(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】充電システム、充電器、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
H02J7/04 A
(21)【出願番号】P 2017158753
(22)【出願日】2017-08-21
【審査請求日】2020-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503288082
【氏名又は名称】株式会社メルコホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】青木 基視
(72)【発明者】
【氏名】竹元 公章
(72)【発明者】
【氏名】松永 一宏
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144519(JP,A)
【文献】特開2007-166774(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0013442(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0102426(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101383518(CN,A)
【文献】特開2008-061343(JP,A)
【文献】実開平04-124756(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電器と、前記充電器により充電される電子機器とを含む充電システムであって、
前記電子機器は、
二次電池と、
前記充電器から供給される電力により、当該二次電池を充電する手段と、
前記二次電池が供給する電力により動作する機能部と、
前記二次電池の充電量と、前記機能部の動作に係る条件とに基づいて充電電流量を定め、前記充電器に対して当該定めた充電電流量を設定する制御信号を送出する通信手段と、
を含み、
前記機能部の動作に係る条件は、機能部の消費電力量に関する条件であり、
前記充電器は、前記電子機器から充電電流量を設定する信号を受信して、充電電流の供給量を制御し、
前記電子機器において、二次電池の充電量に関する第1のしきい値と、前記機能部の消費電力量に関する第2のしきい値とが設定されており、
前記通信手段は、
前記二次電池の充電量が
前記第1のしきい値未満であるときと、前記二次電池の充電量が前記第1のしきい値以上のときとで、互いに異なる充電電流量を定めるとともに、前記第1のしきい値以上のときには、前記機能部の消費電力量
と前記第2のしきい値とを用いた条件に基づいて、充電電流量を定める充電システム。
【請求項2】
二次電池を備える電子機器に接続され、当該電子機器に充電電流を供給する充電器であって、
前記電子機器は、当該充電器から電力を受け入れる電力受入部に共有される電流量よりも、当該電子機器の各部に電源を供給する電源部に供給される電流量が少なくなる電子機器であり、
当該電子機器から、充電電流
量を設定する制御信号を受信する
受信手段と、
前記受信した信号に応じて、前記電子機器に対する充電電流の供給量を制御する供給制御手段と、
を有し、
前記受信手段が受信する制御信号は、
前記電子機器において、その二次電池の充電量に関する第1のしきい値と、前記機能部の消費電力量に関する第2のしきい値とを用い、前記電子機器の二次電池の充電量が前記第1のしきい値未満であるときと、前記二次電池の充電量が前記第1のしきい値以上のときとで、互いに異なる充電電流量を定めるとともに、前記第1のしきい値以上のときには、前記機能部の消費電力量と前記第2のしきい値とを用いた条件に基づいて、充電電流量を定めた制御信号であり、
前記供給制御手段は、前記受信した
制御信号により指示された充電電流量に対し、予め定めた電流量だけ大きい充電電流を供給するよう制御する充電器。
【請求項3】
請求項
2記載の充電器であって、
前記供給制御手段が、互いに異なる電流量の電流を供給する複数の端子を備えた電流出力部と、
前記電流出力部が備える複数の端子の一つを、前記電子機器から受信した信号に応じて選択し、選択した端子と、電子機器への電流供給端子とを接続するスイッチ手段と、
を有する充電器。
【請求項4】
外部に接続される充電器から供給される電力により充電される二次電池
と、当該二次電池が供給する電力により動作する機能部とを有し、二次電池の充電量に関する第1のしきい値と、前記機能部の消費電力量に関する第2のしきい値とが設定されている電子機器を、
前記二次電池の充電量を取得するとともに、前記二次電池が供給する電力により動作する機能部の動作に係る条件として、当該機能部の消費電力量に関する条件を取得する手段と、
