(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】魚類の連鎖球菌病予防用新規血清型ワクチン
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20220208BHJP
A61K 39/09 20060101ALI20220208BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220208BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220208BHJP
C12R 1/46 20060101ALN20220208BHJP
【FI】
C12N1/20 E
C12N1/20 A ZNA
A61K39/09
A61P37/04
A61P31/04 171
C12R1:46
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020077248
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2020-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0049050
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0130734
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年5月20日 国立水産科学院(大韓民国)プレスリリース
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 13800BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 13801BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 13802BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 13803BP
(73)【特許権者】
【識別番号】515260704
【氏名又は名称】大韓民国(国立水産科学院)
【氏名又は名称原語表記】REPUBLIC OF KOREA(National Institute of Fisheries Science)
【住所又は居所原語表記】216 Gijanghaean-ro Gijang-eup Gijang-gun, Busan 619-705 / KR
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ハン ヒョンジャ
(72)【発明者】
【氏名】チョン スンヒ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ヘソン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ミヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミョンスク
(72)【発明者】
【氏名】キム クァンイル
(72)【発明者】
【氏名】ミン ウニョン
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0111154(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0012461(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0029286(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0106570(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
A61K 39/09
A61P 37/04
A61P 31/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連鎖球菌病に感染したヒラメから分離された
血清型Ibストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13800BP菌株。
【請求項2】
連鎖球菌病に感染したヒラメから分離された
血清型IIストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13801BP菌株。
【請求項3】
連鎖球菌病に感染したヒラメから分離された
血清型Iaストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13802BP菌株。
【請求項4】
連鎖球菌病に感染したヒラメから分離された
血清型Icストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13803BP菌株。
【請求項5】
不活性化されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13800BP菌株、KCTC 13801BP菌株、KCTC 13802BP菌株及びKCTC 13803BP菌株からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の菌株を抗原として含
み、KCTC 13800BP菌株、KCTC 13801BP菌株、KCTC 13802BP菌株、又はKCTC 13803BP菌株が、それぞれ、血清型Ib菌株、血清型II菌株、血清型Ia菌株、又は血清型Ic菌株である、連鎖球菌病予防用不活性化ワクチン。
【請求項6】
前記ワクチンは、KCTC 13802BP菌株及びKCTC 13803BP菌株が1:1の比率で混合されることを特徴とする、請求項5に記載の連鎖球菌病予防用不活性化ワクチン。
【請求項7】
前記ワクチンは、KCTC 13800BP菌株、KCTC 13802BP菌株及びKCTC 13803BP菌株が1:1:1の比率で混合されることを特徴とする、請求項5に記載の連鎖球菌病予防用不活性化ワクチン。
【請求項8】
前記ワクチンの抗原濃度は、0.5~30mg/fishであることを特徴とする、請求項5に記載の連鎖球菌病予防用不活性化ワクチン。
【請求項9】
連鎖球菌病に感染したヒラメから分離されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13800BP菌株、KCTC 13801BP菌株、KCTC 13802BP菌株及びKCTC 13803BP菌株からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の菌株をホルマリンで不活性化させてワクチンを得る段階を含
み、KCTC 13800BP菌株、KCTC 13801BP菌株、KCTC 13802BP菌株、又はKCTC 13803BP菌株が、それぞれ、血清型Ib菌株、血清型II菌株、血清型Ia菌株、又は血清型Ic菌株であることを特徴とする連鎖球菌病予防用不活性化ワクチンの製造方法。
【請求項10】
請求項5のワクチンを魚類に投与することを含む、魚類を免疫する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ストレプトコッカス菌株及びこれを用いた連鎖球菌病予防用ワクチンに関し、より詳細には、新規ストレプトコッカス菌株、不活性化されたストレプトコッカスパラウベリス菌株を含む魚類の連鎖球菌病予防用不活性化ワクチン、その製造方法及び投与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連鎖球菌病(Streptococcosis)は天然及び養殖の淡水魚及び海産魚の敗血症を誘発する疾病である。海産魚類であるブリ(Yellowtail;Seriolae spp.)、ウナギ(Eel;Anguilla japonica)を含めて全世界の様々な魚種に感染されて疾病を誘発する。ストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)、ストレプトコッカスイニエ(Streptococcus iniae)、ストレプトコッカスアガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカスディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae)種は、国と地域を問わず魚類に発生して深刻な被害を与えている。
