(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】裁断機
(51)【国際特許分類】
B26D 1/18 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
B26D1/18
(21)【出願番号】P 2017230786
(22)【出願日】2017-11-30
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】篠原 勝
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-123683(JP,U)
【文献】特開2000-176881(JP,A)
【文献】特開2006-130573(JP,A)
【文献】特開昭63-169286(JP,A)
【文献】特開平5-245794(JP,A)
【文献】特開平6-262586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/00 - 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙が配設される上向面を有したベースと、このベースに対して近接した下位置とこの下位置よりも離れた上位置との間で移動可能に支持されたレールと、このレールに支持され少なくとも前記下位置において裁断すべき前記用紙を押さえ得る紙押さえと、前記用紙を裁断し得る回転刃を保持するとともに前記レールに対してスライド移動可能に支持されたスライダーとを備えてなる裁断機であって、
前記レールの前端部に設けられ前記レールを前記下位置においてロックし得る前のレールロック機構と、前記レールの後端部に設けられ前記レールを前記下位置においてロックし得る後のレールロック機構とを備えており、
前記前のレールロック機構及び前記後のレールロック機構が、
前記前のレールロック機構又は前記後のレールロック機構の一方のみを前記下位置にロックさせ得るように、それぞれ別個独立して作動し得る裁断機。
【請求項2】
前記レールが、前後方向に直線状に延びたレール本体と、このレール本体の前端部に取り付けられた前レール受け部材と、前記レール本体の後端部に取り付けられた後レール受け部材とを備えてなり、
前記前レール受け部材と前記ベースとの間に配された付勢部材により前記レールが前記上位置の方向に付勢されているとともに、前記後レール受け部材と前記ベースとの間に配された付勢部材により前記レールが前記上位置の方向に付勢されている請求項1記載の裁断機。
【請求項3】
前記前のレールロック機構及び前記後のレールロック機構が、使用者による前記スライダーに対する下方への押圧操作に伴って、前記上位置から前記下位置に移動された前記レールを前記下位置において別個独立にロックし得るものである請求項2記載の裁断機。
【請求項4】
前記前のレールロック機構が、前記ベースに取り付けられ前記前レール受け部材の係合部に係合して前記レールを前記下位置に保持し得る係止部を設けた前のレール支持部材を備えたものであり、
前記後のレールロック機構が、前記ベースに取り付けられ前記後レール受け部材の係合部に係合して前記レールを前記下位置に保持し得る係止部を設けた後のレール支持部材を備えている請求項3記載の裁断機。
【請求項5】
前記前のレール支持部材及び後のレール支持部材が、前記レールが前記上位置から前記下位置に移動する過程において、前記前レール受け部材及び後レール受け部材に設けた押圧傾斜面により押圧される被押圧傾斜面を備えたものであり、
前記被押圧傾斜面が前記押圧傾斜面に押圧されることにより、前記前後のレール支持部材が一時的に弾性変形により退避して、前記レールを前記下位置に移動させ得るように構成されている請求項4記載の裁断機。
【請求項6】
前記前のレール支持部材及び後のレール支持部材が、前記下位置にロックされた前記レールのロック状態を解除操作し得る解除操作部を備えている請求項4又は5記載の裁断機。
【請求項7】
前記前のレール支持部材及び後のレール支持部材が、前記レールを前記下位置においてロック可能なロック可能位置と前記レールをロックできない退避位置を採り得るように前記ベースに支持されている請求項4、5又は6記載の裁断機。
【請求項8】
前記前のレール支持部材及び後のレール支持部材の係止部が、平面視において前記前レール受け部材及び後レール受け部材の係合部に重なる位置にあるときに前記ロック可能位置をなしているものであり、
前記前のレール支持部材及び後のレール支持部材の係止部が、平面視において前記前レール受け部材及び後レール受け部材の係合部に重ならない位置にあるときに前記退避位置をなしているものである請求項7記載の裁断機。
【請求項9】
前記紙押さえが、前記レールに対して上下方向に相対移動可能に支持されており、前記レールとの間に介設された紙押さえ用の付勢部材により前記ベースの方向に付勢されている請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の裁断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を裁断するための裁断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ベースに対して回転刃を保持したスライダーを進退動作させることにより、ベース上に配された用紙を回転刃とベースとの協働により裁断し得るいわゆるロータリー式の裁断機が知られている(例えば、特許文献1を参照)。回転刃を保持したスライダーは、ベース上に配されたレールに対してスライド可能に支持されたものとなっている。
【0003】
ところで、従来の裁断機においては、スライダーを支持したレールが、ベースに対して上下動可能に構成されているものがある。そして、ベースに対してレールを上位置から下位置方向に移動させ、下位置においてレールをロックさせることにより、裁断すべき用紙を上から押さえ得るようになっている。
【0004】
ところが、従来の裁断機は、用紙を押さえるためにレールをベースに対して略平行に上下動させ得るように構成したものが多く、リンク機構等を採用した部品点数の多い複雑な構造を採らざるを得ないものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、上下動可能に構成されたレールを比較的簡易な構成により下位置においてロック可能にした裁断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0008】
