(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】電気的なコンバータ回路のセルフテストを実行する方法、コンバータ回路および車両用照明器具
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20220208BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20220208BHJP
B60Q 11/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 C
B60Q1/04 E
B60Q11/00 605C
B60Q11/00 605A
B60Q11/00 615A
B60Q11/00 625J
(21)【出願番号】P 2020529599
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2018077058
(87)【国際公開番号】W WO2019105636
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】102017221657.3
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュテーガー
(72)【発明者】
【氏名】エミル コヴァチェフ
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106026157(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0368204(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0234255(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013212149(DE,A1)
【文献】国際公開第2010/150338(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
H02J 3/36
B60Q 1/04
B60Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的なコンバータ回路(14)のセルフテスト(23)を実行する方法(34)であって、
前記コンバータ回路(14)の制御装置(18)によって、所定の電気的な運転変数(V)が所定の開始値を有する、前記コンバータ回路(14)の既知の動作点(24)から、前記コンバータ回路(14)を動作させることによって測定サイクル(M)を開始するステップを含み、
前記測定サイクル(M)の開始以降の時間(t)を検出し、前記電気的な運転変数(V)および前記時間(t)は、前記セルフテスト(23)の2つの監視変数を表し、前記2つの監視変数のうちの一方(V)が終了基準(26)を満たすと、前記測定サイクル(M)を終わらせ、前記2つの監視変数のうちの他方が前記測定サイクル(M)の終了時に有している測定値(T)から検査値(29)を形成し、前記検査値(29)が所定の基準範囲(Tok)外にあるか否かを検査し、前記検査値(29)が所定の基準範囲(Tok)外にある場合には、エラー信号(30)を生成
し、
前記コンバータ回路(14)のスイッチ(S)の閉成によって、前記測定サイクル(M)が始まる
ことを特徴とする、方法(34)。
【請求項2】
前記電気的な運転変数(V)として、前記コンバータ回路の電流の大きさおよび/または前記電流の大きさと相関する電圧(V)および/または前記コンバータ回路(14)の出力電圧(Vout)を検出する、請求項1記載の方法(34)。
【請求項3】
前記終了基準(26)は、前記電気的な運転変数(V)が所定の終了値(27)を有していなければならないことを設定し、
前記検査値は時間値であり、前記基準範囲は少なくとも1つの正常時間値を示す、
請求項1または2記載の方法(34)。
【請求項4】
前記コンバータ回路(14)は、電圧または電流を調整するために、少なくとも1つの比較器(19)を備える二値制御器またはデジタルの比較ユニット(21)を有しており、前記終了基準(26)を前記調整の前記少なくとも1つの比較器(19)または前記比較ユニット(21)を用いて実行する、請求項3記載の方法(34)。
【請求項5】
前記終了基準(26)は前記時間(t)に対して所定の持続時間を設定し、前記検査値は前記電気的な運転変数(V)に対する値であり、前記基準範囲(Tok)は前記電気的な運転変数(V)に対する少なくとも1つの正常値を設定する、請求項1または2記載の方法(34)。
【請求項6】
前記時間(t)を、前記制御装置(18)のカウンタ(22)を用いて検出する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法(34)。
【請求項7】
前記コンバータ回路(14)に欠陥がないことが既知である較正フェーズ(37)において、前記測定サイクル(M)を少なくとも1回実行し、少なくとも1回実行された前記測定サイクル(M)の終了時に生じる前記検査値(29)から、前記基準範囲(Tok)を、所定の許容誤差値(40)に基づいて生成する(S32)、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法(34)。
【請求項8】
前記セルフテスト(23)において、前記測定サイクル(M)を複数回実行し、その結果、複数の測定値(T)が存在し、前記複数の測定値(T)の平均値としてまたは移動平均値として前記検査値(29)を形成する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法(34)。
【請求項9】
前記セルフテスト(23)を用いて、前記コンバータ回路(14)のインダクタンス(L)および/または測定抵抗(R)を検査する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法(34)。
【請求項10】
前記測定サイクル(M)の間、前記コンバータ回路(14)の