【0003】
2014年度世界水産物生産量は1億9,572万トンであった。そのうち漁獲生産量は9,463万トンであり、ここ数年間類似の漁獲生産量を示しているが、養殖生産量は1億109万トンで年毎増え、2025年では1億200万トンとなり、2013~2015年比で39%増加すると予想されている(FAO)。2017年の韓国魚類養殖生産量は86,387トンであり、魚種別生産量はヒラメが41,207トン(全生産量の47.7%)で、同年生産金額もヒラメが5,845億ウォン(57.9%)を記録し、ヒラメが韓国の代表魚類養殖品種であることが分かる(漁業生産統計、統計庁、2018)。ヒラメは、韓国海洋水産部が推進する水産分野の10代輸出戦略品目として指定されたもので、現在、養殖水産物戦略品目育成研究開発事業で推進されている付加価値の高い品種である。
【0004】
養殖ヒラメの疾病による被害は、年間生産量の30%に至る年間1.2万余トン程度と推定され、2018年に養殖ヒラメの斃死を最も誘発した疾病として、寄生虫性疾病であるスクーチカ病(44.5%)、やつれ症(12%)、ウイルス性出血性敗血症(16.6%)、細菌性疾病である連鎖球菌病(9.7%)が確認されている(養殖生物斃死動向調査及び活魚輸送用消毒装置効果検証研究、国立水産科学院研究用役、2018)。最近韓国でヒラメに最も多発する疾病として寄生虫性疾病であるスクーチカ病(61%)、ウイルス性出血性敗血症(10.6%)、S.parauberisによって発生する連鎖球菌病(9.8%)が報告されている(養殖場斃死現況及び斃死体処理方案研究、2014-2016、国立水産科学院)。ヒラメ養殖で問題となる連鎖球菌はS.iniae,S.parauberisとして知られており、2003年~2005年にジェジュ地域の養殖ヒラメから分離された連鎖球菌を同定した結果、S.parauberis 54%、S.iniae 46%の比率で分離された。しかし、2000年代後半から現在まで病めるヒラメにおいてS.iniaeの比率が低くなり、最近ではほとんど分離されておらず、たいていS.parauberisが分離されている実情である。
【0005】
養殖魚類の病原体検出率は毎年増加しつつあり、現在ヒラメに商用化されている連鎖球菌(S.parauberis)ワクチンの普及にもかかわらず、当該疾病が依然として発生しており、現ワクチン抗原の改良が必要な実情である。抗生・抗菌剤の誤・乱用による薬剤耐性菌及び多剤耐性菌の出現によって治療効能が減少しているため、疾病が発生した後に化学療法剤で治療することは益々難しくなると見られ、疾病を事前予防できるワクチンの開発が必要である。実際に韓国ではヒラメに対するS.parauberisのワクチンが2009年から商業化して普及されているが、ワクチン普及後にもS.parauberisは依然として発生している(水産生物疾病特性研究、2012-2017)。一般に、ヒラメに最も高い斃死を誘発するスクーチカ病は稚魚期に発生するが、連鎖球菌病は中間育成魚、成魚などに発生し、より大きい経済的な被害をもたらしている。最近に養殖ヒラメに発生した疾病による斃死原因分析によると、細菌性疾病による斃死が13%で、そのうち連鎖球菌病による斃死が67.1%と最も高かった。
【0006】
韓国ではS.parauberis不活化ワクチン、組換えタンパク質ワクチン、弱毒化ワクチンなどの様々な研究が着実に進行しているが、現在、他の細菌病原体と混合ワクチンの形態で製作された不活化ワクチンが商用化して販売されているだけである(6社の9個製品)。スペインでタルボット対象にS.parauberisを抗原とするHipra社のICTHIOVAC(R)-STR不活化注射ワクチンが開発されて販売されているが、韓国ではS.parauberisに対する単独ワクチンは販売されていない。魚類養殖産業の特性上、低費用の魚類ワクチンの開発は必須であり、色々な細菌病原体を一度に予防可能な混合ワクチンが商用化されているが、実際に混合ワクチン使用後のワクチン効果に対する調査はわずかな実情である。ヒラメではS.parauberisによる連鎖球菌病がワクチン普及以後にも発生しており、現在商用化されたワクチンの効能に対する検証が必要である。
【0007】
ヒトに対するインフルエンザーワクチンやポリオワクチンのように同種の多数の型、すなわち、インフルエンザーではA1型、A2型、B型、ポリオではI型、II型、III型を混ぜて作るワクチンを多価ワクチン(polyvalent vaccine)という。このような病原体は抗原型がいくつかに分けられているので、別々に含まれているワクチン(単価ワクチン)で予防接種した場合、疾病類型がワクチンと全く異なる類型で発生すると役に立たず、多価ワクチンを活用しているわけである。ヒトに肺炎を誘発する連鎖球菌であるS.pneumoniaeは様々な血清型があるが、これを全て予防できる23価多価被膜多糖類ワクチンが使用されている(ソン・ジュンヨン、ジョン・ヒジン、2014、肺炎球菌ワクチン、J.Korean Med Assoc 57(9)、780-788)。
【0008】
そこで、本発明者らは、ヒラメに疾病を誘発するS.parauberisに対してMLST(Multilocus sqquecne typing)方法を用いて分子力学及び血清型調査を実施し、韓国で発生するヒラメ連鎖球菌S.parauberisワクチンに適する菌株を選定するための基礎資料を確保し、それぞれの血清型別単価ワクチンを製作して交差ワクチン効能を評価した。また、交差ワクチン効能評価結果に基づいてS.parauberis多価ワクチン開発のために、血清型の異なるS.parauberis菌株を混合してワクチン効能を評価し、本発明を完成した。
【0009】
この背景技術部分に記載された上記の情報は、単に本発明の背景に対する理解を向上させるためのもので、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって既に知られた先行技術を形成する情報を含まなくてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、連鎖球菌病に感染したヒラメから分離されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)菌株を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、不活性化されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)菌株を抗原として含む連鎖球菌病予防用不活性化ワクチンを提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、連鎖球菌病に感染したヒラメから分離されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)菌株をホルマリンで不活性化させてワクチンを得る段階を含むことを特徴とする連鎖球菌病予防用不活性化ワクチンの製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記ワクチンを魚類に投与することを含む、魚類を免疫する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、連鎖球菌病に感染したヒラメから分離されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13800BP菌株、KCTC 13801BP菌株、KCTC 13802BP菌株及びKCTC 13803BP菌株を提供する。
