(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20220209BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20220209BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
B66C23/88 D
B66F9/24 H
B66F11/04
(21)【出願番号】P 2017227863
(22)【出願日】2017-11-28
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 菜々美
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-150696(JP,A)
【文献】特開2002-302396(JP,A)
【文献】特開平08-073183(JP,A)
【文献】国際公開第92/020608(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/88
B66C 15/00
B66F 9/24
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームと、
前記ブームを操作する操作装置と、
前記ブームの姿勢を測定するブーム姿勢測定器と、
前記ブームの制限領域を設定する制限領域設定部と、を備え、
前記制限領域設定部は、
前記ブーム姿勢測定器の測定値から前記ブームの先端部または該先端部に設けられた先端構造物により指し示される指示座標を求め、
前記指示座標に基づいて前記制限領域と非制限領域との境界面を設定する
にあたり、予め定められた基準面に対して垂直であり2つの前記指示座標を含む平面を前記境界面として設定し、
前記基準面は、作業機械の前後方向に沿う鉛直面、または左右方向に沿う鉛直面である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
ブームと、
前記ブームを操作する操作装置と、
前記ブームの姿勢を測定するブーム姿勢測定器と、
前記ブームの制限領域を設定する制限領域設定部と、を備え、
前記制限領域設定部は、
前記ブーム姿勢測定器の測定値から前記ブームの先端部または該先端部に設けられた先端構造物により指し示される指示座標を求め、
前記指示座標に基づいて前記制限領域と非制限領域との境界面を設定するにあたり、前記指示座標を含む線
を出隅として接続する2つの平面を2つの前記境界面として設定する
ことを特徴とす
る作業機械。
【請求項3】
ブームと、
前記ブームを操作する操作装置と、
前記ブームの姿勢を測定するブーム姿勢測定器と、
前記ブームの制限領域を設定する制限領域設定部と、を備え、
前記制限領域設定部は、
前記ブーム姿勢測定器の測定値から前記ブームの先端部または該先端部に設けられた先端構造物により指し示される指示座標を求め、
前記指示座標に基づいて前記制限領域と非制限領域との境界面を設定するにあたり、前記指示座標を含む線を入隅または出隅として接続する2つの平面を2つの前記境界面として設定し、
2つの前記境界面は
、作業機械の前後方向に沿う鉛直面、左右方向に沿う鉛直面、および水平面のうちの2つの面である
ことを特徴とす
る作業機械。
【請求項4】
ブームと、
前記ブームを操作する操作装置と、
前記ブームの姿勢を測定するブーム姿勢測定器と、
前記ブームの制限領域を設定する制限領域設定部と、を備え、
前記制限領域設定部は、
前記ブーム姿勢測定器の測定値から前記ブームの先端部または該先端部に設けられた先端構造物により指し示される指示座標を求め、
前記指示座標に基づいて前記制限領域と非制限領域との境界面を設定するにあたり、前記指示座標で示される点を頂点として接続する3つ以上の平面を3つ以上の前記境界面として設定
し、
3つ以上の前記境界面がなす頂点の凸側は前記ブームの基端部に近づく方向に向けられている
ことを特徴とす
る作業機械。
【請求項5】
ブームと、
前記ブームを操作する操作装置と、
前記ブームの姿勢を測定するブーム姿勢測定器と、
前記ブームの制限領域を設定する制限領域設定部と、を備え、
前記制限領域設定部は、
前記ブーム姿勢測定器の測定値から前記ブームの先端部または該先端部に設けられた先端構造物により指し示される指示座標を求め、
前記指示座標に基づいて前記制限領域と非制限領域との境界面を設定するにあたり、前記指示座標で示される点を頂点として接続する3つの平面を3つの前記境界面として設定し、
3つの前記境界面は、作業機械の前後方向に沿う鉛直面、左右方向に沿う鉛直面、および水平面である
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。さらに詳しくは、クレーン、高所作業車などのブームを有する作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特に小型の移動式クレーンは、道路沿い、住宅街などで作業を行なうことがある。このような場合、ブームの作業範囲内に建物の壁などの障害物があることが多い。作業員はブームが障害物に接触しないように注意しながら操作を行なう必要がある。しかし、クレーン作業中は注意すべき事項が複数ある。それに加えて障害物に注意を払うことは作業員にとって負担が大きい。
【0003】
そこで、予めブームの制限領域を定めておき、ブームが制限領域に入らないように制御することが行われる。例えば、特許文献1にはタブレットに表示された入力画面で規制範囲を入力することが開示されている。しかし、タブレットによる入力の場合、実際の障害物の位置が分からず、障害物に対して規制範囲を適切に設定することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、制限領域を障害物に対して適切に設定できる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の作業機械は、ブームと、前記ブームを操作する操作装置と、前記ブームの姿勢を測定するブーム姿勢測定器と、前記ブームの制限領域を設定する制限領域設定部と、を備え、前記制限領域設定部は、前記ブーム姿勢測定器の測定値から前記ブームの先端部または該先端部に設けられた先端構造物により指し示される指示座標を求め、前記指示座標に基づいて前記制限領域と非制限領域との境界面を設定するにあたり、予め定められた基準面に対して垂直であり2つの前記指示座標を含む平面を前記境界面として設定し、前記基準面は、作業機械の前後方向に沿う鉛直面、または左右方向に沿う鉛直面であることを特徴とする。
