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特許7021393タップ切換器用電動操作装置およびタップ切換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】タップ切換器用電動操作装置およびタップ切換方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 29/04 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
H01F29/04 502L
H01F29/04 502K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021503264
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2019008175
(87)【国際公開番号】W WO2020178914
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香野 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】江口 直紀
(72)【発明者】
【氏名】石川 拓
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-191998(JP,A)
【文献】特開昭58-188109(JP,A)
【文献】特開2000-223331(JP,A)
【文献】特開昭57-34321(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244235(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御指令を受け付ける受付部と、
前記受付部により制御指令が受け付けられた場合に、モータにより主動軸を駆動させることによってタップ切換器のタップの切り換えを行う駆動部と、
前記タップの切り換え時における前記主動軸の回転位置を検出する検出部と、
前記検出部により検出された回転位置に対応付けられた前記タップの停止位置と、前記タップの目標停止位置とに基づいて、前記タップの停止位置のずれ量を導出する導出部と、を備え、
前記導出部は、前記目標停止位置から所定のオフセット量をオフセットさせて停止制御を行うことで、前記検出部により検出される回転位置に対応付けられた前記タップの停止位置を取得するとともに、取得した停止位置の前記目標停止位置からの偏差を取得し、
更に前記導出部は、前記オフセット量を変化させて、前記偏差を複数取得し、取得した複数の前記オフセット量と前記偏差とに基づいて、前記ずれ量を導出する、
タップ切換器用電動操作装置。
【請求項2】
前記導出部により導出された前記タップの停止位置のずれ量に基づいて、前記駆動部により前記モータの回転を停止させるタイミングを補正する補正部を更に備える、
請求項1に記載のタップ切換器用電動操作装置。
【請求項5】
前記導出部は、前記タップの停止位置のずれ量に基づいて、前記タップ切換器の異常の有無を判定する、
請求項1または2に記載のタップ切換器用電動操作装置。
【請求項6】
前記導出部により導出された過去のずれ量または偏差に基づいて、前記タップの停止位置のずれの傾向を判別し、判別した結果に基づいて前記タップ切換器に異常が発生する時期を予測する予測部を更に備える、
請求項1、2、および5のうち何れか1項に記載のタップ切換器用電動操作装置。
【請求項7】
前記導出部は、前記タップ切換器が備える複数のタップ位置ごとに前記ずれ量を導出する、
請求項1、2、5、および6のうち何れか1項に記載のタップ切換器用電動操作装置。
【請求項8】
前記導出部は、昇圧時および降圧時におけるタップの切り換えごとに前記ずれ量を導出する、
請求項1、2、5、6、および7のうち何れか1項に記載のタップ切換器用電動操作装置。
【請求項9】
タップ切換器用電動操作装置が、
受付部により制御指令を受け付け、
受け付けた前記制御指令により駆動部により駆動されたモータにより主動軸を駆動することによってタップ切換器のタップの切り換えを行い、
前記タップの切り換え時における前記主動軸の回転位置を検出部により検出し、
検出された前記回転位置に対応付けられた前記タップの停止位置と、前記タップの目標停止位置とに基づいて、前記タップの停止位置のずれ量を導出し、
前記ずれ量の導出は、
前記目標停止位置から所定のオフセット量をオフセットさせて停止制御を行うことで、前記検出部により検出される回転位置に対応付けられた前記タップの停止位置を取得し、
取得した停止位置の前記目標停止位置からの偏差を取得し、
前記オフセット量を変化させて、前記偏差を複数取得し、
取得した複数の前記オフセット量と前記偏差とに基づいて、前記ずれ量を導出する、
タップ切換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タップ切換器用電動操作装置およびタップ切換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所等では、発電所で発電した電力を効率よく送電できるように変圧器による電圧の変換が行われる。上記電圧は、電力消費の需要が増えると低下し、需要が減ると上昇するため、常に適正な電圧に調整し、需要者に安定した電力を供給する必要がある。そこで、従来では、変圧器の1次側の巻数を変えて2次側の電圧を変える負荷時タップ切換器を使用し、そのタップを切り換えることで、発電中でも停電させずに電圧を調整する手法が知られている。
【0003】
