(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】極限タップ制限装置および負荷時タップ切換器の電動操作装置
(51)【国際特許分類】
H01F 29/04 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
H01F29/04 502K
(21)【出願番号】P 2020567701
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2019001846
(87)【国際公開番号】W WO2020152775
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 直紀
(72)【発明者】
【氏名】石川 拓
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-82419(JP,U)
【文献】特開2001-267150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータから負荷時タップ切換器へのトルク伝達経路に配置される主動軸に連動して回転する送りねじ軸を含む送りねじ機構と、
前記送りねじ機構により前記送りねじ軸の軸方向に移動するコマと、
前記負荷時タップ切換器の極限タップ位置に対応する前記軸方向の位置で前記コマに当接し、前記主動軸の回転を停止させることが可能な回転停止ユニットと、を有する、
極限タップ制限装置。
【請求項2】
前記モータから前記主動軸へのトルク伝達を制限するトルクリミッタを有する、
請求項1に記載の極限タップ制限装置。
【請求項3】
前記コマは、高位側コマと、低位側コマと、を有し、
前記回転停止ユニットは、
前記負荷時タップ切換器の高位側極限タップ位置に対応する前記軸方向の位置で前記高位側コマに当接し、回動可能な高位側アームと、
前記負荷時タップ切換器の低位側極限タップ位置に対応する前記軸方向の位置で前記低位側コマに当接し、回動可能な低位側アームと、
前記高位側アームおよび前記高位側アームに係合し、前記高位側アームおよび前記高位側アームの回動に伴ってスライド可能なスライダと、
前記スライダのスライドにより前記主動軸の回転を停止させることが可能な回転停止機構と、
を有する、
請求項1または2に記載の極限タップ制限装置。
【請求項4】
前記高位側アームは、高位側回動中心から前記高位側コマとの当接位置にかけて伸びる高位側短アームと、前記高位側回動中心から前記スライダとの係合位置にかけて伸びる高位側長アームと、を有し、
前記高位側長アームは、前記高位側短アームより長く、
前記低位側アームは、低位側回動中心から前記低位側コマとの当接位置にかけて伸びる低位側短アームと、前記低位側回動中心から前記スライダとの係合位置にかけて伸びる低位側長アームと、を有し、
前記低位側長アームは、前記低位側短アームより長い、
請求項3に記載の極限タップ制限装置。
【請求項5】
前記回転停止機構は、
前記主動軸の回転を停止させる停止位置と、前記主動軸の回転を許容する退避位置との間を移動可能であり、前記停止位置に向かって付勢されるストッパと、
前記ストッパを前記退避位置に保持し、前記スライダのスライドにより前記ストッパの保持を解除することが可能なストッパ保持機構と、
を有する、
請求項3または4に記載の極限タップ制限装置。
【請求項6】
前記ストッパ保持機構は、第1アームと、第2アームと、を有し、
前記第2アームは、前記ストッパと係合し、
前記第1アームは、前記第2アームと係合した状態で前記ストッパを前記退避位置に保持し、前記第2アームとの係合を保持する方向に付勢され、前記スライダのスライドにより前記第2アームとの係合を解除することが可能である、
請求項5に記載の極限タップ制限装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の極限タップ制限装置と、
前記モータと、
前記モータから負荷時タップ切換器へのトルク伝達経路に配置される前記主動軸と、を有する、
負荷時タップ切換器の電動操作装置。
【請求項8】
前記主動軸の回転位置を検出する多回転絶対位置検出型の回転検出器を有する、
請求項7に記載の負荷時タップ切換器の電動操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、極限タップ制限装置および負荷時タップ切換器の電動操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷時タップ切換器は、運転状態において変圧器の巻数比(変圧比)を変えることで電圧を調整する装置である。負荷時タップ切換器の電動操作装置は、モータにより主動軸を回転させて負荷時タップ切換器の切換操作を行う。電動操作装置は、主動軸の回転位置を検出して負荷時タップ切換器のタップ位置を把握する。負荷時タップ切換器が極限タップ位置に到達した場合に、電動操作装置は電気的に主動軸の回転を停止させる。電動操作装置は、極限タップ制限装置を有する。極限タップ制限装置は、電気的な主動軸の回転停止が機能しない場合に、機械的に主動軸の回転を停止させる。
極限タップ制限装置には、小型化をすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、小型化をすることができる極限タップ制限装置および負荷時タップ切換器の電動操作装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の極限タップ制限装置は、送りねじ機構と、コマと、回転停止ユニットと、を持つ。送りねじ機構は、主動軸に連動して回転する送りねじ軸を含む。前記主動軸は、モータから負荷時タップ切換器へのトルク伝達経路に配置される。コマは、前記送りねじ機構により前記送りねじ軸の軸方向に移動する。回転停止ユニットは、前記負荷時タップ切換器の極限タップ位置に対応する前記軸方向の位置で前記コマに当接し、前記主動軸の回転を停止させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の負荷時タップ切換器の電動操作装置の斜視図。
