(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】多段プレスおよび変形加工部品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B21F 23/00 20060101AFI20220208BHJP
B21F 11/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B21F23/00 C
B21F11/00 B
(21)【出願番号】P 2020552096
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2017082318
(87)【国際公開番号】W WO2019114929
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】520208340
【氏名又は名称】ネートスフルーフ ヘーレンタルス エヌ.フェー.
【氏名又は名称原語表記】Nedschroef Herentals N.V.
【住所又は居所原語表記】Brigandsstraat 10, 2200 Herentals, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユストゥス エアハート
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-249475(JP,A)
【文献】特開平07-136731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 23/00
B21F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の線材区間を塊状変形加工する多段プレスであって、切断装置が配置された線材供給手段ならびに切断された所定の線材区間を持ち上げて後続の変形加工段へ搬送するためのグリッパを有する搬送装置を含む、多段プレスにおいて、
前記切断装置(3)の、前記線材供給手段(2)とは反対の側に、所定の線材区間(81)を部分的に加熱する手段が配置されており、前記線材供給手段(2)と、前記変形加工段(12)と、前記切断装置(3)とは、互いに独立して制御可能であり、前記所定の線材区間(81)を部分的に加熱する手段に誘導コイル(4)が含まれており、前記線材供給手段(2)は、所定の線材区間(81)を前記誘導コイル(4)に一時的に導入するように構成されており、前記線材供給手段(2)に、所定の線材区間の所定の前進・後退移動用のサーボ駆動装置(21)が含まれ
、前記線材供給手段(2)は、該線材供給手段(2)に接続された制御装置(6)を介して制御可能であり、該制御装置(6)には、所定の線材端部区間(82)の、前記誘導コイル内での所定の滞留時間および/または目標温度を記憶させることが可能であることを特徴とする、多段プレス。
【請求項2】
前記誘導コイル(4)内に位置する線材端部区間(82)の温度を検出する手段が配置されており、これらの手段は前記制御装置(6)に接続されており、該制御装置(6)には、前記線材端部区間(82)の温度に応じて前記線材供給手段(2)を制御することができる調整手段が組み込まれている、請求項
1記載の多段プレス。
【請求項3】
前記制御装置(6)は、前記切断装置(3)に接続されており、所定の線材区間(81)の端部側の部分的な加熱が行われた後で、該線材区間(81)の、所定の長さへの切断が行われるように構成されている、請求項
1または
2記載の多段プレス。
【請求項4】
多段プレスを用いて変形加工部品、特にねじを製造する方法において、まず線材(8)の片側を加熱し、該線材(8)を、コイルから線材供給手段(2)を介して誘導コイル(4)に供給し、そこで前記線材(8)の片側の線材端部区間(82)を所定の温度に加熱し、前記線材(8)を、サーボ駆動装置(21)を介して前記誘導コイル(4)に供給し、前記線材(8)を、加熱すべき前記線材端部区間(82)の所望の長さに相応して前記誘導コイル(4)内に進入させ、所望の温度またはこのために必要とされる滞留時間に到達した後に、再び前記誘導コイル(4)から退出させ、次いで加熱した前記線材端部区間(82)から所定の間隔をあけた所望の長さの所定の線材区間(81)を切断し、このようにして得た、部分的に加熱された前記線材区間(81)を、搬送装置(7)を介して複数の変形加工段(12)に順次供給する、方法。
【請求項5】
