IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両の電力制御装置 図1
  • 特許-車両の電力制御装置 図2
  • 特許-車両の電力制御装置 図3
  • 特許-車両の電力制御装置 図4
  • 特許-車両の電力制御装置 図5
  • 特許-車両の電力制御装置 図6
  • 特許-車両の電力制御装置 図7
  • 特許-車両の電力制御装置 図8
  • 特許-車両の電力制御装置 図9
  • 特許-車両の電力制御装置 図10
  • 特許-車両の電力制御装置 図11
  • 特許-車両の電力制御装置 図12
  • 特許-車両の電力制御装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】車両の電力制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220209BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20220209BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20220209BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20220209BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220209BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220209BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20220209BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
B60R16/04 S
F02D29/02 321A
F02D29/02 321B
H01M10/42 P
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/04 L
H02M3/155 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018043064
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019161779
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】湯原 将光
(72)【発明者】
【氏名】枝廣 育実
(72)【発明者】
【氏名】森本 昌介
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116481(JP,A)
【文献】特開2015-101193(JP,A)
【文献】特開2014-232649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
F02D 29/00 - 29/06
H02M 3/00 - 3/44
H01M 10/42 - 10/48
B60R 16/00 - 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの自動停止およびエンジンの再始動が可能な車両に設けられる電力制御装置であって、
エンジンにより駆動されて発電する発電装置と、
車両の減速時に前記発電装置で発電された電力を蓄電可能な蓄電池と、
前記蓄電池の電力を用いてエンジンに駆動力を付与可能な駆動力付与装置と、
車両に設けられる電気負荷と前記蓄電池との間に介在して、前記蓄電池の電圧を降圧して前記電気負荷に電力を供給する降圧装置と、
エンジンを再始動させる要求があるときにエンジンを再始動させるための駆動力が前記駆動力付与装置からエンジンに付与されるように当該駆動力付与装置を制御するとともに、エンジンの稼働中に前記蓄電池の充電と放電とを交互に行う強制充放電制御を実施する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記蓄電池の内部抵抗が大きいときには前記強制充放電制御を実施する一方で、前記蓄電池の内部抵抗が低いときは前記強制充放電制御の実施を制限する、ことを特徴とする車両の電力制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の電力制御装置において、
前記制御装置は、前記蓄電池の内部抵抗が所定の判定抵抗値以上のときに前記強制充放電制御を実施し、前記蓄電池の内部抵抗が前記判定抵抗値未満のときは前記強制充放電制御を禁止する、ことを特徴とする車両の電力制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両の電力制御装置において、