前記スイッチ(S)を閉成し、これによって前記スイッチ(S)を通る電流(I)の電流の大きさが前記測定サイクル(M)の前記持続時間中、増大または減少することによって、前記コンバータ回路(14)を動作させる、請求項5または請求項5を引用する請求項6から9までのいずれか1項記載の方法(34)。
【請求項11】
前記電気的な運転変数(V)が0に等しい動作開始を前記動作点(24)として使用する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法(34)。
【請求項12】
前記動作点(24)において、さらには前記基準範囲(Tok)内の各測定値(T)において、前記コンバータ回路(14)の電気的な出力電圧(Vout)は、前記コンバータ回路(14)によって給電される機能回路(11)の動作電圧(13)を下回ったままである、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法(34)。
【請求項13】
機能回路(11)として、LED照明装置が前記コンバータ回路(14)によって給電される、請求項12記載の方法(34)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている制御装置(18)を備えたコンバータ回路(14)。
【請求項15】
請求項14記載のコンバータ回路(14)を備えた、自動車のための車両用照明器具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的なコンバータ回路、特にスイッチングコンバータのセルフテストを実行する方法に関する。コンバータ回路は、たとえば、ステップアップコンバータまたはステップダウンコンバータであってよい。本発明は、本発明の方法を実施することができるコンバータ回路も含んでいる。最後に、本発明は、本発明のコンバータ回路を有している、自動車のための車両用照明器具も含んでいる。
【0002】
たとえば、ある程度の安全基準を満たさなければならない回路の場合、動作状態のいわゆる妥当性検査が必要である。具体的なケースではこれは、LED車両用照明(LED発光ダイオード)等の、調整された電流が供給されるアプリケーションまたは機能回路に対して、電流もしくはその調整の妥当性を検査する必要があることを意味している。したがって、一般的に、上述した電流の電流値等の電気的な変数が基準範囲内にあるか否かが検査される必要がある。電流調整の妥当性検査の例は、たとえば、安全評価分類ASIL-B(ASIL-自動車安全水準)をLED車両用照明器具に与えることである。これは、たとえば、自動二輪車のロービームであってよく、このようなロービームは、トンネルに入るときに運転者が使える光が過度に少なくなることがないように、トンネルに入るときに所定の明るさを有していなければならない。ここで、このような安全目標(走行路の十分な照明)を満たすための許容誤差は、電流調整の元来の電流精度に必要な許容誤差よりも大きい。したがって、電流調整部のコンバータ回路内に付加的な単純な測定コンポーネント、たとえばTexas Instruments社のモジュールINA169を設けることが考えられるだろう。しかし、そのような付加的なコンポーネントは費用を必要とし、さらにはコンバータ回路内の他のスペースを占領してしまう。これによってどちらも経済的な欠点をもたらす。
【0003】
本発明の課題は、電気的なコンバータ回路において、少なくとも1つの所定の電気的な運転変数および/またはコンバータ回路の検査されるべきコンポーネントを妥当性検査するためのセルフテストを実行することである。
【0004】
上述の課題は、独立請求項に記載されている構成要件によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項、以降の明細書ならびに図面によって説明される。
【0005】
本発明の第1の態様によって、電気的なコンバータ回路のセルフテストを実行する方法が提供される。一般的に、コンバータ回路は、スイッチングコンバータであってよい。ここでは、ステップアップコンバータおよび/またはステップダウンコンバータが実現されていてよい。この方法において、コンバータ回路の制御装置によって、所定の電気的な運転変数、たとえば電流が所定の開始値を有する、コンバータ回路の既知の動作点から、測定サイクルが開始される。運転変数はここでは特に、セルフテストによって検査されるべき、コンバータ回路の少なくとも1つのコンポーネントに関連する。たとえば、少なくとも1つのコンポーネントが欠陥を有しているためにこのコンポーネントが変化すると、運転変数に対しても変化が生じる。測定サイクルは、コンバータ回路を動作させることによって開始される。これによって、電気的な運転変数が変わる。すなわち、時間的な経過が生じる。言い換えれば、動作点が変化する。検査されるべき少なくとも1つのコンポーネントが意図した状態にあるまたは正常に機能する場合、測定サイクル中の電気的な運転変数の変化は、所定の既知の経過をたどる。これに対して、コンバータ回路、一般的に、すなわち特に少なくとも1つのコンポーネントが欠陥を有しているまたは正常に機能しない場合、これとは異なる経過が生じる。これを検査するために、測定サイクルの開始以降の時間が検出される。すなわち、測定サイクルが既にどれ位の長さ実行されているのかが測定される。このようにして、正常に機能するまたは意図したように機能しているコンバータ回路の場合に、電気的な運転変数が現在どのような値を有していなければならないかを求めることができる。したがって、電気的な運転変数および時間は、セルフテストの2つの監視変数を表す。2つの監視変数のうちの一方(すなわち、電気的な運転変数または時間)が所定の終了基準を満たすと、測定サイクルは終了する。すなわち、この方法には2つの変形形態がある。第1の変形形態では、電気的な運転変数は第1の監視変数を表し、これに基づいて、測定サイクルが終了されるべきときが決定される(終了基準)。この場合、時間は別の監視変数を表し、測定サイクルがどれ位長く続いたかが求められる。すなわち、たとえば、電気的な運転変数が特定の閾値に到達するために、または一般的に終了基準を満たすためにかかる時間が検査される。