【0014】
本発明はまた、不活性化されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13800BP菌株、KCTC 13801BP菌株、KCTC 13802BP菌株又はKCTC 13803BP菌株を抗原として含む連鎖球菌病予防用不活性化ワクチンを提供する。
【0015】
本発明はまた、連鎖球菌病に感染したヒラメから分離されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13800BP菌株、KCTC 13801BP菌株、KCTC 13802BP菌株又はKCTC 13803BP菌株をホルマリンで不活性化させてワクチンを得る段階を含むことを特徴とする連鎖球菌病予防用不活性化ワクチンの製造方法を提供する。
本発明はまた、前記ワクチンを魚類に投与することを含む、魚類を免疫する方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、魚類、特に養殖ヒラメの連鎖球菌病を効果的に予防し、連鎖球菌病による魚類の斃死を顕著に低減できる効果を奏する。したがって、魚類の生産性増大はもとより、抗生剤使用による費用も節減することができる。また、本発明は、魚類の細菌性疾病を予防できるワクチンを使用することによって、抗生剤を使用しない健康な魚類の生産を可能にして養殖業の発展に貢献し、魚類消費を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】S.parauberisの64個菌株の遺伝子5種[DNA gyrase subunit B(gyrB)、Surface M-protein(simA)、autolysin、capsular polysaccharide biosynthesis protein、tyrosine-protein kinase(wze)]に対する塩基配列(約4,120bp)の系統樹分析結果を示す図である。
【
図2】S.parauberis血清型分析を示すもので、
図2(A)はスライド凝集反応(I:陽性反応、II:陰性反応)、
図2(B)はマイクロタイター(Microtiter)凝集反応を示す図である。
【
図3】韓国の2002年~2017年S.parauberis菌の血清型分布を示すグラフである。
【
図4】韓国の2002年~2017年S.parauberis菌の地域別、分離年度別分離比率を示す図である。
【
図5】韓国で販売されているS.parauberis抗原を含む不活化ワクチンの血清型PCR(serotype-PCR)結果を示す図である。
【
図6】S.parauberisの7個菌株の人工感染後、ヒラメの累積斃死量を示すグラフである。
【
図7】S.parauberisの4個菌株の濃度別ヒラメの累積斃死量を示すグラフである。
【
図8】ヒラメのS.parauberisワクチン接種及び人工感染実験日程を図式化した図である。
【
図9】S.parauberis多価ワクチン接種2週後、抗体測定結果を示すグラフである。
【
図10】S.parauberis多価ワクチン接種1週後、内部臓器の病理組織検査結果である。
【
図11】S.parauberis多価ワクチン接種2週後、内部臓器の病理組織検査結果である。
【
図12】S.parauberis多価ワクチン接種3週後、内部臓器の病理組織検査結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
特に定義されない限り、本明細書で使われた技術的及び科学的用語はいずれも、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われた命名法は、この技術分野で周知且つ通常のものである。
【0019】
本発明の一実施例において、連鎖球菌病に感染したヒラメから分離されたStreptococcus parauberis 19FBSPa0003(PR5)菌株、Streptococcus parauberis FP2331菌株、Streptococcus parauberis FPa4365菌株及びStreptococcus parauberis FPa4870菌株を不活性化させた後、これを抗原として含むワクチンを魚類に接種した結果、全てのワクチン接種区で低い斃死率を示し、血清型別交差ワクチン効能もあることを確認した。また、前記異なる血清型別抗原を含む多価ワクチンの場合、単一血清型ワクチンに比べてワクチン効能がより増加することを確認した。
【0020】
したがって、本発明は一観点において、連鎖球菌病に感染したヒラメから分離されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13800BP菌株に関する。
【0021】
本発明は他の観点において、連鎖球菌病に感染したヒラメから分離されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13801BP菌株に関する。
【0022】
本発明はさらに他の観点において、連鎖球菌病に感染したヒラメから分離されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13802BP菌株に関する。
【0023】
本発明はさらに他の観点において、連鎖球菌病に感染したヒラメから分離されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13803BP菌株に関する。
【0024】
本発明において、前記KCTC 13800BP菌株は、韓国生物資源センター(Korean Collection for Type Culture)に2019年1月30日付で寄託されたStreptococcus parauberis 19FBSPa0003菌株であり、本明細書で19FBSPa0003はPR5と同じ菌株を意味する。
【0025】
本発明において、前記KCTC 13801BP菌株は、韓国生物資源センターに2019年1月30日付で寄託されたStreptococcus parauberis FP2331菌株であり、前記KCTC 13802BP菌株は、韓国生物資源センターに2019年1月30日付で寄託されたStreptococcus parauberis FPa4365菌株であり、前記KCTC 13803BP菌株は韓国生物資源センターに2019年1月30日付で寄託されたStreptococcus parauberis FPa4870菌株である。
【0026】
本発明は、さらに他の観点において、不活性化されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13800BP菌株、KCTC 13801BP菌株、KCTC 13802BP菌株及びKCTC 13803BP菌株で構成された群から選ばれるいずれか一つ以上の菌株を抗原として含む連鎖球菌病予防用不活性化ワクチンに関する。
【0027】
本発明において、前記ワクチンは、KCTC 13802BP菌株及びKCTC 13803BP菌株が1:1の比率で混合されることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0028】
本発明において、前記ワクチンは、KCTC 13800BP菌株、KCTC 13802BP菌株及びKCTC 13803BP菌株が1:1:1の比率で混合されることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0029】
本発明において、前記ワクチンの抗原濃度は、0.5~30mg/fishであることを特徴とし得る。好ましくは、1~3mg/fishであることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0030】