前前記制御装置は、前記蓄電池の劣化状態と前記蓄電池の温度とに基づいて、前記蓄電池の内部抵抗を推定する、ことを特徴とする車両の電力制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の電力制御装置において、
前記制御装置は、前記強制充放電制御の実施時において、前記蓄電池の内部抵抗が高いときの方が低いときよりも、前記蓄電池の充電量および放電量を小さくする、ことを特徴とする車両の電力制御装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両の電力制御装置において、
前記制御装置は、前記強制充放電制御の実施時において、前記蓄電池から放出された電力によって前記駆動力付与装置を駆動させて前記エンジンに当該駆動力付与装置の駆動力を付与する、ことを特徴とする車両の電力制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両の電力制御装置において、
前記車両は、車室の車幅方向の両側部に沿って車両前後方向にそれぞれ延びる一対のサイドシルと、車室の床面の下方に設けられて車両前後方向に延びるフロアトンネルとを備え、
前記蓄電池は、1列に配置された複数の電池を含み、車室の床面よりも下方且つ前記フロアトンネルと一方の前記サイドシルとの間に前記各電池が車両前後方向に並ぶ姿勢で配置されている、ことを特徴とする車両の電力制御装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の車両の電力制御装置において、
前記降圧装置から出力された電力を蓄電可能で、最大出力電圧が前記蓄電池よりも低い2次蓄電池をさらに備え、
前記電気負荷は、前記降圧装置に加えて前記2次蓄電池からの電力も受け取ることが可能なようにこれらに接続されている、ことを特徴とする車両の電力制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両の電力制御装置において、
前記駆動力付与装置は、少なくともエンジンの再始動時は、前記蓄電池と前記2次蓄電池とのうち前記蓄電池の電力のみによって駆動される、ことを特徴とする車両の電力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの自動停止およびエンジンの再始動が可能な車両に設けられる電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃費性能を高めること等を目的として、車両において、減速時にエンジンにより発電機を駆動させて発電させることや、エンジンのアイドル運転時にエンジンを自動停止させるいわゆるアイドルストップを実施し且つアクセルペダルの踏込等に応じてエンジンを再始動することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エンジンに連結されて電動機および発電機として機能するモータジェネレータと、モータジェネレータに電力を供給するとともにモータジェネレータで発電された電力を蓄電するキャパシタとを備えた車両が開示されている。この車両では、減速時に、エンジンによってモータジェネレータを駆動して発電させ、生成された電力をキャパシタに蓄電させる。そして、アイドルストップ後のエンジンの再始動時に、キャパシタの電力によってモータジェネレータを駆動してエンジンを強制的に回転させる。
【0004】
特許文献1の車両では、キャパシタに加えて、鉛蓄電池が設けられている。そして、キャパシタに蓄えられた電力あるいはモータジェネレータで生成された電力の一部を、DC-DCコンバータによって降圧して鉛蓄電池および各種電気負荷に付与するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-118126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、キャパシタと電気負荷との間に介在するコンバータが、電圧を昇圧する機能を有さず降圧する機能のみを有するように構成されている。そのため、コストを低く抑えることができる。しかしながら、この構成では、DC-DCコンバータを介してキャパシタから電力が供給される電気負荷が適切に作動しないおそれがある。
【0007】
具体的には、エンジンの再始動時にモータジェネレータの駆動に伴ってキャパシタの電圧が大幅に低下したときに、コンバータの入力電圧がコンバータの出力電圧を下回るおそれがある。このようにコンバータの入力電圧がコンバータの出力電圧を下回ると、コンバータは入力電圧を降圧できず、コンバータを介したキャパシタから各種電気負荷への電力供給が停止してしまう。この結果、これら電気負荷の電力源がキャパシタよりも電圧の低い鉛蓄電池に切り替わって電気負荷に加えられる電圧が急低下し、電気負荷が適切に作動しないおそれがある。