第2発明の作業機械は、ブームと、前記ブームを操作する操作装置と、前記ブームの姿勢を測定するブーム姿勢測定器と、前記ブームの制限領域を設定する制限領域設定部と、を備え、前記制限領域設定部は、前記ブーム姿勢測定器の測定値から前記ブームの先端部または該先端部に設けられた先端構造物により指し示される指示座標を求め、前記指示座標に基づいて前記制限領域と非制限領域との境界面を設定するにあたり、前記指示座標を含む線を出隅として接続する2つの平面を2つの前記境界面として設定することを特徴とする。
第3発明の作業機械は、ブームと、前記ブームを操作する操作装置と、前記ブームの姿勢を測定するブーム姿勢測定器と、前記ブームの制限領域を設定する制限領域設定部と、を備え、前記制限領域設定部は、前記ブーム姿勢測定器の測定値から前記ブームの先端部または該先端部に設けられた先端構造物により指し示される指示座標を求め、前記指示座標に基づいて前記制限領域と非制限領域との境界面を設定するにあたり、前記指示座標を含む線を入隅または出隅として接続する2つの平面を2つの前記境界面として設定し、2つの前記境界面は、作業機械の前後方向に沿う鉛直面、左右方向に沿う鉛直面、および水平面のうちの2つの面であることを特徴とする。
第4発明の作業機械は、ブームと、前記ブームを操作する操作装置と、前記ブームの姿勢を測定するブーム姿勢測定器と、前記ブームの制限領域を設定する制限領域設定部と、を備え、前記制限領域設定部は、前記ブーム姿勢測定器の測定値から前記ブームの先端部または該先端部に設けられた先端構造物により指し示される指示座標を求め、前記指示座標に基づいて前記制限領域と非制限領域との境界面を設定するにあたり、前記指示座標で示される点を頂点として接続する3つ以上の平面を3つ以上の前記境界面として設定し、3つ以上の前記境界面がなす頂点の凸側は前記ブームの基端部に近づく方向に向けられていることを特徴とする。
第5発明の作業機械は、ブームと、前記ブームを操作する操作装置と、前記ブームの姿勢を測定するブーム姿勢測定器と、前記ブームの制限領域を設定する制限領域設定部と、を備え、前記制限領域設定部は、前記ブーム姿勢測定器の測定値から前記ブームの先端部または該先端部に設けられた先端構造物により指し示される指示座標を求め、前記指示座標に基づいて前記制限領域と非制限領域との境界面を設定するにあたり、前記指示座標で示される点を頂点として接続する3つの平面を3つの前記境界面として設定し、3つの前記境界面は、作業機械の前後方向に沿う鉛直面、左右方向に沿う鉛直面、および水平面であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、ブームの先端部で実際の障害物の位置を示しつつ境界面を設定することで、制限領域を障害物に対して適切に設定できる。また、作業機械に対して任意の角度で傾斜する境界面を設定できる。さらに、作業機械の姿勢を基準として境界面を設定できるので、作業員にとって境界面の位置が把握しやすい。
第2発明によれば、ブームの先端部で指し示すことで、2つの境界面を同時に設定できるため、設定作業を省力化できる。
第3発明によれば、作業機械の姿勢を基準として境界面を設定できるので、作業員にとって境界面の位置が把握しやすい。
第4発明によれば、ブームの先端部で指し示すことで、3つ以上の境界面を同時に設定できるため、設定作業を省力化できる。
第5発明によれば、ブームの先端部で指し示すことで、3つ境界面を同時に設定できるため、設定作業を省力化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る移動式クレーンの側面図である。
【
図2】移動式クレーンの制御系のブロック図である。
【
図4】制限領域設定の処理を示すフローチャートである。
【
図5】動作制限の処理を示すフローチャートである。
【
図6】パターン1の境界面の例を示す平面図である。
【
図7】パターン1の境界面の例を示す背面図である。
【
図8】パターン2の境界面の例を示す平面図である。
【
図9】パターン2の境界面の例を示す側面図である。
【
図10】パターン2の境界面の例を示す背面図である。
【
図11】パターン3の境界面の例を示す平面図である。
【
図12】パターン3の境界面の例を示す側面図である。
【
図13】パターン3の境界面の例を示す背面図である。
【
図14】パターン4の境界面の例を示す平面図である。
【
図15】パターン4の境界面の例を示す側面図である。
【
図16】パターン4の境界面の例を示す背面図である。
【
図17】パターン5の境界面の例を示す斜視図である。
【
図18】パターン5の境界面の他の例を示す斜視図である。
【
図19】パターン6の境界面の例を示す斜視図である。
【
図20】パターン6の境界面の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(移動式クレーン)
まず、本発明の一実施形態に係る移動式クレーン1を説明する。
移動式クレーン1は作業機械の一種である。移動式クレーン1としてはオールテレーンクレーン、ラフテレーンクレーン、トラッククレーン、積載型トラッククレーンなどが挙げられる。以下、積載型トラッククレーンの場合を例に説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の移動式クレーン1は積載型トラッククレーンと称されるタイプのものである。移動式クレーン1は汎用トラック10の運転室11と荷台12との間の車両フレーム13に小型クレーン20が搭載されたものである。
【0011】
小型クレーン20は、車両フレーム13上に固定されたベース21と、ベース21に対して旋回可能に設けられたポスト22と、ポスト22の上端部に起伏可能に設けられたブーム23とを備えている。
【0012】
ポスト22にはウインチが内蔵されている。このウインチからワイヤロープをブーム23の先端部23aに導いて、ブーム先端部23aの滑車を介してフック24に掛け回すことにより、フック24をブーム先端部23aから吊り下げている。ブーム23の伸縮、起伏、旋回と、フック24の巻上げ、巻下げとを組み合わせることで、フック24に吊り下げられた吊荷を立体空間内で移動できる。
【0013】
小型クレーン20はアウトリガ装置25を備えている。アウトリガ装置25はベース21の左右両側に設けられた一対のジャッキシリンダ25aを有する。クレーン作業開始前にジャッキシリンダ25aを車両の側方に張り出し、ジャッキシリンダ25aを伸長させてロッド先端部に設けられたフロートを接地させる。そうすると、アウトリガ装置25によりクレーン作業中の移動式クレーン1の安定が確保される。
【0014】