負荷時タップ切換器には、モータを用いてタップを切り換える駆動装置を収納した電動操作装置が必要である。上記の駆動装置は、構造上、多くの機械的な部品で構成されているため、部品同士の損耗や、歯車のグリス切れ、経年による固渋等が発生し、タップ切り換え時におけるタップの停止位置が目標とする正規の停止位置からずれてしまう。その結果、目標の電圧に調整することができず、需要者に安定した電力を供給できなくなる可能性があった。また従来では、上述したずれ量を調整するための定期点検が行われているが、点検を行うには安全のために発電を停止する必要が生じたり、ずれ量が把握できないために作業員の調整にばらつきが生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-223331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、タップの停止位置のずれ量を、より正確に取得することができるタップ切換器用電動操作装置およびタップ切換方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のタップ切換器用電動操作装置は、受付部と、駆動部と、検出部と、導出部とを持つ。受付部は、制御指令を受け付ける。駆動部は、前記受付部により制御指令が受け付けられた場合に、モータにより主動軸を駆動させることによってタップ切換器のタップの切り換えを行う。検出部は、前記タップの切り換え時における前記主動軸の回転位置を検出する。導出部は、前記検出部により検出された回転位置に対応付けられた前記タップの停止位置と、前記タップの目標停止位置とに基づいて、前記タップの停止位置のずれ量を導出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態のタップ切換器用電動操作装置の構成例を示す図。
図2】第1の実施形態のモータ20の部品構成例を示す図。
図3】第1の実施形態の停止位置情報142の内容の一例について説明するための図。
図4】第1の実施形態における導出部123の処理について説明するための図。
図5】第1の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
図6】第2の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Aの構成例を示す図。
図7】第2の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Aにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
図8】第3の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Bの構成例を示す図。
図9】第3の実施形態の偏差履歴情報144の内容の一例を示す図。
図10】第3の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Bにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態のタップ切換器用電動操作装置およびタップ切換方法を、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、タップ切換器の一例として、負荷時タップ切換器を用いるものとする。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のタップ切換器用電動操作装置の構成例を示す図である。タップ切換器用電動操作装置1は、例えば、上位盤操作部10と、モータ20と、検出部30と、操作制御部100とを備える。モータ20と、モータ駆動制御部130とを合わせたものが、「駆動部」の一例である。また、上位盤操作部10と、操作部110とを合わせたものが、「出力部」の一例である。
【0010】
上位盤操作部10は、タップ切換器用電動操作装置1よりも上位の機器に設けられた操作部である。上位盤操作部10は、例えば、タップ切換器用電動操作装置1から離れた位置(例えば、遠方)に設けられている。上位盤操作部10は、利用者(例えば、管理者等)の操作によって入力された制御指令(上位制御指令)を操作制御部100に出力する。上位制御指令には、例えば、負荷時タップ切換器LTCに対する昇圧制御や降圧制御に伴うタップ切り換え制御や、タップの切り換え時におけるタップ停止位置のずれ量の導出制御、ずれ量に対する補正制御等が含まれる。また、上位盤操作部10は、操作制御部100からの情報を出力する出力部(以下、第1出力部を称する)を備えていてもよい。第1出力部には、例えば、画像を表示する表示部や音声を出力するスピーカ(音声出力部)等が含まれる。例えば、上位盤操作部10は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)表示装置等の表示装置に、接触検知機構が重畳して設けられたタッチパネル式ディスプレイ装置であってもよい。
【0011】
モータ20は、例えば、間欠的に回転や停止を行うことで、その回転によって回転可能な軸部(例えば、主動軸21)を所定方向に間欠的に回転させることで、負荷時タップ切換器LTCのタップ(一定の回転数を選びうる巻線に沿う接続ポイント)の位置を切り換える。モータ20は、例えば、昇圧制御と、降圧制御とで主動軸21を逆方向に回転させる。タップ切換器用電動操作装置1は、モータ20により負荷時タップ切換器LTCのタップの位置を間欠的に切り換えることで、負荷時タップ切換器LTCが設置された変圧器の巻線比を変えて、変圧器の電圧を調整させる。実施形態のモータ20の部品構成の詳細については、後述する。
【0012】