請求項1に記載の発明は、用紙が配設される上向面を有したベースと、このベースに対して近接した下位置とこの下位置よりも離れた上位置との間で移動可能に支持されたレールと、このレールに支持され少なくとも前記下位置において裁断すべき前記用紙を押さえ得る紙押さえと、前記用紙を裁断し得る回転刃を保持するとともに前記レールに対してスライド移動可能に支持されたスライダーとを備えてなる裁断機であって、前記レールの前端部に設けられ前記レールを前記下位置においてロックし得る前のレールロック機構と、前記レールの後端部に設けられ前記レールを前記下位置においてロックし得る後のレールロック機構とを備えており、前記前のレールロック機構及び前記後のレールロック機構が、前記前のレールロック機構又は前記後のレールロック機構の一方のみを前記下位置にロックさせ得るように、それぞれ別個独立して作動し得る裁断機である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記レールが、前後方向に直線状に延びたレール本体と、このレール本体の前端部に取り付けられた前レール受け部材と、前記レール本体の後端部に取り付けられた後レール受け部材とを備えてなり、前記前レール受け部材と前記ベースとの間に配された付勢部材により前記レールが前記上位置の方向に付勢されているとともに、前記後レール受け部材と前記ベースとの間に配された付勢部材により前記レールが前記上位置の方向に付勢されている請求項1記載の裁断機である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記前のレールロック機構及び前記後のレールロック機構が、使用者による前記スライダーに対する下方への押圧操作に伴って、前記上位置から前記下位置に移動された前記レールを前記下位置において別個独立にロックし得るものである請求項2記載の裁断機である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記前のレールロック機構が、前記ベースに取り付けられ前記前レール受け部材の係合部に係合して前記レールを前記下位置に保持し得る係止部を設けた前のレール支持部材を備えたものであり、前記後のレールロック機構が、前記ベースに取り付けられ前記後レール受け部材の係合部に係合して前記レールを前記下位置に保持し得る係止部を設けた後のレール支持部材を備えている請求項3記載の裁断機である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記前のレール支持部材及び後のレール支持部材が、前記レールが前記上位置から前記下位置に移動する過程において、前記前レール受け部材及び後レール受け部材に設けた押圧傾斜面により押圧される被押圧傾斜面を備えたものであり、前記被押圧傾斜面が前記押圧傾斜面に押圧されることにより、前記前後のレール支持部材が一時的に弾性変形により退避して、前記レールを前記下位置に移動させ得るように構成されている請求項4記載の裁断機である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記前のレール支持部材及び後のレール支持部材が、前記下位置にロックされた前記レールのロック状態を解除操作し得る解除操作部を備えている請求項4又は5記載の裁断機である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記前のレール支持部材及び後のレール支持部材が、前記レールを前記下位置においてロック可能なロック可能位置と前記レールをロックできない退避位置を採り得るように前記ベースに支持されている請求項4、5又は6記載の裁断機である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記前のレール支持部材及び後のレール支持部材の係止部が、平面視において前記前レール受け部材及び後レール受け部材の係合部に重なる位置にあるときに前記ロック可能位置をなしているものであり、
前記前のレール支持部材及び後のレール支持部材の係止部が、平面視において前記前レール受け部材及び後レール受け部材の係合部に重ならない位置にあるときに前記退避位置をなしているものである請求項7記載の裁断機である。
【0016】
請求項9に記載の発明は、前記紙押さえが、前記レールに対して上下方向に相対移動可能に支持されており、前記レールとの間に介設された紙押さえ用の付勢部材により前記ベースの方向に付勢されている請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の裁断機である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、上下動可能なレールを比較的簡易な構成により下位置においてロック可能にした裁断機を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図21】同実施形態におけるスライダーの分解斜視図。
【
図22】同実施形態におけるスライダーの分解斜視図。
【
図23】同実施形態におけるスライダーの分解斜視図。
【
図24】他の実施形態である前後のレール支持部材を示す右側面図。
【
図25】他の実施形態である前後のレール支持部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~23を参照して説明する。
【0020】
裁断機Aは、用紙Pが配設される上向面k1を有したベースBと、ベースBに対して近接した下位置(a)とこの下位置(a)よりもベースBに対して離れた上位置(b)との間で移動可能に支持されたレールCと、レールCに支持され少なくとも下位置(a)において裁断すべき用紙Pを上から押さえ得る紙押さえFと、用紙Pを裁断し得る回転刃z1を保持するとともにレールCに対してスライド移動可能に支持されたスライダーJとを備えたものである。この裁断機Aは、回転刃z1を保持したスライダーJをベースBに対して進退動作させることにより、ベースB上に配された用紙Pを回転刃z1とベースBとの協働により裁断し得るいわゆるロータリー式のものである。
【0021】
この実施形態における裁断機Aは、レールCの一端部たる前端部に設けられレールCを下位置(a)においてロックし得る一端部側である前のレールロック機構Hと、レールCの他端部たる後端部に設けられレールCを下位置(a)においてロックし得る他端部側である後のレールロック機構Iとを備えている。前・後のレールロック機構H、Iは、それぞれ別個独立して作動し得るものとなっている。
【0022】
以下、この裁断機Aについて詳述する。
【0023】
<<ベースB>>
ベースBは、用紙Pが配設される上向面k1を有したベース本体Kと、ベース本体Kの前端部に設けられた前ベース部Lと、ベース本体Kの後端部に設けられた後ベース部Mとを備えている。ベースBは、使用時において図示しない天板等の載置面に載置されるものである。ベースBは、回転刃z1と協働して用紙Pを裁断し得るものである。ベース本体Kの上向面k1は、用紙Pを配置し得る用紙配置範囲として設定されている。
【0024】
ベースBは、回転刃z1の先端である刃先z12が当接し得る位置に刃受けb1を配している。刃受けb1は、例えば、繰り返しの使用により劣化が生じた場合等において交換可能なものとなっている。刃受けb1は、ベースBにおける一側縁部たる右側縁部の上面側に形成された刃受け配設用の凹部b2内に配設されている。刃受けb1は、後端部を後ベース部Mに位置決めさせた状態で、前ベース部Lに回動可能に設けた刃受け保持部材19により刃受け配設用の凹部b2内から離脱しないように保持されている。
