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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】配線回路基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220208BHJP
   H05K 1/05 20060101ALI20220208BHJP
   H05K 3/44 20060101ALI20220208BHJP
   G11B 5/60 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
H05K1/02 N
H05K1/05 Z
H05K3/44 Z
G11B5/60 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020189305
(22)【出願日】2020-11-13
(62)【分割の表示】P 2016099713の分割
【原出願日】2016-05-18
(65)【公開番号】P2021028988
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】山内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田辺 浩之
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-088056(JP,A)
【文献】特開2008-109147(JP,A)
【文献】特開2012-198950(JP,A)
【文献】特開2011-258265(JP,A)
【文献】特開2012-243382(JP,A)
【文献】特開2009-094241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/05
H05K 3/44
G11B 5/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料により形成される支持基板と、
前記支持基板上に形成され、第1の厚みを有する第1の部分と前記第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有する第2の部分とを含む第1の絶縁層と、
前記支持基板に電気的に接続されるように前記第1の絶縁層の前記第2の部分に形成され、前記支持基板よりも高い電気導電率を有する接地層と、
前記接地層を覆うように前記第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の前記第1および第2の部分に重なるように前記第2の絶縁層上に形成される上部配線パターンとを備える、配線回路基板。
【請求項2】
前記上部配線パターンは第1の方向に延び、
前記第1の絶縁層は、前記第1の部分を複数有するとともに、前記第2の部分を複数有し、
前記複数の第1の部分と前記複数の第2の部分とは、前記第1の方向に交互に並ぶ、請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
導電性材料により形成される支持基板と、
前記支持基板上の第1の領域に形成されるとともに前記支持基板よりも高い電気伝導率を有する接地層と、
前記支持基板上の第1の領域とは異なる第2の領域に形成される第1の絶縁層と、
前記接地層および前記第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層と、
前記支持基板の前記第1および第2の領域に重なるように前記第2の絶縁層上に形成される上部配線パターンとを備え、
前記上部配線パターンは第1の方向に延び、
前記支持基板は、前記第1の領域を複数有するとともに、前記第2の領域を複数有し、
前記複数の第1の領域と前記複数の第2の領域とは、前記第1の方向に交互に並ぶ、配線回路基板。
【請求項4】
前記第1の絶縁層上に形成される下部配線パターンをさらに備え、
前記第2の絶縁層は、前記下部配線パターンを覆うように前記第1の絶縁層上に形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記支持基板はステンレスを含み、前記接地層は銅を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記上部配線パターンを覆うように前記第2の絶縁層上に形成される第3の絶縁層をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項7】
導電性材料により形成される支持基板上に第1の厚みを有する第1の部分と前記第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有する第2の部分とを含む第1の絶縁層を形成するステップと、
前記支持基板に電気的に接続されるように前記第1の絶縁層の前記第2の部分に前記支持基板よりも高い電気導電率を有する接地層を形成するステップと、
前記接地層を覆うように前記第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成するステップと、
前記第1の絶縁層の前記第1および第2の部分に重なるように前記第2の絶縁層上に上部配線パターンを形成するステップとを含む、配線回路基板の製造方法。
【請求項8】
導電性材料により形成される支持基板上の複数の第1の領域に前記支持基板よりも高い電気伝導率を有する接地層を形成するステップと、
前記支持基板上の前記複数の第1の領域とは異なる複数の第2の領域に第1の絶縁層を形成するステップと、
前記接地層および前記第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成するステップと、
前記支持基板の前記第1および第2の領域に重なるように前記第2の絶縁層上に第1の方向に延びる上部配線パターンを形成するステップとを含み、
前記複数の第1の領域と前記複数の第2の領域とは、前記第1の方向に交互に並ぶ、配線回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の電気機器または電子機器に配線回路基板が用いられている。特許文献1には、配線回路基板として、ハードディスクドライブ装置のアクチュエータに用いられるサスペンション基板が記載されている。
【0003】
特許文献1の配線回路基板においては、サスペンション本体部上に第1の絶縁層が形成される。第1の絶縁層上に第1および第2の配線パターンが間隔をおいて平行に形成される。第1および第2の配線パターンの両側における第1の絶縁層上の領域には、第2の絶縁層が形成される。第2の配線パターン側における第2の絶縁層上の領域に第3の配線パターンが形成され、第1の配線パターン側における第2の絶縁層上の領域に第4の配線パターンが形成される。
【0004】
第1の配線パターンと第3の配線パターンとが所定箇所で互いに接続されることにより、第1の書込用配線パターンが構成される。第2の配線パターンと第4の配線パターンとが所定箇所で互いに接続されることにより、第2の書込用配線パターンが構成される。第1の書込用配線パターンと第2の書込用配線パターンとは、一対の信号線路対を構成する。
【0005】
特許文献1の配線回路基板においては、第1および第2の配線パターンは、第3および第4の配線パターンよりも低い位置に形成される。したがって、第1~第4の配線パターンが同一平面上に形成されている場合に比べて、第1~第4の配線パターン間の距離が長くなる。そのため、第1~第4の配線パターン間の近接効果が低下する。それにより、第1~第4の配線パターンを伝送する電気信号の損失が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-3893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、電気機器または電子機器に用いられる電気信号の高周波化が進んでいる。そのため、配線回路基板には、高い周波数帯域において電気信号の伝送損失がさらに低減されることが求められる。
【0008】