これに対して、第2の変形形態では、固定された所定の持続時間の待機およびその後の測定サイクルの終了によって、時間が第1の監視変数を表す。この場合には、別の、第2の監視変数は電気的な運転変数によって形成され、その測定値が測定サイクルの終了時に検査される。すなわち、所定の持続時間の待機後に、電気的な運転変数がどのような測定値を有しているか、またはどのような測定値に到達したかが検査される。すなわち、電気的な運転変数が所定の終了値を有したときに(第1の変形形態)、または所定の測定時間の後に(第2の変形形態)、終了基準に従って測定サイクルが終了する。次に、2つの監視変数のうちの他方が測定サイクルの終了時に有している測定値から検査値が形成される。このような検査値は、直接的に、求められた測定値であってよい、またはたとえば、(複数の測定サイクルが実行される場合には)複数の測定値の平均値であってもよい。次に、このような検査値が所定の基準範囲外にあるか否かが検査される。このような基準範囲には、少なくとも1つの正常検査値が含まれる。すなわち、コンバータ回路が正常である、正常に機能するまたは意図したように機能していることを想定することができるすべての検査値が示される。セルフテストでの許容誤差を提供するために、基準範囲において複数の正常検査値が示されていてもよい。現在の検査値が所定の基準範囲外にある場合には、エラー信号が生成される。これに対して、現在の検査値が基準範囲内にある場合には、コンバータ回路が正常に機能するまたは意図したように機能していることが推測される。
【0006】
本発明によって、コンバータ回路の時間的な動作がセルフテストに対する基礎として使用されるという利点が得られる。したがって、セルフテストを実行するために必要なのは、時間検出装置だけである。時間検出装置はたとえばカウンタによって実現されていてよく、これがマイクロコントローラに基づいて実現されている場合には、カウンタは典型的に、いずれにせよ、制御装置の構成部分である。したがって、たとえば運転変数の元来の調整のためにも設けられないだろう、コストのかかる付加的な測定回路は不要である。
【0007】
本発明はまた、付加的な利点をもたらす実施形態も含んでいる。
【0008】
ある実施形態では、運転変数として、コンバータ回路の電流の大きさ(Stromstaerke)、たとえば、インダクタンスの出力電流またはコイル電流、または電流の大きさと相関する電圧、またはコンバータ回路の出力電圧が検出される。電流の大きさまたは電流の大きさと相関する電圧を監視または検査することによって、たとえば、コンバータ回路によって給電される発光ダイオード装置の照明強度を導き出すことができるという利点が生じる。コンバータ回路の出力電圧を検査または監視することによって、出力電圧が下流の機能回路(たとえば、発光ダイオード装置を備えた機能回路)に対して有害な高い値を有しているか否かを識別することができるという利点が生じる。上述した電気的な変数の2つ以上を組み合わせて検出および検査することもできる。電流の大きさと相関する電圧は、たとえば、シャント抵抗を用いて求めることができる。
【0009】
いくつかの実施形態は、測定サイクルに対する終了基準を満たさなければならない、上述した第1の監視変数の選択に関する。ここでは、電気的な運転変数および時間が選択に供される。
【0010】
ある実施形態では、終了基準は、電気的な運転変数が所定の終了値を有していなければならないことを設定する。したがって、第1の監視変数は電気的な運転変数、すなわち、たとえば電流の大きさである。相応に、検査値を形成するための測定値は、別の監視変数、すなわち時間に該当する。すなわち検査値は同様に時間値であり、基準範囲は少なくとも1つの正常時間値を示す。すなわち、測定サイクルの開始から、電気的な運転変数、たとえば所定の閾値を上回る、または下回る、または所定の閾値に到達するまで待機が行われる。次にこの時点が測定値として検出される。次に、ここから形成された検査値が基準範囲と比較され、基準範囲内にある時間値で運転変数が閾値に到達したか否かが確認される。このような場合、コンバータ回路の少なくとも1つのコンポーネントは正常であると見なされる。そうでない場合には、上述したエラー信号が生成される。
【0011】
さらに、ある実施形態では、閾値を監視するために、電圧または電流を調整するためにいずれにせよ設けられているだろう、コンバータ回路の比較器またはデジタルの比較ユニットが使用される。デジタルの比較装置は、比較器に対するプログラミング技術的な等価物である。したがって、閾値の比較のために付加的な構成部分は不要である。すなわち、コンバータ回路は、電圧または電流を調整するために、少なくとも1つの比較器を備える二値制御器(Zweipunktregler)または対応するデジタルの比較装置を有している。終了基準は、二点調整の少なくとも1つの比較器またはデジタルの比較ユニットを用いて実行される。
【0012】
しかし、終了基準に対する監視変数として時間をベースにすることもできる。このような実施形態では、終了基準は時間に対して所定の持続時間を設定し、次に検査値が、残りの監視変数、すなわち電気的な運転変数に基づいて相応に形成される。すなわち、検査値は電気的な運転変数に対する値である。基準範囲は、それに応じて、電気的な運転変数に対する少なくとも1つの正常値を設定する。すなわち、測定サイクルが開始され、所定の、固定された持続時間の待機が行われる。次に、このような持続時間後に電気的な運転変数がどのような値を取ったのかが検査される。このようにして形成された検査値が基準範囲内にある場合、コンバータ回路は正常であると見なされる。そうでない場合には、上述したエラー信号が生成される。
【0013】
ある実施形態では、時間が、制御装置のカウンタを用いて、上述した方法で検出される。そのようなカウンタはたとえば、制御装置のマイクロコントローラの構成部分であり得る。このような実施形態は、技術的に特に容易に実現される。
【0014】
