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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】コンバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018041589
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019161715
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】長 寿典
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025526(WO,A1)
【文献】特開2010-233363(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029640(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0119060(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1巻線および第2巻線が形成されたトランスと、
一対の第1直流端子部と、
一対の第1接続ラインを介して前記第1巻線に接続された一対の第1交流端子部と、
一対の第2直流端子部と、
一対の第2接続ラインを介して前記第2巻線に接続された一対の第2交流端子部と、
前記一対の第1交流端子部のうちの一方の第1交流端子部で互いに接続された第1スイッチおよび第2スイッチで構成されて、当該第1スイッチ側の一方の端部が第1電力ラインを介して前記一対の第1直流端子部のうちの一方の第1直流端子部に接続され、かつ当該第2スイッチ側の他方の端部が第2電力ラインを介して前記一対の第1直流端子部のうちの他方の第1直流端子部に接続された直列スイッチ部と、
前記第1電力ラインおよび前記第2電力ラインのうちの少なくとも一方に挿入接続されたインダクタと、
直列接続された第3スイッチおよび第1キャパシタで構成されて、一方の端部が前記直列スイッチ部の前記一方の端部に接続されると共に他方の端部が前記一対の第1交流端子部のうちの他方の第1交流端子部に接続された第1直列回路部と、
直列接続された第4スイッチおよび第2キャパシタで構成されて、一方の端部が前記他方の第1交流端子部に接続されると共に他方の端部が前記直列スイッチ部の前記他方の端部に接続された第2直列回路部と、
前記一対の第2交流端子部と前記一対の第2直流端子部との間に配設された整流平滑部と、
前記一対の第1接続ラインおよび前記一対の第2接続ラインのうちの少なくとも一方に挿入接続されたLC共振回路と、
前記第1スイッチから前記第4スイッチに対するスイッチング制御を実行することにより、前記一対の第1直流端子部に入力される入力直流電圧を出力直流電圧に変換して前記一対の第2直流端子部間から出力させる制御部とを備え
前記制御部は、前記スイッチング制御を実行することにより、
前記第1スイッチから前記第4スイッチのうちの前記第4スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記入力直流電圧に基づいて前記インダクタにエネルギーを蓄積させると共に、前記第1キャパシタに蓄積されているエネルギーを放出させることで前記第1巻線に電流を供給する第1動作、
前記第1スイッチから前記第4スイッチのうちの前記第2スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記第1キャパシタに蓄積されているエネルギーを放出させることで前記第1巻線に電流を供給すると共に、前記入力直流電圧および前記インダクタから放出されるエネルギーに基づいて前記第2キャパシタにエネルギーを蓄積させる第2動作、
前記第1スイッチから前記第4スイッチのうちの前記第3スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記入力直流電圧に基づいて前記インダクタにエネルギーを蓄積させると共に、前記第2キャパシタに蓄積されているエネルギーを放出させることで前記第1巻線に電流を供給する第3動作、
並びに前記第1スイッチから前記第4スイッチのうちの前記第1スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記第2キャパシタに蓄積されているエネルギーを放出させることで前記第1巻線に電流を供給すると共に、前記入力直流電圧および前記インダクタから放出されるエネルギーに基づいて前記第1キャパシタにエネルギーを蓄積させる第4動作を、前記直列スイッチ部、前記第1直列回路部および前記第2直列回路部に繰り返し実行させるコンバータ装置。
【請求項2】
前記第1スイッチから前記第4スイッチは、ボディダイオードを内蔵したFETで構成されている請求項1記載のコンバータ装置。
【請求項3】
第1巻線および第2巻線が形成されたトランスと、
一対の第1直流端子部と、
一対の第1接続ラインを介して前記第1巻線に接続された一対の第1交流端子部と、
一対の第2直流端子部と、
一対の第2接続ラインを介して前記第2巻線に接続された一対の第2交流端子部と、
前記一対の第1交流端子部のうちの一方の第1交流端子部で互いに接続された第1スイッチおよび第2スイッチで構成されて、当該第1スイッチ側の一方の端部が第1電力ラインを介して前記一対の第1直流端子部のうちの一方の第1直流端子部に接続され、かつ当該第2スイッチ側の他方の端部が第2電力ラインを介して前記一対の第1直流端子部のうちの他方の第1直流端子部に接続された第1直列スイッチ部と、
前記第1電力ラインおよび前記第2電力ラインのうちの少なくとも一方に挿入接続されたインダクタと、
前記一対の第1交流端子部のうちの他方の第1交流端子部で互いに接続された第3スイッチおよび第4スイッチで構成されて、当該第3スイッチ側の一方の端部が第5スイッチを介して前記第1直列スイッチ部の一方の端部に接続され、かつ当該第4スイッチ側の他方の端部が第6スイッチを介して前記第1直列スイッチ部の他方の端部に接続された第2直列スイッチ部と、
前記第2直列スイッチ部に並列接続されたキャパシタと、
前記一対の第2交流端子部と前記一対の第2直流端子部との間に配設された整流平滑部と、
前記一対の第1接続ラインおよび前記一対の第2接続ラインのうちの少なくとも一方に挿入接続されたLC共振回路と、
前記第1スイッチから前記第6スイッチに対するスイッチング制御を実行することにより、前記一対の第1直流端子部に入力される入力直流電圧を出力直流電圧に変換して前記一対の第2直流端子部間から出力させる制御部とを備え
前記制御部は、前記スイッチング制御を実行することにより、
前記第1スイッチから前記第6スイッチのうちの前記第3スイッチおよび前記第6スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記入力直流電圧に基づいて前記インダクタにエネルギーを蓄積させると共に、前記キャパシタに蓄積されているエネルギーを放出させることで前記第1巻線に電流を供給する第1動作、
前記第1スイッチから前記第6スイッチのうちの前記第2スイッチおよび前記第3スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記キャパシタにエネルギーを蓄積させつつ、前記入力直流電圧および前記インダクタから放出されるエネルギーに基づいて前記第1巻線に電流を供給する第2動作、
前記第1スイッチから前記第6スイッチのうちの前記第4スイッチおよび前記第5スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記入力直流電圧に基づいて前記インダクタにエネルギーを蓄積させると共に、前記キャパシタに蓄積されているエネルギーを放出させることで前記第1巻線に電流を供給する第3動作、
並びに前記第1スイッチから前記第6スイッチのうちの前記第1スイッチおよび前記第4スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記キャパシタにエネルギーを蓄積させつつ、前記入力直流電圧および前記インダクタから放出されるエネルギーに基づいて前記第1巻線に電流を供給する第4動作を、前記第1直列スイッチ部、前記第2直列スイッチ部、前記第5スイッチおよび前記第6スイッチに繰り返し実行させるコンバータ装置。
【請求項4】
前記第1スイッチから前記第6スイッチは、ボディダイオードを内蔵したFETで構成されている請求項記載のコンバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力直流電圧を出力直流電圧に変換して出力するコンバータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のコンバータ装置として、下記の非特許文献1に開示されたコンバータ装置(電流共振型DC-DCコンバータ)が知られている。このコンバータ装置では、通常、入力される電圧(入力電圧)に対して、等価的にLC共振回路として機能するこのコンバータ装置と負荷(このコンバータ装置において変換した電圧を供給する負荷)とが直列接続された状態となるように構成される。また、このコンバータ装置では、動作周波数(スイッチング周波数)を変化させることでLC共振回路として機能するこのコンバータ装置のインピーダンスを変化させることができる。このことから、このコンバータ装置では、動作周波数を変化させることで、負荷に供給する電圧(出力電圧)を安定化させている。
