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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20220208BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20220208BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B62D5/04
H02K5/22
H02K7/116
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021073445
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2021-04-23
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 智
(72)【発明者】
【氏名】クビナ ステファン
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-093864(JP,A)
【文献】国際公開第2017/175325(WO,A1)
【文献】特開2007-001564(JP,A)
【文献】特開2019-100439(JP,A)
【文献】特開2017-109599(JP,A)
【文献】特開2019-156042(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042657(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/138698(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/176316(WO,A1)
【文献】特開2007-179853(JP,A)
【文献】特開2010-225351(JP,A)
【文献】特開2008-305747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
H02K 5/22
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側から入力された回転動力を減速してトルクを増強し他面側の出力部から回転出力し車両に設けられたステアリング装置に接続して車輪を操舵させる減速機と、
前記一面側に設けられ前記回転動力を発生させるロータに設けられたロータ出力軸の一端側が前記出力部の出力軸と同心に配置され前記一端側から前記回転動力を前記減速機に入力するモータと、
前記ロータ出力軸の他端側に設けられ前記ロータの回転を検出する検出部が前記ロータ出力軸と同心に配置された前記モータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置の内部には前記モータを制御する電流を発生させるインバータ回路と、前記インバータ回路に隣接して配置され且つ前記モータに面して配置され前記インバータ回路と前記モータとを電気的に接続する連結部とを備え、
前記連結部は、前記インバータ回路が設けられた基板を前記モータの筐体側に着脱可能に支持する支持構造として構成されている、
操舵装置。
【請求項2】
前記出力部は周方向において前記出力軸の周りに回転するアームが設けられている、
請求項1に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記ロータ出力軸の前記一端側には、前記減速機に前記回転動力を入力するためのギヤが一体成型されている、
請求項1または2に記載の操舵装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記モータを制御する第1制御装置及び第2制御装置を有し、
前記第1制御装置と前記第2制御装置とは、前記ロータ出力軸に沿った方向から見て点対称に配置されている、
請求項1に記載の操舵装置。
【請求項5】
前記第1制御装置と前記第2制御装置とは、前記ロータ出力軸に沿った方向から見て前記モータの外径端から径方向の外方に向かって突出した突出部をそれぞれ有し前記突出部の前記モータ側の面には他の装置と接続するコネクタが設けられている、
請求項4に記載の操舵装置。
【請求項6】
前記コネクタは、少なくとも前記モータに電力を供給する電源コネクタであり、
前記電源コネクタは、前記第1制御装置側の前記突出部と前記第2制御装置側の前記突出部とにそれぞれ離間して配置されている、
請求項5に記載の操舵装置。
【請求項7】
前記アームと前記モータとの間には、前記アームの回転角度を検出する角度検出部が設けられている、
請求項2に記載の操舵装置。
【請求項8】
前記角度検出部は前記出力部の周方向に沿って延在して形成されている、
請求項7に記載の操舵装置。
【請求項9】
前記減速機は、前記ロータ出力軸から入力された回転力が伝達されるクランク軸の回転を検出する回転検出部を備え、
前記制御装置は前記回転検出部の回転検出値と前記減速機の減速比とに基づいて前記アームの回転角度を調整する、
請求項2に記載の操舵装置。
【請求項10】
前記制御装置は前記検出部の検出値と前記減速機の減速比とに基づいて前記アームの回転角度を調整する、
請求項2に記載の操舵装置。
【請求項11】
前記制御装置は前記モータを制御する第1制御装置及び第2制御装置を有し、
前記モータは前記第1制御装置により制御される第1三相コイルユニットと前記第2制御装置により制御される第2三相コイルユニットとを備える、
請求項1に記載の操舵装置。
【請求項12】
前記第1制御装置は、前記第1三相コイルユニットの終端が結線された第1結線部の接続を制御する第1スイッチング部を備え、
前記第2制御装置は、前記第2三相コイルユニットの終端が結線された第2結線部の接続を制御する第2スイッチング部を備える、
請求項11に記載の操舵装置。
【請求項13】
一面側から入力された回転動力を減速してトルクを増強し他面側の出力部から回転出力し車両に設けられたステアリング装置に接続して車輪を操舵させる減速機と、
前記一面側に設けられ前記回転動力を発生させるロータに設けられたロータ出力軸の一端側が前記出力部の出力軸と同心に配置され前記一端側から前記回転動力を前記減速機に入力するモータと、
前記ロータ出力軸の他端側に設けられ前記ロータの回転を検出する検出部が前記ロータ出力軸と同心に配置された前記モータを制御する制御装置と、
前記出力部に設けられ前記出力部の周方向において前記出力軸の周りに回転するアームと、を備え、
前記減速機は、
前記ロータ出力軸の前記一端側から前記回転動力が入力されて回転する複数のスパーギヤと、
複数の前記スパーギヤにそれぞれ連結された複数のシャフトに形成された複数の偏心カムと、
前記複数の偏心カムの回転に応じて前記出力部の中心軸に対して偏心回転する偏心ギヤと、
