(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】オレフィン系発泡体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20220209BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20220209BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
C08J9/04 CES
C08L23/00
C08K3/30
(21)【出願番号】P 2017247882
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000214788
【氏名又は名称】DMノバフォーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊文
(72)【発明者】
【氏名】丹藤 彰宏
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216573(JP,A)
【文献】特開2002-293978(JP,A)
【文献】特開2015-048391(JP,A)
【文献】特開平05-032812(JP,A)
【文献】特開昭62-241932(JP,A)
【文献】特開2015-124290(JP,A)
【文献】特開2013-227076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
C08L 23/00
C08K 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、硫酸亜鉛とを含む発泡体であって、マトリックスとしての前記熱可塑性樹脂中に前記硫酸亜鉛が分散相として分散し、かつ前記分散相の平均径が10μm以下であ
り、前記硫酸亜鉛が空隙の壁面又はスキン層付近に局在化し、発泡倍率が10倍以上である発泡体。
【請求項2】
発泡体中の亜鉛の割合が5質量%以下である請求項1記載の発泡体。
【請求項3】
発泡倍率が
20倍以上である請求項1又は2記載の発泡体。
【請求項4】
オレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である請求項1~3のいずれかに記載の発泡体。
【請求項5】
保護材である請求項1~
4のいずれかに記載の発泡体。
【請求項6】
農産物の保護材である請求項
5記載の発泡体。
【請求項7】
熱可塑性樹脂及び硫酸亜鉛を含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する請求項1~
6のいずれかに記載の発泡体の製造方法。
【請求項8】
発泡性樹脂組成物が、マトリックスとしての熱可塑性樹脂中に硫酸亜鉛が分散相として分散し、かつ前記分散相の平均径が100nm未満である請求項
7記載の製造方法。
【請求項9】
発泡性樹脂組成物が、マトリックスとしての第1の熱可塑性樹脂中に硫酸亜鉛が分散相として分子又は原子単位で分散したマスターバッチと、第2の熱可塑性樹脂との組み合わせである請求項
7又は
8記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた軽量性及びクッション性によって被保護材を保護でき、かつ消臭、抗菌及び防カビ機能も有するオレフィン系発泡体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン発泡体やポリプロピレン発泡体などのオレフィン系発泡体は、発泡性や柔軟性、機械的特性、電気絶縁性などに優れるため、各種の用途に利用されているが、例えば、果物を保護するのに有用な緩衝材や、建設現場において、建設材や家具、家電などを保護するための養生カバーなどに広く用いられている。これらの用途では、発泡体の有する基本特性である軽量性及びクッション性によって被保護材を保護しているが、さらに付加的な機能として、消臭性や抗菌性、防カビ性も要求される場合がある。
【0003】
特開2002-249666号公報(特許文献1)には、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーの混合物100質量部に対して、可食植物残滓10~150質量部、充填剤5~80質量部、消臭剤0.001~10質量部を含む緩衝シート組成物が開示されている。この文献には、前記消臭剤として、植物精油、活性炭の粉状物が記載されている。
【0004】
しかし、植物精油や活性炭などの消臭剤は、抗菌機能や防カビ機能を有していない。
【0005】
特開2008-62497号公報(特許文献2)には、ポリオレフィン系樹脂発泡体の少なくとも片面の表層面に、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、消臭剤1~30質量部を含むポリオレフィン系樹脂層を設ける消臭機能を有するポリオレフィン系樹脂積層発泡体が開示されている。この文献には、消臭剤として、銀イオンや亜鉛イオンを有する珪酸塩化合物、銀イオンや亜鉛イオンを有するリン酸塩化合物、銀イオンや亜鉛イオンを有するリン酸カルシウム化合物、粒子径が50nm以下の酸化亜鉛等の無機系化合物や、有機系化合物が記載されている。