検出部30は、例えば、モータ20の駆動により回転する主動軸21の直下に実装される。検出部30は、タップの切り換え時における主動軸21の回転位置を検出する。例えば、検出部30は、多回転型エンコーダを用いることができるが、これに限定されるものではない。多回転型エンコーダは、主動軸21に対してn(n>0)倍の回転をする部材を有し、その部材の回転位置を検出することで、主動軸21の回転位置を検出する。また、検出部30は、検出した回転位置情報を操作制御部100に出力する。回転位置情報とは、例えば、主動軸21の多回転での回転角度や回転数を含めた絶対位置(絶対値)のアドレスである。検出部30は、例えば、主動軸21の回転が開始してから停止するまでの間の回転位置情報を出力する。また、検出部30は、主動軸21の回転が停止している状態での回転位置情報を出力してもよい。
【0013】
操作制御部100は、例えば、操作部110と、切換制御部120と、モータ駆動制御部130と、記憶部140とを備える。切換制御部120およびモータ駆動制御部130は、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性記憶媒体)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0014】
記憶部140は、前述した記憶装置により実現される。記憶部140は、プロセッサが実行するプログラムを格納する他、停止位置情報142等を格納する。停止位置情報142には、例えば、指令制御部122によるモータ20の回転を停止させる制御を行う場合に、目標とするタップの停止位置に関する情報(以下、目標停止位置と称する)が含まれる。目標停止位置には、例えば、タップの停止位置に対応付けられた主動軸21の回転角度や回転数を含めた絶対位置のアドレス(以下、目標停止アドレスと称する)が含まれる。停止位置情報142の詳細については後述する。
【0015】
操作部110は、利用者による操作内容を切換制御部120に出力する。操作内容には、例えば、予め操作部110として実装された変圧器による電圧の昇圧または降圧の指示を行う操作ボタンや、タップの停止位置のずれ量を導出する操作ボタン、導出したずれ量に対する補正を行う操作ボタンを、利用者が手動操作することである。この操作により、昇圧や降圧、ずれ量の導出、ずれ量の補正を制御する制御指令が、切換制御部120に出力される。また、操作部110は、切換制御部120からの情報を出力する出力部(以下、第2出力部と称する)を備えていてもよい。第2出力部には、例えば、画像を表示する表示部や音声を出力する音声出力部等が含まれる。また、操作部110は、LCDや有機EL表示装置等の表示装置に、接触検知機構が重畳して設けられたタッチパネル式ディスプレイ装置であってもよい。
【0016】
切換制御部120は、例えば、操作受付部121と、指令制御部122と、導出部123と、補正部124と、出力制御部125とを備える。操作受付部121は、「受付部」の一例である。
【0017】
操作受付部121は、操作部110または上位盤操作部10から制御指令を受け付ける。制御指令には、負荷時タップ切換器LTCの昇圧または降圧によるタップの切り換えを指示する指令や、タップの停止位置のずれ量を導出する指令や、ずれ量に基づく補正を行う指令が含まれる。
【0018】
指令制御部122は、操作受付部121により受け付けられた制御指令に基づいて、モータ20に対する回転制御または停止制御の指令信号を、モータ駆動制御部130に出力する。なお、指令制御部122は、モータ20の主動軸21が回転している状態から停止制御を行う場合には、検出部30により検出される回転位置情報に基づいて、現在の回転位置を取得しながら、目標停止位置で停止させるタイミングで停止制御指令を出力する。また、停止制御指令を出力してから完全にモータ20が停止するまでの間にも所定の回転が必要になる。そのため、指令制御部122は、検出部30により検出される回転位置が目標停止位置よりも手前の位置に到達したタイミングで停止制御指令を出力する。なお、手前の位置は、後述する導出部123により導出されたずれ量に基づいて補正部124によって補正される位置である。
【0019】
導出部123は、指令制御部122による主動軸21の回転制御および停止制御によって、検出部30により検出される回転位置情報に基づいて、負荷時タップ切換器LTCにおけるタップ切り換え後の停止位置のずれ量を検出する。
【0020】
例えば、導出部123は、検出部30により検出された回転位置に対応付けられたタップの停止位置(以下、実測停止位置と称する)と、停止位置情報142に含まれる目標停止位置とに基づいて、タップの停止位置のずれ量を導出する。導出部123の機能の詳細については、後述する。
【0021】
補正部124は、導出部123により導出されたタップの停止位置のずれ量に基づいて、モータ20により停止制御を行うタイミングを補正する。補正部124の機能の詳細については、後述する。なお、上述した導出部123によるずれ量の導出や、補正部124による補正が行われる間、切換制御部120は、タップ切換器用電動操作装置1を負荷時タップ切換器LTCから一時的に切り離したり、対象の負荷時タップ切換器LTCを運転中の電力系統から一時的に切り離す制御を行ってもよい。
【0022】
出力制御部125は、負荷時タップ切換器LTCに関する状態情報を上位盤操作部10の第1出力部または操作部110の第2出力部のうち一方または双方に出力する。状態情報とは、例えば、回転位置情報に基づく、負荷時タップ切換器LTCの駆動状態、導出部123により導出されたタップ停止位置のずれ量、補正部124により補正される回転制御量、異常が有無等の判定結果に関する情報である。例えば、出力制御部125は、上位盤操作部10または操作部110の何れかから制御指令を受け付けた場合には、受け付けた方の出力部に状態情報を出力する。また、出力制御部125は、状態情報が異常を通知する情報である場合に、第1出力部と第2出力部の両方に状態情報を取得する。
【0023】
モータ駆動制御部130は、切換制御部120から回転制御指令を受信すると、モータ20を所定方向に回転させて、歩進制御等によるタップの切り換えを実行する。また、モータ駆動制御部130は、切換制御部120から停止制御指令を受信すると、モータ20の回転を停止させる駆動制御を実行する。