【0025】
<ベース本体K>
ベース本体Kは、ベースBにおける前後方向中間部に位置している。ベース本体Kの上向面k1は、用紙Pを載置させ得るように略平面状に形成されている。ベース本体Kにおける刃受け配設用の凹部b2の下には、当該刃受け配設用の凹部b2に沿って図示しない補強材が設けられている。
【0026】
<前ベース部L>
前ベース部Lは、上面をベース本体Kよりも高い位置に設定させた前ベース部本体1と、前ベース部本体1の下に配設された前裏板部材2とを備えている。
【0027】
前ベース部本体1は、前端部に設けられ前のレールロック機構Hを配設し得るとともに当該前のレールロック機構Hに関連する操作を行うための操作空間を形成し得る第一の凹陥部11と、第一の凹陥部11の後側に設けられレールCを構成する前レール受け部材Qの下部を配設し得る第二の凹陥部12とを備えている。
【0028】
前ベース部本体1は、第二の凹陥部12内に立設され付勢部材である前スプリングDを保持し得るボス13と、第二の凹陥部12内に立設され前レール受け部材Qを上下方向に案内し得るガイドレール14と、レールCの左側縁に近接した位置に形成され前レール受け部材Qに設けた突出部53が当接し得る当接部分たる受け凹部15と、前のレールロック機構Hを構成する前のレール支持部材Sの下端部たるベース部分s1を挿通させて当該前のレール支持部材Sを前裏板部材2の上に進退スライド可能に支持させるための挿通孔16とを備えている。受け凹部15は、レールCが下位置(a)にあるときに前レール受け部材Qの突出部53と係わり合うものであり反力打ち消し手段9を構成している。
【0029】
前ベース部本体1の底面側には、前のレール支持部材Sに設けた上向きの係合突起s11が弾性変形により係合し得る第一の凹部17と、第一の凹部17に隣接して設けられ前のレール支持部材Sに設けた上向きの係合突起s11が弾性変形により係合し得る第二の凹部18とを備えている。
【0030】
前裏板部材2は、前ベース部本体1を支持するものである。前裏板部材2は、ベース本体K側に延出した延出部21を備えており、ベース本体Kの前部を下側から支持し得るようになっている。
【0031】
<後ベース部M>
後ベース部Mは、上面をベース本体Kよりも高い位置に設定させた後ベース部本体3と、この後ベース部本体3の下に配設された後裏板部材4とを備えている。
【0032】
後ベース部本体3は、後端部に設けられ後のレールロック機構Iを配設し得るとともに当該後のレールロック機構Iに関連する操作を行うための操作空間を形成し得る第一の凹陥部31と、第一の凹陥部31の前側に設けられレールCを構成する後レール受け部材Rの下部を配設し得る第二の凹陥部32とを備えている。
【0033】
後ベース部本体3は、第二の凹陥部32内に立設され付勢部材である後スプリングEを保持し得るボス33と、第二の凹陥部32内に立設され後レール受け部材Rを上下方向に案内し得るガイドレール34と、レールCの左側縁に近接した位置に形成され後レール受け部材Rに設けた突出部73が当接し得る当接部分たる受け凹部35と、後のレールロック機構Iを構成する後のレール支持部材Tの下端部であるベース部分t1を挿通させて当該後のレール支持部材Tを後裏板部材4の上に進退スライド可能に支持させるための挿通孔36とを備えている。受け凹部35は、レールCが下位置(a)にあるときに後レール受け部材Rの突出部73と係わり合うものであり反力打ち消し手段9を構成している。
【0034】
後ベース部本体3は、底面側に形成され後のレール支持部材Tに設けた上向きの係合突起t11が弾性変形により係合し得る第一の凹部37と、第一の凹部37に隣接して設けられ後のレール支持部材Tに設けた上向きの係合突起t11が弾性変形により係合し得る第二の凹部38とを備えている。なお、後ベース部本体3は、交換用の刃ユニットZを収容し得る収容室を開閉動作可能に閉塞し得る刃ユニット収納蓋39を備えている。
【0035】
後裏板部材4は、後ベース部本体3を支持するものである。後裏板部材4は、ベース本体K側に延出した延出部41を備えており、ベース本体Kの後部を下側から支持し得るようになっている。
【0036】
<<レールC>>
レールCは、スライダーJを前後方向にスライド移動可能に支持し得るものである。レールCは、前後方向に直線状に延びたレール本体Nと、レール本体Nの前端部に取り付けられた前レール受け部材Qと、レール本体Nの後端部に取り付けられた後レール受け部材Rとを備えてなる。これらレール本体N、前レール受け部材Q、及び、後レール受け部材Rは、一体的に動作し得るものである。
【0037】
レールCは、ベースBに対して近接し当該レールCに支持された紙押さえFによって用紙Pを押さえ得る下位置(a)と、下位置(a)よりも上に位置する上位置(b)との間で上下動し得るようにベースB上に配されている。レールCが上位置(b)にあるときは、紙押さえFの用紙押さえ面である下面とベースBの上向面k1との間に裁断すべき用紙Pを挿入し得る用紙挿入用の隙間skが形成され得るようになっている。
【0038】
レールCは、ベースBとの間に配された付勢部材たる前スプリングD及び後スプリングEにより、常時、上位置(b)の方向に付勢されている。より詳しく言えば、レールCは、前レール受け部材Qと前ベース部Lとの間に介設された前スプリングDにより上位置(b)の方向に付勢されているとともに、後レール受け部材Rと後ベース部Mとの間に介設された後スプリングEにより上位置(b)の方向に付勢されている。
【0039】
<レール本体N>
レール本体Nは、底壁n11及び底壁n11の両側端縁から立設された側壁n13を一体に有したチャンネル状をなす外レール部材n1と、外レール部材n1の上に取り付けられた内レール部材n2とを備えている。外レール部材n1と内レール部材n2とは、複数箇所においてねじv2により連結されている。
【0040】
外レール部材n1の底壁n11には、紙押さえFに立設されたボス部f1が上下動可能に挿通し得る挿通孔n12が形成されている。
【0041】
内レール部材n2は、外レール部材n1における側壁n13の上端部間を繋ぐ位置に配された天壁n21を備えている。内レール部材n2における天壁n21の上面には、スライダーJを位置決めするためのガイド溝n22が設けられている。ガイド溝n22には、スライダーベースUの係合凹部u11内に突設された位置決め凸部u12が係合し得るようになっている。
【0042】
内レール部材n2における天壁n21の下面側には、下端部を外レール部材n1の挿通孔n12内に位置させた下向きのボス部n23が形成されている。下向きのボス部n23は、紙押さえFに突設された上向きのボス部f1の貫通孔f3内に挿入されている。そして、下向きのボス部n23の先端には、抜け止め部材たるワッシャーwaがねじv1により取り付けられている。
【0043】