【0006】
しかし、この積層発泡体では、樹脂発泡体とは別個に、消臭剤を含むポリオレフィン系樹脂層が必要であり、構造が複雑となり、生産性も低下する。
【0007】
特開2017-65091号公報(特許文献3)には、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の一方の面に配置され、消臭剤又は抗菌剤を含む目付15~70g/m2のポリオレフィン系樹脂不織布と、他方の面に配置され、前記一方の面に設けたポリオレフィン系不織布の40~85%の目付であって、消臭剤及び抗菌剤を含まないポリオレフィン系樹脂不織布とを表層面に有する積層発泡体が開示されている。この文献には、消臭剤として、銀イオンや亜鉛イオンを有する珪酸塩化合物、銀イオンや亜鉛イオンを有するリン酸塩化合物、銀イオンや亜鉛イオンを有するリン酸カルシウム化合物、活性炭、ホタテ貝殻の焼成物等の無機系化合物や、有機系化合物が記載され、抗菌剤として、ゼオライト、シリカゲル、珪酸塩系化合物、リン酸塩系化合物、金属(銀、銅、亜鉛等)を担持した担体、ホタテ貝殻の焼成物が記載されている。
【0008】
しかし、この積層発泡体でも、樹脂発泡体とは別個に、消臭剤又は抗菌剤を含むポリオレフィン系樹脂不織布が必要であり、構造が複雑となり、生産性も低下する。
【0009】
特許第4035359号公報(特許文献4)には、断熱性とホルムアルデヒド捕捉能を併せ持つ建築用材料、緩衝性とホルムアルデヒド捕捉能を併せ持つ包装材料、養生材や雑貨品として優れた素材として、ポリエチレン系樹脂、亜鉛化合物、弱アルカリ性無機物質及び含水珪酸を含むマスターバッチと、ポリフェノール化合物とを添加して得られた発泡体が開示されている。この文献では、硫化物臭を低減するための脱臭組成物を構成するための脱臭剤として前記亜鉛化合物が添加されており、特に好ましい亜鉛化合物として亜鉛華(酸化亜鉛)が記載され、実施例でも酸化亜鉛が使用されている。
【0010】
しかし、この発泡体でも、消臭性、抗菌性及び防カビ性は十分ではなく、消臭性、抗菌性及び防カビ性を向上させるために、脱臭剤を増量すると、発泡体の機械的特性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2002-249666号公報(請求項1及び5~6、段落[0010]、実施例)
【文献】特開2008-62497号公報(請求項1~2、段落[0008])
【文献】特開2017-65091号公報(請求項1、段落[0018][0019])
【文献】特許第4035359号公報(請求項1、段落[0046][0102]、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、単純で均質な構造であっても、高い消臭性、抗菌性及び防カビ性を有するオレフィン系発泡体及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、高い発泡性と、高い消臭性、抗菌性及び防カビ性とを両立できるオレフィン系発泡体及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、機械的特性を損なうことなく、消臭性、抗菌性及び防カビ性を向上できるオレフィン系発泡体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、オレフィン系発泡体中に硫酸亜鉛を微分散させることにより、単純で均質な構造であっても、発泡体の消臭性、抗菌性及び防カビ性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明の発泡体は、オレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、硫酸亜鉛とを含む発泡体であって、マトリックスとしての前記熱可塑性樹脂中に前記硫酸亜鉛が分散相として分散し、かつ前記分散相の平均径が10μm以下である。前記発泡体中の亜鉛の割合は5質量%以下であってもよい。前記発泡体の発泡倍率は10倍以上であってもよい。前記オレフィン系樹脂はポリエチレン系樹脂であってもよい。前記硫酸亜鉛は、空隙の壁面やスキン層付近に局在化していてもよい。前記発泡体は、保護材(特に、農産物の保護材)であってもよい。
【0017】
本発明には、熱可塑性樹脂及び硫酸亜鉛を含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する前記発泡体の製造方法も含まれる。前記発泡性樹脂組成物は、マトリックスとしての熱可塑性樹脂中に硫酸亜鉛が分散相として分散し、かつ前記分散相の平均径が100nm未満であってもよい。前記発泡性樹脂組成物は、マトリックスとしての第1の熱可塑性樹脂中に硫酸亜鉛が分散相として分子又は原子単位で分散したマスターバッチと、第2の熱可塑性樹脂との組み合わせであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、オレフィン系発泡体中で硫酸亜鉛が微分散しているため、発泡体とは別に機能層を形成する必要がなく、単純で均質な構造(簡単な単層構造)であっても、発泡体の消臭性、抗菌性及び防カビ性を向上できる。特に、オレフィン系樹脂中に硫酸亜鉛が平均径100nm未満で微分散した発泡性樹脂組成物を発泡成形すると、空隙の壁面やスキン層付近に硫酸亜鉛を局在化できるためか、高い発泡性と、高い消臭性、抗菌性及び防カビ性とを両立できる。また、少量の硫酸亜鉛が微分散することにより高い消臭性、抗菌性及び防カビ性を発現できるため、発泡体の機械的特性を損なうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施例1で得られた発泡体における硫酸亜鉛の分散状態を示すEDS元素マッピング図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[熱可塑性樹脂]
