(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】文字盤、および腕時計の文字盤の製造方法
(51)【国際特許分類】
G04B 19/06 20060101AFI20220208BHJP
G04B 19/10 20060101ALI20220208BHJP
G04B 19/08 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
G04B19/06 C
G04B19/06 S
G04B19/10 B
G04B19/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020127965
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2020-07-29
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・インボーデン
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ジョルノ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-142534(JP,A)
【文献】特開2017-117851(JP,A)
【文献】特開2007-149666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/06-19/18
G04C 10/02
H01L 31/04-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計用の文字盤であって、
下面を有する半透明の光起電力層と、
前記光起電力層の前記下面に印刷されたインクベースの装飾層とを備え、前記装飾層は、パターンを含み、前記パターンは、1つまたは複数のタイムマーカを備え
、
前記光起電力層は、入射光の波長に応じて異なる感度を有する活性材料を備え、前記装飾層は、前記活性材料の最大感度に実質的に等しい波長で前記入射光を反射するように構成された、文字盤。
【請求項2】
前記パターンは、第1のインクを含む第1の領域と、第2のインクを含む第2の領域とを備え、前記第1のインクと前記第2のインクは異なる、請求項1に記載の文字盤。
【請求項3】
半透明の前記光起電力層は、光起電力セルの表面の
5%から20%の間を覆う1つまたは複数の前記光起電力セルの配置を含む、請求項1または2に記載の文字盤。
【請求項4】
半透明の前記光起電力層は、光起電力セルの表面の
7%から15%の間を覆う1つまたは複数の前記光起電力セルの配置を含む、請求項1または2に記載の文字盤。
【請求項5】
半透明の前記光起電力層は、光起電力セルの表面の
9%から11%の間を覆う1つまたは複数の前記光起電力セルの配置を含む、請求項1または2に記載の文字盤。
【請求項6】
前記1つまたは複数の光起電力セルはアレイ状に配置される、
請求項3から5のいずれか一項に記載の文字盤。
【請求項7】
前記アレイは、六角形、線形、または三角形のアレイである、請求項
6に記載の文字盤。
【請求項8】
前記アレイは、六角形アレイ、線形アレイ、および三角形アレイのうちの少なくとも2つを備えた混合アレイである、請求項
6に記載の文字盤。
【請求項9】
前記光起電力層は、保護副層を含み、前記保護副層は、前記光起電力層の下層である、請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の文字盤。
【請求項10】
光沢のある透明層を備え、前記光沢のある透明層は、半透明の前記光起電力層と前記装飾層との間に配置された、請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の文字盤。
【請求項11】
腕時計用の文字盤の製造方法であって、
下面を有する半透明の光起電力層を提供することと、
前記光起電力層の前記下面にインクベースの装飾層を塗布することとを備え、前記装飾層は、パターンを含み、前記パターンは、1つまたは複数のタイムマーカを備え
、前記光起電力層は、入射光の波長に応じて異なる感度を有する活性材料を備え、前記装飾層は、前記活性材料の最大感度に実質的に等しい波長で前記入射光を反射するように構成されている、製造方法。
【請求項12】
前記装飾層は、
印刷によって適用される、請求項
11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記装飾層は、
デジタル印刷によって適用される、請求項