本発明の一実施例において、Streptococcus parauberis 19FBSPa0003(PR5)菌株、FP2331菌株、FPa4365菌株又はFPa4870菌株を含むワクチン接種後、抗原種類別(血清型Ia~II)に血清の抗体価を測定した結果、いずれも対照区(PBS)に比して有意に高い抗体価を形成した。各ワクチン区は同一血清型の抗原で抗体価を測定する場合、最も高い抗体価を示した。
【0031】
また、S.parauberis血清型Ia+Icワクチン区とIa+Ib+Icワクチン区で人工感染すれば、対照区に比して高い生存率を示し、S.parauberis単一血清型ワクチン区に比しても高い相対生存率を示した。
【0032】
本発明で用語“ワクチン”とは、感染疾患を予防するための免疫のために用いられる抗原を指し、弱毒化させた微生物又はウイルスで製造され、特定感染症に対して人工的に免疫原性を獲得するために弱化又は死滅させた病原微生物を個体内に投与することを意味する。ワクチンによって刺激を受けると、個体内の免疫システムが働いて抗体を生成し、その感受性を維持するが、再感染がおきると、短時間内に抗体を効果的に生成することによって疾患を克服することができる。
【0033】
前記不活性化ワクチンは、当該技術分野に公知の方法を用いて製造でき、例えば、当該技術分野に知られた不活性化剤を用いて製造することができる。好ましくは、ホルマリン処理によって不活性化させることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0034】
本発明に係る混合不活性化ワクチンは、補助剤(adjuvant)をさらに含むことができる。前記補助剤は、当該技術分野に周知である如何なるものも使用可能であり、好ましくは、モンタナイド(Montanide)ISA35又はGel01が使用できる。
【0035】
また、安定化剤又は添加剤として、糖類やアミノ酸類、鉱物油、植物油、明礬、リン酸アルミニウム、ベントナイト、シリカ、ムラミルジペプチド(muramyl dipeptide)誘導体、チモシン、インターロイキンなどが使用されてもよい。
【0036】
本発明において、前記ワクチンは、適当な容積の、例えば約10~500ml体積のバイアルにワクチン液を分注した後、密封して使用することができる。このようなワクチンは、液状の他に、分けて注入したのち凍結乾燥して乾燥製剤として使用されてもよい。前記乾燥製剤は、使用直前に添加した減菌液で乾燥物質を完全に再溶解して使用してもよい。
【0037】
本発明において、前記混合不活性化ワクチンは、感染の危険性がある任意の年齢の魚類に使用することができる。これに制限されるものではないが、稚魚を含む中間育成魚、成魚に使用可能である。
【0038】
本発明は、さらに他の観点において、連鎖球菌病に感染したヒラメから分離されたストレプトコッカスパラウベリス(Streptococcus parauberis)KCTC 13800BP菌株、KCTC 13801BP菌株、KCTC 13802BP菌株及びKCTC 13803BP菌株で構成された群から選ばれるいずれか一つ以上の菌株をホルマリンで不活性化させてワクチンを得る段階を含むことを特徴とする、連鎖球菌病予防用不活性化ワクチンの製造方法に関する。
【0039】
本発明において、前記ワクチンは、Streptococcus parauberis KCTC 13800BP菌株、KCTC 13801BP菌株、KCTC 13802BP菌株又はKCTC 13803BP菌株を培養して不活性化させた後、濃度を調節して製造する。本発明の一実施例において、凍結保存されたS.parauberisの4個菌株を培養し、培養された菌液に37%(v/v)ホルマリン(Merck,Germany)を各培養液の0.5%(v/v)となるように添加し、撹拌培養器で150rpm、20℃で24時間不活化した。不活化が確認された菌液を遠心分離した後、滅菌生理食塩水で洗浄した後、菌体を回収し、最終的に湿菌体の重さを測定して実験区によって濃度を異ならせてワクチンを製造した。
【0040】
本発明は、さらに他の観点において、前記連鎖球菌病予防用不活性化ワクチンを魚類に投与することを含む、魚類を免疫する方法に関する。
【0041】
本発明において、前記ワクチンを魚類の腹腔に注射することを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明において、前記魚類は、感染の危険性があるヒラメなどの魚類を含むが、これに制限されるものではない。
【0043】
本発明の一実施例において、4種のS.parauberisワクチン処理後、それぞれの血清型に対する人工感染試験を行った結果、ワクチンを接種していない対照区に比べて全ワクチン接種区で低い斃死率を示し、血清型別交差ワクチン効能もあることを確認した。また、S.parauberis血清型Ia~Icを含む多価ワクチン接種区の場合、単一血清型ワクチン接種区に比して高いワクチン効能を示すことを確認した。
【0044】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。それらの実施例は単に本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がそれらの実施例によって制限されると解釈されないことは当業界で通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0045】
実施例1:連鎖球菌S.parauberisの分離及び同定
【0046】
国立水産科学院病理研究科で保存していた2002年~2017年韓国の病める養殖ヒラメから分離されたS.parauberis菌株199個から、分離年度及び地域別に代表菌株64個を選定して分析に使用した。
【0047】
菌株を、1%NaClを添加したトリプティックソイ寒天培地(tryptic soy agar)(TSA,Becton Dickinson,USA)又はブレインハートインフュージョン寒天培地(brain heart infusion agar)(BHIA,Becton Dickinson,USA)に塗抹した後、25℃で24時間培養して菌の性状を確認し、これを継代培養して表現型、血清型、遺伝学的分析などを行った。
分析した菌株の分離地域及び年度を表1に示す。
【0048】
【0049】
実施例2:S.parauberisの表現型分析
【0050】
生化学的特性を分析するために、S.parauberis菌株を、1% NaClが添加されたBHIA培地で25℃、24時間培養した。API 20strepキット(BIOMERIEUX,France)とAPI ZYMキット(BIOMERIEUX,France)実験方法は、純粋培養された菌集落をメーカーの方法に従ってストリップに接種培養して試験した。
【0051】
S.parauberis菌株64個のAPI 20strep、API zymキット分析の結果、調べた全菌株は非運動性のグラム陽性球菌(gram-positive cocci)で、カタラーゼ(catalase)、オキシダーゼ(oxidase)陰性と確認された(表2)。
【0052】
【0053】
PA: alkaline phospatase, AD: arginine dihydrorase, RI: ribose acidification, MA: mannitol acidification, SO: sorbitol acidification, LA: lactose acidification, TR: trehalose acidification, IN: inulin acidification, AM: starch acidification, 2: alkaline phospatase, 3: esterase(C4), 4: esterase lipase(C8), 5: lipase(C14), 7: valine arylamidase, 8: crystine arylamidase, 10: α-chymotrypsin, 11: acid phosphatase, 14: β-galactosidase, 16: α-glucosidase.