抜け止め部材たるワッシャーwaは、紙押さえFにおけるボス部f1の内面側に形成された鍔部f2の下面に添接し、紙押さえFがレールCから下方に抜け出ないようにしている。レールCと紙押さえFとの間、すなわち、内レール部材n2における天壁n21の内面と紙押さえFにおけるボス部f1の外面側に形成された鍔部f2の上面との間には紙押さえ用の付勢部材たる紙押さえ用スプリングGが配設されている。
【0044】
<前レール受け部材Q>
前レール受け部材Qは、レール本体Nにねじv3により取り付けられている。前レール受け部材Qは、合成樹脂製のものである。前レール受け部材Qは、下方に開口した箱形をなし上面側にレール本体Nの前端部を支持させた前レール受け部材本体5と、前レール受け部材本体5の前部に設けられ前のレールロック機構Hと係合し得るレールロック機構係合部分6とを備えている。
【0045】
前レール受け部材本体5は、上下方向に延びてなり前ベース部Lのガイドレール14に外嵌し得るガイドレール係合部51と、レール本体Nの前端部に接続するためのねじv3が挿通されるねじ挿通孔52と、左側部に突設され下位置(a)において前ベース部Lに形成された当接部分である受け凹部15に直接的に当接し得る矩形片状をなした突出部53とを備えている。突出部53は、ベースBの受け凹部15と直接的に係わり合うものであり反力打ち消し手段9を構成している。
【0046】
レールロック機構係合部分6は、前レール受け部材本体5の前端縁部から立設された起立壁61と、起立壁61における左右の側縁から前方に向けて延出させた左右の側壁65と、左右の側壁65における前縁部の下部間を繋ぐ架設部66とを備えている。
【0047】
レールロック機構係合部分6を構成している起立壁61の上端部には、前方に向けて突設され斜め下方を向く押圧傾斜面63を有するとともに当該押圧傾斜面63よりも上に位置してなり上方を向く平面状の係合部64を有した係合突設部62が設けられている。係合突設部62は、前のレールロック機構Hを構成する前のレール支持部材Sと直接的に係合し得る部位となっている。
【0048】
<後レール受け部材R>
後レール受け部材Rは、レール本体Nにねじv3により取り付けられている。後レール受け部材Rは、合成樹脂製のものである。後レール受け部材Rは、下方に開口した箱形をなし上面側にレール本体Nの後端部を支持させた後レール受け部材本体7と、後レール受け部材本体7の後部に設けられ後のレールロック機構Iと係合し得るレールロック機構係合部分8とを備えている。
【0049】
後レール受け部材本体7は、上下方向に延びてなり後ベース部Mのガイドレール34に外嵌し得るガイドレール係合部71と、レール本体Nの後端部に接続するためのねじv3が挿通されるねじ挿通孔72と、左側部に突設され下位置(a)において後ベース部Mに形成された当接部分である受け凹部35に直接的に当接し得る矩形片状をなした突出部73とを備えている。突出部73は、ベースBの受け凹部35と直接的に係わり合うものであり反力打ち消し手段9を構成している。
【0050】
レールロック機構係合部分8は、後レール受け部材本体7の後端縁部から立設された起立壁81と、起立壁81における左右の側縁から後方に向けて延出させた左右の側壁85と、左右の側壁85における後縁部の下部間を繋ぐ架設部86とを備えている。
【0051】
レールロック機構係合部分8を構成している起立壁81の上端部には、後方に向けて突設され斜め下方を向く押圧傾斜面83を有するとともに当該押圧傾斜面83よりも上に位置してなり上方を向く平面状の係合部84を有した係合突設部82が設けられている。係合突設部82は、後のレールロック機構Iを構成する後のレール支持部材Tと直接的に係合し得る部位となっている。
【0052】
この実施形態における裁断機Aは、レールCの他側縁側である左側縁側に、レールCの一側縁側である右側縁側に配された回転刃z1が裁断操作時において用紙Pから受ける反力を打ち消し得る反力打ち消し手段9を設けている。
【0053】
すなわち、反力打ち消し手段9は、前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rにそれぞれ一体的に設けられた突出部53、73と、下位置(a)において突出部53、73が直接的に接し得るようにベースBに設けた当接部分である受け凹部15、35とを主体にして構成されている。反力打ち消し手段9はレールCを挟んで回転刃z1の反対側に設けられている。
【0054】
反力打ち消し手段9は、使用者によるスライダーJの操作(すなわち用紙Pを切断しようとする操作)によって当該スライダーJが用紙Pから受ける反力を、レールCを介して回転刃z1が位置する側とは反対の側のベースBに伝達させることにより、下位置(a)におけるレールCの全体的なねじれ、より具体的に言えば、正面視において時計の反対周りに回転しようとするレールCのねじれを抑制し得るいわゆるスタビライザー機能を発揮し得るものとなっている。
【0055】
つまり、使用者は、用紙Pを裁断するために、スライダーJを把持し、当該スライダーJをベースBの上向面k1方向に押し下げた上で、当該スライダーJをレールCに沿って前後方向にスライド移動させることになる。このとき、使用者は下方に略鉛直にレールCに支持されたスライダーJを押し下げる一方で、スライダーJに設けた回転刃z1はレールCの幅方向中央からずれた位置にあるため、回転刃z1が用紙Pから受けた反力はレールCをねじる方向に作用することになる。特に、回転刃z1を有した刃ユニットZは、刃ホルダースプリングw4によって下方に付勢された刃ホルダーw3に支持されているため、スライダーJは、用紙Pから一定の反力を受けることになる。
【0056】
反力打ち消し手段9の作用により、使用者によるスライダーJの操作が行われて用紙Pから反力を受けた場合であっても、レールCのねじれが抑制されることになり、スライダーJは用紙Pを真っ直ぐに裁断することができるものとなっている。
【0057】
<紙押さえF>
紙押さえFは、レールCに対して上下方向に相対移動可能に支持されており、レールCとの間に介設された紙押さえ用の付勢部材たる紙押さえ用スプリングGにより常にベースBの方向に付勢されている。紙押さえFは、レールCが下位置(a)にあるときに裁断すべき用紙Pを上側から押さえ得る機能を発揮し得るものである。用紙Pを押さえる際には、紙押さえ用スプリングGがベースB側の反力を受けて圧縮されることになる。そして、このときの紙押さえFは、ベースB上に配設された用紙Pに押圧されてレールCに対して近づく方向に移動することになる。
【0058】
紙押さえFは、前後方向に延びてなり下面が用紙Pの上面に添接し得る平板状部分を有した紙押さえ本体f4と、この紙押さえ本体f4から上向きに一体に突設されたボス部f1とを備えてなるものである。ボス部f1は、貫通孔f3を形成している段付きの筒状のものであり、上下方向中間部に外面側及び内面側に段部を形成するための鍔部f2を有している。
【0059】