【0024】
次に、第1の実施形態におけるモータ20の部品構成について説明する。図2は、第1の実施形態のモータ20の部品構成例を示す図である。図2に示すモータ20は、例えば、主動軸21と、モータ側プーリ22と、主動軸側プーリ23と、テンションプーリ24と、タイミングベルト25と、カサ歯車26と、ハンドル軸27と、ハンドル用インターロック28とを備える。なお、図2の例では、検出部30も示している。
【0025】
モータ20には、モータの回転軸にモータ側プーリ22が取り付けられ、タイミングベルト25を介して主動軸側プーリ23と結合される。主動軸側プーリ23には、主動軸21が取り付けられ、主動軸21の直下に減速機構等を介さずに検出部30が直接取り付けられている。図2の構成のように検出部30が主動軸21に取り付けられることで、主動軸21の回転位置情報を、より正確に検出することができる。
【0026】
また、テンションプーリ24は、タイミングベルト25にテンションを負荷させることで、モータ20と主動軸21の連動性を向上させる。主動軸21は、カサ歯車26でハンドル軸27と連結される。ハンドル軸27には、ハンドル用インターロック28が取り付けられている。ハンドル用インターロック28は、例えば、メンテナンス時等に作業員がハンドルを用いて手動でのタップを切り換える場合に、電動での操作が行われないように制限を行うものである。
【0027】
次に、導出部123の機能の詳細について図を用いて説明する。導出部123は、指令制御部122により出力される、ずれ量を導出するための回転制御および停止制御を実行し、実行時に検出部30から検出される回転位置情報に基づいて、タップ位置のずれ量を導出する。以下では、検出部30に多回転型エンコーダを使用するものとして説明する。また、上記エンコーダは、主動軸21が12度回転するごとに1つのアドレス(位置情報)が割り振られているものとする。つまり、主動軸21の1回転(360度)に対し、計30のアドレスが割り振られている。
【0028】
ここで、タップ切り換え後のタップ停止位置のずれの許容値を主動軸21の目標停止位置から約±0.3回転程度とした場合、アドレスのずれ量の許容値は、約±9アドレス程度となる。そこで、導出部123は、上記の許容値を基準とした所定範囲で停止位置のオフセット量を設定し、設定したオフセット量に基づいて目標停止位置からオフセットさせた位置で、実際にタップ切り換え後のタップの停止制御を行う。また、導出部123は、実際の停止制御によって検出部30により検出される回転位置(以下、実測停止アドレスと称する)と、停止位置情報142に含まれる目標停止アドレスとに基づいて、実測停止アドレスの目標停止アドレスからの偏差を取得する。また、導出部123は、上記所定範囲でオフセット量を少しずつ変化させながら上記の偏差を取得し、複数のオフセット量と偏差との関係からずれ量を導出する。
【0029】
図3は、第1の実施形態の停止位置情報142の内容の一例について説明するための図である。停止位置情報142には、例えば、切り換えるタップを識別する識別情報であるタップ切換種別に、目標停止アドレスが対応付けられている。タップ切換種別には、負荷時タップ切換器LTCに設けられる複数のタップ位置のうち、切換前後のタップ位置の種別に関する情報が含まれてよい。図3の例において、タップ切換種別「SW1」は、タップ位置T1とタップ位置T2との間でのタップ切り換えを示している。目標停止アドレスは、例えば、昇圧時(例えば、タップ位置T1からタップ位置T2に切り換え時)の目標停止アドレス(図3に示す「A1」)と、降圧時(例えば、タップ位置T2からタップ位置T1に切り換え時)の目標停止アドレス(図3に示す「B1」)とが含まれる。導出部123は、タップの切り換え位置、および、昇圧時または降圧時に対応付けられた目標停止アドレスを取得し、取得した目標停止アドレスに基づいて、より正確なずれ量を導出することができる。
【0030】
図4は、第1の実施形態における導出部123の処理について説明するための図である。図4では、一例として、タップ位置T1からタップ位置T2に切り換える場合において、目標停止アドレス(図3の例において「A1」)からのアドレスのオフセット量(横軸)と、実測停止アドレスの目標停止アドレスからの偏差(縦軸)との関係が示されている。
【0031】
例えば、アドレスのずれ量の許容値を約±9アドレスとした場合、導出部123は、許容値から1超えた値(例えば、-10)をオフセット量として設定する。また、導出部123は、タップ位置を切り換えるための回転制御を開始すると共に、検出部30により検出される回転位置が目標停止アドレス(A1)からオフセット量「-10」を減算したアドレス位置に到達した時点で、停止制御指令を指令制御部122から出力させる。また、導出部123は、停止制御により回転が停止した時点で検出部30により検出された実測停止アドレスを取得する。そして、導出部123は、オフセット量「-10」に対する目標停止アドレスからの偏差(実測停止アドレス-目標停止アドレス)を取得する。
【0032】
例えば、オフセット量が「-10」のときの偏差が「-6」である場合、図4にプロット点P1が描画される。また、導出部123は、オフセット量を「-10」から所定量(例えば、「+2」)ずつ加算させながら、上述した目標停止アドレスからの偏差を取得する。図4の例において、プロット点P2~P7は、それぞれオフセット量を「-8」、「-6」、「-4」、「-2」、「0」、「2」と順次変化させてタップの切り換えを行ったときの偏差をプロットしたものである。
【0033】