【0003】
しかしながら、このコンバータ装置のように動作周波数を変化させて出力電圧を安定化させる構成には、動作条件によって動作周波数を高くせざるを得ない場合において、スイッチング損失やトランスなどの磁性部品での損失が増加するという課題が生じる。
【0004】
この課題については、下記の非特許文献2に開示されたコンバータ装置(電流共振型DC-DCコンバータ)の構成を採用することにより、改善することが可能である。詳細には、このコンバータ装置は、昇圧回路と、固定周波数(一定のスイッチング周波数)で動作する電流共振コンバータとで構成される2ステージ型コンバータとして構成されて、昇圧回路のスイッチング動作を制御(PWM制御)することにより、昇圧回路から電流共振コンバータに供給される直流電圧を変化させることができる。このことから、このコンバータ装置では、電流共振コンバータでのスイッチング損失や磁性部品での損失の増加を回避しつつ、負荷に供給する電圧(出力電圧)の安定化が可能となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】ROBERT L. STEIGERWALD、”A Comparison of Half-Bridge Resonant Converter Topologies”、IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS、VOL. 3、NO. 2、APRIL 1988
【文献】Jun-Ho Kim、他3名、”Analysis and Design of Boost-LLC Converter for High Power Density AC-DC Adapter”、2013 IEEE、[online]、[平成30年2月15日検索]、インターネット<URL:http://koasas.kaist.ac.kr/bitstream/10203/187705/1/77644.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した非特許文献2に開示のコンバータ装置には、以下のような解決すべき課題が存在している。すなわち、このコンバータ装置では、昇圧回路がダイオードを有する構成のため、このコンバータ装置には、このダイオードによるリカバリ損失が発生し、このリカバリ損失は一般的に大きいという課題が存在している。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、スイッチング周波数を変化させることなく出力電圧を制御し得る1ステージ型のコンバータ装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明に係るコンバータ装置は、第1巻線および第2巻線が形成されたトランスと、一対の第1直流端子部と、一対の第1接続ラインを介して前記第1巻線に接続された一対の第1交流端子部と、一対の第2直流端子部と、一対の第2接続ラインを介して前記第2巻線に接続された一対の第2交流端子部と、前記一対の第1交流端子部のうちの一方の第1交流端子部で互いに接続された第1スイッチおよび第2スイッチで構成されて、当該第1スイッチ側の一方の端部が第1電力ラインを介して前記一対の第1直流端子部のうちの一方の第1直流端子部に接続され、かつ当該第2スイッチ側の他方の端部が第2電力ラインを介して前記一対の第1直流端子部のうちの他方の第1直流端子部に接続された直列スイッチ部と、前記第1電力ラインおよび前記第2電力ラインのうちの少なくとも一方に挿入接続されたインダクタと、直列接続された第3スイッチおよび第1キャパシタで構成されて、一方の端部が前記直列スイッチ部の前記一方の端部に接続されると共に他方の端部が前記一対の第1交流端子部のうちの他方の第1交流端子部に接続された第1直列回路部と、直列接続された第4スイッチおよび第2キャパシタで構成されて、一方の端部が前記他方の第1交流端子部に接続されると共に他方の端部が前記直列スイッチ部の前記他方の端部に接続された第2直列回路部と、前記一対の第2交流端子部と前記一対の第2直流端子部との間に配設された整流平滑部と、前記一対の第1接続ラインおよび前記一対の第2接続ラインのうちの少なくとも一方に挿入接続されたLC共振回路と、前記第1スイッチから前記第4スイッチに対するスイッチング制御を実行することにより、前記一対の第1直流端子部に入力される入力直流電圧を出力直流電圧に変換して前記一対の第2直流端子部間から出力させる制御部とを備え、前記制御部は、前記スイッチング制御を実行することにより、前記第1スイッチから前記第4スイッチのうちの前記第4スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記入力直流電圧に基づいて前記インダクタにエネルギーを蓄積させると共に、前記第1キャパシタに蓄積されているエネルギーを放出させることで前記第1巻線に電流を供給する第1動作、前記第1スイッチから前記第4スイッチのうちの前記第2スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記第1キャパシタに蓄積されているエネルギーを放出させることで前記第1巻線に電流を供給すると共に、前記入力直流電圧および前記インダクタから放出されるエネルギーに基づいて前記第2キャパシタにエネルギーを蓄積させる第2動作、前記第1スイッチから前記第4スイッチのうちの前記第3スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記入力直流電圧に基づいて前記インダクタにエネルギーを蓄積させると共に、前記第2キャパシタに蓄積されているエネルギーを放出させることで前記第1巻線に電流を供給する第3動作、並びに前記第1スイッチから前記第4スイッチのうちの前記第1スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記第2キャパシタに蓄積されているエネルギーを放出させることで前記第1巻線に電流を供給すると共に、前記入力直流電圧および前記インダクタから放出されるエネルギーに基づいて前記第1キャパシタにエネルギーを蓄積させる第4動作を、前記直列スイッチ部、前記第1直列回路部および前記第2直列回路部に繰り返し実行させる
【0010】
これにより、従来技術で説明した2ステージ型コンバータにおいて必須となっている昇圧回路が不要な1ステージ型として構成することができるため、この昇圧回路のダイオードで発生していたリカバリ損失を無くすことができる。また、第1スイッチと第2スイッチのオンデューティを変化させることで、出力直流電圧を制御することができる(つまり、第1スイッチから第4スイッチのスイッチング周波数を変化させることなく出力直流電圧を制御することができる)。
【0011】
本発明に係るコンバータ装置では、前記第1スイッチから前記第4スイッチは、ボディダイオードを内蔵したFETで構成されている。これにより、各スイッチをOFF状態からON状態に移行させる際に、ボディダイオードに電流を流した状態でON状態に移行させること(つまり、ドレイン-ソース間電圧が零ボルトに近い状態でON状態に移行させること(零ボルトスイッチング))が可能となることから、各スイッチでのターンオン損失を低減することができる。
【0012】
また、本発明に係るコンバータ装置は、第1巻線および第2巻線が形成されたトランスと、一対の第1直流端子部と、一対の第1接続ラインを介して前記第1巻線に接続された一対の第1交流端子部と、一対の第2直流端子部と、一対の第2接続ラインを介して前記第2巻線に接続された一対の第2交流端子部と、前記一対の第1交流端子部のうちの一方の第1交流端子部で互いに接続された第1スイッチおよび第2スイッチで構成されて、当該第1スイッチ側の一方の端部が第1電力ラインを介して前記一対の第1直流端子部のうちの一方の第1直流端子部に接続され、かつ当該第2スイッチ側の他方の端部が第2電力ラインを介して前記一対の第1直流端子部のうちの他方の第1直流端子部に接続された第1直列スイッチ部と、前記第1電力ラインおよび前記第2電力ラインのうちの少なくとも一方に挿入接続されたインダクタと、前記一対の第1交流端子部のうちの他方の第1交流端子部で互いに接続された第3スイッチおよび第4スイッチで構成されて、当該第3スイッチ側の一方の端部が第5スイッチを介して前記第1直列スイッチ部の一方の端部に接続され、かつ当該第4スイッチ側の他方の端部が第6スイッチを介して前記第1直列スイッチ部の他方の端部に接続された第2直列スイッチ部と、前記第2直列スイッチ部に並列接続されたキャパシタと、前記一対の第2交流端子部と前記一対の第2直流端子部との間に配設された整流平滑部と、前記一対の第1接続ラインおよび前記一対の第2接続ラインのうちの少なくとも一方に挿入接続されたLC共振回路と、前記第1スイッチから前記第6スイッチに対するスイッチング制御を実行することにより、前記一対の第1直流端子部に入力される入力直流電圧を出力直流電圧に変換して前記一対の第2直流端子部間から出力させる制御部とを備え、前記制御部は、前記スイッチング制御を実行することにより、前記第1スイッチから前記第6スイッチのうちの前記第3スイッチおよび前記第6スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記入力直流電圧に基づいて前記インダクタにエネルギーを蓄積させると共に、前記キャパシタに蓄積されているエネルギーを放出させることで前記第1巻線に電流を供給する第1動作、前記第1スイッチから前記第6スイッチのうちの前記第2スイッチおよび前記第3スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記キャパシタにエネルギーを蓄積させつつ、前記入力直流電圧および前記インダクタから放出されるエネルギーに基づいて前記第1巻線に電流を供給する第2動作、前記第1スイッチから前記第6スイッチのうちの前記第4スイッチおよび前記第5スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記入力直流電圧に基づいて前記インダクタにエネルギーを蓄積させると共に、前記キャパシタに蓄積されているエネルギーを放出させることで前記第1巻線に電流を供給する第3動作、並びに前記第1スイッチから前記第6スイッチのうちの前記第1スイッチおよび前記第4スイッチのみをOFF状態にさせることにより、前記キャパシタにエネルギーを蓄積させつつ、前記入力直流電圧および前記インダクタから放出されるエネルギーに基づいて前記第1巻線に電流を供給する第4動作を、前記第1直列スイッチ部、前記第2直列スイッチ部、前記第5スイッチおよび前記第6スイッチに繰り返し実行させる