【0054】
API 20strep生化学的特性を分析した結果、全菌株は、VP(pyruvate acetoin production)、HIP(hippurate hydrolysis)、ESC(β-glucosidase)、PYRA(pyrrolidonyl arylamidase)、LAP(leucine arylamidase)陽性、αGAL(α-galactosidase)、βGUR(β-galactosidase)、ARA(L-arabinose acidification)、RAF(Raffinose acidification)、GLYG(Glycogen acidification)陰性反応を示した(表3)。
【0055】
【0056】
API zymキット生化学的特性を分析した結果、全菌株は、leucine acrylamidase、Naphtol-AS-BI-phosphohydrolase陽性、typsin、β-galactosidase、β-glucuronidase、β-glucosidase、N-acetyl-β-glucosaminidase、α-mannosidase、α-fucosidase陰性反応を示した(表4)。
【0057】
【0058】
実施例3:S.parauberisの遺伝型分析
実施例3-1:プライマー作製及び遺伝子塩基配列分析
遺伝的特性分析のために、各分離菌株を、1%NaClが添加されたBHIB培地で24時間培養した後、13,000rpmで2分間遠心分離、上澄液を除去して細菌ペレットを作製した。細菌ペレットは、Promega Genomic DNA精製キット(Promega,USA)を用いてDNAを抽出した。Housekeeping gene groEL,gyrBは、既に報告されたプライマーを使用し、S.parauberis KCTC 11537(Nho et al.,2011)及びKCTC 11980(Park et al.,2013)ゲノムから、抗原性・病原性に関連すると推定される遺伝子6種(capsule polysaccharide 4種、autolysin 1種、M-like protein 1種)を選定して、特異的に増幅できるプライマーを作製して分析した(表5)。
【0059】
【0060】
前記表5で、塩基配列はIUPACヌクレオチドコード(Nucleotide ambiguity code)で表示し、RはA又はG、i(配列目録にはSと表記)はInosine、HはA、C又はTを意味する。Nはany base、YはC又はT、WはA又はTを意味する。
【0061】
作製したプライマーでPCR増幅し、PCR産物は、EtBrが含まれた1.5%アガロースゲル(agarose gel)(Bioneer,Korea)を用いて電気泳動した後、UVトランスルミネーター(transilluminator)(Alpha Innotech,USA)を用いてバンド(band)を確認し、塩基配列を分析した(表6~表14)。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
遺伝子塩基配列分析は、MEGA6プログラムとGENETYX Ver.8.0(SDC Software Development,Japan)を使用し、決定された各塩基配列はNCBI(National Center for Biotechnology Institute)で提供するBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を用いて、既存に報告されたS.parauberis菌株の遺伝子及び本実施例で分析した菌株の遺伝子を比較分析した。Blast検索の塩基配列情報に基づいてBioedit Ver.7.2.1を使用して多重アラインメント(multiple alignment)を実施し、MEGA6プログラム(http://www.megasoftware.net;Tamura et al.,2013)を使用した近隣結合分析(NJ;neighbor-joining analysis,1,000 rounds of boostrap)によって各塩基配列間遺伝的距離と系統図(phylogenetic tree)を作成した(
図1)。
【0072】
実施例3-2:遺伝型分析結果
ヒラメから分離された菌株64個の16S rRNA分析の結果、S.parauberisと確認され、同じ塩基配列と確認された。S.parauberis菌株64個に対するMLST(multilocus sequence typing)分析を行った。Soa(Sugar O-acryltransferase sialic acid)、PB(Polysaccharide biosynthesis protein)遺伝子は、一部菌株では増幅がなかった。分析した64個菌株において16S rRNA、groEL遺伝子はいずれも塩基配列が同一であり、菌株ごとに塩基配列が異なるgyrB及び抗原性・病原性関連遺伝子4種のみに対してMLST分析を行った。ヒラメから分離されるS.parauberis菌株64個は、大きく2つのMLST遺伝型に区別されるが、MLST-1グループの36個菌株、MLST-2グループの28個菌株と確認された(
図1)。菌株別遺伝型分析結果は、下表15に示す。
【0073】
【表15】
CPB及びSOA項目で‘-’は、PCR増幅されなかったことを示す。
【0074】
実施例4:S.parauberisの血清型分析
実施例4-1:血清型分析方法