本発明の発泡体は、熱可塑性樹脂としてオレフィン系樹脂を含む。オレフィン系樹脂は、通常、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリC2-3オレフィン系樹脂であり、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0021】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-(4-メチルペンテン-1)共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)、エチレン-メチルメタクリレート共重合体などが挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリエチレン系樹脂のうち、発泡性などの点から、LDPE、LLDPE、EVA樹脂などが好ましい。
【0022】
ポリエチレン系樹脂の数平均分子量は、例えば10,000~300,000、好ましくは15,000~200,000、さらに好ましくは20,000~100,000程度であってもよい。なお、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)において、測定温度140℃で、溶媒としてオルトジクロロベンゼン、及びカラム(Shodex GPC AD-806MS)を用いて、ポリスチレンを基準とするユニバーサルキャリブレーションにより測定できる。
【0023】
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準じた方法(190℃、荷重21.2N)で、0.1g/10分以上であってもよく、例えば0.1~50g/10分、好ましくは0.3~30g/10分、さらに好ましくは0.5~10g/10分(特に0.6~3g/10分)程度である。MFRが小さすぎると、発泡性や強度などが低下する虞がある。
【0024】
前記ポリエチレン系樹脂の融点又は軟化点は、例えば80~150℃、好ましくは90~140℃、さらに好ましくは100~130℃程度である。
【0025】
熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂単独であってもよく、オレフィン系樹脂に加えて、オレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂(他の熱可塑性樹脂)をさらに含んでいてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、これらの樹脂の構成成分を含む熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これら他の熱可塑性樹脂は単独又は二種以上組み合わせてもよい。
【0026】
これら他の熱可塑性樹脂のうち、発泡体の剛性を向上できる点から、スチレン系樹脂が好ましく、発泡体の柔軟性を向上できる点から、熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーなど)が好ましい。
【0027】
オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との質量割合は、オレフィン系樹脂/他の熱可塑性樹脂=100/0~10/90(例えば100/0~50/50)程度の範囲から選択でき、他の熱可塑性樹脂と組み合わせる場合、オレフィン系樹脂/他の熱可塑性樹脂=99/1~30/70、好ましくは98/2~50/50、さらに好ましくは95/5~70/30(特に93/7~80/20)程度である。オレフィン系樹脂の割合は、熱可塑性樹脂中50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは80質量%以上(特に90質量%以上)であり、100質量%(オレフィン系樹脂のみ)であってもよい。オレフィン系樹脂の割合が少なすぎると、発泡性が低下する虞がある。
【0028】
[硫酸亜鉛]
本発明の発泡体は、発泡体に消臭性、抗菌性及び防カビ性を付与できる硫酸亜鉛を含む。特に、本発明では、マトリックスとしての熱可塑性樹脂中に硫酸亜鉛が分散相として微分散することにより、少量であっても、発泡体に対して、高い消臭性、抗菌性及び防カビ性(特に消臭性及び抗菌性)を付与できるとともに、高い発泡性及び機械的特性も付与できる。
【0029】
マトリックス中で微分散した分散相(硫酸亜鉛)の平均径は10μm以下(例えば0.01~10μm程度)であればよく、例えば0.1~5μm、好ましくは0.3~3μm、さらに好ましくは0.5~2μm(特に1~1.5μm)程度である。なお、分散相が異方形状である場合、各分散相の径は、長径と短径との平均値を意味する。
