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特許7021326枢動質量体のための枢動案内デバイス及び計時器共振器機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】枢動質量体のための枢動案内デバイス及び計時器共振器機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/04 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
G04B17/04
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020173709
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2021067685
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】19205001.1
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】モハマド フセイン・カーロバイヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ・ディ ドメニコ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118548(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3438762(EP,A2)
【文献】スイス国特許出願公開第712958(CH,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 15/00-18/08
G04C 3/04
G04C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時器ムーブメントのための枢動質量体を回転枢動案内するデバイス(1、10、20、30、40、50、60)において、前記デバイス(1、10、20、30、40、50、60)は、実質的に同じ平面内に直列配置した状態で、第1の支持体(2、32、52、72、92)と、第1の対の非交差条片(5、6、15、16、35、36、65、66、85、86)と、第2の支持体(3、19、33、53、73、93)と、1対の交差条片(7、8、17、18、37、38)と、第3の支持体(4、21、34、54、74、94)とを備え、前記対の非交差条片は、前記第1の支持体(2、32、52、72、92)を前記第2の支持体(3、19、33、53、73、93)に互いに交差させずに接続する第1の可撓性条片(5、15、35、65、85)と第2の可撓性条片(6、16、36、66、86)とを備え、前記対の交差条片は、前記第2の支持体(3、19、33、53、73、93)を前記第3の支持体(4、21、34、54、74、94)に接続する第3の可撓性条片(7、17、37)と第4の可撓性条片(8、18、38)とを含み、前記第3の可撓性条片(7、17、37)及び前記第4の可撓性条片(8、18、38)は、前記第2の支持体(3、19、33、53、73、93)と前記第3の支持体(4、21、34、54、74、94)との間で互いに交差し、
前記デバイスは、第4の支持体(12、22、31、51、71、91)と、第2の対の非交差条片(13、14、24、26、43、44、63、64、83、84)とを含み、前記第2の対の非交差条片は、前記第3の支持体(4、21、34、54、74、94)を前記第4の支持体(12、22、31、51、71、91)に互いに交差させずに接続する第5の可撓性条片(13、24、43、63、83)と第6の可撓性条片(14、26、44、64、84)とを含む
ことを特徴とする、デバイス(1、10、20、30、40、50、60)。
【請求項2】
前記デバイスは、第5の支持体(48、58、78)と、第6の支持体(47、57、77、98)と、第3の対の非交差条片(41、42、61、62、81、82)と、第4の対の非交差条片(45、46、67、68、87、88)とを含み、前記第3の対の非交差条片(41、42、61、62、81、82)は、前記第1の支持体(32、52、72)と前記第5の支持体(48、58、78)との間に組み付け、前記第4の対の非交差条片(45、46、67、68、87、88)は、前記第4の支持体(31、51、71)と前記第6の支持体(47、57、77)との間に組み付けることを特徴とする、請求項に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第5の支持体(48)は、前記デバイス(30)が静止している際、前記第1の支持体(32)と前記第2の支持体(33)との間に配置し、前記第6の支持