前記線材端部区間(82)の温度の測定を、非接触式の温度センサ、特にパイロメータ(5)を介して行う、請求項
4記載の方法。
【請求項6】
前記誘導コイル(4)内で前記所望の温度を達成するために必要とされる前記滞留時間を経験に基づき求め、前記サーボ駆動装置(21)に接続された制御装置(6)に記憶させる、請求項
4または5記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の上位概念に記載の、所定の線材区間を塊状変形加工する多段プレスに関する。本発明はさらに、特許請求項7記載の、多段プレスを用いて変形加工部品、特にねじを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線材を冷間変形加工する多段プレスは、様々な構成で、例えば欧州特許出願公開第0215338号明細書から公知である。この場合は、整直された線材がコイルから機械内へ案内され、そこで所定の線材区間が切断される。この線材区間は、搬送装置のグリッパを介して、ダイおよびポンチから形成された第1の変形加工段へ搬送され、そこでポンチの受容部内に位置決めされる。次いで、線材区間は、ポンチを介してダイに押し込まれ、変形加工される。変形加工後に、変形加工された線材片はエジェクタピンにより搬送装置の別のグリッパに位置決めされ、別のグリッパを介してその時々の次の変形加工段へ搬送される。この場合、連続して配置された複数の変形加工工具のポンチが、1つの共通の水平シリンダに規則的に配置されているため、このシリンダが送られる度に、各変形加工段において所定の線材区間の変形加工が行われる。連続して配置された複数の変形加工段を経て、線材区間はワークが完成するまで変形加工される。最後の変形加工段において完成部品が放出される。一般的な多段プレスは、6つの変形加工段を有している。
【0003】
上述の形式の多段プレスにより、ねじまたはボルト等の種々様々な冷間変形加工部品を製造することができる。連続して配置された複数の変形加工段を介して、高い処理速度が達成可能である。なぜなら、シリンダを送る度に6つの線材区間を変形加工できるからである。しかしながら、例えば耐熱性のニッケルを基礎とした合金(例えばNI53/FE19/CR19/NB/MO/TI)等の特殊な材料の場合には、変形加工に問題が生じる。この材料からねじを製造するには、ねじ頭の領域を、その変形加工前に最高1000℃に加熱することが必要とされている。この場合、ねじの軸部は低温であり続ける必要がある点を考慮せねばならない。なぜなら、さもなければ結果的に、次にねじの軸部に形成しようとするねじ山の質が損なわれる恐れがあるからである。このような特殊ねじを製造するためには、まず線材区間からスラグが製造され、スラグにおいて一方の端部区間が予め加熱されて、ねじ頭に変形加工される。次いで、これらのスラグがピース毎に多段プレスに供給され、所望のねじが製造される。
【0004】
このような特殊ねじの従来周知の製造方法における欠点は、この方法には極めて手間がかかることである。さらに、ねじの長さまたは寸法の個別の変更は、大きな手間をかけなければできない。なぜなら、このためにはまず、相応するスラグを製造する必要があるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この欠点を除去しようとするものである。本発明の根底を成す課題は、線材コイルから直接に上述の形式の特殊ねじを製造することをも可能にする、所定の線材区間を塊状変形加工する多段プレスを提供することにある。この課題は、本発明に基づき、特許請求項1記載の特徴を有する多段プレスによって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、耐熱性のニッケル合金から成る線材から直接に上述の形式の特殊ねじを製造することをも可能にする、所定の線材区間を塊状変形加工する多段プレスが提供される。切断装置の、線材供給手段とは反対の側に、所定の線材区間を部分的に加熱する手段が配置されていることにより、次にねじ頭を成形するための、所定の端部側の線材区間の加熱が可能になり、この場合、端部側の線材区間の加熱後に、線材が所望の長さに切断されてよく、その後で線材は、搬送装置を介して第1の変形加工段へ搬送される。線材供給手段、変形加工段(または変形加工段のポンチを駆動するシリンダ)および切断装置が、互いに独立して制御可能であることに基づき、端部側を加熱されてから切断された1つの線材区間の、全ての変形加工段にわたる迅速な変形加工が、同時に次の端部区間が加熱されている間に可能である。