【0014】
これにより、従来技術で説明した2ステージ型コンバータにおいて必須となっている昇圧回路が不要な1ステージ型として構成することができるため、この昇圧回路のダイオードで発生していたリカバリ損失を無くすことができる。また、第1スイッチと第2スイッチのオンデューティを変化させることで、出力直流電圧を制御することができる(つまり、第1スイッチから第6スイッチのスイッチング周波数を変化させることなく出力直流電圧を制御することができる)。
【0015】
本発明に係るコンバータ装置では、前記第1スイッチから前記第6スイッチは、ボディダイオードを内蔵したFETで構成されている。これにより、各スイッチをOFF状態からON状態に移行させる際に、ボディダイオードに電流を流した状態でON状態に移行させること(つまり、ドレイン-ソース間電圧が零ボルトに近い状態でON状態に移行させること(零ボルトスイッチング))が可能となることから、各スイッチでのターンオン損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1巻線側に配設された各スイッチのオンデューティを変化させることで、出力直流電圧を制御することができる(つまり、これらスイッチのスイッチング周波数を変化させることなく出力電圧を制御できる)と共に、従来技術で説明した2ステージ型コンバータにおいて必須となっている昇圧回路が不要な1ステージ型のため、この昇圧回路のダイオードで発生していたリカバリ損失を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】コンバータ装置1Aの構成図である。
図2】コンバータ装置1Aの動作を説明するための波形図である。
図3】コンバータ装置1Aの図2における期間T1での動作を説明するための構成図である。
図4】コンバータ装置1Aの図2における期間T2での動作を説明するための構成図である。
図5】コンバータ装置1Aの図2における期間T3での動作を説明するための構成図である。
図6】コンバータ装置1Aの図2における期間T4での動作を説明するための構成図である。
図7】コンバータ装置1Bの構成図である。
図8】コンバータ装置1Bの動作を説明するための波形図である。
図9】コンバータ装置1Bの図8における期間T1での動作を説明するための第1巻線2a側の構成図である。
図10】コンバータ装置1Bの図8における期間T2での動作を説明するための第1巻線2a側の構成図である。
図11】コンバータ装置1Bの図8における期間T3での動作を説明するための第1巻線2a側の構成図である。
図12】コンバータ装置1Bの図8における期間T4での動作を説明するための第1巻線2a側の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、コンバータ装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
まず、コンバータ装置の一例としてのコンバータ装置1Aの構成について図1を参照して説明する。このコンバータ装置1Aは、トランス2、一対の第1直流端子部3a,3b、一対の第1交流端子部4a,4b、一対の第2直流端子部5a,5b、一対の第2交流端子部6a,6b、直列スイッチ部7、インダクタ8、第1直列回路部9、第2直列回路部10、整流平滑部11、LC共振回路12、および制御部13を備え、一対の第1直流端子部3a,3b間に入力される入力直流電圧Vin(本例では一例として、図1に示すように直流電源PSから出力される電圧であるものとする)を出力直流電圧Voutに変換して一対の第2直流端子部5a,5bに接続された負荷LDへ供給可能に構成されている。
【0020】
詳細には、トランス2は、本例では一例として、共通の磁気コア(図示せず)に形成されて、互いに磁気的に結合する2つの巻線(第1巻線2aおよび第2巻線2b)を備えている。一対の第1交流端子部4a,4bは、一対の第1接続ラインL1a,L1bを介して第1巻線2aに接続されている。また、本例では、LC共振回路12が、この第1接続ラインL1a,L1bに挿入接続されている。具体的には、本例では、LC共振回路12は、第1接続ラインL1aに挿入接続された共振キャパシタ12aと、第1接続ラインL1bに挿入接続された共振インダクタ12bとを備えて構成されている。このため、本例では、第1交流端子部4aは、共振キャパシタ12aが挿入接続された第1接続ラインL1aを介して第1巻線2aの一端に接続され、また第1交流端子部4bは、共振インダクタ12bが挿入接続された第1接続ラインL1bを介して第1巻線2aの他端に接続されている。なお、共振キャパシタ12aおよび共振インダクタ12bについては、この構成に代えて、図示はしないが、共振キャパシタ12aを第1接続ラインL1bに挿入接続し、共振インダクタ12bを第1接続ラインL1aに挿入接続する構成とすることもできる。
【0021】
一対の第2交流端子部6a,6bは、一対の第2接続ラインL2a,L2bを介して第2巻線2bに接続されている。なお、本例ではLC共振回路12は、上記したように第1接続ラインL1a,L1bに挿入接続されているが、この構成に限定されるものではなく、第1接続ラインL1a,L1bおよび第2接続ラインL2a,L2bのうちの少なくとも一方に挿入接続されていればよい。
【0022】
直列スイッチ部7は、第1交流端子部4a,4bのうちの一方の第1交流端子部(本例では、第1交流端子部4a)で互いに接続された第1スイッチ7aおよび第2スイッチ7bの直列回路で構成されている。本例では一例として、第1スイッチ7aおよび第2スイッチ7bは共にnチャネル型のFET(ボディダイオードを内蔵する電界効果型トランジスタ)で構成されて、第1スイッチ7aのソース端子と第2スイッチ7bのドレイン端子が第1交流端子部4aで接続されている。また、この直列回路の一方の端部(第1スイッチ7a側の端部。本例では第1スイッチ7aのドレイン端子)は、第1電力ラインLp1を介して一対の第1直流端子部3a,3bのうちの一方の第1直流端子部(本例では、第1直流端子部3a)に接続されている。また、この直列回路の他方の端部(第2スイッチ7b側の端部。本例では第2スイッチ7bのソース端子)は、第2電力ラインLp2を介して一対の第1直流端子部3a,3bのうちの他方の第1直流端子部(本例では、第1直流端子部3b)に接続されている。
【0023】
インダクタ8は、第1電力ラインLp1および第2電力ラインLp2のうちの少なくとも一方に挿入接続されている。本例では一例として、インダクタ8は、第1電力ラインLp1に挿入接続されているが、図示はしないが、第2電力ラインLp2に挿入接続される構成であってもよいし、第1電力ラインLp1および第2電力ラインLp2の双方に分けて挿入接続される構成であってもよい。
【0024】
第1直列回路部9は、直列接続された第3スイッチ9aおよび第1キャパシタ9bで構成されている。本例では一例として、第3スイッチ9aはnチャネル型のFET(ボディダイオードを内蔵する電界効果型トランジスタ)で構成されて、第3スイッチ9aのドレイン端子と第1キャパシタ9bの一方の端子とが接続されている。また、第1直列回路部9は、一方の端部(本例では第3スイッチ9aのソース端子)が直列スイッチ部7の一方の端部(本例では第1スイッチ7aのドレイン端子)に接続されると共に、他方の端部(本例では第1キャパシタ9bの他方の端子)が一対の第1交流端子部4a,4bのうちの他方の第1交流端子部(本例では、第1交流端子部4b)に接続されている。なお、第1直列回路部9は、この構成に代えて、直列スイッチ部7の一方の端部側に第1キャパシタ9bを配設し、かつ第1交流端子部4b側に第3スイッチ9aを同じ向きで配設した構成であってもよい。
【0025】
