(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】セラミックス回転ベゼルを備える回転ベゼルシステム
(51)【国際特許分類】
G04B 19/28 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
G04B19/28 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020167445
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2020-10-02
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・ジャコー
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518967(JP,A)
【文献】特開2019-164131(JP,A)
【文献】特開2013-145234(JP,A)
【文献】特開2000-098060(JP,A)
【文献】特表2018-526652(JP,A)
【文献】米国特許第04975893(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/28
G04B 37/00,45/00
G04G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用ムーブメントが内部に配置される携行型時計ケース(2)のミドル部(4)に回転するように取り付けられるように意図された回転ベゼルシステム(6)であって、
当該回転ベゼルシステム(6)は、セラミックス回転ベゼル(14)と、前記ミドル部(4)に角度的に固定される要素と連係するように意図された環状リング(16)と、及び前記回転ベゼル(14)と前記環状リング(16)の間を接続する環状ジョイント(18)とを備え、
前記環状リング(16)は、前記回転ベゼル(14)内に配置され、
当該回転ベゼルシステム(6)は、さらに、前記回転ベゼル(14)上に前記環状リング(16)をロックするための少なくとも1つのロック要素(20)を備え、
前記少なくとも1つのロック要素(20)は、前記環状リング(16)と前記回転ベゼル(14)の間のいずれの相対回転をロックするように構成しており、これによって、前記環状リング(16)と前記回転ベゼル(14)によって形成されるアセンブリーを角度的に固定
し、
前記ロック要素(20)には、長手方向(D1)にて細長い本体があり、
この本体の断面は、実質的にL字形である
ことを特徴とする回転ベゼルシステム(6)。
【請求項2】
前記L字の足部を形成する前記本体の部分(28b)は、前記回転ベゼル(14)の内周に形成される対応する溝(34)にて受けられる
ことを特徴とする請求項
1に記載の回転ベゼルシステム(6)。
【請求項3】
前記L字の足部を形成する前記本体の部分(28b)の上面は、前記環状リング(16)の底面と当接する
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の回転ベゼルシステム(6)。
【請求項4】
前記ロック要素(20)は、前記環状リング(16)が形成される材料と同じ材料、例えば、金属性材料、によって形成される
ことを特徴とする請求項
1~3のいずれか一項に記載の回転ベゼルシステム(6)。
【請求項5】
360°において分布している少なくとも2つのロック要素(20)を備える
ことを特徴とする請求項
1~4のいずれか一項に記載の回転ベゼルシステム(6)。
【請求項6】
360°において分布している4つのロック要素(20)によって構成しており、
前記4つのロック要素(20)は、2つの間で90°離間するように分布している
ことを特徴とする請求項
5に記載の回転ベゼルシステム(6)。
【請求項7】
前記環状リング(16)は、歯付きリングであ
る
ことを特徴とする請求項
1~6のいずれか一項に記載の回転ベゼルシステム(6)。
【請求項8】
前記環状リング(16)は、金属製の歯付きリングである
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の回転ベゼルシステム(6)。
【請求項9】
前記環状ジョイント(18)は、
ポリマー材料によって形成される
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の回転ベゼルシステム(6)。
【請求項10】
前記環状ジョイント(18)は、アスタン(登録商標)によって形成される
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の回転ベゼルシステム(6)。
【請求項11】
前記環状リング(16)において、局所的に、前記ロック要素(20)を受けるための少なくとも1つの開口(22)が、加工して形成される