11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記装飾層は、デジタル印刷によって適用され、前記パターンは、前記デジタル印刷を実行するデジタルプリンタに保存されている
データに従って適用される、請求項
11から請求項13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記印刷は、UVフラットベッドプリンタによって実行される、請求項
12から請求項14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
光沢のある透明層を適用することを含み、
前記光沢のある透明層が、半透明の前記光起電力層と前記装飾層との間に適用される、請求項
11から請求項
15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載の文字盤を含む腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は、腕時計の文字盤、より具体的には、光起電力層を備えた腕時計の文字盤に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国特許出願公開第JP2005346934号公報は、色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。この文献は、上板ガラスg1と、上板ガラスに面する下板ガラスg2とを備えた色素増感型太陽電池11を提案している。上板ガラスと下板ガラスとの間の第1領域E1には、第1の色素増感層111が配置されている。第2の色素増感層112は、第1の領域E1とは異なる第2の領域E2に配置されている。領域E1および領域E2は、上板ガラスと下板ガラスとの間にある。第2の層112は、第1の層111の色とは異なる色を有する。
【0003】
日本国特許出願公開第JP2005324517号公報は、装飾装置を提供することを目的とする。装飾装置は、一対の光透過基板(たとえば、上板ガラス(g1)と下板ガラス(g2))の間の領域に配置された色素増感型太陽電池を備えている。一対の発光基板の少なくとも一方には、装飾部13が設けられている。
【0004】
L.Wenらによる科学文献である「Theoretical design of multi-colored semi-transparent organic solar cells with both efficient color filtering and light harvesting」、Scr. Rep.4(2014年)は、美的ソリューションを提供するマルチカラー機能を組み込み、セルフパワーのカラフルなディスプレイの可能性を切り開く太陽電池について説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特許出願公開第JP2005346934号公報
【文献】日本国特許出願公開第JP2005324517号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】L.Wenら著、「Theoretical design of multi-colored semi-transparent organic solar cells with both efficient color filtering and light harvesting」、Scr. Rep.4(2014年)
【発明の概要】
【0007】
文字盤は、腕時計の一部であり、1つまたは複数のタイムマーカ(たとえば、数字(12またはXII、60、…)の表示)および動く針によって時間を表示する。最も基本的な形式では、文字盤の周辺には1~12の番号が付され、12時間周期の時間を示している。第1の針は12時間ごとに1回転する。第2の針は、第1の針よりも長く、1時間に1回転する。1つまたは複数の針の、1つまたは複数のアーバが通過するための1つまたは複数の穴が文字盤に設けられている。
【0008】
本発明の第1の態様は、腕時計用の文字盤に関する。文字盤は、下面を有する半透明の光起電力層を有する。さらに、文字盤は、光起電力層の下面に印刷されたインクベースの装飾層も備えている。装飾層は、1つまたは複数のタイムマーカを備えたパターンを含む。
【0009】
「光起電力層」は、光に曝されると、光起電力効果によって電気を生成する層を意味する。
【0010】
「半透明」層は、1つまたは複数の透明領域および1つまたは複数の不透明領域を備えた層を意味し、この層は、表面に関して、主に透明である。好ましくは、1つまたは複数の透明領域の表面は、層の表面の80%より大きく、好ましくは80%から95%の範囲内である。
【0011】
