(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】高品質・高効率の有機炭素源の製造装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/65 20220101AFI20220208BHJP
C02F 11/10 20060101ALI20220208BHJP
C02F 11/127 20190101ALI20220208BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20220208BHJP
C02F 3/28 20060101ALI20220208BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20220208BHJP
【FI】
B09B3/00 C
C02F11/10 Z ZAB
C02F11/127
C02F11/00 Z
C02F3/28 A
C02F3/28 Z
B09B3/00 302E
(21)【出願番号】P 2020196888
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0142331
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520014176
【氏名又は名称】テギョン エスコ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEKYUNG ESCO CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1903, 32, Songdogwahak-ro, Yeonsu-gu, Incheon, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ハク-サン
(72)【発明者】
【氏名】オ,チャン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン-ウク
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-268379(JP,A)
【文献】特開2006-205135(JP,A)
【文献】特表2010-535282(JP,A)
【文献】特開昭56-065697(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0117195(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2003-0016358(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
C02F 11/00-11/20
C02F 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品・飲料廃棄物を前処理して固形分と飲食廃水とに分離する食品廃棄物前処理ステップと;
前記食品廃棄物前処理ステップで分離された固形分を熱分解反応器で熱分解して熱分解ガスとバイオチャーを生成する固形分熱分解ステップと;
前記固形分熱分解ステップで生成された熱分解ガスとバイオチャーを分離する熱分解結果物分離ステップと;
前記熱分解結果物分離ステップで分離された熱分解ガスを冷却及び凝縮させた後、バイオオイルが除去された熱分解水溶液を得る熱分解水溶液抽出ステップと;
前記食品廃棄物前処理ステップで分離される飲食廃水を嫌気反応槽にて酸発酵微生物と反応させて有機酸発酵液を生成する
飲食廃水発酵ステップと;
前記熱分解水溶液抽出ステップで抽出された熱分解水溶液と、前記飲食廃水発酵ステップで生成された有機酸発酵液とを混合する有機炭素源製造ステップと;を含み、
前記飲食廃水発酵ステップは、前記固形分熱分解ステップで発生する廃熱を、飲食廃水が発酵される反応槽に供給することを特徴とする、高品質・高効率の有機炭素源の製造方法。
【請求項2】
前記固形分熱分解ステップは、450℃~550℃の温度条件で所定時間熱分解することを特徴とする、請求項1に記載の高品質・高効率の有機炭素源の製造方法。
【請求項3】
前記飲食廃水発酵ステップは、60~70℃の温度条件にて所定時間発酵させることを特徴とする、請求項1に記載の高品質・高効率の有機炭素源の製造方法。
【請求項4】
食品・飲料廃棄物を固形分と飲食廃水とに分離する食品廃棄物前処理部と;
前記食品廃棄物前処理部で分離された固形分は下記固形分熱分解部に供給し、飲食廃水は下記飲食廃水発酵部に供給するバイオマス供給部と;