次に、導出部123は、それぞれのプロット点P1~P7に関する情報に基づいて、所定の関数f1を導出する。図4の例において、導出部123は、各プロット点に対し最小二乗法等を用いて直線に近似させることで線形の関数f1を導出しているが、これに限定されるものではなく、非線形の関数を導出してもよい。導出部123は、導出した関数f1に基づいて、偏差が0になるずれ量を導出する。具体的には、導出部123は、図4に示す関数f1と横軸との交点からずれ量を導出する。図4の例において、関数f1と横軸との交点のオフセット量は、「-2.7」である。したがって、導出部123は、タップ切り換え時の停止位置のずれ量を「-2.7」として導出する。
【0034】
なお、導出部123は、上述した所定の関数を導出するために上述したプロット点を複数取得することが好ましい。また、導出部123は、少なくとも複数の偏差が0(ゼロ)を跨る位置(図4の横軸を跨る位置)となるようにオフセット量を調整してもよい。0を跨る複数の偏差とは、正の偏差と負の偏差を有することであり、例えば「2」および「-1」等である。0を跨る偏差を取得することで、横軸との交点を有する関数を導出し易くすることができる。また、導出部123は、偏差が0を跨った時点(プロット点が横軸を跨った時点)で偏差の取得を終了してもよい。
【0035】
また、上述の例では、オフセット量を「-10」から所定量(例えば、+2)ずつ加算させて偏差を取得したが、これに代えて、最初のオフセット量を「10」に設定し、そこから所定量ずつ減算させて変化させながら目標停止アドレスからの偏差を取得してもよい。
【0036】
また、導出部123は、上述した所定の関数からずれ量を導出するのに代えて、予めオフセット量と偏差との組に、ずれ量が対応付けられたデータベースを用いて、実測したオフセット量と偏差との組に対するずれ量を導出してもよい。この場合、データベースは、例えば、複数のオフセット量と偏差との組と、ずれ量とが対応付けられた複数の正解データを用いて機械学習等を行うことで取得される。また、上記のデータベースは、記憶部140に記憶されていてもよく、他の外部装置から取得してもよい。
【0037】
次に、補正部124の機能の詳細について説明する。補正部124は、導出部123により導出されたずれ量に基づいて、補正量を取得し、取得した補正量に基づいて、モータ20に対する停止制御を開始するタイミングを補正する。例えば、補正部124は、導出部123により導出されたずれ量が「-2.7」である場合、「-2.7」を四捨五入して得られる「-3」を補正量として取得する。そして、補正部124は、目標停止アドレス「A1」から補正量「3」を減算した値を、停止制御を開始するアドレスとして補正する。これにより、目標停止アドレスまたは目標停止アドレスに近似する位置にタップを停止させることができる。
【0038】
なお、導出部123および補正部124の処理は、所定の周期で行うことが好ましい。これにより、タップ切換器用電動操作装置1や負荷時タップ切換器LTCの駆動部における部品同士の損耗や歯車のグリス切れ、経年による固渋等の発生等の劣化に伴ってずれ量が変化した場合でも、目標停止アドレスまたは目標停止アドレスに近似する位置にタップを停止させることができる。
【0039】
また、導出部123および補正部124の処理は、昇圧時と降圧時の回転方向(アドレス加算方向とアドレス減算方向)ごとに行ってもよい。これにより昇圧時と降圧時とで異なるずれ量が生じている場合であっても、より正確なずれ量を導出することができ、その結果、より適切な補正を行うことができる。
【0040】
また、導出部123および補正部124の処理は、タップの切り換え位置ごとに行われるのが好ましい。これにより、タップの切り換え位置の使用頻度によって劣化度合が異なる場合であっても、タップの停止位置のずれ量をより正確に導出することができ、導出したずれ量に基づいて、より適切な補正を行うことができる。
【0041】
また、負荷時タップ切換器LTCには、複数のタップ位置が設けられているが、利用目的等によって切り換えるタップ位置が限定される場合も有り得る。したがって、導出部123は、全てのタップの切り換え位置でのずれ量を導出せずに、上位盤操作部10または操作部110により指定されたタップ切換種別、または予め設定されたタップ切換種別に対するずれ量のみを導出してもよい。これにより、タップ数が多い場合であっても、必要なタップ位置のずれ量を効率的に導出することができる。
【0042】
次に、第1の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1の処理について説明する。図5は、第1の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5の処理では、主に、ずれ量を補正する制御指令を受け付けて、ずれ量の導出および目標停止アドレスの補正処理を行う例を中心として説明する。
【0043】
図5の例において、まず、操作受付部121は、上位盤操作部10または操作部110から、ずれ量の補正指令を受け付ける(ステップS100)。次に、指令制御部122は、タップを切り換えるための回転制御指令を出力する(ステップS102)。ステップS102の処理では、回転制御指令を受け付けたモータ駆動制御部130が、モータ20に対する回転制御を行う。次に、導出部123は、記憶部140に記憶された停止位置情報142に含まれる目標停止アドレスを基準としてオフセット量を変化させながら指令制御部122に停止制御を行わせる(ステップS104)。ステップS104の処理では、停止制御指令を受け付けたモータ駆動制御部130が、モータ20に対する停止制御を行う。
【0044】
次に、導出部123は、停止時の回転位置情報を取得し(ステップS106)、取得した回転位置情報に含まれる実測停止アドレスの目標停止アドレスからの偏差を取得する(ステップS108)。次に、導出部123は、偏差の取得が所定条件を満たすか否かを判定する(ステップS110)。所定条件とは、例えば、0を跨る複数の偏差を取得した、または、所定数以上の偏差が取得できたことであってもよい。