当該取得した前記二次電池の充電量と、前記機能部の消費電力量に関する条件とに基づいて、前記充電器に対して充電電流を設定する制御信号を送出する通信手段と、
として機能させ、
前記機能部の動作に係る条件は、機能部の消費電力量に関する条件であり、
前記通信手段として機能させる際には、前記二次電池の充電量が前記第1のしきい値未満であるときと、前記二次電池の充電量が前記第1のしきい値以上のときとで、互いに異なる充電電流量を定めるとともに、前記第1のしきい値以上のときには、前記機能部の消費電力量と前記第2のしきい値とを用いた条件に基づいて、充電電流量を定めるよう機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電システム、充電器、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等、二次電池を電源として利用する電子機器が広く普及している。このような電子機器に対しては、その二次電池を充電する充電器は、二次電池の容量上限まで充電された後(満充電となった後)も、電子機器と充電器とが接続されている間は、満充電の状態を維持するよう、電子機器の二次電池に電流を供給し続けるようにしているのが現状である。
【0003】
また近年では、乾電池や二次電池を電源として、スマートフォン等の電子機器を充電する、携行可能な充電器(いわゆるモバイルバッテリー)も普及している。このようなモバイルバッテリーの利用態様としては、例えばスマートフォンの利用者は、モバイルバッテリーで充電を行いつつ、スマートフォンを使用しているのが一般的である。この場合、スマートフォン側の二次電池は電力を供給しつつ充電を行うこととなる。
【0004】
なお、特許文献1には、携帯端末の満充電によるバッテリ劣化を防止するため、電池残量値と上限値との比較判定を繰り返して、通電と通電の遮断とを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、上記従来の充電器では、満充電またはそれに近い状態を維持するために長時間に亘って二次電池に電流が供給され続けることとなり、過充電が生じると二次電池の劣化を招来することがある。また、充電しつつ電力の供給を行う利用態様では、二次電池が負荷のために発熱し、どちらか一方の動作が行われる場合に比べて劣化が生じやすくなる。しかし、満充電後に充電電流を遮断したのでは、仮にその後放置された場合にはスマートフォン等の待ち受け動作等により二次電池が放電していき、放置の時間によっては過放電が生じてしまう場合もある。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、過充電・過放電を防止し、電池にかかる負荷を軽減することのできる充電システム、充電器、及びプログラムを提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来例の問題点を解決する本発明は、充電器と、前記充電器により充電される電子機器とを含む充電システムであって、前記電子機器は、二次電池と、前記充電器から供給される電力により、当該二次電池を充電する手段と、前記二次電池の充電量に基づいて、前記充電器に対して充電電流のオン・オフを制御する信号を送出する通信手段と、を含み、前記充電器は、前記電子機器から充電電流のオン・オフを制御する信号を受信して、充電電流の供給開始と、供給停止とを切り替え制御することとしたものである。
【0009】
このように、充電電流の遮断と供給を電子機器側からの制御により行うので、電子機器側が自己の状況に応じて充電状態を制御でき、過充電・過放電を防止し、電池にかかる負荷を軽減するよう制御できる。
【0010】
また本発明の一態様に係る充電システムは、充電器と、前記充電器により充電される電子機器とを含み、前記電子機器は、二次電池と、前記充電器から供給される電力により、当該二次電池を充電する手段と、前記二次電池が供給する電力により動作する機能部と、前記機能部の動作に係る条件に基づいて、前記充電器に対して充電電流を設定する制御信号を送出する通信手段と、を含み、前記充電器は、前記電子機器から充電電流を設定する信号を受信して、充電電流の供給量を制御することとしたものである。
【0011】
このように、充電電流量を電子機器側からの制御により行うので、電子機器側に、自己の有する機能部の動作に係る条件に応じて充電状態を制御でき、過充電・過放電を防止し、電池にかかる負荷を軽減するよう制御できる。
【0012】
さらに本発明の別の態様に係る充電器は、二次電池を備える電子機器に接続され、当該電子機器に充電電流を供給する充電器であって、前記電子機器から、充電電流のオン・オフを制御する信号を受信する手段と、前記受信した信号に応じて、前記電子機器に対する充電電流の供給を行う状態と、充電電流の供給を停止する状態を切り替えるスイッチ手段と、を有することとしたものである。