【0008】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、適切なエンジンの再始動と適切な電気負荷への電力供給とを両立できる電力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、エンジンの自動停止およびエンジンの再始動が可能な車両に設けられる電力制御装置であって、エンジンにより駆動されて発電する発電装置と、車両の減速時に前記発電装置で発電された電力を蓄電可能な蓄電池と、前記蓄電池の電力を用いてエンジンに駆動力を付与可能な駆動力付与装置と、車両に設けられる電気負荷と前記蓄電池との間に介在して、前記蓄電池の電圧を降圧して前記電気負荷に電力を供給する降圧装置と、エンジンを再始動させる要求があるときにエンジンを再始動させるための駆動力が前記駆動力付与装置からエンジンに付与されるように当該駆動力付与装置を制御するとともに、エンジンの稼働中に前記蓄電池の充電と放電とを交互に行う強制充放電制御を実施する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記蓄電池の内部抵抗が大きいときには前記強制充放電制御を実施する一方で、前記蓄電池の内部抵抗が低いときは前記強制充放電制御の実施を制限する、ことを特徴とする車両の電力制御装置を提供する(請求項1)。
【0010】
この構成によれば、車両の減速時のエネルギーを電力として蓄電池に蓄電させることでエネルギー効率を高くすることができる。また、エンジンの再始動時において蓄電池に蓄えられたこの電力によって駆動力付与装置を駆動してエンジンに駆動力を付与することができ、エンジンを適切に再始動させることができる。
【0011】
しかも、この構成では、蓄電池の充電と放電とを交互に行う強制充放電制御の実施によって蓄電池を昇温して蓄電池の内部抵抗を低い状態にすることができる。そのため、エンジンの再始動時に蓄電池から駆動力付与装置に高い電力を供給しつつ、これに伴う蓄電池の電圧の低下量を少なく抑えることができる。従って、エンジンの再始動時に、蓄電池の電圧であって降圧装置の入力電圧が降圧装置の出力電圧よりも低くなることを防止して、降圧装置を介した蓄電池から電気負荷への電力供給を維持することができ、電気負荷を安定して適切に作動させることができる。一方で、この構成では、蓄電池の内部抵抗が低いときは強制充放電制御の実施を制限している。そのため、蓄電池の内部抵抗が低く降圧装置を介した蓄電池から電気負荷への電力供給を維持されると考えられるときに過度に蓄電池が充放電されるのを防止できる。
【0012】
前記構成において、前記制御装置は、前記蓄電池の内部抵抗が所定の判定抵抗値以上のときに前記強制充放電制御を実施し、前記蓄電池の内部抵抗が前記判定抵抗値未満のときは前記強制充放電制御を禁止するのが好ましい(請求項2)。
【0013】
この構成によれば、電気負荷を安定して適切に作動させつつ過度に蓄電池が充放電されるのを確実に防止できる。
【0014】
前記構成において、前記制御装置は、前記蓄電池の劣化状態と前記蓄電池の温度とに基づいて、前記蓄電池の内部抵抗を推定する、のが好ましい(請求項3)。
【0015】
この構成によれば、蓄電池の内部抵抗をより精度よく推定できる。従って、強制充放電制御の実行を最小限にすることができる。
【0016】
前記構成において、前記制御装置は、前記強制充放電制御の実施時において、前記蓄電池の内部抵抗が高いときの方が低いときよりも、前記蓄電池の充電量および放電量を小さくする、のが好ましい(請求項4)。
【0017】
この構成によれば、電気負荷を安定して適切に作動させつつ蓄電池の充放電量が過度に大きくなるのを防止できる。
【0018】
前記構成において、前記制御装置は、前記強制充放電制御の実施時において、前記蓄電池から放出された電力によって前記駆動力付与装置を駆動させて前記エンジンに当該駆動力付与装置の駆動力を付与する、のが好ましい(請求項5)。
【0019】
この構成によれば、蓄電池の内部抵抗を低減して電気負荷を安定して適切に作動させつつ、蓄電池から放出された電力を有効に利用して車両全体のエネルギー効率を高くすることができる。
【0020】
前記構成において、前記車両は、車室の車幅方向の両側部に沿って車両前後方向にそれぞれ延びる一対のサイドシルと、車室の床面の下方に設けられて車両前後方向に延びるフロアトンネルとを備え、前記蓄電池は、1列に配置された複数の電池を含み、車室の床面よりも下方且つ前記フロアトンネルと一方の前記サイドシルとの間に前記各電池が車両前後方向に並ぶ姿勢で配置されている、のが好ましい(請求項6)。
【0021】
