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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】シートフレームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20220209BHJP
   B60N 2/16 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/16
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017075016
(22)【出願日】2017-04-05
(65)【公開番号】P2018176837
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2019-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 秀和
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-538784(JP,A)
【文献】特開2017-030485(JP,A)
【文献】特開2009-196492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 ー B60N 2/90
A47C 7/00 - A47C 7/74
A47C 1/02 - A47C 1/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のチューブと、
前記チューブの軸線方向端部側に設けられた第1フレームであって、前記チューブが当該軸線を中心として回転可能な状態で貫通した貫通穴と、前記貫通穴の形成時の塑性加工によって成形された円筒状の筒部とを有する第1フレームと、
前記チューブに固定された第2フレームであって、前記第1フレームから前記軸線の方向にずれた位置に設けられた第2フレームと、
前記第1フレームと前記第2フレームとの間に位置するとともに、前記チューブが内部を貫通した円筒状のスペーサであって、前記軸線の方向全域に亘って厚みが一定であるスペーサとを備え、
前記筒部は、前記貫通穴のうち前記スペーサと反対側に設けられ、
前記貫通穴の外縁角部であって前記スペーサ側の外縁角部をスペーサ側角部とし、当該スペーサ側角部の曲率半径を角部半径としたとき、前記スペーサの厚み寸法は、前記角部半径より大きく、
前記チューブのうち前記第1フレームを挟んで前記スペーサと反対側には、他の部位に比べて外径寸法が大きい円錐状の拡管部が設けられている、シートフレームの製造方法であって、
前記チューブの軸線方向一端端を他端側に向けて押圧しながら当該チューブの軸線方向端部を塑性変形させる塑性加工により、前記チューブに前記拡管部を成形する工程を含む、シートフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、シートの骨格を構成するシートフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のシートフレームでは、円筒状のトルクチューブとブッシングとが内部スエージング加工等の冷間塑性加工によりサイドブラケットに結合されている。当該冷間塑性加工を実行する加工装置は、トルクチューブの内周面を径方向外側に加圧することにより、トルクチューブの軸線方向端部を末広がり状に塑性変形させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2009-538784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、カシメ加工に適したシートフレームを提供する。なお、左記「カシメ加工」とは、チューブの軸線方向一端端を他端側に向けて押圧しながらチューブの軸線方向端部を末広がり状に塑性変形させる塑性加工をいう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
円筒状のチューブ(14)と、チューブ(14)の軸線方向端部側に設けられた第1フレーム(11)であって、チューブ(14)が当該軸線を中心として回転可能に貫通した貫通穴(11B)を有する第1フレーム(11)と、第1フレーム(11)からずれた位置にてチューブ(14)に固定された第2フレーム(16)と、第1フレーム(11)と第2フレーム(16)との間に位置するとともに、チューブ(14)が内部を貫通した円筒状のスペーサ(20)とを備えるシートフレームにおいて、上記の「カシメ加工」を行うと、以下の問題が発生する可能性がある。
【0006】
すなわち、チューブ(14)の軸線方向一端端を他端側に向けて押圧する際の押圧力により、スペーサ(20)の軸線方向端部が貫通穴(11B)内に食い込むように入り込んでしまうおそれがある。
【0007】
スペーサ(20)の軸線方向端部が貫通穴(11B)内に食い込んでしまうと、チューブ(14)が第1フレーム(11)に対して相対的に回転することが阻害されるおそれがある。
【0008】
これに対して、本願では、スペーサ(20)の厚み寸法(Ts)は、角部半径(Rc)より大きい。角部半径(Rc)とは、スペーサ側角部(11D)の曲率半径をいう。スペーサ側角部(11D)とは、貫通穴(11B)の外縁角部であってスペーサ(20)側の外縁角部をいう。
【0009】
これにより、第1フレーム(11)のうちスペーサ側角部(11D)以外の部位で押圧力を受けることが可能な構成となる。したがって、「カシメ加工」時にスペーサ(20)の軸線方向端部が貫通穴(11B)内に食い込んでしまうことを抑制できる。
【0010】
上記「押圧力」とは、「カシメ加工」時にスペーサ(20)の軸線方向端部に作用する押圧力である。「スペーサ(20)の厚み寸法(Ts)」とは、スペーサ(20)の軸線方向端部のうち第1フレーム(11)側の端部における厚み寸法をいう。
【0011】