【0013】
このように、充電電流の遮断と供給を電子機器側からの制御により行うこととしたので、電子機器側が自己の状況に応じて充電状態を制御させることができ、電子機器の過充電・過放電を防止し、その電池にかかる負荷を軽減するよう制御できる。
【0014】
また本発明のさらに別の態様に係る充電器は、二次電池を備える電子機器に接続され、当該電子機器に充電電流を供給する充電器であって、前記電子機器から、充電電流を設定する制御信号を受信する手段と、前記受信した信号に応じて、前記電子機器に対する充電電流の供給量を制御する供給制御手段と、を有することとしたものである。
【0015】
このように、充電電流量を電子機器側からの制御により行うこととしたので、電子機器側に、自己の状況に応じて充電状態を制御させることができ、電子機器の過充電・過放電を防止し、その電池にかかる負荷を軽減するよう制御できる。
【0016】
ここで前記供給制御手段が、互いに異なる電流量の電流を供給する複数の端子を備えた電流出力部と、前記電流出力部が備える複数の端子の一つを、前記電子機器から受信した信号に応じて選択し、選択した端子と、電子機器への電流供給端子とを接続するスイッチ手段と、を有することとしても好適である。これにより構成を簡便にできる。
【0017】
また本発明の一態様に係るプログラムは、外部に接続される充電器から供給される電力により充電される二次電池を有する電子機器を、前記二次電池の充電量を検出する手段と、前記検出した充電量に基づき、充電器に対して充電電流のオン・オフを制御する信号を送出する通信手段と、として機能させることとしたものである。
【0018】
さらに本発明の別の態様に係るプログラムは、外部に接続される充電器から供給される電力により充電される二次電池を有する電子機器を、前記二次電池が供給する電力により動作する機能部の動作に係る条件を取得する手段と、当該取得した条件に基づいて、前記充電器に対して充電電流を設定する制御信号を送出する通信手段と、として機能させることとしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、電子機器の電池の過充電・過放電を防止し、その電池にかかる負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る充電システムの例を表す構成ブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電子機器の制御部の機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る電子機器における条件の設定例を表す説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る充電器の充電制御部の構成例を表す概略回路図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る充電システムの動作の一例を表す説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る充電器の充電制御部の別の構成例を表す概略回路図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る充電器の充電制御部のさらに別の構成例を表す概略構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る充電システム1は、
図1に例示するように、充電器10と、それにより充電が行われる電子機器20とを含んで構成されている。
【0022】
また充電器10は、
図1に例示するように、電源部11と、制御部12と、通信部13と、充電制御部14と、電力供給部15とを含んで構成される。また電子機器20は、例えばスマートフォンであり、制御部21と、記憶部22と、操作部23と、表示部24と、通信部25と、電力受入部26と、電源部27とを含んで構成される。
【0023】
ここで充電器10の電源部11は、例えば二次電池を含み、この二次電池が供給する電力は充電制御部14の指示に従う。具体的にこの電源部11は、指示された電流量の電力を、電力供給部15を介して、当該電力供給部15に接続された外部機器(電子機器20等)に対して供給する。
【0024】
制御部12は、マイクロコンピュータ等であり、内蔵しているメモリに格納されたプログラムに従って動作する。この制御部12は、電子機器20から通信部13を介して充電電流を制御する信号を受信して、充電制御部14に、当該受信した信号に基づく充電電流の制御を行わせる。この制御部12の動作については、後に詳しく述べる。
【0025】
