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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】整形外科用生体吸収性インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/42 20060101AFI20220208BHJP
   A61F 2/28 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 27/10 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A61L27/42
A61F2/28
A61L27/10
A61L27/18
A61L27/58
A61L27/44
A61L27/50
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020542189
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018078007
(87)【国際公開番号】W WO2019076788
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】17196561.9
(32)【優先日】2017-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520132403
【氏名又は名称】アークティック・バイオマテリアルズ・オサケユフティオ
【氏名又は名称原語表記】Arctic Biomaterials Oy
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【弁理士】
【氏名又は名称】大釜 典子
(72)【発明者】
【氏名】ハッリ・ヘイノ
(72)【発明者】
【氏名】ティモ・レフトネン
(72)【発明者】
【氏名】ミッコ・フットゥネン
(72)【発明者】
【氏名】ミカ・レフトラ
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-511751(JP,A)
【文献】特開2004-160157(JP,A)
【文献】特表平09-502999(JP,A)
【文献】特表2016-517319(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105641751(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0141111(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0173868(US,A1)
【文献】SCIENTIFIC REPORTS,2016年,6:23058,pp.1-7,DOI:10.1038/srep23058
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
A61F
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の連続した一連の層内に、自由な所定の繊維配向の連続強化複合フィラメントを含む整形外科用インプラントであって、
前記連続強化複合フィラメントは、生体吸収性ポリマーマトリクスと連続する生体吸収性強化繊維または繊維束とを含み、
これにより、連続層の前記連続する生体吸収性強化繊維または繊維束が少なくとも部分的に混ざり合いおよび/または絡み合って、3次元的にインターロックされた連続繊維構造体を形成する、整形外科用インプラント。
【請求項2】
インプラントは1つ以上の穴を含み、
前記穴は、連続強化複合フィラメントによって少なくとも1回取り囲まれる、請求項1に記載の整形外科用インプラント。
【請求項3】
前記連続する生体吸収性強化繊維または繊維束が、連続する生体吸収性ガラス繊維または繊維束である、請求項1または2に記載の整形外科用インプラント。
【請求項4】
2~200層の強化複合フィラメントを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項5】
連続強化複合フィラメントの平均フィラメント直径は、0.05mm~20mmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項6】
単一の連続する強化繊維の平均繊維直径は、1~35μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項7】
連続する生体吸収性ガラス繊維は溶融由来の生体吸収性ガラス繊維である、請求項1~6のいずれか1項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項8】
前記連続する生体吸収性強化繊維は溶融由来の生体吸収性ガラス繊維であり、以下の重量%の範囲(ガラス繊維組成物の総重量に対するパーセントとして)の組成を有する、請求項7に記載の整形外科用インプラント。

SiO2 40~90 重量%、
Na2O 5~30 重量%、
K2O 0~20 重量%、
CaO 5~30 重量%、
MgO 0~10 重量%、
P2O5 0~10 モル%、
B2O3 0~15 重量%、
Al2O3 0~5 重量%、
CaF3 0~25 重量%、
SrO 0~10 重量%、および
Li2O 0~1 重量%
【請求項9】