前記食品廃棄物前処理部で分離された固形分を熱分解反応器で熱分解して熱分解ガスとバイオチャーを生成する固形分熱分解部と;
前記固形分熱分解部にて生成された熱分解ガスとバイオチャーとを分離する熱分解結果物分離部と;
前記熱分解結果物分離部で分離された熱分解ガスを冷却及び凝縮させた後、バイオオイルが除去された熱分解水溶液を得る熱分解水溶液抽出部と;
前記食品廃棄物前処理部で分離された飲食廃水を嫌気反応槽で酸発酵微生物と反応させて有機酸発酵液を生成する飲食廃水発酵部と;
前記熱分解水溶液抽出部で抽出された熱分解水溶液と前記飲食廃水発酵部で生成された有機酸発酵液とを混合する有機炭素源製造部と;
前記固形分熱分解部で発生する廃熱を飲食廃水発酵部に供給する廃熱供給部と;を含むことを特徴とする、高品質・高効率の有機炭素源の製造装置。
【請求項5】
前記食品廃棄物前処理部は、食品・飲料廃棄物内の固形分を分離する少なくとも一つの遠心分離機を含むことを特徴とする、請求項4に記載の高品質・高効率の有機炭素源の製造装置。
【請求項6】
前記熱分解結果物分離部は、熱分解反応結果物からバイオチャーを分離する少なくとも一つのサイクロンを含むことを特徴とする、請求項4に記載の高品質・高効率の有機炭素源の製造装置。
【請求項7】
前記熱分解水溶液抽出部は、熱分解ガスを凝縮させてバイオオイルと熱分解水溶液に液化させる少なくとも一つの凝縮器を含み、前記バイオオイルと熱分解水溶液との密度差を利用して熱分解水溶液を抽出することを特徴とする、請求項4に記載の高品質・高効率の有機炭素源の製造装置。
【請求項8】
前記バイオマス供給部は、
前記食品廃棄物前処理部で分離された固形分を機械的粉砕方法によって粉砕する固形分粉砕機と、
前記固形分粉砕機で粉砕された固形分の供給を受けて爆砕する方法によって固形分を微細に再粉砕するか、或いは多孔質の状態に膨らませる固形分微粉砕圧力容器とを含むことを特徴とする、請求項4に記載の高品質・高効率の有機炭素源の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質・高効率の有機炭素源の製造装置及びその方法に係り、より詳細には、食品・飲料廃棄物由来の有機炭素源を製造するにあたり、食品・飲料廃棄物内の固形分を熱分解し、熱分解結果物から有機炭素源含有量の高い熱分解水溶液を抽出し、食品・飲料廃棄物から固形分が除去された飲食廃水(食品廃棄物からの浸出液など)は酸発酵させて有機酸発酵液を製造した後、前記熱分解水溶液と有機酸発酵液とを混合して高品質の有機炭素源を製造し、熱分解工程の廃熱を発酵工程に利用することで、高効率で有機炭素源を製造することができる高品質・高効率の有機炭素源の製造装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、嫌悪施設の敷地を選定し難い点、既存の下水処理場が下水管渠の不備や地表水の流入などにより低負荷運転され、これにより嫌気性消化槽も低負荷運転されていることを勘案して、下水スラッジ消化槽に食品・飲料廃棄物を投入処理するという代替案(スラッジ/食品廃棄物の統合消化)が研究されている。
【0003】
下水処理場の嫌気性消化槽の余裕容量を活用した食品・飲料廃棄物の併合処理は、社会の懸案である食品・飲料廃棄物の処理に貢献するだけでなく、消化槽の効率増大及びメタンガスの増産を通じて、下水処理場内の発電及び温水の生産に利用することができるという利点のため、最近注目を浴びており、このように、食品廃棄物の処理に下水高度処理設備を導入する場合、有機炭素源としての利用が可能である。
【0004】
この方法は、食品・飲料廃棄物を下水処理場に併合処理するのではなく、下水処理場の消化槽でスラッジ/食品廃棄物の統合消化によって処理する方法であって、一部の発酵液(加水分解/酸発酵)を下水高度処理施設にて窒素・リン高度処理のための外部炭素源として活用する。
【0005】
一般に、食品・飲料廃棄物由来の有機炭素源の製造工程は、食品廃棄物から固形分を除去した後、食品廃棄物の浸出液を発酵させて微生物を多量に含有した有機炭素源を製造する方法が使用されるが、このために、高濃度の有機酸を含有する酸発酵液生産技術が要求される。
【0006】
ところが、食品廃棄物の浸出液を酸発酵させて有機炭素源を製造するにあたり、常温である30℃の温度では、食品廃棄物浸出液の約30%のみが発酵して、発酵液内の有機酸の含有量が約2wt%にしかならないという問題があった。
【0007】
これは、有機炭素源としての発酵液内の有機酸の適正含有量である4wt%には遠く及ばない数値であり、これを高めるための方案として、発酵率を増加させる方案があり得る。しかし、発酵率を増加させて食品廃棄物浸出液の約80wt%まで有機炭素源に転換させるためには、温度を60℃~70℃まで上げなければならないが、この場合、生産される有機炭素源の熱量に比べて、発酵温度を高めるためのエネルギーの消費が過度となって、エネルギー効率が低下するという問題があった。