本発明の目的は、高い周波数帯域において電気信号の損失が低減された配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る配線回路基板は、導電性材料により形成される支持基板と、支持基板上に形成され、第1の厚みを有する第1の部分と第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有する第2の部分とを含む第1の絶縁層と、支持基板に電気的に接続されるように第1の絶縁層の第2の部分に形成され、支持基板よりも高い電気導電率を有する接地層と、接地層を覆うように第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層と、第1の絶縁層の第1および第2の部分に重なるように第2の絶縁層上に形成される上部配線パターンとを備える。
【0010】
その配線回路基板においては、支持基板上に第1および第2の部分を含む第1の絶縁層が形成される。第1の絶縁層の第2の部分上に接地層が形成される。また、接地層を覆うように第1の絶縁層上に第2の絶縁層が形成される。さらに、第1の絶縁層の第1および第2の部分に重なるように第2の絶縁層上に上部配線パターンが形成される。この場合、上部配線パターンに電気信号を伝送させることができる。
【0011】
高い周波数帯域を有する電気信号が上部配線パターンを伝送する場合、上部配線パターンから電磁波が発生する。その電磁波が支持基板または接地層に入射すると、支持基板または接地層に渦電流が発生し、上部配線パターンと支持基板または接地層とが電磁的に結合する。上部配線パターンを伝送する電気信号には、支持基板または接地層に発生する渦電流の大きさに応じた損失が生じる。電気信号の損失は、渦電流が大きいほど大きく、渦電流が小さいほど小さい。
【0012】
ある導体に電磁波が与えられることによりその導体に発生する渦電流は、その導体の電気伝導率が低いほど大きく、その導体の電気伝導率が高いほど小さい。接地層は、支持基板に比べて高い電気伝導率を有する。したがって、電磁波により接地層に発生する渦電流は、電磁波により支持基板に発生する渦電流よりも小さい。
【0013】
上記の構成によれば、上部配線パターンの少なくとも一部と支持基板との間に接地層が位置するので、上部配線パターンから支持基板に向かって放射される電磁波の少なくとも一部は、接地層に入射し、支持基板に到達しない。
【0014】
また、高い周波数帯域を有する電気信号が上部配線パターンを伝送する場合、上部配線パターンを伝送する電気信号には、上部配線パターンの線路長に応じた損失が生じる。電気信号の損失は、上部配線パターンの線路長が大きいほど大きく、上部配線パターンの線路長が小さいほど小さい。本発明に係る配線回路基板においては、第1の絶縁層の第2の部分上に接地層が形成される。この場合、支持基板、第1の絶縁層および第2の絶縁層の積層方向において、第1の絶縁層の第1の部分の上面の位置と接地層の上面の位置との間の差を小さくすることができる。それにより、第1の絶縁層の第1の部分上および接地層上に形成される第2の絶縁層の上面に、接地層の有無に起因する段差がほとんど形成されない。そのため、第2の絶縁層上に上部配線パターンを直線状に形成することができる。したがって、上部配線パターンの配線長が長くなることを抑制することができる。
【0015】
これらの結果、高い周波数帯域において上部配線パターンを伝送する電気信号の損失が低減される。
【0016】
(2)上部配線パターンは第1の方向に延び、第1の絶縁層は、第1の部分を複数有するとともに、第2の部分を複数有し、複数の第1の部分と複数の第2の部分とは、第1の方向に交互に並んでもよい。
【0017】
この場合、上部配線パターンが第1の方向に間欠的に並ぶ複数の接地層の部分に重なる。それにより、上部配線パターンの特性インピーダンスの均一性を向上させることができる。
【0018】
(3)第2の発明に係る配線回路基板は、導電性材料により形成される支持基板と、支持基板上の第1の領域に形成されるとともに支持基板よりも高い電気伝導率を有する接地層と、支持基板上の第1の領域とは異なる第2の領域に形成される第1の絶縁層と、接地層および第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層と、支持基板の第1および第2の領域に重なるように第2の絶縁層上に形成される上部配線パターンとを備え、上部配線パターンは第1の方向に延び、支持基板は、第1の領域を複数有するとともに、第2の領域を複数有し、複数の第1の領域と複数の第2の領域とは、第1の方向に交互に並ぶ。
【0019】
その配線回路基板においては、支持基板の第1の領域上に接地層が形成され、支持基板の第2の領域上に第1の絶縁層が形成される。また、接地層上および第1の絶縁層上に第2の絶縁層が形成される。さらに、第1の絶縁層の第1および第2の領域に重なるように第2の絶縁層上に上部配線パターンが形成される。この場合、上部配線パターンに電気信号を伝送させることができる。
【0020】
上記の構成によれば、上部配線パターンの少なくとも一部と支持基板との間に接地層が位置するので、上部配線パターンから支持基板に向かって放射される電磁波の少なくとも一部は、接地層に入射し、支持基板に到達しない。
【0021】
また、高い周波数帯域を有する電気信号が上部配線パターンを伝送する場合、上部配線パターンを伝送する電気信号には、上部配線パターンの線路長に応じた損失が生じる。電気信号の損失は、上部配線パターンの線路長が大きいほど大きく、上部配線パターンの線路長が小さいほど小さい。本発明に係る配線回路基板においては、支持基板の第1の領域上に接地層が形成され、第2の領域上に第1の絶縁層が形成される。それにより、支持基板、第1の絶縁層および第2の絶縁層の積層方向において、接地層の上面の位置と第1の絶縁層の上面の位置との間の差を小さくすることができる。それにより、接地層および第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層の上面に、接地層の有無に起因する段差がほとんど形成されない。そのため、第2の絶縁層上に上部配線パターンを直線状に形成することができる。したがって、上部配線パターンの配線長が長くなることを抑制することができる。
【0022】
これらの結果、高い周波数帯域において上部配線パターンを伝送する電気信号の損失が低減される。
【0023】
上部配線パターンは第1の方向に延び、支持基板は、第1の領域を複数有するとともに、第2の領域を複数有し、複数の第1の領域と複数の第2の領域とは、第1の方向に交互に並ぶ。
【0024】
この場合、上部配線パターンが第1の方向に間欠的に並ぶ複数の接地層の部分に重なる。それにより、上部配線パターンの特性インピーダンスの均一性を向上させることができる。
【0025】
(4)配線回路基板は、第1の絶縁層上に形成される下部配線パターンをさらに備え、第2の絶縁層は、下部配線パターンを覆うように第1の絶縁層上に形成されてもよい。この場合、下部配線パターンおよび上部配線パターンの各々に電気信号を伝送させることができる。
【0026】
(5)支持基板はステンレスを含み、接地層は銅を含んでもよい。
【0027】
この場合、ステンレス鋼により、上部配線パターンを支持するために必要とされる支持基板の十分な剛性を確保することができる。また、ステンレス鋼の表面には不動態皮膜が形成される。それにより、腐食による支持基板の劣化が抑制される。銅はステンレス鋼に比べて高い電気伝導率を有する。それにより、電磁波により接地層に発生する渦電流を小さくすることができる。
【0028】
(6)配線回路基板は、上部配線パターンを覆うように第2の絶縁層上に形成される第3の絶縁層をさらに備えてもよい。この場合、上部配線パターンが第3の絶縁層により保護される。
【0029】
(7)第3の発明に係る配線回路基板の製造方法は、導電性材料により形成される支持基板上に第1の厚みを有する第1の部分と第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有する第2の部分とを含む第1の絶縁層を形成するステップと、支持基板に電気的に接続されるように第1の絶縁層の第2の部分に支持基板よりも高い電気導電率を有する接地層を形成するステップと、接地層を覆うように第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成するステップと、第1の絶縁層の第1および第2の部分に重なるように第2の絶縁層上に上部配線パターンを形成するステップとを含む。
【0030】