通信部13は、無線LANインタフェースや、近距離無線通信インタフェース(ブルートゥース(登録商標)等)、あるいは有線ネットワークインタフェース等であり、電子機器20との間で信号を送受する。本実施の形態の一例では、この通信部13は、電子機器20から無線にて受信した信号を、制御部12に出力する。
【0026】
充電制御部14は、制御部12から入力される指示に従って、電源部11が電力供給部15を介して供給する充電電流量を制御する。本実施の形態の一例では、この充電制御部14は、制御部12から入力される指示に従って、充電時に供給するべき電流量として定められる充電時電流量と、電流量「0」とを切り替える。
【0027】
また本発明の別の例では、この充電制御部14は、制御部12から入力される指示に従って、当該指示により指定された電流量だけの充電電流を供給するよう、電源部11から供給される電流量を制御する。この電流量は、例えばDC/DCコンバータ等によって、任意に設定された所定の範囲で制御されてもよいし、複数の互いに異なる、所定の電流量を供給する端子のいずれかが選択されることにより制御されてもよい。この充電制御部14の具体的な例については後述する。
【0028】
電力供給部15は、電子機器20に接続され、充電制御部14によって制御される電流量での充電電流を電子機器20に供給する電流供給端子を有する。本実施の一例としてはこの電力供給部15はUSB(Universal Serial Bus)端子でよい。USB端子を用いる場合、この電力供給部15は、USB端子に含まれる電源端子と、GND端子を介して電子機器20に対して充電用の電力の供給を行う。これら充電制御部14及び電力供給部15が本発明の供給制御手段を実現する。また電力供給部15が本発明の電流出力部を実現する。
【0029】
電子機器20の制御部21は、CPU等のプログラム制御デバイスであり、記憶部22に格納されたプログラムに従って動作する。本実施の形態の一例では、この制御部21は、電子機器20としての機能を実現する処理を実行する。例えば電子機器20がスマートフォンであれば、この制御部21は、オペレーティングシステムの処理を実行し、また、当該オペレーティングシステムの管理下において、電話器の機能の処理を実行し、図示しないマイクが集音した音声を符号化して通信部25の携帯電話通信部(不図示)を介して携帯電話回線網に対して送出する。また制御部21は、携帯電話回線網から受信される信号を復号して得た音声をスピーカ(不図示)に出力して、鳴動させる。
【0030】
さらにこの制御部21は、電子機器20がスマートフォンであるときには、上記オペレーティングシステムの管理下において、ゲームプログラムなど、種々のアプリケーションプログラムに基づく処理を実行している。本実施の形態の一例では、このアプリケーションプログラムに従った動作の一つとして、制御部21が充電制御の処理を実行する。この充電制御の処理を行う制御部21は、電子機器20の二次電池である電源部27の充電量を調べ、当該充電量に基づく、予め定められた規則に従って、充電電流を制御する信号を生成して、通信部25を介して充電器10に当該信号を送出する。制御部21のこの処理については後に詳しく述べる。
【0031】
記憶部22は、メモリデバイスや、ディスクデバイス等であり、制御部21が実行するプログラムを保持している。このプログラムは、コンピュータ可読かつ非一時的な記録媒体に格納された状態で提供され、この記録媒体から記憶部22に格納されたものであってもよいし、ネットワークを介して受信され、この記憶部22に格納されたものであってもよい。また、この記憶部22は制御部21のワークメモリとしても動作する。
【0032】
操作部23は、例えばタッチパネルや、キーボード、スイッチ等であり、ユーザの操作指示を受け入れて、当該操作指示の内容を制御部21に対して出力する。表示部24は、液晶ディスプレイ等であり、制御部21から入力される指示に従い、情報を表示出力する。
【0033】
通信部25は、電子機器20がスマートフォン等の携帯電話機であれば、携帯電話回線網との間で通信を行う携帯電話通信手段を含む。また、この通信部25は、充電器10との間で通信を行うための無線LANインタフェースや、近距離無線通信インタフェース(ブルートゥース(登録商標)等)、あるいは有線ネットワークインタフェース等を備える。この通信部25は、制御部21から入力される指示に従って、充電電流を制御する信号を充電器10に送出する。
【0034】