【0008】
これにより、本発明は、食品・飲料廃棄物から有機炭素源を製造するにあたり、有機酸の含有量が高い、高品質の有機炭素源を高効率で製造することができる新規技術を提示しようとする。
【0009】
次に、本発明の技術が属する分野に存在する先行技術について簡略に説明し、続いて、本発明が前記先行技術に比べて差別化して成し遂げようとする技術的事項について説明する。
【0010】
まず、特許文献1には、食品・飲料廃棄物からの飲食廃水(食品廃棄物からの浸出液など)を用いた有機炭素源の製造方法及びこれにより製造された有機炭素源に関するものであって、より具体的には、食品・飲料廃棄物の資源化の過程で発生する飲食廃水中の油分及び固形分を、前処理工程を通じて除去する前処理工程と;前記前処理工程にて生成される飲食廃水を受け入れ、酸発酵微生物と反応させて有機酸発酵液を生成する酸発酵工程;前記酸発酵工程にて生成される前記有機酸発酵液を蒸留及び濃縮して濃縮酸発酵液を生成する第1蒸留工程;及び、前記第1蒸留工程を経た濃縮酸発酵液に硫酸を添加し、蒸留及び濃縮して蒸留液を生成する第2蒸留工程;を含み、前記飲食廃水の処理過程にて発生する廃熱を、前記第1蒸留工程及び前記第2蒸留工程に熱源として供給してリサイクルする、食品・飲料廃棄物の飲食廃水を用いた有機炭素源の製造技術が開示されている。
【0011】
また、特許文献2には、食品・飲料からの脱離液を用いた有機炭素源製造装置に関するもので、より具体的には、生ごみを前処理するときに生じる食品・飲料脱離液を原料として用いて、廃水処理に有用な高品質の有機炭素源を生成し、窒素の除去によるC/N比を高めて廃水処理の効率を高めるようにすべく、前処理された食品・飲料脱離液である原水を流入させて固形分を濾別し、微細な粒子の原水を供給し続ける微粒子処理機と;前記微粒子処理機から流入した原水を内部に受け入れ、原水から油分を分離した後に排出除去する流量調整槽と;前記流量調整槽の原水のうちの一定の流量が供給され、原水の水素イオン濃度を調整して高温有用微生物を培養する微生物培養槽と;前記流量調整槽の原水のうちの一定の流量が供給されるとともに、前記微生物培養槽から生成された多量の微生物を有する培養液が供給され、原水を有機炭素源として発酵させる有機炭素源発酵槽と;を含み、前記流量調整槽、微生物培養槽及び有機炭素源発酵槽には、それぞれに受け入れられた有機物を、高温性微生物の活動に適した45~65℃に維持して有機物を迅速に分解し、硝化過程を経ることなくアンモニアストリッピングでもって窒素を除去してスラッジを減量化する高温好気性消化器(ATAD、Autothermal Thermophlic Aerobic Digestion)とを含む、食品・飲料脱離液を用いた有機炭素源製造装置に関する技術が開示されている。
【0012】
また、特許文献3には、自己発熱誘導を用いた高効率のスラッジ減量化並びにこれを用いた有機炭素源回収方法及び装置に関するもので、より具体的には、既成の廃棄物から、スクリーンを通して夾雑物を分離した後、流量調整槽を経て固液分離させるステップ1;ステップ1で分離された液体成分を基質として自己発熱誘導の高温好気性酸化でもって処理してスラッジを減量させるステップ2;及びステップ2で消化された有機炭素源を物理的に脱水させた後、脱水ケーキと脱離濾液に分離させて炭素源を生産するステップ3を含む、有機炭素源回収方法及び装置に関する技術が開示されている。
【0013】
これらの先行技術文献は、食品・飲料廃棄物から固形分を除去した飲食廃水を、酸発酵微生物と反応させて有機炭素源を製造する技術を含んでいるが、先行技術文献では、発酵効率を高めるために発酵槽に熱を供給する別の構成を含むか、或いは発酵槽内での有機物の反応による自己発熱に依存しており、有機炭素源の製造に過剰なエネルギーが消費されるか、或いは低い発酵率に伴い有機炭素源への十分な転換が行われないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】韓国登録特許第10-1909736号公報(2018年10月12日登録)