前記アームが接続されると共に、前記偏心ギヤが内周面に沿って前記中心軸の周りに偏心回転し前記スパーギヤの回転数に比して減速された回転数で回転出力する前記出力部と、を備え、
前記制御装置の内部には前記モータを制御する電流を発生させるインバータ回路と、前記インバータ回路に隣接して配置され且つ前記モータに面して配置され前記インバータ回路と前記モータとを電気的に接続する連結部とを備え、
前記連結部は、前記インバータ回路が設けられた基板を前記モータの筐体側に着脱可能に支持する支持構造として構成されている、
操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に設けられる操舵装置は、ハンドル等の操作に応じた回転を入力し、減速機を介して回転出力を出力する。近年、ハンドルに連結されたステアリングシャフトに接続されず、モータ制御によりハンドル操作角に応じたステリング操作が行われるステリングバイワイヤによる操舵装置が研究されている。
【0003】
操舵装置は、取り付け対象物の形状に制約を受けないようになるべく装置構成が小型化されることが望ましい。例えば、特許文献1には、操作における負担を軽減するために、操作方向に対して補助的な力を与える操舵装置が記載されている。特許文献1に記載された操舵装置は、ウォームホイールが形成され操作に基づく回転を入力する入力軸と、ウォームホイールに噛合するウォームシャフトが形成され入力軸の回転方向に補助的な力を与える補助動力部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2020/0156697号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された操舵装置は、ウォームシャフトとウォームホイールとの回転軸が直交し、装置の取り付け対象の装置構成が大型化する虞がある。
【0006】
本発明は、装置構成を小型化することができる操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一面側から入力された回転動力を減速してトルクを増強し他面側の出力部から回転出力し車両に設けられたステアリング装置に接続して車輪を操舵させる減速機と、前記一面側に設けられ前記回転動力を発生させるロータに設けられたロータ出力軸の一端側が前記出力部の出力軸と同心に配置され前記一端側から前記回転動力を前記減速機に入力するモータと、前記ロータ出力軸の他端側に設けられ前記ロータの回転を検出する検出部が前記ロータ出力軸と同心に配置された前記モータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置の内部には前記モータを制御する電流を発生させるインバータ回路と、前記インバータ回路に隣接して配置され且つ前記モータに面して配置され前記インバータ回路と前記モータとを電気的に接続する連結部とを備え、前記連結部は、前記インバータ回路が設けられた基板を前記モータの筐体側に着脱可能に支持する支持構造として構成されている、操舵装置である。
【0008】
また、本発明は、前記出力部は周方向において前記出力軸の周りに回転するアームが設けられていてもよい。
【0009】
また、本発明は、前記ロータ出力軸の前記一端側には、前記減速機に前記回転動力を入力するためのギヤが一体成型されていてもよい。
【0010】
また、本発明は、前記制御装置の内部には前記モータを制御する電流を発生させるインバータ回路と、前記インバータ回路に対応する位置に配置され且つ前記モータに隣接して配置され前記インバータ回路と前記モータとを電気的に接続する連結コネクタとを備えていてもよい。
【0011】
また、本発明は、前記制御装置は、前記モータを制御する第1制御装置及び第2制御装置を有し、前記第1制御装置と前記第2制御装置とは、前記ロータ出力軸に沿った方向から見て点対称に配置されていてもよい。
【0012】
また、本発明は、前記第1制御装置と前記第2制御装置とは、前記ロータ出力軸に沿った方向から見て前記モータの外径端から径方向の外方に向かって突出した突出部をそれぞれ有し前記突出部の前記モータ側の面には他の装置と接続するコネクタが設けられていてもよい。
【0013】
また、本発明は、前記コネクタは、少なくとも前記モータに電力を供給する電源コネクタであり、前記電源コネクタは、前記第1制御装置側の前記突出部と前記第2制御装置側の前記突出部とにそれぞれ離間して配置されていてもよい。
【0014】
また、本発明は、前記アームと前記モータとの間には、前記アームの回転角度を検出する角度検出部が設けられていてもよい。
【0015】
また、本発明は、前記角度検出部は前記出力部の周方向に沿って延在して形成されていてもよい。
【0016】
また、本発明は、前記減速機は、前記ロータ出力軸から入力された回転力が伝達されるクランク軸の回転を検出する回転検出部を備え、前記制御装置は前記回転検出部の回転検出値と前記減速機の減速比とに基づいて前記アームの回転角度を調整してもよい。
【0017】
また、本発明は、前記制御装置は前記検出部の検出値と前記減速機の減速比とに基づいて前記アームの回転角度を調整してもよい。
【0018】
また、本発明は、前記制御装置は前記モータを制御する第1制御装置及び第2制御装置を有し、前記モータは前記第1制御装置により制御される第1三相コイルユニットと前記第2制御装置により制御される第2三相コイルユニットとを備えていてもよい。
【0019】
また、本発明は、前記第1制御装置は、前記第1三相コイルユニットの終端が結線された第1結線部の接続を制御する第1スイッチング部を備え、前記第2制御装置は、前記第2三相コイルユニットの終端が結線された第2結線部の接続を制御する第2スイッチング部を備えていてもよい。
【0020】
本発明は、一面側から入力された回転動力を減速してトルクを増強し他面側の出力部から回転出力し車両に設けられたステアリング装置に接続して車輪を操舵させる減速機と、前記一面側に設けられ前記回転動力を発生させるロータに設けられたロータ出力軸の一端側が前記出力部の出力軸と同心に配置され前記一端側から前記回転動力を前記減速機に入力するモータと、前記ロータ出力軸の他端側に設けられ前記ロータの回転を検出する検出部が前記ロータ出力軸と同心に配置された前記モータを制御する制御装置と、前記出力部に設けられ前記出力部の周方向において前記出力軸の周りに回転するアームと、を備え、前記減速機は、前記ロータ出力軸の前記一端側から前記回転動力が入力されて回転する複数のスパーギヤと、複数の前記スパーギヤにそれぞれ連結された複数のシャフトに形成された複数の偏心カムと、前記複数の偏心カムの回転に応じて前記出力部の中心軸に対して偏心回転する偏心ギヤと、前記アームが接続されると共に、前記偏心ギヤが内周面に沿って前記中心軸の周りに偏心回転し前記スパーギヤの回転数に比して減速された回転数で回転出力する前記出力部と、を備え、前記制御装置の内部には、前記モータを制御する電流を発生させるインバータ回路と、前記インバータ回路に隣接して配置され且つ前記モータに面して配置され前記インバータ回路と前記モータとを電気的に接続する連結部とを備え、前記連結部は、前記インバータ回路が設けられた基板を前記モータの筐体側に着脱可能に支持する支持構造として構成されている、操舵装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、操舵装置における装置構成を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態における操舵装置の構成を示す断面図。