前記生体吸収性ポリマーマトリクスが、生体吸収性ポリエステル、PLLA(ポリ-L-ラクチド)、PDLLA(ポリ-DL-ラクチド)、PLDLA、PGA(ポリ-グリコール酸)、PLGA(ポリ-ラクチド-グリコール酸)、PCL(ポリカプロラクトン)、PLLA-PCLおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項10】
前記整形外科用インプラントは強化複合フィラメントからなる、請求項1~のいずれか1項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項11】
(a)生体吸収性ポリマーマトリクスと連続する生体吸収性繊維または繊維束とを含む連続強化複合フィラメントを、3次元制御繊維配置デバイスによって、連続した一連の層内に自由な所定の繊維配向で堆積させて、フィラメントプリフォームを形成する堆積工程と、
(b)金型で前記フィラメントプリフォームを圧縮成形して、整形外科用インプラントの最終形状を有する成形品を得る成形工程と、を含む整形外科用インプラントの製造方法。
【請求項12】
前記フィラメントプリフォームの自由な所定の繊維配向を設計する工程をさらに含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記整形外科用インプラントを得るために、前記成形品を表面仕上げする工程をさらに含む、請求項11または12に記載の製造方法。
【請求項14】
連続強化複合フィラメント構造体は、ソフトウェアによる自由描画を使用して層ごとに規定される、請求項1113のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
連続強化複合フィラメント構造体は、ソフトウェアによる自由描画とコンピュータ計算の組み合わせを使用して層ごとに規定される、請求項1113のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
連続強化複合フィラメント構造体は、ソフトウェアによるコンピュータ計算を使用して層ごとに規定される、請求項1113のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体吸収性ポリマーマトリクスと連続生体吸収性繊維または繊維束とを含む連続強化複合フィラメントから製造される整形外科用インプラント、および生体吸収性ポリマーマトリクスと連続生体吸収性繊維または繊維束とを含む連続強化複合フィラメントからから整形外科用インプラントを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
整形外科的外傷および再建手術における内部固定用の金属インプラントの使用を回避するために、典型的にはラクチドベースのポリマーから作られた生体吸収性インプラントが研究され、1980年代中頃から臨床使用に適用されている。しかしながら、ラクチドベースポリマー材料自体の機械的特性は、それほど良好ではない。それらは、整形外科用インプラントで一般的に使用される金属合金と比較して、比較的弱くてもろい。インプラント材料の分解中における生体適合性および骨の内部成長を改善するために、セラミック粒子、典型的にはヒドロキシアパタイトおよびリン酸三カルシウム(TCP)、例えばβ-TCPがポリマーマトリクスに添加されている。ただし、これらの複合材料は、純粋なポリマーで作られたインプラントと比較して、機械的特性が優れているというよりは、むしろ悪い。
【0003】
生体吸収性ガラス材料は、1960年代後半から、顆粒またはブロックで、骨充填材料として活用されている。ガラスはもろく、したがって固定インプラント材料自体としてはあまり適していない。ただし、生体吸収性シリカベースガラス材料の一部は、引張強度が約2000MPaの細いガラス繊維に線引きすることもできる。これらのガラス繊維と生体吸収性ポリマーとを組み合わせることで、優れた特性を持つ強力な強化生体吸収性複合材料を形成できる。強度は金属材料に近いが、材料はなお生体吸収性である。さらに、これらのタイプのガラスは、新しい骨形成および抗菌特性の保持に有益であることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
繊維複合材料の特性は、繊維方向では高強度で、繊維と垂直な方向では低強度なことである。このことから、製品中の繊維配向の制御とそれによる製品の強度を制御する方法を提供するという目標を設定する。
【0005】
このタイプの熱可塑性ガラス繊維複合材料から複合製品を製造するための典型的な製造技術は、射出成形と圧縮成形である。
【0006】
射出成形プロセスでは、ポリマーとガラス繊維を含むペレットを射出成形機の投与ユニットに供給する。それらはプロセス中に溶融され細断されるため、最終製品が良好な補強効果を得るのに十分な長さの繊維を保持することは困難である。さらに、繊維配向は、射出時の金型内の材料流動によってのみ制御される。繊維配向が、インプラント設計において考えられた応力に対して常に最適であることを確実にすることは困難である。
【0007】
従来の圧縮成形技術では、繊維構造体は、典型的には、標準的な繊維の角度を有する織り構造(woven structures)からなるプリフォームとして金型に配置される。プリフォームの準備は手間がかかる。通常、それは切断、成形、積み重ねからなる手動作業である。この方法では、製品を用途の要件に適合させるために、インプラントの特定の領域の繊維配向を調整することも困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の簡単な説明)