【文献】韓国登録特許第10-1369718号公報(2014年2月24日登録)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0109779号公報(2015年10月2日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上述した課題を解決するために創作されたもので、その目的は、食品・飲料廃棄物由来の有機炭素源を製造するにあたり、食品・飲料廃棄物を前処理して固形分と飲食廃水に分離した後、固形分からは熱分解を通じて有機炭素源含有量の高い熱分解水溶液を生産し、固形分が分離された飲食廃水からは、酸発酵させて製造される有機酸を製造し、前記飲食廃水の酸発酵液に熱分解水溶液を混ぜ合わせることにより、有機酸含有量の高い高品質の有機炭素源を製造することができる有機炭素源製造装置及びその方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、上述したように食品・飲料廃棄物を前処理して分離された、固形分を熱分解する際に発生する廃熱を、飲食廃水の発酵工程に利用することにより、外部熱源なしでも飲食廃水の発酵率を高めて高品質の有機炭素源を高効率で製造することができる有機炭素源製造装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施形態に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造方法は、食品・飲料廃棄物を前処理して固形分と飲食廃水とに分離する食品廃棄物前処理ステップ;前記食品廃棄物前処理ステップで分離された固形分を熱分解反応器で熱分解して熱分解ガスとバイオチャーを生成する固形分熱分解ステップ;前記固形分熱分解ステップで生成された熱分解ガスとバイオチャーを分離する熱分解結果物分離ステップ;前記熱分解結果物分離ステップで分離された熱分解ガスを冷却及び凝縮させた後、バイオオイルが除去された熱分解水溶液を得る熱分解水溶液抽出ステップ;前記食品廃棄物前処理ステップで分離される飲食廃水を嫌気反応槽で酸発酵微生物と反応させて有機酸発酵液を生成する飲食廃水発酵ステップ;及び前記熱分解水溶液抽出ステップで抽出された熱分解水溶液と前記飲食廃水発酵ステップで生成された有機酸発酵液を混合した後、蒸留および濃縮する有機炭素源製造ステップ;を含み、前記飲食廃水発酵ステップは、前記固形分熱分解ステップで発生する廃熱を、飲食廃水が発酵される反応槽に供給して、飲食廃水の発酵効率を向上させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一実施形態に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造方法において、前記食品廃棄物前処理ステップは、少なくとも一つの遠心分離機を用いて食品廃棄物内の固形分を分離することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の一実施形態に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造方法において、前記熱分解結果物分離ステップは、少なくとも一つのサイクロンを用いて熱分解反応結果物からバイオチャーを分離することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の一実施形態に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造方法において、前記熱分解水溶液抽出ステップは、少なくとも一つの凝縮器を用いて熱分解ガスを凝縮させてバイオオイルと熱分解水溶液に液化させた後、前記バイオオイルと熱分解水溶液との密度差を利用して熱分解水溶液を抽出することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の一実施形態に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造方法において、前記固形分熱分解ステップは、450℃~550℃の温度条件で所定時間熱分解することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の一実施形態に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造方法において、前記飲食廃水発酵ステップは、60~70℃の温度条件で所定時間発酵させることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の一実施形態に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造方法は、前記食品廃棄物前処理ステップで分離された固形分を微粉砕した後、加圧および加熱し、しかる後に、圧力を急速に下げて固形分を爆発(爆砕)させる方法によって、固形分を微細に再粉砕するか、或いは多孔質の状態に膨らませた後、前記固形分熱分解ステップに供給する固形分微粉砕ステップ;をさらに含むことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