【
図7】
図6のF7-F7線におけるアームスライダ部の断面図。
【
図8】実施形態の極限タップ制限装置の第1動作説明図。
【
図9】実施形態の極限タップ制限装置の第2動作説明図。
【
図10】実施形態の極限タップ制限装置の第3動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の極限タップ制限装置および負荷時タップ切換器の電動操作装置を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の負荷時タップ切換器の電動操作装置の斜視図である。負荷時タップ切換器LTCは、運転状態において変圧器の巻数比(変圧比)を変えることで電圧を調整する装置である。電動操作装置1は、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置を高位側(昇圧側)および低位側(降圧側)に切り換える。電動操作装置1は、主動軸10を回転させることにより、伝動軸(不図示)を介して負荷時タップ切換器LTCの切換操作を行う。電動操作装置1は、筐体1aと、駆動機構部2と、制御基板部3と、を有する。筐体1aは、駆動機構部2および制御基板部3を収容する。制御基板部3は、駆動機構部2の動作を制御する。
【0008】
図2は、駆動機構部の斜視図である。本願において、直交座標系のX方向、Y方向およびZ方向が以下のように定義される。Z方向は、主動軸10の軸方向である。+Z方向は、主動軸第2プーリ23から主動軸第1プーリ13に向かう方向である。X方向は、送りねじ軸32の軸方向である。+X方向は、負荷時タップ切換器LTC(
図1参照)を低位側タップから高位側タップに切り換えるときに、送りねじ軸32に沿って送りねじナット42(
図4参照)が進む方向である。Y方向は、X方向およびZ方向に垂直な方向である。+Y方向は、送りねじ軸32から主動軸10に向かう方向である。例えば、Z方向は鉛直方向であり、X方向およびY方向は水平方向である。
【0009】
駆動機構部2は、モータ5と、主動軸10と、トルクリミッタ12と、回転検出器18と、極限タップ制限装置15と、を有する。
モータ5の回転軸は、Z方向と平行に配置される。モータ5の回転軸には、モータプーリ6が装着される。
【0010】
主動軸10は、モータ5から負荷時タップ切換器LTC(
図1参照)へのトルク伝達経路に配置される。主動軸10は、モータ5の-Y方向に配置される。主動軸10の軸方向は、Z方向と平行に配置される。主動軸10の+Z方向には、主動軸第1プーリ13が装着される。主動軸第1プーリ13とモータプーリ6との間には、第1タイミングベルト8が掛け渡される。モータ5から、モータプーリ6、第1タイミングベルト8および主動軸第1プーリ13を介して、主動軸10へのトルク伝達が可能である。第1タイミングベルト8を利用することにより、トルク伝達経路の潤滑が不要になる。
【0011】
トルクリミッタ12は、外周側と内周側との間の伝達トルクを所定トルク以下に制限する。トルクリミッタ12の外周側(入力側)は、主動軸第1プーリ13に接続される。トルクリミッタ12の内周側(出力側)は、主動軸10に接続される。後述されるように、極限タップ制限装置15は、主動軸10の回転を停止させることが可能である。極限タップ制限装置15が主動軸10の回転を停止させているとき、モータ5から主動軸10への伝達トルクが所定トルクに制限される。
【0012】
回転検出器18は、主動軸10の-Z方向の端部に配置される。回転検出器18は、多回転絶対位置検出型の回転検出器(多回転型エンコーダ)である。多回転型エンコーダは、主動軸に対してn(n>1)倍の回転をする多回転部材を有する。多回転型エンコーダは、多回転部材の回転位置を検出することで、主動軸10の回転位置を精度良く検出する。回転検出器18は、主動軸10の回転位置に相当する信号を制御基板部3(
図1参照)に出力する。
【0013】
図1に示される制御基板部3は、主動軸10の回転位置に基づいて、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置を把握する。負荷時タップ切換器LTCが極限タップ位置に到達したとき、制御基板部3は電気信号を出力してモータ5を停止させる。すなわち、電動操作装置1は、電気的に主動軸10の回転を停止させる。回転検出器18、制御基板部3またはモータ5が故障したとき、電気的な主動軸10の回転停止が機能しない。極限タップ制限装置15は、電気的な主動軸10の回転停止が機能しないとき、機械的に主動軸10の回転を停止させる。
【0014】
極限タップ制限装置15は、
図2に示されるように、ユニットとして主動軸10の-Y方向に配置される。極限タップ制限装置15は、一対のフレーム16,16を有する。極限タップ制限装置15の構成要素は、一対のフレーム16,16に直接的または間接的に支持される。一対のフレーム16,16は、
図1に示される電動操作装置1の筐体1aに固定される。
【0015】
図3は、実施形態の極限タップ制限装置の斜視図である。極限タップ制限装置15は、動力伝達部20と、送りねじ軸部30と、送りねじナット部40と、回転停止ユニット15aと、を有する。回転停止ユニット15aは、アームスライダ部50と、回転停止機構15bと、を有する。回転停止機構15bは、ストッパ保持機構15cと、ストッパ100と、ストッパ受け110と、を有する。ストッパ保持機構15cは、中継アーム70と、第1アーム80と、第2アーム90と、を有する。