したがって、本発明の目的は、上記の問題を克服するように、整形外科用インプラントおよび整形外科用インプラントを製造する方法を提供することである。本発明の目的は、方法および整形外科用インプラントによって達成され、それらを特徴付けるものは独立請求項に記載されている。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0009】
本発明は、インプラント中において、所望の繊維配向を層ごとに自由に規定可能にする、という考えに基づいている。これは、生体吸収性ポリマーマトリクスと、連続する生体吸収性の繊維または繊維束(連続生体吸収性繊維または繊維束:a continuous bioabsorbable fiber or fiber bundle)と、を含む連続する強化複合フィラメント(連続強化複合フィラメント)を、3次元制御繊維ストランド供給機(例えば3Dプリンター)によって、連続した一連の層(continuous successive layers)内で所定の繊維配向で堆積させることで実現される。これにより、複数の連続した一連の層内に連続する生体吸収性強化繊維または繊維束(連続生体吸収性強化繊維または繊維束:a continuous bioabsorbable reinforcing fiber or fiber bundle)を含む、フィラメントプリフォームが形成される。有利なことに、フィラメントプリフォームを整形外科用インプラントの最終形状に成形すると、連続生体吸収性強化繊維または繊維束は、熱および圧力下で少なくとも部分的に混ざり合いおよび/または絡み合い、これにより3次元的にインターロック(または連結)された連続繊維構造体が形成される。
【0010】
(図面の簡単な説明)
以下において、本発明は、添付の[付随する]図面を参照しながら、好ましい実施形態によって更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、配向設計ソフトウェアで繊維配向を層ごとに設計する工程を示している。
図2図2は、例示的な例のフィラメントプリフォームのプリンティングを示している。
図3図3は、圧縮成形された直後のインプラントを示している。
図4図4は、圧縮成形された遠位橈骨プレートを示している。
図5図5は、自動生産モジュールの概略図を示している。
図6図6は、3つのインプラントサンプルの機械的テストの結果を示している。
図7図7は、遠位橈骨プレート内の繊維配向のuCTビューを示している。
図8図8は、遠位橈骨プレート内の繊維配向のuCTビューを示している。
図9図9は、遠位橈骨プレート内の繊維配向のuCTビューを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、複数の連続した一連の層内に、自由に予め決定した(自由な所定の)繊維配向の連続強化複合フィラメントを含む整形外科インプラントを提供するものであり、前記連続強化複合フィラメントは、生体吸収性ポリマーマトリクスと連続生体吸収性強化繊維または繊維束を含み、これにより、連続層の前記連続生体吸収性強化繊維または繊維束が少なくとも部分的に混ざり合い(intermingle)および/または絡み合って(intertwine)、3次元的にインターロックされた連続繊維構造体を形成する。
【0013】
本出願で使用される用語は、他に定義されない限り、1987年および1992年の生体材料に関するコンセンサスカンファレンスで合意された用語であり、Williams, DF(編):生体材料における定義:欧州生体材料学会のコンセンサスカンファレンスの議事録、イギリス、チェスター1986年3月3日~5日、アムステルダム、エルゼビア1987年、および Williams DF, Black J, Doherty PJ. 生体材料の定義に関する第2回コンセンサスカンファレンス、In:Doherty PJ, Williams RL, Williams DF, Lee AJ(編)、生体材料と組織のインターフェース、アムステルダム:エルゼビア1992年を参照されたい。
【0014】
本明細書において「任意の(optional)」または「任意で(optionally)」とは、後述する事象または状況が発生する可能性はあるが、発生する必要はないこと、および事象または状況が発生する場合と発生しない場合とを含む記述であることを意味する。「含む(Comprises)」または「含む(comprising)」とは、後述する組み合わせ(セット)に他の要素を含んでもよいが、必ず含む必要はないことを示す。
【0015】
本発明の整形外科用インプラントは、連続強化複合フィラメント、すなわち、生体吸収性ポリマーマトリクスと連続生体吸収性強化繊維または繊維束とを含む生体吸収性フィラメントを含んでおり、生体吸収性ポリマーの機械的強度を高めている。
【0016】
「連続強化複合フィラメント(continuous reinforced composite filament)」という用語は、少なくとも最終製品の最大寸法の長さを有するフィラメントを指す。好ましくは、連続強化複合フィラメントの長さは、最終製品の最大寸法の少なくとも2~10倍である。最終製品の強度は連続生体吸収性強化繊維の長さに比例するため、最も好ましくは、連続強化複合フィラメントの長さは、最終製品を形成するためにフィラメントのストランドが1本のみ必要とされるような長さである。
【0017】
「フィラメント(filamen)」という用語は、生体吸収性ポリマーマトリクスと構造体のコアとしての連続生体吸収性強化繊維または繊維束とを含む、任意の適切な堆積可能な構造体を指す。したがって、フィラメントは、例えば、球状(spherical)(例えば、ストランドまたはロッド)または平面状(planar)(例えば、テープ)であってもよい。好ましくは、フィラメントは球状である。
【0018】