その製造方法により得られる配線回路基板においては、上部配線パターンの少なくとも一部と支持基板との間に接地層が位置するので、上部配線パターンから支持基板に向かって放射される電磁波の多くが支持基板に到達することなく接地層により遮断される。また、上部配線パターンを伝送する電気信号の損失は、上部配線パターンの線路長が小さいほど小さい。上記の構成によれば、積層方向における第1の絶縁層の上面の位置と接地層の上面の位置との間の差を小さくすることができる。それにより、第2の絶縁層の上面に、接地層の有無に起因する段差がほとんど形成されない。したがって、上部配線パターンを直線状に形成することができるので、上部配線パターンの配線長が長くなることを抑制することができる。これらの結果、高い周波数帯域において上部配線パターンを伝送する電気信号の損失が低減される。
【0031】
(8)第4の発明に係る配線回路基板の製造方法は、導電性材料により形成される支持基板上の複数の第1の領域に支持基板よりも高い電気伝導率を有する接地層を形成するステップと、支持基板上の複数の第1の領域とは異なる複数の第2の領域に第1の絶縁層を形成するステップと、接地層および第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成するステップと、支持基板の第1および第2の領域に重なるように第2の絶縁層上に第1の方向に延びる上部配線パターンを形成するステップとを含み、複数の第1の領域と複数の第2の領域とは、第1の方向に交互に並ぶ。
【0032】
その製造方法により得られる配線回路基板においては、上部配線パターンの少なくとも一部と支持基板との間に接地層が位置するので、上部配線パターンから支持基板に向かって放射される電磁波の多くが支持基板に到達することなく接地層により遮断される。また、上部配線パターンを伝送する電気信号の損失は、上部配線パターンの線路長が小さいほど小さい。上記の構成によれば、積層方向における第1の絶縁層の上面の位置と接地層の上面の位置との間の差を小さくすることができる。それにより、第2の絶縁層の上面に、接地層の有無に起因する段差がほとんど形成されない。したがって、上部配線パターンを直線状に形成することができるので、上部配線パターンの配線長が長くなることを抑制することができる。これらの結果、高い周波数帯域において上部配線パターンを伝送する電気信号の損失が低減される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、高い周波数帯域において電気信号の損失が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1の実施の形態に係るサスペンション基板の平面図である。
図2】(a)は図1のサスペンション基板のうち一点鎖線で取り囲まれる部分の拡大平面図であり、(b)は(a)のA1-A1線断面図であり、(c)は(a)のB1-B1線断面図である。
図3】(a)は図2(a)のC1-C1線断面図であり、(b)は図2(a)のD1-D1線断面図である。
図4】(a)は参考形態に係るサスペンション基板の一部拡大平面図であり、(b)は(a)のA0-A0線断面図であり、(c)は(a)のB0-B0線断面図である。
図5】(a)は図4(a)のC0-C0線断面図であり、(b)は図4(a)のD0-D0線断面図である。
図6図1のサスペンション基板の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図7図1のサスペンション基板の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図8図1のサスペンション基板の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図9図1のサスペンション基板の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図10図1のサスペンション基板の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図11図1のサスペンション基板の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図12】(a)は第2の実施の形態に係るサスペンション基板の一部拡大平面図であり、(b)は(a)のA2-A2線断面図であり、(c)は(a)のB2-B2線断面図である。
図13】(a)は図12(a)のC2-C2線断面図であり、(b)は図12(a)のD2-D2線断面図である。
図14】第2の実施の形態に係るサスペンション基板の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図15】第2の実施の形態に係るサスペンション基板の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図16】第2の実施の形態に係るサスペンション基板の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図17】第2の実施の形態に係るサスペンション基板の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図18】第2の実施の形態に係るサスペンション基板の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図19】第2の実施の形態に係るサスペンション基板の製造方法を示す模式的工程断面図である。
図20】(a)は第3の実施の形態に係るサスペンション基板の一部拡大平面図であり、(b)は(a)のA3-A3線断面図であり、(c)は(a)のB3-B3線断面図である。
図21】(a)は図20(a)のC3-C3線断面図であり、(b)は図20(a)のD3-D3線断面図である。
図22】(a)は実施例に係るサスペンション基板の平面図であり、(b)は(a)のE1-E1線断面図である。
図23】(a)は図22(a)のF1-F1線断面図であり、(b)は図22(a)のG1-G1線断面図である。
図24】(a)は比較例に係るサスペンション基板の平面図であり、(b)は(a)のE0-E0線断面図である。
図25】(a)は図24(a)のF0-F0線断面図であり、(b)は図24(a)のG0-G0線断面図である。
図26】実施例および比較例のサスペンション基板についてのシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。本発明の一実施の形態に係る配線回路基板として、ハードディスクドライブ装置のアクチュエータに用いられる回路付サスペンション基板(以下、サスペンション基板と略記する)について説明する。
【0036】
[1]第1の実施の形態
(1)サスペンション基板の構造
図1は、第1の実施の形態に係るサスペンション基板の平面図である。図1において、矢印が向かう方向を前方と呼び、その逆方向を後方と呼ぶ。図1に示すように、サスペンション基板1は、サスペンション本体部として例えばステンレス鋼からなる支持基板10を備える。図1においては、支持基板10は、略前後方向に延びている。
【0037】
サスペンション基板1は、長尺状の支持プレート90により支持される。図1に点線で示すように、サスペンション基板1には、書込用配線パターンW1,W2、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP1,P2が形成されている。書込用配線パターンW1,W2および読取用配線パターンR1,R2は、高い周波数帯域を有する電気信号を伝送させるための高周波線路である。電源用配線パターンP1,P2は、書込用配線パターンW1,W2および読取用配線パターンR1,R2を伝送する電気信号よりも低い周波数帯域を有する電気信号を伝送させるための低周波線路である。
【0038】
支持基板10の先端部には、U字状の開口部11を形成することにより磁気ヘッド搭載部(以下、タング部と呼ぶ。)12が設けられている。タング部12は、支持基板10に対して所定の角度をなすように一点鎖線Rの箇所で折り曲げ加工される。
【0039】
支持基板10の一端部におけるタング部12の上面には4個の接続端子21,22,23,24が形成されている。また、支持基板10が延びる方向(前後方向)における支持基板10の中央部近傍の両側部には、2個の接続端子25,26がそれぞれ形成されている。タング部12の上面に磁気ヘッドを有するヘッドスライダ(図示せず)が実装される。タング部12の接続端子21~24には、ヘッドスライダの磁気ヘッドの端子が接続される。
【0040】