【0016】
動力伝達部20は、主動軸第2プーリ23と、ウォーム軸28と、ウォームプーリ25と、第2タイミングベルト24と、を有する。
主動軸第2プーリ23は、主動軸10に装着される。主動軸第2プーリ23は、主動軸第1プーリ13(
図2参照)の-Z方向に配置される。
ウォーム軸28は、主動軸10の-Y方向に配置される。ウォーム軸28の軸方向は、Z方向と平行に配置される。ウォーム軸28は、-Z方向の端部にウォーム29を有する。
ウォームプーリ25は、ウォーム軸28の+Z方向に装着される。
【0017】
第2タイミングベルト24は、主動軸第2プーリ23とウォームプーリ25との間に掛け渡される。主動軸10から、主動軸第2プーリ23、第2タイミングベルト24およびウォームプーリ25を介して、ウォーム軸28にトルクが伝達される。主動軸10の回転に伴って、ウォーム軸28が回転する。第2タイミングベルト24を利用することにより、トルク伝達経路の潤滑が不要になる。
【0018】
送りねじ軸部30は、送りねじ軸32と、ウォームホイール34と、を有する。
送りねじ軸32は、ウォーム軸28の-Y方向に配置される。送りねじ軸32の軸方向は、X方向と平行に配置される。送りねじ軸32は、-X方向の領域に送りねじ36を有する。送りねじ36は、送りねじ軸32の外周面に形成された雄ねじである。送りねじ36の長さは、送りねじ軸32の長さの半分以上である。送りねじ36のX方向の両端部に、一対の軸受31a,31bが配置される。一対の軸受31a,31bは、送りねじ軸32を支持する。
ウォームホイール34は、送りねじ軸32の+X方向の端部付近に装着される。ウォームホイール34は、ウォーム軸28のウォーム29と噛み合う。ウォーム軸28の回転に伴って、送りねじ軸32が回転する。
【0019】
図4は、送りねじナット部の斜視図である。送りねじナット部40は、送りねじナット42と、コマ支持板44(44a,44b)と、コマ48(48a,48b)と、を有する。送りねじ軸部30の送りねじ軸32と、送りねじナット部40の送りねじナット42とにより、送りねじ機構40aが形成される。
【0020】
送りねじナット42は、送りねじ軸32の送りねじ36と噛み合う雌ねじを有する。送りねじナット42は、雌ねじの+Z方向に貫通孔を有する。貫通孔は、送りねじナット42をX方向に貫通する。貫通孔には、回転規制シャフト37が挿入される。回転規制シャフト37は、送りねじ軸32と平行に並んで配置される。回転規制シャフト37のX方向の両端部は、一対の軸受31a,31bに固定される。回転規制シャフト37は、送りねじ軸32の周方向における送りねじナット42の回転を規制する。これにより、送りねじ軸32が回転すると、送りねじナット42はX方向に移動する。
【0021】
負荷時タップ切換器LTCのタップ位置を高位側に切り換えるとき、主動軸10は-Z方向に向かって左回りに回転する。このとき、送りねじ軸32は-X方向に向かって左回りに回転し、送りねじナット42は+X方向に移動する。すなわち、送りねじナット部40の+X方向が、負荷時タップ切換器LTCの高位側に対応する。逆に、送りねじナット部40の-X方向が、負荷時タップ切換器LTCの低位側に対応する。
【0022】
コマ支持板44(44a,44b)は、送りねじナット42に固定される。コマ支持板44は、送りねじナット42の-Y方向に配置される。コマ支持板44は、XZ平面と平行に配置される。コマ支持板44は、高位側支持板44aと、低位側支持板44bと、を有する。
【0023】
高位側支持板44aは、送りねじナット42の+X方向に配置される。高位側支持板44aは、高位側支持板44aをY方向に貫通するコマ位置調整孔45aを有する。コマ位置調整孔45aは、X方向に伸びる長円形状に形成される。
低位側支持板44bは、送りねじナット42の-X方向に配置される。低位側支持板44bは、コマ位置調整孔45aと同様のコマ位置調整孔45bを有する。
【0024】
コマ48(48a,48b)は、コマ支持板44の-Y方向に配置される。コマ48は、Y方向から見て矩形状に形成される。コマ(押圧コマ)48は、高位側コマ48aと、低位側コマ48bと、を有する。
高位側コマ48aは、立方体状に形成される。高位側コマ48aの+X方向の表面は、YZ平面と平行であり、後述される高位側アームのコマ受け部と当接する。
低位側コマ48bは、高位側コマ48aと同様に形成される。
【0025】
図5は、
図4のF5-F5線におけるコマの断面図である。高位側コマ48aは、+Y方向に突出する取付軸46aを有する。取付軸46aは、コマ位置調整孔45aに挿入され、高位側支持板44aの+Y方向に突出する。取付軸46aの基端部は、コマ位置調整孔45aの内側に配置される。取付軸46aの基端部の断面は、矩形状に形成される。高位側支持板44aの+Y方向に突出する取付軸46aの外周には、雄ねじが形成される。高位側支持板44aの+Y方向には、コマ固定ナット47aが配置される。コマ固定ナット47aは、取付軸46aの雄ねじに装着される。これにより、高位側コマ48aが高位側支持板44aに固定される。
【0026】
高位側コマ48aのX方向の位置は、以下のように調整される。負荷時タップ切換器LTCが高位側極限タップ位置に到達するとき、高位側コマ48aは+X方向に移動して高位側アーム60aのコマ受け部68aに当接する。高位側アーム60aは、後述される第1アーム80の係合凸部88と第2アーム90の係合凹部93とが係合した状態でのコマ受け部68aと当接する。この当接が実現するように、高位側コマ48aがX方向の所定位置に配置される。高位側コマ48aのX方向の位置は、コマ位置調整孔45aに沿って変更可能である。高位側コマ48aは、X方向の所定位置で高位側支持板44aに固定される。