図2】減速機の側面方向の断面図。
図3】減速機の平面方向の断面図。
図4】制御装置の側面方向の断面図。
図5】制御装置の内部構成を概略的に示す図。
図6】角度検出部の構成を示す図。
図7】操舵装置の構成を示すブロック図。
図8】制御装置の回路構成を概略的に示す図。
図9】変形例に係る操舵装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示されるように、操舵装置Wは、減速機1と、減速機1の一面1A側に配置されたモータMと、モータMに設けられた制御装置Cと、を備える。操舵装置Wは、ハンドルやレバー操作等の操作を入力する装置の操作量に応じて出力される操作情報、車両安定制御装置、自動運転装置等から出力される車体の指令情報をセンサにより検出し、センサの検出値に基づいて制御装置Cが操作量に応じたステアリング角を発生させる回転動力をモータMにより減速機1に入力するステアリングバイワイヤ装置である。操舵装置Wは、車両の前輪の操舵に適用される他、後輪の操舵に適用されてもよい。操舵装置Wは、商用車用トラックや、車軸が3つ以上設けられた連結車両に適用されてもよい。操舵装置Wは、乗用車に適用されてもよい。
【0024】
操舵装置Wは、例えば、減速機1と、モータMと、制御装置Cとが減速機1の出力軸と一致する中心軸Lと同心に配置されている。このため、操舵装置Wは、従来技術に比して中心軸L方向に沿った幅を狭め、構成を小型化することができる。制御装置Cは、操作における回転駆動力の回転角に基づいてモータMを制御する。
【0025】
減速機1は、モータMにより入力された回転動力を減速してトルクを増強し回転出力する。減速機1は、例えば、円筒状の出力部2を有する。出力部2は、回転出力を出力するように構成されている。減速機1の詳細な構成は後述する。減速機1の中心軸L方向における一面1A側には、モータMの回転動力が入力される。減速機1の中心軸L方向における他面B側からは、回転出力が出力される。中心軸Lは、減速機1の出力軸と一致している。以下、中心軸L回りを周方向、中心軸Lと直交する方向を径方向と呼ぶ。
【0026】
減速機1の一面1A側には、取り付け対象に固定される固定部材1Fが設けられている。減速機1の他面1B側には、固定部材1Fに対して回転し、回転出力を出力する円筒状の出力部2が設けられている。出力部2は、周方向において中心軸L(出力軸)周りに回転するアーム30が径方向に突出して設けられている。アーム30は、例えば、車両のステアリング装置(不図示)に接続され、回転動作に応じて車輪を操舵させる。尚、アーム30と出力部2とは、別体に設けられていてもよいし、一つの部材で設けられていても良い。アーム30が出力部2の周方向に設けられていることにより、操舵装置Wは、中心軸L方向に沿った幅を狭め、構成を小型化することができる。
【0027】
固定部材1Fは、一面側に減速機1が接続され、一面側と反対側の他面側には、モータMの一端MA側が固定されている。モータMの他端MB側には、制御装置Cが接続されている。モータMは、例えば、制御装置Cにより制御されるブラシレスモータである。モータMは、ブラシモータであってもよい。
【0028】
モータMは、ハンドル操作に応じた回転方向に回転動力を与える。モータMは、例えば、円筒状のモータ筐体M1を備える。モータ筐体M1は、中心軸Lと同心に配置されている。
【0029】
モータMの他端MB側において、モータ筐体M1の円形の開口を塞ぐ円板状の蓋部M2が設けられている。蓋部M2は、例えば、モータ筐体M1と一体成型されている。蓋部M2は、モータ筐体M1と別体に設けられていてもよい。蓋部M2は、中心軸Lと同心に配置されている。蓋部M2の内側には、円柱状に窪んだ第2ベアリング保持空間BH2を有する。第2ベアリング保持空間BH2は、中心軸Lと同心に配置されている。
【0030】
モータMの一端MA側において、モータ筐体M1の円形の開口は、固定部材1Fにより塞がれている。固定部材1FのモータMに面する側には、円柱状に窪んだ第1ベアリング保持空間BH1が形成されている。第1ベアリング保持空間1FAには、第1ベアリングB1が嵌め込まれている。固定部材1Fは、例えば、モータMの一端MA側においてモータ筐体M1と一体に形成されている。固定部材1Fは、減速機1の出力部2と一体に形成されていてもよい。固定部材1Fは、モータM及び減速機1と別体に形成されていてもよい。モータ筐体M1と蓋部M2と固定部材1Fに囲まれてロータ収容空間Vが形成されている。
【0031】
ロータ収容空間Vには、磁界を発生するコイルユニットMUが配置されている。コイルユニットMUは、例えば、制御装置Cにより発生磁界が制御される複数のコイルを有する。複数のコイルは、例えば、中心軸Lと同心にモータ筐体M1の内周面に沿って配置されている。即ち、モータMは、ラジアルギャップモータに形成されている。モータMは、これに限らず、ロータ軸方向に複数のコイルが設置されたアキシャルギャップモータに形成されていてもよい。
【0032】
コイルユニットMUの内側には、コイルユニットMUから発生する磁界に基づいて回転するロータMRが配置されている。ロータMRは、モータMにおける回転動力を発生させる。ロータMRは、中心軸Lと同心に配置されている。ロータMRの回転軸は、中心軸Lと一致している。
【0033】
ロータMRは、例えば、ロータMRの回転動力を出力するロータ出力軸MSと、ロータ出力軸MSに固定されたロータ本体部MCとを備える。ロータ本体部MCは、例えば、永久磁石により円筒状に形成されている。ロータ本体部MCは、出力部2の中心軸Lと同心に配置されている。ロータ本体部MCには、中心軸Lに沿って貫通孔MHが形成されている。
【0034】
貫通孔MHには、中心軸L方向に沿った方向にロータ出力軸MSが挿通されている。ロータ出力軸MSは、例えば、円柱状である。ロータ出力軸MSは、中心軸Lと同心に配置されている。ロータ出力軸MSは、貫通孔MHに接着されている。ロータ出力軸MSは、貫通孔MHに嵌め込まれていてもよい。
【0035】
ロータ出力軸MSの一端MR1側は、第1ベアリングB1に回転自在に軸支されている。ロータ出力軸MSの他端MR2側は、第2ベアリングB2に回転自在に軸支されている。ロータ出力軸MSの一端MR1側には、減速機1に回転動力を入力するためのギヤMGが一体成型されている。
【0036】