【0030】
さらに、マトリックス中で微分散した分散相(硫酸亜鉛)は、消臭性、抗菌性及び防カビ性を向上できる点から、空隙の壁面やスキン層付近に局在化しているのが好ましい。
【0031】
本明細書及び特許請求の範囲において、分散相の平均径及び分散状態は、走査型電子顕微鏡(SEM)の観察及びエネルギー分散型X線分光器による元素分析(EDS元素分析)に基づいて測定でき、詳細には、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0032】
本発明では、硫酸亜鉛の割合は、少量であってもよい。具体的には、発泡体中の亜鉛の割合は10質量%以下(例えば0.001~10質量%程度)であってもよいが、少量でも機能性を発現できるため、発泡体本来の前記特性を向上させる観点から、5質量%以下(例えば0.005~5質量%)であってもよく、例えば0.01~5質量%(例えば0.03~3質量%)、好ましくは0.05~2質量%(例えば0.08~1.5質量%)、さらに好ましくは0.1~1質量%(特に0.2~0.5質量%)程度であってもよい。硫酸亜鉛の割合が多すぎると、発泡体の発泡性や機械的特性が低下する虞がある。
【0033】
[機能性添加剤]
本発明の発泡体は、熱可塑性樹脂及び硫酸亜鉛に加えて、消臭性、抗菌性又は防カビ性を有する機能性添加剤(硫酸亜鉛以外の機能性添加剤)をさらに含んでいてもよい。機能性添加剤は、慣用の消臭剤、抗菌剤、防カビ剤であってもよい。
【0034】
具体的には、機能性添加剤としては、例えば、硫酸亜鉛以外の金属硫酸塩(硫酸銀、硫酸銅、硫酸鉄など)、金属硝酸塩(硝酸亜鉛、硝酸銀、硝酸銅など)、金属リン酸塩(リン酸カルシウム、リン酸銀、リン酸銅など)、金属炭酸塩(炭酸銀など)、金属ハロゲン酸塩(塩素酸銀、過塩素酸銀、など)、金属ハロゲン化物(塩化亜鉛、塩化銀、臭化銀、塩化銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄など)、鉱物質(ゼオライト、シリカゲルなど)、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、タンニン酸など)、金属有機酸塩(酢酸亜鉛、酢酸銀、シュウ酸銀、フマル酸亜鉛、フマル酸鉄、グリコール酸亜鉛、クエン酸亜鉛、クエン酸鉄、リンゴ酸亜鉛、リンゴ酸鉄、乳酸亜鉛、乳酸鉄、グルコン酸亜鉛、アスコルビン酸鉄など)などが挙げられる。
【0035】
これらの機能性添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの機能性添加剤のうち、熱可塑性樹脂中に微分散し易い点から、水溶性金属塩、例えば、硫酸銅や硫酸銀などの金属硫酸塩が好ましい。
【0036】
機能性添加剤の割合は、硫酸亜鉛100質量部に対して50質量部以下であってもよく、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下(例えば0.1~10質量部)程度である。
【0037】
[発泡剤]
本発明の発泡体は、前記熱可塑性樹脂及び硫化亜鉛を含む発泡性樹脂組成物を発泡して得られ、発泡性樹脂組成物は、発泡剤を含んでいてもよい。
【0038】
発泡剤としては、慣用の発泡剤を使用でき、分解性発泡剤(化学発泡剤)であってもよいが、簡便な方法で、発泡倍率を向上できる点から、揮発性発泡剤(物理発泡剤)が好ましい。揮発性発泡剤としては、例えば、無機系発泡剤(窒素、二酸化炭素、酸素、空気、水など)、有機系発泡剤(脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、フッ化炭化水素、アルコール類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類など)などが挙げられる。これらのうち、安価で毒性が低い点から、ブタン(n-ブタン、イソブタン)やペンタン(n-ペンタン、イソペンタンなど)などの低級脂肪族炭化水素が汎用される。
【0039】
発泡剤の割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは0.1~25質量部、さらに好ましくは1~20質量部(特に5~15質量部)程度である。
【0040】
[発泡核剤]
本発明の発泡体は、発泡核剤をさらに含んでいてもよい。発泡核剤としては、例えば、ケイ素化合物(タルク、シリカ、ゼオライトなど)、無機酸塩(重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩又は炭酸水素塩など)、有機酸又はその塩(クエン酸、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛など)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)などが挙げられる。これらの発泡核剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0041】
発泡核剤の割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部(特に0.5~2質量部)程度である。