小型クレーン20は駆動部として油圧回路を有している。小型クレーン20は油圧回路により油圧駆動される。この油圧回路を操作するためのレバー群26がベース21の左右両側に設けられている。作業員はレバー群26を用いて小型クレーン20を操作できる。
【0015】
油圧回路を電気的に制御する制御装置27がレバー群26の近くに設けられている。制御装置27は遠隔操作端末30と双方向に無線通信または有線通信可能となっている。遠隔操作端末30には各種のスイッチ、レバーなどの入力部と、液晶パネルなどの表示器が搭載されている。作業員が遠隔操作端末30の入力部を操作すると、遠隔操作端末30は制御装置27に操作信号を発する。制御装置27はその操作信号に基づいて油圧回路を制御して小型クレーン20を動作させる。このようにして、作業員は遠隔操作端末30を用いて小型クレーン20を遠隔操作できる。
【0016】
なお、レバー群26および遠隔操作端末30は、それぞれ特許請求の範囲に記載の「操作装置」に相当する。操作装置はブーム23を操作できるものであればよく、その構成は特に限定されない。
【0017】
(制限領域)
移動式クレーン1はブーム23を伸縮、起伏、旋回させることができる。このようなブーム23の動作によりブーム23が掃引する立体空間内での領域を「作業範囲」と称する。
【0018】
移動式クレーン1は、道路沿い、住宅街などで作業を行なうことがある。このような場合、ブーム23の作業範囲内に障害物が存在することがある。そこで、障害物が存在する領域に制限領域を設定し、ブーム23が制限領域に侵入しないようにブーム23の動作を制限することが行われる。「制限領域」とはブーム23の動作を制限する立体空間内での領域である。ここで、「制限」とはブーム23の動作を停止させたり、動作速度を遅くするなどの制御のほか、作業員にブーム23の操作への注意を促すことを含む概念である。
【0019】
本実施形態の移動式クレーン1は制限領域を設定する機能と、ブーム23が制限領域に侵入しないようにブーム23の動作を制限する機能とを有する。
【0020】
(構成)
つぎに、制限領域設定機能および動作制限機能を実現する構成を説明する。
図2に示すように、移動式クレーン1はブーム姿勢測定器41を備えている。ブーム姿勢測定器41はブーム23の姿勢を測定する。本実施形態の場合、ブーム23の姿勢はブーム23の長さ、起伏角、旋回角によって表される。ブーム姿勢測定器41はこれらの各パラメータを測定する複数の測定器からなる。すなわち、ブーム姿勢測定器41は長さ測定器、起伏角測定器、旋回角測定器からなる。
【0021】
長さ測定器はブーム23の長さを測定する。長さ測定器の構成は特に限定されないが、ブーム先端部23aにコードの端部が固定されたコードリールの回転角をポテンショメータで読み取る構成が挙げられる。
【0022】
起伏角測定器はブーム23の起伏角を測定する。起伏角測定器の構成は特に限定されないが、ポテンショメータに振り子を取り付けた振子式の角度測定器をブーム23に設ける構成が挙げられる。
【0023】
旋回角測定器はブーム23の旋回角を測定する。旋回角測定器の構成は特に限定されないが、ポスト22を旋回させる油圧モータの回転角をポテンショメータで読み取る構成が挙げられる。
【0024】
移動式クレーン1は入力装置42を備えている。入力装置42は制限領域の設定のために用いられるスイッチなどである。入力装置42は特に限定されないが、遠隔操作端末30に搭載された入力部などが用いられる。
【0025】
ブーム姿勢測定器41の測定値、および入力装置42からの入力信号は制御装置27に入力されている。制御装置27はCPU、メモリなどで構成されたコンピュータで構成されている。コンピュータがプログラムを実行することで、制限領域設定部51、領域判定部52、および動作制限部53が実現される。また、制御装置27は記憶部54を有している。
【0026】
制限領域設定部51はブーム23の制限領域を設定する機能を有する。制限領域設定部51で設定された制限領域は記憶部54に記憶される。領域判定部52はブーム23が制限領域に侵入しているか否かを判断する。領域判定部52によりブーム23が制限領域に侵入していると判断された場合、動作制限部53が動作する。動作制限部53はブーム23がさらに制限領域に侵入しないように、小型クレーン20の駆動部を制御して、ブーム23の動作を制限する。
【0027】
なお、制限領域設定部51、領域判定部52、動作制限部53、および記憶部54の一部または全部は、小型クレーン20を制御する制御装置27とは別の制御装置に搭載されてもよい。
【0028】
制御装置27には表示器61、および警報器62が接続されている。表示器61は特に限定されないが、遠隔操作端末30に搭載された液晶パネル、制御装置27に搭載された液晶パネルなどが用いられる。警報器62は作業員に警報を発することができるものであれば特に限定されず、音声で警報を発するスピーカ、光で警報を発するランプなどが用いられる。
【0029】
(制限領域設定)
つぎに、制限領域の設定を説明する。
制限領域の設定は、移動式クレーン1を作業現場まで移動させた後、クレーン作業の前に行なう。
【0030】
図3に示す最も基本的な制限領域LAを設定する場合を例に説明する。
まず、作業員は遠隔操作端末30などの操作装置を用いてブーム23を動作させる。そして、障害物など制限領域LAを設定すべき領域の近傍にブーム先端部23aを配置する。つぎに、作業員は入力装置42により設定操作を行なう。そうすると、制限領域設定部51は所定領域を制限領域LAとして設定する。
【0031】
制限領域LAを除く立体空間内での領域を非制限領域NAと称する。また、制限領域LAと非制限領域NAとの間の面を境界面BSと称する。制限領域LAは境界面BSを境としてブーム23の基端部を含まない方の領域である。非制限領域NAは境界面BSを境としてブーム23の基端部を含む方の領域である。
【0032】
ブーム先端部23aの立体空間内での位置座標を先端座標TPと称する。先端座標TPはブーム23の長さ、起伏角、および旋回角から求まる。なお、座標系の原点Oは特に限定されないが、ブーム23の旋回中心に設定すればよい。
【0033】
先端座標TPの近傍には指示座標IPが設定される。指示座標IPはブーム先端部23aにより指し示される座標を意味する。
図3に示す例において、指示座標IPは先端座標TPの右側方の、先端座標TPから距離Dの位置に設定される。なお、指示座標IPを先端座標TPと同一としてもよい。
【0034】
移動式クレーン1の姿勢に基づいて基準面RPが予め設定されている。
図3に示す例では、移動式クレーン1の前後方向に沿う鉛直面が基準面RPとして設定されている。この基準面RPと平行であり指示座標IPを含む平面が境界面BSとして設定される。
【0035】
つぎに、制限領域設定の処理を