【0027】
高位側コマ48aと同様に、低位側コマ48bは取付軸46bを有する。低位側コマ48bは、コマ固定ナット47bにより低位側支持板44bに固定される。
負荷時タップ切換器LTCが低位側極限タップ位置に到達するとき、低位側コマ48bは-X方向に移動して低位側アーム60bのコマ受け部68bに当接する。この当接が実現するように、低位側コマ48bがX方向の所定位置に配置される。
【0028】
図3に示されるように、回転停止ユニット15aは、極限タップ位置に対応するX方向の位置でコマ48a,48bに当接し、主動軸10の回転を停止させることが可能である。回転停止ユニット15aは、アームスライダ部50と、回転停止機構15bと、を有する。
【0029】
図6は、アームスライダ部の斜視図である。アームスライダ部50は、基板52と、スライダ56と、高位側アーム60aと、低位側アーム60bと、を有する。
基板52は、送りねじナット部40の-Y方向に配置される。基板52は、XY平面と平行に配置される。基板52は、X方向を長手方向とする長板状に形成される。
【0030】
スライダ56は、基板52の+Z方向の表面上に配置される。スライダ56は、基板52のX方向の中央部に配置される。基板52のX方向の中央部には、基板52をZ方向に貫通するスリット53が形成される。スリット53は、Y方向に伸びる長円形状に形成される。
【0031】
図7は、
図6のF7-F7線におけるアームスライダ部の断面図である。スライダ56は、一対のガイドピン57,57を有する。一対のガイドピン57,57は、Y方向に離間して配置される。一対のガイドピン57,57は、基板52の-Z方向からスリット53を貫通してスライダ56に固定される。一対のガイドピン57,57がスリット53に沿って移動することにより、スライダ56はY方向に移動可能である。スライダ56は、スライダ56をZ方向に貫通するスライダ孔59を有する。スライダ孔59は、Y方向に伸びる長方形状に形成される。スライダ孔59には、後述される中継アーム70の第1突起72が挿入される。
【0032】
高位側アーム60aは、
図6に示されるように、基板52およびスライダ56の+Z方向に配置される。高位側アーム60aは、Z方向から見てL字状に形成される。高位側アーム60aは、X方向に伸びる長アーム62aと、Y方向に伸びる短アーム67aと、を有する。長アーム62aは、基板52の-Y方向の端辺に沿って配置される。短アーム67aは、基板52の+X方向の端辺に沿って配置される。長アーム62aの+X方向の端部および短アーム67aの-Y方向の端部が、高位側アーム60aの屈曲部である。高位側アーム60aの屈曲部には、アームピン61が配置される。アームピン61aは、基板52の+X方向および-Y方向の角部に固定される。高位側アーム60aは、Z方向に伸びるアームピン61aを中心に回動可能である。
【0033】
長アーム62aの-X方向の端部には、長アーム62aをZ方向に貫通するアーム孔63aが形成される。アーム孔63aは、X方向に伸びる長円形状に形成される。
図7に示されるように、スライダ56の+Z方向には、スライダピン58が配置される。スライダピン58は、Z方向と平行に配置される。スライダピン58は、スライダ56の-Y方向のガイドピン57に固定される。スライダピン58は、長アーム62aのアーム孔63aの内側に配置される。
【0034】
図6に示されるように、短アーム67aの+Y方向の端部には、コマ受け部68aが形成される。コマ受け部68aは、短アーム67aの+Y方向および-X方向の角部に形成された矩形状の切り欠きである。コマ受け部68aの-X方向の表面は、YZ平面と平行であり、高位側コマ48aの+X方向の表面と当接する。
【0035】
高位側コマ48aは、コマ受け部68aを+X方向に押す。高位側アーム60aは、アームピン61aを中心に、-Z方向に向かって右回りに回動する。高位側アーム60aは、アーム孔63aに配置されたスライダピン58を+Y方向に押す。これにより、スライダ56が+Y方向に移動する。ここで、長アーム62aのX方向の長さは、短アーム67aのY方向の長さより長い。アーム孔63aの+Y方向への移動量は、コマ受け部68aの+X方向への移動量より大きい。これにより、スライダ56の+Y方向への移動量が、高位側コマの+X方向への移動量に対して増幅される。
【0036】
低位側アーム60bは、基板52のX方向の中心に配置されるYZ平面を対称面として、高位側アーム60aに対して略面対称に形成される。ただし、スライダピン58の位置において、高位側アーム60aの-X方向の端部が+Z方向にオフセットして配置され、低位側アーム60bの+X方向の端部が-Z方向にオフセットして配置される。これにより、高位側アーム60aと低位側アーム60bとの干渉が回避される。
【0037】
低位側コマ48bは、低位側アーム60bのコマ受け部68bを-X方向に押す。低位側アーム60bは、アームピン61bを中心に、-Z方向に向かって左回りに回動する。低位側アーム60bは、アーム孔63b(
図7参照)に配置されたスライダピン58を+Y方向に押す。これにより、スライダ56が+Y方向に移動する。
【0038】
図3に示されるように、回転停止機構15bは、スライダ56のスライドにより主動軸10の回転を停止させることが可能である。回転停止機構15bは、ストッパ保持機構15cと、ストッパ100と、ストッパ受け110と、を有する。ストッパ保持機構15cは、ストッパ100を退避位置に保持し、スライダ56のスライドにより前記保持を解除することが可能である。ストッパ保持機構15cは、中継アーム70と、第1アーム80と、第2アーム90と、を有する。