第2直列回路部10は、直列接続された第4スイッチ10aおよび第2キャパシタ10bで構成されている。本例では一例として、第4スイッチ10aはnチャネル型のFET(ボディダイオードを内蔵する電界効果型トランジスタ)で構成されて、第4スイッチ10aのソース端子と第2キャパシタ10bの一方の端子とが接続されている。また、第2直列回路部10は、一方の端部(本例では第2キャパシタ10bの他方の端子)が他方の第1交流端子部(本例では、第1交流端子部4b)に接続されると共に、他方の端部(本例では第4スイッチ10aのドレイン端子)が直列スイッチ部7の他方の端部(本例では第2スイッチ7bのソース端子)に接続されている。なお、第2直列回路部10は、この構成に代えて、第1交流端子部4b側に第4スイッチ10aを同じ向きで配設し、かつ直列スイッチ部7の他方の端部側に第2キャパシタ10bを配設した構成であってもよい。
【0026】
整流平滑部11は、一対の第2交流端子部6a,6bと一対の第2直流端子部5a,5bとの間に配設されている。この構成により、整流平滑部11は、第2巻線2bに誘起される電圧(交流電圧である誘起電圧V2)を出力直流電圧Voutに変換して一対の第2直流端子部5a,5b間に出力する。本例では一例として、整流平滑部11は、図1に示すように、4つのダイオード11a,11b,11c,11dで構成される整流回路(ブリッジ形全波整流回路)とキャパシタ11eとを備えている。具体的には、ダイオード11aのアノード端子とダイオード11bのカソード端子が第2交流端子部6aで接続され、ダイオード11cのアノード端子とダイオード11dのカソード端子が第2交流端子部6bで接続され、ダイオード11aおよびダイオード11cの各カソード端子が第2直流端子部5aに接続され、かつダイオード11bおよびダイオード11dの各アノード端子が第2直流端子部5bに接続されている。また、キャパシタ11eは、ダイオード11cのカソード端子とダイオード11dのアノード端子との間(つまり、第2直流端子部5a,5b間)に接続されている。
【0027】
制御部13は、第1スイッチ7aから第4スイッチ10aまでの4つのスイッチに対して駆動信号S1,S2,S3,S4をそれぞれ出力することにより、これら4つのスイッチ7a~10aに対するスイッチング制御を実行して、入力直流電圧Vinを交流電圧V1に変換して第1交流端子部4a,4b間に出力する動作を第1巻線2a側の回路(直列スイッチ部7、インダクタ8、第1直列回路部9および第2直列回路部10で構成される電力変換回路)に実行させる。本例では、第1スイッチ7aから第4スイッチ10aまでの各スイッチは上記のようにFETで構成されているため、制御部13は、各スイッチ7a~10aに対する適切な駆動回路(図示せず)を備えて、各スイッチ7a~10aのゲート・ソース間に、各駆動信号S1~S4のうちの対応する駆動信号をソース端子の電位を基準とする正極性の電圧信号として出力するものとする。
【0028】
次に、コンバータ装置1Aの動作について図1図6を参照して説明する。
【0029】
制御部13は、各駆動信号S1~S4を、図2に示す期間T1から期間T4までの出力状態を1サイクルとして、第1スイッチ7aから第4スイッチ10aに繰り返し出力する。なお、図2中の「ON」、「OFF」は、駆動信号S1~S4に対応する各スイッチ7a~10aのON・OFF状態を示している。以下、各期間T1,T2,T3,T4に分けて動作を説明する。
【0030】
まず、期間T1では、図2に示すように駆動信号S1がゼロボルト(ゲート閾値電圧未満の電圧の一例)から正電圧(ゲート閾値電圧以上の電圧)に切り替えられることにより、図2,3に示すように、第1スイッチ7aは、OFF状態からON状態に移行する。また、図2に示すように駆動信号S4が正電圧からゼロボルトに切り替えられることにより、図2,3に示すように、第4スイッチ10aは、ON状態からOFF状態に移行する。また、図2に示すように他の駆動信号S2,S3は正電圧に維持されることから、図2,3に示すように、第2スイッチ7bおよび第3スイッチ9aはON状態を継続する。つまり、第4スイッチ10aのみがOFF状態になる。
【0031】
この場合、第1巻線2a側(第1直流端子部3a,3b側)の回路では、まず、第4スイッチ10aがOFF状態に移行し、続いて第1スイッチ7aがON状態に移行する。このため、第1スイッチ7aがON状態に移行する直前に、期間T4において後述するように第1巻線2aに流れていた電流Ieが共振キャパシタ12a、OFF状態の第1スイッチ7aのボディダイオイード、ON状態の第3スイッチ9a、第1キャパシタ9bおよび共振インダクタ12bを経由して第1巻線2aに戻る電流経路に、図3に示すように電流Ibとして同図に示す向きとは逆向きに流れる。したがって、第1スイッチ7aは、ボディダイオードに電流Ibが流れている状態、つまりドレイン-ソース間電圧が零ボルトに近い状態でON状態に移行する(零ボルトスイッチングする)。このため、第1スイッチ7aでのターンオン損失は大幅に低減されている。
【0032】
また、第4スイッチ10aがOFF状態に移行することにより、期間T4において後述するように実行される第1キャパシタ9bへの充電(第1キャパシタ9bへのエネルギーの蓄積)が完了し、続いて第1スイッチ7aがON状態に移行することにより、上記の向きで電流Ibが流れている上記の電流経路に、この向きとは逆の向き(図3に示す向き)で電流が流れ得る状態となる。このため、第1キャパシタ9bに蓄積されたエネルギーが放出されることにより、電流Ibは、この電流経路に、第1キャパシタ9bから第3スイッチ9a、ON状態の第1スイッチ7a、共振キャパシタ12a、第1巻線2aおよび共振インダクタ12bを経由して第1キャパシタ9bに戻る方向(図3に示す向き)で流れるようになる。この電流経路にはLC共振回路12(共振キャパシタ12aおよび共振インダクタ12b)が含まれていることから、電流Ib(第3スイッチ9aの電流)の波形は図2に示すように共振波形(正弦波状の波形)となる。また、第1巻線2aに図3に示す向きで電流Ibが流れるため、第2巻線2bには、ダイオード11c,11dの接続点(第2交流端子部6b)に対してダイオード11a,11bの接続点(第2交流端子部6a)が高電位となる電圧(誘起電圧V2)が誘起する。
【0033】
また、ON状態の第2スイッチ7bと共に、第1スイッチ7aがON状態に移行することにより、直流電源PS(入力直流電圧Vin)がインダクタ8を介して短絡される。これにより、図3に示すように、直流電源PSからインダクタ8、第1スイッチ7aおよび第2スイッチ7bを経由して直流電源PSに戻る他の電流経路が形成されて、この電流経路に電流Iaが図3において矢印で示す向きで流れる。したがって、この電流Iaがインダクタ8に流れることにより、インダクタ8にエネルギーが蓄積される。また、これら2つの電流経路が重なる第1スイッチ7aには、電流Ia,Ibが同じ向きで流れるため、電流Ia,Ibの合成電流(Ia+Ib)が流れる。
【0034】
このように、期間T1では、第1巻線2a側の回路(つまり、直列スイッチ部7、第1直列回路部9および第2直列回路部10)が、入力直流電圧Vinに基づいてインダクタ8にエネルギーを蓄積させると共に、第1キャパシタ9bに蓄積されているエネルギーを放出させることで第1巻線2aに電流Ibを供給する第1動作を実行する。
【0035】
一方、第2巻線2b側(第2直流端子部5a,5b側)の回路では、上記した第1巻線2aへの電流Ibの流入(図3で示す向きでの流入)に起因して、第2交流端子部6bに対して第2交流端子部6aが高電位となる誘起電圧V2が第2巻線2bに誘起するため、この誘起電圧V2に基づき、図3に示すように、第2巻線2bからダイオード11a、負荷LDおよびダイオード11dを経由して第2巻線2bに戻る電流経路に電流Icが流れる(負荷LDに出力直流電圧Voutが出力される)。
【0036】
次いで、期間T2では、図2に示すように、駆動信号S2が正電圧からゼロボルトに切り替わり、駆動信号S4がゼロボルトから正電圧に切り替わることにより、図2,4に示すように、第2スイッチ7bがON状態からOFF状態に移行し、第4スイッチ10aがOFF状態からON状態に移行する。なお、他の各スイッチは、対応する駆動信号が期間T1のときと同じであることから、期間T1のときのON・OFF状態を継続する。つまり、第2スイッチ7bのみがOFF状態になる。
【0037】
この場合、第1巻線2a側の回路では、まず、第2スイッチ7bがOFF状態に移行し、続いて第4スイッチ10aがON状態に移行する。このため、第4スイッチ10aがON状態に移行する直前に、直流電源PSの電圧(入力直流電圧Vin)にインダクタ8の両端間電圧(期間T1において、インダクタ8に印加されていた電圧。つまり、入力直流電圧Vinと同等の電圧)が加算された電圧の第1直列回路部9および第2直列回路部10への印加が開始される。これにより、直流電源PSからのエネルギーに加えて、インダクタ8から放出されるエネルギーにより、図4に示すように、直流電源PSからインダクタ8、ON状態の第3スイッチ9a、第1キャパシタ9b、第2キャパシタ10bおよびOFF状態の第4スイッチ10aのボディダイオードを経由して直流電源PSに戻る電流経路に図4に示す向きで電流Idが流れる。したがって、第4スイッチ10aは、ボディダイオードに電流Idが流れている状態、つまりドレイン-ソース間電圧が零ボルトに近い状態でON状態に移行する(零ボルトスイッチングする)。このため、第4スイッチ10aでのターンオン損失は大幅に低減されている。
【0038】
また、第2キャパシタ10bは、このように電流Idが流れることにより、直流電源PSおよびインダクタ8の双方から放出されるエネルギーで充電される(第2キャパシタ10bにエネルギーが蓄積される)。
【0039】