【0042】
[収縮防止剤]
本発明の発泡体は、収縮防止剤をさらに含んでいてもよい。収縮防止剤としては、例えば、脂肪酸エステル(パルミチン酸モノ乃至トリグリセリド、ステアリン酸モノ乃至トリグリセリドなどのC8-24脂肪酸と多価アルコールとのエステルなど)、脂肪酸アミド(パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどのC8-24脂肪酸アミドなど)などが挙げられる。これらの収縮防止剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0043】
収縮防止剤の割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは0.05~20質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部(特に1~5質量部)程度である。
【0044】
[他の添加剤]
本発明の発泡体は、他の添加剤として、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、バイオサイド(防腐剤、防虫剤など)、抗アレルギー剤、着色剤(染料や顔料など)、表面平滑剤、気泡調整剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤など)、粘度調節剤、相溶化剤、分散剤、導電剤、磁性体、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、充填剤(炭酸カルシウム、炭素繊維など)、滑剤、離型剤、潤滑剤、衝撃改良剤、可塑剤、難燃剤などが挙げられる。これら慣用の添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0045】
他の添加剤の割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは0.05~20質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部(特に1~5質量部)程度である。
【0046】
[発泡体の特性]
本発明の発泡体の発泡倍率は、1.5倍以上(例えば3~70倍)であればよく、例えば3.1~60倍、好ましくは3.5~50倍、さらに好ましくは5~45倍(特に10~40倍)程度である。本発明では、硫酸亜鉛を含むにも拘わらず、硫酸亜鉛が熱可塑性樹脂中に微分散しているため、高い発泡倍率も可能であり、例えば10倍以上(特に20倍以上)の発泡倍率も可能であり、例えば10~70倍、好ましくは20~60倍、さらに好ましくは25~50倍(特に30~40倍)程度であってもよい。発泡倍率が低すぎると、柔軟性が低下する虞がある。
【0047】
本発明の発泡体は、独立気泡及び/又は連続気泡構造を有しており、少なくとも独立気泡構造を含むのが好ましく、気泡全体(連続気泡と独立気泡との合計)に対する連続気泡の割合である連続気泡率は90体積%以下であってもよく、例えば0.1~90体積%、好ましくは1~80体積%、さらに好ましくは3~50体積%(特に5~40体積%)程度である。連続気泡率が高すぎると、発泡体の機械的特性が低下する虞がある。本発明では、硫酸亜鉛が熱可塑性樹脂中に微分散しているため、独立発泡が困難な無機化合物である硫酸亜鉛を用いているにも拘わらず、このような高い独立気泡率を実現できる。
【0048】
本発明の発泡体の平均気泡径は、例えば0.3~2mm、好ましくは0.4~1.5mm、さらに好ましくは0.5~1.3mm(特に0.6~1.2mm)程度である。平均気泡径が小さすぎると、発泡倍率を高くするのが困難となる虞があり、大きすぎると、機械的特性が低下する虞がある。
【0049】
本発明の発泡体は、表面にスキン層を有するのが好ましく、全表面に対するスキン層の被覆率(スキン層が占める面積割合)は60%以上(特に80%以上)であってもよく、好ましくは90%以上であってもよく、100%(全表面がスキン層)であってもよい。
【0050】
スキン層の平均厚みは、0.001~1mm程度の範囲から選択でき、例えば0.005~0.1mm、好ましくは0.008~0.05mm、さらに好ましくは0.01~0.03mm(特に0.012~0.025mm)程度である。スキン層の平均厚みが薄すぎると、取り扱い性が低下する虞があり、逆に厚すぎると、発泡性が低下する虞がある。
【0051】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、発泡倍率、連続気泡率、平均気泡径及びスキン層の平均厚みは、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0052】
[発泡体の製造方法]
本発明の発泡体の製造方法は、熱可塑性樹脂及び硫酸亜鉛を含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する方法であればよく、慣用の方法を利用できるが、通常、前記樹脂組成物を溶融混練し、発泡成形する方法を利用できるが、発泡性樹脂組成物として、熱可塑性樹脂中に硫酸亜鉛が微分散した発泡性樹脂組成物を用いるのが好ましい。
【0053】