なお、この実施形態では、前のレールロック機構H及び後のレールロック機構Iが、それぞれ別個独立して作動し得るものとなるため、レールCがベースBの上向面k1に対して略平行な姿勢をとらない場合がある。しかしながら、本実施形態の紙押さえFは、レールCに対して傾いた状態であっても紙押さえ本体f4の長手方向に複数配設された紙押さえスプリングGの伸縮度合いを相違させて用紙Pの一部を押さえ得るものとなっている。
【0060】
<前・後のレールロック機構H、I>
前のレールロック機構Hは、レールCの前端部すなわち前レール受け部材Qの外側に設けられている。前のレールロック機構Hは、前レール受け部材Qと直接的に係わり合いレールCを下位置(a)においてロックし得るものである。
【0061】
後のレールロック機構Iは、レールCの後端部すなわち後レール受け部材Rの外側に設けられている。後のレールロック機構Iは、後レール受け部材Rと直接的に係わり合いレールCを下位置(a)においてロックし得るものである。
【0062】
前・後のレールロック機構H、Iは、それぞれ別個独立して作動し得るものとなっている。つまり、本実施形態の裁断機Aは、前のレールロック機構H又は後のレールロック機構Iの一方のみを下位置(a)にロックさせることもできるようになっている。換言すれば、使用者は、前のレールロック機構H又は後のレールロック機構Iの一方のみを作動させることができるようになっている。
【0063】
前・後のレールロック機構H、Iは、使用者によるスライダーJに対する下方への押圧操作に伴って、レールCに直接的に触れることなく上位置(b)から下位置(a)に移動されたレールCを下位置(a)において別個独立に自動的にロックし得るものとなっている。例えば、使用者がレールCの手前側(前側)に位置したスライダーJを把持し、当該スライダーJを介して上位置(b)にあるレールCに対して下方への荷重をかけつつ用紙Pを裁断しようとする操作(すなわち、スライダーJを後側にスライドする操作)を行うと、前のレールロック機構H、後のレールロック機構Iの順にレールCを下位置(a)にロックする動作が自動的に実行され得るものとなっている。
【0064】
前のレールロック機構Hは、ベースBに取り付けられ前レール受け部材Qの係合部64に係合してレールCを下位置(a)に保持し得る係止部s21を設けた一方すなわち前のレール支持部材Sを備えたものである。
【0065】
後のレールロック機構Iは、ベースBに取り付けられ後レール受け部材Rの係合部84に係合してレールCを下位置(a)に保持し得る係止部t21を設けた他方すなわち後のレール支持部材Tを備えている。
【0066】
前・後のレール支持部材S、Tは、弾性変形に優れた合成樹脂製のものである。前・後のレール支持部材S、Tは、略水平姿勢をなしベースB上に支持されるベース部分s1、t1と、ベース部分s1、t1の外縁部から立設され部材の弾性変形により前後方向に動作し得る起立部分s2、t2とを備えている。前・後のレール支持部材S、Tは、ベース部分s1、t1、及び、起立部分s2、t2によって、側面視において概略L字状の形状をなしている。
【0067】
前・後のレール支持部材S、Tは、レールCを下位置(a)においてロック可能なロック可能位置(sa)、(ta)とレールCを下位置(a)にロックできない退避位置(sb)、(tb)を採り得るようにベースBに支持されている。換言すれば、前・後のレールロック機構H、Iは、下位置(a)においてレールCをロック可能なロック有効状態と、レールCを下位置(a)にロック不能なロック無効状態とを選択可能に構成されている。
【0068】
前・後のレール支持部材S、Tは、レールCを下位置(a)においてロック可能なロック有効状態を採り得るロック可能位置(sa)、(ta)と、レールCを下位置(a)にロックできないロック無効状態を採り得る退避位置(sb)、(tb)との間でベースBに対して前後方向にスライド移動可能に支持されている。
【0069】
前・後のレール支持部材S、Tのベース部分s1、t1には、ベースBに設けた第一、第二の凹部11、31、12、32に選択的に弾性係合し得る係合突起s11、t11を備えている。前・後のレール支持部材S、Tがロック可能位置(sa)、(ta)にあるときに、係合突起s11、t11は第一の凹部11、31に係合するものとなっており、前・後のレール支持部材S、Tが退避位置(sb)、(tb)にあるときに、係合突起s11、t11は、第二の凹部12、32に係合するものとなっている。
【0070】
前・後のレール支持部材S、Tにおける起立部分s2、t2の内面側には、レールCが上位置(b)から下位置(a)に移動する過程において、前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rの外面側に設けた押圧傾斜面63、83により押圧される被押圧傾斜面s22、t22が設けられている。前・後のレール支持部材S、Tに設けられた被押圧傾斜面s22、t22が、上側から下側に向かって下降する前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rの押圧傾斜面63、83に押圧されると、前・後のレール支持部材S、Tの起立部分s2、t2全体が、部材の弾性変形によって一時的に外方に退避し、レールCを下位置(a)に移動することを許容する。
【0071】
起立部分s2、t2における被押圧傾斜面s22、t22の下には、前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rの係合部64、84と係合し得る係止部s21、t21を備えている。係止部s21、t21は下方を向く平面状の部位を有したものである。係止部s21、t21は、前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rにおいて上方を向く平面状の部位を有した係合部64、84に係合し得るものとなっている。係止部s21、t21と係合部64、84とが係合すると、レールCは下位置(a)に保持された状態になる。
【0072】
前・後のレール支持部材S、Tにおける起立部分s2、t2の上端部には、下位置(a)にロックされたレールCのロック状態を解除操作し得る解除操作部s23、t23を備えている。解除操作部s23、t23は、使用者の指を係止させ得る部位である。解除操作部s23、t23は、使用者の操作によって、前・後のレール支持部材S、Tにおける起立部分s2、t2を外方に一時的に弾性変形させ得るものである。使用者により解除操作部s23、t23が操作されると、前・後のレール支持部材S、Tにおける下向面を有した係止部s21、t21と前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rにおける上向面k1を有した係合部64、84とが離間し、この結果、係止部s21、t21と係合部64、84とが係合し得る状態が解除され得るようになっている。
【0073】