図4に示すフローチャートに基づき説明する。
まず、作業員は遠隔操作端末30などの操作装置を用いてブーム23を動作させる。そして、障害物など制限領域LAを設定すべき領域の近傍にブーム先端部23aを配置する(ステップS101)。
【0036】
つぎに、作業員は入力装置42により設定操作を行なう(ステップS102)。そうすると、制限領域設定部51はブーム姿勢測定器41の測定値から先端座標TP(XT,YT,ZT)を求める(ステップS103)。つぎに、制限領域設定部51は先端座標TPを所定方向に所定距離だけずらした指示座標IP(XI,YI,ZI)を求める(ステップS104)。
【0037】
なお、指示座標IP(XI,YI,ZI)は先端座標TP(XT,YT,ZT)の各成分に所定値を加算して(XT+xD,YT+yD,ZT+zD)と表すことができる。指示座標IPを先端座標TPと同一とする場合には、xD、yD、zDをいずれも0とすればよい。
【0038】
つぎに、制限領域設定部51は指示座標IPに基づいて境界面BSを設定する(ステップS105)。
図3に示す例では、基準面RPと平行であり指示座標IPを含む平面を境界面BSとして設定する。設定された境界面BSの位置情報または境界面BSにより画定された制限領域LAの位置情報は記憶部54に記憶される。
【0039】
以上のように、ブーム先端部23aで実際の障害物の位置を示しつつ境界面BSを設定するので、制限領域LAを障害物に対して適切に設定できる。
【0040】
(動作制限)
つぎに、ブーム23の動作制限を説明する。
ブーム23の動作制限は、制限領域LAを設定した後のクレーン作業において行なう。
【0041】
図5に示すように、作業員はクレーン作業の間、ブーム23を動作させて、種々の作業を行なう(ステップS201)。この間、領域判定部52はブーム23が制限領域LAに侵入しているか否かを判定する(ステップS202)。ここで、領域判定部52はブーム姿勢測定器41の測定値に基づいてブーム23の姿勢を特定する。また、領域判定部52は記憶部54から制限領域LAの位置情報を取得する。そして、領域判定部52はブーム23の姿勢と制限領域LAの位置情報とから、ブーム23の一部または全部が制限領域LAに侵入しているか否かを判断する。
【0042】
ブーム23が制限領域LAに侵入している場合(ステップS203でYes)、動作制限部53はブーム23がさらに制限領域LAに侵入しないように、その動作を制御する(ステップS204)。具体的には、ブーム23が制限領域LAに侵入する方向の動作を禁止し、制限領域LAから離れる方向の動作を許容する。これに代えて、ブーム23が制限領域LAに侵入している間、ブーム23の動作速度を遅くするよう制御してもよい。
【0043】
また、ブーム23が制限領域LAに侵入している間、警報器62を動作させる(ステップS205)。これにより、作業員にブーム23が制限領域LAに侵入している旨を通知する。
【0044】
ブーム23が障害物に接近した場合、ブーム23の動作が停止したり、警報器62が動作したりする。そのため、作業員の障害物に対する注意負担を軽減できる。
【0045】
ブーム23が制限領域LAに侵入していない場合(ステップS203でNo)、動作制限部53および警報器62は動作しない。
【0046】
なお、動作制限部53および警報器62の両方を動作させるのに代えて、いずれか一方を動作させてもよい。警報器62のみを動作させる場合には、ブーム23が制限領域LAに侵入したとしてもブーム23を動作させることが可能である。作業員は実際の障害物を目視し、ブーム23が障害物に接触しないように注意しながら、クレーン作業を継続できる。
【0047】
(境界面のパターン)
本実施形態の移動式クレーン1は、制限領域LAと非制限領域NAとの境界面BSを、
図3に示す例の他、種々のパターンで設定できる。
【0048】
・パターン1
図6および
図7にパターン1の境界面BSの例を示す。パターン1は予め定められた基準面RPと平行であり指示座標IPを含む平面を境界面BSとするパターンである。パターン1は移動式クレーン1の右側方、左側方、前方、後方、上方、下方のいずれかに障害物が存在する場合に、好適に用いられる。
【0049】
なお、以下では移動式クレーン1の汎用トラック10を基準として、前後、左右、上下を定める。
【0050】
図6に示すように、移動式クレーン1の前後方向に沿う鉛直面を第1基準面RP1とする。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右側方に配置し、指示座標IP1を設定したとする。この場合、第1基準面RP1と平行であり指示座標IP1を含む平面が境界面BS1として設定される。境界面BS1は移動式クレーン1の右側方に位置し、移動式クレーン1の前後方向に沿う鉛直面である。
【0051】
ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左側方に配置し、指示座標IP2を設定したとする。この場合、第1基準面RP1と平行であり指示座標IP2を含む平面が境界面BS2として設定される。境界面BS2は移動式クレーン1の左側方に位置し、移動式クレーン1の前後方向に沿う鉛直面である。
【0052】
移動式クレーン1の左右方向に沿う鉛直面を第2基準面RP2とする。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の前方に配置し、指示座標IP3を設定したとする。この場合、第2基準面RP2と平行であり指示座標IP3を含む平面が境界面BS3として設定される。境界面BS3は移動式クレーン1の前方に位置し、移動式クレーン1の左右方向に沿う鉛直面である。
【0053】
ブーム先端部23aを移動式クレーン1の後方に配置し、指示座標IP4を設定したとする。この場合、第2基準面RP2と平行であり指示座標IP4を含む平面が境界面BS4として設定される。境界面BS4は移動式クレーン1の後方に位置し、移動式クレーン1の左右方向に沿う鉛直面である。
【0054】
図7に示すように、水平面を第3基準面RP3とする。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の上方に配置し、指示座標IP5を設定したとする。この場合、第3基準面RP3と平行であり指示座標IP5を含む平面が境界面BS5として設定される。境界面BS5は移動式クレーン1の上方に位置する水平面である。
【0055】
ブーム先端部23aを移動式クレーン1の下方に配置し、指示座標IP6を設定したとする。この場合、第3基準面RP3と平行であり指示座標IP6を含む平面が境界面BS6として設定される。境界面BS6は移動式クレーン1の下方に位置する水平面である。