この構成によれば、フロアトンネルとサイドシルとの間の空間を利用して複数の電池を含む比較的大きな蓄電池を車両に搭載することができる。ただし、前記のように複数の電池を1列に配置した場合、つまり、複数の電池を直列に配置した場合には、蓄電池の内部抵抗が大きくなって、エンジンの再始動時に駆動力付与装置を駆動したときの蓄電池の電圧降下が大きくなりやすい。これに対して、本発明では、前記のように、エンジンの再始動時に蓄電池が電圧降下しても降圧装置の出力電圧を蓄電池の電圧よりも低い電圧に維持することができる。従って、前記のように蓄電池をレイアウトしながら、電気負荷の作動を安定して適切な状態にすることができる。
【0022】
前記構成において、前記降圧装置から出力された電力を蓄電可能で、最大出力電圧が前記蓄電池よりも低い2次蓄電池をさらに備え、前記電気負荷は、前記降圧装置に加えて前記2次蓄電池からの電力も受け取ることが可能なようにこれらに接続されている、のが好ましい(請求項7)。
【0023】
この構成によれば、蓄電池の電圧が降圧装置の出力電圧よりも低くなっても2次蓄電池によって電気負荷に電力を供給することができ、電気負荷の作動を維持することができる。また、発電機で発電され且つ蓄電池に蓄えきれなかった電力を2次蓄電池に蓄電することができ、エネルギー効率を高めることができる。
【0024】
前記構成において、前記駆動力付与装置は、少なくともエンジンの再始動時は、前記蓄電池と前記2次蓄電池とのうち前記蓄電池の電力のみによって駆動される、のが好ましい(請求項8)。
【0025】
このようにすれば、2次蓄電池の電力消費機会を少なく抑えて2次蓄電池の劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の電力制御装置によれば、適切なエンジンの再始動と適切な電気負荷への電力供給とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態にかかる電力制御装置が搭載された車両の構成を概略的に示す図である。
図2】車両の一部を概略的に示した平面図である。
図3】DC-DCコンバータの構成を説明するための概略図である。
図4】エンジンの制御系統を示すブロック図である。
図5】比較例に係る車両走行時の各パラメータの時間変化を示した図である。
図6】強制充放電制御を含むLiバッテリの電力制御を示したフローチャートである。
図7】Liバッテリの温度と内部抵抗と劣化の進み具合との関係を示した図である。
図8】強制充放電制御を説明するための図である。
図9】低負荷領域を示した図である。
図10】エンジンの自動停止制御を示したフローチャートである。
図11】Liバッテリの内部抵抗と目標出力電圧との関係を示した図である。
図12】目標低下電圧と電圧低下速度との関係を示した図である。
図13】車両走行時の各パラメータの時間変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態が説明される。なお、各図では、同様の要素には同様の符号が付され、適宜、説明が省略される。
【0029】
(車両の全体構成)
図1は、エンジンの停止制御装置が搭載された車両の構成を概略的に示す図である。
【0030】
車両1は、例えば4輪自動車である。エンジン2は、車両1のエンジンルームに設けられる。エンジン2の駆動力は、クランクシャフト2aからトランスミッション、終減速機、駆動軸等を介して車輪1aに伝達されて、車両1を走行させる。
【0031】
車両1には、図1に示されるように、車両の駆動源としてのエンジン2、スタータ3、モータジェネレータ4、Liバッテリ(リチウムバッテリ)9、DC-DCコンバータ10、鉛バッテリ12、および各種電気機器が搭載されている。モータジェネレータ4は、後述するように、電動機として機能してエンジン2を始動させる機能と発電機としての機能を有するいわゆるISG(Integrated Starter-Generator)であり、以下では、これをISG4という。
【0032】
Liバッテリ9は請求項にいう「蓄電池」に相当し、鉛バッテリ12は請求項にいう「2次蓄電池」に相当し、DC-DCコンバータ10は請求項にいう「降圧装置」に相当する。また、ISG4は請求項にいう「発電装置」および「駆動力付与装置」に相当する。つまり、本実施形態では、発電装置と駆動力付与装置とが一体とされて一つの装置で構成されている。
【0033】
図1の例では、エンジン2は、一列に並ぶ4つの気筒2cを備えた直列4気筒エンジンである。また、エンジン2は、レシプロエンジンであって、気筒2c内を往復動するピストンを備える。本実施形態では、エンジン2は、ガソリンを含む燃料により駆動されるエンジンである。エンジン2は、各気筒2c内に燃料を噴射するインジェクタ30(図4参照)と、各気筒2c内の混合気(空気と燃料の混合気)に点火する点火プラグ31(図4参照)とを備えている。インジェクタ30と点火プラグ31とは、1つの気筒2cにつき1つずつ設けられている。
【0034】
(高電圧回路)
Liバッテリ9は、高電圧ラインL1を介して、ISG4、シートヒータ5およびPTCヒータ6に電気的に接続されており、これらは高電圧回路14を構成する。