スライド凝集反応で血清型を分析したが、参照菌株(S.parauberis serotype I FPa4164及びS.parauberis serotype O2 S53)に対するウサギ抗血清を作製し、分析に使用した。スライドガラスにS.parauberisに対する2種のウサギ抗血清をそれぞれ70μLずつ落とし、ヒラメ由来S.parauberis菌株64個をMcFarland no.6 standardで滅菌生理食塩水に懸濁した菌液を各10μL落としてよく混ぜて30秒以内に凝集形成の有無を確認した(
図2(A))。凝集は、暗い背景でスライドを側面から観察し、対照群は、菌を懸濁しなかった滅菌生理食塩水を使用した。
【0075】
S.parauberisの血清型Iの亜血清型(subserotype)を区分するためにマイクロタイター凝集反応によってS.parauberis菌株64個の血清型分析を試みた(
図2(B))。S.parauberis遺伝型と表現型の特性が異なる4の菌株DK14、DW1、FPa4870、FP4743に対するウサギ抗血清を作製し、Kanai et al.(2015)の方法でマイクロタイター凝集反応を用いた亜血清型分類(sub-serotyping)を行った。96ウェルプレートにウサギ抗血清をPBSで2倍ずつ順次に希釈した後、4種のS.parauberis FKC懸濁液(2mg/mL PBS)を同一容量25μlずつ添加して混合し、4℃でO/Nインキュベーションした後、凝集抗体価を測定した。抗血清の交差吸収テスト(cross-absorbed test)のために、吸収抗血清を作製し(Kanai at al.,(2015)Fish pathology 50(2)、75-80)、吸収抗血清は凝集抗体価4未満と作製した。Tu et al.(2015)の方法によってS.parauberisに対する血清型分類PCR(serotyping PCR)を行った。PCRプライマーの塩基配列は、前記表2に示した通りである。
【0076】
実施例4-2:血清型分析結果
スライド凝集反応結果、S.parauberis菌株は、血清型Iの58個菌株、血清型IIの4個菌株、型別できない血清型(untypable serotype)の2個菌株と確認された。64個菌株の血清型分類PCR結果は、前記表15の通りである。
【0077】
S parauberisの4菌株DK14、DW1、FPa4870、FP4743に対するウサギ抗血清を作製してマイクロタイター凝集反応によって亜血清型分類を行った結果、血清型Iの58個菌株はanti-DK14、anti-DW1、anti-FPa4870抗血清と凝集反応を示すが、凝集価は抗血清種類によって異なり、血清型I内に亜血清型(subserotype)が存在することが示唆された。凝集価によってS.parauberisの血清型Iの亜血清型分類をした結果、Ia 25個菌株、Ib 25個菌株、Ic 8個菌株、Non-typeable 2個菌株と確認された(表16)。
【0078】
【0079】
S.parauberisの血清型Iで亜血清型の分類のためにanit-DK14、anti-DW1、anti-FPa4870抗血清を交差凝集素吸収方法で菌株別吸収抗血清(absorbed-antiserum)を作製し、再び凝集価を測定した。交差凝集素吸収方法で分析した結果、血清型Iで3つの亜型(subtype)が存在し、亜血清型Ic型の場合、Ia型に比べてIb型で高い凝集価を示した(表17)。
【0080】
【0081】
血清型Ibの菌株はいずれもMLST-2グループに含まれ、血清型II及びIaはMLST-1グループに含まれ、血清型Icは遺伝型と相関性がなかった(
図1)。
【0082】
S.parauberis分離地域による血清型(遺伝型)分布を分析した結果、分離地域による特定血清型が確認されず、分離地域に関係なく様々な血清型が確認された(表18、
図3及び
図4)。
【0083】
【0084】
S.parauberis分離年度による血清型分布を分析した結果、2010年以前には血清型Ibが優点的であったが、2010年以後には血清型Ia(MLST-1グループ)が持続的に分離されており、最近では血清型Ic分離率が増加したことを確認した(表19)。
【0085】
【0086】
特に、血清型IaとIcの場合、2009年にS.parauberisのヒラメワクチンが商用化されて以来、分離比率が増加することが確認された。これは、商用化されたワクチンの効果がないというよりは、ワクチンの使用によるS.parauberisの血清型の変化によるものと推定される(
図3及び
図4)。
【0087】
実施例5:市販商業用ワクチンの血清型調査
2018年韓国で販売されているヒラメS.parauberis抗原を含む不活化ワクチン7種を購入した。遠心分離してPromega Genomic DNA精製キット(Promega,USA)でDNAを抽出した後、血清型PCR(serotype-PCR)(Tu et al.,2015)で血清型を分析した。PCR増幅し、PCR産物は、EtBrが含まれた1.5%アガロースゲル(Bioneer,Korea)を用いて電気泳動した後、UVトランスルミネーター(Alpha Innotech,USA)を用いてバンド(band)を確認した。
その結果、いずれも血清型Ib及び血清型Ib+IIと確認された(
図5及び表20)。
【0088】
【0089】
実施例6:S.parauberisの病原性分析
血清型が異なる代表菌株7個(FPa4870、FP4743、FP2331、FPa4365、PR5(19FBSPa0003)、DK14、DW)を選定し、ヒラメ(16.5±0.7cm)に106cfu/fish濃度で人工感染実験(水温23±1℃、皮下注射法、試験区当たり10匹)を行った。皮下注射を用いた人工感染実験はMori et al.(2010)Fish Pathology,45(1)、37-42の方法で行った。
【0090】
1次感染実験で血清型別に比較的高い斃死率を示したPR5、FPa4365、FPa4870、FP2331菌株で2次感染実験を行った(