【0045】
偏差の取得が所定条件を満たしていないと判定された場合、ステップS104の処理に戻り、既に実行したオフセット量とは異なるオフセット量に変化させて後述の処理を行う。
【0046】
また、ステップS110の処理において、偏差の取得が所定条件を満たすと判定された場合、導出部123は、オフセット量と偏差との関係に基づいて所定の関数を取得する(ステップS112)。次に、導出部123は、取得した所定の関数に基づいてずれ量を導出する(ステップS114)。
【0047】
次に、補正部124は、導出されたずれ量に基づいて、モータ20の回転を停止させる停止制御を開始するタイミングを補正する(ステップS116)。次に、切換制御部120は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS118)。例えば、負荷時タップ切換器LTCに設けられる複数のタップごとに上述した停止位置制御を行う場合には、対象のタップに対するずれ量の導出および補正が完了するまで処理を終了しない。また、昇圧時および降圧時の両方が完了していない場合や、オフセット量の加算方向および減算方向の両方が完了していない場合に、処理を終了しないと判定してもよい。処理を終了しないと判定された場合、ステップS102の処理に戻る。また、処理を終了すると判定された場合、出力制御部125は、ずれ量および補正量を出力部(第1出力部または第2出力部のうち一方または双方)に出力する(ステップS120)。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。
【0048】
なお、第1の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1は、上述したずれ量の導出や補正に加えて、タップの切り換えの指令を受け付けてタップの切り換え制御を行う。
【0049】
上述したように第1の実施形態によれば、タップ切換器用電動操作装置1において、指令を受け付ける操作受付部121と、操作受付部121により指令が受け付けられた場合に、モータ20により主動軸21を駆動させることによって負荷時タップ切換器LTCのタップの切り換えを行う駆動部(モータ駆動制御部130、モータ20)と、タップの切り換え時における主動軸21の回転位置を検出する検出部30と、指令により指定された主動軸21の回転位置と、検出部30により検出された回転位置とに基づいて、タップの停止位置のずれ量を導出する導出部123と、を備えることにより、タップ停止位置のずれ量を、より正確に取得することができる。
【0050】
また、第1の実施形態によれば、目標停止アドレスに対してオフセット量を変化させながら実測停止アドレスを取得し、取得した実測停止アドレスの目標停止アドレスからの偏差に基づいて定量的にずれ量を導出することで、ずれの発生を抑制し、より正確なタップ停止位置を推定することができる。これによって、目標とする正確な電力調整が可能になり、需要者に安定した電力を供給することができる。
【0051】
また、第1の実施形態によれば、上位盤操作部10等からの遠隔操作でずれ量の導出や補正等の調整を行うことができる。そのため、定期点検を行う回数を削減することができると共に、作業コストを削減することができる。また、第1の実施形態によれば、発電を停止させることなく、ずれ量の把握や補正を行うことができる。また、第1の実施形態におけるずれ量の導出や補正に関する処理は、現地に設置した後に実行されるだけでなく、出荷時においても実行することができる。これにより、出荷時における作業コストも削減することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、タップ切換器用電動操作装置の第2の実施形態について説明する。以下の説明において、第1の実施形態におけるタップ切換器用電動操作装置1の各構成のうち、機能が同一である構成には第1の実施形態と同様の符号を付し、共通事項に関する具体的な説明は省略する。
【0053】
第2の実施形態は、第1の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1と比較して、切換制御部120に異常判定部を備える点で相違する。したがって、以下では、主に、異常判定部の機能を中心として説明する。図6は、第2の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Aの構成例を示す図である。タップ切換器用電動操作装置1Aは、例えば、上位盤操作部10と、モータ20と、検出部30と、操作制御部100Aとを備える。操作制御部100Aは、例えば、操作部110と、切換制御部120Aと、モータ駆動制御部130と、記憶部140とを備える。切換制御部120Aは、例えば、操作受付部121と、指令制御部122と、導出部123と、補正部124と、出力制御部125と、異常判定部126とを備える。
【0054】
異常判定部126は、上述した導出部123におけるオフセット量に対する偏差に基づいて、負荷時タップ切換器LTCまたはタップ切換器用電動操作装置1Aに異常があるか否かを判定する。例えば、停止位置のずれの許容値が主動軸21の約±0.3回転程度とした場合、アドレスのずれ量の許容値は約±9アドレス程度となる。この条件下において、オフセット量に対する目標アドレスの偏差が上記の許容値を大幅に超えた場合に異常であると判定する。
【0055】
また、異常判定部126は、負荷時タップ切換器LTCを、工場から現地へ出荷する前に取得した初期ずれ量(出荷時ずれ量)と、負荷時タップ切換器LTCを現地に設置した後に取得した設置後ずれ量とを比較し、その結果に基づいて異常があるか否かを判定してもよい。この場合、異常判定部126は、比較したずれ量の誤差が閾値未満であれば、工場での品質を現地でも確保しているものと推定し、現地後ずれ量を異常なしと判定する。また、異常判定部126は、ずれ量の誤差が閾値以上であれば、異常であると判定し、点検やメンテナンスを推奨する情報を出力部(第1出力部または第2出力部)に出力する。