また、第1スイッチ7aおよび第3スイッチ9aのON状態が継続されているため、図4に示すように、期間T1のときと同じ電流経路(第1キャパシタ9bから第3スイッチ9a、第1スイッチ7a、共振キャパシタ12a、第1巻線2aおよび共振インダクタ12bを経由して第1キャパシタ9bに戻る電流経路)に電流Ibが継続して流れて、第1キャパシタ9bの放電(第1キャパシタ9bからのエネルギーの放出)が継続される。
【0040】
また、これら2つの電流経路が重なる第1直列回路部9(第3スイッチ9aおよび第1キャパシタ9b)には、電流Ib,Idが逆向きで流れるため、電流Ib,Idの合成電流(Ib-Id)が第3スイッチ9aに流れる。また、第1スイッチ7aには、期間T1において流れていた電流Iaが流れなくなり、電流Ibのみが流れる(つまり、期間T1のときよりも、この電流Ia分だけ少ない電流が流れる)。
【0041】
このように、期間T2では、第1巻線2a側の回路(つまり、直列スイッチ部7、第1直列回路部9および第2直列回路部10)が、第1キャパシタ9bに蓄積されているエネルギーを放出させつつ(第1巻線2aに電流Ibを供給させつつ)、入力直流電圧Vinおよびインダクタ8から放出されるエネルギーに基づいて第2キャパシタ10bにエネルギーを蓄積させる第2動作を実行する。
【0042】
一方、第2巻線2b側の回路では、上記したように第1巻線2aへ電流Ibが同じ向きで継続して流入していることに起因して、第2交流端子部6a,6b間に誘起電圧V2が同じ極性で継続して誘起していることから、図4に示すように、期間T1のときと同じ電流経路に電流Icが継続して流れる(負荷LDへの出力直流電圧Voutの出力が継続される)。
【0043】
続いて、期間T3では、図2に示すように駆動信号S2がゼロボルトから正電圧に切り替えられることにより、図2,5に示すように、第2スイッチ7bは、OFF状態からON状態に移行する。また、図2に示すように駆動信号S3が正電圧からゼロボルトに切り替えられることにより、図2,5に示すように、第3スイッチ9aは、ON状態からOFF状態に移行する。なお、他の各スイッチは、対応する駆動信号が期間T2のときと同じであることから、期間T2のときのON・OFF状態を継続する。つまり、第3スイッチ9aのみがOFF状態になる。
【0044】
この場合、第1巻線2a側の回路では、まず、第3スイッチ9aがOFF状態に移行し、続いて第2スイッチ7bがON状態に移行する。このため、第2スイッチ7bがON状態に移行する直前に、期間T2において第1巻線2aに流れていた電流Ibが共振インダクタ12b、第2キャパシタ10b、ON状態の第4スイッチ10a、OFF状態の第2スイッチ7bのボディダイオイード、および共振キャパシタ12aを経由して第1巻線2aに戻る電流経路に、図5に示すように電流Ieとして同図に示す向きとは逆向きに流れる。したがって、第2スイッチ7bは、ボディダイオードに電流Ieが流れている状態、つまりドレイン-ソース間電圧が零ボルトに近い状態でON状態に移行する(零ボルトスイッチングする)。このため、第2スイッチ7bでのターンオン損失は大幅に低減されている。
【0045】
また、第3スイッチ9aがOFF状態に移行することにより、期間T2において実行されていた第1キャパシタ9bへの充電(第1キャパシタ9bへのエネルギーの蓄積)が完了し、続いて第2スイッチ7bがON状態に移行することにより、上記の向きで電流Ieが流れている上記の電流経路に、この向きとは逆の向き(図5に示す向き)で電流が流れ得る状態となる。このため、第2キャパシタ10bに蓄積されたエネルギーが放出されることにより、電流Ieは、この電流経路に、第2キャパシタ10bから共振インダクタ12b、第1巻線2a、共振キャパシタ12a、ON状態の第2スイッチ7bおよび第4スイッチ10aを経由して第2キャパシタ10bに戻る方向(図5に示す向き)で流れるようになる。この電流経路にはLC共振回路12が含まれていることから、電流Ie(第4スイッチ10aの電流)の波形は図2に示すように共振波形(正弦波状の波形)となる。また、期間T1,T2での電流Ibとは逆向きのIeが第1巻線2aに流れるため、第2巻線2bには、第2交流端子部6aに対して第2交流端子部6bが高電位となる電圧(誘起電圧V2)が誘起する。
【0046】
また、ON状態の第1スイッチ7aと共に、第2スイッチ7bがON状態に移行することにより、直流電源PSがインダクタ8を介して短絡される。これにより、図5に示すように、直流電源PSからインダクタ8、第1スイッチ7aおよび第2スイッチ7bを経由して直流電源PSに戻る他の電流経路が形成されて、この電流経路に電流Iaが図5において矢印で示す向きで流れる。したがって、この電流Iaがインダクタ8に流れることにより、インダクタ8にエネルギーが蓄積される。また、これら2つの電流経路が重なる第2スイッチ7bには、電流Ia,Ieが同じ向きで流れるため、電流Ia,Ieの合成電流(Ia+Ie)が流れる。
【0047】
このように、期間T3では、第1巻線2a側の回路(つまり、直列スイッチ部7、第1直列回路部9および第2直列回路部10)が、入力直流電圧Vinに基づいてインダクタ8にエネルギーを蓄積させると共に、第2キャパシタ10bに蓄積されているエネルギーを放出させることで第1巻線2aに電流Ieを供給する第3動作を実行する。
【0048】
一方、第2巻線2b側の回路では、上記した第1巻線2aへの電流Ieの流入に起因して、第2交流端子部6aに対して第2交流端子部6bが高電位となる誘起電圧V2が第2巻線2bに誘起するため、この誘起電圧V2に基づき、図5に示すように、第2巻線2bからダイオード11c、負荷LDおよびダイオード11bを経由して第2巻線2bに戻る電流経路に電流Ifが流れる(負荷LDに出力直流電圧Voutが出力される)。
【0049】
次いで、期間T4では、図2に示すように、駆動信号S1が正電圧からゼロボルトに切り替わり、駆動信号S3がゼロボルトから正電圧に切り替わることにより、図2,6に示すように、第1スイッチ7aがON状態からOFF状態に移行し、第3スイッチ9aがOFF状態からON状態に移行する。なお、他の各スイッチは、対応する駆動信号が期間T3のときと同じであることから、期間T3のときのON・OFF状態を継続する。つまり、第1スイッチ7aのみがOFF状態になる。
【0050】
この場合、第1巻線2a側の回路では、まず、第1スイッチ7aがOFF状態に移行し、続いて第3スイッチ9aがON状態に移行する。このため、第3スイッチ9aがON状態に移行する直前に、直流電源PSの電圧(入力直流電圧Vin)にインダクタ8の両端間電圧(期間T3において、インダクタ8に印加されていた電圧。つまり、入力直流電圧Vinと同等の電圧)が加算された電圧の第1直列回路部9および第2直列回路部10への印加が開始される。これにより、直流電源PSからのエネルギーに加えて、インダクタ8から放出されるエネルギーにより、図6に示すように、直流電源PSからインダクタ8、OFF状態の第3スイッチ9aのボディダイオード、第1キャパシタ9b、第2キャパシタ10bおよびON状態の第4スイッチ10aを経由して直流電源PSに戻る電流経路に図6に示す向きで電流Idが流れる。したがって、第3スイッチ9aは、ボディダイオードに電流Idが流れている状態、つまりドレイン-ソース間電圧が零ボルトに近い状態でON状態に移行する(零ボルトスイッチングする)。このため、第3スイッチ9aでのターンオン損失は大幅に低減されている。
【0051】
また、第1キャパシタ9bは、このように電流Idが流れることにより、直流電源PSおよびインダクタ8の双方から放出されるエネルギーで充電される(第1キャパシタ9bにエネルギーが蓄積される)。
【0052】
また、第2スイッチ7bおよび第4スイッチ10aのON状態が継続されているため、図6に示すように、期間T3のときと同じ電流経路(第2キャパシタ10bから共振インダクタ12b、第1巻線2a、共振キャパシタ12a、ON状態の第2スイッチ7bおよび第4スイッチ10aを経由して第2キャパシタ10bに戻る電流経路)に電流Ieが継続して流れて、第2キャパシタ10bの放電(第2キャパシタ10bからのエネルギーの放出)が継続される。
【0053】
また、これら2つの電流経路が重なる第2直列回路部10(第4スイッチ10aおよび第2キャパシタ10b)には、電流Id,Ieが逆向きで流れるため、電流Id,Ieの合成電流(Ie-Id)が第4スイッチ10aに流れる。また、第2スイッチ7bには、期間T3において流れていた電流Iaが流れなくなり、電流Ieのみが流れる(つまり、期間T3のときよりも、この電流Ia分だけ少ない電流が流れる)。
【0054】
このように、期間T4では、第1巻線2a側の回路(つまり、直列スイッチ部7、第1直列回路部9および第2直列回路部10)が、第2キャパシタ10bに蓄積されているエネルギーを放出させつつ(第1巻線2aに電流Ieを供給させつつ)、入力直流電圧Vinおよびインダクタ8から放出されるエネルギーに基づいて第1キャパシタ9bにエネルギーを蓄積させる第4動作を実行する。
【0055】
一方、第2巻線2b側の回路では、上記したように第1巻線2aへ電流Ieが同じ向きで継続して流入していることに起因して、第2交流端子部6a,6b間に誘起電圧V2が同じ極性で継続して誘起していることから、図6に示すように、期間T3のときと同じ電流経路に電流Ifが継続して流れる(負荷LDへの出力直流電圧Voutの出力が継続される)。
【0056】
これにより、期間T1から期間T4で構成される1サイクルが完了する。