支持基板10の他端部の上面には6個の接続端子31,32,33,34,35,36が形成されている。接続端子31~34には、プリアンプ等の電子回路が接続される。接続端子35,36には、後述する圧電素子95,96用の電源回路が接続される。接続端子21~26と接続端子31~36とは、それぞれ書込用配線パターンW1,W2、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP1,P2により電気的に接続されている。また、支持基板10の中央部には複数の孔部Hが形成されている。
【0041】
支持プレート90は、前端領域91、後端領域92および中央領域93を有する。後端領域92は矩形状を有する。前端領域91は台形状を有し、その幅は後方から前方に向かって漸次減少する。中央領域93は前後方向に延びる矩形状を有し、前端領域91と後端領域92との間に配置される。サスペンション基板1が支持プレート90の上面に支持された状態において、接続端子31~36を含むサスペンション基板1の端部は、後端領域92から後方に突出する。
【0042】
中央領域93の一部分には、圧電素子実装領域94が設けられる。圧電素子実装領域94は、サスペンション基板1の接続端子25,26と重なる。圧電素子実装領域94の両側部は、外方に湾曲するように突出する。また、圧電素子実装領域94には、幅方向(前後方向に直交する方向)に延びる貫通孔94hが形成される。この構成によれば、支持プレート90の圧電素子実装領域94の部分は、前後方向に伸縮性を有する。
【0043】
貫通孔94hをまたぐように圧電素子実装領域94の下面に圧電素子95,96が実装される。圧電素子95,96は、サスペンション基板1の両側方にそれぞれ位置する。圧電素子95,96は、貫通孔94hを通してサスペンション基板1の接続端子25,26にそれぞれ接続される。
【0044】
接続端子25,35および電源用配線パターンP1を介して圧電素子95に電圧が印加され、接続端子26,36および電源用配線パターンP2を介して圧電素子96に電圧が印加される。これにより、圧電素子95,96の伸縮に伴って、支持プレート90が前後方向に伸縮する。圧電素子95,96に印加される電圧を制御することにより、サスペンション基板1上のヘッドスライダの磁気ヘッドの微小な位置合わせが可能になる。
【0045】
支持プレート90に支持されたサスペンション基板1はハードディスク装置に設けられる。磁気ディスクへの情報の書込み時に一対の書込用配線パターンW1,W2に電流が流れる。書込用配線パターンW1と書込用配線パターンW2とは、差動の書込み信号を伝送させる差動信号線路対を構成する。また、磁気ディスクからの情報の読取り時に一対の読取用配線パターンR1,R2に電流が流れる。読取用配線パターンR1と読取用配線パターンR2とは、差動の読取り信号を伝送させる差動信号線路対を構成する。
【0046】
(2)書込用配線パターンおよび電源用配線パターン
図2(a)は図1のサスペンション基板1のうち一点鎖線で取り囲まれる部分Qの拡大平面図であり、図2(b)は図2(a)のA1-A1線断面図であり、図2(c)は図2(a)のB1-B1線断面図である。また、図3(a)は図2(a)のC1-C1線断面図であり、図3(b)は図2(a)のD1-D1線断面図である。図2(a)に示すように、図1の部分Qでは、書込用配線パターンW1,W2および電源用配線パターンP1がそれぞれ前後方向に延びる。また、書込用配線パターンW1,W2および電源用配線パターンP1が前後方向に直交する方向に並ぶ。
【0047】
図3(a),(b)に示すように、支持基板10上に例えばポリイミドからなる第1の絶縁層41が形成されている。支持基板10は導電性を有し、例えばステンレス鋼からなる。第1の絶縁層41は、第1の部分41Aおよび第2の部分41Bを含む。第2の部分41Bは第1の部分41Aよりも小さい厚みを有する。
【0048】
第1の絶縁層41の第2の部分41B上に、支持基板10よりも高い電気伝導率を有する接地層50が形成されている。接地層50は、支持基板10に電気的に接続される。接地層50と支持基板10との電気的な接続は、例えば第1の絶縁層41に形成されるビアまたは配線等を用いて実現される。
【0049】
接地層50の材料としては、例えば銅が用いられる。上記のように支持基板10がステンレス鋼からなる場合には、金または銀を接地層50の材料として用いてもよい。あるいは、金、銀および銅のいずれかを含みかつステンレス鋼よりも高い電気伝導率を有する合金を接地層50の材料として用いてもよい。なお、接地層50は、多層構造を有してもよい。例えば、接地層50は、支持基板10がステンレス鋼からなる場合に、銅層上にニッケル層または銀層が積層された2層構造を有してもよいし、銅層上にニッケル層および金層が積層された3層構造を有してもよい。接地層50が銅層を含む多層構造を有する場合には、銅層の表面を被覆するように、銅層の上面上および側面上にニッケル層、銀層または金層等の他の金属層が形成されてもよい。
【0050】
第1の絶縁層41の第1の部分41A上に電源用配線パターンP1が形成されている。電源用配線パターンP1の材料としては、例えば銅が用いられる。なお、電源用配線パターンP1の表面は、ニッケル層または銀層等で被覆されてもよい。
【0051】
接地層50および電源用配線パターンP1を覆うように、第1の絶縁層41上に、例えばポリイミドからなる第2の絶縁層42が形成されている。
【0052】
図2(b)に示すように、図2(a)のA1-A1線における支持基板10上では、第1の絶縁層41の複数の第1の部分41Aおよび複数の第2の部分41Bが前後方向に交互に並ぶ。第1の絶縁層41の複数の第1の部分41Aおよび複数の第2の部分41Bに重なるように、第2の絶縁層42上に書込用配線パターンW1が形成されている。書込用配線パターンW1と同様に、第1の絶縁層41の複数の第1の部分41Aおよび複数の第2の部分41Bに重なるように、第2の絶縁層42上に書込用配線パターンW2が形成されている。
【0053】
本例では、第1の絶縁層41の第2の部分41B上に接地層50が形成されている。それにより、書込用配線パターンW1,W2のうち第1の絶縁層41の第2の部分41Bに重なる部分は接地層50にも重なる。
【0054】
書込用配線パターンW1,W2の材料としては、例えば銅が用いられる。なお、書込用配線パターンW1,W2の表面は、ニッケル層または銀層等で被覆されてもよい。書込用配線パターンW1,W2を覆うように、第2の絶縁層42上に、例えばポリイミドからなる第3の絶縁層60が形成されている。
【0055】
図2(a)では、図2(b),(c)および図3(a),(b)の第1の絶縁層41、第2の絶縁層42および第3の絶縁層60の図示を省略している。また、図2(a)では、書込用配線パターンW1,W2を太い実線およびハッチングで示し、電源用配線パターンP1を太い一点鎖線およびハッチングで示し、接地層50を実線およびドットパターンで示す。さらに、支持基板10を二点鎖線で示す。
【0056】
高い周波数帯域を有する電気信号が書込用配線パターンW1,W2を伝送する場合、書込用配線パターンW1,W2から電磁波が発生する。発生する電磁波が支持基板10または接地層50に入射すると、支持基板10に渦電流が発生し、書込用配線パターンW1,W2と支持基板10または接地層50とが電磁的に結合する。書込用配線パターンW1,W2を伝送する電気信号には、支持基板10または接地層50に発生する渦電流の大きさに応じた損失が生じる。電気信号の損失は、発生する渦電流が大きいほど大きく、発生する渦電流が小さいほど小さい。
【0057】
ある導体に電磁波が与えられることによりその導体に発生する渦電流は、その導体の電気伝導率が低いほど大きく、その導体の電気伝導率が高いほど小さい。接地層50は、支持基板10に比べて高い電気伝導率を有する。そのため、電磁波により接地層50に発生する渦電流は、電磁波により支持基板10に発生する渦電流よりも小さい。
【0058】
上記の構成によれば、書込用配線パターンW1,W2の少なくとも一部と支持基板10との間に接地層50が位置するので、書込用配線パターンW1,W2から支持基板10に向かって放射される電磁波の少なくとも一部は、接地層50に入射し、支持基板10に到達しない。それにより、高い周波数帯域において書込用配線パターンW1,W2を伝送する電気信号の損失が低減される。
【0059】
書込用配線パターンW1,W2の特性インピーダンスの値は、書込用配線パターンW1,W2と支持基板10および接地層50とが重なる部分の面積に応じて定まる。例えば、書込用配線パターンW1の特性インピーダンスの値は、書込用配線パターンW1の一部と支持基板10および接地層50とが重なる場合に比べて、書込用配線パターンW1全体と支持基板10および接地層50とが重なる場合の方が大きくなる。また、その特性インピーダンスの値は、書込用配線パターンW1と支持基板10および接地層50とが重ならない場合に比べて、書込用配線パターンW1の一部と支持基板10および接地層50とが重なる場合の方が大きくなる。