発泡性樹脂組成物中に微分散している硫酸亜鉛の平均径は、100nm未満であってもよく、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下(例えば0.1~10nm程度)であってもよく、分散相は分子又は原子単位でマトリックス中に分散するのが特に好ましい。本発明では、発泡前の樹脂組成物として、このように硫酸亜鉛が微分散した組成物を用いるため、得られた発泡体においても、硫酸亜鉛を微分散できるとともに、硫酸亜鉛を空隙の壁面やスキン層付近に局在化できる。
【0054】
硫酸亜鉛が微分散した発泡性樹脂組成物の調製方法としては、硫酸亜鉛を溶媒に溶解させた状態で、加熱した前記熱可塑性樹脂(特にオレフィン系樹脂)と混合し、前記熱可塑性樹脂が溶融した状態の樹脂組成物から前記溶媒を気体の状態で除去することにより得られる。硫酸亜鉛を溶解する溶媒としては、例えば、水、水性有機溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、アセトンなどのケトンなど)などが挙げられる。これらの溶媒のうち、水が好ましい。詳細には、硫酸亜鉛が微分散した発泡性樹脂組成物は、特開2016-216573号公報に記載の方法で調製でき、例えば、硫酸亜鉛を前記溶媒に溶解した溶液と、前記熱可塑性樹脂とを押出機(例えば、一軸又はベント式二軸押出機など)に供給した後、溶融した熱可塑性樹脂及び前記溶液は、複数枚の回転可能な混練プレートを有する混練分散部に送られる。混練分散部では、溶融した熱可塑性樹脂と前記溶液とは、回転する混練プレートにより、均一に混合された後、減圧ラインから溶媒が気体の状態で除去されることにより、前記熱可塑性樹脂中に硫酸亜鉛が平均分散径100nm未満で微分散した発泡性樹脂組成物が調製される。
【0055】
得られた発泡性樹脂組成物は、そのまま発泡成形に供してもよいが、マスターバッチとして発泡成形に供してもよい。発泡性樹脂組成物がマスターバッチとして利用される場合には、溶媒が除去された樹脂組成物は、さらに冷却してペレットなどの形態に調製してもよい。
【0056】
マスターバッチとして供される場合、第1の熱可塑性樹脂(特に第1のオレフィン系樹脂)中に硫酸亜鉛が平均分散径100nm未満で微分散したマスターバッチと、残部の樹脂成分である第2の熱可塑性樹脂(特に第2のオレフィン系樹脂)とは、慣用の溶融混練機、例えば、一軸又はベント式二軸押出機などを用いて溶融混練してもよい。また、マスターバッチと第2の熱可塑性樹脂との溶融混練において、他の成分(発泡剤及び必要に応じて発泡核剤、添加剤など)を配合してもよい。硫酸亜鉛が微分散した発泡性樹脂組成物の溶融混練は、慣用の溶融混練機、例えば、一軸又はベント式二軸押出機などを用いて溶融混練してもよい。また、溶融混練に先だって、慣用の方法、例えば、混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)を用いて、前記マスターバッチと、第2の熱可塑性樹脂と、他の成分(発泡剤及び必要に応じて発泡核剤、添加剤など)とを予備混合してもよい。
【0057】
発泡成形法としては、慣用の方法、例えば、押出成形法(例えば、Tダイ法、インフレーション法など)、射出成形法などが使用できる。これらのうち、高い消臭性、抗菌性及び防カビ性と高い発泡性とを両立するオレフィン発泡体を高い生産性で製造できる点から、押出成形法が好ましい。
【0058】
押出成形法において、押出機としては、例えば、単軸押出機(例えば、ベント式押出機など)、二軸押出機(例えば、同方向二軸押出機、異方向二軸押出機など)などが利用でき、発泡条件を調整し易く、高発泡倍率を実現できる点から、タンデム押出機などの多段押出機が好ましい。
【0059】
押出成形法において、発泡剤を導入する方法は特に限定されず、分解性発泡剤(化学発泡剤)を予め発泡性樹脂組成物に配合してもよいが、簡便な方法で、発泡倍率を向上できる点から、押出機において揮発性発泡剤(物理発泡剤)を導入するのが好ましい。
【0060】
押出機の口金の吐出口(ダイのリップ)の形状は、特に制限されず被保護体(又は物品)の形態に応じて選択でき、例えば、棒状、紐状などの一次元的形状、シート状、フィルム状、二次元網目(ネット)状などの二次元的形状、ブロック状、板状、柱状、スリット状、L字状、コ型状、パイプ状又はリング状などの三次元的形状であってもよい。
【0061】
押出発泡された発泡体は、慣用の方法、例えば、冷却器を用いた冷却方法で冷却してもよい。冷却器を用いた冷却方法において、冷却媒体としては、圧縮エアー、水(冷却水)、空気(ブロア)などの冷却媒体が挙げられる。冷却方法としては、圧縮エアーを噴射する方法、ブロアで冷却する方法、水を噴霧して冷却する方法、冷却ジャケットを用いて冷却する方法などが挙げられる。冷却媒体の温度は、例えば0~60℃、好ましくは5~55℃、さらに好ましくは10~50℃程度であってもよい。
【0062】
圧縮エアーを噴射する方法において、エアーの圧力は、例えば0.1~10MPa、好ましくは0.2~5MPa、さらに好ましくは0.3~1MPa程度であってもよい。圧縮エアーの噴射量は、例えば100~1000リットル/分、好ましくは200~500リットル/分、さらに好ましくは250~400リットル/分程度であってもよい。
【0063】