ギヤMGは、固定部材1Fから減速機1側に露出している。ギヤMGは、外周に平歯が形成された平歯車である。ギヤMGには、減速機1に設けられた後述のスパーギヤ5Gが噛合している。上記構成により、モータMは、減速機1に設けられたスパーギヤ5Gに入力される回転動力を増強する方向にロータMRを回転させ、回転補助力を減速機1に入力することができる。減速機1は、一面1A側が固定部材1Fに固定されている。減速機1は、回転動力が入力され回転動力に比して回転数を減少させると共に、トルクを増強して出力部2から回転軸周りに回転力を出力する。減速機1の回転軸は、中心軸Lと一致している。減速機1には、アーム30が接続され、減速機1が出力する回転力により回転軸周りに回転する。
【0037】
ロータ出力軸MSにギヤMGが一体成型されていることにより、操舵装置Wは、ロータ出力軸MSに別体にギヤを取り付ける構成に比して、中心軸L方向に沿った幅を狭めて構成することができる。ギヤMGは、減速機1の一面側に設けられた後述のスパーギヤ5Gに噛合し、回転動力を減速機1に入力する。
【0038】
図2及び図3に示されるように、減速機1は、内歯にピン歯車を用い、外歯にトロコイド系歯車を用いた偏心差動方式の減速機である。減速機1は、円筒形の出力部2と、出力部2内に設けられた減速機構3を備える。出力部2の内周面には、内歯2Hが形成されている。内歯2Hは、円柱状に形成された複数のピン2Pと、複数のピン2Pを支持する略半円断面に形成されたピン溝2Mとにより形成されている。複数のピン溝2Mは、出力部2の中心軸方向から見て内周面に沿って配置されている。
【0039】
ピン溝2Mは、出力部2の内周面において中心軸方向に沿って延在している。各ピン溝2Mに対して各ピン2Pが軸方向に沿って当接している。複数のピン2Pは、出力部2の中心軸方向から見て内周面に沿った複数のピン溝2Mに配置されている。上記構成により、出力部2の内周面には、中心軸方向に見て複数のピン2Pにより内歯2Hが形成されている。
【0040】
減速機構3の一面側には、3個のギヤ5が中心軸L周りに均等に配置されている。ギヤ5は、2個設けられていてもよいし、3個以上設けられていてもよい。3個のギヤ5の中心には、ギヤMGが噛合している。3個のギヤ5は、駆動ギヤ13B及びギヤMGの回転により連動して回転する。
【0041】
ギヤ5は、例えば、ギヤMGと噛合するスパーギヤ5Gと、スパーギヤ5Gと同心に連結されたシャフト5Sと、シャフト5Sに形成された第1偏心カム5M及び第2偏心カム5Nとを備える。
【0042】
3個のスパーギヤ5Gは、ギヤMGに噛合している(図1参照)。即ち3個のスパーギヤ5Gは、モータMから回転動力を増強する方向に回転補助力が入力され、シャフト5Sが回転する。
【0043】
シャフト5Sは、円柱状に形成されている。シャフト5Sの一端側は、第2円板U2にベアリングB4を介して回転自在に軸支されている。シャフト5Sの他端側は、第1円板U1にベアリングB3を介して回転自在に軸支されている。
【0044】
シャフト5Sの他端側と、スパーギヤ5Gとは、シャフト5Sの軸線5L(回転軸)と同心に連結されている。スパーギヤ5Gは、例えば、所定の歯数の平歯を有する円板状に形成されている。スパーギヤ5GがギヤMGに回転駆動されると、シャフト5Sが連動して回転する。シャフト5Sには、第1偏心カム5M及び第2偏心カム5Nが一体に形成されている。第1偏心カム5M及び第2偏心カム5Nは、例えば、円柱状に形成されている。第1偏心カム5Mは、中心軸がシャフト5Sの軸線5Lからずれて偏心して形成されている。
【0045】
第2偏心カム5Nは、中心軸がシャフト5Sの軸線5Lからずれて偏心して形成されている。第2偏心カム5Nの偏心方向は、第1偏心カム5Mの偏心方向と反対方向である。第1偏心カム5M及び第2偏心カム5Nは、スパーギヤ5Gに連結されたスパーギヤ5Gのシャフト5Sに連動して回転する。第1偏心カム5Mは、出力部2内に設けられた第1偏心ギヤ6を駆動する。
【0046】
第1偏心ギヤ6は、円板状に形成されている。第1偏心ギヤ6の中心軸6L周りには円形の貫通孔6Dが形成されている。貫通孔6Dは、無くてもよい。
【0047】
第1偏心ギヤ6の外周に沿って外歯6Cが形成されている。外歯6Cは、出力部2の内周面に沿って形成された内歯2Hと一部が噛合する。外歯6Cは、例えば、内歯2Hに比して歯数が1個以上少なく形成されている。第1偏心ギヤ6は、中心軸L(回転軸)に対して偏心回転する。第1偏心ギヤ6は、外歯6Cが内歯2Hと一部が噛合しながら出力部2の内周面に沿って滑らずに転がり、偏心回転する。
【0048】
第1偏心ギヤ6は、例えば、3個の第1偏心カム5Mを回転自在に支持する3個の第1貫通孔6Hを有する。第1貫通孔6Hは、円形の開口に形成されている。第1貫通孔6Hには、第1偏心カム5MがニードルベアリングB5を介して回転自在に支持されている。第1偏心ギヤ6は、3個の第1貫通孔6Hの間において配置された3個の第2貫通孔6Kを有する。第2貫通孔6Kは、第1貫通孔6Hの数に応じて3個以上形成されていてもよい。
【0049】
第2貫通孔6Kは、例えば、第1偏心ギヤ6の中心軸6L方向から見て対称に形成されている。第2貫通孔6Kは、外歯6Cとの間の厚みが最も薄く形成された領域である薄肉部6Pを有する。第2偏心カム5Nは、出力部2内に設けられた第2偏心ギヤ7を駆動する。第2偏心ギヤ7は、円板状に形成されている。
【0050】
第2偏心ギヤ7の中心軸7L周りには円形の貫通孔7Dが形成されている。貫通孔7Dは、無くてもよい。第2偏心ギヤ7の外周に沿って外歯7Cが形成されている。外歯7Cは、出力部2の内周面に沿って形成された内歯2Hと一部が噛合する。外歯7Cは、例えば、内歯2Hに比して歯数が1個以上少なく形成されている。第2偏心ギヤ7は、中心軸L(回転軸)に対して偏心回転する。
【0051】
第2偏心ギヤ7は、外歯7Cが内歯2Hと一部が噛合しながら出力部2の内周面に沿って滑らずに転がり、偏心回転する。第2偏心ギヤ7は、第1偏心ギヤ6と連動して回転し、第1偏心ギヤ6の偏心方向と反対方向に偏心回転する。第2偏心ギヤ7と第1偏心ギヤ6とが連動して回転することにより、減速機1におけるバランスが保たれる。
【0052】
第2偏心ギヤ7は、例えば、3個の第2偏心カム5Nを回転自在に支持する3個の第1貫通孔7Hを有する。第1貫通孔7Hは、円形の開口に形成されている。第1貫通孔7Hには、第2偏心カム5NがニードルベアリングB6を介して回転自在に支持されている。第2偏心ギヤ7は、3個の第1貫通孔7Hの間において配置された3個の第2貫通孔7Kを有する。第2貫通孔7Kは、第1貫通孔7Hの数に応じて3個以上形成されていてもよい。
【0053】
第2貫通孔7Kは、例えば、第2偏心ギヤ7の中心軸7L方向から見て対称に形成されている。第2貫通孔7Kは、外歯7Cとの間の厚みが最も薄く形成された領域である薄肉部7Pを有する。
【0054】
第2貫通孔6K,7Kには、連結軸Sが挿通される。連結軸Sの一端側は、3個のシャフト5Sの一端側を回転自在に軸支する第2円板U2に連結されている。連結軸Sの他端側は、3個のシャフト5Sの他端側を回転自在に軸支する第1円板U1に連結されている。連結軸Sは、3個の第2貫通孔6K,7Kに応じて3個設けられている。