【0056】
パターン1の場合、前述の制限領域設定処理におけるステップS105において、制限領域設定部51は基準面RPと平行であり指示座標IPを含む平面を境界面BSとして設定する。そのため、作業員はブーム23を動作させて、ブーム先端部23aで障害物などの位置を指し示すことで1つの境界面BSを設定できる。
【0057】
・パターン2
図8、
図9、および
図10にパターン2の境界面BSの例を示す。パターン2は予め定められた基準面RPに対して垂直であり2つの指示座標IPを含む平面を境界面BSとするパターンである。パターン2は移動式クレーン1に対して斜めに障害物が存在する場合に、好適に用いられる。
【0058】
図8に示すように、ブーム先端部23aを特定の位置に配置し、指示座標IP7を設定したとする。つぎに、ブーム先端部23aを移動させ、平面視において指示座標IP7とは異なる位置に指示座標IP8を設定したとする。この場合、第3基準面RP3(
図7参照)に対して垂直であり2つの指示座標IP7、IP8を含む平面が境界面BS7として設定される。境界面BS7は鉛直面である。また、境界面BS7は移動式クレーン1の前後方向および左右方向に対して傾斜した平面とすることができる。
【0059】
図9に示すように、ブーム先端部23aを特定の位置に配置し、指示座標IP9を設定したとする。つぎに、ブーム先端部23aを移動させ、側面視において指示座標IP9とは異なる位置に指示座標IP10を設定したとする。この場合、第1基準面RP1(
図6参照)に対して垂直であり2つの指示座標IP9、IP10を含む平面が境界面BS9として設定される。境界面BS9は移動式クレーン1の前後方向に傾斜する平面とすることができる。
【0060】
図10に示すように、ブーム先端部23aを特定の位置に配置し、指示座標IP11を設定したとする。つぎに、ブーム先端部23aを移動させ、正面視または背面視において指示座標IP11とは異なる位置に指示座標IP12を設定したとする。この場合、第2基準面RP2(
図6参照)に対して垂直であり2つの指示座標IP11、IP12を含む平面が境界面BS11として設定される。境界面BS11は移動式クレーン1の左右方向に傾斜する平面とすることができる。
【0061】
パターン2の場合、前述の制限領域設定処理におけるステップS105において、制限領域設定部51は基準面RPに対して垂直であり2つの指示座標IPを含む平面を境界面BSとして設定する。そのため、移動式クレーン1に対して任意の角度で傾斜する境界面BSを設定できる。
【0062】
・パターン3
図11、
図12、および
図13にパターン3の境界面BSの例を示す。パターン3は指示座標IPを含む線を入隅として接続する2つの平面を2つの境界面BSとするパターンである。パターン3は建物の壁の入隅などの近くに移動式クレーン1が設置される場合に、好適に用いられる。
【0063】
図11に示すように、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右前方に配置し、指示座標IP13を設定したとする。この場合、指示座標IP13を含む鉛直線を入隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS13a、BS13bとして設定される。
【0064】
同様に、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左前方に配置し指示座標IP14を設定すると、指示座標IP14を含む鉛直線を入隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS14a、BS14bとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右後方に配置し指示座標IP15を設定すると、指示座標IP15を含む鉛直線を入隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS15a、BS15bとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左後方に配置し指示座標IP16を設定すると、指示座標IP16を含む鉛直線を入隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS16a、BS16bとして設定される。
【0065】
なお、境界面BS13a~BS16aは第1基準面RP1と平行な鉛直面である。境界面BS13b~BS16bは第2基準面RP2と平行な鉛直面である。
【0066】
図12に示すように、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の前上方に配置し、指示座標IP17を設定したとする。この場合、指示座標IP17を含む左右方向の水平線を入隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS17b、BS17cとして設定される。
【0067】
同様に、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の前下方に配置し指示座標IP18を設定すると、指示座標IP18を含む左右方向の水平線を入隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS18b、BS18cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の後上方に配置し指示座標IP19を設定すると、指示座標IP19を含む左右方向の水平線を入隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS19b、BS19cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の後下方に配置し指示座標IP20を設定すると、指示座標IP20を含む左右方向の水平線を入隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS20b、BS20cとして設定される。
【0068】
なお、境界面BS17b~BS20bは第2基準面RP2と平行な鉛直面である。境界面BS17c~BS20cは第3基準面RP3と平行な水平面である。
【0069】
図13に示すように、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右上方に配置し、指示座標IP21を設定したとする。この場合、指示座標IP21を含む前後方向の水平線を入隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS21a、BS21cとして設定される。