また、必要により、得られた発泡体(特に、シート状発泡体)を二次加工[例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、マッチモールド成形などの熱成形(例えば、金型を用いる熱成形)]してもよい。
【0064】
なお、発泡成形又は二次成形温度は、例えば70~300℃、好ましくは80~280℃、さらに好ましくは85~260℃程度であってもよい。
【0065】
発泡体の形状は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、棒状、シート状、二次元網目状、三次元形状などであってもよい。被保護体が果物などの農産物である場合、メッシュ状(又は網目状)保護材、シート状保護材、一対の挟持部で開口部を形成した断面中空筒状保護材などであってもよい。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で用いた原料は以下の通りであり、得られた発泡体の特性は以下の方法で評価した。
【0067】
[原料]
LDPE:低密度ポリエチレン、日本ポリエチレン(株)製「ノバテック(登録商標)LD LF640MA」
イソブタン(発泡剤):市販品
発泡核剤:タルク:平均粒子径15μm
収縮防止剤:ベーリンガーインゲルハイムケミカルズ(株)製「アクティベックス325」
。
【0068】
[消臭性]
実施例及び比較例で得られた発泡体10gを、5リットルのテドラーバッグに入れ、初発濃度100ppmのアンモニアガス3リットル又は初発濃度50ppmの酢酸ガス3リットルを注入し、経時毎にガス検知管を用いて、バッグ中のアンモニア濃度又は酢酸濃度を測定し、発泡体によるアンモニア又は酢酸の消臭性を評価した。
【0069】
[抗菌性]
JIS Z2801:2010 5に準拠し、実施例及び比較例で得られた発泡体(50mm×50mm)を滅菌済みシャーレに入れた後、1.0×105個~4.0×105個の試験菌(黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus NBRC 12732)を含む菌液0.4mLを発泡体の中央部に滴下し、40mm×40mmに切断したポリエチレンフィルム(標準サイズ)で被覆した。このシャーレを相対湿度90%以上で24時間培養後の1cm2当たりの生菌数を測定し、実施例の発泡体について抗菌活性値を算出した。抗菌活性値は、実施例3の発泡体における24時間後の生菌数の常用対数値から、比較例1の発泡体における24時間後の生菌数の常用対数値を減じた値であり、2.0以上の場合、抗菌効果を有すると判断する。
【0070】
[防カビ性]
JIS Z2911:2010.附属書A(規定) プラスチック製品の試験 方法Aに準拠し、実施例で得られた発泡体(40mm×40mm)について、試験菌(Aspergillus niger NBRC 105649、Penicillium pinophilum NBRC 33285、Paecilomyces varitoii NBRC 33284、Trichoderma virens NBRC 6355、Chaetomium globosum NBRC 6347)を接種し、4週間後のカビの発育状態を以下の基準で評価した。
【0071】
0:肉眼及び顕微鏡下でカビの発育は認められない
1:肉眼ではカビの発育は認められないが、顕微鏡下では明らかに確認する
2:肉眼ではカビの発育が認められ、発育部分の面積は発泡体の全面積の25%未満
3:肉眼ではカビの発育が認められ、発育部分の面積は発泡体の全面積の25%以上50%未満
4:菌糸はよく発育し、発育部分の面積は発泡体の全面積の50%以上
5:菌糸の発育は激しく、発泡体前面を覆っている。
【0072】
[発泡倍率]
発泡倍率は、以下の式に基づいて算出した。
【0073】
発泡倍率(倍)=発泡体用樹脂組成物の密度/発泡体の密度。
【0074】
[連続気泡率]
実施例及び比較例で得られた発泡体を、予め質量を測定し、水中に静置した後、-400mmHg(ゲージ圧)の減圧下に1分間放置して、連続気泡構造の中に水を浸透させた。減圧状態から大気圧力に戻し、発泡体の表面に付着した水を除去して質量を測定した後、下記式(1)により連続気泡率を算出した。
【0075】
連続気泡率(%)={(w2-w1)/d3}/(w1/d1-w1/d2)×100 (1)
(式中、w2は吸水後の発泡体質量、w1は吸水前の発泡体質量、d1は発泡体の見掛密度、d2は発泡体に使用されている樹脂組成物の見掛密度、d3は測定時の水の密度を示す)。
【0076】
[気泡径(セルサイズ)]
発泡体の断面を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製「S-4800」)又はデジタル顕微鏡(スカラ(株)製)で観察し、TD方向断面の気泡径及びMD方向断面の気泡径を、それぞれ任意の10箇所で測定し、それら20箇所の平均値を気泡径とした。また、各々の気泡径は、長径と短径との平均値とした。
【0077】
[硫酸亜鉛の分散状態及び分散径]
発泡体の断面をカミソリで切り出し、Os(オスミウム)コートした後、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製「S-4800」)で断面を観察した後、EDS元素分析検出器(Bruker社製「QUANTAX FlatQuad」)で亜鉛を検出することにより、硫酸亜鉛粒子を特定し、平均径を測定した。