前・後のレール支持部材S、Tの起立部分s2、t2には、ロック可能位置(sa)、(ta)と退避位置(sb)、(tb)とを選択的にスライド操作し得るスライド操作部s24、t24を備えている。スライド操作部s24、t24は、起立部分s2、t2の下部に設けられている。スライド操作部s24、t24は、側面視において使用者の指を掛け得る指挿入空間を形成した略コ字状又は略C字状をなしている。例えば、使用者は、指をスライド操作部s24、t24に掛けて前・後のレール支持部材S、Tを外方に引く操作を行えるため、前・後のレール支持部材S、Tをロック可能位置(sa)、(ta)から退避位置(sb)、(tb)に容易に操作し得るものとなっている。
【0074】
なお、
図24、及び
図25に示すような、他の形態をなす前・後のレール支持部材S、Tを適用してもよい。
【0075】
すなわち、他の実施形態である前・後のレール支持部材S、Tは、ベース部分s1、t1の先端部から略垂直に起立部分s2、t2を立ち上げている。そして、前・後のレール支持部材S、Tの起立部分s2、t2には、ロック可能位置(sa)、(ta)と退避位置(sb)、(tb)とを選択的にスライド操作し得るスライド操作部s24、t24を略垂直に起立させた部分s25、t25から外方に突出させている。つまり、他の実施形態である前・後のレール支持部材S、Tは、スライド操作部s24、t24を、側面視において使用者の指を掛け得る指挿入空間を形成した略コ字状又は略C字状をなしたものとしておらず、外方に突出した部位s26、t26の側面に設けているものとしている。
【0076】
他の実施形態である前・後のレール支持部材S、Tは、かかる構成をなしているため、前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rの係合部64、84から強い力を受けた場合であっても、係止部s21、t21が外れる方向に動き難いものとなる。
【0077】
<<スライダーJ>>
スライダーJは、用紙Pを裁断するための回転刃z1を支持してなるものである。スライダーJは、用紙Pを裁断し得る回転刃z1をレールCの一側縁である右側縁よりも外側の位置において保持している。スライダーJは、レールCに対してスライド移動可能に支持されている。
【0078】
スライダーJは、レールCに対してスライド可能に装着されたスライダーベースUと、スライダーベースUの上に設けられた操作ハンドルVと、スライダーベースUに対して開閉可能に支持された開閉体Wと、開閉体Wに支持された刃ユニットZとを備えたものである。
【0079】
スライダーJは、スライダー本体に対して回転刃z1を保持してなる刃ユニットZを上下方向に相対移動可能に支持している。なお、スライダー本体は、スライダーベースUと、操作ハンドルVと、開閉体Wを構成する開閉体本体w1とを主たる構成部材としている。スライダー本体に対して、刃ユニットZを保持し得る刃ホルダーw3が上下方向に相対移動可能に支持されたものとなっている。
【0080】
<スライダーベースU>
スライダーベースUは、レールCと係り合う係合凹部u11が形成されたスライダーベース本体u1と、スライダーベース本体u1の外側縁部たる右側縁部に設けられた開閉体支持部分u2とを備えている。係合凹部u11の左右方向中間部には、スライダーJを位置決めするための位置決め凸部u12が下方に向かって突設されている。
【0081】
スライダーベース本体u1は、開閉体Wの開閉操作時において開閉体Wに支持された刃ユニットZの回転刃z1との干渉を回避し得る干渉回避凹部u13を備えている。スライダーベース本体u1の上縁部には操作ハンドルVが図示しないねじを介して取り付けられている。
【0082】
開閉体支持部分u2は、スライダーベース本体u1から突設された前後の延出壁u21と、これら延出壁u21の対向面にそれぞれ突設された支軸u22とを備えたものである。支軸u22は、開閉体Wに設けられた軸支持部たる軸受孔w14に支持されている。
【0083】
<操作ハンドルV>
操作ハンドルVは、スライダーベースUの上に図示しないねじにより取り付けられたものである。操作ハンドルVの上面側は、使用者が把持し易い曲面状に形成されている。操作ハンドルVは、開閉体W側の側部に開閉体Wとの干渉を回避するための切欠部v1を備えている。切欠部v1の端縁には、ロック部材w2の突起w21が係合し得るようになっている。
【0084】
<開閉体W>
開閉体Wは、スライダーベースUに対して回転可能に支持されている。すなわち、開閉体Wは、スライダーベースUに対して開閉可能に支持されている。開閉体Wは、スライダーベースUに対して開いた状態において回転刃z1を有した刃ユニットZを交換可能な空間を形成し得るものとなっている。
【0085】
開閉体Wは、スライダーベースUに対して回動可能に軸支持された開閉体本体w1と、開閉体本体w1に対して回動可能に装着され操作ハンドルVに係合し得る突起w21を有したロック部材w2と、開閉体本体w1に対して上下動可能に支持され刃ユニットZを保持し得る刃ホルダーw3と、開閉体本体w1と刃ホルダーw3との間に設けられ刃ホルダーw3をベースB方向に付勢する刃ホルダー用の付勢部材たる一対の刃ホルダースプリングw4を備えたものである。
【0086】
開閉体本体w1は、ロック部材w2を回転可能に支持する側壁w11と、この側壁w11の前縁から内方に向かって突設された前壁w12と、側壁w11の後縁から内方に向かって突設された後壁w13とを備えている。これら側壁w11、前壁w12、及び、後壁w13とによって、刃ホルダーw3を上下動可能に収容し得る収容空間が形成されている。
【0087】
ロック部材w2は、開閉体本体w1に対して回動可能に支持されている。ロック部材w2は、外周縁に設けられ操作ハンドルVにおける切欠部v1の端縁と係り得る突起w21と、外面側に突設され使用者が摘み得る操作用隆起部w22とを備えている。ロック部材w2は、突起w21を操作ハンドルVに係合させた状態で、開閉体本体w1を閉位置にロックし得るものである。
【0088】
刃ホルダーw3は、開閉体本体w1に対して上下動可能に支持されるとともに回転刃z1を有した刃ユニットZを保持し得るものである。刃ホルダーw3は、開閉体本体w1とともにスライダーベースUに対して開閉動作し得るものとなっている。刃ホルダーw3は、刃ホルダー用の付勢部材たる刃ホルダースプリングw4により刃受けb1における上向面k1の方向に付勢されている。
【0089】
刃ホルダーw3は、刃ユニットZを保持し得る形状をなす刃ホルダー本体w31と、刃ホルダー本体w31に対して回動可能に支持されるともに当該刃ホルダー本体w31と連動して上下動し得る刃軸ピンw33と、この刃軸ピンw33の基端部を保持する押さえベアリングw34と、刃ホルダー本体w31に取り付けられ刃ホルダー本体w31の開閉体本体w1に対する相対位置を規制し得るとともに刃ホルダー本体w31が開閉体本体w1から下方に抜け出ることを禁止する抜け止めピンw35とを備えている。
【0090】
刃ホルダー本体w31は、刃ユニットZの刃保持部材z2に突設された位置決め用の突出部z22が係わり合う凹陥部w36を備えている。刃ホルダー本体w31は、開閉体本体w1に対して上下動可能に支持されている。
【0091】
刃軸ピンw33は、刃ユニットZの回転刃z1に設けられた貫通孔z11に嵌合し、用紙Pを切断する際に回転刃z1とともに一体的に回転し得るようになっている。