【0035】
ISG4は、発電機および電動機として動作可能な装置である。ISG4は、ベルト4aを介してエンジン2のクランクシャフト2aに連結されている。
【0036】
ISG4は、発電機として動作する際には、エンジン2のクランクシャフト2aと連動して回転するロータを磁界中で回転させることにより発電を行う。ISG4は、磁界を発生するフィールドコイルへの供給電流の増減に応じて、最大数十Vまでの範囲で発電電圧を調節することが可能になっている。ISG4には、発電された交流電力を直流電力に変換する整流器(図示省略)が内蔵されている。ISG4で発電された電力は、この整流器で直流に変換された後に、高電圧ラインL1に出力され、高電圧ラインL1を介してLiバッテリ9に蓄電される。
【0037】
本実施形態では、ISG4は、車両の減速時に発電機として動作するように制御されて、エンジン2の回転エネルギーを電気に変換する。つまり、本実施形態では、ISG4は、いわゆる減速回生発電を行うように構成されている。
【0038】
ISG4は、電動機として動作する際は、Liバッテリ9からの電力供給を受けて駆動され、ベルト4aを介してエンジン2のクランクシャフト2aに駆動力を伝達して、エンジン2に駆動力を付与する。
【0039】
このように、本実施形態では、ISG4は、エンジン2により駆動されて発電する発電装置と、Liバッテリの電力を用いてエンジン2に駆動力を付与可能な駆動力付与装置として機能する。また、Liバッテリが、車両の減速時にISG4で発電された電力を蓄電可能な蓄電池として機能する。
【0040】
ISG4は、冷間始動時を除くエンジンの始動時に、電動機として動作してエンジン2を始動させる(エンジン2を強制的に回転させる)。本実施形態では、車両1は、いわゆるアイドルストップを実施可能に構成されており、アイドルストップ後のエンジン2の再始動時も、ISG4によってエンジン2が再始動される。具体的には、車両1に設けられたイグニッションスイッチを乗員が操作することによって、エンジン2は始動/停止される。また、エンジン2は、車速が所定値以下でエンジンがアイドル状態にある等の条件が成立すると自動的に停止され、その後、アクセルペダルが踏み込まれる等の条件が成立すると自動的に再始動される。
【0041】
また、ISG4は、エンジン負荷の低いとき等に電動機として動作するように制御されて、エンジン2に駆動力を付与する。つまり、本実施形態では、ISG4は、いわゆるトルクアシストを行うようにも構成されている。
【0042】
Liバッテリ9は、正極にリチウムを含み、正極と負極との間でのリチウムイオンの移動により充放電するバッテリである。Liバッテリ9は、鉛バッテリ12よりも速い速度で充放電ができるとともに、鉛バッテリ12よりも充放電による劣化が進行しにくい。本実施形態では、ISG4で生成された電力がLiバッテリ9に蓄電されるように構成されていることで、エンジン2の減速エネルギーを効率よく電力として車両1に貯蔵することができる。そして、このようにISG4で生成された電力をより多く蓄電できるように、Liバッテリ9の公称電圧は、鉛バッテリ12の交渉電圧よりも高い電圧とされている。本実施形態では、Liバッテリ9の公称電圧は、DC24Vとされている。ここで、充放電速度が高く電力を多く貯蔵可能な装置としては、キャパシタがあるが、Liバッテリ9は、同じサイズのキャパシタに比べて容量を大きくすることができる。従って、本実施形態では、電力を貯蔵するための装置の小型化も実現されている。
【0043】
ここで、Liバッテリ9は、充電および放電されることによって、その温度が上昇するようになっている。
【0044】
図2は、Liバッテリ9の配置を説明するための図であって車両1の一部を概略的に示した平面図である。図2の例では、車両1の前部にエンジンルーム1が形成されており、その後方に車室80が形成されている。
【0045】
車両1は、車室の床面を構成するフロアパネル81と、車両の車幅方向の両側部に形成された開口部(ドア部分)の下部に設けられて車両前後方向に延びる一対のサイドシル82とを備える。車両1は、フロアパネル81の下方に設けられて、エンジン2の排気ガスを車両1の外部に排出するためのダクトが収容されるフロアトンネル83を備える。フロアトンネル83は、車室の車幅方向の略中央を通ってエンジンルーム1から後方に延びている。Liバッテリ9は、フロアパネル81の下方であってフロアトンネル83と一方のサイドシル82(図2の例では、右側のサイドシル82)との間に、配置されている。図2の例では、Liバッテリ9は、フロアパネル81の前部の下方であって運転席あるいは助手席の下方に配置されている。
【0046】
このように配置されることで、スタータ3とLiバッテリ9との距離、ひいては、これらをつなぐ電線が短く抑えられている。
【0047】