一般に、オブジェクトの「上部」、「上」、または「最上部」の面、表面、または側面は、腕時計のユーザに最も近いオブジェクトの面、表面、または側面を意味する。また、入射光を受けるのは、オブジェクトの面、表面、または側面である。逆に、オブジェクトの「下部」、「下」、または「真下」の面、表面、または側面は、腕時計のユーザの視点から最も遠いオブジェクトの面、表面、または側面(つまり、上面、表面または側面の反対側の面、表面または側面)を意味する。
【0012】
「インク」は、1つまたは複数の顔料または1つまたは複数の染料を含有し、たとえば、画像、テキスト、または描画を生成するために表面を染色するために使用される液体(またはおそらくペースト)を意味する。
【0013】
「タイムマーカ」は、腕時計の針の1つまたは複数によって時間を推定することを可能にする任意の要素(たとえば、文字盤の周辺にある数字(12またはXII、60、・・・)の表示)を意味する。
【0014】
本発明は、装飾層が光起電力層上に印刷されるので(装飾層と光起電力層とは一体であり、腕時計の組立中にその場で結合される必要がないため)文字盤を組み立てるのに必要な部品の数を減らすことができることが理解される。
【0015】
パターンは、好ましくは、第1のインクを含む第1の領域と、第2のインクを含む第2の領域とを備える。第1のインクと第2のインクは異なる。好ましくは、第1の領域は中央であり、第2の領域は周辺である。「異なる」インクは、別のインクとは異なる化学組成を有するインクを意味する。装飾層は不透明または半透明であり得る。それは単純であるか、対称性の有無に関わらず、いくつかのパターンを備えることができる。装飾的なパターンに関して大きな自由が許されることは理解されるであろう。
【0016】
1つの実施形態によれば、半透明の光起電力層は、光起電力セルの表面の5%から20%の間、好ましくは7%から15%の間、さらにより好ましくは9%から11%の間を覆う1つまたは複数の光起電力セルの配置を含む。このようにして、入射光のほとんどが装飾層を照明することが理解されよう。
【0017】
1つの実施形態によれば、1つまたは複数の光起電力セルはアレイ状に配置され、アレイは、好ましくは、六角形、線形、または三角形のアレイである。別の実施形態によれば、アレイは、六角形アレイ、線形アレイ、および三角形アレイのうちの少なくとも2つを備えた混合アレイである。別の実施形態によれば、アレイは不規則であり得る。
【0018】
好ましくは、光起電力セルは、保護副層(おそらく透明または半透明)を含み、保護副層は光起電力セルの最下層であり、装飾層と接触している。
【0019】
好ましい実施形態によれば、文字盤は、半透明の光起電力層と装飾層との間に配置された光沢のある透明層を備える。
【0020】
好ましい実施形態によれば、光起電力層は、入射光の波長に応じて異なる感度を有する活性材料を備える。装飾層は、活性材料の最大感度に実質的に等しい波長で入射光を反射するように構成される。好ましくは、装飾層は、入射光を、活性材料の最大感度を中心とした-150nmから150nmの間の範囲内、より好ましくは-100nmから100nmの間の範囲内、さらにより好ましくは-50nmから50nmの間の範囲内の波長で反射させるように構成される。
【0021】
波長に対するアクティブな光起電性材料の「感度」は、この材料がこの波長で入射波を吸収し、それを光起電効果によって電気エネルギに変換する能力を意味する。
【0022】
本発明の第2の態様は、腕時計用の文字盤を製造するための方法に関する。この方法は、下面を有する半透明の光起電力層を提供することを含む。この方法はさらに、光起電力層の下面にインクベースの装飾層を塗布することを含む。装飾層は、1つまたは複数のタイムマーカを備えたパターンを含む。
【0023】
1つの実施形態によれば、装飾層は、印刷によって適用される。
【0024】
1つの実施形態によれば、装飾層は、デジタル印刷によって適用される。このパターンは、デジタル印刷を実行するデジタルプリンタに保存されている適用計画に従って適用できる。
【0025】
好ましくは、印刷は、UVフラットベッドプリンタによって実行される。
【0026】
1つの実施形態によれば、この方法は、光沢のある透明層を適用することを含み、上仕上げ層は、半透明の光起電力層と装飾層との間に適用される。
【0027】
本発明の第3の態様は、第1の態様による文字盤を含む腕時計に関する。
【0028】
本発明の他の特質および特徴は、以下に示す添付の図面を参照して、例として、以下に提示される特定の有利な実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による腕時計文字盤の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態による1つまたは複数のセグメントを備えた装飾パターンおよび光起電力セルのアレイを示し、文字盤の中心に針アーバ用の穴が見える、時計の文字盤の図である。