【0007】
本発明の改良では、所定の線材区間を加熱する手段に誘導コイルが含まれており、この場合、線材供給手段は、所定の線材区間を誘導コイルに一時的に導入するように構成されている。これにより、端部側の線材区間の所定の温度の調節が可能になる。線材区間の温度は、誘導コイルによって供給される電力と、線材区間の、誘導コイル内での滞留時間とに基づき生じる。
【0008】
本発明の構成では、線材供給手段に、所定の線材区間の所定の前進・後退移動用のサーボ駆動装置が含まれる。これにより、コイルからの線材の、必要に応じた正確な供給が可能である。線材を所定のように前進・後退移動させる手段に基づき、線材端部の、誘導コイル内への導入ならびに切断すべき線材区間を測定するための、線材の後続の後退移動も可能である。
【0009】
本発明の別の構成では、線材供給手段は、線材供給手段に接続された制御装置を介して制御可能であり、制御装置には、所定の線材区間の、誘導コイル内での所定の滞留時間および/または目標温度を記憶させることが可能である。この場合、好適には誘導コイル内に位置する線材区間の温度を検出する手段が配置されており、これらの手段は制御装置に接続されており、制御装置には、線材区間の温度に応じて線材供給手段を制御することができる調整手段が組み込まれている。代替的に、制御装置に記憶される所望の温度を達成するための滞留時間を、経験に基づき求めることも可能である。
【0010】
本発明の改良では、制御装置は、切断装置に接続されており、所定の線材区間の端部側の部分的な加熱が行われた後で、この線材区間の、所定の長さへの切断が行われるように構成されている。これにより、製造すべき各ねじの長さを個別に調節することができる。
【0011】
本発明の根底を成す課題はさらに、多段プレスを用いてコイルから直接に上述の形式の特殊ねじを製造する方法を提供することにある。この課題は、本発明に基づき、特許請求項7記載の特徴を有する方法によって解決される。まず、線材の片側を加熱し、次いで加熱した端部から所定の間隔をあけた所定の線材区間を切断し、このようにして得た、部分的に加熱された線材区間を、搬送装置を介して複数の変形加工段に順次供給することにより、製造するねじの長さの個別の調節が可能になる。この場合、線材は、好適にはコイルから線材供給手段を介して誘導コイルに供給され、そこで線材は片側を所定の温度に加熱される。
【0012】
本発明の改良では、線材は、サーボ駆動装置を介して誘導コイルに供給され、この場合、線材は、端部側の加熱されるべき領域の所望の長さに相応して誘導コイル内に進入し、所望の温度またはこのために必要とされる滞留時間に到達すると、再び誘導コイルから退出し、その後、所望の長さの線材区間が切断される。これにより、1つのコイルから異なる長さのねじを製造する、正確なプロセス制御が可能になる。
【0013】
本発明の構成では、線材の端部側の領域の温度の測定は、非接触式の温度センサ、特にパイロメータを介して、または赤外線測定器を介しても行われる。これにより、プロセス制御の精度が大幅に改善されている。代替的に、誘導コイル内で所望の温度を達成するために必要とされる滞留時間を、経験に基づき求め、サーボ駆動装置に接続された制御装置に記憶させることもできる。このようにして、相応する目標温度に割り当てられた滞留時間を含むデータバンクをエキスパートシステムの形式で作成することも考えられる。
【0014】
本発明の別の改良および構成は、その他の下位請求項に記載されている。以下に、本発明の一実施例を図示して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】端部側の線材を加熱する誘導コイルが配置された多段プレスを部分的に示す概略図である。
【
図2】
図1に示した多段プレスにおける、線材供給手段、切断装置および端部側を加熱された線材区間を生ぜしめる誘導コイルの配置を、a)コイルから線材を送る、b)誘導コイルにおいて端部側の線材区間を加熱する、c)線材を戻して所望の長さに調節する、d)線材区間を所望の長さに切断し、搬送装置に引き渡す、という各運転状態において、概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施例として選択した水平型の多段プレス1は、ねじや類似の小型部品の製造に用いられるような、横置き構成形式の多段プレスである。このような水平型の多段プレスの構造は、当業者には十分周知であり、例えば前掲の欧州特許出願公開第0215338号明細書に記載されている。この場合は複数の変形加工工具が相並んで配置されている。横方向搬送装置がワークを変形加工段毎に送る。一般にこれらのプレスは横方向搬送キャリッジと共に働き、横方向搬送キャリッジは、変形加工段数に相応する数の搬送グリッパを有しており、搬送グリッパは、ポンチ工具とダイとの間に突入する。よって、ここでは、このような水平型の多段プレスの詳細な説明は省略する。以下の説明は、本発明による多段プレスの主要構成部材に焦点を当てたものである。