【0055】
連結軸Sは、一端SA側が第2円板U2から第2貫通孔6K,7Kを通じて突出している。連結軸Sにおいて、一端SA側及び他端SB側の軸SL方向に見た断面は、円柱状に形成されている。連結軸Sは、一端SA側が第2円板U2に支持されている。連結軸Sは、他端SB側が第1円板U1に支持されている。連結軸Sは、例えば、軸SL方向に見た断面が対称に形成されている。
【0056】
連結軸Sは、軸SL方向に見て、他端SB側が第1円板U1にピンSPにより位置決めされている。連結軸Sは、軸SL方向に見て、一端SA側が第2円板U2にピンSPにより位置決めされていてもよい。連結軸Sは、例えば、第1円板U1を介して固定部材1Fに固定されている。上記構成により、第1円板U1、連結軸S、第2円板U2は、固定部材1Fに固定され、出力部2は、第1円板U1、連結軸S、第2円板U2に対して回転する。出力部2は、スパーギヤ5Gに入力された回転動力に比して回転数を減少させると共に、トルクを増強して中心軸L(回転軸)周りに回転力を出力する。
【0057】
出力部2の回転に連動して、出力部2に接続されたアーム30は、中心軸L(回転軸)周りに回転する。アーム30は、例えば、棒状に形成されている。アーム30の基端側は、例えば、出力部2の外周に連結されている。アーム30は、減速機1において中心軸L周りに回転自在に連結されている。
【0058】
アーム30の先端側には、例えば、ボールジョイント(不図示)が設けられている。アーム30の先端側は、ステアリング機構(不図示)に接続されている。アーム30の出力部2における接続位置は、図示する限りでなく、先端側の接続対象の位置に応じて中心軸L(回転軸)回りの任意の位置に接続されていてもよい。上記構成により、アーム30は、減速機1の出力部2の外周方向において回転範囲に制限無く回転することができる。従って、アーム30は、減速機1の出力部2の外周方向において任意の位置に連結することができる。
【0059】
次に、制御装置Cについて説明する。
【0060】
図4及び図5に示されるように、制御装置Cは、例えば、ロータ出力軸MSの他端MR2側に配置されている。制御装置Cは、例えば、中心軸Lと同心に配置されている。制御装置Cは、例えば、モータ筐体M1の外径に合わせて形成された円柱状の筐体C1を備える。筐体C1は、例えば、中心軸L方向から見てモータ筐体M1の外径から径方向に突出した一対の突出部C1P,C1Qが形成されている。制御装置Cの外形はこの限りでなく、どのような形状に形成されていてもよい。
【0061】
筐体C1の底面C1A側は、モータMの蓋部M2に接続されている。筐体C1の底面C1Aと反対側の上面側は、矩形の開口C1Bを有している。開口C1Bは、矩形の板状に形成された蓋部C2により閉じられている。蓋部C2は、例えば、筐体C1にネジ等により固定されている。蓋部C2は、開口C1Bに嵌め込まれ、開口C1Bの周囲に沿って設けられた複数の爪等により保持されていてもよい。筐体C1と蓋部C2とに囲まれることにより、制御装置Cの内部に収容空間Tが形成されている。
【0062】
収容空間T内には、ロータ出力軸MSの他端MR2側に対応する位置に検出部CSが設けられている。検出部CSは、ロータMRの回転を検出するセンサである。制御装置Cは、検出部CSの検出値に基づいて、コイルユニットMUへの通電を制御し、ロータMRの回転を制御する。検出部CSは、中心軸Lと同心に配置されている。
【0063】
収容空間T内には、モータMを制御する第1制御装置C3と第2制御装置C4とが設けられている。第1制御装置C3と第2制御装置C4とは、同一の回路構成を有している。第1制御装置C3と第2制御装置C4とは、いずれか一方が故障してもモータMの制御が行えるように冗長性を確保するために設けられている。第2制御装置C4は無くてもよく、制御装置Cは、少なくとも第1制御装置C3を備えていればよい。
【0064】
第1制御装置C3は、第1回路C3Tが設けられた第1基板C3Kを有する。第1基板C3Kは、例えば、筐体C1にネジ止めされている。第1基板C3Kは、例えば、一面側が蓋部C2に面し、他面側が底面C1Aに面している。第1回路C3Tは、第1基板C3Kの一面側に設けられている。
【0065】
第2制御装置C4は、第2回路C4Tが設けられた第2基板C4Kを有する。第2基板C4Kは、例えば、筐体C1にネジ止めされている。第2基板C4Kは、例えば、一面側が蓋部C2に面し、他面側が底面C1Aに面している。第2回路C4Tは、第2基板C4Kの一面側に設けられている。
【0066】
第1回路C3Tは、モータMを制御する電流を発生させる第1インバータ回路C3Iを有する。第1インバータ回路C3Iは、例えば、第1基板C3Kの他面側においてモータMの蓋部M2に対応する位置に配置されている。第1インバータ回路C3Iは、例えば、筐体C1の底面C1Aに接触している。第1インバータ回路C3Iと底面C1Aとの間の接触面には、熱伝導性が高い充填材が充填されていてもよい。これにより、第1インバータ回路C3Iにおいて発生する熱を底面C1Aに伝達することができる。底面C1Aに伝達された熱は、モータMの蓋部M2を介してモータ筐体M1にも伝達され、モータ筐体M1の表面から放熱される。
【0067】
筐体C1及びモータ筐体M1は、例えば、熱伝導性が高いアルミニウム等の金属部材により形成されている。筐体C1及びモータ筐体M1の表面には、複数の突起を有するヒートシンクや、熱伝導性が高い他の部材で形成された放熱層が形成されていてもよい。第1基板C3Kの他面側において第1インバータ回路C3Iに隣接する位置に配置され、且つ、モータMの蓋部M2に隣接する位置には、第1インバータ回路C3I側とモータM側とを接続する第1連結コネクタK1が設けられている。
【0068】
第1連結コネクタK1は、電極端子(不図示)を有し、第1インバータ回路C3IとモータMとを電気的に最短距離において接続する。第1連結コネクタK1は、例えば、樹脂等の絶縁体により形成されている。第1連結コネクタK1は、第1インバータ回路C3I側とモータM側とを着脱可能に固定する。第1連結コネクタK1は、第1基板C3Kを筐体C1側に支持する支持構造の一部として構成されてもよい。この場合、第1連結コネクタK1の電極端子には荷重が加わらないようにして接触不良を防止してもよい。
【0069】
第2回路C4Tは、モータMを制御する電流を発生させる第2インバータ回路C4Iを有する。第2インバータ回路C4Iは、例えば、第2基板C4Kの他面側においてモータMの蓋部M2に対応する位置に配置されている。第2インバータ回路C4Iは、例えば、筐体C1の底面C1Aに接触している。第2インバータ回路C4Iと底面C1Aとの間には、熱伝導性が高い充填材が充填されていてもよい。これにより、第2インバータ回路C4Iにおいて発生する熱を底面C1Aに伝達することができる。
【0070】