生体吸収性ポリマーに対する連続生体吸収性強化繊維または繊維束の重量比は、好ましくは、連続生体吸収性強化繊維の含有量が強化複合フィラメントの総重量の10~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは30~70重量%、最も好ましくは40~60重量%である。
【0019】
連続強化複合フィラメントの最小寸法は、好ましくは0.05mm~20mm、より好ましくは0.5mm~3.0mm、最も好ましくは0.8mm~2.0mmである。
【0020】
連続強化複合フィラメントが球状の連続強化複合フィラメントの形態の場合、連続強化複合フィラメントの平均フィラメント直径は、好ましくは0.5mm~3.0mm、より好ましくは0.8mm~2.0mmである。フィラメントの直径が大きいと、連続した層の連続生体吸収性強化繊維または繊維束の混ざり合いや絡み合いが強化され、繊維の敷設工程(または構築工程:laying process)が速くなる。
【0021】
「生体吸収性(bioabsorbable)」という用語は、生体組織および/または生理液と接触すると、移植後、その機械的特性を一定期間維持しながら、体内で分解、再吸収および/または吸収される材料を指す。したがって、例えば、用語「生体再吸収性(または生体吸収性:bioresorbable)」は、用語「生体吸収性」と交換可能に使用できる。
【0022】
本発明の生体吸収性ポリマーは、ホモポリマー、もしくはランダムコポリマー、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを含むコポリマーであってもよい。さらに、生体吸収性ポリマーは、線状ポリマー、分岐ポリマー、またはデンドリマーであってもよい。生体吸収性ポリマーは、天然または合成由来であってもよい。
【0023】
本発明によれば、以下の吸収性のポリマー、コポリマーおよびターポリマーを適切な生体吸収性ポリマーとして使用できる。たとえば、ポリラクチド(PLA)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-DL-ラクチド(PDLLA);ポリグリコリド(PGA);グリコリドのコポリマー、グリコリド/トリメチレンカーボネートコポリマー(PGA/TMC); ラクチド/テトラメチルグリコリドコポリマー、ラクチド/トリメチレンカーボネートコポリマー、ラクチド/ d-バレロラクトンコポリマー、ラクチド/ε-カプロラクトンコポリマー、L-ラクチド/ DL-ラクチドコポリマー、グリコリド/ L-ラクチドコポリマー(PGA/PLLA)、ポリラクチド-コ-グリコリドなど、PLAの他のコポリマー;ラクチド/グリコリド/トリメチレンカーボネートターポリマー、ラクチド/グリコリド/ε-カプロラクトンターポリマー、PLA/ポリエチレンオキシドコポリマーなどのPLAのターポリマー;ポリデプシペプチド;非対称3,6-置換ポリ-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン; ポリヒドロキシブチレート(PHB)などのポリヒドロキシアルカノエート;PHB/b-ヒドロキシバレレートコポリマー(PHB/PHV); ポリ-b-ヒドロキシプロピオネート(PHPA);ポリ-p-ジオキサノン(PDS); ポリ-d-バレロラクトン-ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-DL-ラクチド)コポリマー;メチルメタクリレート-N-ビニルピロリドンコポリマー;ポリエステルアミド;シュウ酸のポリエステル;ポリジヒドロピラン;ポリアルキル-2-シアノアクリレート;ポリウレタン(PU);ポリビニルアルコール(PVA);ポリペプチド;ポリ-b-リンゴ酸(PMLA);ポリ-b-アルカン酸;ポリカーボネート;ポリオルトエステル;ポリリン酸塩; ポリ(エステル無水物);およびそれらの混合物; ならびに、糖、デンプン、セルロースおよびセルロース誘導体、多糖類、コラーゲン、キトサン、フィブリン、ヒアルロン酸、ポリペプチドおよびタンパク質などの天然ポリマーなどが挙げられる。上記のポリマーの任意の混合物や、それらの様々な形態も使用できる。
【0024】
特に、適した生体吸収性ポリマーの例としては、これらに限定されないが、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、カーボネート、ジオキサノン、δ-バレロラクトン、1、ジオキセパノン、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ-ヒドロキシバレレート、β-ヒドロキシプロピオネート、α-ヒドロキシ酸、ヒドロキシブテレート、ポリオルトエステル、ヒドロキシアルカノエート、チロシンカーボネート、ポリイミドカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリウレタン、ポリ無水物からなるポリマーおよびコポリマーならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。適した天然生分解性ポリマーは、コラーゲン、キチン、キトサン、セルロース、ポリアミノ酸、多糖類、およびそれらのコポリマー、誘導体ならびにそれらの組み合わせを含む。
【0025】
生体吸収性ポリマーは、好ましくは、生体吸収性ポリエステル、PLLA(ポリ-L-ラクチド)、PDLLA(ポリ-DL-ラクチド)、PLDLA、PGA(ポリ-グリコール酸)、PLGA(ポリ-ラクチド-グリコール酸)、PCL(ポリカプロラクトン)、PLLA-PCL、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0026】