【0060】
そこで、本実施の形態では、各書込用配線パターンW1,W2の特性インピーダンスの値が所望の値に近づくように、書込用配線パターンW1,W2と支持基板10および接地層50とが重なる部分の面積が調整される。具体的には、図2(a),(b)および図3(b)に示すように、予め設定されるインピーダンスに応じて、書込用配線パターンW1,W2に重なる複数の第1の開口部19が支持基板10に形成される。また、複数の第1の開口部19にそれぞれ重なる複数の第2の開口部59が接地層50に形成される。
【0061】
複数の第1の開口部19および複数の第2の開口部59は、基本的に書込用配線パターンW1,W2が延びる方向に並ぶように間欠的に形成される。それにより、書込用配線パターンW1,W2の特性インピーダンスの均一性を向上させることができる。なお、設定されるインピーダンスによっては、複数の第1の開口部19は、支持基板10に形成されなくてもよい。
【0062】
以下の説明においては、支持基板10、第1の絶縁層41および第2の絶縁層42が積層される方向を基板積層方向と呼ぶ。図2(a)に示すように、互いに重なり合う第1の開口部19および第2の開口部59は、サスペンション基板1を基板積層方向に沿って見た場合に第1の開口部19の内縁が第2の開口部59の内縁を取り囲むように形成される。この構成によれば、書込用配線パターンW1,W2から第2の開口部59に向かって放射される電磁波が、第2の開口部59を通過した後、支持基板10の第1の開口部19の内縁に入射することが低減される。それにより、支持基板10における渦電流の発生が低減される。
【0063】
図3(a),(b)に示すように、上記のサスペンション基板1においては、接地層50が第1の絶縁層41のうち厚みの小さい第2の部分41B上に形成されている。この場合、基板積層方向において、接地層50の上面の位置(高さ)と第1の絶縁層41の第1の部分41Aの上面の位置(高さ)との間の差が小さい。それにより、第2の絶縁層42の上面に、接地層50の有無に起因する段差がほとんど形成されない。そのため、図2(b)に示すように、書込用配線パターンW1,W2は、ほぼ平坦な第2の絶縁層42の上面上で直線状に形成される。
【0064】
ここで、参考形態に係るサスペンション基板について、図1のサスペンション基板1と異なる点を説明する。図4(a)は参考形態に係るサスペンション基板の一部拡大平面図であり、図4(b)は図4(a)のA0-A0線断面図であり、図4(c)は図4(a)のB0-B0線断面図である。また、図5(a)は図4(a)のC0-C0線断面図であり、図5(b)は図4(a)のD0-D0線断面図である。図4(a)の平面図ならびに図4(b),(c)および図5(a),(b)の断面図は、図2(a)の平面図ならびに図2(b),(c)および図3(a),(b)の断面図に対応する。
【0065】
参考形態に係るサスペンション基板においては、図4(b),(c)および図5(a),(b)に示すように、支持基板10上に形成される第1の絶縁層41が一定の厚みを有する。第1の絶縁層41の上面上に、電源用配線パターンP1とともに接地層50が形成されている。この場合、基板積層方向において、接地層50の上面の位置(高さ)と第1の絶縁層41の第1の部分41Aの上面の位置(高さ)との間に、接地層50の厚みとほぼ同じ大きさの差が生じる。それにより、第2の絶縁層42の上面に、接地層50の有無に起因する段差が形成される。そのため、図4(b)に示すように、書込用配線パターンW1,W2は、複数の段差を乗り越すように第2の絶縁層42の上面上で波線状に形成される。
【0066】
高い周波数帯域を有する電気信号が書込用配線パターンW1,W2を伝送する場合、書込用配線パターンW1,W2を伝送する電気信号には、書込用配線パターンW1,W2の線路長に応じた損失が生じる。電気信号の損失は、書込用配線パターンW1,W2の線路長が大きいほど大きく、書込用配線パターンW1,W2の線路長が小さいほど小さい。上記のように、参考形態に係るサスペンション基板においては、書込用配線パターンW1,W2が波線状に形成される。これに対して、本実施の形態に係るサスペンション基板1においては、書込用配線パターンW1,W2がほぼ直線状に形成される。それにより、本実施の形態に係る書込用配線パターンW1,W2は、波線状の書込用配線パターンW1,W2(図4(b))に比べて線路長が短い。このように、書込用配線パターンW1,W2の配線長が長くなることを抑制することができるので、高い周波数帯域において書込用配線パターンW1,W2を伝送する電気信号の損失が低減される。本実施の形態においては、配線長は、伝送線路の中心軸を通る線の長さを意味する。
【0067】
なお、図1の読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP2ならびにそれらの近傍の構成は、図2(a)~(c)および図3(a),(b)の書込用配線パターンW1,W2および電源用配線パターンP1の構成およびそれらの近傍の構成と基本的に同じである。
【0068】
(3)サスペンション基板の製造方法
サスペンション基板1の製造方法について説明する。図6図11は、図1のサスペンション基板1の製造方法を示す模式的工程断面図である。図6図11の各図においては、(a)が図2(a)のC1-C1線断面図に対応し、(b)が図2(a)のD1-D1線断面図に対応する。ここでは、図1のタング部12、複数の接続端子21~26,31~36、複数の孔部H、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP2の形成工程についての説明は省略する。
【0069】
初めに、ステンレス鋼からなる長尺状基板を支持基板10として用意する。続いて、図6(a),(b)に示すように、支持基板10上にポリイミドからなる第1の絶縁層41を形成する。支持基板10の厚みは、例えば8μm以上100μm以下である。第1の絶縁層41の厚みは、例えば1μm以上25μm以下である。
【0070】
次に、図7(a),(b)に示すように、第1の絶縁層41の上面の予め定められた領域に凹部41Cを形成する。凹部41Cの深さは、例えば1μm以上24μm以下である。第1の絶縁層41のうち凹部41Cが形成されない部分が上記の第1の部分41Aとなり、第1の絶縁層41のうち凹部41Cが形成される部分が上記の第2の部分41Bとなる。
【0071】
ここで、凹部41Cは、例えば第1の絶縁層41の形成時に階調露光技術を用いて形成する。または、凹部41Cは、一定の厚みで形成された第1の絶縁層41の一部をエッチングすることにより形成してもよいし、一定の厚みで形成された第1の絶縁層41の一部をレーザ加工することにより形成してもよい。
【0072】
次に、図8(a),(b)に示すように、第1の絶縁層41の第2の部分41B上に、銅からなる接地層50を形成する。また、接地層50の形成と同時に、第1の部分41Aの予め定められた領域上に銅からなる電源用配線パターンP1を形成する。このとき、図8(b)に示すように、接地層50には、図2(a)の複数の第2の開口部59が形成される。接地層50および電源用配線パターンP1の厚みは、例えば1μm以上20μm以下である。
【0073】
なお、接地層50の形成時には、例えば第1の絶縁層41内にビア(図示せず)等を形成することにより、接地層50と支持基板10とを電気的に接続してもよい。
【0074】
次に、図9(a),(b)に示すように、接地層50および電源用配線パターンP1を覆うように、第1の絶縁層41上にポリイミドからなる第2の絶縁層42を形成する。第2の絶縁層42の厚みは、例えば1μm以上25μm以下である。
【0075】
次に、図10(a),(b)に示すように、第1の絶縁層41の第1の部分41Aおよび第2の部分41Bに重なるように、第2の絶縁層42上に銅からなる書込用配線パターンW1,W2を形成する。
【0076】
書込用配線パターンW1,W2の厚みは、例えば1μm以上20μm以下である。書込用配線パターンW1,W2の幅は、例えば6μm以上100μm以下である。また、書込用配線パターンW1,W2の間隔は、例えば6μm以上100μm以下である。
【0077】