底面C1Aに伝達された熱は、モータMの蓋部M2を介してモータ筐体M1にも伝達され、モータ筐体M1の表面から放熱される。第2基板C4Kの他面側において第2インバータ回路C4Iに隣接する位置に配置され、且つ、モータMの蓋部M2に隣接する位置には、第2インバータ回路C4I側とモータM側とを接続する第2連結コネクタK2が設けられている。
【0071】
第2連結コネクタK2は、電極端子(不図示)を有し、第2インバータ回路C4IとモータMとを電気的に最短距離において接続する。第2連結コネクタK2は、例えば、樹脂等の絶縁体により形成されている。第2連結コネクタK2は、第2インバータ回路C4IとモータM側とを着脱可能に固定する。第2連結コネクタK2は、第2基板C4Kを筐体C1側に支持する支持構造の一部として構成されてもよい。この場合、第2連結コネクタK2の電極端子には荷重が加わらないようにして接触不良を防止してもよい。
【0072】
収容空間T内において第1連結コネクタK1及び第2連結コネクタK2が設けられていることにより、制御装置Cは、中心軸L方向に沿った幅を狭めて構成することができる。第1連結コネクタK1及び第2連結コネクタK2が設けられていることにより、制御装置Cは、第1インバータ回路C3I及び第2インバータ回路C4IとモータMとを電気的に最短距離において接続することができ、電気的なノイズの発生を低減することができる。また、第1連結コネクタK1及び第2連結コネクタK2とモータMとは電気的に最短距離において接続されるため、入力される他のノイズの影響を低減することができる。
【0073】
第1連結コネクタK1及び第2連結コネクタK2によれば、第1基板C3K及び第2基板C4Kの取り付け時の位置決めを容易にすることができる。第1連結コネクタK1及び第2連結コネクタK2によれば、第1基板C3K及び第2基板C4Kの交換を容易にすることができる。
【0074】
第1連結コネクタK1及び第2連結コネクタK2によれば、第1インバータ回路C3I及び第2インバータ回路C4IとモータMとを配線を用いずに直接的に接続可能にするため、電気抵抗を低減すると共に、組み立てを容易にすることができる。第1連結コネクタK1及び第2連結コネクタK2によれば、配線を排除することにより、配線の劣化により生じる接触不良を低減する共に、異物混入により生じる接触不良を低減することができる。
【0075】
制御装置Cをロータ出力軸MS(或いは中心軸L)に沿った方向から見て、第1制御装置C3と第2制御装置C4とは、点対称に配置されている。2つの第1基板C3K及び第2基板C4Kとは、点対称に配置可能な形状に形成されている。第1基板C3K上に設けられた第1回路C3Tと第2基板C4K上に設けられた第2回路C4Tとは、同一の回路構成であり且つ同一の配置に設計されている。上記構成により、第1制御装置C3と第2制御装置C4とは、同一の回路を用いることができ、設計工程及び製造工程を短縮することができる。上記構成により、第1制御装置C3と第2制御装置C4とを筐体C1内において重層して配置せずに同一面に配置することができ、操舵装置Wは、中心軸L方向の幅を低減して構成することができる。
【0076】
図5の例においては、第1基板C3K側には検出部CSを配置するための突部C3Mが形成され、第2基板C4K側には突部C3Mに嵌合する切欠き部C4Mが形成されている。第1基板C3Kは、突部C3Mを設けずに切欠き部C4Mと同様に形成し、検出部CSを保持する円柱状の基板を別体に形成してもよい。さらに、第2基板C4Kには、第1基板C3Kの突部C3Mと同一の突部が設けられてもよく、第1基板C3Kと第2基板C4Kとは、第1基板C3Kの突部C3Mと第2基板C4Kの突部に設けられた同一の検出部CSが重なり合う様に組付けられてもよい。これにより、第1制御装置C3と第2制御装置C4とは、完全に同一に設計されてもよい。第1制御装置C3と第2制御装置C4とを完全に同一に設計することで、設計及び製造コストを低減することができる。
【0077】
制御装置Cは、第1制御装置C3側においてロータ出力軸(或いは中心軸L)に沿った方向から見てモータMの外径端から径方向の外方に向かって突出した第1突出部C3Pを有している。制御装置Cは、第2制御装置C4側は、ロータ出力軸に沿った方向から見てモータMの外径端から径方向の外方に向かって突出した第2突出部C4Qを有している。第1突出部C3Pと第2突出部C4Qには、底面C1A側(モータM側の面側)には、操舵装置Wと他の装置とを接続するコネクタDn(nは自然数)が設けられている。コネクタDnは、1つ以上設けられていてもよい。
【0078】
コネクタDnは、底面C1Aから中心軸L方向に沿って突出している。上記構成により操舵装置Wは、筐体C1の蓋C2側にコネクタが無く、中心軸L方向に沿った幅を低減して構成することができる。
【0079】
第1突出部C3PにおいてコネクタDnは、少なくともモータMに電力を供給する第1電源コネクタD1が設けられている。第2突出部C4QにおいてコネクタDnは、少なくともモータMに電力を供給する第2電源コネクタD2が設けられている。第1電源コネクタD1と第2電源コネクタD2とは、第1突出部C3Pと第2突出部C4Qとにそれぞれ離間して配置されている。
【0080】
高電圧の電流が流通する第1電源コネクタD1が第1突出部C3Pに、設けられていることにより、第1電源コネクタD1近傍の第1基板C3Kにおける良好な放熱性を確保することができる。高電圧の電流が流通する第2電源コネクタD2が第2突出部C4Qに、設けられていることにより、第2電源コネクタD2近傍の第2基板C4Kにおける良好な放熱性を確保することができる。
【0081】
第1電源コネクタD1が第1突出部C3Pに、第2電源コネクタD2が第2突出部C4Qにそれぞれ離間して配置されていることにより、良好な放熱性を確保すると共に、モータMに伝わる熱を低減することができる。
【0082】
次に、アーム30の回転角の検出方法について説明する。アーム30とモータMとの間には、アームの回転角度を検出する角度検出部40が設けられている。角度検出部40は、例えば、固定部材1Fの減速機1に面する一面側に設けられている。
【0083】
図6に示されるように、角度検出部40は、例えば、減速機1の他面1B側から中心軸Lに沿って見て、出力部2の周方向に沿って円弧状に延在して形成されている。上記構成により、操舵装置Wは、中心軸L方向に角度検出部を設ける構成に比して中心軸L方向に沿った幅を低減して構成することができる。角度検出部40は、例えば、磁気センサであり金属製の突起35の位置の変化に伴って変化する磁場の変動に基づいてアーム30の出力部2の周方向に沿った位置を検出する。角度検出部40は、アーム30の取り付け位置によってはアーム30の位置を直接検出してもよい。
【0084】
上記構成により、制御装置Cは、角度検出部40により、アーム30の回転角の検出値に基づいて、アーム30の回転角に応じたモータMの回転角の指令信号と比較して、アーム30の回転角とモータMの回転角の指令信号との偏差を0とするセミクローズドループ制御を行うことができる。