【0039】
中継アーム70は、
図6に示されるように、アームスライダ部50の+Z方向に配置される。中継アーム70は、Z方向に伸びる長板状に形成され、YZ平面と平行に配置される。中継アーム70のZ方向の中心より-Z方向に、アームピン71が配置される。中継アーム70は、X方向に伸びるアームピン71を中心に回動可能である。中継アーム70は、-Z方向の端部に第1突起72を有する。第1突起72は、スライダ56に形成されたスライダ孔59に挿入される。中継アーム70は、+Z方向の端部に第2突起78を有する。第2突起78は、後述される第1アーム80の第1アーム孔83に挿入される。
【0040】
スライダ56が+Y方向に移動すると、スライダ孔59が第1突起72を+Y方向に押す。中継アーム70は、アームピン71を中心に、-X方向に向かって左回りに回動する。第2突起78は、第1アーム孔83を-Y方向に押す。ここで、アームピン71から第2突起78までの長さは、アームピン71から第1突起72までの長さより長い。第2突起78の-Y方向への移動量は、第1突起72の+Y方向への移動量より大きい。これにより、第1アーム80の-Y方向への移動量が、スライダ56の+Y方向への移動量に対して増幅される。
【0041】
第1アーム80は、
図6に示されるように、中継アーム70の+Z方向に配置される。第1アーム80は、Z方向から見てL字状に形成される。第1アーム80は、X方向に伸びる短アーム82と、Y方向に伸びる長アーム87と、を有する。短アーム82の+X方向の端部および長アーム87の-Y方向の端部が、第1アーム80の屈曲部である。第1アーム80の屈曲部には、アームピン81が配置される。第1アーム80は、Z方向に伸びるアームピン81を中心に回動可能である。
【0042】
短アーム82の-X方向の端部には、短アーム82をZ方向に貫通する第1アーム孔83が形成される。第1アーム孔83は、Y方向に伸びる長方形状に形成される。第1アーム孔83には、中継アーム70の第2突起78が挿入される。
長アーム87の+Y方向の端部には、係合凸部88が形成される。係合凸部88は、+Y方向に向かって先細りの形状に形成される。係合凸部88は、長アーム87の+X方向および+Y方向の角部を、-X方向および+Y方向の角部より+Y方向に延長して形成される。係合凸部88の+Y方向の端辺は、X方向に対して傾斜する直線である。係合凸部88は、後述される第2アーム90の係合凹部93と係合する。
【0043】
長アーム87の+X方向には、弾性部材であるばね84が配置される。ばね84は、X方向に沿って配置される。ばね84の-X方向の端部は、長アーム87に接続される。ばね84は、長アーム87を+X方向に付勢する。ばね84は、第1アーム80の係合凸部88を、第2アーム90の係合凹部93と係合した状態に保持する。
【0044】
中継アーム70の第2突起78が-Y方向に移動すると、第2突起78が第1アーム孔83を-Y方向に押す。第1アーム80は、アームピン81を中心に、-Z方向に向かって左回りに回動する。第1アーム80は、ばね84の付勢力に抗って回動する。係合凸部88は、-X方向に移動して、第2アーム90の係合凹部93から離脱する。これにより、係合凸部88と係合凹部93との係合が解除される。
【0045】
第2アーム90は、
図3に示されるように、第1アーム80の+X方向に配置される。第2アーム90は、X方向に伸びる長板状に形成され、XY平面と平行に配置される。第2アーム90のX方向の中央部には、アームピン91が配置される。第2アーム90は、Z方向に伸びるアームピン91を中心に回動可能である。
【0046】
第2アーム90の-X方向の端部には、係合凹部93が形成される。係合凹部93は、第1アーム80の係合凸部88の外形に倣って、係合凸部88を覆うように形成される。第2アーム90の-X方向の先端部は、係合凸部88の+Y方向の先端部より、-X方向および-Y方向に配置される。これにより、係合凸部88と係合凹部93とが係合状態に保持される。
第2アーム90の+X方向の端部には、切り欠き98が形成される。切り欠き98は、第2アーム90のY方向の中央に、矩形状に形成される。切り欠き98は、ストッパ100のストッパピン103と係合する。
【0047】
ストッパ100は、
図3に示されるように、第2アーム90の+X方向、+Y方向および+Z方向に配置される。ストッパ100は、主動軸10と同じX方向の位置に配置される。ストッパ100は、Y方向に伸びる直方体状に形成される。
図2に示されるように、ストッパ100の+X方向および-X方向には、Y方向に伸びるストッパガイド106が配置される。ストッパ100は、ストッパガイド106に沿ってY方向に移動可能である。ストッパ100の+Z方向の面には、復帰レバー109が立設される。後述されるように、復帰レバー109は、電動操作装置1を平常動作可能な状態に復帰させる作業に使用される。
【0048】
図3に示されるように、ストッパ100の-Y方向の端部には、ストッパピン103が設置される。ストッパピン103は、ストッパ100の-Z方向に突出する。ストッパピン103は、第2アーム90の切り欠き98に係合する。ストッパ100の-Z方向には、弾性部材であるばね104が配置される。ばね104は、Y方向に沿って伸びる。ばね104の-Y方向の端部は、ストッパピン103に接続される。ばね104は、ストッパピン103およびストッパ100を+Y方向に付勢する。
【0049】