ある実施形態は、基準範囲がどのような1つまたは複数の値を含んでいるべきかまたは含有しているべきかという問題に関する。これは、コンバータ回路の構造様式に関連し、すなわち、使用される、少なくとも1つの、検査されるべきコンポーネントに関連する。このような実施形態では、コンバータ回路、または特に、少なくとも1つの検査されるべきコンポーネントに欠陥がないことが既知である較正フェーズにおいて、測定サイクルが同様に実行される。較正フェーズを、たとえば、コンバータ回路が製造された後、かつユーザに引き渡される前に行うことができる。測定サイクルは少なくとも1回実行される。その後、少なくとも1回実行された測定サイクルの終了時に生じる、上述した検査値が提供される。この検査値から、基準範囲が、少なくとも1つの所定の許容誤差値に基づいて生成される。すなわち、基準範囲は、較正フェーズにおいて求められた検査値を示し、付加的に、この検査値を中心として、許容誤差値に基づいて形成された許容誤差範囲を含むことができる。
【0015】
また、ある実施形態では、元来のセルフテストの際に、測定サイクルが複数回実行され、その結果、複数の測定値が存在する。次に、複数の測定値の平均として検査値が形成される。これによって、測定ノイズの影響を低減することができる。
【0016】
ある実施形態では、セルフテストを用いて、コンバータ回路のインダクタンスが検査される。このようなインダクタンスは、コンバータ回路のステップアップコンバータおよび/またはステップダウンコンバータのエネルギー蓄積部であってよい。このような実施形態は、コンバータ回路の作用に極めて大きい影響力のあるコンポーネントが監視されるという利点を有している。
【0017】
上述したように、測定サイクルはコンバータ回路を動作させることによって開始される。ある実施形態では、測定サイクルの間、コンバータ回路のスイッチが閉成され、これによって、このスイッチを通る電流の電流の大きさが、測定サイクルの持続時間中、継続的に増大または減少することによって、コンバータ回路が動作させられる。すなわち、コンバータ回路の継続的な動的な動作が検査される。セルフテストはここでは、有利には、20マイクロ秒よりも時間的に短いので、電流の指数関数的な増大または指数関数的な減少は線形化によって近似可能である。このような実施形態は、測定サイクル中にスイッチング過程が行われず、これによってセルフテストが特に容易になるという利点を有している。
【0018】
ある実施形態では、そこから測定サイクルが開始される上述した動作点として、電気的な運転変数が0に等しい、コンバータ回路の動作開始が使用される。言い換えれば、測定サイクルにおける電気的な運転変数の変化は、値0から検出される。これによって、(コンバータ回路の出力側での)静電容量および/または出力電圧の影響が、検査値に反作用または影響を与えないという利点が得られる。特に、動作点では、コンバータ回路の出力電圧も0に等しい、かつ/または静電容量が放電されている。
【0019】
ある実施形態では、動作点において、すなわち測定サイクルの開始時に、さらに基準範囲内の各測定値においても、すなわち、コンバータ回路が正常に機能するまたは正常である場合には、コンバータ回路の電気的な出力電圧が、コンバータ回路によって給電される機能回路の動作電圧を下回ったままであるという条件が満たされている。言い換えれば、セルフテストが実行されるが、ここではコンバータ回路の電気的な出力電圧は動作電圧より低いままであり、その結果、コンバータ回路の下流の機能回路は動作しないままである。これによって、機能回路が自身の作業または自身の動作を開始することなく、セルフテストを実行することができる。
【0020】
特に、ある実施形態では、発光ダイオード装置を備えたLED照明装置がコンバータ回路によって機能回路として給電される。言い換えれば、セルフテストが実行されている間、LED照明装置は暗いままである。
【0021】
本発明の別の態様は、本発明の方法の実施形態を実行するように構成されている制御装置を備えたコンバータ回路に関する。コンバータ回路は、特にスイッチングコンバータであってよい。
【0022】
本発明の別の態様は、コンバータ回路と、発光ダイオード装置を備えたLED照明装置の形態の、下流の機能回路との組み合わせに関する。これに関連して、本発明は特に、本発明のコンバータ回路の実施形態を有している、自動車のための車両用照明器具に関する。車両用照明器具はたとえば、自動車用のヘッドライトとして構成されていてよい。自動車は、乗用車またはトラック、農業機械または自動二輪車等のオートモービルであってよい。
【0023】
以降で、本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の車両用照明器具の実施形態の概略図である。
【
図2】
図1の車両用照明器具のコンバータ回路の電気的な運転変数の概略的な経過を示すダイヤグラムである。
【
図3】コンバータ回路の可能な構成の概略的な回路図である。
【
図4】
図3のコンバータ回路の電圧の概略的な経過を示すダイヤグラムである。
【
図5】コンバータ回路の別の構成の概略的な回路図である。
【
図6】
図5のコンバータ回路の電圧の概略的な経過を示すダイヤグラムである。
【
図7】コンバータ回路の別の構成の概略的な回路図である。
【
図8】
図7のコンバータ回路の電圧の概略的な経過を示すダイヤグラムである。
【
図9】コンバータ回路の別の構成の概略的な回路図である。
【
図10】
図9のコンバータ回路の電圧の概略的な経過を示すダイヤグラムである。
【
図11】本発明の方法の実施形態のフローチャートである。
【
図12】
図11の方法の較正フェーズのフローチャートである。
【0025】
以降で説明する実施例は、本発明の有利な実施形態である。実施例において、各実施形態の記載されたコンポーネントはそれぞれ、互いに独立して考察されるべき、本発明の個々の特徴である。これらの特徴はそれぞれ互いに独立しても本発明を発展させ、したがって、個々でも、または示されたもの以外の組み合わせでも、本発明の構成部分として見なされるべきである。さらに、記載された実施形態が、上述した本発明の特徴の別の特徴によって補足されてもよい。
【0026】
図中、同じ機能を有する要素にはそれぞれ、同じ参照符号が付けられている。
【0027】