なお、チューブ(14)のうち第1フレーム(11)を挟んでスペーサ(20)と反対側には、当該「カシメ加工」により、他の部位に比べて外径寸法が大きい円錐状の拡管部(14A)が設けられる。
【0012】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るシートフレームの外観図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る連結チューブ及び第1サイドフレーム等の組付構造を示す図である。
図3図2のA部拡大図である。
図4】本発明の実施形態における課題を説明するための図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る連結チューブ及び第1サイドフレーム等の組付構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に説明する「発明の実施形態」は、本願発明の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものである。本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0016】
少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「1つの」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。
【0017】
(第1実施形態)
1.シートフレームの概要
本実施形態は、車両用シートに本発明に係るシートフレームを適用したものである。シートフレームは、乗物用シートの骨格を構成するフレームである。当該シートフレーム1は、図1に示すように、クッションフレーム10及びバックフレーム(図示せず。)等を有する。
【0018】
バックフレームはシートバック3の骨格を構成する。シートバック3は着席者の背部を支持するための部位である。クッションフレーム10は、シートクッション5の骨格を構成する。シートクッション5は着席者の臀部を支持するための部位である。
【0019】
2.クッションフレームの構成
クッションフレーム10は、図1に示すように、第1サイドフレーム11、第2サイドフレーム12及び一対の連結チューブ13、14等を少なくとも有している。第1サイドフレーム11は、シート幅方向一端側(本実施形態では、シート左側)に配設され、シート前後方向に延びる部材である。
【0020】
第2サイドフレーム12は、シート幅方向他端側(本実施形態では、シート右側)に配設され、シート前後方向に延びる部材である。一対の連結チューブ13、14は、シート幅方向に延びて第1サイドフレーム11と第2サイドフレーム12とを連結する。一対の連結チューブ13、14は円筒状の金属パイプである。
【0021】
連結チューブ13は、第1サイドフレーム11及び第2サイドフレーム12の延び方向一端側(本実施形態では、シート前方端側)を連結する。連結チューブ14は、第1サイドフレーム11及び第2サイドフレーム12の延び方向他端側(本実施形態では、シート後方端側)を連結する。
【0022】
第1サイドフレーム11及び第2サイドフレーム12それぞれは、リフタリンク15~18等を介して乗物側に支持される。各リフタリンク15~18は、クッションフレーム10を昇降させるリフト機構の一部を構成する部材である。
【0023】
第1サイドフレーム11側に配置されたリフタリンク15、16それぞれは、一端側が各連結チューブ13、14に連結され、他端側が乗物側に回転可能に連結される。第2サイドフレーム12側に配置されたリフタリンク17、18それぞれは、一端側が各連結チューブ13、14に連結され、他端側が乗物側に回転可能に連結される。
【0024】
シート前方側に設けられたリフタリンク15、17は、連結チューブ13に対して回転可能である。つまり、連結チューブ13は、リフタリンク15、17に設けられた貫通穴(図示せず。)を回転可能な状態で貫通している。
【0025】
シート後方側に設けたリフタリンク16、18は、連結チューブ14に固定されている(図2参照)。つまり、リフタリンク16、18は、連結チューブ14の中心軸線を中心として、当該連結チューブ14と一体的に回転(揺動)する。
【0026】
なお、連結チューブ14は、電動モータ等の駆動装置(図示せず。)から駆動力を受けて回転する。そして、連結チューブ14の回転に連動してリフタリンク16、18が揺動するため、クッションフレーム10が昇降変位する。
【0027】
つまり、リフタリンク16、18は、クッションフレーム10を昇降変位させる駆動リンクとして機能する。リフタリンク15、17は、クッションフレーム10の昇降変位に連動して揺動する従動リンクとして機能する。
【0028】
3.連結チューブ及び第1サイドフレーム等の組付構造
リフタリンク16と連結チューブ14と組付構造は、リフタリンク18と連結チューブ14と組付構造に対して左右対称構造である。以下、リフタリンク16と連結チューブ14と組付構造を例に当該組付構造を説明する。
【0029】
図2に示すように、連結チューブ14は、その軸線方向がシート幅方向に略一致するように配設されている。第1サイドフレーム11は、軸線方向と略直交する方向に延びるように拡がる面11Aを有している。
【0030】
つまり、第1サイドフレーム11は、連結チューブ14の軸線方向一端部側(本実施形態では、左端側)に設けられた第1フレームの一例である。第1サイドフレーム11には貫通穴11Bが設けられている。貫通穴11Bには、連結チューブ14が軸線Loを中心として回転可能な状態で貫通している。なお、軸線Loは、連結チューブ14の中心軸線と一致する。
【0031】
なお、貫通穴11Bの内周面には、連結チューブ14の外周面と滑り接触するブッシュ11Cが設けられている。つまり、貫通穴11Bの内周面と連結チューブ14の外周面とは、ブッシュ11Cを介して間接的に滑り接触する。
【0032】