の別の一実施形態による高品質・高効率の有機炭素源の製造装置は、食品・飲料廃棄物を固形分と飲食廃水に分離する食品廃棄物前処理部と;前記食品廃棄物前処理部で分離された固形分は下記固形分熱分解部に供給し、飲食廃水は下記飲食廃水発酵部に供給するバイオマス供給部と;前記食品廃棄物前処理部で分離された固形分を熱分解反応器で熱分解して熱分解ガスとバイオチャーを生成する固形分熱分解部と;前記固形分熱分解部で生成された熱分解ガスとバイオチャーを分離する熱分解結果物分離部と;前記熱分解結果物分離部で分離された熱分解ガスを冷却及び凝縮させた後、バイオオイルが除去された熱分解水溶液を得る熱分解水溶液抽出部と;前記食品廃棄物前処理部で分離された飲食廃水を嫌気反応槽にて酸発酵微生物と反応させて有機酸発酵液を生成する食品廃棄物浸出液発酵部と;前記熱分解水溶液抽出部にて抽出された熱分解水溶液と、前記飲食廃水発酵部で生成された有機酸発酵液とを混合した後、蒸留および濃縮する有機炭素源製造部と;前記固形分熱分解部で発生する廃熱を飲食廃水発酵部に供給する廃熱供給部と;を含むことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の別の一実施形態による高品質・高効率の有機炭素源の製造装置において、前記食品廃棄物前処理部は、食品・飲料廃棄物内の固形分を分離する少なくとも一つの遠心分離機を含むことを特徴とする。
【0026】
また、本発明の別の一実施形態による高品質・高効率の有機炭素源の製造装置において、前記熱分解結果物分離部は、熱分解反応結果物からバイオチャーを分離する少なくとも一つのサイクロンを含むことを特徴とする。
【0027】
また、本発明の別の一実施形態による高品質・高効率の有機炭素源の製造装置において、前記熱分解水溶液抽出部は、熱分解ガスを凝縮させてバイオオイルと熱分解水溶液に液化させる少なくとも一つの凝縮器;を含み、前記バイオオイルと熱分解水溶液との密度差を利用して熱分解水溶液を抽出することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の別の一実施形態による高品質・高効率の有機炭素源の製造装置において、前記固形分熱分解部は、固形分熱分解時の反応温度が450~550℃の温度に制御されることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の別の一実施形態による高品質・高効率の有機炭素源の製造装置において、前記飲食廃水発酵部は、飲食廃水の発酵時の反応温度が60~70℃の温度に制御されることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の別の一実施形態による高品質・高効率の有機炭素源の製造装置において、前記バイオマス供給部は、前記食品廃棄物前処理部で分離された固形分を機械的粉砕方法によって粉砕する固形分粉砕機と、前記固形分粉砕機で粉砕された固形分の供給を受けて爆発(爆砕)させる方法によって、固形分を微細に再粉砕するか、或いは多孔質の状態に膨らませる固形分微粉砕圧力容器と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、食品・飲料廃棄物から分離された固形分を熱分解反応器で熱分解してバイオオイルを製造するとともに、有機酸が多量含まれている熱分解水溶液を抽出して、この熱分解水溶液を、食品・飲料廃棄物から固形分が除去された飲食廃水を酸発酵させて生産される有機酸発酵液と混合することにより、有機酸含有量の高い高品質の有機炭素源を製造して食品・飲料廃棄物の資源化効率を極大化することができるとともに、廃棄物の発生量を最小限に抑えることができるという効果がある。
【0032】
また、本発明は、前記固形分を熱分解させる際に発生する廃熱を、飲食廃水発酵槽に供給することにより、外部熱源なしで飲食廃水の発酵率を高めることで、高効率でもって高品質の有機炭素源を製造することができるため、コスト及び生産の効率性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造装置について説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造方法について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができるように、本発明に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造装置及びその方法の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0035】