電力受入部26は、充電器10の電力供給部15に接続される。この電力受入部26は、電力供給部15がUSB端子である場合は、USBのレセプタクルとなる。この電力受入部26は、充電器10から供給される充電電流を受け入れて、電源部27に供給する。電源部27は、二次電池を有し、電力受入部26を介して充電器10から充電電流が供給されると、当該充電電流により二次電池を充電する。また、この電源部27は、電子機器20の各部(制御部21,記憶部22,操作部23,表示部24,通信部25並びに図示しないが電子機器20が備え得るGPS(Global Positioning System)や活動量センサ、バイブレータ、その他、電子機器20としての機能を提供するために、電力の供給を受けて動作する各部。以下、これらをまとめて機能部と呼ぶ)に電力を供給する。
【0035】
次に、電子機器20の機能部の一つである制御部21の動作について説明する。この制御部21は、記憶部22に格納されたプログラムを実行することにより、機能的に、
図2に例示するように、設定部31と、条件判定部32と、電流量決定部33と、信号送出部34とを含んで構成される。
【0036】
本実施の形態では、充電電流の制御は、既に述べたように、少なくとも
(1)予め定められた充電時電流量と、電流量「0」とを切り替える制御、
(2)互いに異なる複数の、所定充電時電流量のいずれかを選択する制御、
(3)電流量の値を指定して、充電時電流量を定める制御、
のいずれかの制御を行う。
【0037】
設定部31は、充電時電流量の制御に係る条件と、当該条件を満足する際に充電のために供給するべき電流量の情報とを関連付けた設定とする。例えば、この設定部31は、上記の(1)予め定められた充電時電流量と、電流量「0」とを切り替える制御を行う場合(充電電流のオン・オフを制御する場合)は、充電電流の供給を停止する。また設定部31は、充電電流量を「0」とする条件としての、電源部27の二次電池の充電量の上限値(例えば「100%」)と、充電電流量を「0」とした後、充電時電流量だけの充電電流の供給を開始させる条件としての、電源部27の二次電池の充電量の下限値(例えば「95%」)とを設定値として、条件判定部32に出力する。本実施の形態の一例では、この上限値・下限値の設定値は、ユーザの操作部23に対する操作により受け入れてもよい。
【0038】
またこの設定部31は、上記の(2)互いに異なる複数の、所定充電時電流量のいずれかを選択する制御を行う場合は、各充電時電流量のいずれかを選択できるように、電源部27の二次電池の充電量のしきい値の設定値を、条件判定部32に出力する。この設定は例えば
図3に例示するように、充電量が「100%」のときに充電電流量を「0とする」、充電量が「95%以上」のとき充電電流量を「変化させない」、充電量が「90%以上95%未満のとき」、充電電流量を「I1とする」、充電量が「90%未満のとき」、充電電流量を「I2とする」…というように設定データテーブルとして条件判定部32に対して指示することで行われる。この設定もまた、ユーザの操作部23に対する操作により変更可能となっていてもよい。
【0039】
さらに設定部31は、(3)電流量の値を指定して、充電時電流量を定める制御を行う場合は、
図3に例示したように、電源部27の二次電池の充電量のしきい値に基づいて充電電流量が定められるように、条件判定部32に設定値を出力することで、充電時電流量を定めてもよい。また、電源部27の二次電池の充電量に加えて、あるいは電源部27の二次電池の充電量に代えて、電子機器20の機能部の動作に係る条件に基づく設定値を、条件判定部32に出力してもよい。ここで電子機器20の機能部の動作に係る条件は、例えば制御部21の負荷(CPU稼働率)や、通信部25等各部での消費電力量の総和に基づく条件としてもよい。例えば制御部21の負荷が「80%以上」であれば、電源部27の二次電池の充電量によらず、充電電流量を「I2」とする、などの条件としてもよい。
【0040】
条件判定部32は、設定部31から入力される設定値により指定される条件(複数ある場合はそのいずれか)が満足されているか否かを判定する。例えば設定部31が指定する条件に、電源部27の二次電池の充電量に基づく条件が含まれるならば、この条件判定部32は電源部27の二次電池の充電量の情報を取得する。この情報は、一般的には、電源部27が備えるPMU(Power Management Unit)回路から取得される。またこの条件判定部32は、設定部31が指定する条件に、機能部としての制御部21の負荷等の情報が含まれる場合は、当該条件に関係する情報を取得する。
【0041】
そして条件判定部32は、当該取得した情報に基づいて、設定部31が指定した条件(複数ある場合はそのいずれか)が満足されるか否かを調べ、満足される条件があれば、当該条件に関連付けられている充電電流量の情報を、電流量決定部33に出力する。
【0042】
例えば、設定部31が条件判定部32に設定値を出力することで指定した条件が、上記の(1)予め定められた充電時電流量と、電流量「0」とを切り替える制御を行う場合の条件における例に示したものであって、取得した電源部27の二次電池の充電量が「100%」であれば、設定部31が指定した条件に従い、条件判定部32は、充電電流量を「0」とする旨の情報を、電流量決定部33に出力する。