【0070】
同様に、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左上方に配置し指示座標IP22を設定すると、指示座標IP22を含む前後方向の水平線を入隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS22a、BS22cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右下方に配置し指示座標IP23を設定すると、指示座標IP23を含む前後方向の水平線を入隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS23a、BS23cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左下方に配置し、指示座標IP24を設定すると、指示座標IP24を含む前後方向の水平線を入隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS24a、BS24cとして設定される。
【0071】
なお、境界面BS21a~BS24aは第1基準面RP1と平行な鉛直面である。境界面BS21c~BS21cは第3基準面RP3と平行な水平面である。
【0072】
パターン3の場合、前述の制限領域設定処理におけるステップS105において、制限領域設定部51は指示座標IPを含む線を入隅として接続する2つの平面を2つの境界面BSとして設定する。ブーム先端部23aで指し示すことで、2つの境界面BSを同時に設定できるため、設定作業を省力化できる。
【0073】
・パターン4
図14、
図15、および
図16にパターン4の境界面BSの例を示す。パターン4は指示座標IPを含む線を出隅として接続する2つの平面を2つの境界面BSとするパターンである。パターン4は建物の壁の出隅などの近くに移動式クレーン1が設置される場合に、好適に用いられる。
【0074】
図14に示すように、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右前方に配置し、指示座標IP25を設定したとする。この場合、指示座標IP25を含む鉛直線を出隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS25a、BS25bとして設定される。
【0075】
同様に、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左前方に配置し指示座標IP26を設定すると、指示座標IP26を含む鉛直線を出隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS26a、BS26bとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右後方に配置し指示座標IP27を設定すると、指示座標IP27を含む鉛直線を出隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS27a、BS27bとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左後方に配置し指示座標IP28を設定すると、指示座標IP28を含む鉛直線を出隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS28a、BS28bとして設定される。
【0076】
なお、境界面BS25a~BS28aは第1基準面RP1と平行な鉛直面である。境界面BS25b~BS28bは第2基準面RP2と平行な鉛直面である。
【0077】
図15に示すように、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の前上方に配置し、指示座標IP29を設定したとする。この場合、指示座標IP29を含む左右方向の水平線を出隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS29b、BS29cとして設定される。
【0078】
同様に、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の前下方に配置し指示座標IP30を設定すると、指示座標IP30を含む左右方向の水平線を出隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS30b、BS30cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の後上方に配置し指示座標IP31を設定すると、指示座標IP31を含む左右方向の水平線を出隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS31b、BS31cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の後下方に配置し指示座標IP32を設定すると、指示座標IP32を含む左右方向の水平線を出隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS32b、BS32cとして設定される。
【0079】
なお、境界面BS29b~BS32bは第2基準面RP2と平行な鉛直面である。境界面BS29c~BS32cは第3基準面RP3と平行な水平面である。
【0080】
図16に示すように、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右上方に配置し、指示座標IP33を設定したとする。この場合、指示座標IP33を含む前後方向の水平線を出隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS33a、BS33cとして設定される。
【0081】
同様に、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左上方に配置し指示座標IP34を設定すると、指示座標IP34を含む前後方向の水平線を出隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS34a、BS34cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右下方に配置し指示座標IP35を設定すると、指示座標IP35を含む前後方向の水平線を出隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS35a、BS35cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左下方に配置し指示座標IP36を設定すると、指示座標IP36を含む前後方向の水平線を出隅として接続する2つの平面が2つの境界面BS36a、BS36cとして設定される。