図1は、自動車内に構築することができる、または自動車用に設けることができる車両用照明器具10を示している。車両用照明器具10は、たとえば、自動車の周囲を照らすためのヘッドライトとして構成されていてよい。これはたとえば、自動二輪車用のヘッドライトであってよい。車両用照明器具10は、たとえば、発光ダイオード装置12を含み得る機能回路11を有し得る。したがって、この場合、機能回路11は、LED照明装置である。
【0028】
発光ダイオード装置12は、動作電圧13が供給されると、光を生成することができる。動作電圧13は、車両用照明器具10の場合には、コンバータ回路14を用いて生成可能であり、コンバータ回路14は、電圧変換によって供給電圧Vinから出力電圧Voutを生成し、この出力電圧は、動作電圧13として予定されていてよい。コンバータ回路14では、電気回路を、たとえば自動車のボディまたはフレームに基づいて形成されていてよい接地電位15によって閉じることができる。供給電圧Vinは、たとえば自動車の搭載電源網によって生成または提供可能である。供給電圧Vinは、たとえば、10ボルトから50ボルトの範囲の電圧値を有することができる。
【0029】
出力電圧Voutは、供給電圧Vinの電圧値とは異なる電圧値を有し得る。このために、コンバータ回路14は、スイッチングコンバータ16を提供することができる。スイッチングコンバータは、
図1に示された例では、ステップダウンコンバータである。スイッチングコンバータ16を、ステップアップコンバータとして構成することもできる。コンバータ回路14は、スイッチングコンバータ16を実現するために、電子的なスイッチS、たとえばダイオードDである整流素子、たとえばチョークコイルであるインダクタンスL、さらに出力コンデンサまたは蓄積コンデンサとして出力静電容量Cを有することができる。上述した要素の相互接続を、それ自体公知の方法で行うことができる。インダクタンスLの電流Iの電流の大きさを調整するために測定抵抗Rを設けることができる。測定抵抗Rは、シャント抵抗として構成されていてよい。測定抵抗Rにわたって降下する電圧Vを、測定回路17を用いて、それ自体公知の方法で測定または検出することができる。電圧Vは、それらの間に測定抵抗Rが接続されていてよい2つの電位RHとRLとの間の電位差である。電圧Vは、コンバータ回路14の電気的な運転変数を表し、電流Iの電流の大きさと相関する。
【0030】
電流Iおよび/または出力電圧Voutの調整は、制御装置18によって実行可能である。このために、制御装置18は、たとえば、少なくとも1つの比較器19とマイクロコントローラ20とを有することができる。比較器19の代わりに、電圧Vの電圧値の比較、すなわち一般的に電気的な運転変数の比較を、マイクロコントローラ20のデジタルの比較ユニット21によって実行することもできる。このために、マイクロコントローラ20は、アナログ-デジタル変換器を介して測定回路17と結合されていてよい。制御装置18は、電流Iおよび/または出力電圧Voutを調整するためにスイッチSを切り替えるために、スイッチSと結合されていてよい。制御装置18はさらに、たとえばマイクロコントローラ20を用いて実現可能なカウンタ22を有することができる。カウンタ22は、時間tを測定するために設けられていてよい。
【0031】
また、コンバータ回路14が、車両用照明器具10とは異なる機器において提供されていても、使用されていてもよい。
【0032】
図2は、制御装置18によって、これに基づいてセルフテスト23をどのように実現できるかを示している。セルフテスト23を用いて、たとえば、コンバータ回路14のコンポーネントとしてのインダクタンスLを検査することができる。したがって、インダクタンスLは、セルフテスト23によって検査されるべき、コンバータ回路14のコンポーネントを表している。電圧Vおよび時間は、セルフテスト23のための監視変数として予定されていてよい。
【0033】
セルフテスト23は、所定の動作点24から始まる。動作点24では、調整された電気的な運転変数、すなわちたとえば電圧Vが0の値を有していてよく、すなわち動作点24においてV=0mVであってよい。すなわち、電流Iの電流値は0アンペアである。動作点24から開始して、スイッチSが閉成され、その結果、コンバータ回路14が動作する。すなわち、供給電圧Vinがスイッチングレギュレータ16において作用する。スイッチSの閉成によって、測定サイクルMが始まる。時間tにわたって、電気的な運転変数、すなわちここでは電圧Vの時間的な経過25が生じる。電気的な運転変数、すなわち電圧Vが終了基準26を満たすと、測定サイクルMは終了する。終了基準では、電圧Vが、示された実施形態では10mVである、閾値27に到達し得る。閾値27は、測定サイクルMが終了する、検査されるべき運転変数の終了値を表す。
【0034】
したがって、測定時間T、すなわち測定サイクルMの開始から終了基準26に到達するまで、または終了基準26が満たされるまで続く持続時間の測定値が検出される。測定時間Tは測定値を表し、これは検査ステップ28において、検査値29として直接的に使用することもでき、これによって検査値29、すなわちここでは測定時間Tが基準範囲Tok外にあるか否かを検査することができる。検査値29が基準範囲Tok外にある場合、エラー信号30を生成することができる。エラー信号30は、検査値29が基準範囲Tok外にあることを知らせる。したがって、基準範囲Tokは、コンバータ回路14が意図したように機能しているまたは正常に機能するときに生じる、すべての許容される正常検査値を示すまたは含んでいるまたは規定するように、規定または選択されていてよい。すなわち、検査値29が基準範囲Tok外にある場合、これは、コンバータ回路14が意図したように機能していない、または正常に機能しないことを意味する。したがって、エラー信号30に基づいて、ユーザに警告を与える、かつ/またはユーザを保護するための措置を制御することができる。たとえば、機能回路11をオフすることができる。
【0035】
図3は、ステップダウンコンバータを実現するためのコンバータ回路14の可能な構成を示している。スイッチSは、トランジスタ、特にFET(電界効果トランジスタ)に基づいて実現されていてよい。
【0036】