【0092】
抜け止めピンw35は、刃ホルダー本体w31に取り付けられるとともに開閉体本体w1側に向かって突出しているものである。この抜け止めピンw35の突出部分は、開閉体本体w1に形成された上下方向に延びた長孔w15内に位置しており、当該長孔w15との協働により刃ホルダー本体w31の上下動範囲を規制し得るものとなっている。なお、刃ホルダー本体w31は、回転刃z1用の付勢部材である刃ホルダースプリングw4により下方に付勢されているため、抜け止めピンw35は無負荷状態において長孔w15の下縁に当接した状態が維持されることになる。
【0093】
<刃ユニットZ>
刃ユニットZは、開閉体Wの刃ホルダーw3に対して着脱可能に取り付けられたものである。刃ユニットZは、外周縁を刃先z12とした回転刃z1と、回転刃z1を保持する刃保持部材z2とを備えている。刃ユニットZは、例えば、回転刃z1の刃先z12が使用等により劣化したときに、他の刃ユニットZと交換できるものとなっている。
【0094】
回転刃z1は、中心部に貫通孔z11が形成されたものである。この貫通孔z11は、開閉体Wの刃ホルダーw3に設けられた刃軸ピンw33に嵌合し得るようになっている。
【0095】
刃保持部材z2は、合成樹脂製のものであり、内部に回転刃z1の下端部以外の部分を収納した矩形状をなしている。刃保持部材z2には、回転刃z1の貫通孔z11に対応する位置に連通孔z21が設けられている。また、刃保持部材z2には、刃ホルダーw3に位置決めするための複数の突出部z22が外方に向かって突設されている。
【0096】
続いて、この実施形態における裁断機Aにおける作動について説明する。
【0097】
まず、裁断すべき用紙Pをベース本体Kの上向面k1の所定位置に載置する。一般的には、裁断すべき用紙Pの前縁部又は後縁部を前ベース部Lの後端縁又は後ベース部Mの前端縁に当接させることにより、用紙Pがベース本体K上に位置決めされることになる。
【0098】
次いで、スライダーJに支持させた回転刃z1により用紙Pを裁断するための作業を行う。裁断すべき用紙Pの枚数が比較的多い場合、通常は、スライダーJをレールCに対して複数回にわたって往復動作させて、複数枚の用紙Pを上から順に裁断する必要がある。この場合、裁断前に用紙Pをベース本体K上においてずれ動くことの無いように上から押さえておく必要がある。使用者は、用紙Pをベース本体K上に載せ置いた後に、当該用紙Pを上から押さえるべく、レールCを下方に押圧し、レールCに支持された紙押さえFに用紙Pを上から押圧させるための操作を行う。使用者が、レールCを下位置(a)に降下する操作は、前スプリングD及び後スプリングEの付勢力に抗してレールCを下方に押圧することにより行われる。
【0099】
レールCを上位置(b)から下位置(a)に遷移させる過程において、前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rに設けられた押圧傾斜面63、83が、前のレール支持部材S及び後のレール支持部材Tに設けられた被押圧傾斜面s22、t22を押圧する。そして、前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rは、前のレール支持部材S及び後のレール支持部材Tの上部たる起立部分s2、t2を一時的に外方に弾性変形させる。これにより、レール本体Nと一体的に取り付けられた前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rは、下位置(a)に移動し得る。下位置(a)に移動した前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rの係合部64、84は、一時的に外方に弾性変形した後に元の姿勢に復帰した前のレール支持部材S及び後のレール支持部材Tに設けた係止部s21、t21に係合する。この結果、レールCは、前のレール支持部材S及び後のレール支持部材Tにより上方への移動が禁止され、下位置(a)に保持されることになる。
【0100】
紙押さえFは、レールCに対して上下動可能に支持されている。そして、紙押さえFは、レールCが下位置(a)にあるときに、ベースB上に配された用紙Pに押圧され紙押さえ用スプリングGの付勢力に抗してレール本体N方向に相対移動するようになっている。
【0101】
レールCが下位置(a)に保持された結果、紙押さえFが用紙Pを押さえた状態になった後に、使用者は、スライダーJを前後方向に往復動作して複数枚の用紙Pを上から順に裁断することになる。このとき、反力打ち消し手段9の働きにより、レールCに作用するねじれ変形が抑制されている。つまり、スライダーJの回転刃z1が用紙Pから反力を受けた場合でも、前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rに設けた突出部53、73が、ベースBに設けた受け凹部15、35に当接することにより、レールCに作用した反力が打ち消されることになる。
【0102】
レールCが下位置(a)にロックされている状態を解除する際には、使用者は、前・後のレール支持部材S、Tの解除操作部s23、t23を操作して当該前・後のレール支持部材S、Tの起立部分s2、t2を一時的に外方に弾性変形させる。これにより、前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rの係合部64、84は、前のレール支持部材S及び後のレール支持部材Tに設けた係止部s21、t21から離脱し、レールCが前スプリングD及び後スプリングEの付勢力を受けて上位置(b)に復帰することになる。
【0103】
なお、裁断すべき用紙Pの枚数が比較的少ない場合、スライダーJをレールCに対して複数回にわたって往復動作させる必要がなく、用紙Pを裁断することができる場合がある。換言すれば、スライダーJを把持する前に、あらかじめレールCを下降させて用紙Pをベース本体K上に押さえておくという必要性が無い場合がある。このような場合、使用者は、前・後のレール支持部材S、Tのスライド操作部s24、t24に手を掛け、あらかじめ前・後のレール支持部材S、Tをロック可能位置(sa)、(ta)から退避位置(sb)、(tb)に位置変更しておく。退避位置(sb)、(tb)にある前・後のレール支持部材S、Tは、下位置(a)に遷移した場合であっても、前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rの係合部64、84と係合できない状態となる。このようにすることで、裁断すべき用紙Pの枚数が比較的少ない場合に、スライダーJの操作に伴わせてレールCが下位置(a)に遷移させて当該レールCが下位置(a)にロックされず、使用者によるスライダーJの操作を終えることによりレールCは上位置(b)に自動復帰し得るものとなる。
【0104】