【0056】
また、異常判定部126は、タップ切換器用電動操作装置1は、指令制御部122からの指令状況や検出部30から検出された回転位置情報に基づいて、他の異常状態を検出してもよい。他の異常状態とは、例えば、渋滞状態または暴走状態である。渋滞状態とは、例えば、回転制御指令を出力した後、所定時間内にモータ20が回転しない状態、または、モータ20が動作してからタップが切り換わるまでの時間が所定時間を超える状態である。暴走状態とは、例えば、負荷時タップ切換器LTCによるタップの切り換えが終了し、モータ20に停止制御指令を出力したにもかかわらず、モータ20の駆動が継続している状態である。
【0057】
次に、第2の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Aの処理について説明する。図7は、第2の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Aにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7では、既に出荷時ずれ量の導出が行われているものとし、現地に設置した後のずれ量の導出処理および補正処理について説明するものとする。
【0058】
図7の例において、まず、操作受付部121は、上位盤操作部10または操作部110から、ずれ量の調整指令を受け付ける(ステップS200)。次に、導出部123は、上述した第1の実施形態におけるタップ切換器用電動操作装置1により実行されるステップS100~S120のうち、ステップS100、S116、およびS120以外の処理と同様の処理を行い、ずれ量(設置後ずれ量)を導出する(ステップS202)。次に、異常判定部126は、出荷時ずれ量を取得する(ステップS204)。次に、異常判定部126は、出荷時ずれ量と設置後ずれ量との誤差を算出し(ステップS206)、算出した誤差が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS208)。誤差が閾値以上であると判定された場合、異常判定部126は、異常があると判定する(ステップS210)。次に、出力制御部125は、点検を推奨する情報を出力部(例えば、第1出力部および第2出力部)に出力する(ステップS212)。
【0059】
また、ステップS208の処理において、誤差が閾値以上でないと判定された場合、異常判定部126は、異常がないと判定し(ステップS214)、導出されたずれ量に基づいて目標停止アドレスを補正する(ステップS216)。次に、出力制御部125は、ずれ量および補正量を出力部(例えば、第1出力部または第2出力部)に出力する(ステップS218)。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。
【0060】
上述したように第2の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Aによれば、第1の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1と同様の効果を奏する他、例えば、出荷時と現地に設置した後のずれ量を比較することで、タップ切換器用電動操作装置1Aや負荷時タップ切換器LTCの異常の有無を、より正確に判定することができる。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、タップ切換器用電動操作装置の第3の実施形態について説明する。以下の説明において、第2の実施形態におけるタップ切換器用電動操作装置1Aの各構成のうち、機能が同一である構成には第2の実施形態と同様の符号を付し、共通事項に関する具体的な説明は省略する。
【0062】
第3の実施形態は、第2の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Aと比較して、切換制御部120Aに予測部を備える点および記憶部140に偏差履歴情報が記憶されている点で相違する。したがって、以下では、主に、予測部および偏差履歴情報の機能を中心として説明する。図8は、第3の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Bの構成例を示す図である。タップ切換器用電動操作装置1Bは、例えば、上位盤操作部10と、モータ20と、検出部30と、操作制御部100Bとを備える。操作制御部100Bは、例えば、操作部110と、切換制御部120Bと、モータ駆動制御部130と、記憶部140Bとを備える。切換制御部120Bは、例えば、操作受付部121と、指令制御部122と、導出部123と、補正部124と、出力制御部125と、異常判定部126と、予測部(判別部)127とを備える。
【0063】
まず、第3の実施形態において、導出部123は、上述して導出された偏差の結果を、記憶部140Bの偏差履歴情報144に追加する。図9は、第3の実施形態の偏差履歴情報144の内容の一例を示す図である。偏差履歴情報144は、例えば、タップ切換種別に過去の偏差(具体的には、実測停止アドレスから目標停止アドレスを減算した値)が対応付けられている。過去の偏差には、例えば、過去に導出された数回分の偏差が、導出日と共に登録されている。登録される偏差は、オフセット量を変化させて得られた偏差の平均値でもよく、絶対値が最大となる値であってもよい。なお、図9の例では、昇圧時におけるタップごとの過去の偏差が登録されているが、これに加えて、降圧時におけるタップごとの過去の偏差が登録されていてもよい。
【0064】