搭載電源網31は、電圧源によって表されている。供給電圧Vinは、たとえば、12ボルトであってよい。他のコンポーネントにも、例として、具体的な値が記入されている。機能回路11は、負荷抵抗Rloadを表している。スイッチSのトランジスタのゲートgにゲート電圧Vgを提供する制御回路32は、
図3において電圧源によって表されている。
【0037】
図4は、時間tにわたって、監視変数として機能する電気的な運転変数として使用される電圧V、ならびにゲート電圧Vgおよび出力電圧Voutに対する、生じた経過を示している。測定サイクルMが始まる動作点24は、ここでもI=0アンペアによって表されている。一般的に本発明では、コンバータ回路14の動作開始とは、コンバータ回路が、特に100ミリ秒または10秒より長い、または1分より長い比較的長い動作休止後にはじめて、スイッチSの閉成によって供給電圧Vinで再び給電されるときのことであり得る。測定サイクルMは、電圧Vが終了基準26の閾値27に到達したときに終了する。得られた、測定サイクルMの測定された測定時間Tは、検査ステップ28のための検査値29として再び使用可能である。出力電圧Voutは、測定サイクルMの終了時に、機能回路11が動作する、すなわち、たとえば発光ダイオード装置12が光を生成する動作電圧13よりも小さい電圧値33を有する。測定サイクルMの終了後のゲート電圧Vgのさらなる経過は、
図4に詳細には示されておらず、
図4において、三点リーダーAによって暗に示されている。
【0038】
図5は、コンバータ回路14の別の可能な構成を示しており、ここでは、インダクタンスLは、より小さいインダクタンス値を有しているので、
図3に示されたコンバータ回路と比較して、より高いスイッチング周波数が生じる。
【0039】
図6は、このような場合にも、時間tにわたって、電圧V、ゲート電圧Vgおよび出力電圧Voutの適切な経過が生じることを示している。これらに基づいて技術的に実現可能な終了基準26を規定することができる。測定サイクルMの終了後のゲート電圧Vgのさらなる経過は、同様に
図6に詳細には示されておらず、
図6において、三点リーダーAによって暗に示されている。
【0040】
図7は、ステップアップコンバータとしてのコンバータ回路14の構成を示している。
【0041】
図7では、このような実施形態において、測定抵抗RをスイッチSの上流に接続することも、下流に接続することも可能であることが示されている。すなわち、測定抵抗R‘がたとえば、スイッチSと接地電位15との間に接続されていてよい。この場合、測定抵抗Rは不要である。
【0042】
図8は、時間tにわたって、電圧V、ゲート電圧Vgおよび出力電圧Voutの経過を示している。ここでも、終了基準26が、ステップアップコンバータに対して規定されていてよく、この終了基準は、同様に、条件I=0Aが測定サイクルMの開始に対する動作点24として定められている場合に使用可能である。
【0043】
図9は、ステップアップコンバータとしてのコンバータ回路14の別の実施形態を示している。
図9に示されているコンバータ回路の場合、インダクタンスLは、
図7に示されているコンバータ回路の場合よりも大きい。
【0044】
図10は、時間tにわたって、このような場合にも、測定サイクルMの終了基準26を規定することができることを示しており、これによって動作点24(I=0A)から開始して、電圧Vが閾値27に到達するまで、測定時間Tを求めることができる
【0045】
図11は、終了基準26および基準範囲Tokに基づいてコンバータ回路14のセルフテストを実行することができる方法34の可能な構成を示している。
【0046】
ステップS10では、たとえば、セルフテストのためのトリガ信号35に応じて、1つまたは複数の測定サイクルMの実行を開始することができる。その後、ステップS11において、コンバータ回路14が通電されていない動作点24から開始して、ステップS12においてスイッチSが閉成され、これによって供給電圧Vinが印加される。この結果、動作点24から開始して、電流Iが増大し得る。スイッチSの閉成とともに、ステップS13において、カウンタ22(
図1を参照)を開始させることができる。これによって、測定サイクルMの開始以降、すなわち、スイッチSの閉成以降の時間が測定される。ステップS13において、カウンタ22はたとえば値0で初期化される。
【0047】
ステップS14において、カウンタ22は、水晶発振器またはクロック36によってカウントアップされ得る。
【0048】
ステップS15では、監視変数、ここでは電圧Vが終了基準26を満たしているか否か、すなわち閾値27に到達しているか否かを検査することができる。負の検査結果(図では符号「-」で表されている)の場合には再び、ステップS14に戻ることがあり、すなわち待機が行われ、これによって、カウンタ22がクロック36によってさらにインクリメントされる。正の検査結果(図では符号「+」で表されている)の場合には、カウンタ22を停止するステップS16に導かれることがある。ステップS17においてまたスイッチSが開放可能であり、この結果、出力電圧Voutがステップダウンコンバータの場合にさらに増大することを阻止することができる。ステップS18において、測定された測定時間Tから、すなわち、カウンタ22のカウンタ状態から求められた検査値29が基準範囲Tok外にあるか否かを検査することができる。検査値29が基準範囲Tok内にある場合(負の検査結果)、ステップS19において、コンバータ回路14は、「正常である」と伝達されてよい、または解放されてよい。検査値29は妥当である。これに対して、正の検査結果の場合、すなわち検査値29が基準範囲Tok外にある場合、エラー信号30が、ステップS20において生成され得る。
【0049】
これによって、セルフテストが終了されてよい。
【0050】
図12では、