次に、図11(a),(b)に示すように、書込用配線パターンW1,W2を覆うように、第2の絶縁層42上にポリイミドからなる第3の絶縁層60を形成する。第3の絶縁層60は、書込用配線パターンW1,W2を保護するために用いられる。第3の絶縁層60の厚みは、例えば2μm以上25μm以下である。
【0078】
最後に、支持基板10の外縁を設計寸法に応じて加工するとともに、支持基板10の予め定められた複数の部分に複数の第1の開口部19を形成する。それにより、図3(a),(c)の構成を有するサスペンション基板1が完成する。
【0079】
(4)効果
本実施の形態に係るサスペンション基板1においては、書込用配線パターンW1,W2の少なくとも一部と支持基板10との間に接地層50が位置するので、書込用配線パターンW1,W2から支持基板10に向かって放射される電磁波の少なくとも一部は、接地層50により遮断される。それにより、支持基板10における渦電流の発生が低減される。
【0080】
また、書込用配線パターンW1,W2を伝送する電気信号の損失は、書込用配線パターンW1,W2の線路長が小さいほど小さい。上記の構成によれば、基板積層方向における接地層50の上面の位置(高さ)と第1の絶縁層41の第1の部分41Aの上面の位置(高さ)との間の差を小さくすることができる。それにより、第2の絶縁層42の上面に、接地層50の有無に起因する段差がほとんど形成されない。したがって、書込用配線パターンW1,W2を直線状に形成することができるので、書込用配線パターンW1,W2の配線長が長くなることを抑制することができる。
【0081】
これらの結果、高い周波数帯域において書込用配線パターンW1,W2を伝送する電気信号の損失が低減される。
【0082】
[2]第2の実施の形態
第2の実施の形態に係るサスペンション基板について、第1の実施の形態に係るサスペンション基板1とは異なる点を説明する。図12(a)は第2の実施の形態に係るサスペンション基板の一部拡大平面図であり、図12(b)は図12(a)のA2-A2線断面図であり、図12(c)は図12(a)のB2-B2線断面図である。また、図13(a)は図12(a)のC2-C2線断面図であり、図13(b)は図12(a)のD2-D2線断面図である。図12(a)の平面図ならびに図12(b),(c)および図13(a),(b)の断面図は、図2(a)の平面図ならびに図2(b),(c)および図3(a),(b)の断面図に対応する。図12(a)においては、図2(a)の例と同様に、サスペンション基板1の複数の構成要素のうち一部の構成要素を互いに異なる態様で示すとともに、他の構成要素の図示を省略している。
【0083】
本実施の形態に係るサスペンション基板1においては、図13(a),(b)に示すように、支持基板10の上面の一部領域(後述する第1の領域10A)上に接地層50が形成されている。それにより、支持基板10の一部の領域では、支持基板10の上面と接地層50の下面とが接触している。また、支持基板10の接地層50が形成されない領域(後述する第2の領域10B)上に第1の絶縁層41が形成されている。
【0084】
接地層50上および第1の絶縁層41上に第2の絶縁層42が形成されている。接地層50および第1の絶縁層41に重なるように、第2の絶縁層42上に書込用配線パターンW1,W2が形成されている。
【0085】
上記の構成においても、書込用配線パターンW1,W2の少なくとも一部と支持基板10との間に接地層50が位置するので、書込用配線パターンW1,W2から支持基板10に向かって放射される電磁波の少なくとも一部は、接地層50に入射し、支持基板10に到達しない。それにより、高い周波数帯域において書込用配線パターンW1,W2を伝送する電気信号の損失が低減される。
【0086】
接地層50の厚みおよび第1の絶縁層41の厚みは、ほぼ等しくなるように設定される。この場合、基板積層方向において、接地層50の上面の位置(高さ)と第1の絶縁層41の第1の部分41Aの上面の位置(高さ)との間の差が小さい。それにより、第2の絶縁層42の上面に、接地層50の有無に起因する段差がほとんど形成されない。そのため、第1の実施の形態に係るサスペンション基板1と同様に、書込用配線パターンW1,W2は、ほぼ平坦な第2の絶縁層42の上面上で直線状に形成される。したがって、書込用配線パターンW1,W2の配線長が長くなることを抑制することができるので、高い周波数帯域において書込用配線パターンW1,W2を伝送する電気信号の損失が低減される。
【0087】
本実施の形態では、図12(a)に示すように、互いに重なり合う第1の開口部19および第2の開口部59は、サスペンション基板1を基板積層方向に沿って見た場合に第2の開口部59の内縁が第1の開口部19の内縁を取り囲むように形成される。この構成によれば、接地層50の各第2の開口部59の内縁が第2の絶縁層42により被覆される。それにより、接地層50の各第2の開口部59の内縁が第2の絶縁層42と支持基板10との間からサスペンション基板1の外部に露出しない。したがって、接地層50が各第2の開口部59の内縁から腐食することが防止される。
【0088】
第2の実施の形態に係るサスペンション基板1の製造方法について説明する。図14図19は、第2の実施の形態に係るサスペンション基板1の製造方法を示す模式的工程断面図である。図14図19の各図においては、(a)が図12(a)のC2-C2線断面図に対応し、(b)が図12(a)のD2-D2線断面図に対応する。ここでは、図1のタング部12、複数の接続端子21~26,31~36、複数の孔部H、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP2の形成工程についての説明は省略する。
【0089】
第1の実施の形態と同様に、まずステンレス鋼からなる長尺状基板を支持基板10として用意する。ここで、図14(a),(b)に示すように、本実施の形態では、支持基板10の上面に、図13(a),(b)の接地層50を形成することになる第1の領域10Aと、接地層50が形成されない第2の領域10Bとが予め定められる。
【0090】
続いて、支持基板10上にポリイミドからなる第1の絶縁層41を形成した後、図15(a),(b)に示すように、支持基板10の上面の第1の領域10Aが上方に露出するように開口41Dを形成する。開口41Dは、例えば第1の絶縁層41の形成時に階調露光技術を用いて形成する。または、開口41Dは、第1の絶縁層41の一部をエッチングすることにより形成してもよいし、第1の絶縁層41の一部をレーザ加工することにより形成してもよい。
【0091】
次に、図16(a),(b)に示すように、上方に露出する支持基板10の第1の領域10A上に接地層50を形成する。また、接地層50の形成と同時に、支持基板10の第2の領域10Bに重なる第1の絶縁層41の予め定められた領域上に電源用配線パターンP1を形成する。このとき、図16(b)に示すように、接地層50には、図12(a)の複数の第2の開口部59が形成される。
【0092】
次に、図17(a),(b)に示すように、電源用配線パターンP1を覆うように、接地層50および第1の絶縁層41上にポリイミドからなる第2の絶縁層42を形成する。
【0093】
次に、図18(a),(b)に示すように、支持基板10の第1の領域10Aおよび第2の領域10Bに重なるように、第2の絶縁層42上に銅からなる書込用配線パターンW1,W2を形成する。
【0094】
次に、図19(a),(b)に示すように、書込用配線パターンW1,W2を覆うように、第2の絶縁層42上にポリイミドからなる第3の絶縁層60を形成する。
【0095】
最後に、支持基板10の外縁を設計寸法に応じて加工するとともに、支持基板10の予め定められた複数の部分に複数の第1の開口部19を形成する。それにより、図13(a),(b)の構造を有するサスペンション基板1が完成する。
【0096】
[3]第3の実施の形態
第3の実施の形態に係るサスペンション基板について、第2の実施の形態に係るサスペンション基板1とは異なる点を説明する。図20(a)は第3の実施の形態に係るサスペンション基板の一部拡大平面図であり、図20(b)は図20(a)のA3-A3線断面図であり、図20(c)は図20(a)のB3-B3線断面図である。また、図21(a)は図20(a)のC3-C3線断面図であり、図21(b)は図20(a)のD3-D3線断面図である。図20(a)の平面図ならびに図20(b),(c)および図21(a),(b)の断面図は、図12(a)の平面図ならびに図12(b),(c)および図13(a),(b)の断面図に対応する。図20(a)においては、図12(a)の例と同様に、サスペンション基板1の複数の構成要素のうち一部の構成要素を互いに異なる態様で示すとともに、他の構成要素の図示を省略している。