生体吸収性ポリマーマトリクスに加えて、連続強化複合フィラメントは、連続生体吸収性強化繊維または繊維束、すなわち前記連続生体吸収性強化繊維の複数の平行なストランドを含む。
【0027】
単一の連続強化繊維の平均繊維直径は、典型的には1~35μm、好ましくは5~30μm、より好ましくは10~15μmである。
【0028】
連続強化繊維または繊維束は、有機または無機材料から構成されてもよい。連続強化繊維は、生分解性ガラスまたはガラス状材料、セラミック、例えばヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウムまたはリン酸カルシウムなどの鉱物組成物(mineral composition)、セルロース系材料、または生体吸収性ポリマーの機械的特性を高めるために本技術分野で知られている他の任意の連続繊維から構成できる。連続強化繊維は、それ自体が生体吸収性ポリマーであってもよい。好ましくは、連続強化繊維は、生体吸収性ガラス、セラミックまたは鉱物組成物、特に生体吸収性ガラスから構成される。
【0029】
好ましい例では、連続生体吸収性強化繊維または繊維束はシリカベースの鉱物化合物からなり、すなわち、連続生体吸収性強化繊維は、生体吸収性ガラス繊維である。最も好ましくは、連続生体吸収性強化繊維または繊維束は、溶融由来の生体吸収性ガラス繊維(または溶融して生成された生体吸収性ガラス繊維:a melt derived bioabsorbable glass fiber)である。
【0030】
溶融由来の生体吸収性ガラス繊維は、以下の重量%の範囲(ガラス繊維組成物の総重量に対するパーセントとして)の組成を有していてもよい:
SiO2 40~90 重量%、
Na2O 5~30 重量%、
K2O 0~20 重量%、
CaO 5~30 重量%、
MgO 0~10 重量%、
P2O5 0~10 モル%、
B2O3 0~15 重量%、
Al2O3 0~5 重量%、
CaF3 0~25 重量%、
SrO 0~10 重量%、および
Li2O 0~1 重量%
【0031】
第1の例では、溶融由来の生体吸収性ガラス繊維は、以下のモル%の範囲の組成を有している:
SiO2 50~75 重量%、
Na2O 5~20 重量%、
K2O 0~10 重量%、
CaO 5~25 重量%、
MgO 0~10 重量%、
P2O5 0.5~5 重量%、
B2O3 0~15 重量%、
Al2O3 0~5 重量%、および
SrO 0~5 重量%
【0032】
第2の例では、溶融由来の生体吸収性ガラス繊維は、以下の重量%の範囲の組成を有している:
SiO2 60~72 重量%、
Na2O 10~20 重量%、
K2O 0.1~10 重量%、
CaO 5~15 重量%、
MgO 1~10 重量%、
P2O5 0.5~2 重量%、
SrO 0~3 重量%、および
B2O3 0~10 重量%
【0033】
有利な例では、連続強化複合フィラメントは、生体吸収性ポリエステル、PLLA(ポリ-L-ラクチド)、PDLLA(ポリ-DL-ラクチド)、PLDLA、PGA(ポリ-グリコール酸)、PLGA(ポリ-ラクチド-グリコール酸)、PCL(ポリカプロラクトン)、PLLA-PCLおよびそれらの組み合わせからなる群から好ましくは選択される生体吸収性ポリマーを含む;そして、連続生体吸収性強化繊維または繊維束は、溶融由来の生体吸収性ガラス繊維からなる。好ましくは、溶融由来の生体吸収性ガラス繊維の組成は、上記で規定されたとおりである。
【0034】
ポリマーマトリクスおよび連続生体吸収性強化繊維または繊維束に加えて、連続強化複合フィラメントは、生体吸収性ポリマーを連続強化繊維または繊維束に結合するための相溶化剤も含んでもよい。
【0035】
追加的または代替的に、連続強化複合フィラメントはまた、セラミック粒子(例えば、リン酸三カルシウム粒子)などの1つ以上のフィラー材料を含み得る。
【0036】
「自由な所定の繊維配向(または自由に予め決定した繊維配向:freely predetermined fiber orientation)」という用語は、整形外科用インプラントの所望の繊維配向を設計するときに、連続強化複合フィラメントの連続生体吸収性強化繊維または繊維束の繊維配向を無制限に選択できることを指す。しかしながら、所望の繊維配向は、用途の要求に依存するだろう。
【0037】
「複数の連続した一連の層(multiple continuous successive layers)」という用語は、連続強化複合フィラメントの連続層を指し、連続生体吸収性強化繊維または繊維束は、少なくとも1つのフィラメント層から次の層まで途切れることなく続いている。
【0038】
「混ざり合いおよび/または絡み合い(intermingles and/or intertwines)」という用語は、整形外科用インプラントの製造中に連続強化複合フィラメントから形成される連続フィラメント層の融合を指し、最終的なインプラント製品において、異なる層の連続生体吸収性強化繊維または繊維束は、混ざり合い、および/またはねじれて、それにより「3次元的にインターロックされた連続繊維構造体(3次元インターロック連続繊維構造体)」を形成する。これは、繊維配向の事前設計および/またはフィラメントプリフォームのフィラメント層の重なりによって、または以下で論じるフィラメントプリフォームの圧縮成形によって、またはその両方によって、達成できる。
【0039】