【0057】
また、出力直流電圧Voutは、下記の式で表される。なお、nは、第1巻線2a(巻数Np)と第2巻線2b(巻数Ns)の巻数比(Ns/Np)であり、Dは、第1スイッチ7aと第2スイッチ7bのオンデューティであるものとする。
Vout=n×Vin/(2×(1-D))
【0058】
この式から明らかなように、コンバータ装置1Aは、nの値にもよるが、基本的にオンデューティDを0.5よりも大きい値にすることで、出力直流電圧Voutが入力直流電圧Vinよりも大きくなるBoost型(昇圧型)コンバータとして機能する。また、この式から明らかなように、コンバータ装置1Aでは、各スイッチ7a,7b,9a,10aのスイッチング周波数を変化させることなく、上記のオンデューティDを変化させることで、出力直流電圧Voutを制御することが可能になっている。
【0059】
このように、このコンバータ装置1Aでは、第1巻線2a側の回路は、第1巻線2aと共に、直列スイッチ部7、インダクタ8、第1直列回路部9および第2直列回路部10が図1に示すように接続されて構成されている。また、LC共振回路12が、第1巻線2aと第1交流端子部4a,4bとの間に挿入接続されている。
【0060】
したがって、このコンバータ装置1Aによれば、従来技術で説明した2ステージ型コンバータにおいて必須となっている昇圧回路が不要な1ステージ型として構成されているため、この昇圧回路のダイオードで発生していたリカバリ損失を無くすことができる。また、このコンバータ装置1Aによれば、第1スイッチ7aと第2スイッチ7bのオンデューティを変化させることで、出力直流電圧Voutを制御することができる(つまり、第1スイッチ7a~第4スイッチ10aのスイッチング周波数を変化させることなく出力直流電圧Voutを制御することができる)。
【0061】
また、このコンバータ装置1Aでは、第1スイッチ7aから第4スイッチ10aまでのすべてのスイッチはボディダイオードを内蔵したFETで構成され、制御部13が、図2に示すタイミングで駆動信号S1,S2,S3,S4を出力して、すべてのスイッチ7a,7b,9a,10aを駆動することにより第1スイッチ7a~第4スイッチ10aを期間T1~期間T4でのON・OFF状態に順次移行させて、直列スイッチ部7、第1直列回路部9および第2直列回路部10に上記の第1動作~第4動作を実行させるスイッチング制御を実行する。詳細には、期間T1~期間T4のうちのいずれかの期間から次の新たな期間に移行する際に、制御部13は、この新たな期間においてOFF状態に移行させるスイッチとON状態に移行させる他のスイッチとに対して、まず、OFF状態に移行させるべきスイッチをOFF状態に移行させ、続いてON状態に移行させるべき他のスイッチをON状態に移行させるスイッチング制御を実行する。
【0062】
したがって、このコンバータ装置1Aによれば、新たな期間においてOFF状態に移行させるべきスイッチをOFF状態に移行させることで、この新たな期間においてON状態に移行させるべき他のスイッチのボディダイオードに電流を流して、この状態(ボディダイオードに電流が流れている状態。つまり、ドレイン-ソース間電圧が零ボルトに近い状態)において他のスイッチをON状態に移行させることができる。このため、この他のスイッチでのターンオン損失を大幅に低減することができる。
【0063】
なお、第1巻線2a側の回路については、コンバータ装置1Aで採用した上記の構成に限定されるものではなく、例えば、図7に示すコンバータ装置1Bで採用する後述の回路とすることもできる。以下、このコンバータ装置1Bについて、図7図12を参照して説明する。なお、コンバータ装置1Aと同じ構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0064】
まず、コンバータ装置1Bの構成について図7を参照して説明する。このコンバータ装置1Aは、トランス2、一対の第1直流端子部3a,3b、一対の第1交流端子部4a,4b、一対の第2直流端子部5a,5b、一対の第2交流端子部6a,6b、第1直列スイッチ部としての直列スイッチ部7、インダクタ8、第2直列スイッチ部として第3スイッチ21aおよび第4スイッチ21bを有する直列スイッチ部21、第5スイッチ22、第6スイッチ23、キャパシタ24、整流平滑部11、LC共振回路12、および制御部13を備え、一対の第1直流端子部3a,3b間に入力される入力直流電圧Vinを出力直流電圧Voutに変換して一対の第2直流端子部5a,5bに接続された負荷LDへ供給可能に構成されている。第3スイッチ21a、第4スイッチ21b、第5スイッチ22および第6スイッチ23は、本例一例として、nチャネル型のFET(電界効果型トランジスタ)で構成されているものとする。
【0065】
直列スイッチ部21は、一対の第1交流端子部4a,4bのうちの他方の第1交流端子部4bで互いに接続された第3スイッチ21aおよび第4スイッチ21bで構成されている。また、直列スイッチ部21は、一方の端部(第3スイッチ21a側の端部。本例では第3スイッチ21aのドレイン端子)が第5スイッチ22を介して第1直列スイッチ部7の一方の端部(第1スイッチ7aのドレイン端子)に接続され、かつ他方の端部(第4スイッチ21b側の端部。本例では第4スイッチ21aのソース端子)が第6スイッチ23を介して第1直列スイッチ部7の他方の端部(第2スイッチ7bのソース端子)に接続されている。
【0066】
具体的には、第5スイッチ22は、ソース端子が直列スイッチ部7の一方の端部(第1スイッチ7aのドレイン端子)に接続され、ドレイン端子が直列スイッチ部21の一方の端部(第3スイッチ21aのドレイン端子)に接続されることで、これら一方の端部同士を接続する。第6スイッチ23は、ドレイン端子が直列スイッチ部7の他方の端部(第1スイッチ7bのソース端子)に接続され、ソース端子が直列スイッチ部21の他方の端部(第4スイッチ21bのソース端子)に接続されることで、これら他方の端部同士を接続する。
【0067】
キャパシタ24は、直列スイッチ部21に並列接続されている。
【0068】
制御部13は、第1スイッチ7aから第6スイッチ23までの6つのスイッチに対して駆動信号S11,S12,S13,S14,S15,S16をそれぞれ出力することにより、これら6つのスイッチ7a~23に対するスイッチング制御を実行して、入力直流電圧Vinを交流電圧V1に変換して第1交流端子部4a,4b間に出力する動作を第1巻線2a側の回路(直列スイッチ部7,21、インダクタ8、第5スイッチ22および第6スイッチ23で構成される電力変換回路)に実行させる。本例では、第1スイッチ7aから第6スイッチ23までの各スイッチは上記のようにFETで構成されているため、制御部13は、各スイッチ7a~23に対する適切な駆動回路(図示せず)を備えて、各スイッチ7a~23のゲート・ソース間に、各駆動信号S11~S16のうちの対応する駆動信号をソース端子の電位を基準とする正極性の電圧信号として出力するものとする。
【0069】
次に、コンバータ装置1Bの動作について図7図12を参照して説明する。
【0070】
制御部13は、各駆動信号S11,S12,S13,S14,S15,S16を、図8に示す期間T1から期間T4までの出力状態を1サイクルとして、対応する各スイッチ7a、7b,21a,21b,22,23に繰り返し出力する。なお、図8中の「ON」、「OFF」は、駆動信号S11~S16に対応する各スイッチ7a~23のON・OFF状態を示している。以下、各期間T1,T2,T3,T4に分けて動作を説明する。
【0071】
まず、期間T1では、図8に示すように駆動信号S11,S14がゼロボルト(ゲート閾値電圧未満の電圧の一例)から正電圧(ゲート閾値電圧以上の電圧)に切り替えられることにより、図8,9に示すように、第1スイッチ7aおよび第4スイッチ21bは、OFF状態からON状態に移行する。また、図8に示すように駆動信号S13,S16が正電圧からゼロボルトに切り替えられることにより、図8,9に示すように、第3スイッチ21aおよび第6スイッチ23は、ON状態からOFF状態に移行する。また、図8に示すように他の駆動信号S12,S15は正電圧に維持されることから、図8,9に示すように、第2スイッチ7bおよび第5スイッチ22はON状態を継続する。つまり、第3スイッチ21aおよび第6スイッチ23のみがOFF状態になる。
【0072】
この場合、第1巻線2a側の回路では、まず、第3スイッチ21aおよび第6スイッチ23が同時にOFF状態に移行し、続いて第1スイッチ7aおよび第4スイッチ21bが同時にON状態に移行する。このため、第1スイッチ7aおよび第4スイッチ21bがON状態に移行する直前に、期間T4において後述するように第1巻線2aに流れていた電流Ihが共振キャパシタ12a、OFF状態の第1スイッチ7aのボディダイオイード、ON状態の第5スイッチ22、キャパシタ24、OFF状態の第4スイッチ21bのボディダイオイードおよび共振インダクタ12bを経由して第1巻線2aに戻る電流経路に、図9に示すように電流Ibとして同図に示す向きとは逆向きに流れる。したがって、第1スイッチ7aおよび第4スイッチ21bは、それぞれのボディダイオードに電流Ibが流れている状態、つまりドレイン-ソース間電圧が零ボルトに近い状態でON状態に移行する(零ボルトスイッチングする)。このため、第1スイッチ7aおよび第4スイッチ21bでのターンオン損失は大幅に低減されている。
【0073】