【0097】
図20(a),(b)および図21(b)に示すように、本実施の形態に係るサスペンション基板1を基板積層方向に沿って見た場合、接地層50の各第2の開口部59の内縁と支持基板10の各第1の開口部19の内縁とが互いに重なる。この構成においては、接地層50として金等の耐食性に優れた材料を用いることにより、各第2の開口部59の内縁からの接地層50の腐食が防止される。
【0098】
上記のように、第2の実施の形態に係るサスペンション基板1の製造方法においては、支持基板10上に接地層50を形成する際に、複数の第2の開口部59が形成される(図16(b)参照)。これに対して、本実施の形態に係るサスペンション基板の製造方法では、支持基板10上に接地層50を形成する工程で複数の第2の開口部59を形成しない。図19(b)に示される第3の絶縁層60の形成工程の後、支持基板10に複数の第1の開口部19を形成する工程で、複数の第1の開口部19を形成するとともに接地層50に複数の第2の開口部59を形成する。
【0099】
本実施の形態に係るサスペンション基板においても、基板積層方向において、接地層50の上面の位置(高さ)と第1の絶縁層41の第1の部分41Aの上面の位置(高さ)との間の差が小さい。それにより、第2の絶縁層42の上面に、接地層50の有無に起因する段差がほとんど形成されない。そのため、第2の実施の形態に係るサスペンション基板1と同様に、書込用配線パターンW1,W2は、ほぼ平坦な第2の絶縁層42の上面上で直線状に形成される。したがって、書込用配線パターンW1,W2の配線長が長くなることを抑制することができる。
【0100】
[4]他の実施の形態
上記実施の形態では、電源用配線パターンP1,P2は低い周波数帯域を有する電気信号を伝送させるための低周波線路であるが、本発明はこれに限定されない。電源用配線パターンP1,P2を伝送する電気信号の損失がある程度許容される場合には、電源用配線パターンP1,P2に高い周波数帯域を有する電気信号を伝送させてもよい。すなわち、電源用配線パターンP1,P2を高周波線路として用いてもよい。
【0101】
[5]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0102】
上記実施の形態においては、支持基板10が支持基板の例であり、第1の部分41Aが第1の部分の例であり、第2の部分41Bが第2の部分の例であり、第1の絶縁層41が第1の絶縁層の例であり、接地層50が接地層の例であり、第2の絶縁層42が第2の絶縁層の例であり、書込用配線パターンW1,W2が上部配線パターンの例であり、サスペンション基板1が配線回路基板の例である。
【0103】
また、第1の開口部19が第1の開口部の例であり、第2の開口部59が第2の開口部の例であり、第1の領域10Aが第1の領域の例であり、第2の領域10Bが第2の領域の例であり、電源用配線パターンP1が下部配線パターンの例であり、第3の絶縁層60が第3の絶縁層の例である。
【0104】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0105】
[6]実施例および比較例
実施例および比較例として、以下のサスペンション基板を想定する。図22(a)は実施例に係るサスペンション基板の平面図であり、図22(b)は図22(a)のE1-E1線断面図である。また、図23(a)は図22(a)のF1-F1線断面図であり、図23(b)は図22(a)のG1-G1線断面図である。
【0106】
図22(a)に示すように、実施例のサスペンション基板は、一方向に延びる配線パターンL10および接地層50を備える。配線パターンL10は、2つの線路L11,L12を含む。線路L11,L12により差動信号線路対が構成される。接地層50は、一方向に帯状に延びるように形成される。また、接地層50は、一方向に一定周期で並ぶ複数の開口部58を有する。
【0107】
図23(a),(b)に示すように、ステンレス鋼からなる支持基板10上にポリイミドからなる第1の絶縁層41が形成される。第1の絶縁層41は、厚みが異なる第1の部分41Aおよび第2の部分41Bを含む。第2の部分41Bの厚みは、第1の部分41Aの厚みよりも小さい。第1の絶縁層41の第2の部分41B上に銅からなる接地層50が形成される。接地層50を覆うように、第1の絶縁層41上にポリイミドからなる第2の絶縁層42が形成される。第2の絶縁層42上に、銅からなる配線パターンL10が形成される。
【0108】
図22(a)では、図22(b)および図23(a),(b)の第1の絶縁層41および第2の絶縁層42の図示を省略している。また、図22(a)では、配線パターンL10を太い実線およびハッチングで示し、接地層50を実線およびドットパターンで示す。さらに、支持基板10を二点鎖線で示す。
【0109】
実施例のサスペンション基板では、基板積層方向において、接地層50の上面の位置(高さ)と第1の絶縁層41の第1の部分41Aの上面の位置(高さ)との間の差が小さい。それにより、第2の絶縁層42の上面に、接地層50の有無に起因する段差がほとんど形成されない。さらに、実施例のサスペンション基板では、第2の絶縁層42の上面が平坦になるように、第2の絶縁層42の厚みが複数の部分で調整されている。その結果、図22(b)に示すように、配線パターンL10の各線路L11,L12は直線状に延びる。
【0110】
実施例のサスペンション基板においては、配線パターンL10が延びる方向における線路L11,L12の各々の長さを20mmとした。また、線路L11,L12の各々の幅d11および厚みd12をそれぞれ100μmおよび8μmとし、線路L11,L12の間隔d13を30μmとした。また、接地層50の厚みd14を5μmとした。また、支持基板10の厚みd21を18μmとし、第1の絶縁層41の第1の部分41Aの厚みd22aを5μmとし、第1の絶縁層41の第2の部分41Bの厚みd22bを1.5μmとした。また、第1の絶縁層41の第1の部分41Aに重なる第2の絶縁層42の部分の厚みd23aを7.5μmとし、第1の絶縁層41の第2の部分41Bに重なる第2の絶縁層42の部分の厚みd23bを6μmとした。さらに、配線パターンL10が延びる方向において、配線パターンL10に重なる各開口部58の寸法d01と、隣り合う各2つの開口部58の間の寸法d02とをそれぞれ500μmおよび500μmとした。
【0111】
図24(a)は比較例に係るサスペンション基板の平面図であり、図24(b)は図24(a)のE0-E0線断面図である。また、図25(a)は図24(a)のF0-F0線断面図であり、図25(b)は図24(a)のG0-G0線断面図である。図24(a)では、図22(a)の例と同様に、サスペンション基板の複数の構成要素のうち一部の構成要素を互いに異なる態様で示すとともに、他の構成要素の図示を省略している。比較例のサスペンション基板は、以下の点を除いて実施例のサスペンション基板と同じ構成を有する。
【0112】
図24(b)および図25(a),(b)に示すように、比較例のサスペンション基板においては、第1の絶縁層41が支持基板10の上面全体を覆うように一定の厚みで形成される。接地層50は、第1の絶縁層41上に形成される。
【0113】
比較例のサスペンション基板では、基板積層方向において、接地層50の上面の位置(高さ)と第1の絶縁層41の上面の位置(高さ)との間の差が大きい。それにより、第2の絶縁層42の上面に、接地層50の有無に起因する段差が形成されている。その結果、図24(b)に示すように、配線パターンL10の各線路L11,L12は、波線状に延びる。
【0114】
比較例のサスペンション基板においては、配線パターンL10が延びる方向における線路L11,L12の各々の長さを20mmとした。また、線路L11,L12の各々の幅d11および厚みd12をそれぞれ100μmおよび8μmとし、線路L11,L12の間隔d13を30μmとした。また、接地層50の厚みd14を5μmとした。また、支持基板10の厚みd21を18μmとし、第1の絶縁層41の厚みd22を5μmとし、第2の絶縁層42の厚みd23を6μmとした。さらに、配線パターンL10が延びる方向において、配線パターンL10に重なる各開口部58の寸法d01と、隣り合う各2つの開口部58の間の寸法d02とをそれぞれ500μmおよび500μmとした。
【0115】