図11に示された方法のフローの前に行われ得る較正フェーズ37が示されている。ステップS21では、たとえば、コンバータ回路14または車両用照明器具10の製造者のもとで較正フェーズが開始可能である。次に、閾値27等の終了基準26の調整38を自由選択的に実行することができる。このために、ステップS22において供給電圧Vinの値を定めることができ、さらに終了基準26の閾値27を定めることができる。ステップS23において、たとえば、シミュレーションに基づいて、既知の動作点24、たとえばI=0Aでの動作開始から開始して、電圧Vが閾値27に到達したであろう、または一般的に終了基準26が満たされたであろう、予想される測定時間Tを求めることができる。ステップS24において、この推定された測定時間Tが時間検出装置、たとえばカウンタ22の所定の最低精度で検出可能か否かを、妥当性基準39を用いて検査することができる。このために、推定された測定時間Tを、いわゆるティック持続時間(Tickdauer)、すなわち、クロック36の2つのインクリメントの間の持続時間で割ることができ、結果が所定の妥当性範囲内にあるか否かを検査することができる。結果が所定の妥当性範囲内にない場合には、ステップS22の繰り返しにおいて、別の閾値27を定めることができる。結果が所定の妥当性範囲内にある場合には、調整38は終了し、ステップS25において供給電圧Vinをコンバータ回路14に印加することができ、コンバータ回路14の動作開始が動作点24において生じ、ステップS26においてスイッチSを閉成することができる。スイッチSが閉成されると、ステップS27においてカウンタ22を開始させることができる。カウンタ22をここで、値0で初期化することができる。ステップS28において、クロック36は、カウンタ22をインクリメントすることができる。ステップS29において、監視変数、ここでは電圧Vが閾値27に到達したか否か、または一般的に終了基準26が満たされているか否かを検査することができる。そうでない場合、ステップS28においてさらに続行され、すなわち、時間測定が続けられる。そうではなく、終了基準26が満たされている場合、ステップS30においてカウンタ22は停止されてよい。すなわち、一般的に測定時間Tを検出することができる。ステップS31において、スイッチSを開放することができる。次に、ステップS32において、測定された測定時間Tを使用して、基準範囲Tokを定めることができる。基準範囲Tokは、たとえば、測定された測定時間Tを含有していてよい。これは、自由選択的にさらに、測定された測定時間Tよりも大きい別の値および/または小さい別の値を含んでいてよい。これは、基準範囲Tokの大きさを定めることができる所定の許容誤差値40に基づいて定められてよい。次に、ステップS32において、較正フェーズ37が終了されてよい。これによってコンバータ回路14はここで引き渡されてよい、または動作のために解放されてよい。
【0051】
したがって、コンバータ回路14のある実施形態での課題は、集積回路を用いて、コンポーネント、たとえば電流調整器を検査し、さらに自身の妥当性検査のためのセルフテストも提供することである。この際に、基準またはコストがかかり、場所を取る付加的なコンポーネントへの依存の問題を解決する必要はない。LED照明装置は個々に橋絡可能な多数の照明手段で構築されているので、車両照明用のスイッチングレギュレータは通常、自身の出力側で安定した状態または予測可能な状態を見いださない、ということに留意されたい(出力電圧Voutは、静電容量Cの充電状態および機能回路11の動作状態に関連する)。これらの個々の橋絡は、コンバータ回路14と同期していない別個の制御部によってアクティブ化および非アクティブ化される。これによって、スイッチングレギュレータ16の出力側での状態は常に変化する。このような理由から、制御装置18は、運転開始後の初期状態を既知の動作点24として使用する。しかしこれは特に関係が既知の場合には、このような時点に限定されない。コンバータ回路14は、電流IがインダクタンスLにおいて、自身の振幅がある程度の値だけ変化するのに必要な時間を、電流の正しさの特性量として使用する。このために、調整の際に使用できる基準および比較器は、電流の振幅が自身の変化時にはじめにある値を取り、後に別の値を取るように設定される。その間の測定時間Tが測定され、妥当性検査に使用される。最も単純な例は、開始値(第1の値)としての初期状態である。運転開始時に、インダクタンスを流れる電流は0に等しい。したがって、第2の値を設定しさえすればよい。これは、有利には、一方では合理的に測定可能な時間が依然として存在し、他方ではスイッチングレギュレータの出力側に実質的な電圧がまだ生じない程度に小さく設定される。ここで電流の増大は、入力電圧に関連し、(スイッチングレギュレータのトポロジーに応じて)出力電圧にも関連する。しかし、後者はまさにスイッチオン時点においてはまだ0であり、測定の終了時にはまだ小さいので(結局のところ、電流の振幅値は小さく設定されていたので、まさにこのような電圧は小さいままである)、妥当性検査の精度に対して無視できる。ここでも既に、可変の関係がここで妥当性検査の精度に直接的に作用するということが問題視されているので、パラメータを注意深く選択することが必要である。さらに、電流の増大はインダクタンスにも関連する。したがって、測定された時間値の妥当性検査には、回路に適した基準時間値を使用する必要がある。測定された時間値を、回路の特性を反映する基準係数を介して標準化することもできる。しかし、入力電圧も持続時間に影響を与えるため、これは、基準係数において、または測定された時間値の評価において、基準時間値を用いて(たとえば、較正フェーズ37を用いて)動的に考慮されるべきである。
【0052】
実際には、電流振幅は、測定抵抗Rを介して電圧Vに変換される。高い電流Iで動作する回路の場合には、小さいインダクタンスLと小さい測定抵抗Rとが使用される。小さい電流Iの回路の場合には、大きいインダクタンスLと大きい測定抵抗Rとが合理的である。電流の増大はインダクタンスLに線形に間接的に比例するが、電圧降下Vの増大は測定抵抗Rに線形に直接的に比例するので、これによって、測定抵抗Rを通る電流Iを表す電圧値は常に、ほぼ入力電圧および出力電圧にのみ関連する時間的な経過を有する。これは、回路が大きい電流I用に設計されているか、または小さい電流I用に設計されているかに関係しない。これも制御下に置いている場合には(たとえば、スイッチオン時点で、出力側の電圧は0であり、測定の終了時に、入力電圧と比較して小さい)、これらの関係を知るだけで、電流Iの正しさを評価することができる。すなわち構成部分(R,L)の値が既知である場合、電流増大も既知である。さらにこれが既知である場合、電流振幅が所望の変更を遂行するのにかかった持続時間が既知である。持続が長すぎたり短すぎたりする場合には、基準値(バンドギャップ、電圧フォロア、安全評価分類を伴う機能回路の電流を調整するための統合されたモジュールの内部回路全体から形成される)が誤っている。照明の安全目標を達成するためにある程度の許容誤差が許されるので、このような測定は特別に正確である必要はない。したがって、このような妥当性検査中の出力電圧の小さい変化に起因する誤差は無視できる。