体(47)は、前記第3の支持体(34)と前記第4の支持体(31)との間に配置することを特徴とする、請求項に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第5の支持体(58、78)は、前記デバイス(30)の中心に対して、前記第1の支持体(52、72)を越えて配置し、前記第6の支持体(57、77)は、前記デバイス(30)の中心に対して、前記第4の支持体(51、71)を越えて配置することを特徴とする、請求項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の支持体(53)及び前記第3の支持体(54)は、前記第1の可撓性条片(65)と、前記第2の可撓性条片(66)と、前記第5の可撓性条片(63)と、前記第6の可撓性条片(64)とを保持する腕部(59、69)を含むことを特徴とする、請求項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第4の支持体(71)及び前記第1の支持体(72)は、前記第1の可撓性条片(85)と、前記第2の可撓性条片(86)と、前記第5の可撓性条片(83)と、前記第6の可撓性条片(84)とを保持する腕部(79、89)を含むことを特徴とする、請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第5の支持体(48、58、78)は、固定することを意図し、他の支持体は、可動であることを意図し、前記第6の支持体(47、57、77、98)は、前記枢動質量体を形成又は支持することを意図することを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記デバイスは、支持体及び対の重ねた条片の2つの組立体(25、27、95、99)を含み、前記支持体(23、90)の一方は、前記2つの組立体(25、27、95、99)に共通の支持体を形成することを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1の支持体(2)は、固定することを意図し、他の支持体(3、4、12)は、可動であることを意図することを特徴とする、請求項1記載のデバイス。
【請求項10】
同じ対の2つの前記可撓性条片は、等しい長さであることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記対の交差条片(7、8、17、18、37、38)のうち2つの条片は、実質的に中心で互いに交差することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
仮想枢動軸回りに回転可能に枢動するように構成した枢動質量体を含む計時器共振器機構(70、80、90)において、前記計時器共振器機構(70、80、90)は、請求項1から11のいずれか一項に記載の回転枢動案内デバイス(1、10、20、30、40、50、60)を含むことを特徴とする、計時器共振器機構(70、80、90)。
【請求項13】
請求項12に記載の計時器共振器機構(70、80、90)を含む測時器ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枢動質量体を回転枢動案内するデバイスに関する。
【0002】
本発明は、そのような枢動案内デバイスを含む計時器共振器機構にも関する。
【0003】
本発明は、そのような共振器機構を備える測時器ムーブメントにも関する。
【背景技術】
【0004】
測時器ムーブメントは、概して、香箱と、脱進機機構と、機械式共振器機構とを備える。共振器機構は、ぜんまいを備え、ぜんまいは、テンプ及び枢動体と呼ばれる揺動慣性ブロックと関連付けられる。可撓性案内体は、ここでは、仮想枢動体を形成するぜんまいとして使用される。
【0005】
可撓性仮想枢動案内体は、計時器共振器を著しく改善することを可能にする。最も単純なものは、交差条片枢動体であり、まっすぐな条片を有する2つの案内デバイスから構成され、まっすぐな条片は、通常は直交して互いに交差する。これら2つの条片は、2つの異なる平面では3次元である、又は同じ平面では2次元であり、次に、交差点で溶接される。
【0006】
共振器のための3次元交差条片の対は、等時性を目的として、特に2つの方式:
-動作が位置とは無関係であるように、取り付け具に対する条片の交差位置を選択すること
-等時性で、動作が振幅とは無関係であるように、条片の間の角度を選択すること
で、重力場の向きとは無関係な動作で(別々又は一緒に)最適化することが可能である。
【0007】