ことを特徴とする請求項
1~10のいずれか一項に記載の回転ベゼルシステム(6)。
【請求項12】
前記環状ジョイント(18)は、前記環状リング(16)と前記ロック要素(20)の間に入れ込まれる
ことを特徴とする請求項
1~11のいずれか一項に記載の回転ベゼルシステム(6)。
【請求項13】
当該回転ベゼルシステム(6)は、前記ミドル部(4)にスナップされるように構成している独立したモジュールによって形成される
ことを特徴とする請求項
1~12のいずれか一項に記載の回転ベゼルシステム(6)。
【請求項14】
ミドル部(4)と、及びこのミドル部(4)に回転するように取り付けられたセラミックス回転ベゼル(14)を備える回転ベゼルシステム(6)とを備える携行型時計ケース(2)であって、
前記回転ベゼルシステム(6)は、請求項1~
13のいずれか一項に記載の回転ベゼルシステムである
ことを特徴とする携行型時計ケース(2)。
【請求項15】
請求項
14に記載の携行型時計ケース(2)を備える
ことを特徴とする携行型時計(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス回転ベゼルを備える回転ベゼルシステムに関する。
【0002】
本発明は、さらに、ミドル部と、及びこのミドル部に回転するように取り付けられる回転ベゼルシステムとを備える携行型時計ケースに関する。
【0003】
本発明は、携行型時計ケースを備える携行型時計(例、腕時計、懐中時計)に関する。
【背景技術】
【0004】
セラミックス回転ベゼルと、環状リングと、及びこの回転ベゼルとこの環状リングの間の環状接続ジョイントとを備える回転ベゼルシステムが知られている。このようなシステムでは、一般的には、環状リングが回転ベゼルに入れ込まれる。環状リングは、セラミックス回転ベゼルが取り付けられる携行型時計ケースのミドル部に角度的に固定された要素、例えば、面がある開放ばね、と連係することを意図されている。
【0005】
環状ジョイントは、環状リングと回転ベゼルの間に挿入され、環状リング上にベゼルを保持するように構成している摩擦要素を形成する。しかし、このような回転ベゼルシステムには、特にシステムが分解されるときに、回転ベゼルとリングの間に環状ジョイントが十分に強力な接続を形成しなくなってしまうという課題がある。しかし、前記のような環状ジョイントが形成する接続の弱さは、前記のような分解作業、例えば、部品の交換や要素の修理に必要な作業、において、リングが携行型時計ケースのミドル部に残ってベゼルがリングから外れてしまうことがある。これは、システムの分解に責任を負う人員にとって不必要な面倒な操作を発生させ、システムの実用性と信頼性にとって良くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特に回転ベゼルシステムが分解されるときに、環状リングに対する回転ベゼルの保持を確実にし、前記の従来技術の課題を解決するような、単純であり信頼性の高い回転ベゼルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような状況で、本発明は、独立請求項1に記載された特徴を有する回転ベゼルシステムに関する。
【0008】
従属請求項2~12に、本システムの特定の実施形態を定めている。
【0009】
当該システムにおいて、回転ベゼル上に環状リングをロックするための少なくとも1つの要素の存在のおかげで、特に当該システムが分解されるときに、環状リングに対する回転ベゼルの保持が改善する。これは、当該ロック要素が、リングとベゼルの間のいずれの相対的回転もロックするように構成しているためである。そして、このような構成によって、リングとベゼルによって形成されるアセンブリーを角度的に固定することができ、したがって、特に分解しているときに、リングとベゼルの間のいずれの係合解除をも回避することができ、このことによって、アセンブリーの保持を確実にすることができる。このようにして、当該システムの信頼性を改善することができる。
【0010】
好ましいことに、当該システムは、360°において分布している少なくとも2つのロック要素を備える。このことによって、システムに与えられる機械的応力を分散させ、そして、環状リングと回転ベゼルの間の間隙を抑える。本発明の好ましい実施形態において、当該システムは、360°において2つの間が90°離間するように分布している4つのロック要素を備える。
【0011】
好ましいことに、環状ジョイントは、ポリマー材料、例えば、アスタン(Asutane(登録商標):スウォッチ・グループが開発したポリマー材料)、によって形成される。このジョイントは、フレキシブルな材料によって作られ、変形し圧縮されることができ、したがって、間隙の分を補償し、いくつかの部品を一緒にクランプ(固定)することができる。
【0012】