【0043】
また、別の例として設定部31が設定した条件が上記の、(3)電流量の値を指定して、充電時電流量を定める制御を行う場合の条件における例に示したものであるときには、この条件判定部32は、制御部21の負荷の情報を取得し、当該情報が例えば「85%」であれば、電源部27の二次電池の充電量によらず、充電電流量を「I2」とする旨の情報を、電流量決定部33に出力する。
【0044】
電流量決定部33は、充電器10から供給される充電電流量が、条件判定部32が出力する情報が表す充電電流量となるよう、充電電流を制御する信号を生成する。信号送出部34は、電流量決定部33が生成した、充電電流を設定する制御信号を、通信部25を介して、充電器10宛に送出する。
【0045】
ここで充電器10と電子機器20とが近距離無線通信手段であるブルートゥース(登録商標)を用いて接続される場合は、この信号送出部34は、予めペアリング処理を実行した充電器10に対して、上記充電電流を制御する信号を送出する。また、無線LANを用いる場合は、例えば充電器10と電子機器20とはいわゆるアドホックモードで接続されてもよい。この場合、電子機器20は、充電器10に対して直接、1対1通信にて、上記充電電流を制御する信号を送出することとなる。
【0046】
もっとも、電子機器20が自身に接続されている充電器10を識別する情報を取得、ないし保持し、当該充電器10を識別する情報とともに、上記充電電流を制御する信号を送出し、充電器10側では、自己を識別する情報とともに送信された信号を受信して、充電電流を制御する処理に用いることとすれば、他の通信方法が採用されてもよい。
【0047】
次に、充電器10の制御部12の動作と、充電制御部14の構成例について説明する。制御部12の動作と充電制御部14の構成も、また、
(1)予め定められた充電時電流量と、電流量「0」とを切り替える制御、
(2)互いに異なる複数の、所定充電時電流量のいずれかを選択する制御、
(3)電流量の値を指定して、充電時電流量を設定する制御、
のいずれの制御を行うかにより異なっている。
【0048】
まず、(1)予め定められた充電時電流量と、電流量「0」とを切り替える制御が行われる場合、充電制御部14は、
図4に例示するように、電源を供給する回路(
図4の例ではUSBのVbusライン)を接続・遮断するスイッチ51によって実現される。制御部12は、電子機器20から受信した指示に従って、このスイッチ51をオン(線路を接続する状態)とするか、またはオフ(線路を遮断した状態)とする。
【0049】
具体的にこの例では、制御部12は、充電時電流量を供給する指示(充電電流をオンとする指示)が電子機器20から送信されたときには、このスイッチ51をオンとし、充電電流の供給を行う状態とする。また制御部12は、充電電流量を「0」とするべき旨の指示(充電電流をオフとする指示)が電子機器20から送信されたときには、このスイッチ51をオフとし、充電電流の供給を停止する状態とする。
【0050】
この動作により、電子機器20の電源部27の二次電池には、
図5に概念的に例示するように、当該二次電池の充電量が所定の上限側のしきい値(例えば「100%」、すなわち満充電)となるまでは所定の充電電流量が供給されて充電が行われる。充電量が所定の上限側のしきい値となった時点で電子機器20から、充電器10に対して充電電流量を「0」とするべき旨の指示が送信されると、制御部12によりスイッチ51がオフとされる。このため充電電流量は「0」となり、充電が停止される。その後、次に充電量が下限側のしきい値(例えば「95%」)となるまでは電子機器20からの指示がされずに、充電電流量は「0」のままとなり、充電量が下限側のしきい値まで低下したところで、電子機器20から充電電流量を所定の値とするべき旨の指示が送信される。この例では、この指示に応じて制御部12がスイッチ51をオンとするので、この時点から改めて充電が再開される。
【0051】
本実施の形態のこの例によると、PMUのみが行う充電方式のように、充電量を「100%」に維持するためにすこしでも充電量が低下したときには充電を行うのではなく、満充電の状態から充電量が十分低下するまでは充電が再開されないので、電子機器20が備える二次電池にかかる負荷が軽減される。
【0052】
また、(2)互いに異なる複数の、所定充電時電流量のいずれかを選択する制御が行われる場合、充電制御部14は、
図6に例示するように、電源部11から供給される電力に基づいて、互いに異なる電流量(そのうち一つの電流量は「0」であってもよい)の電流を供給する電流供給端子P1,P2…,Pn(nは2以上の整数)と、そのうちの一つを選択して、電力供給部15の電源を供給する回路(
