが保証される。前方端において、吸引ノズル28には、ピックアップされたねじの頭部を収容して保持するためのソケット部分30が形成されている。
【0014】
吸引ノズル28をビット24に関する回転に対してロックすることで、ピックアップされてその頭部がソケット部分30に収容されたねじが、ビット24の回転時にノズル28による摩擦の影響を受けず、しかし、ねじが正しい配向を失い、結果的に取り付け及び締め付けプロセスを悪化させることを阻止することが保証される。
【0015】
管状のビット支持スリーブ26は、圧入によって駆動スピンドル22にしっかりと固定され、それ自体ハウジング10に対してベアリング29によって支持される。ビット支持スリーブ26は前方端部26a及び後方端部26bを備え、前方端部26aは、大径のビット後方部分24bを取り囲む。ビット支持スリーブ26の後方端部26bは、ハウジング10の一部として形成されかつ外部の準大気圧供給源に連通する真空チャンバ31によって取り囲まれる。ビット支持スリーブ26の前方端部26aは、シールリング32によって端を接した状態で吸引ノズル28に接触する。
【0016】
ビット24は、ボール35を有するバールボールラッチ33によってビット支持スリーブ26に対して軸方向にロックされ、ボール35は、ビット支持スリーブ26の開口34内に配置されかつビット後方部分24bの環状溝36と協働するように配設される。ボール35は、ビット支持スリーブ26の外側上で軸方向に変位するように配設された操作リング37によってロック位置とロック解除位置との間を変位することができる。ばね38が操作リング37をロック位置に付勢するために設けられており、ボール35は、溝36とのロック係合を確実に維持する。ばね38は、ビット支持スリーブ26上に取り付けられたロックリング39によって軸方向に支持される。
【0017】
さらに、ビット支持スリーブ26は、後方端部26bから前方端部26aに延びて吸引ノズル28内の4つの内部通路47a-dに連通する4つの長手方向の内部空気通路44a-dを備える。この通路44a-dは、複数の内部開口45a及び45bを介して真空チャンバ31に連通する。吸引ノズル28内の通路47a-d、ビット支持スリーブ26内の通路44a-d及び横方向開口45a、bは、真空チャンバ31を介して吸引ノズル28を外部準大気圧供給源に接続する空気連通経路を形成する。ビット支持スリーブ26内の通路44a-dの配列は
図4及び5に示されているが、吸引ノズル28内の4つの通路47a-dの配列は
図6に示されている。
【0018】
ビット24をビット支持スリーブ26の前方端に取り付けてビット支持スリーブ26内の内部通路44a-dを介して準大気圧を吸引ノズル24に伝達することで、真空チャンバ31から、従ってハウジング10から所定の軸距離で吸引ノズル28を配置するが可能になっており、結果的にねじ回しのスリムな前方端セクションが得られる。これは、このねじ位置に隣接する構造部分との干渉によってねじ回しがハウジングによって妨害されないので、狭くて到達するのが難しい位置に配置されたねじへのアクセスが非常に容易になることを意味する。
【0019】
本発明は、例示されて説明された実施例に限定されず、特許請求の範囲の範疇の中で自由に変更できることを理解されたい。例えば、吸引ノズル18の共回転を得るためにビット24に対する相対回転に抗して吸引ノズル28をロックすることは他の方法で実現できる。他の構成は、吸引ノズル28をビット支持スリーブ26に固定することとすることができる。これはビット支持スリーブ26と吸引ノズル28との間の別のタイプの提供することを可能にするであろう。
【0020】
本発明は、機械的に支持されるねじ回しに適用できるだけでなく、手動で支持されるねじ回しにも適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 ハウジング
22 駆動スピンドル
24 ねじ係合ビット
26 ビット支持スリーブ
26a 前方端部
26b 後方端部
28 吸引ノズル
31 真空チャンバ
44a-d 長手方向の内部通路