【0078】
比較例1
LDPE100質量部、発泡核剤1.25質量部及び収縮防止剤1.25質量部を含む樹脂組成物を押出機に投入し、この押出機の途中からイソブタンガス13.75質量部を注入した後、発泡適正温度まで冷却し、先端に取り付けたリング形状の金型から押出し、発泡体を得た。得られた発泡体は、幅90mm、厚み2.8mm(筒状で測定して5.6mm)、TD方向長さ88mmの筒状であり、目付9.4g/m、発泡倍率23.6倍、セルサイズ0.7mmであった。
【0079】
実施例1
(硫酸亜鉛含有マスターバッチの調製)
硫酸亜鉛20質量部を、水80質量部に添加し、撹拌することにより、硫酸亜鉛含有水溶液(硫酸亜鉛20質量%)を調製した。一方、LDPEの約半分を1mm以下に粉砕した。残りのLDPEと合わせてLDPE100質量部と硫酸亜鉛含有水溶液5量部とを、押し出し機(特開2106-216573記載押し出し機)に供給し、温度150~160℃の条件で、溶融混練した。溶融混練部では複数枚の混練プレートが回転しており、ここでポリマーと水に溶解させた機能剤は均一混合され、次いで真空(負圧)にすることで同時に水分を取り除いた。水分を除去された溶融混練物は、押出部に供給されて押し出され、冷却後、取り出され、ペレタイザーでペレット化し、硫酸亜鉛含有マスターバッチを得た。
【0080】
(発泡体の製造)
LDPE90質量部、硫酸亜鉛含有マスターバッチ10質量部、発泡核剤1.3質量部及び収縮防止剤1.3質量部を含む樹脂組成物を押出機に投入し、この押出機の途中からイソブタンガス13.75質量部を注入した後、発泡適正温度まで冷却し、先端に取り付けたリング形状の金型から押出し、発泡体を得た。得られた発泡体は、幅90mm、厚み4.5mm、TD方向長さ83mmの筒状であり、目付11.6g/m、発泡倍率27.1倍、セルサイズ0.85mmであった。得られた発泡体の硫酸亜鉛の分散状態を示すEDS元素マッピング図を
図1に示す。得られた発泡体は、約1~1.5μmの硫酸亜鉛粒子がスキン層付近に局在化しており、約0.3μmの硫酸亜鉛粒子も発泡体中に存在した。
【0081】
実施例2
LDPE90質量部及び硫酸亜鉛含有マスターバッチ10質量部の代わりに、LDPE80質量部及び硫酸亜鉛含有マスターバッチ20質量部を用いる以外は実施例1と同様の方法で発泡体を製造した。得られた発泡体は、幅88mm、厚み9.1mm、TD方向長さ84mmの筒状であり、目付10.6g/m、発泡倍率32.9倍、セルサイズ0.95mmであった。
【0082】
実施例3
LDPE90質量部及び硫酸亜鉛含有マスターバッチ10質量部の代わりに、LDPE70質量部及び硫酸亜鉛含有マスターバッチ30質量部を用いる以外は実施例1と同様の方法で発泡体を製造した。得られた発泡体は、幅97mm、厚み9.3mm、TD方向長さ92mmの筒状であり、目付12.2g/m、発泡倍率31.7倍、セルサイズ1.1mmであった。
【0083】
実施例4
LDPE90質量部、硫酸亜鉛含有マスターバッチ10質量部、発泡核剤1.3質量部及び収縮防止剤1.3質量部の代わりに、硫酸亜鉛含有マスターバッチ100質量部、発泡核剤1.35質量部及び収縮防止剤1.35質量部を用いる以外は実施例1と同様の方法で発泡体を製造した。得られた発泡体は、幅92mm、厚み6.4mm、TD方向長さ88mmの筒状であり、目付11.4g/m、発泡倍率21.9倍、セルサイズ0.68mmであった。
【0084】
比較例1及び実施例1~4で得られた発泡体について、アンモニアの消臭性を評価した結果を表1に示す。
【0085】
【0086】
表1の結果から明らかなように、実施例の発泡体は、アンモニアに対する消臭性が高かった。
【0087】
比較例1及び実施例1~4で得られた発泡体について、酢酸の消臭性を評価した結果を表2に示す。
【0088】
【0089】
表2の結果から明らかなように、実施例の発泡体は、酢酸に対する消臭性が高かった。
【0090】
比較例1及び実施例3で得られた発泡体について、抗菌性を評価した結果を表3に示す。
【0091】
【0092】
表3の結果から明らかなように、実施例3の発泡体は、抗菌性が高かった。
【0093】
実施例1~3で得られた発泡体について、防カビ性を評価した結果を表4に示す。
【0094】
【0095】
表4の結果から明らかなように、実施例の発泡体は、防カビ性が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の発泡体は、各種分野(農産物、日用品、建設材、家具、電化製品など)の被保護材を保護するための保護材として利用でき、例えば、種々の果実又は果物、例えば、リンゴ、梨(二十世紀梨など)、桃、イチゴ、イチジク、スイカ、メロンなどの包装又は梱包材(又は緩衝材)や、柱や手すりなどの建設材や、机、いす、本棚などの家具、インテリア、家電などの保護材(例えば、建設現場における養生材)などに利用できる。また、果実又は果物を有効に保護できるため、振動が作用する輸送過程で利用される包装体又は梱包体の仕切り部材、特に果実又は果物を段積みする包装又は梱包体において各段の間に介在する仕切り部材であってもよい。