しかし、測時器ムーブメントの用途で効率的であるように可撓性案内体の十分な角度進行を得ることは可能ではない。実際、最大角度進行は、条片がそれぞれの中間で互いに交差する際に得られる。しかし、この構成では、十分な等時性を達成することは可能ではない。したがって、質量体の回転運動が完全に周期的であるように枢動させる間、十分に安定した仮想軸を得ることが可能ではない。戻りトルクは、完全に線形ではなく、これにより、質量体の振幅に応じた非等時性及びムーブメントの動作誤差が発生する。更に、重力に対する機構の向きのために、機構の質量中心が偏移しすぎ、非等時性も生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の欠点を回避することを求め、特に測時器ムーブメントの共振器機構内での使用に関して、挙動が改善した可撓性案内体を得ることを目的とするものである。
【0009】
したがって、本発明は、特に測時器ムーブメントのための枢動質量体を回転枢動案内するデバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
デバイスは、デバイスが、実質的に同じ平面内に直列配置した状態で、第1の支持体と、第1の対の非交差条片と、第2の支持体と、1対の交差条片と、第3の支持体とを備え、対の非交差条片は、第1の支持体を第2の支持体に互いに交差させずに接続する第1の可撓性条片と第2の可撓性条片とを備え、対の交差条片は、第2の支持体を第3の支持体に接続する第3の可撓性条片と第4の可撓性条片とを含み、第3の可撓性条片及び第4の可撓性条片は、第2の支持体と第3の支持体との間で互いに交差するという点で注目に値する。
【0011】
したがって、一対の交差条片及び一対の非交差条片によって分離される支持体の1つを直列に組み付けることによって、一方で十分な角度進行を有し、もう一方で質量体の運動等時性を有する可撓性案内体が得られる。実際、第2の支持体及び対の非交差条片は、第1の非交差条片枢動体を形成する一方で、第3の支持体及び非交差条片は、非交差条片枢動体を形成する。しかし、交差条片枢動体は、トルク-角度関係に関する正の線形の欠如をもたらすが、このことは、非交差条片枢動体によって生成される負の線形の欠如を補償する。次に、各種類の枢動体は、互いを打ち消す、互いに反対の寄生運動を誘起する。
【0012】
本発明により、測時器ムーブメントの共振器機構内で効率的な可撓性条片枢動体を使用することが可能である。そのようなデバイスは、質量体が枢動する間、可撓性及び戻りトルクがより線形であるように、より安定した質量中心の保持を可能にし、それ以外の場合、例えば脱進機の遅延を補償するように選択した線形を欠如させる。特に、共振器機構における重力による非等時性及び動作変化の問題も大幅に低減し、この結果、機械式測時器ムーブメントはより正確である。
【0013】
本発明の特定の実施形態によれば、デバイスは、第4の支持体と第2の対の非交差条片とを含み、第2の対の非交差条片は、第3の支持体を第4の支持体に互いに交差させずに接続する第5の可撓性条片と第6の可撓性条片とを含む。
【0014】
本発明の特定の実施形態によれば、デバイスは、第5の支持体と第6の支持体とを含む。
【0015】
本発明の特定の実施形態によれば、デバイスは、第3の対の非交差条片と第4の対の非交差条片とを含み、第3の対の非交差条片は、第1の支持体と第5の支持体との間に組み付けられ、第4の対の非交差条片は、第4の支持体と第6の支持体との間に組み付けられる。
【0016】
本発明の特定の実施形態によれば、第5の支持体は、デバイスが静止している際、第1の支持体と第2の支持体との間に配置され、第6の支持体は、第3の支持体と第4の支持体との間に配置されている。
【0017】
本発明の特定の実施形態によれば、第5の支持体は、第1の支持体を越えて配置され、第6の支持体は、第4の支持体を越えて配置される。
【0018】
本発明の特定の実施形態によれば、第3の対の非交差条片は、第1の対の非交差条片と頭-尾位置で配置され、第4の対の非交差条片は、第2の対の非交差条片と頭-尾位置で配置される。
【0019】
本発明の特定の実施形態によれば、第2の支持体及び第3の支持体は、可撓性条片を保持する腕部を含む。
【0020】
本発明の特定の実施形態によれば、第1の支持体及び第4の支持体は、可撓性条片を保持する腕部を含む。
【0021】
本発明の特定の実施形態によれば、第5の支持体は、固定することを意図し、他の支持体は、可動であることを意図し、第6の支持体は、枢動質量体を形成又は支持することを意図する。
【0022】
本発明の特定の実施形態によれば、デバイスは、支持体及び対の重ねた条片の2つの組立体を含み、支持体の一方は、2つの組立体に共通する支持体を形成する。
【0023】
本発明の特定の実施形態によれば、第1の支持体は、固定することを意図し、他の支持体は、可動であることを意図し、第3の支持体は、枢動質量体を形成又は支持することを意図する。
【0024】
本発明の特定の実施形態によれば、第3の支持体は、固定することを意図し、他の支持体は、可動であることを意図し、第1の支持体は、枢動質量体を形成又は支持することを意図する。
【0025】