本発明の各図面において、構造物のサイズや寸法は、本発明の明確性を期するために実際よりも拡大または縮小して示したものであり、特徴的構成が現れるように公知の構成は省略して示したので、図面に限定するものではない。
【0036】
本発明の好適な実施形態に対する原理を詳細に説明するにあたり、関連する公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にするおそれがあると判断された場合には、その詳細な説明を省略する。
【0037】
また、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明の最も好適な一実施形態に過ぎないものであり、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替することができる様々な均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。
【0038】
本発明は、高品質・高効率の有機炭素源の製造装置及びその方法に係り、食品・飲料廃棄物を用いて有機炭素源を製造するにあたり、食品・飲料廃棄物を固形分と飲食廃水に分離し、固形分は熱分解して高濃度で有機酸を含む熱分解水溶液を生産し、飲食廃水は酸発酵させて有機酸発酵液を生産し、前記熱分解水溶液を有機酸発酵液に混ぜ合わせて高品質の有機性炭素源を製造することに関する。
【0039】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造装置及びその方法について詳細に説明する。
【0040】
図1は本発明の一実施形態に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造装置について説明するための図である。
【0041】
図1に示されているように、本発明の高品質・高効率の有機炭素源の製造装置は、食品廃棄物前処理部、バイオマス供給部、固形分熱分解部、熱分解結果物分離部、熱分解水溶液抽出部、飲食廃水発酵部、有機炭素源製造部及び廃熱供給部を含んで構成される。
【0042】
前記食品廃棄物前処理部は、食品・飲料廃棄物を固形分と飲食廃水に分離するものであり、食品・飲料廃棄物内の固形分を分離する少なくとも一つの遠心分離機を含んで構成される。
【0043】
また、前記バイオマス供給部は、前記食品廃棄物前処理部で分離された固形分を前記固形分熱分解部に供給し、飲食廃水は前記食品廃棄物浸出液発酵部に供給するものである。
【0044】
一方、前記バイオマス供給部は、前記食品廃棄物前処理部で分離された固形分を前記固形分熱分解部に供給する前に、固形分を微粉砕するために、固形分粉砕機及び固形分微粉砕圧力容器を含んで構成されうる。
【0045】
前記固形分粉砕機は、前記固形分熱分解部へと食品・飲料廃棄物内の固形分を供給する前に、第1次として固形分を粉砕するものであって、一般に使われている機械的な粉砕装置をすべて含むことができる。
【0046】
また、前記固形分微粉砕圧力容器は、前記固形分粉砕機で1次粉砕された固形分の供給を受けて爆発(爆砕)させる方法によって、固形分を微細に再粉砕するか、或いは多孔質の状態に膨らませることにより、熱分解反応性を向上させることができるように固形分を2次粉砕するものである。
【0047】
より具体的には、前記固形分微粉砕圧力容器では、前記固形分粉砕機で粉砕された固形分の供給を受けてから、加圧および加熱した後、圧力を急速に下げて爆発(爆砕)させる方法によって固形分を微細に再粉砕するか或いは多孔質の状態に膨らませる。
【0048】
すなわち、前記固形分粉砕機で1次粉砕された食品・飲料廃棄物の固形分は、水分をある程度含んでいるが、上記のように固形分微粉砕圧力容器内で前記1次粉砕された固形分を加圧及び加熱した後、圧力を急速に下げると、加熱及び加圧されていた固形分の内部で水分が一瞬で爆発するように膨張することで、1次粉砕された固形分をより微細に再粉砕するか、或いは再粉砕されなくても多孔質の状態に膨らませる。こうすることにより、急速熱分解時の熱の伝達を容易にして、急速熱分解の効率を高めることができる。
【0049】
一方、前記固形分熱分解部に固形分を投入する方式は、スクリューなどを用いる機械的方式と、圧力を用いる空気圧方式を含むことができる。
【0050】
前記固形分熱分解部は、前記食品廃棄物前処理部で分離された固形分を熱分解して熱分解ガスとバイオチャーを生成するものであって、熱分解反応器を含んで構成される。
【0051】
このため、前記固形分熱分解部は、前記バイオマス供給部から2次粉砕された固形分の供給を受けて熱分解を行う。
【0052】
一方、前記熱分解反応器には、砂などの熱分解媒質と熱分解対象物質とを接触させて急速熱分解を行う急速熱分解反応器を使用することができる。
【0053】