本発明の整形外科用インプラントの例は、骨固定プレート、ピン、スクリュー、鋲、ネイル、メッシュ、ステントおよびアンカーを含む。これらの整形外科用インプラントは、治癒組織が移植領域に作用する生理学的負荷を支える準備ができるまで、治癒組織の望ましい配列を維持するために、主に、骨と骨、軟組織と骨、または軟組織と軟組織の固定に使用される。生体吸収性であるため、これらのインプラントは人体の状態で(または人体の条件下で)分解し、その分解生成物は体に吸収されて代謝される。
【0040】
さらに本発明は、(a)生体吸収性ポリマーマトリクスと連続生体吸収性繊維または繊維束とを含む連続強化複合フィラメントを、3次元制御繊維ストランド供給機(例えば3Dプリンター)などの3次元的に制御された繊維配置デバイス(3次元制御繊維配置デバイス:three dimensionally controlled fiber placement device)によって、連続した一連の層内に自由な所定の繊維配向で堆積させて、フィラメントプリフォームを形成する堆積工程と、(b)金型で前記フィラメントプリフォームを成形して、整形外科用インプラントの最終形状を有する成形品を得る成形工程と、を含む整形外科インプラントの製造方法を提供する。
【0041】
繊維配向は、例えば、整形外科用インプラントの所望の繊維配向を層ごとに描画可能なソフトウェアによって、自由に予め決定してもよい。本願方法の一例では、連続強化複合フィラメント構造体は、ソフトウェアによる自由描画を使用して層ごとに規定される。本願方法の別の例では、連続強化複合フィラメント構造体は、ソフトウェアによる自由描画とコンピュータ計算の組み合わせを使用して、層ごとに規定される。本願方法のさらに別の例では、連続強化複合フィラメント構造体は、ソフトウェアによるコンピュータ計算を使用して、層ごとに規定される。
【0042】
図1は、配向設計ソフトウェアで繊維配向を層ごとに設計する工程を示している。図1を参照すると、フィラメントプリフォーム内で連続強化複合フィラメントを配置したい場所に連続線が引かれている。1つの層(1)の完了後に、次の層(2、3、4など)に移動することにより連続描画が可能となる。描画が完了すると、ソフトウェアは繊維ルートを規定するコードを生成する。コードは、強化複合フィラメントのXYZ座標を規定する。コードは、例えば、機械加工ヘッドの動きを制御するためにCNC機械で、または印刷ヘッドの動きを制御するために3Dプリンターで典型的に使用されるGコードであってもよい。それは、XYZ座標と、この場合はフィラメント押し出し値で構成される。次に、このコードは3次元制御繊維配置デバイスに送られ、それは連続強化複合フィラメントを加熱し、そしてそれを、描画によって規定されたルートに沿って層ごとに押し出して、複数のフィラメント層を含むフィラメントプリフォームを形成する。
【0043】
例示的な例のフィラメントプリフォームを図2に示す。典型的には、フィラメントプリフォームは、2~200のフィラメント層を含み、好ましくは2~20、より好ましくは2~10、最も好ましくは2~6のフィラメント層を含む。各フィラメント層は異なる方向に整列させてもよく、またはいくつかのフィラメント層は他のフィラメント層と同じ方向に整列させてもよい。インプラントが1つ以上の穴を含む場合、前記穴は、連続強化複合フィラメントによって、好ましくは少なくとも1回、より好ましくは2~3回取り囲まれる。典型的には、フィラメント層の厚さは0.05mm~3.5mmまで変化する。好ましくは、フィラメント層は、厚さが0.5~3.0mm、より好ましくは0.8~2.0mmである。フィラメント層の厚さは、強化複合フィラメントの厚さに直接的に依存する。
【0044】
本願方法によれば、フィラメントプリフォームを得た後、それを成形して、整形外科用インプラントの最終形状を有する成形品を得る。有利なことに、生体吸収性ポリマーマトリクスは成形条件下で溶融するので、圧縮成形によって、連続生体吸収性強化繊維または繊維束は、熱および圧力下で少なくとも部分的に混ざり合わせおよび/または絡み合わせ、それにより硬い(または固体の:solid)整形外科インプラントの3次元インターロック連続繊維構造体(3次元的にインターロックされた連続繊維構造体)を形成する。
【0045】
フィラメントプリフォームの成形は、整形外科用インプラントの最終形状を有する成形品を得るために、金型内で異なる成形技術によって達成されてもよい。有利なことに、整形外科用インプラントの最終形状を有する成形品を得るために、フィラメントプリフォームは金型内で圧縮成形される。フィラメントプリフォームの圧縮成形は、連続生体吸収性強化繊維または繊維束が少なくとも部分的に混ざり合いおよび/または絡み合って、3次元的にインターロックされた連続繊維構造体を形成することを確実にする。図3は、圧縮成形された直後のインプラントを示している。
【0046】
金型は、曲面の形状、1つ以上の穴、および/または任意の表面上に3次元の形状を有することができる。モールド構造は、本明細書で考えられる整形外科用インプラントの完全自動化製造を可能にするために、可動コアおよびエジェクター(ejectors)を有してもよい。
【0047】
任意で、製造方法は成形品の表面仕上げする工程をさらに含む。好ましくは、表面仕上げは成形品のTCPブラストである。これにより、最適な組織反応を確実にする。
【0048】
図1図4は、本願方法の主要な段階を示している。図1は、フィラメントプリフォームの自由な所定の繊維配向の、設計されたGコードルートを示している。図2は、完全に堆積したフィラメントプリフォームを示している。図3は、フィラメントプリフォームの圧縮成形の結果を示している。図4は、遠位橈骨プレートとして利用可能な圧縮成形品を示している。
【0049】