本発明の特定の実施形態によれば、同じ対の2つの可撓性条片は、等しい長さである。
【0026】
本発明の特定の実施形態によれば、対の交差条片の2つの条片は、実質的に条片の中心で互いに交差する。
【0027】
本発明は、枢動質量体を含む計時器共振器機構にも関し、枢動質量体は、仮想枢動軸回りに回転可能に枢動するように構成され、機構は、本発明による回転枢動可撓性案内デバイスを備える。
【0028】
本発明は、そのような計時器共振器機構を備える測時器ムーブメントにも関する。
【0029】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施形態による枢動案内デバイスの概略上面図である。
図2】本発明の第2の実施形態による枢動案内デバイスの概略斜視図である。
図3】本発明の第3の実施形態による枢動案内デバイスの概略上面図である。
図4】本発明の第4の実施形態による枢動案内デバイスの概略上面図である。
図5】本発明の第5の実施形態による枢動案内デバイスの概略上面図である。
図6】本発明の第6の実施形態による枢動案内デバイスの概略上面図である。
図7】本発明の第7の実施形態による枢動案内デバイスの概略上面図である。
図8】可変慣性テンプと本発明による案内デバイスとを備える共振器機構の概略上面図である。
図9】テンプと本発明による案内デバイスとを備える共振器機構の概略上面分解図である。
図10】耐衝撃台と本発明による案内デバイスの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、例えば枢動質量体を測時器ムーブメント内に含む共振器機構のための枢動質量体を回転枢動案内するデバイスに関する。
【0032】
図1は、本発明によるそのようなデバイス1の第1の基本実施形態を示す。デバイス1は、好ましくは、実質的に同じ平面P内に配置される。デバイス1は、上流から下流まで、案内デバイスの配置に従って直列に組み付けた状態で、第1の固定支持体2と、一対の非交差条片5、6と、第2の回転支持体3と、一対の交差条片7、8と、枢動質量体を形成又は支持することを意図する第3の支持体4とを備える。
【0033】
3つの支持体2、3、4は、ここでは、60から120°の間に含まれる角度を形成する円弧形状を有する。図1では、第1の支持体2の円弧は、第2の支持体3及び第3の支持体4の円弧よりも大きく、少なくとも1対2、又は更には1対3若しくは1対4の比率である。第1の支持体2及び第2の支持体3は、平行であるが、第3の支持体4は、他の方向で対称的に配置され、第3の支持体4の円弧の内側は、第2の支持体3の円弧に対向する。
【0034】
当然、変形実施形態では、支持体2、3、4は、図示する形状とは異なる形状、例えばまっすぐな形状を有することができる。
【0035】
対の非交差条片5、6は、第1の支持体2を第2の支持体3に接続する第1の可撓性条片5と第2の可撓性条片6とを備える。2つの可撓性条片5、6は、同じ長さであり、デバイスが静止位置にある際にデバイス1の軸Aに対して対称的に配置される。可撓性条片5、6は、第1の支持体2の円弧の内側から第2の支持体3の円弧の外側まで延在する。第1の支持体2は、第2の支持体3よりも大きく、2つの条片5、6は、互いに向かって移動する一方で、第2の支持体3に向かって移動する。しかし、第1の可撓性条片5及び第2の可撓性条片6は、2つの支持体の間で互いに交差しない。したがって、第1の可撓性条片5及び第2の可撓性条片6のそれぞれは、一方向に向けられ、2つの方向は、支持体を越えて、ここでは第2の支持体3を越えて第1の仮想点9で交差する。2つの条片は、同じ平面内にあり、5から130°の間、好ましくは、25から110°の間に含まれる角度を間に形成する。
【0036】
対の交差条片7、8は、第2の支持体3を第3の支持体4に接続する第3の可撓性条片7と第4の可撓性条片8とを備える。第3の可撓性条片7及び第4の可撓性条片8は、同じ長さであり、ここでは、対の非交差条片の第1の条片5及び第2の条片6よりも短い。第3の可撓性条片7及び第4の可撓性条片8は、デバイス1が揺動する間、互いに接触しないように高さがわずかにずれている。第3の可撓性条片7及び第4の可撓性条片8は、0°から180°の間、好ましくは、20°から50°の間に含まれる角度を間に形成する。第3の可撓性条片7及び第4の可撓性条片8は、デバイス1が静止している際、第2の支持体3と第3の支持体4との間に位置する第2の点11で互いに交差する。好ましくは、第2の点11は、2つの条片7、8の中間に配置される。言い換えれば、第3の条片7及び第4の条片8は、それぞれの中心で互いに交差する。好ましくは、条片5、6、7、8及び支持体2、3、4の寸法は、図1に示すように、デバイス1が静止している際に第1の点9及び第2の点11が同じ場所に実質的に位置するように選択される。
【0037】