また、第6スイッチ23がOFF状態に移行することにより、期間T4において後述するように実行されるキャパシタ24への充電(キャパシタ24へのエネルギーの蓄積)が完了し、続いて第1スイッチ7aおよび第4スイッチ21bがON状態に移行することにより、電流Ibが上記の向きで流れている上記の電流経路に、この向きとは逆の向き(図9に示す向き)で電流が流れ得る状態となる。このため、キャパシタ24に蓄積されたエネルギーが放出されることにより、電流Ibは、この電流経路に、キャパシタ24からON状態の第5スイッチ22、ON状態の第1スイッチ7a、共振キャパシタ12a、第1巻線2a、共振インダクタ12bおよびON状態の第4スイッチ21bを経由してキャパシタ24に戻る(図9に示す向き)で流れるようになる。この電流経路にはLC共振回路12が含まれていることから、電流Ibの波形は共振波形(正弦波状の波形)となる。また、第1巻線2aに図9に示す向きで電流Ibが流れるため、第2巻線2bには、第2交流端子部6bに対して第2交流端子部6aが高電位となる誘起電圧V2が誘起する。
【0074】
また、ON状態の第2スイッチ7bと共に、第1スイッチ7aがON状態に移行することにより、直流電源PS(入力直流電圧Vin)がインダクタ8を介して短絡される。これにより、図9に示すように、直流電源PSからインダクタ8、第1スイッチ7aおよび第2スイッチ7bを経由して直流電源PSに戻る電流経路が形成されて、この電流経路に電流Iaが図9において矢印で示す向きで流れる。したがって、この電流Iaがインダクタ8に流れることにより、インダクタ8にエネルギーが蓄積される。
【0075】
このように、期間T1では、第1巻線2a側の回路(つまり、各直列スイッチ部7,21を含む回路)が、入力直流電圧Vinに基づいてインダクタ8にエネルギーを蓄積させると共に、キャパシタ24に蓄積されているエネルギーを放出させることで第1巻線2aに電流Ibを供給する第1動作を実行する。つまり、コンバータ装置1Bの第1巻線2a側の回路は、この期間T1において、コンバータ装置1Aの第1巻線2a側の回路が期間T1において実行した動作と同等の動作を実行する。したがって、第2巻線2b側の回路は、コンバータ装置1Aと同等の動作を実行して、第2交流端子部6a,6b間に誘起される誘起電圧V2に基づき、負荷LDに出力直流電圧Voutを出力する。
【0076】
次いで、期間T2では、図8に示すように、駆動信号S12が正電圧からゼロボルトに切り替わり、駆動信号S16がゼロボルトから正電圧に切り替わることにより、図8,10に示すように、第2スイッチ7bがON状態からOFF状態に移行し、第6スイッチ23がOFF状態からON状態に移行する。なお、他の各スイッチは、対応する駆動信号が期間T1のときと同じであることから、期間T1のときのON・OFF状態を継続する。つまり、第2スイッチ7bおよび第3スイッチ21aのみがOFF状態になる。
【0077】
この場合、第1巻線2a側の回路では、まず、第2スイッチ7bがOFF状態に移行し、続いて第6スイッチ23がON状態に移行する。このため、第6スイッチ23がON状態に移行する直前に、直流電源PSの電圧にインダクタ8の両端間電圧が加算された電圧により(直流電源PSからのエネルギーに加えて、インダクタ8から放出されるエネルギーにより)、図10に示すように、直流電源PSからインダクタ8、ON状態の第1スイッチ7a、共振キャパシタ12a、第1巻線2a、共振インダクタ12b、ON状態の第4スイッチ21bおよびOFF状態の第6スイッチ23のボディダイオイードを経由して直流電源PSに戻る電流経路に図10に示す向きで電流Idが流れると共に、直流電源PSからインダクタ8、ON状態の第5スイッチ22、キャパシタ24およびOFF状態の第6スイッチ23のボディダイオイードを経由して直流電源PSに戻る他の電流経路に図10に示す向きで電流Ieが流れる。したがって、第6スイッチ23は、ボディダイオードに電流Id,Ieが流れている状態、つまりドレイン-ソース間電圧が零ボルトに近い状態でON状態に移行する(零ボルトスイッチングする)。このため、第6スイッチ23でのターンオン損失は大幅に低減されている。
【0078】
また、第6スイッチ23がON状態に移行することにより、直流電源PSおよびインダクタ8の双方から放出されるエネルギーに基づく第1巻線2aへの電流Idの供給が継続される。また、この電流Idの電流経路にはLC共振回路12が含まれていることから、電流Idの波形は共振波形(正弦波状の波形)となる。また、第1巻線2aに図10に示す向き(期間T1での電流Ibと同じ向き)で電流Idが流れるため、第2巻線2bには、第2交流端子部6bに対して第2交流端子部6aが高電位となる誘起電圧V2が誘起する。また、第6スイッチ23がON状態に移行することにより、キャパシタ24への電流Ieの供給も継続されて、キャパシタ24は、直流電源PSおよびインダクタ8の双方から放出されるエネルギーで充電される(キャパシタ24にエネルギーが蓄積される)。
【0079】
このように、期間T2では、第1巻線2a側の回路が、直流電源PSおよびインダクタ8からの各エネルギーに基づき、第1巻線2aに電流Idを期間T1のときの電流Ibと同じ向きで供給すると共に、キャパシタ24を充電する第2動作を実行する。つまり、コンバータ装置1Bの第1巻線2a側の回路は、この期間T2において、コンバータ装置1Aの第1巻線2a側の回路が期間T2において実行した動作と同等の動作を実行する。したがって、第2巻線2b側の回路は、コンバータ装置1Aと同等の動作を実行して、第2交流端子部6a,6b間に誘起される誘起電圧V2に基づき、負荷LDに出力直流電圧Voutを出力する。
【0080】
続いて、期間T3では、図8に示すように、駆動信号S14,S15が正電圧からゼロボルトに切り替わり、駆動信号S12,S13がゼロボルトから正電圧に切り替わることにより、図8,11に示すように、第4スイッチ21bおよび第5スイッチ22がON状態からOFF状態に移行し、第2スイッチ7bおよび第3スイッチ21aがOFF状態からON状態に移行する。なお、他の各スイッチは、対応する駆動信号が期間T2のときと同じであることから、期間T2のときのON・OFF状態を継続する。つまり、第4スイッチ21bおよび第5スイッチ22のみがOFF状態になる。
【0081】
この場合、第1巻線2a側の回路では、まず、第4スイッチ21bおよび第5スイッチ22が同時にOFF状態に移行し、続いて第2スイッチ7bおよび第3スイッチ21aが同時にON状態に移行する。このため、第2スイッチ7bおよび第3スイッチ21aがON状態に移行する直前に、期間T2において第1巻線2aに流れていた電流Idが共振インダクタ12b、OFF状態の第3スイッチ21aのボディダイオイード、キャパシタ24、ON状態の第6スイッチ23、OFF状態の第2スイッチ7bのボディダイオイードおよび共振キャパシタ12aを経由して第1巻線2aに戻る電流経路に、図11に示すように電流Igとして同図に示す向きとは逆向きに流れる。したがって、第2スイッチ7bおよび第3スイッチ21aは、それぞれのボディダイオードに電流Igが流れている状態、つまりドレイン-ソース間電圧が零ボルトに近い状態でON状態に移行する(零ボルトスイッチングする)。このため、第2スイッチ7bおよび第3スイッチ21aでのターンオン損失は大幅に低減されている。
【0082】
また、第5スイッチ22がOFF状態に移行することにより、期間T2において実行されていたキャパシタ24への充電(キャパシタ24へのエネルギーの蓄積)が完了し、続いて第2スイッチ7bおよび第3スイッチ21aがON状態に移行することにより、上記の向きで電流Igが流れている上記の電流経路に、この向きとは逆の向き(図11に示す向き)で電流が流れ得る状態となる。このため、キャパシタ24に蓄積されたエネルギーが放出されることにより、電流Igは、この電流経路に、キャパシタ24からON状態の第3スイッチ21a、共振インダクタ12b、第1巻線2a、共振キャパシタ12a、ON状態の第2スイッチ7bおよびON状態の第6スイッチ23を経由してキャパシタ24に戻る(図11に示す向き)で流れるようになる。この電流経路にはLC共振回路12が含まれていることから、電流Igの波形は共振波形(正弦波状の波形)となる。また、第1巻線2aに図11に示す向き(期間T2での電流Idとは逆向き)で電流Igが流れるため、第2巻線2bには、第2交流端子部6aに対して第2交流端子部6bが高電位となる誘起電圧V2が誘起する。
【0083】
また、ON状態の第1スイッチ7aと共に、第2スイッチ7bがON状態に移行することにより、直流電源PSがインダクタ8を介して短絡される。これにより、図11に示すように、直流電源PSからインダクタ8、第1スイッチ7aおよび第2スイッチ7bを経由して直流電源PSに戻る電流経路が形成されて、この電流経路に電流Iaが図11において矢印で示す向きで流れる。したがって、この電流Iaがインダクタ8に流れることにより、インダクタ8にエネルギーが蓄積される。
【0084】
このように、期間T3では、第1巻線2a側の回路(つまり、各直列スイッチ部7,21を含む回路)が、入力直流電圧Vinに基づいてインダクタ8にエネルギーを蓄積させると共に、キャパシタ24に蓄積されているエネルギーを放出させることで第1巻線2aに電流Igを供給する第3動作を実行する。つまり、コンバータ装置1Bの第1巻線2a側の回路は、この期間T3において、コンバータ装置1Aの第1巻線2a側の回路が期間T3において実行した動作と同等の動作を実行する。したがって、第2巻線2b側の回路は、コンバータ装置1Aと同等の動作を実行して、第2交流端子部6a,6b間に誘起される誘起電圧V2に基づき、負荷LDに出力直流電圧Voutを出力する。