実施例および比較例のサスペンション基板の各部の寸法が下記表1に示される。
【0116】
【表1】

実施例および比較例のサスペンション基板の配線パターンL10を電気信号が伝送するときの透過特性を表すSパラメータSdd21をシミュレーションにより求めた。SパラメータSdd21は、差動モード入力および差動モード出力での減衰量を示す。
【0117】
図26は、実施例および比較例のサスペンション基板についてのシミュレーション結果を示す図である。図26においては、縦軸はSパラメータSdd21[dB]を表し、横軸は電気信号の周波数[GHz]を表す。また、図26においては、実施例についてのシミュレーション結果を太い実線で示す。比較例についてのシミュレーション結果を一点鎖線で示す。
【0118】
なお、図26においては、縦軸に示される負の利得は損失を示す。そのため、SパラメータSdd21の値が低いほど減衰量が大きいことを示し、SパラメータSdd21の値が0に近いほど減衰量が小さいことを示す。
【0119】
図26のシミュレーション結果によれば、0~20GHzの周波数帯域において、実施例のサスペンション基板を伝送する電気信号の減衰量は、比較例のサスペンション基板を伝送する電気信号の減衰量よりも小さい。これにより、基板積層方向において、接地層50の上面の位置(高さ)と第1の絶縁層41の上面の位置(高さ)との間の差を小さくすることにより、広い周波数帯域に渡って電気信号の減衰量を低減することが可能であることがわかった。
【0120】
[7]参考形態
(1)第1の参考形態に係る配線回路基板は、導電性材料により形成される支持基板と、支持基板上の第1の領域に形成されるとともに支持基板よりも高い電気伝導率を有する接地層と、支持基板上の第1の領域とは異なる第2の領域に形成される第1の絶縁層と、接地層および第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層と、支持基板の第1および第2の領域に重なるように第2の絶縁層上に形成される上部配線パターンとを備える。
【0121】
その配線回路基板においては、支持基板の第1の領域上に接地層が形成され、支持基板の第2の領域上に第1の絶縁層が形成される。また、接地層上および第1の絶縁層上に第2の絶縁層が形成される。さらに、第1の絶縁層の第1および第2の領域に重なるように第2の絶縁層上に上部配線パターンが形成される。この場合、上部配線パターンに電気信号を伝送させることができる。
【0122】
上記の構成によれば、上部配線パターンの少なくとも一部と支持基板との間に接地層が位置するので、上部配線パターンから支持基板に向かって放射される電磁波の少なくとも一部は、接地層に入射し、支持基板に到達しない。
【0123】
また、高い周波数帯域を有する電気信号が上部配線パターンを伝送する場合、上部配線パターンを伝送する電気信号には、上部配線パターンの線路長に応じた損失が生じる。電気信号の損失は、上部配線パターンの線路長が大きいほど大きく、上部配線パターンの線路長が小さいほど小さい。本参考形態に係る配線回路基板においては、支持基板の第1の領域上に接地層が形成され、第2の領域上に第1の絶縁層が形成される。それにより、支持基板、第1の絶縁層および第2の絶縁層の積層方向において、接地層の上面の位置と第1の絶縁層の上面の位置との間の差を小さくすることができる。それにより、接地層および第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層の上面に、接地層の有無に起因する段差がほとんど形成されない。そのため、第2の絶縁層上に上部配線パターンを直線状に形成することができる。したがって、上部配線パターンの配線長が長くなることを抑制することができる。
【0124】
これらの結果、高い周波数帯域において上部配線パターンを伝送する電気信号の損失が低減される。
【0125】
(2)上部配線パターンは第1の方向に延び、支持基板は、第1の領域を複数有するとともに、第2の領域を複数有し、複数の第1の領域と複数の第2の領域とは、第1の方向に交互に並んでもよい。
【0126】
この場合、上部配線パターンが第1の方向に間欠的に並ぶ複数の接地層の部分に重なる。それにより、上部配線パターンの特性インピーダンスの均一性を向上させることができる。
【0127】
(3)支持基板の第1の領域の少なくとも一部に第1の開口部が形成され、接地層には、第1の開口部に重なる第2の開口部が形成されてもよい。
【0128】
上部配線パターンの特性インピーダンスの値は、上部配線パターンと支持基板および接地層とが重なる部分の面積に応じて定まる。上記の構成によれば、支持基板および接地層に第1および第2の開口部が形成される。したがって、第1および第2の開口部の大きさおよび数を調整することにより、上部配線パターンの特性インピーダンスの値を容易に調整することができる。
【0129】
(4)配線回路基板は、第1の絶縁層上に形成される下部配線パターンをさらに備え、第2の絶縁層は、下部配線パターンを覆うように第1の絶縁層上に形成されてもよい。この場合、下部配線パターンおよび上部配線パターンの各々に電気信号を伝送させることができる。
【0130】
(5)支持基板はステンレスを含み、接地層は銅を含んでもよい。
【0131】
この場合、ステンレス鋼により、上部配線パターンを支持するために必要とされる支持基板の十分な剛性を確保することができる。また、ステンレス鋼の表面には不動態皮膜が形成される。それにより、腐食による支持基板の劣化が抑制される。銅はステンレス鋼に比べて高い電気伝導率を有する。それにより、電磁波により接地層に発生する渦電流を小さくすることができる。
【0132】
(6)配線回路基板は、上部配線パターンを覆うように第2の絶縁層上に形成される第3の絶縁層をさらに備えてもよい。この場合、上部配線パターンが第3の絶縁層により保護される。
【0133】
(7)第2の参考形態に係る配線回路基板の製造方法は、導電性材料により形成される支持基板上の第1の領域に支持基板よりも高い電気伝導率を有する接地層を形成するステップと、支持基板上の第1の領域とは異なる第2の領域に第1の絶縁層を形成するステップと、接地層および第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成するステップと、支持基板の第1および第2の領域に重なるように第2の絶縁層上に上部配線パターンを形成するステップとを含む。
【0134】
その製造方法により得られる配線回路基板においては、上部配線パターンの少なくとも一部と支持基板との間に接地層が位置するので、上部配線パターンから支持基板に向かって放射される電磁波の多くが支持基板に到達することなく接地層により遮断される。また、上部配線パターンを伝送する電気信号の損失は、上部配線パターンの線路長が小さいほど小さい。上記の構成によれば、積層方向における第1の絶縁層の上面の位置と接地層の上面の位置との間の差を小さくすることができる。それにより、第2の絶縁層の上面に、接地層の有無に起因する段差がほとんど形成されない。したがって、上部配線パターンを直線状に形成することができるので、上部配線パターンの配線長が長くなることを抑制することができる。これらの結果、高い周波数帯域において上部配線パターンを伝送する電気信号の損失が低減される。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は種々の配線回路基板に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0136】
1 サスペンション基板
10 支持基板
10A 第1の領域
10B 第2の領域
11,58 開口部
12 タング部
19 第1の開口部
21~26,31~36 接続端子
41 第1の絶縁層
41A 第1の部分
41B 第2の部分
41C 凹部
41D 開口
42 第2の絶縁層
50 接地層
59 第2の開口部
60 第3の絶縁層
90 支持プレート
91 前端領域
92 後端領域
93 中央領域
94 圧電素子実装領域
94h 貫通孔
95,96 圧電素子
d01,d02 寸法
d11 幅
d12,d14 厚み
d13 間隔
L10 配線パターン
L11,L12 線路
P1,P2 電源用配線パターン
R1,R2 読取用配線パターン
W1,W2 書込用配線パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図12
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図26