条片5、6、7、8は、有利には、同じ又は更には同一の区間の慣性を有する。例えば、可撓性条片5、6、7、8は、通常、時計製造において共振器機構内で使用される。本発明は、可撓性条片5、6、7、8がまっすぐである特定の好ましいケースで示す。とはいえ、例えば、コイル形状等の他の形状が考慮される。
【0038】
デバイス1が揺動する際、第1の支持体2は固定されたままであり、第2の支持体3は、第1の可撓性条片5及び第2の可撓性条片6のために第1の進行角度で揺動し、第3の支持体4は、第3の可撓性条片7及び第4の可撓性条片8のために第1の角度よりも大きい第2の進行角度で揺動する。揺動は、デバイス1の平面に直交する仮想軸の周辺で生じる。
【0039】
対の交差条片7、8、及び対の非交差条片5、6がそれら自体の欠陥を補償するため、デバイス1の質量中心の寄生運動を伴わずに等時性揺動が得られる。更に、2つの種類の枢動体の角度進行を加え、十分に大きな角度進行を得、特に、計時器揺動機構内で使用できるようにする。
【0040】
この第1の実施形態の一変形形態では、第3の支持体4は固定される一方で、第1の支持体2及び第2の支持体3は可動であり、第1の支持体2は、揺動機構の慣性ブロックを形成又は支持することを意図する。したがって、この場合、第2の支持体3は、第1の支持体2の角度進行よりも小さい角度進行を有する。
【0041】
第2の実施形態によれば、図2に示すように、デバイス10は、対の交差条片7、8と直列に組み付けた第2の対の非交差条片13、14と、枢動質量体を形成又は支持することを意図する第4の支持体12とを含む。したがって、第2の非交差条片13、14の枢動体は、交差条片枢動体と直列に形成される。対の交差条片7、8は、2つの対の非交差条片5、6、13、14の間に配置される。この場合、第3の支持体4は、枢動質量体を形成又は支持することを意図しないが、依然として可動である一方で、第1の支持体2は固定される。第4の支持体12は、図示の例では、第1の支持体2と同じ円弧形状及び同じサイズを有するが、第3の支持体4と平行に他の方向で配置される。
【0042】
第4の支持体12及び第2の対の非交差条片13、14は、軸Aに直交するデバイス1の対称軸Bに対して、第1の対の非交差条片5、6及び第1の支持体2に対称に配置される。デバイス1の対称軸Aは、全ての支持体2、3、4、12を通過する一方で、対称軸Bは、支持体2、3、4、12を通過しない。第2の対の非交差条片13、14は、第3の支持体4を第4の支持体12に接続する第5の可撓性条片13と第6の可撓性条片14とを含み、第1の対の非交差条片5、6が第1の支持体2を第2の支持体3に接続するのと同じように、互いに交差しない。
【0043】
条片13及び14の方向は、支持体4及び12を越えた仮想点で交差し、仮想点は、第1の点9及び第2の点11に実質的に位置する。第1の点9及び第2の点11は、デバイス10の回転中心を形成する。
【0044】
第1の変形形態によれば、デバイス10は、テンプの質量中心がデバイス10の回転中心上に配置されるように構成される。
【0045】
第2の変形形態では、デバイス10は、テンプの質量中心がデバイス10の回転中心から予め規定された距離で軸A上に配置されるように構成される。
【0046】
枢動体の寸法は、2つの非交差条片枢動体が交差条片枢動体の非等時性を補償するように選択される。
【0047】
図3に示す第3の実施形態では、デバイス20は、2つの組立体25、27を含み、それぞれの組立体25、27は、図2の第2の実施形態による案内デバイスに対応し、2つの組立体25、27は、重なっている。2つの組立体25、27は、2つの平行な平面上に配置され、条片又は支持体を衝突させずに枢動できるようにする。図3では、第1の組立体25は、第2の組立体27の下に配置される。2つの組立体25、27は、頭-尾に重なり、共通の可動支持体23によって互いに接続され、可動支持体23は、第1の組立体25の第4の支持体及び更には第2の組立体27の第1の支持体を形成する。したがって、デバイス20の角度進行は、この直列組み付けのために増大する。この場合、第1の組立体25の第1の支持体2のみが固定される一方で、全ての他の支持体3、4、19、21、22、23は、可動である。第2の組立体27の第4の支持体22は、最大角度進行を有し、枢動質量体を形成又は支持することを意図する。第1の組立体25の第5の可撓性条片13及び第6の可撓性条片14並びに第2の組立体27の第1の可撓性条片15及び第2の可撓性条片16は、共通支持体23に接続されている。他の可撓性条片5、6、7、8、17、18、24、26は、第2の実施形態のデバイス10と同じ構成である。
【0048】
支持体3、4、19、21、22、23及び条片5、6、7、8、17、18、24、26は、デバイス20が静止している際、反転位置で重なる。したがって、第2の組立体27の第2の支持体19は、第1の組立体25の第3の支持体4の上に配置され、第2の組立体27の第3の支持体21は、第1の組立体25の第2の支持体3の上に配置される。最後に、第2の組立体27の第4の支持体22は、第1の組立体25の第1の支持体2の上に配置される。したがって、第2の組立体27の第4の支持体22は、デバイス20が動作する際に第1の組立体25の第1の固定支持体2の上で揺動する。