本願の整形外科用インプラントの製造方法全体は、非常に小さくコンパクトな製造モジュールに組み込むことができ、これにより、さまざまな製品タイプを必要量だけ自律的に作製できる。図5は、自動生産モジュールの一例の概略図を示している。モジュールは、モジュール処理スペース(図示せず)の内部に、フィラメントプリフォームをプリンティング(印刷)するための3Dプリンター(11)、圧縮成形用のプレスを含む圧縮成形ユニット(12)、成形品の自動表面仕上げ用の仕上げユニット(13)、およびプリフォーム、成形品および最終製品を移動するためのロボット(14)を含む。モジュールは金型保管場所を含んでもよく、ロボットまたは別のマニピュレータは、現在プレスで使用していない金型を配置できる。図5に示す例示的な自動生産モデルは、10個の金型の自動交換システム(15)を含む。モジュール処理スペースの内部は、有利には制御された環境であり、典型的には、クリーンルーム、殺菌、無菌、湿度制御、シールドガス、滅菌ガスの環境からなる群から選択される。図5を参照すると、例示的な自動生産モデルは、エアフィルターおよび乾燥機ユニット(16)を含む。製造モジュール全体の設置面積(footprint)は好ましくは約1m2であるが、それより大きくても小さくてもよい。
【0050】
一実施形態では、生体吸収性ポリマーマトリクスと連続生体吸収性強化ガラス繊維とを含む連続強化複合フィラメントは、自由に構成可能な混ざり合った連続繊維構造体を形成するように使用される。これにより、混ざり合った連続繊維構造体を有する整形外科用インプラントを得ることができる。得られた整形外科用インプラントは生体吸収性で、向上した強度特性を有する。
【0051】
一実施形態では、生体吸収性ポリマーマトリクスと連続生体吸収性強化ガラス繊維とを含む連続強化複合フィラメントが使用され、ガラス繊維は約2000MPaの引張強度を有する。これにより、450MPaを超える複合の引張強度、および650MPaを超える複合の曲げ強度を得ることができる。これにより、450MPaを超える複合の引張強度および650MPaを超える複合の曲げ強度を有する整形外科用インプラントが得られる。
【0052】
一実施形態では、整形外科用インプラントの混ざり合った連続繊維構造体は、金型内でプレスすることで得られる。このようにして、整形外科用インプラントの構造体は緻密であり、連続層の連続生体吸収性強化繊維または繊維束は少なくとも部分的に混ざり合いおよび/または絡み合って、3次元的にインターロックされた連続繊維構造体を形成する。後に金型でプレスして整形外科用インプラントの最終形状を得られる繊維コンポジット骨格(スケルトン)またはプリフォームを作成するために、3Dプリンターを使用してもよい。このようにして、緻密な複合材料と、層間で強力に混ざり合った構造体が得られる。それにより、強化された強度特性を有する整形外科用インプラントの複合構造体が達成される。整形外科用インプラントの正確な形状は、金型によって規定される。
【0053】
プリフォームは多孔質で、各層に多くの空きスペースがある。そのため、プリフォームは最終成形品よりもかなり厚く(大きく)なる。したがって、プリフォームが最終形状に加圧成形されると、織り合わせた(インターレースの)繊維構造体が作成され、層間剥離を効果的に阻害する。
【実施例1】
【0054】
4層の繊維配向は、ソフトウェアを使用して自由描画することによって設計された。4層のプリフォームは、繊維設計ソフトウェアによって生成されたGコードに基づいて、3Dプリンターと、連続した1.7mm厚の繊維ストランドとを使用して作成された。プリフォームを175℃の金型に入れ、60秒間予備加熱するために金型を部分的に閉じた。次に、金型を閉じ、圧力を30秒間かけた。圧力を維持し、金型を開いて部品を取り出す前に、金型を室温まで冷却した。金型サイズは30×80mmで、サンプルプレートの厚さは2mmであった。
【0055】
3つの異なるサンプルを作成した。サンプル1では、4層すべてにおいて、長手方向に繊維配向していた。サンプル2では、上層と下層は長手方向に繊維配向し、2つの中間層(ミドルレイヤーmiddle layers)は45°および-45°に繊維配向していた。これらの3つのサンプルタイプに加えて、参照サンプル3は、セラミック粒子フィラーを含む同様のポリマーから作成された。このサンプルは、繊維含有サンプルの製造に使用されたのと同様の工程で、セラミック含有ポリマーペレットを金型に入れ、プレートを圧縮成形することによって作成された。
【0056】
サンプルの側面でループを回転させずに、試験のための純粋な繊維配向を得るために、試験片は、プレートの中央から縦方向に切断した。
【0057】
図6A及び図6Bは、4つのインプラントサンプルの機械的試験の結果を示している。
【0058】
図6から分かるように、本発明に従って製造されたサンプル1(ストレート)およびサンプル2(ストレート+45ミドル)は、参照サンプル3(C-ペレット)と比較して、著しく高い引張強度および曲げ強度を提供する。
【実施例2】
【0059】
遠位橈骨プレート用に、ソフトウェアを使用した手書きで、複雑な繊維配向設計を層ごとに行った。プリフォームは10層を有している。図2に示すように、プリフォームは3Dフィラメントプリンターを使用して印刷された。図3に示すように、プリフォームは、図4に示す最終的な遠位橈骨プレート形状に圧縮成形された。
【0060】
最終製品の繊維構造を、マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)を使用して検査した。図5図7で見ることができるように、繊維構造体は、層間で混ざり合っている。
【0061】
技術の進歩に伴い、本発明の概念を様々な方法で実施できることは、当業者にとって明らかであろう。本発明およびその実施形態は、上述の実施例に限定されず、特許請求の範囲内で変化させることができる。