この場合、急速熱分解反応器の下部には、熱伝導媒体が充填されており、急速熱分解の際に前記熱伝達媒体に熱を加えて加熱された状態に維持させる。前記加熱された熱媒体の上に、微粉砕された食品廃棄物固形分が供給され、前記熱伝達媒体が供給されて充填されているところの下端から、キャリアガス供給部を通じてキャリアガス(carrier gas)が供給される。
【0054】
前記急速熱分解反応器の内部に供給される前記キャリアガスは、加熱された熱伝達媒体と食品廃棄物の固形分とを流動化させ、この過程で熱伝達媒体の粒子が固形分の粒子と短い時間接触して熱を伝達することにより、固形分の熱分解が行われる。このように熱分解を行った後に生成される熱分解結果物は、高温の蒸気の状態で排出された後、前記熱分解結果物分離部へと移動する。
【0055】
一方、前記熱分解が行われる際の反応温度は、450~550℃、好ましくは500℃である。また、反応圧力は常圧を維持し、熱分解反応時間は5秒以内の急速熱分解方式を使用する。前記反応器の内部に供給されるキャリアガスは、酸素が含まれていない不活性ガス(例えば、窒素など)を使用しなければならない。
【0056】
ちなみに、急速熱分解反応条件と、これに対する制御方法および熱分解装置に一般に使用される構成は、通常の急速熱分解装置とは異ならず、これについての具体的な説明は、本発明の要旨を説明するために必ず必要な部分ではないので省略する。
【0057】
また、前記熱分解結果物分離器は、前記固形分熱分解部で生成された熱分解ガスとバイオチャーを分離するものであって、熱分解反応結果物からバイオチャーを分離するための少なくとも一つのサイクロンを備えて構成される。前記サイクロンで分離されたバイオチャーは別途のバイオチャー貯蔵部に貯蔵される。
【0058】
熱分解結果物からバイオチャーが除去されて残った熱分解ガスは、前記熱分解水溶液抽出部に供給され、冷却および凝縮の工程を通じてバイオオイルと熱分解水溶液に変換される。
【0059】
前記熱分解水溶液抽出部は、前記熱分解結果物分離部で分離された熱分解ガスを冷却及び凝縮させた後、バイオオイルが除去された熱分解水溶液を得るものであって、前記固形分熱分解部から排出される熱分解ガスを凝縮させて、バイオオイルと熱分解水溶液に液化させる少なくとも一つの凝縮器を含んで構成され、前記液化した結果物の密度差を利用して、バイオオイルから熱分解水溶液を抽出する。また、前記熱分解水溶液抽出部は、分離されたバイオオイルと熱分解水溶液がそれぞれ貯蔵される貯蔵部を含む。
【0060】
前記生成されたバイオオイルは、燃料油として使用できるため、化石燃料を代替することができるので、本発明に係る有機酸生産過程の経済性を向上させることができる。
【0061】
また、前記固形分の熱分解によるバイオガスを凝縮させて生成された熱分解水溶液は、有機酸の濃度が10~20wt%と非常に高いため、微生物の生長を阻害するおそれもあるので、バイオガスの生成量を増やすためには、むしろ有機酸の濃度を下げる必要がある。
【0062】
一方、前記飲食廃水発酵部は、前記食品廃棄物前処理部で分離された食品廃棄物浸出液を酸発酵微生物と反応させて有機酸発酵液を生成するものであって、嫌気発酵槽を含んで構成される。
【0063】
前記飲食廃水発酵部では、飲食廃水の発酵時の反応槽の反応温度が60~70℃の温度に制御される。
【0064】
このように廃熱を利用して飲食廃水発酵槽の温度を増加させることにより、飲食廃水の発酵効率を高めることができるため、全体の工程効率を向上させることができる。
【0065】
前記有機炭素源製造部は、前記熱分解水溶液抽出部で抽出された熱分解水溶液と前記飲食廃水発酵部で生成された有機酸発酵液とを混合して有機炭素源を製造するものであって、熱分解水溶液と有機酸発酵液とが混合される混合槽を含んで構成される。
【0066】
また、前記有機炭素源製造部は、上述のように熱分解水溶液と有機酸発酵液とを混合して製造された有機炭素源を蒸留及び濃縮するための構成をさらに含んでもよい。
【0067】
一方、前記廃熱供給部は、前記固形分熱分解部で発生する廃熱を飲食廃水発酵部に供給するものであって、前記固形分熱分解部及び前記飲食廃水発酵部にそれぞれ少なくとも一つずつ備えられる熱交換器を含んで構成される。
【0068】
前記廃熱を回収する過程は、前記固形分熱分解部の熱分解後の熱分解ガスを冷却する過程で発生する熱によって、直接熱分解ガスを前記飲食廃水発酵部などに投入して飲食廃水を加熱するようにすることにより、熱を回収することもできるが、熱分解ガスを急速に冷却しなければならないので、間接的な熱媒体を介して前記熱分解ガスから熱を回収し、前記熱媒体を用いて飲食廃水発酵部などを加熱するようにすることが好ましい。
【0069】