ストッパ100の+Y方向の端部付近には、係合凹部108が形成される。係合凹部108は、ストッパ100のX方向の両端部から中央部に向かって窪む。係合凹部108の+Y方向には、ストッパ100の+X方向および-X方向に突出する凸部が形成される。
【0050】
ストッパ受け110は、主動軸10に装着される。ストッパ受け110は、ストッパ100と同じZ方向の位置に配置される。ストッパ受け110は、円盤状に形成され、外周上の2か所に切り欠き112を有する。ストッパ受け110の周方向における切り欠き112の幅は、ストッパ100のX方向の幅より大きい。ストッパ受け110の径方向における切り欠き112の外側端部には、切り欠き112の開口幅を周方向に縮小するように係合凸部113が形成される。ストッパ受け110の径方向における係合凸部113の内側には、切り欠き112を周方向に拡大するように凹部が形成される。
【0051】
第1アーム80の係合凸部88と第2アーム90の係合凹部93とが係合した状態では、第2アーム90の切り欠き98がストッパピン103を-Y方向に保持する。第2アーム90は、ばね104の付勢力に抗って、ストッパピン103を-Y方向に保持する。これにより、ストッパ100は、ストッパ受け110から-Y方向に退避した位置に保持される。ストッパ100は、主動軸10の回転を許容する退避位置に配置される。
【0052】
係合凸部88が-X方向に移動して係合凹部93から離脱すると、係合状態が解除される。これにより、第2アーム90が回動可能な状態になる。第2アーム90の切り欠き98は、ストッパピン103と係合している。ストッパピン103は、ばね104により+Y方向に付勢される。第2アーム90は、ばね104の付勢力により、アームピン91を中心に、-Z方向に向かって左回りに回動する。ストッパピン103およびストッパ100は、ばね104の付勢力により、+Y方向に移動する。ストッパ受け110は、主動軸10とともに回転している。ストッパ100は、ストッパ受け110の切り欠き112に進入する。ストッパ100の係合凹部108が、ストッパ受け110の係合凸部113に係合する。ストッパ100は、主動軸10の回転を停止させる停止位置に配置される。これにより、ストッパ受け110および主動軸10の回転が停止する。
【0053】
極限タップ制限装置15の動作について説明する。ここでは、極限タップ制限装置15が負荷時タップ切換器LTCを高位側極限タップ位置において停止させる動作を例にして説明する。
【0054】
図1に示される電動操作装置1において、制御基板部3がモータ5を回転させる。制御基板部3は、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置が高位側にシフトする方向に、モータ5を回転させる。モータ5のトルクは、
図2に示されるモータプーリ6、第1タイミングベルト8および主動軸第1プーリ13を介して、トルクリミッタ12の外周側(入力側)に伝達される。トルクリミッタ12の内周側(出力側)には主動軸10が接続され、主動軸10に負荷時タップ切換器LTCが接続される。負荷時タップ切換器LTCの負荷トルクは、トルクリミッタの制限トルク(所定トルク)より小さい。そのため、トルクリミッタ12を介してトルクが伝達され、主動軸10が回転する。
【0055】
主動軸10の回転により、
図1に示される負荷時タップ切換器LTCのタップ位置が高位側にシフトする。例えば、主動軸10が33回転すると、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置が1段階シフトする。制御基板部3は、回転検出器18により検出した主動軸10の回転位置に基づいて、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置を把握する。制御基板部3は、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置が1段階シフトする度に、モータ5を停止させる。負荷時タップ切換器LTCが高位側極限タップ位置に到達したとき、制御基板部3は電気信号を出力してモータ5を停止させる。すなわち、電動操作装置1は、電気的に主動軸10の回転を停止させる。
極限タップ制限装置15は、電気的な主動軸10の回転停止が機能しないとき、機械的に主動軸10の回転を停止させる。
【0056】
図3に示されるように、主動軸10の回転により、主動軸第2プーリ23、第2タイミングベルト24およびウォームプーリ25を介して、ウォーム軸28が回転する。ウォーム軸28の回転により、ウォームホイール34を介して、送りねじ軸32が回転する。例えば、主動軸10が33回転すると、送りねじ軸32が1回転する。送りねじ軸32の回転により、送りねじナット42がX方向に移動する。タップ位置を高位側にシフトさせる方向に主動軸10が回転するとき、送りねじナット42は+X方向に移動する。
【0057】
図8は、実施形態の極限タップ制限装置の第1動作説明図である。送りねじナット42に連結された高位側コマ48aは、送りねじナット42と共に+X方向に移動する。負荷時タップ切換器LTCが高位側極限タップ位置に到達するとき、高位側コマ48aは、高位側アーム60aのコマ受け部68aに当接する。負荷時タップ切換器LTCが高位側極限タップ位置に到達しても、電気的な主動軸10の回転停止が機能しないとき、主動軸10は回転を続ける。高位側コマ48aは、さらに+X方向に移動し、コマ受け部68aを+X方向に押す。高位側アーム60aは、アームピン61aを中心に、-Z方向に向かって右回りに回動する。高位側アーム60aは、スライダピン58を+Y方向に押す。これにより、スライダ56が+Y方向に移動する。
【0058】