図6)。4個菌株をヒラメ(11.6±0.5cm)に10
5~10
10cfu/fish人工感染(水温25±0.5℃、皮下注射法)させた後、2週間の累積斃死率を測定した。その結果、S.parauberisの血清型Iに含まれるFPa4365(Ia)、PR5(Ib)、FPa4870(Ic)はいずれもヒラメに高い病原性を示した(
図7)。血清型IIのFP2331(II)菌株を10
10cfu/fishでヒラメに皮下注射したが、高濃度でもヒラメには斃死が発生しなかったので、FP2331菌株はヒラメに病原性がないか低いと判断される。最終的に、血清型Ia、Ib、Ic菌株は10
8cfu/fish、血清型IIは10
10cfu/fishの濃度をワクチン効能検証のための人工感染濃度として設定した。
【0091】
実施例7:血清型間S.parauberisワクチンの効能分析
実施例7-1:ワクチン作製及び効能分析方法
S.parauberis血清型Ia、Ib、Ic、II菌株(FPa4870、FP2331、FPa4365、PR5(19FBSPa0003))にホルマリンを処理した不活化ワクチン(FKC)を作製してヒラメに腹腔接種(1mg/fish)し、対照区はPBSを腹腔注射した。
【0092】
凍結保存されたS.parauberis菌株4個を、1.5%(v/v)NaClが添加されたBHIA培地で30℃温度で24時間培養した。培養された平板培地の集落を、無菌的に1.5%NaClが添加されたBHIBに接種後、撹拌培養器(JS Research Inc.)で150rpm、30℃温度で48時間培養した。培養された菌液に37%(v/v)ホルマリン(Merck,Germany)を各培養液の0.5%(v/v)になるように添加して撹拌培養器で150rpm、20℃で24時間不活化した。培養菌の不活化をBHIA(Difco,USA)で最終確認した。不活化が確認された菌液を12,000RCFで遠心分離した後、滅菌生理食塩水で3回洗浄して菌体を回収し、最終的に湿菌体重量を測定して実験区によって濃度を異ならせて懸濁した。ワクチン接種2週後に尾部静脈から血液を採取し、ELISA法で抗体価を測定した。ELISA法を用いた抗体価調査方法で96ウェルプレートにS.parauberis FKCを10μg/wellの濃度になるように調節して分注し、4℃で一晩おいてプレート底に抗原を付着させた。S.parauberis血清型別ELISA値を測定するために4つの異なる血清型のS.parauberisのFKCを作製し、各血清に対する抗体価を調べた。3%スキムミルクを用いて室温で1時間ブロッキングを行い、1次抗体でヒラメ血清と腸粘液を10倍希釈して分注した後1時間反応させる。その後、PBSTを用いて3回洗浄した後、2次抗体はAnti-Japanese flounder IgM Mabを1:1000に希釈して分注した後、1時間37℃で反応させる。洗浄後、AP結合抗マウスIgG(AP-conjugated anti-mouse IgG)(whole molecule)を1:1000に希釈して分注した後37℃で1時間反応させ、洗浄した後、基質(PNPP substrate solution)を添加して20分後、405nmで吸光度を確認した。ワクチン接種4週後にそれぞれのワクチン接種区に血清型Ia、Ib、Ic、II菌株でそれぞれ人工感染実験し、3週間累積斃死率を測定した(
図8)。相対生存率は下記のように計算した。
相対生存率(%)={1-(試験区の累積斃死率/対照区の累積斃死率)}×100
【0093】
実施例7-2:血清型別ワクチンの効能及び交差ワクチン効能分析
血清型別ワクチン接種2週後に採血して抗原種類別(血清型Ia~II)に血清の抗体価を測定した結果、対照区と比較していずれも有意に高い抗体価を形成し、各ワクチン区は同一血清型の抗原で抗体価を測定したとき、最も高い抗体価を示した(表21)。
【0094】
【0095】
ヒラメに対する4つの血清型の異なるS.parauberisワクチン処理後、各血清型に対する人工感染試験を行った結果、ワクチンを接種していない対照区に比べて全ワクチン接種区で低い斃死率を示した(表22)。
【0096】
【0097】
血清型間交差ワクチン効能を対照区と比較した相対生存率を比較した結果、全試験区で同一血清型のワクチン接種後に同一血清型の菌株を人工感染したとき、最も高かい相対生存率を示した(表23)。血清型IbとIcは相互間の交差ワクチン効能反応が高いこと(相対生存率:73.9~82.5%)が確認されたが、IaとIb、Icとは比較的低い交差ワクチン効能(相対生存率:0~30.8%)を示した(表23)。
【0098】
【0099】
実施例8:S.parauberis多価ワクチンの効能分析
実施例8-1:多価ワクチン作製及び効能分析方法
S.parauberis血清型IIはヒラメに対する病原性がなく、最近ヒラメ養殖場では分離されていないので、多価ワクチン開発のためのワクチン対象菌株から除外した。S.parauberisの3つの血清型(血清型Ia(FPa4365)、血清型Ib(PR5)、血清型Ic(FPa4870))菌株をホルマリン処理した不活化ワクチン(FKC)を作製して実験を行った。
【0100】