次に、予測部127は、偏差履歴情報144のうち、タップ切換種別に対応する過去の偏差の傾向を判別し、判別した傾向から負荷時タップ切換器LTCに異常が発生する時期を予測する。図9の例において、予測部127は、タップ切換種別が「SW1」の切り換え(タップT1からタップT2への切り換え)において、前々回の偏差が「-6」であり、前回の偏差が「-8」であるため、偏差が増加傾向であると判別する。また、予測部127は、過去の偏差の導出時期および偏差から、6か月の間(2018/08/01から2019/02/01までの期間)に生じる偏差の変化量を「-2」と予測する。
【0065】
ここで、異常があると判定する閾値を「-10」とした場合、予測部127は、上述した変化量に基づいて、前回偏差を導出した日から6か月後に偏差が「-10」となり、閾値以上になると予測する。したがって、予測部127は、タップ切換種別「SW1」が前回偏差を導出した日から6か月後に異常が発生すると予測する。予測部127は、他のタップ切換種別についても上述した予測を行う。
【0066】
予測部127は、異常が発生すると予測した場合に、操作部110または上位盤操作部10のうち一方または双方に、異常が発生すると予測される時期や対象のタップ位置に関する警告情報を出力させる。これにより、利用者等は、事前に異常が発生する時期やタップ種別を取得することで、より適切なタイミングで点検日を設定することができる。また、利用者等は、異常が発生すると予測されるタップ位置の情報を取得することができるため、点検作業を効率的に行うことができる。
【0067】
なお、予測部127は、現在日時から所定期間内(例えば、3か月以内)に異常が発生すると予測される場合に、警告情報を出力させてもよい。これにより、もうすぐ点検等の対応が必要となる情報のみを管理者に警告することで、全ての予測結果に関する警告情報を通知する場合に比して、ユーザに警告情報を確認し易くさせることができる。
【0068】
また、予測部127は、前々回よりも過去の偏差から、期間ごとの変化量を取得し、取得した変化量によって、負荷時タップ切換器LTCが経年劣化しているか否かを判定してもよい。この場合、予測部127は、例えば、変化量が閾値未満である場合(例えば、変化量が少しずつ増加している場合)には、経年劣化であると判定する。また、予測部127は、変化量が閾値以上である場合(例えば、変化量が急激に増加した場合)には、何かの異常が発生したと判定する。そして、予測部127は、上述した判定結果を状態情報として上位盤操作部10または操作部110に出力する。これにより、より詳細な情報を利用者に通知することができ、より適切なタイミングで点検作業を行わせることができる。
【0069】
次に、第3の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Bの処理について説明する。図10は、第3の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Bにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。図10の例では、既に偏差履歴情報144が記憶部140に記憶されているものとする。
【0070】
図10の例において、まず、予測部127は、記憶部140Bに記憶された偏差履歴情報144を取得し(ステップS300)、取得した偏差履歴情報144に基づいて、偏差の変化量を計算する(ステップS302)。次に、予測部127は、取得した変化量が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS304)。変化量が閾値未満であると判定された場合、予測部127は、偏差の変化が経年劣化による変化である(異常なし)と判定する(ステップS306)。次に、出力制御部125は、判定結果を含む状態情報を出力部(第1出力部または第2出力部)に出力させる(ステップS308)。
【0071】
また、ステップS304において、変化量が閾値以上であると判定された場合、予測部127は、偏差の変化が突発的な変化である(異常あり)と判定する(ステップS310)。次に、出力制御部125は、判定結果を含む状態情報および点検(またはメンテナンス)を推奨する情報を出力部(第1出力部または第2出力部)に出力させる(ステップS312)。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。
【0072】
なお、上述の例では、偏差の変化量に基づく予測を行ったが、これに代えて(または加えて)、偏差の変化率に基づく予測を行ってもよい。また、予測部127は、例えば、導出部123により導出されたずれ量や、補正部124により補正された補正量の変化量に基づいて、異常なし(経年変化)であるか、または異常あり(突発的変化)であるかを予測してもよい。また、上述した第3の実施形態における処理は、ずれ量の導出を行うごとに行ってもよく、所定の周期、または制御指令を受け付けたタイミングで行ってもよい。
【0073】
上述したように第3の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1Bによれば、第1および第2の実施形態のタップ切換器用電動操作装置1、1Aと同様の効果を奏する他、経年による偏差の変化量に応じて、より適切に異常の有無を判定することができる。これにより、より適切なタイミングで作業員等に点検を行わせることができる。
【0074】
上述した第1~第3の実施形態のそれぞれは、他の実施形態の一部または全部を組み合わせてもよい。また、各実施形態で示したタップ切換器用電動操作装置の各構成の一部または全部は、タップ切換器側に設けられてもよい。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
図1
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