なお、本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
複数の連続した一連の層内に、自由な所定の繊維配向の連続強化複合フィラメントを含む整形外科用インプラントであって、
前記連続強化複合フィラメントは、生体吸収性ポリマーマトリクスと連続生体吸収性強化繊維または繊維束とを含み、
これにより、連続層の前記連続生体吸収性強化繊維または繊維束が少なくとも部分的に混ざり合いおよび/または絡み合って、3次元的にインターロックされた連続繊維構造体を形成する、整形外科用インプラント。
(態様2)
インプラントは1つ以上の穴を含み、
前記穴は、連続強化複合フィラメントによって少なくとも1回取り囲まれる、態様1に記載の整形外科用インプラント。
(態様3)
前記連続生体吸収性強化繊維または繊維束が、連続生体吸収性ガラス繊維または繊維束である、態様1または2に記載の整形外科用インプラント。
(態様4)
2~200層の強化複合フィラメント、好ましくは2~20層、より好ましくは2~10層、最も好ましくは2~6層の強化複合フィラメントを含む、態様1~3のいずれか1項に記載の整形外科用インプラント。
(態様5)
連続強化複合フィラメントの平均フィラメント直径は、0.05mm~20mm、好ましくは0.5mm~3.0mm、より好ましくは0.8mm~2.0mmである、態様1~4のいずれか1項に記載の整形外科用インプラント。
(態様6)
単一の連続強化繊維の平均繊維直径は、1~35μm、好ましくは5~30μm、より好ましくは10~15μmである、態様1~5のいずれか1項に記載の整形外科用インプラント。
(態様7)
連続生体吸収性ガラス繊維は溶融由来の生体吸収性ガラス繊維である、態様1~6のいずれか1つに記載の整形外科用インプラント。
(態様8)
前記連続生体吸収性強化繊維は溶融由来の生体吸収性ガラス繊維であり、以下の重量%の範囲(ガラス繊維組成物の総重量に対するパーセントとして)の組成を有する、態様7に記載の整形外科用インプラント。

SiO 2 40~90 重量%、
Na 2 O 5~30 重量%、
K 2 O 0~20 重量%、
CaO 5~30 重量%、
MgO 0~10 重量%、
P 2 O 5 0~10 モル%、
B 2 O 3 0~15 重量%、
Al 2 O 3 0~5 重量%、
CaF 3 0~25 重量%、
SrO 0~10 重量%、および
Li 2 O 0~1 重量%

(態様9)
前記生体吸収性ポリマーマトリクスが、生体吸収性ポリエステル、PLLA(ポリ-L-ラクチド)、PDLLA(ポリ-DL-ラクチド)、PLDLA、PGA(ポリ-グリコール酸)、PLGA(ポリ-ラクチド-グリコール酸)、PCL(ポリカプロラクトン)、PLLA-PCLおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1~8のいずれか1つに記載の整形外科用インプラント。
(態様10)
前記連続強化複合フィラメントは、3次元制御繊維ストランド供給機によって、連続した一連の層内に所定の繊維配向で堆積されて、フィラメントプリフォームを形成し、
プリフォームは、前記整形外科用インプラントの最終形状を形成するために金型で成形される、態様1~9のいずれか1つに記載の整形外科用インプラント。
(態様11)
前記整形外科用インプラントの最終形状を形成するために、フィラメントプリフォームは金型内で圧縮成形される、態様1~10のいずれか1つに記載の整形外科用インプラント。
(態様12)
前記整形外科用インプラントの最終形状を形成するために、フィラメントプリフォームは金型内で射出成形される、態様1~11のいずれか1つに記載の整形外科用インプラント。
(態様13)
前記整形外科用インプラントは強化複合フィラメントからなる、態様1~12のいずれか1つに記載の整形外科用インプラント。
(態様14)
(a)生体吸収性ポリマーマトリクスと連続生体吸収性繊維または繊維束とを含む連続強化複合フィラメントを、3次元制御繊維配置デバイスによって、連続した一連の層内に自由な所定の繊維配向で堆積させて、フィラメントプリフォームを形成する堆積工程と、
(b)金型で前記フィラメントプリフォームを成形して、整形外科用インプラントの最終形状を有する成形品を得る成形工程と、を含む整形外科用インプラントの製造方法。
(態様15)
前記フィラメントプリフォームの自由な所定の繊維配向を設計する工程をさらに含む、態様14に記載の製造方法。
(態様16)
前記整形外科用インプラントを得るために、前記成形品を表面仕上げする工程をさらに含む、態様14または15に記載の製造方法。
(態様17)
前記整形外科用インプラントの最終形状を有する成形品を得るために、連続フィラメントプリフォームは金型内で圧縮成形される、態様14~16のいずれか1つに記載の製造方法。
(態様18)
連続強化複合フィラメント構造体は、ソフトウェアによる自由描画を使用して層ごとに規定される、態様14~17のいずれか1つに記載の製造方法。
(態様19)
連続強化複合フィラメント構造体は、ソフトウェアによる自由描画とコンピュータ計算の組み合わせを使用して層ごとに規定される、態様14~17のいずれか1つに記載の製造方法。
(態様20)
連続強化複合フィラメント構造体は、ソフトウェアによるコンピュータ計算を使用して層ごとに規定される、態様14~17のいずれか1つに記載の製造方法。
(態様21)
態様1~13のいずれか1つに記載の整形外科用インプラントを損傷した骨に導入する工程を含む、損傷した骨を修復する方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9