リフタリンク16は、第1サイドフレーム11に対して軸線方向他端側(本実施形態では、右端側)ずれた位置に設けられた第2フレームの一例である。リフタリンク16は、連結チューブ14に固定されている。
【0033】
具体的には、リフタリンク16には貫通穴16Aが設けられている。貫通穴16Aには、連結チューブ14が貫通している。連結チューブ14は、貫通穴16Aを貫通した状態でリフタリンク16に溶接固定されている。このため、連結チューブ14が第1サイドフレーム11に対して回転すると、当該回転に連動してリフタリンク16が揺動する。
【0034】
第1サイドフレーム11とリフタリンク16との間にはスペーサ20が設けられている。スペーサ20は、連結チューブ14が内部を貫通した円筒状の部材である。当該スペーサ20は、その軸線方向端部が第1サイドフレーム11及びリフタリンク16と直接的に又は間接的に接触する。
【0035】
これにより、第1サイドフレーム11とリフタリンク16との距離を所定寸法に保持される。なお、本実施形態では、第1サイドフレーム11は、ブッシュ11Cを介して間接的にスペーサ20に接触する。リフタリンク16は、他の部材を介すことなく直接的にリフタリンク16と接触する。
【0036】
図3に示すように、貫通穴11Bの外縁角部であってスペーサ20側の外縁角部をスペーサ側角部11Dとし、当該スペーサ側角部11Dの曲率半径を角部半径Rcとしたとき、スペーサ20の厚み寸法Tsは、角部半径Rcより大きくなる構成されている。「スペーサ20の厚み寸法Ts」とは、スペーサ20の軸線方向端部のうち第2サイドフレーム11側の端部における厚み寸法をいう。
【0037】
なお、本実施形態では、貫通穴11Bのうちスペーサ20と反対側に円筒状の筒部11Eが設けられている。筒部11Eは、連結チューブ14を回転支持するための軸受部を構成する部位である。
【0038】
本実施形態に係る筒部11Eは、貫通穴11Bの形成時に、バーリング加工等の塑性加工にて第1サイドフレーム11に一体成形された部位である。角部半径Rcは、当該塑性加工時に筒部11Eと共に成形される。
【0039】
連結チューブ14のうち第1サイドフレーム11を挟んでスペーサ20と反対側には拡管部14Aが形成されている。拡管部14Aは、他の部位に比べて外径寸法が大きい円錐状の部位である。
【0040】
拡管部14Aは、「カシメ加工」によって連結チューブ14に成形された部位である。当該「カシメ加工」は、円錐状の治具(図示せず。)により連結チューブ14の軸線方向一端端を他端側に向けて押圧しながら当該連結チューブ14の軸線方向端部を末広がり状に塑性変形させる塑性加工である。
【0041】
4.本実施形態に係るシートフレームの特徴
連結チューブ14の軸線方向一端端にカシメ加工を施して拡管部14Aを成形する際の押圧力により、スペーサ20の軸線方向端部が貫通穴11B内に食い込むように入り込んでしまうおそれがある(図4参照)。
【0042】
スペーサ20の軸線方向端部が貫通穴11B内に食い込んでしまうと、連結チューブ14が第1サイドフレーム11に対して相対的に回転することが阻害されるおそれがある。
これに対して、本実施形態では、スペーサ20の厚み寸法Tsが角部半径Rcより大きい(図3参照)。これにより、第1サイドフレーム11のうちスペーサ側角部11D以外の部位で押圧力を受けることが可能な構成となる。したがって、カシメ加工時にスペーサ20の軸線方向端部が貫通穴11B内に食い込んでしまうことを抑制できる。
【0043】
(第2実施形態)
第1実施形態に係るスペーサ20は、厚み寸法Tsがスペーサ20の軸線方向Lo全域に亘って一定であった。これに対して、本実施形態に係るスペーサ20は、図5に示すように、スペーサ20の軸線方向端部のうち第2サイドフレーム11側の端部とその他の部位とで厚み寸法が異なる。
【0044】
上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号を付したので、重複する説明は省略する。
なお、図5に示されたスペーサ20では、筒部20Aと鍔状のフランジ部20Bとは一体成形品である。しかし、本実施形態はこれに限定されるものでない。例えば、筒部20Aと鍔状のフランジ部20Bとが別部品であってもよい。
【0045】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、第1サイドフレーム11が第1フレームに相当し、リフタリンク16が第2フレームに相当していた。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
上述の実施形態では、貫通穴11Bの内周面と連結チューブ14の外周面とは、ブッシュ11Cを介して間接的に滑り接触していた。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、ブッシュ11Cが廃止され、貫通穴11Bの内周面と連結チューブ14の外周面とが直接的に滑り接触する構成であってよい。
【0047】
上述の実施形態では、貫通穴11Bのうちスペーサ20と反対側に筒部11Eが設けられていた。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、筒部11Eが廃止され、第1サイドフレーム11の板厚のみにて軸受部が構成されていてもよい。
【0048】
上述の実施形態では、車両用シートに本発明に係るシートフレームを適用した。しかし、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0049】
さらに、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1… シートフレーム 3… シートバック 5… シートクッション
10… クッションフレーム 11… 第1サイドフレーム
13、14… 連結チューブ 14A… 拡管部
15~18… リフタリンク 20… スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5