スライダ56が+Y方向に移動すると、中継アーム70は、アームピン71を中心に、-X方向に向かって左回りに回動する。中継アーム70に連動して、第1アーム80は、アームピン81を中心に、-Z方向に向かって左回りに回動する。第1アーム80の係合凸部88は、ばね84の付勢力により、第2アーム90の係合凹部93と係合した状態に保持されている。第1アーム80は、ばね84の付勢力に抗って回動する。
【0059】
図9は、実施形態の極限タップ制限装置の第2動作説明図である。第1アーム80の係合凸部88は、第2アーム90の係合凹部93と係合している。第2アーム90の切り欠き98は、ストッパ100のストッパピン103と係合している。ストッパ100は、ストッパ受け110から-Y方向に退避した退避位置に保持される。
第1アーム80が回動すると、係合凸部88は-X方向に移動する。
図9は、係合凸部88が係合凹部93から離脱する直前の状態を示している。
【0060】
図10は、実施形態の極限タップ制限装置の第3動作説明図である。第1アーム80がさらに回動すると、第1アーム80の係合凸部88が第2アーム90の係合凹部93から離脱する。これにより、係合凸部88と係合凹部93との係合が解除されて、第2アーム90が回動可能な状態になる。第2アーム90の切り欠き98は、ストッパピン103と係合している。ストッパピン103は、ばね104により+Y方向に付勢される。第2アーム90は、ばね104の付勢力により、アームピン91を中心に、-Z方向に向かって左回りに回動する。ストッパピン103およびストッパ100は、ばね104の付勢力により、+Y方向に移動する。ストッパ受け110は、主動軸10とともに回転している。ストッパ100は、ストッパ受け110の切り欠き112に進入する。ストッパ100の係合凹部108が、ストッパ受け110の係合凸部113と係合する。ストッパ100は、主動軸10の回転を停止させる停止位置に配置される。以上により、極限タップ制限装置15は、機械的に主動軸10の回転を停止させる。
【0061】
負荷時タップ切換器LTCが高位側極限タップ位置に到達してから、高位側極限タップ位置の1段階高位のタップ位置に到達する前に、主動軸10の回転が停止される。例えば、高位側極限タップ位置に到達してから、主動軸10が約5回転した時点で、主動軸10の回転が停止される。これにより、負荷時タップ切換器LTCが高位側極限タップ位置を越えたタップ位置に切り換えられることがない。
【0062】
極限タップ制限装置15が主動軸10の回転を停止させても、電動操作装置1のモータ5は回転を続ける。この場合でも、
図2に示されるトルクリミッタ12が、モータ5から主動軸10へのトルク伝達を所定トルクに制限する。これにより、主動軸10の回転を停止させている極限タップ制限装置15に対して過大なトルクが作用するのを抑制できる。
【0063】
極限タップ制限装置15が機械的に主動軸10の回転を停止させた後に、電動操作装置1を平常動作可能な状態に復帰させる作業について説明する。
作業者が、
図2に示される復帰レバー109を操作して、ストッパ100を-Y方向に移動させる。
図9に示されるように、第2アーム90は、アームピン91を中心に、-Z方向に向かって右回りに回動する。作業者は、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置が低位側にシフトする方向に、モータ5または手動により主動軸10を回転させる。これにより、高位側コマ48aが-X方向に移動して、高位側アーム60aのコマ受け部68aから離れる。高位側アーム60a、スライダ56、中継アーム70および第1アーム80は、回動または移動可能な状態になる。第1アーム80は、ばね84の付勢力により、アームピン81を中心に、-Z方向に向かって右回りに回動する。これにより、第1アーム80の係合凸部88が、第2アームの係合凹部93に係合する。ストッパ100は、ストッパ受け110から-Y方向に退避した退避位置に保持される。以上により、電動操作装置1が平常動作可能な状態に復帰する。
【0064】
以上に詳述されたように、実施形態の極限タップ制限装置15は、送りねじ機構40aと、コマ48a,48bと、回転停止ユニット15aと、を持つ。送りねじ機構40aは、主動軸10に連動して回転する送りねじ軸32を含む。主動軸10は、モータ5から負荷時タップ切換器LTCへのトルク伝達経路に配置される。コマ48a,48bは、送りねじ機構40aにより送りねじ軸32の軸方向に移動する。回転停止ユニット15aは、負荷時タップ切換器LTCの極限タップ位置に対応する前記軸方向の位置でコマ48a,48bに当接し、主動軸10の回転を停止させることが可能である。
【0065】
送りねじ機構40aによりコマ48a,48bを移動させて主動軸10の回転を停止させるので、極限タップ制限装置15が小型化される。コマ48a,48bのX方向の位置の調整のみにより主動軸10の回転停止のタイミングが調整されるので、極限タップ制限装置15の調整作業が容易になる。
【0066】
極限タップ制限装置15は、モータ5から主動軸10へのトルク伝達を制限するトルクリミッタ12を有する。
極限タップ位置において、極限タップ制限装置15は主動軸10の回転を停止させる。このとき、トルクリミッタ12はモータ5から主動軸10への伝達トルクを所定トルクに制限する。これにより、極限タップ制限装置15に過大なトルクが作用するのを抑制できる。なお、トルクリミッタ12が伝達トルクを制限するのは、極限タップ位置に到達してもモータ5が停止しない異常時のみである。
【0067】