図6の例ではUSBのVbusライン)に接続するスイッチ52とを含んで構成される。
【0053】
具体的にこの例では、制御部12は、充電時電流量を供給する指示が電子機器20から送信されたときには、電子機器20から指示された充電時電流量を供給する電流供給端子(相当するものがない場合は、それを超える最小の電流量を供給する電流供給端子)に、電力供給部15の電源を供給する回路を接続するよう、スイッチ52を制御する。
【0054】
さらに、(3)電流量の値を指定して、充電時電流量を設定する制御が行われる場合、充電制御部14は、
図7に例示するように、メモリデバイス(レジスタ)として機能する目標値メモリ55と、電流センサ56と、コンパレータ57と、DC/DCコンバータ58とを含んで構成される。またこの例では制御部12は、電子機器20から指定された充電電流量の値を、充電制御部14の目標値メモリ55に格納する。
【0055】
電流センサ56は、電源を供給する回路(
図7の例ではUSBのVbusライン)の電流量を検出する。このような回路中の電流を検出する回路については種々のものが採用され得るので、ここでの説明は省略する。この電流センサ56は、検出した電流量の値を、A/Dコンバータ等を用いてディジタル値に変換して出力する。
【0056】
コンパレータ57は、目標値メモリ55に格納されている、指定された充電電流量の値Itと、電流センサ56が出力する電流量の値IDとを比較し、It>IDであれば、出力電流量を低下させるべき旨の指示をDC/DCコンバータ58に出力する。またこのコンパレータ57は、It<IDであれば、出力電流量を上昇させるべき旨の指示をDC/DCコンバータ58に出力する。なお、コンパレータ57は、It=IDのときには、何も出力しない。
【0057】
DC/DCコンバータ58は、電源部11が供給する電力の電流量を、コンパレータ57が出力する信号に従って制御する。具体的にこのDC/DCコンバータ58は、当初は、予め設定されている充電電流量の値となるよう、電源部11が供給する電力の電流量を調整して、電源を供給する回路(
図7の例ではUSBのVbusライン)に供給する。
【0058】
またDC/DCコンバータ58は、コンパレータ57が出力電流量を低下させるべき旨の指示を出力しているときには、電源部11が供給する電力の電流量を、現在供給している電流量よりも所定の値だけ低下させた電流量に調整して、電源を供給する回路(
図7の例ではUSBのVbusライン)に供給する。DC/DCコンバータ58は、コンパレータ57が出力電流量を上昇させるべき旨の指示を出力しているときには、電源部11が供給する電力の電流量を、現在供給している電流量よりも所定の値だけ上昇させた電流量に調整して、電源を供給する回路(
図7の例ではUSBのVbusライン)に供給する。
【0059】
本実施の形態のこの例の充電システムは、次のように動作する。以下の例では、(3)電流量の値を指定して、充電時電流量を設定する制御を行う場合の設定として、予め、
(a)充電量が「90%未満」であれば、充電電流量I2(充電器10の供給可能な最大電流とする)を指定する。
(b)充電量が「90%以上」かつ、電子機器20の機能部の電流消費量Irが所定しきい値Ith未満であれば、充電電流量I1を指定する。
(c)充電量が「90%以上」かつ、電子機器20の機能部の電流消費量Irが所定しきい値Ith以上であり、かつ、I1+Ir-Ith<I2であれば、充電電流量としてId=I1+Ir-Ithを指定する。なお、I1+Ir-IthがI2以上であるときには、充電電流量としてId=I2を指定する。
との条件が設定されているものとする。
【0060】
以上の条件のもとで、電子機器20のユーザが例えばゲームアプリケーションを起動させた状態で、充電器10を電子機器20に接続すると、電子機器20の制御部21が電源部27の二次電池の充電量と、機能部(制御部21ほかの各部)の消費電流量の総計の情報とを取得する。そして取得した充電量が、先に設定された条件を満足するか否か、すなわち、(a)充電量が「90%未満」であるか否かを判断する。ここで(a)充電量が「90%未満」であれば、制御部21は、充電電流量I2を指定する指示を、通信部25を介して充電器10に送出する。
【0061】
充電器10は当初、充電電流量I2を供給可能な最大電流量とする充電電流を、電子機器20に対して供給するものとする。ここで、充電電流量I2が指定される指示を受信すると、充電器10は、当該充電電流量I2の値を充電制御部14の目標値メモリ55に格納する。充電器10は、DC/DCコンバータ58が出力し、電子機器20に供給する電流量を、当該指定された充電電流量に近づけるよう自己を制御する。しかし、ここでは既に目標値となる充電電流量I2が供給されているので、充電制御部14のコンパレータ57は、充電電流量を変化させるような制御は行わない。従って充電器10は、充電電流量I2により生成される電力の供給を維持する。