【0085】
次いで、期間T4では、図8に示すように、駆動信号S11が正電圧からゼロボルトに切り替わり、駆動信号S15がゼロボルトから正電圧に切り替わることにより、図8,12に示すように、第1スイッチ7aがON状態からOFF状態に移行し、第5スイッチ22がOFF状態からON状態に移行する。なお、他の各スイッチは、対応する駆動信号が期間T3のときと同じであることから、期間T3のときのON・OFF状態を継続する。つまり、第1スイッチ7aおよび第4スイッチ21bのみがOFF状態になる。
【0086】
この場合、第1巻線2a側の回路では、まず、第1スイッチ7aがOFF状態に移行し、続いて第5スイッチ22がON状態に移行する。このため、第5スイッチ22がON状態に移行する直前に、直流電源PSの電圧にインダクタ8の両端間電圧が加算された電圧により(直流電源PSからのエネルギーに加えて、インダクタ8から放出されるエネルギーにより)、図12に示すように、直流電源PSからインダクタ8、OFF状態の第5スイッチ22のボディダイオイード、ON状態の第3スイッチ21a、共振インダクタ12b、第1巻線2a、共振キャパシタ12aおよびON状態の第2スイッチ7bを経由して直流電源PSに戻る電流経路に図12に示す向きで電流Ihが流れると共に、直流電源PSからインダクタ8、OFF状態の第5スイッチ22のボディダイオイード、キャパシタ24およびON状態の第6スイッチ23を経由して直流電源PSに戻る他の電流経路に図12に示す向きで電流Ieが流れる。したがって、第5スイッチ22は、ボディダイオードに電流Ie,Ihが流れている状態、つまりドレイン-ソース間電圧が零ボルトに近い状態でON状態に移行する(零ボルトスイッチングする)。このため、第5スイッチ22でのターンオン損失は大幅に低減されている。
【0087】
また、第5スイッチ22がON状態に移行することにより、直流電源PSおよびインダクタ8の双方から放出されるエネルギーに基づく第1巻線2aへの電流Ihの供給が継続される。また、この電流Ihの電流経路にはLC共振回路12が含まれていることから、電流Idの波形は共振波形(正弦波状の波形)となる。また、第1巻線2aに図12に示す向き(期間T3での電流Igと同じ向き)で電流Ihが流れるため、第2巻線2bには、第2交流端子部6aに対して第2交流端子部6bが高電位となる誘起電圧V2が誘起する。また、第5スイッチ22がON状態に移行することにより、キャパシタ24への電流Ieの供給も継続されて、キャパシタ24は、直流電源PSおよびインダクタ8の双方から放出されるエネルギーで充電される(キャパシタ24にエネルギーが蓄積される)。
【0088】
このように、期間T4では、第1巻線2a側の回路が、直流電源PSおよびインダクタ8からの各エネルギーに基づき、第1巻線2aに電流Ihを期間T3のときの電流Igと同じ向きで供給すると共に、キャパシタ24を充電する第4動作を実行する。つまり、コンバータ装置1Bの第1巻線2a側の回路は、この期間T4において、コンバータ装置1Aの第1巻線2a側の回路が期間T4において実行した動作と同等の動作を実行する。したがって、第2巻線2b側の回路は、コンバータ装置1Aと同等の動作を実行して、第2交流端子部6a,6b間に誘起される誘起電圧V2に基づき、負荷LDに出力直流電圧Voutを出力する。
【0089】
また、コンバータ装置1Bでの出力直流電圧Voutは、上記したコンバータ装置1Aでの出力直流電圧Voutと同一の式で表される。したがって、コンバータ装置1Bも、コンバータ装置1Aと同様にして、出力直流電圧Voutが入力直流電圧Vinよりも大きくなるBoost型(昇圧型)コンバータとして機能すると共に、各スイッチ7a,7b,21a,21b,22,23のスイッチング周波数を変化させることなく、第1スイッチ7aと第2スイッチ7bのオンデューティDを変化させることで、出力直流電圧Voutを制御することが可能になっている。
【0090】
このように、このコンバータ装置1Bでは、第1巻線2a側の回路は、第1巻線2aと共に、直列スイッチ部7,21、インダクタ8、第5スイッチ22、第6スイッチ23およびキャパシタ24が図7に示すように接続されて構成されている。また、LC共振回路12が、第1巻線2aと第1交流端子部4a,4bとの間に挿入接続されている。
【0091】
したがって、このコンバータ装置1Bによれば、従来技術で説明した2ステージ型コンバータにおいて必須となっている昇圧回路が不要な1ステージ型として構成されているため、コンバータ装置1Aと同様にして、この昇圧回路のダイオードで発生していたリカバリ損失を無くすことができる。また、このコンバータ装置1Bによれば、コンバータ装置1Aと同様にして、第1スイッチ7aと第2スイッチ7bのオンデューティを変化させることで、出力直流電圧Voutを制御することができる(つまり、第1スイッチ7a~第6スイッチ23のスイッチング周波数を変化させることなく出力直流電圧Voutを制御することができる)。さらに、このコンバータ装置1Bによれば、第1巻線2a側の回路を構成するためのキャパシタ(半導体素子で構成されるスイッチ7aなどと比較して、通常、その外形が極めて大きくなる電子部品)をキャパシタ24の1個で済ますことができることから、キャパシタ9b,10bの2個必要とするコンバータ装置1Aと比較して、電子部品を実装する回路基板、さらには装置自体を小型化することができる。
【0092】
また、このコンバータ装置1Bでは、第1スイッチ7aから第6スイッチ23までのすべてのスイッチはボディダイオードを内蔵したFETで構成され、制御部13が、図8に示すタイミングで駆動信号S11~S16を出力して、すべてのスイッチ7a~23を駆動することにより(各スイッチ7a~23を期間T1~期間T4でのON・OFF状態に順次移行させて、直列スイッチ部7,21および各スイッチ22,23に上記の第1動作~第4動作を実行させるスイッチング制御を実行する。詳細には、期間T1~期間T4のうちのいずれかの期間から次の新たな期間に移行する際に、制御部13は、この新たな期間においてOFF状態に移行させるスイッチとON状態に移行させる他のスイッチとに対して、まず、OFF状態に移行させるべきスイッチをOFF状態に移行させ、続いてON状態に移行させるべき他のスイッチをON状態に移行させるスイッチング制御を実行する。
【0093】
したがって、このコンバータ装置1Bによれば、新たな期間においてOFF状態に移行させるべきスイッチをOFF状態に移行させることで、この新たな期間においてON状態に移行させるべき他のスイッチのボディダイオードに電流を流して、この状態(ボディダイオードに電流が流れている状態。つまり、ドレイン-ソース間電圧が零ボルトに近い状態)において他のスイッチをON状態に移行させることができる。このため、この他のスイッチでのターンオン損失を大幅に低減することができる。
【0094】
なお、上記のコンバータ装置1A,1Bでは、ボディダイオードを内蔵するFETで各スイッチを構成しているが、この構成に代えて、バイポーラトランジスタとディスクリートダイオードとの並列回路で各スイッチを構成することもできる。また、上記のコンバータ装置1A,1Bでは、4つのダイオード11a,11b,11c,11dで構成されるブリッジ形全波整流回路で整流平滑部11の整流回路を構成したが、これに限定されるものではない。例えば、図示はしないが、第2巻線2bをセンタータップを有する構成とすると共にこの第2巻線2bの各端部にダイオードをそれぞれ接続し、センタータップの電位を基準として第2巻線2bの各端部に誘起する電圧を各ダイオードでそれぞれ整流して合成することで、センタータップの電位を基準とする出力直流電圧Voutを出力する整流回路を、整流平滑部11の整流回路として採用することもできる。また、図示はしないが、キャパシタとダイオードを組み合わせて構成される公知のm倍(mは2以上の整数)電圧整流回路を、整流平滑部11の整流回路として採用することもできる。
【0095】
また、上記のコンバータ装置1A,1Bでは、独立した構成要素としての共振キャパシタ12aと共振インダクタ12bとでLC共振回路12を構成したが、これに限定されるものではない。例えば、共振キャパシタ12aは、独立した構成要素として配設する構成に代えて、第1直列回路部9のキャパシタ24や、第2直列回路部10の第2キャパシタ10bで代用することもできる。また、共振インダクタ12bについても、独立した構成要素として配設する構成に代えて、トランス2の漏れインダクタンスで代用することもできる。
【符号の説明】
【0096】
1A,1B コンバータ装置
2 トランス
2a 第1巻線
2b 第2巻線
3a,3b 第1直流端子部
4a,4b 第1交流端子部
5a,5b 第2直流端子部
6a,6b 第2交流端子部
7,21 直列スイッチ部
7a 第1スイッチ
7b 第2スイッチ
8 インダクタ
9 第1直列回路部
9a 第3スイッチ
9b 第1キャパシタ
10 第2直列回路部
10a 第4スイッチ
10b 第2キャパシタ
12 LC共振回路
13 制御部
21a 第3スイッチ
21b 第4スイッチ
22 第5スイッチ
23 第6スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12