【0017】
図1には、本発明による多段プレス1が部分的に示されている。複数の個別の変形加工段12を備えたダイブロック11が看取され、変形加工段12の間にはそれぞれ、横方向搬送装置7の搬送グリッパ71が配置されている。第1の変形加工段12の手前には、本実施例ではサーボ駆動装置21として形成された線材供給手段が配置されている。線材供給手段2は、コイル(図示せず)から繰り出された線材8を受け入れる。線材供給手段2の前方には、線材8の切断用の、別個に制御可能な線材カッタ3が配置されている。線材供給手段2から見て線材カッタ3の後方には、搬送装置7の搬送グリッパ71が配置されており、搬送グリッパ71は、線材カッタ3によって切断された線材区間81を持ち上げるように構成されている。搬送グリッパ71のやはり後方には誘導コイル4が配置されており、誘導コイル4は、線材供給手段2によって受け入れられた線材が、サーボ駆動装置21を介して誘導コイル4内へ挿入可能であるように位置づけられている。線材供給手段2、線材カッタ3ならびに誘導コイル4は、制御・調整装置6に接続されており、制御・調整装置6もやはり、誘導コイル4に配置された、誘導コイル4に挿入された線材端部区間82の温度を測定するパイロメータ5に接続されている。さらに、制御・調整装置6は、搬送グリッパ71を制御する横方向搬送装置7にも接続されている。制御・調整装置6は、個々の変形加工ポンチを支持するポンチブロック(図示せず)の制御も行う、機械全体の制御装置(図示せず)の構成部材である。
【0018】
図2には、ニッケルを基礎とした合金から線材を変形加工して高耐熱ねじを製造する方法が示されている。線材8が、コイル(図示せず)から線材供給手段2を介して線材カッタを通過し、所定の長さの端部側の線材端部区間82が誘導コイル4内に突入するまで、誘導コイル4へ送られる。このために、線材端部区間82の加熱されるべき長さならびに所望の温度が、線材供給手段2のサーボ駆動装置21も制御する制御・調整装置6に記憶されている(
図2a)。次いで、サーボ駆動装置21が停止され、線材端部区間82は誘導コイル4内に留まる。パイロメータ5により、線材端部区間82の温度が継続して測定される。測定値は制御・調整装置6に伝えられ、制御・調整装置6は測定値を、線材端部区間82の記憶された目標温度と比較する(
図2b)。
【0019】
線材端部区間82の記憶された目標温度に達すると、線材供給手段2のサーボ駆動装置21は制御・調整装置6を介して、線材カッタ3の後方に位置する線材区間81が制御・調整装置6に記憶された長さに達するまで線材8が線材供給手段2により引き戻されるように、反対方向に制御される(
図2c)。次いで、線材カッタ3が制御・調整装置6を介して作動され、これにより、線材区間81は記憶された長さに切断される。このように切断された線材区間81は、搬送装置7のグリッパ71によって持ち上げられ、多段プレス1のダイブロック11の第1の変形加工段12へ搬送される。同時に、線材8は誘導コイル4に向かって、やはり所望の長さの線材端部区間82が誘導コイル4に突入するまで、再び送られる。この次の線材端部区間82の加熱中に、線材区間81の引き続く変形加工が、別の変形加工段12を介して行われる。第1の変形加工段12に導入された、端部側を加熱された線材区間81の、多段プレスの各変形加工段12を介した引き続く変形加工は、当業者には周知であり、ここでさらに説明する必要はない。
【0020】
ここで述べなければならないのは、個々の変形加工ポンチを支持するポンチブロック(図示せず)の駆動装置が、線材供給手段2のサーボ駆動装置から、ならびに横方向搬送装置7の駆動装置からも、機械的に分離されている、という点である。さらに述べておくと、本発明による多段プレスは、連続的な冷間変形加工法を用いた従来の変形加工部品製造にも使用可能である。このために、所望の長さの線材区間81が線材カッタ3の後方に配置されるまで、線材8が直接に送られた後すぐに、この線材区間81が切断される。