好ましいことに、前記一又は複数のロック要素を受けるための少なくとも1つの開口は、環状リング内にて局所的に加工して形成される。これによって、当該システムにおけるの一又は複数のロック要素の設置を促進することができる。
【0013】
好ましいことに、環状ジョイントは、環状リングと各ロック要素の間に入れ込まれる。このように構成しているこのような環状ジョイントによって、一又は複数のロック要素と環状リングの間の滑りを防ぐための摩擦要素を形成することができ、さらに、ロック要素が戻らないことを防ぐ。
【0014】
好ましいことに、環状回転ベゼルシステムは、独立したモジュールによって形成され、このモジュールは、ミドル部にスナップされるように構成している。これによって、回転ベゼルシステムをミドル部に容易かつ実用的に取り付けることができ、また、分解が容易になる。また、これによって、システムの組み付け及び分解が容易になる。用いられるスナップによって取り付けるシステムは、自由フックシステムを形成し、面があるばねを用いる回転ベゼルの通常の取り付けの基本原則が保持される。
【0015】
このような状況で、本発明は、さらに、ミドル部と、上述の回転ベゼルシステムとを備え、従属請求項13に記載した特徴を有する携行型時計ケースに関する。
【0016】
このような状況で、本発明は、さらに、上述の携行型時計ケースを備え、従属請求項14に記載された特徴を有する携行型時計に関する。
【0017】
図面に示している少なくとも1つの実施形態に基づく下記の説明を読むことによって、本発明に係る回転ベゼルシステムの目的、利点及び特徴が明確になるであろう。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る回転ベゼルシステムを備える携行型時計ケースを上から見た図である。
【
図2】セラミックス回転ベゼルと、環状リングと、及び回転ベゼル上に環状リングをロックするためのロック要素とを備える
図1のシステムの断面平面II-IIにおける断面図である。
【
図3】
図1のシステムの断面平面III-IIIにおける断面図である。
【
図4】
図2のシステムの断面平面IV-IVにおける断面図である。
【
図6】本発明に係る回転ベゼルシステムを組み立てる様々なステップのうちの1つを示している図である。
【
図7】本発明に係る回転ベゼルシステムを組み立てる様々なステップのうちの1つを示している図である。
【
図8】本発明に係る回転ベゼルシステムを組み立てる様々なステップのうちの1つを示している図である。
【
図9】本発明に係る回転ベゼルシステムを組み立てる様々なステップのうちの1つを示している図である。
【
図10】本発明に係る回転ベゼルシステムを組み立てる様々なステップのうちの1つを示している図である。
【
図11】本発明に係る回転ベゼルシステムを組み立てる様々なステップのうちの1つを示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に、携行型時計ケース2を備える携行型時計1を示している。携行型時計ケース2には、典型的には、ミドル部4がある。また、携行型時計ケース2は、回転ベゼルシステム6と、簡明性のために図に示していない計時器用ムーブメントとを備える。回転ベゼルシステム6は、ミドル部4に回転するように取り付けられている。好ましくは、
図1~3に示しているように、回転ベゼルシステム6は独立モジュールによって形成される。
【0020】
図1に示しているように、ミドル部4の形は環状である。好ましくは、ミドル部4は、このミドル部4に固定される環状要素を担持している。この環状要素は、簡明性の理由で図示していない。ミドル部4に角度的に固定される要素は、例えば、面があるばねリングである。なお、本発明に関連してこれに限定されない。
図1~11に例として示した携行型時計ケース2の構成は、実質的に環状である。しかし、本発明は、このような携行型時計ケースの構成にけっして限定されるものではない。
【0021】
回転ベゼルシステム6は、回転ベゼル14と、環状リング16と、この回転ベゼル14とこの環状リング16を接続する環状ジョイント18と、及び回転ベゼル14上に環状リング16をロックするための少なくとも1つのロック要素20とを備える。好ましくは、当該システム6は、360°において分布している少なくとも2つのロック要素20を備える。好ましい実施形態において、システム6は、360°において2つの間で90°離間するように分布している4つのロック要素20を備える。回転ベゼル14は、セラミックスによって作られ、これは、典型的には、アルミナ、ジルコニア又は窒化ケイ素をベースとするものである。
【0022】
環状リング16は、回転ベゼル14内に配置され、ミドル部4に角度的に固定される要素と連係する。
図2~11に示している特定の例示的な実施形態において、環状リング16は、歯付きリングであり、好ましくは、金属によって作られる。そして、この特定の例示的な実施形態において、環状リング16は、ミドル部4に角度的に固定された前記要素の歯と係合する。