【0085】
アーム30の位置と回転角度とは、予め対応付けられており、制御装置Cは、検出されたアーム30の位置に基づいて、アーム30の回転角度を算出する。角度検出部40は、光学式のセンサが用いられてもよい。角度検出部40は、アーム30の角度が検出可能であれば、他のセンサが用いられてもよい。アーム30の回転角は、他の方法により検出されてもよい。
【0086】
例えば、減速機1には、ロータ出力軸MSから入力された回転力が伝達されるシャフト5S(クランク軸)の回転を検出する回転検出部50(図1参照)を備えていてもよい。シャフト5Sに入力される回転数と減速機1内において各ギヤの回転に基づいて出力される出力部2の回転数との間の減速比は、減速機1の減速比に基づいて予め算出される。制御装置Cは、シャフト5Sの回転を検出する回転検出部50の回転検出値と減速機1における減速比に基づいてアーム30の回転角度を算出し、算出値に基づいてアーム30の回転角度を調整してもよい。この構成によれば、減速機1の内部に回転検出部50が操舵装置W内に設けられていることにより、操舵装置Wは、中心軸L方向に沿った幅を低減して構成することができる。また、この構成によれば、操舵装置Wは、回転検出部50の防塵性と防水性を向上することができる。
【0087】
上述したように、制御装置Cには、ロータMRの回転を制御するため、ロータMRの回転を検出する検出部CSが設けられている(図1参照)。ロータMRにより入力される回転数と減速機1により減速されて出力される出力部2の回転数との間の減速比は、トータルの減速比として予め算出される。制御装置Cは、検出部CSの検出値と予め算出された上記トータルの減速比とに基づいてアーム30の回転角度を算出し、算出値に基づいてアーム30の回転角度を調整してもよい。また、アーム30の回転角度を算出可能であれば、任意の位置に任意のセンサが設けられていてもよい。この構成によれば、後付けのセンサを不要とし、構成を簡素化することができる。
【0088】
上述したアーム30の回転角度の調整方法は、操舵装置Wに個別の構成として適用されてもよいし、2つ以上組み合わされて冗長性を持たせた構成にしてもよい。
【0089】
次に、制御装置CによるモータMの制御について説明する。
【0090】
図7及び図8に示されるように、モータMは、車両のステアリング装置に設けられたハンドル角センサHSの検出値に基づいて、第1制御装置C3及び第2制御装置C4により制御される。第1制御装置C3及び第2制御装置C4は、モータMのコイルユニットMUへの通電を制御し、ロータMRの回転を調整する。コイルユニットMUは、例えば、第1制御装置C3により制御される三相コイルを有する第1三相コイルユニットMU1と、第2制御装置C4により制御される三相コイルを有する第2三相コイルユニットMU2とを備える。コイルユニットMUにおいて第1三相コイルユニットMU1と第2三相コイルユニットMU2とは、別体に設けられていてもよいし、三相コイルの一つのユニットであってもよい。
【0091】
第1制御装置C3は、第1三相コイルユニットMU1に通電する第1インバータ回路C3Iと、第1三相コイルユニットMU1の終端が結線された第1結線部X1の接続を制御する第1スイッチング部C3Bと、第1インバータ回路C3I及び第1スイッチング部C3Bを制御する第1制御部C3Aとを備える。第1インバータ回路C3Iは、例えば、複数のパワートランジスタ素子Zにより構成されている。第1スイッチング部C3Bは、例えば、複数のパワートランジスタ素子(不図示)により構成されている。
【0092】
第1制御部C3Aは、例えば、第1インバータ回路C3Iの各パワートランジスタ素子Zのオン/オフのタイミングをPWM(Pulse Width Modulation)制御してパルス電流を発生し、第1三相コイルユニットMU1を制御する。第1制御部C3Aは、PWM制御以外の制御方法により第1三相コイルユニットMU1を制御してもよい。第1制御部C3Aは、例えば、第1制御装置C3の故障時に、第1スイッチング部C3Bを開状態にし、第1三相コイルユニットMU1への通電を遮断する。これにより、操舵装置Wは、故障時の安全性が確保される。
【0093】
第2制御装置C4は、第2三相コイルユニットMU2に通電する第2インバータ回路C4Iと、第2三相コイルユニットMU2の終端が結線された第2結線部X2の接続を制御する第2スイッチング部C4Bと、第2インバータ回路C4I及び第2スイッチング部C4Bを制御する第2制御部C4Aとを備える。第2インバータ回路C4Iは、例えば、複数のパワートランジスタ素子Zにより構成されている。第2スイッチング部C4Bは、例えば、複数のパワートランジスタ素子(不図示)により構成されている。
【0094】
第2制御部C4Aは、例えば、第2インバータ回路C4Iの各パワートランジスタ素子Zのオン/オフのタイミングをPWM(Pulse Width Modulation)制御してパルス電流を発生し、第2三相コイルユニットMU2を制御する。第2制御部C4Aは、PWM制御以外の制御方法により第1三相コイルユニットMU1を制御してもよい。第2制御部C4Aは、例えば、第2制御装置C4の故障時に、第2スイッチング部C4Bを開状態にし、第2三相コイルユニットMU2への通電を遮断する。これにより、操舵装置Wは、故障時の安全性が確保される。
【0095】
第1制御部C3Aは、第1三相コイルユニットMU1を制御することにより、モータMの50%分の出力を制御する。第2制御部C4Aは、第2三相コイルユニットMU2を制御することにより、モータMの50%分の出力を制御する。この構成によれば、操舵装置Wは、第1制御装置C3又は第2制御装置C4のいずれか一方が故障しても、少なくとも半分の出力を確保することができる。
【0096】
第1制御部C3Aは、第1三相コイルユニットMU1を制御することにより、モータMの100%分の出力を制御してもよい。この場合、第2制御部C4Aは、モータMを制御しない。第2制御部C4Aは、第2三相コイルユニットMU2を制御することにより、モータMの100%分の出力を制御してもよい。この場合、第1制御部C3Aは、モータMを制御しない。この構成によれば、操舵装置Wは、第1制御装置C3又は第2制御装置C4のいずれか一方が故障した場合、他方の制御装置に切り替えて100%の出力を確保することができる。
【0097】
第1制御装置C3と第2制御装置C4とのいずれか一方がモータMの制御を行う場合、所定期間、運転回数毎等の所定のタイミングにおいて、第1制御装置C3と第2制御装置C4とを切り替えてモータMを制御させ、モータMの制御における負担を分散してもよい。第1制御装置C3と第2制御装置C4とのモータMの制御のバランスは、任意の比率に調整されてもよい。制御装置Cによれば、モータMの制御における冗長性を確保することができる。制御装置Cによれば、モータMの制御における効率の良いパワーバランスを任意に選定することができる。
【0098】