【
図3】本発明の実施形態による別の装飾パターンを示す腕時計の文字盤の図である。
【
図4】本発明の実施形態による、サンプルが受け取る照度の関数としての、本発明の実施形態による第1のサンプルのゼロ電圧での強度を表すグラフである。
【
図5】本発明の実施形態による、サンプルが受け取る照度の関数としての、本発明の実施形態による第2のサンプルのゼロ電圧での強度を表すグラフである。
【
図6】結晶/印刷された装飾層の界面での光の後方散乱による光起電力セルの照明の増加を示す(光線追跡)シミュレーションである。
【
図7】表面充填率の関数としての光起電力層の照明の相対的増加を表すグラフである。
【
図8】本発明の好ましい実施形態による文字盤で使用される入射光波長の関数としての活性材料の感度を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
読者の注意は、図面が縮尺通りではないという事実に向けられる。さらに、明確にするために、高さ、長さ、および/または幅の比率が正しく表されていない場合がある。
【0031】
図1は、本発明の好ましい実施形態による腕時計文字盤2の断面を示す。文字盤2は、文字盤の上から下まで、半透明の光起電力層6、光沢のある透明層4、および装飾層8を備える。文字盤の「上」とは、腕時計のユーザの視点に最も近い部分を意味する。最上層は、入射光10が最初に通過する層でもある。
【0032】
図1および
図2を参照すると、半透明の光起電力層6は、透明ガラス副層12、六角形アレイに配置された1つまたは複数の光起電力セル14、および保護副層16を含む。保護副層16は、光起電力セル14の六角形アレイを構造的に安定させ、それをいかなる衝撃からも保護する。保護副層16は、光沢のある透明層4と直接接触しており、特に、保護副層16の下面は、光沢のある透明層4の上層と直接接触している。
【0033】
1つまたは複数の光起電力セルに使用される活性材料は、アモルファスシリコンをベースにしている。しかしながら、他の実施形態によれば、活性材料は異なり得ることが理解されよう。
【0034】
他の実施形態によれば、透明ガラス副層12は、たとえば、サファイアまたはプラスチックなどの別の透明(場合によっては部分的に透明)材料の副層で置き換えることができることも理解されよう。
【0035】
好ましくは、光起電力セル14の六角形アレイは、光起電力セル表面の5%から20%、好ましくは7%から15%、さらにより好ましくは9%から11%を覆う。このようにして、入射光10のほとんどが装飾層8を照明することが理解されよう。
【0036】
装飾層8は、デジタル印刷によって半透明の光起電力層6に適用される。装飾層8は、いくつかのタイムマーカ20を備えたパターン18を含む。装飾層8は、たとえば、黒、白、黄色、紫などに着色することができ、おそらく透明な領域を備える。デジタル印刷は、印刷されたパターンに関して大きな柔軟性を提供することが理解されよう。印刷はUVフラットベッドプリンタで可能である。このパターンは、デジタル印刷を実行するデジタルプリンタに保存されている適用計画に従って適用できる。
【0037】
パターンは、異なるインクを含む複数の領域を備えることができることが理解されよう。特に、好ましい実施形態によれば、装飾層8は、第1のインクを含む第1の領域22と、第2のインクを含む第2の領域24とを含むことができる。第1のインクと第2のインクは、たとえば、それらが異なる化学組成および/または異なる色を有するという意味で異なる。タイムマーカ20は、たとえば、第2の領域24によって示され得る。
【0038】
透明層4は、半透明の光起電力層6と装飾層8との間に配置される。透明層4は、たとえば、装飾層8のインクと光起電力層6との間の物理的および/または化学的不適合の場合、装飾層のインクと光起電力層6との間の界面を改善することができる。
【0039】
パターンの第1の例が
図2に示されている。装飾層8は、第1の中央黒色領域22を含む。第1の領域22は、白色で示される「12」、「3」、「6」および「9」の数字に関連する先端によってそれぞれ示される4つのタイムマーカを有する。第1の領域22は、紫色の周辺領域24によって囲まれている。周辺領域24のパターンはまた、その先端が1回転の60分の1だけ互いに離れているロザスの形態のタイムマーカを含む。
【0040】
パターンの第2の例が
図3に示されている。第2の例は、色の選択を除いて第1の例と同じである。特に、第1の中央領域22は、半透明(数字は黒色)でインクなしであり、第2の周辺領域24は黄色である。