【0023】
図2、3、6、7及び9に示しているように、環状リング16において、一又は複数のロック要素20を受けるための少なくとも1つの受け開口22が局所的に加工されて形成される。好ましくは、環状リング16の底面には、360°において分布している少なくとも2つの受け開口22がある。好ましい実施形態において、環状リング16には、360°において2つの間で90°離間するように分布している4つの受け開口22がある。環状リング16は、典型的には、金属性材料、例えば、鋼や金、によって構成している。
【0024】
図2~4に示している特定の例示的な実施形態において、環状ジョイント18は、環状リング16と各ロック要素20の間に入れ込まれる。
図3に示しているように、ロック要素20がないシステム6の領域において、環状ジョイント18をリング16に形成された溝24が受ける。好ましくは、環状ジョイント18は、ポリマー材料、例えば、アスタン、によって構成している。また、環状ジョイント18は、ロック要素20と環状リング16の間のいずれの滑りをも防ぐ摩擦要素を形成し、これは、ロック要素20がシステム内に位置しているときにロック要素20が戻らないことを確実にする。
【0025】
ロック要素20はそれぞれ、環状リング16とベゼル14の間のいずれの相対的回転もロックするように構成している。
図2及び5に示している好ましい例示的実施形態において、各ロック要素20には、長手方向D1に細長い本体がある。この本体には、メイン部分である第1の部分28aと、リムを形成し第1の部分28aからそれと実質的に直交方向に延在している第2の部分28bがある。
図2及び5に示しているように、この本体の断面は、実質的にL字形であり、この本体の第1の部分28aは、このL字の主アームを形成し、この本体の第2の部分28bは、このL字の足部を形成する。一又は複数のロック要素20を受けるために、環状リング16には、局所的に、その上部に、対応する受け開口22に沿って、内側凹部32を形成する少なくとも1つの肩部30がある。また、回転ベゼル14は、局所的に、その内部周部に、少なくとも1つの内側溝34を形成する。
図2及び4に示しているように、各ロック要素20の第2の部分28bを、ベゼル14に形成された受け溝34のうちの1つにて受ける。
図2に示しているように、各ロック要素20の第2の部分28bの上面は、この部分に関して、環状リング16の底面に、又はより正確には、肩部30のうちの1つの底面に、当接する。したがって、各ロック要素20によって、環状リング16とベゼル14によって形成されるアセンブリーを角度的に固定することができる。
【0026】
好ましくは、ロック要素20はそれぞれ、環状リング16が形成される材料と同じ材料、典型的には、金属性材料、例えば、鋼や金、によって形成される。
【0027】
次に、
図6~11を参照して、本発明に係る回転ベゼルシステム6の組み付けについて説明する。なお、これらの図において、システム6は、
図1~3に示しているような動作時の通常の配置と比べて、逆さに(ベゼル14が反転した状態)されている。したがって、以下に用いられる用語「上」及び「下」は、
図6~11に示されているシステムにおける向きではなく、
図1及び3のシステム6における向きのものとして理解されるべきである。
【0028】
まず、
図6に示しているように、予め配置された回転ベゼル14内に配置することによって環状リング16を設置する。これを行うために、
図7に示しているように、ベゼル14の内側溝34と整列するように開口22と肩部30を用い、これによって、リング16とベゼル14の間のポジショニングが正確であることを確実にする。
【0029】
図8及び9に示している次のステップにおいて、ロック要素20はそれぞれ、リング16内に形成された受け開口22のうちの1つを通るように挿入され、第2の部分28bは、L字の足部を形成しており、開口22内に最初に挿入される。この挿入は、リング16に形成された対応する肩部30によって形成される内側凹部32の存在によって促進される。そして、
図10に示しているように、各ブロック要素20の第2の部分28bは、ベゼル14内に形成された内側溝34のうちの1つ内へと摺動し、この第2の部分28bの上面は、対応する肩部30の底面に支持される。
【0030】
最後に、
図11に示しているように、環状ジョイント18は、システム6のアセンブリーを完成させるように配置される。これを行うために、環状ジョイント18は、環状リング16と各ロック要素20の間に入れ込まれる。
図3に示しているように、ロック要素20がないシステム6の領域において、リング16内に形成される溝24が環状ジョイント18を受ける。
【符号の説明】
【0031】
1 携行型時計
2 携行型時計ケース
4 ミドル部
6 回転ベゼルシステム
14 回転ベゼル
16 環状リング
18 環状ジョイント
20 ロック要素
22 開口
34 溝