【0049】
図4から図6は、デバイス30、40、50が、第2の実施形態によるデバイスの第1の2つの対の交差条片に加えて、第3の対の非交差条片及び第4の対の非交差条片41、42、45、46、61、62、67、68、81、82、87、88を含む実施形態を示す。第3の対41、42、61、62、81、82は、第1の対の非交差条片35、36、65、66、85、86の上流に組み付けられ、第4の対45、46、67、68、87、88は、第2の対の非交差条片43、44、63、64、83、84の下流に組み付けられる。更に、デバイスは、第3の対の非交差条片41、42、61、62、81、82によって第1の支持体32、52、72に接続される第5の支持体48、58、78と、第4の対の非交差条片45、46、67、68、87、88によって第4の支持体31、51、71に接続される第6の支持体47、57、77とを含む。第3の対は、第7の可撓性条片41、61、81と第8の可撓性条片42、62、82とを含み、第4の対は、第9の可撓性条片45、67、87と第10の可撓性条片46、68、88とを含む。対の条片は、デバイス30、40、50の対称軸Aの両側に対称に配置される。第5の支持体48、58、78及び第6の支持体47、57、77も、それぞれのデバイスに対して同じである円弧形状を有する。
【0050】
全てのこれらの実施形態では、第1の支持体32、52、72は、可動である一方で、第5の支持体48、58、78は固定され、第6の支持体47、57、77は、枢動質量体を形成又は支持することを意図する。更に、各デバイス30、40、50は、1つの平面内に実質的に配置される。
【0051】
図4の第4の実施形態では、第5の支持体48は、第1の支持体32と第2の支持体33との間に配置され、第6の支持体47は、第3の支持体34と第4の支持体31との間に配置される。第5の支持体48及び第6の支持体47は、同様の円弧形状を有し、第5の支持体48は、第1の支持体32及び第2の支持体33と同じ方向で配置され、第6の支持体47は、第3の支持体34及び第4の支持体31と同じ方向で配置される。第5の可撓性条片43及び第6の可撓性条片44は、デバイスが静止位置にある際に第6の支持体47の両側に配置されている。
【0052】
第5の支持体48及び第6の支持体47はそれぞれ、2つの固定穴を含むタブ形状クリップ39、49を更に含む。タブは、それぞれ、第1の支持体32及び第4の支持体31のそれぞれの方向で円弧の外側部分上に配設される。第1の可撓性条片35及び第2の可撓性条片36は、デバイスが静止位置にある際に第5の支持体48の両側に配置されている。
【0053】
図5及び図6の第5の実施形態及び第6の実施形態は、第5の支持体58、78が第1の支持体52、72を越えて配置され、第6の支持体57、77が第4の支持体51、71を越えて配置される構成を示す。「越える」とは、デバイスの中心に対してであると理解されたい。
【0054】
第5の実施形態の場合、第2の支持体53及び第3の支持体54は、湾曲腕部59、69を円弧の各端部に含み、湾曲腕部59、69はそれぞれ、第1の支持体52及び第4の支持体51の周囲に延在する。したがって4つの腕部59、69は、変形円弧を表し、腕部59、69の湾曲は、デバイス40の外側の方に向けられ、自由端に近づくにつれて際立っている。
【0055】
腕部の各自由端は、第1の可撓性条片65及び第2の可撓性条片66によって、第2の支持体53のために第1の支持体52に接続される、又は第4の支持体54のために第5の可撓性条片63及び第6の可撓性条片64によって第4の支持体51に接続される。
【0056】
第6の実施形態のデバイス50では、第1の支持体72及び第4の支持体71は、腕部79、89を円弧の各端部に含み、腕部79、89はそれぞれ、第5の支持体78及び第6の支持体77に向かって延在する。第4の腕部79、89は、直線形状区分を有し、直線形状区分の各自由端は、実質的に90°で屈曲する。第1の支持体72の2つの屈曲端部は、一方では第1の可撓性条片85によって、もう一方では第2の可撓性条片86によって第2の支持体73に接続される。第4の支持体71の2つの屈曲端部は、一方では第5の可撓性条片83によって、もう一方では第6の可撓性条片84によって第3の支持体74に接続される。
【0057】