【実施例】
【0041】
半透明の光起電力層は、光起電力層の表面の10%を覆う1つまたは複数の光起電力セルのアレイを含む。装飾層は、UVフラットベッドプリンタで印刷される。
【0042】
ゼロ電圧Iscにおける強度は、サンプルによって受け取られた照度に比例する。
図4および
図5に示すグラフは、照度の関数としてゼロ電圧Iscでの強度からの典型的な結果を表している。
図4は、光起電力層の表面の10%を覆う光起電力セルの六角形のアレイを備えた黒と紫の装飾層がある(点線)またはない(実線)サンプルの比較に対応している。得られた傾きは、それぞれ0.113mA/klxおよび0.111mA/klxである。
図5は、光起電力層の表面の10%を覆う光起電力セルの六角形のアレイを備えた黄色の装飾層があるサンプル(点線)またはないサンプル(実線)の比較に対応している。得られた傾きは、それぞれ0.137mA/klxおよび0.119mA/klxである。
【0043】
ゼロ電圧Iscでの強度は、紫色の装飾層の適用によってほんのわずかに影響を受けるようであり、それは約2%さらに増加する。黄色の装飾層を適用した場合、ゼロ電圧での強度Iscは15%増加した。
【0044】
それに従って、装飾層に選択された色に応じて、光起電力効率を改善することができる。改善は、結晶/印刷層の界面で後方散乱され、ガラス副層の内部で複数の反射を受ける光によるものである。このように反射された光は、入射光の追加部分が1つまたは複数の光起電力セルに到達するため、効率を改善する。装飾層がない場合、この追加の部分は反射されないため失われ、その結果、1つまたは複数の光起電力セルに到達しない。
【0045】
図6は、装飾層なし(円)および白い装飾層あり(十字)のサンプルのシミュレーション(光線追跡シミュレーション)の結果を示す。入射光10は、太陽スペクトルによって特徴付けられる。白い装飾層は、吸収のないランベルト面でモデル化されている。グラフは、光起電力層14の照明を、1%から100%の間の表面充填率の関数として表す。2つのサンプル間の差は四角形で表される。
【0046】
図7は、1%から100%の間の表面充填率の関数として、光起電力層14への入射光の相対的な増加を表す。これらのシミュレーションでは、装飾層8とガラス副層12からのゼロ吸収が考慮されたため、この曲線は、ガラス/印刷層界面での後方散乱光と、ガラス副層の内部での多重反射による、光起電力層の照明の最大増加を表している。
【0047】
図8は、入射光の波長の関数としての活性材料(アモルファスシリコン)の感度曲線を表す。同図では、可視色も波長の関数として表されている。曲線によると、活性材料の最大感度(任意単位で1)は約525nm(緑)である。黄色に対する材料の感度は約0.9(つまり、活性材料の最大感度の90%)である。紫色に対する材料の感度は約0.55(つまり、活性材料の最大感度の55%)である。したがって、アモルファスシリコンの場合、一般に紫の光を反射する(すなわち、一般に紫の装飾層を有する)よりも、一般に黄色の光を反射する(すなわち、一般に黄色の装飾層を有する)方が有利であることになる。
【0048】
さらに、装飾層の全表面に対する白色表面の割合(入射光を構成する実質的にすべての色の反射)を増加させることによって、または、活性材料の最大分光感度(450~600nm、アモルファスシリコンの場合は青からオレンジ)に近い波長の色の割合を増加させることによって、効率を高めることができることになる。
【0049】
本文書に基づいて、色による効率の増加が他の活性材料では異なり得ることは、当業者には明らかである。
【0050】
蛍光インクを使用して、最大感度を超えて吸収し、活性材料の最大感度近くに放出することも、効率を改善することができる。アモルファスシリコンの例では、選択は、紫外線領域で吸収し、可視領域で発光するインクに関係する可能性がある。好ましくは、この蛍光の放出は、活性材料の最大感度を中心とする-150nmから150nmの範囲内の波長で発生する可能性がある。
【0051】
特定の実施形態を詳細に説明したが、当業者は、本発明の本開示によって提供される全体的な教示に照らして、様々な修正および代替が開発され得ることを理解するであろう。その結果、本明細書に記載された特定の配置および/または方法は、本発明の範囲を限定することを意図することなく、単なる例示として与えられることが意図されている。
【符号の説明】
【0052】
2 文字盤
4 透明層
6 光起電力層
8 装飾層
10 入射光
12 透明ガラス副層
14 光起電力層、光起電力セル
16 保護副層
18 パターン
20 タイムマーカ
22 第1の領域
24 第2の領域