【0062】
やがて充電量が「90%以上」となると、電子機器20の制御部21は、電子機器20の機能部の電流消費量Irを調べる。ここではユーザがゲームアプリケーションを起動させた状態としており、電流消費量Irが所定しきい値Ithを超えているものとする。この場合、制御部21は、I1+Ir-Ithを演算し、当該演算して得た値が、充電器10が供給可能な最大の充電電流量であるI2未満であるか否かを調べる。ここで、当該演算して得た値が、充電器10が供給可能な最大の充電電流量であるI2未満であれば、制御部21は充電電流量としてId=I1+Ir-Ithを指定する指示を、通信部25を介して充電器10に送出する。
【0063】
充電器10は当該指示を受信すると、指定された充電電流量I1+Ir-Ithを充電制御部14の目標値メモリ55に格納する。ここでその時点での充電電流量I2に比べ、指定された充電電流量I1+Ir-Ithは、小さい値であるので、充電制御部14のコンパレータ57は、出力電流量を低減するようDC/DCコンバータ58に指示する。この指示は、DC/DCコンバータ58が供給する電流量が、指示されたI1+Ir-Ith未満となるまで続けられる。また、DC/DCコンバータ58が供給する電流量が、指示されたI1+Ir-Ith未満となると、この値は、指示された充電電流量I1+Ir-Ithに比べて小さいので、充電制御部14のコンパレータ57は、出力電流量を増大させるようDC/DCコンバータ58に指示する。この指示は、DC/DCコンバータ58が供給する電流量が、指示されたI1+Ir-Ith以上となるまで続けられる。以下、この制御により、充電器10が電子機器20に対して供給する充電電流量は、指示されたI1+Ir-Ithに近い状態に維持される。
【0064】
本実施の形態のこの例によると、充電量が十分である間は、いわゆる急速充電用の大電流により充電が行われるのではなく、アプリケーションプログラム等で要求される分の電流量だけで充電が継続され、充電量の減少を防止する程度に維持する。このことで、電子機器20の備える二次電池への負荷を軽減できる。
【0065】
[通信方法の別の例]
なお、本実施の形態のここまでの説明では、充電を行わない状態となったときに、電力供給部15と電力受入部26との間で、信号が授受されない状態となることから(例えば通常のUSBの場合、規格上、信号が授受されなくなる)、通信部13と、通信部25との間の別の経路で充電電流量に係る指示を含む信号が授受されていたが、本実施の形態はこれに限られない。
【0066】
例えばUSBの規格のうち、ACA(Accessory Charging Adapter)の規格に従って回路を構成することで、充電を行わない状態となっている間も信号の授受が可能であるため、充電電流量に係る指示を含む信号が、充電ケーブルであるUSB等のケーブルを経由して送信されてもよい。
【0067】
[電流量指示の補正]
さらに本実施の形態の上述の例に従って実際に回路を組んだ場合には、電力受入部26の特性により、電力受入部26に供給される電流量よりも、電源部27に供給される電流量が小さくなる場合がある。この場合には、充電器10の制御部12は、電子機器20から指示された充電電流量Idに対し、予め定めた電流量Δiだけ大きい電流量の値を供給するよう、充電制御部14を制御してもよい。なお、ここでは加算する電流量を定めたが、本実施の形態はこれに限られず、上昇させる割合α(α>1)を定めて、電子機器20から指示された充電電流量がIdであるときには、α・Idの電流量を供給するよう、制御部12が充電制御部14を制御してもよい。
【0068】
また、このように充電器10が処理する代わりに、電子機器20が要求しようとする充電電流量Idに対して、予め定めた電流量Δiだけ大きい電流量の値を指定する指示を、充電器10に対して送出してもよい。さらにこの例の場合も、加算する電流量を定める代わりに、上昇させる割合α(α>1)を定めて、要求しようとする充電電流量がIdであるときには、電子機器20は、α・Idの電流量を供給するべき旨の指示を、充電器10に対して送出してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 充電システム、10 充電器、11 電源部、12 制御部、13 通信部、14 充電制御部、15 電力供給部、20 電子機器、21 制御部、22 記憶部、23 操作部、24 表示部、25 通信部、26 電力受入部、27 電源部、31 設定部、32 条件判定部、33 電流量決定部、34 信号送出部、51 スイッチ、52 スイッチ、55 目標値メモリ、56 電流センサ、57 コンパレータ、58 DC/DCコンバータ。