【0082】
なお、境界面BS33a~BS36aは第1基準面RP1と平行な鉛直面である。境界面BS33c~BS36cは第3基準面RP3と平行な水平面である。
【0083】
パターン4の場合、前述の制限領域設定処理におけるステップS105において、制限領域設定部51は指示座標IPを含む線を出隅として接続する2つの平面を2つの境界面BSとして設定する。ブーム先端部23aで指し示すことで、2つの境界面BSを同時に設定できるため、設定作業を省力化できる。
【0084】
・パターン5
図17、および
図18にパターン5の境界面BSの例を示す。パターン5は指示座標IPで示される点を頂点として接続する3つの平面を3つの境界面BSとするパターンである。指示座標IPで示される頂点の凸側はブーム23の基端部から離れる方向に向けられている。パターン5は建物の壁の角部などの近くに移動式クレーン1が設置される場合に、好適に用いられる。
【0085】
図17に示すように、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右前上方に配置し、指示座標IP37を設定したとする。この場合、指示座標IP37で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS37a、BS37b、BS37cとして設定される。3つの境界面BS37a、BS37b、BS37cがなす頂点IP37の凸側はブーム23の基端部から離れる方向に向けられている。
【0086】
同様に、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左前上方に配置し指示座標IP38を設定すると、指示座標IP38で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS38a、BS38b、BS38cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右後上方に配置し指示座標IP39を設定すると、指示座標IP39で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS39a、BS39b、BS39cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左後上方に配置し指示座標IP40を設定すると、指示座標IP40で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS40a、BS40b、BS40cとして設定される。
【0087】
なお、境界面BS37a~BS40aは第1基準面RP1と平行な鉛直面である。境界面BS37b~BS40bは第2基準面RP2と平行な鉛直面である。境界面BS37c~BS40cは第3基準面RP3と平行な水平面である。
【0088】
図18に示すように、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右前下方に配置し、指示座標IP41を設定したとする。この場合、指示座標IP41で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS41a、BS41b、BS41cとして設定される。3つの境界面BS41a、BS41b、BS41cがなす頂点IP41の凸側はブーム23の基端部から離れる方向に向けられている。
【0089】
同様に、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左前下方に配置し指示座標IP42を設定すると、指示座標IP42で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS42a、BS42b、BS42cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右後下方に配置し指示座標IP43を設定すると、指示座標IP43で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS43a、BS43b、BS43cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左後下方に配置し指示座標IP44を設定すると、指示座標IP44で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS44a、BS44b、BS44cとして設定される。
【0090】
なお、境界面BS41a~BS44aは第1基準面RP1と平行な鉛直面である。境界面BS41b~BS44bは第2基準面RP2と平行な鉛直面である。境界面BS41c~BS44cは第3基準面RP3と平行な水平面である。
【0091】
パターン5の場合、前述の制限領域設定処理におけるステップS105において、制限領域設定部51は指示座標IPで示される点を頂点として接続する3つの平面を3つの境界面BSとして設定する。ブーム先端部23aで指し示すことで、3つの境界面BSを同時に設定できるため、設定作業を省力化できる。
【0092】
・パターン6
図19、および
図20にパターン6の境界面BSの例を示す。パターン6は指示座標IPで示される点を頂点として接続する3つの平面を3つの境界面BSとするパターンである。指示座標IPで示される頂点の凸側はブーム23の基端部に近づく方向に向けられている。パターン6は建物の壁の角部などの近くに移動式クレーン1が設置される場合に、好適に用いられる。
【0093】
図19に示すように、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右前上方に配置し、指示座標IP45を設定したとする。この場合、指示座標IP45で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS45a、BS45b、BS45cとして設定される。3つの境界面BS45a、BS45b、BS45cがなす頂点IP45の凸側はブーム23の基端部に近づく方向に向けられている。
【0094】