図7は、デバイス60の第7の実施形態を示し、デバイス60は、支持体及び対の重なった条片の2つの組立体95、99を含む。各組立体95、99は、概して、第4の実施形態で説明した種類のデバイスに対応する。組立体95、99は、頭-尾に配置される。即ち、組立体95、99は、互いに対して反転している。2つの組立体95、99は、2つの平行な平面上に配置され、条片を衝突させずに枢動できるようにする。したがって、8つの対の非交差条片と2つの対の交差条片とを備えるデバイスが得られる。このデバイスでは、共通支持体90は、第5の組立体95の第6の支持体を形成し、更には第2の組立体99の第5の支持体を形成する。したがって、デバイス60は、11個の異なる支持体31、32、33、34、48、90、91、92、93、94、98を有する。静止位置において、第1のデバイス95の第1の支持体32は、第2の組立体99の第4の支持体91の下に配置され、第1のデバイス95の第2の支持体33は、第2の組立体99の第3の支持体94の下に配置され、第1のデバイス95の第3の支持体34は、第2の組立体99の第2の支持体93の下に配置され、第1の組立体95の第4の支持体31は、第2の組立体99の第1の支持体92の下に配置され、第1の組立体95の第5の支持体48は、第2の組立体99の第6の支持体98の下に配置される。
【0058】
デバイス60が揺動する際、全ての支持体31、32、33、34、90、91、92、93、94、98は、第1のデバイス95の第5の支持体48を除いて可動である。第2の組立体99の第6の支持体98は、枢動質量体を形成又は支持することを意図する。
【0059】
この直列組み付けのために、デバイス60の角度進行は、更に伸張される。
【0060】
第5の実施形態又は第6の実施形態による、デバイスの直列組み付けの組合せも可能である。
【0061】
図8は、第2の実施形態によるデバイス101と、一体構造のテンプ102とを備える共振器機構70を示す。テンプ102は、軸方向腕部104によって第4の支持体105の外側に接続されるリング形状を有し、デバイス101の第1の支持体106は、固定されている。リングは、デバイス101を取り囲む一方で、依然として実質的にデバイスの平面内にある。テンプ102は、ここでは4つの慣性ブロック103を更に備え、慣性ブロック103は、リング上に配置され、テンプ102に対する所望の質量中心及び慣性を修正、調節する。慣性ブロックは、好ましくは離心している。
【0062】
別の種類のテンプ107は、図9の共振器機構80内で、本発明によるデバイス110の上に示されている。テンプ107は、軸方向腕部108と、円錐台頭部109とを各端部に備える。頭部109は、ねじ111を備え、ねじ111は、テンプ107の質量中心及び慣性を修正するように作動させることができる。腕部108は、2つの開口部112を含み、2つの開口部112は、第2の実施形態によるデバイス110の可動支持体115に組み付けられる。可動支持体115は、クリップ113を備え、クリップ113は、デバイス110の軸A上に配置され、2つの穴114を備え、2つの穴114は、組み付けのためにテンプ107の開口部112に対応する。
【0063】
本願で説明するデバイスは、図10のシステム90で説明されるような耐衝撃台119に関連付けることができる。例えば、第2の実施形態のデバイス120は、第1の対の可撓性条片122によってL字形剛性支持体121の腕部に連結される。次に、剛性支持体121は、第2の対の可撓性条片123によってLのもう一方の腕部から板又は受け124に接続される。耐衝撃台119は、衝撃の際に急激な揺れを吸収することを可能にし、デバイス120の運動を干渉しないようにする。この場合、デバイス120の第1の支持体125も可動とすることができる。デバイス120の第4の支持体126は、テンプに組み付けることを意図する。
【0064】
全ての実施形態では、条片は、固定連結によって、例えば、支持体に埋め込むことによって支持体に固定される。更に、可撓性条片は、剛性部分及び可撓性部分を含む条片とすることができる。条片は、例えば、1つ又は複数の剛性部分から形成することができ、1つ又は複数の剛性部分は、可撓性条片又は可撓性首部によって接続される。首部は、例えば、剛性部分の厚さが狭い部分であり、これにより、首部を可撓性にする。
【0065】
有利な実施形態では、支持体及び条片は、一体化された組立体を形成する。この一体化組立体は、この一体化組立体がシリコン製である場合、特に、この目的で配置される部分のいくつかの領域内でシリコン二酸化物を特に局所的に成長させることによって熱補償する、シリコン等の「MEMS」又は「LIGA」型技術等によって製造することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 デバイス
2 第1の支持体
3 第2の支持体
4 第3の支持体
5 第1の可撓性条片
6 第2の可撓性条片
7 第3の可撓性条片
8 第4の可撓性条片
12 第4の支持体
13 第5の可撓性条片
14 第6の可撓性条片
70 計時器共振器機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10