以上説明したように、本実施形態に係る裁断機Aは、用紙Pが配設される上向面k1を有したベースBと、このベースBに対して近接した下位置(a)とこの下位置(a)よりも離れた上位置(b)との間で移動可能に支持されたレールCと、このレールCに支持され少なくとも下位置(a)において裁断すべき用紙Pを押さえ得る紙押さえFと、用紙Pを裁断し得る回転刃z1を保持するとともにレールCに対してスライド移動可能に支持されたスライダーJとを備えてなる。そして、レールCの前端部に設けられレールCを下位置(a)においてロックし得る前のレールロック機構Hと、レールCの後端部に設けられレールCを下位置(a)においてロックし得る後のレールロック機構Iとを備えており、前のレールロック機構H及び後のレールロック機構Iが、それぞれ別個独立して作動し得るものとなっている。このため、レールCを比較的簡易な構成により下位置(a)においてロック可能にした裁断機Aを提供することができるものとなる。
【0105】
つまり、本実施形態における裁断機Aは、レールCを上下動させるために複雑なリンク機構等を採用しておらず、単にレールCの一端部と他端部とを別個独立に下位置(a)でロックし得るように構成しているため、レールCを下位置(a)にロックさせるための構造を簡易なものに設定しやすいものとなっている。しかも、前・後のレールロック機構H、Iの具体的構成は殆ど同じであるため、基本的に前後対称形状にした部品とすればよく、部品の製造及び管理において好適なものとなっている。より具体的に言えば、この実施形態では、前レール受け部材Qの形態は後レール受け部材Rに対して前後対称形状をなしており、前のレール支持部材Sの形態は後のレール支持部材Tに対して前後対称形状をなしている。
【0106】
また、使用者は、前のレールロック機構H及び後のレールロック機構Iを別個独立して作動し得るため、レールCを下位置(a)にロックする操作を明瞭に理解し得るものとなっている。
【0107】
しかも、前のレールロック機構H及び後のレールロック機構Iを別個独立して作動し得るため、一方のレールロック機構だけを下位置(a)に位置させて用紙Pの位置を調整するような作業等を行うことも可能となる。
【0108】
これに加えて、前のレールロック機構H及び後のレールロック機構Iが、別個独立して作動して、各レールロック機構H、Iの各々がレールCを下位置(a)にロックすることができるため、確実で強固に用紙Pを押さえ得るものとなっている。
【0109】
レールCが、前後方向に直線状に延びたレール本体Nと、このレール本体Nの前端部に取り付けられた前レール受け部材Qと、レール本体Nの後端部に取り付けられた後レール受け部材Rとを備えている。そして、前レール受け部材QとベースBとの間に配された付勢部材たる前スプリングDによりレールCが上位置(b)の方向に付勢されているとともに、後レール受け部材RとベースBとの間に配された付勢部材たる後スプリングEによりレールCが上位置(b)の方向に付勢されている。このため、レールCは、前スプリングD及び後スプリングEによって、上位置(b)に適切に保持されたものとなっている。
【0110】
前のレールロック機構H及び後のレールロック機構Iが、使用者によるスライダーJに対する下方への押圧操作に伴って、上位置(b)から下位置(a)に移動されたレールCを下位置(a)において別個独立にロックし得るものである。このため、レールCを上位置(b)から下位置(a)に移動する操作を、スライダーJをスライドさせて用紙Pを裁断する操作と分離させて行わずに、同時に行うことも可能となっている。
【0111】
前のレールロック機構Hが、ベースBに取り付けられ前レール受け部材Qの係合部64に係合してレールCを下位置(a)に保持し得る係止部s21を設けた前のレール支持部材Sを備えたものであり、後のレールロック機構Iが、ベースBに取り付けられ後レール受け部材Rの係合部84に係合してレールCを下位置(a)に保持し得る係止部t21を設けた後のレール支持部材Tを備えている。このため、前・後のレール支持部材S、Tを用いて、レールCを適切に下位置(a)においてロックし得るものとなっている。
【0112】
前のレール支持部材S及び後のレール支持部材Tが、レールCが上位置(b)から下位置(a)に移動する過程において、前レール受け部材Q及び後レール受け部材Rに設けた押圧傾斜面63、83により押圧される被押圧傾斜面s22、t22を備えたものであり、被押圧傾斜面s22、t22が押圧傾斜面63、83に押圧されることにより、前・後のレール支持部材S、Tが一時的に弾性変形により退避して、レールCを下位置(a)に移動させ得るように構成されている。このため、前・後のレール支持部材S、Tの弾性変形を利用して、レールCを下位置(a)に保持し得るものとなっている。
【0113】
前のレール支持部材S及び後のレール支持部材Tが、下位置(a)にロックされたレールCのロック状態を解除操作し得る解除操作部s23、t23を備えている。このため、前・後のレール支持部材S、Tの弾性変形を利用して、レールCが下位置(a)にロックされているロック状態を好適に解除し得るものとなっている。
【0114】
前のレール支持部材S及び後のレール支持部材Tが、レールCを下位置(a)においてロック可能なロック可能位置(sa)、(ta)とレールCをロックできない退避位置(sb)、(tb)を採り得るようにベースBに支持されている。このため、比較的少ない枚数の用紙Pを切断する際に、レールCが下位置(a)にロックされてしまうことがなく、操作時の煩わしさを与えにくいものとなっている。
【0115】
紙押さえFが、レールCに対して上下方向に相対移動可能に支持されており、レールCとの間に介設された紙押さえ用の付勢部材たる紙押さえ用スプリングGによりベースBの方向に付勢されている。このため、切断すべき用紙Pの枚数の多寡に応じて用紙Pを適切に押さえ得るものとなっている。しかも、前のレールロック機構H及び後のレールロック機構Iの何れか一方のみがロック状態に作動していたり、スライド操作に伴わせて前のレールロック機構H及び後のレールロック機構Iの何れか一方側から順番にロック状態に作動したりする場合にレールCがベースBの上向面k1に対して傾斜したものとなっていても、紙押さえFは、用紙Pを適切にベースBに対して押さえ得るものとなっている。
【0116】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0117】
裁断機の大きさは、裁断可能な用紙の枚数設定等に応じて種々採用することができるものである。
【0118】
前・後のレールロック機構の具体的な構成は種々の構成を採用することができるものであり、上述した実施形態に示したものに限定されるものではない。
【0119】
例えば、レールロック機構が、部材の弾性変形を利用しないものであってもよい。このようなものであっても、レールロック機構をベースに対してスライド動作させることにより、レールを下位置に保持し得るものとなる。
【0120】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0121】
A…裁断機
B…ベース
C…レール
F…紙押さえ
J…スライダー
P…用紙
(a)…下位置
(b)…上位置