凍結保存されたS.parauberis菌株を、1.5%(v/v)NaClが添加されたBHIA培地で30℃、24時間培養した。培養された平板培地の集落を無菌的に1.5%NaClが添加されたBHIBに接種後、撹拌培養器(JS Research Inc.)で150rpm、30℃、48時間培養した。培養された菌液に37%(v/v)ホルマリン(Merck,Germany)を各培養液の0.5%(v/v)となるように添加し、撹拌培養器で150rpm、20℃で24時間不活化した。培養菌の不活化をBHIA(Difco,USA)で最終確認した。不活化が確認された菌液を12,000RCFで遠心分離した後、滅菌生理食塩水で3回洗浄した後に菌体を回収し、最終的に湿菌体重量を測定して実験区によって濃度を異ならせて懸濁した。各S.parauberis血清型別不活化単独ワクチン研究結果から血清型IbとIcは相互交差ワクチン効能があると確認され、表24の抗原組合せ及び濃度でヒラメ(平均全長:15.05±0.9cm、平均体重:26.7±4.74g)に腹腔注射方法でワクチンを接種した。実験区当たり総80匹のヒラメを実験に使用した。
【0101】
【0102】
ワクチン接種して2週後に尾部静脈から血液を採血(n=10)し、ELISA法でS.parauberisに対する抗体価を測定した。ELISA法を用いた抗体価調査方法で96ウェルプレートにS.parauberis FKCを10μg/wellの濃度となるように調節して分注し、4℃一晩おいてプレート底に抗原を付着させた。S.parauberis血清型別ELISA値を測定するために、3つの異なる血清型のS.parauberisのFKCを作製し、各血清に対する抗体価を調べた。3%スキムミルクを用いて室温で1時間ブロッキングを行い、1次抗体でヒラメ血清と腸粘液を10倍希釈して分注した後1時間反応させた。その後、PBSTを用いて3回洗浄した後、2次抗体はAnti-Japanese flounder IgM Mabを1:1000に希釈して分注した後、1時間37℃で反応させた。洗浄後、AP結合抗マウスIgG(AP-conjugated anti-mouse IgG)(whole molecule)を1:1000に希釈して分注した後37℃で1時間反応させ、洗浄した後、基質(PNPP substrate solution)を添加して20分後、405nmで吸光度を確認した。ワクチン接種2週後に抗体価を測定した結果、対照区では抗体価が確認されず、Ia+Ic区及びIa+Ib+Ic区で対照区に比して有意に高い抗体価を形成した(表25、
図9)。
【0103】
【0104】
実施例8-2:多価ワクチンの効能分析
ワクチン接種3週後にS.parauberis Ia FPa4365(5.2×108cfu/fish)、Ib PR5(7×108cfu/fish)、Ic FPa4870(1.4×108cfu/fish)の3つの菌株で水温26~27℃を維持しながら人工感染実験を行い、3週間斃死率を確認した(表26)。
【0105】
【0106】
S.parauberis血清型Ia+Icワクチン区とIa+Ib+Icワクチン区に3つの異なる血清型のS.parauberisで人工感染すると、対照区に比して高い生存率を示し、また、表23のS.parauberis単一血清型Ia及びIbワクチン区と比して高い相対生存率を示した(表27)。
【0107】
【0108】
例えば、Ia単一血清型ワクチン接種後、S.parauberis Ia血清型のFPa4365菌株で人工感染すると、対照区と比較して55.6%の相対生存率を示したが、Ia+Icワクチン区とIa+Ib+Ic区にFPa4365菌株で人工感染すると、対照区と比較して93.4%及び66.7%の相対生存率を示した。また、Ic単一血清型ワクチン接種後にS.parauberis Ic血清型のFPa4870菌株で人工感染すると、対照区と比較して75.1%の相対生存率を示したが、Ia+Icワクチン区とIa+Ib+Ic区にFPa4365菌株で人工感染すると、対照区と比較して50%及び30%の相対生存率を示し、Ic単一血清型ワクチンに比べて低い効能を示した。血清型を混合した多価ワクチン間のワクチン効能比較では、Ia+Icワクチン区はIa+Ib+Icワクチン区に比べて、3つの全ての血清型の菌株において高い相対生存率を示し、また、S.parauberisに対する特異抗体価は、Ia+Ib+Icワクチン区がIa+Icワクチン区に比べて高い抗体価を示した。
【0109】
実施例9:S.parauberis多価ワクチンの安定性分析
実施例9-1:多価ワクチン安定性分析方法
多価ワクチン安全性調査のために、ヒラメ(平均全長:15.83±1.04cm、平均体重:27.2±4.75g)にワクチン効能調査時に使用した抗原濃度の2倍、5倍、10倍濃度で腹腔に注射接種して安全性を評価した(表28)。腹腔接種後3週までの斃死率を確認したが、毎週、ヒラメの尾部静脈から採血して(n=5)、血液生化学的性状及び病理組織学的検査によって安全性を確認した。血液性状は、自動血液分析機を用いてグルコース、ALT、AST及び総タンパクの濃度を測定し、病理組織学的調査は、腎臓、脾臓、肝などを中性ホルマリンに固定後、常法によって調査した。
【0110】
【0111】
実施例9-2:多価ワクチンの安定性分析結果
S.parauberis Ia+Icワクチン区、Ia+Ib+Icワクチン区の抗原量を2倍、5倍、10倍の高農度でワクチンを注射して3週間、全実験区で斃死が発生しなかった。血液生化学的性状(AST、ALT、GLU、TP)は、全ワクチン接種区でワクチン接種後1週、2週、3週において対照区と有意の差が見られず、投与濃度はヒラメに安全なものと確認された(P>0.05、表29)。
【0112】
【0113】
多価ワクチン接種後の病理組織学的検査の結果、ワクチン区と対照区の肝、腎臓及び脾臓の病理組織学的検査で差が見られず、多価ワクチンはヒラメに安全なものと確認された(
図10~
図12)。
【0114】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好ましい実施様態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は添付する請求項とそれらの等価物によって定義されるだろう。
【配列表】