前記発生した高温ガス(熱分解部で発生)は、食品廃棄物の前処理などに供給して分離された固形分から水分についての第1次の除去を行うのに使用される。このように固形分から過量な水分を一部除去して、後続的な固形分の熱分解のための固形分の移送及び熱分解のための加熱が容易になり、熱分解時の水分の含有量を予め下げることにより、熱分解オイルの収率が高くなり、エネルギー使用量が低くなる。
【0070】
また、
図2は本発明の一実施形態に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造方法について説明するためのフローチャートである。
【0071】
図2に示されているように、本発明に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造方法は、食品廃棄物前処理ステップ(S101)、固形分熱分解ステップ(S102)、熱分解結果物分離ステップ(S103)、熱分解水溶液抽出ステップ(S104)、飲食廃水発酵ステップ(S105)、及び有機炭素源製造ステップ(S106)を含む。
【0072】
まず、前記食品廃棄物前処理ステップでは、食品・飲料廃棄物を前処理して固形分と飲食廃水とに分離する。この際、前記食品廃棄物前処理ステップでは、少なくとも一つの遠心分離機を用いて食品廃棄物内の固形分を分離する。
【0073】
前記固形分熱分解ステップでは、前記食品廃棄物前処理ステップで分離された固形分を熱分解反応器で450~550℃の温度条件で所定時間熱分解して熱分解ガスとバイオチャーを生成する。
【0074】
前記熱分解結果物分離ステップでは、前記固形分熱分解ステップで生成された熱分解ガスとバイオチャーを分離する。この際、前記熱分解結果物分離ステップでは、少なくとも一つのサイクロンを用いて熱分解反応結果物からバイオチャーを分離する。
【0075】
前記熱分解水溶液抽出ステップでは、前記熱分解結果物分離ステップで分離された熱分解ガスを冷却及び凝縮させた後、バイオオイルが除去された熱分解水溶液を得た。より具体的には、少なくとも一つの凝縮器を用いて熱分解ガスを凝縮させて、バイオオイルと熱分解水溶液に液化させた後、前記バイオオイルと熱分解水溶液との密度差を利用して熱分解水溶液を抽出する。
【0076】
前記飲食廃水発酵ステップでは、前記食品廃棄物前処理ステップにて分離される飲食廃水を嫌気反応槽で酸発酵微生物と反応させて発酵させ、60~70℃の温度条件で所定時間発酵させて有機酸発酵液を生成する。
【0077】
この際、前記飲食廃水発酵ステップは、前記固形分熱分解ステップにて発生する廃熱を、飲食廃水が発酵される反応槽に供給して、飲食廃水の発酵効率を向上させる。
【0078】
前記有機炭素源製造ステップでは、前記熱分解水溶液抽出ステップにて抽出された熱分解水溶液と、前記飲食廃水発酵ステップで生成された有機酸発酵液とを混合して有機炭素源を製造する。
【0079】
また、本発明に係る高品質・高効率の有機炭素源の製造方法は、前記食品廃棄物前処理ステップにて分離された固形分を微粉砕した後、加圧および加熱し、しかる後に、圧力を急速に下げて固形分を爆砕する方法によって、固形分を微細に再粉砕するか、或いは多孔質の状態に膨らませた後、前記固形分熱分解ステップへと供給する固形分微粉砕ステップをさらに含んでもよい。
【0080】
以上、本発明は、添付図面に示された実施形態を参照して説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術に属する分野における通常の知識を有する者であれば、そこから様々な変形及び均等な他の実施形態が可能であることを理解するだろう。したがって、本発明の技術的保護範囲は、下記特許請求の範囲によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0081】
100 高品質・高効率の有機炭素源の製造装置
110 食品廃棄物前処理部
120 バイオマス供給部
130 固形分熱分解部
140 熱分解結果物分離部
150 熱分解水溶液抽出部
160 飲食廃水発酵部
170 有機炭素源製造部
180 廃熱供給部
【要約】
【課題】高品質・高効率の有機炭素源の製造装置及びその方法を提供する。
【解決手段】本発明は、食品・飲料廃棄物由来の有機炭素源を製造するにあたり、食品・飲料廃棄物を固形分と飲食廃水(食品廃棄物浸出液など)に分離し、固形分は熱分解して有機炭素源含有量の高い熱分解水溶液を製造し、飲食廃水は酸発酵させて有機酸発酵液を製造した後、熱分解水溶液と有機酸発酵液とを混合し、これを蒸留及び濃縮させて有機炭素源を製造し、固形分を熱分解する工程で発生する廃熱を、飲食廃水を酸発酵させる工程に利用する、高品質・高効率の有機炭素源の製造装置及びその方法を提供する。
【選択図】
図1