【0053】
ここでこのような方法から得られる利点は、一連の妥当性検査において間隙を残すことなく、また付加的なコンポーネントを用いることなく、時間測定を用いて、スイッチングレギュレータの電流の十分な精度を検査することができる、ということである。この機能は純粋にデジタルであるので、すなわち僅かなゲートしか必要としないので、混合信号ICに実装するのは極めて容易である。例は、100μHのインダクタンスL、100mOhmの測定抵抗Rおよび100mAの電流振幅の変化を有する回路である。ここで、入力電圧が約10Vである場合、約7μsの時間が生じる。測定抵抗Rにわたって測定された電圧Vの変化はここで10mVである。それぞれ入力電圧が同様に10Vであり、測定抵抗にわたった10mVの変化が目的の場合、47μHおよび47mOhm、ならびに10μHおよび10mOhmの場合に同じ時間が生じる。出力電圧Voutの変化は、主に、インダクタンスLのエネルギーを受容する必要のある出力静電容量Cによって決まる。実際の値は、比較的小さい電流の場合は0.5μFであり、比較的大きい電流の場合には2.2μFである。他の理由から、より大きい値がCに対して選択されることがあり、これは誤差を少なくする。
【0054】
図1に示された回路はさらに、スイッチS、ダイオードD、測定抵抗R、インダクタンスLおよび出力コンデンサCから構成されるステップダウンコンバータを示している。さらに、電流Iによって生成される、測定抵抗Rにわたった電圧降下Vが生じる。電流Iは一方ではインダクタLを通って流れるが、測定抵抗Rも通って流れる。その動的な動作は、インダクタンスLと2つの電圧VinおよびVoutとによって決定される(少なくともスイッチSが閉成されているフェーズにおいて)。スイッチSが開放されている場合、動作はもはやVinに関連しないが、代わりに、また、ダイオードDにわたった電圧降下に関連し、すなわち、大部分において、不特定の散乱を伴う。Voutと比べてVinが大きく、RおよびLの通常値(室温値)が判明している場合には、動作が極めて良好に規定される。実際は、それらがアプリケーションに適している限り、LおよびRが既知である必要はない。一度、既知の値への電流増大の測定時間Tが測定されると、このような時間測定を基準値として使用することができる。再度の測定の場合には、極めて類似した値が生じる必要がある(Tokによって規定される)。そうでない場合には、電圧測定に対する基準または測定抵抗RまたはインダクタンスLのいずれかが変更されている。これらはすべて安全に関連する機能回路に影響する可能性があり、この方法を介して診断可能である。原則的に、他のあらゆる電流増大または電流減少が妥当性検査に使用可能であろう。しかし、境界条件は、最初は安定していて既知であるが、これらは電流供給部の動作中には典型的に、もはや安定していないため、測定される時間は比較的大きい変動の影響を受ける。これは比較的大きな修正または統計的手法を必要とする。たとえば、既知の動作点において測定を行い、このような測定を頻繁に繰り返して、すべての測定の時間値を平均化することができる。特に動作中に変更を検出する必要がある場合には、安定した動作点の移動平均値を使用することもできる。この方法は、ステップダウンコンバータだけに限定されず、ここでこれは特に適している。なぜなら、測定抵抗は調整および電流測定の両方に使用できるからである。ここでは、測定抵抗をインダクタンスの前または後のどちらに設置するかも重要ではない。この方法は、スイッチSが閉成されている特定の時間tで、正しさの尺度として使用される出力電圧Voutの変化が生じることも含んでいる。このような方法は、測定抵抗RがインダクタンスLと直列ではなく、スイッチSと直列である場合および/または電圧Voutが安全に関連する変数である場合に適している。さらに、閉成されたスイッチSの既知の持続時間Tの後の測定抵抗Rにわたった電圧Vの最大値も、調整の正しさの妥当性検査のために使用できるだろう。
【0055】
測定抵抗および閾値電圧の適切な選択によって実行されたシミュレーションにおいて求められた約4μsから約10μsまでの妥当性検査時間は、高いクロックレートを有する近年のICシステムにおいて、快適かつ高解像度に検出可能である。同時に、このような時間は短いので、ICシステムの残りの時間シーケンス(ウォッチドッグイベント、スタートアップルーチン等)において実質的な変化を生じさせることはない。
【0056】
したがって全体的に、スイッチングコンバータにおいて、電流の大きさおよびコンポーネントをどのように妥当性検査することができるのかが示されている。
【符号の説明】
【0057】
10 車両用照明器具
11 機能回路
12 発光ダイオード装置
13 動作電圧
14 コンバータ回路
15 接地電位
16 スイッチングコンバータ
17 測定回路
18 制御装置
19 比較器
20 マイクロコントローラ
21 比較ユニット
22 カウンタ
23 セルフテスト
24 動作点
25 経過
26 終了基準
27 閾値
28 検査ステップ
29 検査値
30 エラー信号
31 搭載電源網
32 制御回路
33 電圧値
34 方法
35 トリガ信号
36 クロック
37 較正フェーズ
38 調整
39 妥当性基準
40 許容誤差値
A 三点リーダー
C 出力静電容量
D ダイオード
g ゲート
L インダクタンス
M 測定サイクル
R 測定抵抗
S スイッチ
T 測定時間
Tok 基準範囲
Rload 負荷抵抗
Rh 電位
RL 電位
R‘ 測定抵抗
S10-S33 ステップ
V 電圧
Vg ゲート電圧
Vin 供給電圧
Vout 出力電圧