同様に、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左前上方に配置し指示座標IP46を設定すると、指示座標IP46で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS46a、BS46b、BS46cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右後上方に配置し指示座標IP47を設定すると、指示座標IP47で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS47a、BS47b、BS47cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左後上方に配置し指示座標IP48を設定すると、指示座標IP48で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS48a、BS48b、BS48cとして設定される。
【0095】
なお、境界面BS45a~BS48aは第1基準面RP1と平行な鉛直面である。境界面BS45b~BS48bは第2基準面RP2と平行な鉛直面である。境界面BS45c~BS48cは第3基準面RP3と平行な水平面である。
【0096】
図20に示すように、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右前下方に配置し、指示座標IP49を設定したとする。この場合、指示座標IP49で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS49a、BS49b、BS49cとして設定される。3つの境界面BS49a、BS49b、BS49cがなす頂点IP49の凸側はブーム23の基端部に近づく方向に向けられている。
【0097】
同様に、ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左前下方に配置し指示座標IP50を設定すると、指示座標IP50で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS50a、BS50b、BS50cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の右後下方に配置し指示座標IP51を設定すると、指示座標IP51で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS51a、BS51b、BS51cとして設定される。ブーム先端部23aを移動式クレーン1の左後下方に配置し指示座標IP52を設定すると、指示座標IP52で示される点を頂点として接続する3つの平面が3つの境界面BS52a、BS52b、BS52cとして設定される。
【0098】
なお、境界面BS49a~BS52aは第1基準面RP1と平行な鉛直面である。境界面BS49b~BS52bは第2基準面RP2と平行な鉛直面である。境界面BS49c~BS52cは第3基準面RP3と平行な水平面である。
【0099】
パターン6の場合、前述の制限領域設定処理におけるステップS105において、制限領域設定部51は指示座標IPで示される点を頂点として接続する3つの平面を3つの境界面BSとして設定する。ブーム先端部23aで指し示すことで、3つの境界面BSを同時に設定できるため、設定作業を省力化できる。
【0100】
上記のいずれのパターンにおいても、制限領域LAは境界面BSを境としてブーム23の基端部を含まない方の領域である。非制限領域NAは境界面BSを境としてブーム23の基端部を含む方の領域である。
【0101】
いずれのパターンを選択するかは作業員による入力装置42の選択操作により行われる。また、第1基準面RP1、第2基準面RP2、第3基準面RP3のいずれを基準とするかは、ブーム23の旋回角度、起伏角度から自動的に判断してもよいし、作業員による入力装置42の選択操作により切り換えてもよい。
【0102】
選択されているパターンおよび基準面RPは表示器61に表示すればよい。そうすれば、作業員がいずれのパターンおよび基準面RPが選択されているのか確認でき、制限領域LAの設定操作を行いやすい。
【0103】
移動式クレーン1の周囲の障害物の配置に応じて、必要なパターンを組み合わせて制限領域LAを設定すればよい。例えば、移動式クレーン1を壁に沿って配置する場合、パターン1の境界面BSを設定し、壁が存在する領域を制限領域LAとすればよい。また、移動式クレーン1の周囲に複数の障害物が存在する場合、適したパターンの境界面BSを複数設定し、各障害物が存在する領域を制限領域LAとすればよい。
【0104】
基準面RPは第1基準面RP1、第2基準面RP2、第3基準面RP3に限定されず、移動式クレーン1に対して傾斜した平面としてもよい。ただし、移動式クレーン1の前後方向、左右方向、上下方向に基づいて基準面RPを定めると、移動式クレーン1の姿勢を基準として境界面BSを設定できる。そのため、作業員にとって境界面BSの位置が把握しやすい。
【0105】
また、指示座標IPで示される点を頂点として接続する4つ以上の平面を4つ以上の境界面BSとしてもよい。
【0106】
〔その他の実施形態〕
本発明はブームを有する作業機械であれば、その種類を問わず適用できる。作業機械としては、移動式クレーン、タワークレーンなどのクレーンのほか、高所作業車、軌陸車などが挙げられる。
【0107】
図21に高所作業車2を例示する。高所作業車2は車両71を備えている。車両71の荷台の後方には旋回台72が搭載されている。旋回台72にはブーム73が取り付けられている。ブーム73は伸縮、起伏、旋回が可能である。ブーム73の先端部73aには、作業員が乗ることのできる籠状のバケット74が設けられている。バケット74は、ブーム73の起伏角の変化に拘わらず常に水平に維持され、かつ水平面内で旋回可能となっている。
【0108】
高所作業車2の場合、ブーム先端部73aの位置座標に代えて、バケット74の特定部分の位置座標に基づいて指示座標IPを求めてもよい。すなわち、指示座標IPはバケット74により指し示される座標としてもよい。
【0109】
なお、高所作業車2におけるバケット74が特許請求の範囲に記載の「先端構造物」に相当する。先端構造物はブームの先端部に設けられる構造物であり、作業機械の種類によって、種々の構造物が該当しうる。
【符号の説明】
【0110】
1 移動式クレーン
20 小型クレーン
23 ブーム
23a ブーム先端部
26 レバー群
27 制御装置
30 遠隔操作端末
41 ブーム姿勢測定器
42 入力装置
51 制限領域設定部
52 領域判定部
53 動作制限部
54 記憶部
61 表示器
62 警報器
IP 指示座標
RP 基準面
BS 境界面
LA 制限領域
NA 非制限領域