次に、操舵装置Wの動作について説明する。
【0099】
車両のステアリング装置においてハンドル操作が行われた場合、制御装置Cは、ハンドル角センサHSの検出値に基づいて、ハンドル操作角に応じたアーム30の回転角度を算出し、アーム30の回転角度に応じたモータMの回転数を算出する。制御装置Cは、算出結果に基づいてモータMを制御する。モータMにおいてロータMRが回転すると、連動してギヤMGが回転する。
【0100】
ギヤMGが回転すると、ギヤMGに噛合する複数のスパーギヤ5Gが連動して軸線5L周りに回転する。スパーギヤ5Gが回転するとシャフト5Sが連動して回転する。シャフト5Sの回転に連動して、第1偏心カム5M及び第2偏心カム5Nが軸線5L周りに偏心回転する。制御装置Cは、モータMを制御して、ロータMRを回転させスパーギヤ5Gに回転動力を入力する。
【0101】
第1偏心カム5Mの回転に連動して第1偏心ギヤ6が出力部2の内周面に沿って中心軸L周りに偏心回転する。第2偏心カム5Nの回転に連動して第2偏心ギヤ7が出力部2の内周面に沿って中心軸L周りに偏心回転する。第2偏心ギヤ7は、第1偏心ギヤ6の回転に対して半回転ずれて回転する。第1偏心ギヤ6及び第2偏心ギヤ7の回転に連動して第1円板U1及び第2円板U2が同時に中心軸L周りに出力部2に対して相対的に回転する。
【0102】
第1円板U1及び第2円板U2は、固定部材1Fに対して固定されている。従って、出力部2は、第1円板U1及び第2円板U2に対して相対的に中心軸L周りに回転する。出力部2は、シャフト5Sの回転数に比して低い回転数により回転する。
【0103】
複数のスパーギヤ5Gが軸線5L周りに回転すると、複数のスパーギヤ5Gの回転に連動して、第1偏心ギヤ6及び第2偏心ギヤ7が中心軸L周りに偏心運動する。この時、連結軸Sは、第1偏心ギヤ6の第2貫通孔6Kの内周に接触せずに第2貫通孔6Kの内周の形状に沿って相対的に移動する。同様に、連結軸Sは、第2偏心ギヤ7の第2貫通孔(不図示)の内周に接触せずに第2貫通孔の内周の形状に沿って相対的に移動する。
【0104】
第1偏心ギヤ6及び第2偏心ギヤ7の偏心運動に連動して出力部2が第1円板U1及び第2円板U2に対して中心軸L周りに回転運動する。出力部2は、スパーギヤ5Gに比して低い回転数により回転する。出力部2に回転出力を伝達する回転対象物を連結すると、スパーギヤ5Gに比して減速されてトルクが増強された回転出力が得られる。出力部2の回転に連動してアーム30が中心軸L周りに回転する。アーム30は、回転範囲において、制限無く回転する。
【0105】
アーム30の回転角は、角度検出部40により検出され、制御装置Cにより、検出値に基づいて、アーム30の回転角に応じたモータMの回転角の指令信号と比較して、アーム30の回転角とモータMの回転角の指令信号との偏差を0とするセミクローズドループ制御が行われ、アーム30の回転角が正確に調整される。
【0106】
上述したように、操舵装置Wによれば、ハンドル操作の回転角に応じてアーム30の回転角を調整するステアリングバイワイヤシステムを実現することができる。操舵装置Wによれば、制御装置C、モータM、減速機1が中心軸Lに対して同軸に配置されているため、中心軸Lに沿った方向の幅を低減し装置構成を小型化することができる。操舵装置Wによれば、モータMのロータ出力軸MSの先端にギヤMGが一体成型されているため、中心軸Lに沿った方向の幅を低減することができる。
【0107】
操舵装置Wによれば、アーム30が出力部2の周方向に設けられていることにより、中心軸L方向に沿った幅を狭め、構成を小型化することができる。操舵装置Wによれば、制御装置Cが中心軸Lと同心に配置されていることにより、中心軸L方向に沿った幅を狭め、構成を小型化することができる。操舵装置Wによれば、制御装置Cが第1制御装置C3と第2制御装置C4とを有していることにより冗長性が確保され、いずれか一方が故障してもモータMの制御を継続することができる。
【0108】
[変形例]
図9に示されるように、操舵装置Wは、ステアリング装置に設けられステアリング操作に補助動力を与えるパワーステアリング装置として構成されてもよい。操舵装置Wは、ステアリングシャフト12の回転動力を入力する入力装置10が設けられていてもよい。入力装置10が設けられた操舵装置Wは、例えば、車両の前輪に適用される。入力装置10が設けられた操舵装置Wは、商用車用トラックや、車軸が3つ以上設けられた連結車両等に入力装置10が設けられていない操舵装置Wと共に適用され、入力装置10が設けられていない操舵装置Wと連動して制御されてもよい。操舵装置Wは、乗用車に適用されてもよい。変形例に係る操舵装置Wは、上記実施形態に係る入力装置10が設けられていない操舵装置Wと同様にステアリングバイワイヤ装置として構成されていてもよい。
【0109】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、操舵装置Wは、車両のステアリング装置以外の用途に適用されてもよい。減速機1は、上記実施形態の他、波動歯車減速機等、回転動力を減速してトルクを増強して出力できればどのような減速機が用いられてもよい。
【0110】
上述の各実施形態において、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成することができるように構成されていればよい。
【0111】
上述の各実施形態において、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成することができるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0112】
1…減速機、1F…固定部材、2…出力部、5…ギヤ、5G…スパーギヤ、10…入力装置、30…アーム、35…突起、40…角度検出部、50…回転検出部、C…制御装置、C1P、C1Q…突出部、C3…第1制御装置、C4…第2制御装置、CS…検出部、D1…第1電源コネクタ、D2…第2電源コネクタ、Dn…コネクタ(図示なし)、HS…ハンドル角センサ、K1…第1連結コネクタ、K2…第2連結コネクタ、L…中心軸(出力軸)、M…モータ、MG…ギヤ、MS…ロータ出力軸、S…連結軸、W、WA…操舵装置、…操舵装置、X1…第1結線部、X2…第2結線部
【要約】
【課題】装置構成を小型化することができる操舵装置を提供する。
【解決手段】一面側から入力された回転動力を減速してトルクを増強し他面側の出力部から回転出力する減速機と、前記一面側に設けられ前記回転動力を発生させるロータに設けられたロータ出力軸の一端側が前記出力部の出力軸と同心に配置され前記一端側から前記回転動力を前記減速機に入力するモータと、前記ロータ出力軸の他端側に設けられ前記ロータの回転を検出する検出部が前記ロータ出力軸と同心に配置された前記モータを制御する制御装置と、を備える操舵装置である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9