これにより、極限タップ位置に到達してもモータ5が停止しない異常時に、モータ5から主動軸10へのトルク伝達を遮断することが不要になる。これに伴って、トルク伝達を遮断するための滑り機構が不要になる。モータ5の回転方向を反転させてタップ切換の進行方向を反転させる場合でも、主動軸10は滑り機構を介することなく回転する。そのため、滑り機構の摩擦による消耗を考慮する必要がない。また、滑り機構の摩擦バランスを考慮する必要がない。すなわち、滑り機構の部品の精度への特別な配慮が不要である。また、極限タップ制限装置15の組み立てが容易になる。したがって、極限タップ制限装置15の信頼性が向上し、製造コストが抑制される。
【0068】
コマ48a,48bは、高位側コマ48aと、低位側コマ48bと、を有する。回転停止ユニット15aは、高位側アーム60aと、低位側アーム60bと、スライダ56と、回転停止機構15bと、を有する。高位側アーム60aは、負荷時タップ切換器LTCの高位側極限タップ位置に対応するX方向の位置で高位側コマ48aに当接し、回動可能である。低位側アーム60bは、負荷時タップ切換器LTCの低位側極限タップ位置に対応するX方向の位置で低位側コマ48bに当接し、回動可能である。スライダ56は、高位側アーム60aおよび低位側アーム60bに係合する。スライダ56は、高位側アーム60aおよび低位側アーム60bの回動に伴ってスライド可能である。回転停止機構15bは、スライダ56のスライドにより主動軸10の回転を停止させることが可能である。
これにより、高位側極限タップ位置および低位側極限タップ位置において、スライダ56および回転停止機構15bの動作が同じになる。したがって、極限タップ制限装置15の調整作業が容易になる。
【0069】
高位側アーム60aは、短アーム67aと、長アーム62aと、を有する。短アーム67aは、高位側回動中心であるアームピン61aから高位側コマ48aとの当接位置であるコマ受け部68aにかけて伸びる。長アーム62aは、アームピン61aからスライダ56との係合位置であるアーム孔63aにかけて伸びる。長アーム62aは、短アーム67aより長い。
低位側アーム60bは、短アーム67bと、長アーム62bと、を有する。短アーム67bは、低位側回動中心であるアームピン61bから低位側コマ48bとの当接位置であるコマ受け部68bにかけて伸びる。長アーム62bは、アームピン61bからスライダ56との係合位置であるアーム孔63bにかけて伸びる。長アーム62bは、短アーム67bより長い。
これにより、高位側コマ48aの移動量が小さくても、低位側コマ48bの移動量が小さくても、スライダ56の移動量が大きくなる。したがって、回転停止機構15bの動作の精度が向上する。
【0070】
回転停止機構15bは、ストッパ100と、ストッパ保持機構15cと、を有する。ストッパ100は、主動軸10の回転を停止させる停止位置と、主動軸10の回転を許容する退避位置との間を移動可能である。ストッパ100は、停止位置に向かって付勢される。ストッパ保持機構15cは、ストッパ100を退避位置に保持し、スライダ56のスライドによりストッパ100の保持を解除することが可能である。
ストッパ100は、主動軸10の回転を停止させる停止位置に向かって付勢される。ストッパ保持機構15cによるストッパ100の保持が解除されると、ストッパ100は瞬時に停止位置に移動して主動軸10の回転を停止させる。これにより、極限タップ制限装置15の動作の精度が向上する。
【0071】
ストッパ保持機構15cは、第1アーム80と、第2アーム90と、を有する。第2アーム90は、ストッパ100と係合する。第1アーム80は、第2アーム90と係合した状態でストッパ100を退避位置に保持する。第1アーム80は、第2アーム90との係合を保持する方向に付勢される。第1アーム80は、スライダ56のスライドにより第2アーム90との係合を解除することが可能である。
これにより、ストッパ保持機構15cは、ストッパ100を退避位置に安定した状態で保持できる。ストッパ保持機構15cは、スライダ56のスライドにより、ストッパ100の退避位置での保持を解除することが可能になる。
【0072】
実施形態の負荷時タップ切換器LTCの電動操作装置1は、モータ5と、主動軸10と、前述された極限タップ制限装置15と、を有する。主動軸10は、モータ5から負荷時タップ切換器LTCへのトルク伝達経路に配置される。
極限タップ制限装置15は、小型のユニットとして主動軸10の近くに配置される。これにより、負荷時タップ切換器LTCの電動操作装置1が小型化される。
【0073】
電動操作装置1は、主動軸10の回転位置を検出する多回転絶対位置検出型の回転検出器18を有する。
多回転絶対位置検出型の回転検出器18は、主動軸10の回転位置を精度良く検出する。そのため、主動軸10の停止精度が向上する。これにより、極限タップ位置における極限タップ制限装置15の動作の精度が向上する。
【0074】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、送りねじ機構40aと、コマ48a,48bと、を持つ。これにより、極限タップ制限装置を小型化することができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
LTC…負荷時タップ切換器、1…電動操作装置、5…モータ、8…第1タイミングベルト、10…主動軸、12…トルクリミッタ、15…極限タップ制限装置、15a…回転停止ユニット、15b…回転停止機構、15c…ストッパ保持機構、18…回転検出器、32…送りねじ軸、40a…送りねじ機構、48a…高位側コマ、48b…低位側コマ、56…スライダ、60a…高位側アーム、60b…低位側アーム、62a…長アーム(高位側長アーム)、62b…長アーム(低位側長アーム)、67a…短アーム(高位側短アーム)、67b…短アーム(低位側短アーム)、80…第1アーム、90…第2アーム、100…ストッパ。