ここで、フロアトンネル83とサイドシル82との車幅方向の離間距離は短い。これに対して、本実施形態では、Liバッテリ9を構成する複数のLi蓄電池のセルが、一列に並ぶように配設されて直列接続されて、Liバッテリ9が平面視で所定の方向に長く延びる形状とされている。そして、Liバッテリ9が、その長手方向つまりセルの配列方向が車両前後方向に沿うように配置されている。これにより、Liバッテリ9を、前記のようにスタータ3との距離が短く抑えられる位置に配置することが可能とされている。
【0048】
シートヒータ5(高電圧電気機器の一例、車室ヒータの一例)は、車両1の座席を加熱するためのヒータである。PTCヒータ6(高電圧電気機器の一例、車室ヒータの一例)は、車両1の室内を暖房するためのヒータである。触媒ヒータ7は、排ガスを浄化する触媒を加熱するためのヒータである。シートヒータ5、PTCヒータ6、及び触媒ヒータ7は、DC数十Vでも安定して動作するため、高電圧ラインL1の側に配置されている。
【0049】
(低電圧回路)
鉛バッテリ12は、低電圧ラインL2を介して、スタータ3及び低電圧電気機器13に電気的に接続されており、これらは低電圧回路15を構成する。この低電圧電気機器13は、請求項にいう「電気負荷」に相当する。
【0050】
鉛バッテリ12は、本実施形態では、直列接続された6セルの鉛蓄電池を含む。この構成により、鉛バッテリ12の公称電圧は、DC12Vになっている。
【0051】
スタータ3は、エンジン2を始動するための装置である。スタータ3は、ギヤ駆動式の装置であり、エンジン2のリングギヤ2bに連結されたピニオンギヤ3aを有する。スタータ3の駆動力は、ピニオンギヤ3a及びリングギヤ2bを介して、エンジン2のクランクシャフト2aに伝達される。スタータ3は、冷間始動時(冷間時に乗員のイグニッションスイッチの操作に伴ってエンジン2を始動させる時)にのみ駆動されてエンジン2を始動させる。
【0052】
低電圧電気機器13は、鉛バッテリ12の公称電圧と同じ電圧(本実施形態では、DC12V)以下の電圧で動作する電気機器である。低電圧電気機器13は、例えば、電動式パワーステアリング機構(EAPS)、エアコン、オーディオ機器、各種の照明装置を含む。
【0053】
(DC-DCコンバータ)
DC-DCコンバータ10は、高電圧回路14と低電圧回路15との間に設けられており、これら回路14、15どうしをつないでいる。
【0054】
DC-DCコンバータ10は、高電圧ラインL1から低電圧ラインL2に(つまり図1中、左側から右側に)供給される電力の電圧を降圧するための装置である。Liバッテリ9からの出力電力およびISG4によって発電された電力は、DC-DCコンバータ10によって電圧が降圧されて低電圧電気機器13に供給されると共に、余剰電力は鉛バッテリ12に供給されて、鉛バッテリ12が充電される。
【0055】
DC-DCコンバータ10は、これ以外の機能、例えば上記とは反対方向(つまり図1中、右側から左側へ)の電力の供給を許容したり、電圧を昇圧したりする機能は有しておらず、電圧の降圧のみを行う。このように構成されることで、本実施形態では、高電圧ラインL1と低電圧ラインL2とをつなぎつつ、これをつなぐためのコンバータの構造を簡素化してコストを格段に低く抑えることができる。
【0056】
図3は、DC-DCコンバータ10の構成を説明するための概略図である。DC-DCコンバータ10は、FETからなるスイッチング素子10a、10b(Hi-FET10aとLow-FET10b)を内蔵しており、これらスイッチング素子10a、10bのオンオフスイッチングによって入力電圧を変化させて出力する。このDC-DCコンバータ10では、スイッチング素子10a、10bのオンオフ時間を変更することで、出力電圧を変更することが可能となっている。スイッチング素子10a、10bのオンオフ時間の変更は、後述するECU100により行われるようになっており、ECU100は、後述するように出力電圧の目標値を設定するとともに、この目標値が実現されるスイッチング素子10a、10bのオンオフ時間を算出し、このオンオフ時間が実現されるようにDC-DCコンバータ10に指令信号を出力する。
【0057】
ここで、高電圧ラインL1側から低電圧ラインL2側へつまり鉛バッテリ12および低電圧電気機器13に電力が安定して供給されるように、DC-DCコンバータ10の出力電圧は、基本的に、鉛バッテリ12の公称電圧および低電圧電気機器13の作動電圧よりも十分に高い基本出力電圧とされる。つまり、DC-DCコンバータ10の出力電圧の目標値である目標出力電圧が基本出力電圧とされ、これが実現されるように、ECU100によりDC-DCコンバータ10(DC-DCコンバータ10に内蔵されたFET10a、10b)が制御される。本実施形態では、鉛バッテリ12の公称電圧が12Vであるのに対して、基本出力電圧は14.4Vに設定されている。なお、この基本出力電圧は、Liバッテリ9の液温等に応じて変更されてもよい。
【0058】
(2)制御系統
図3は、図1に示される車両1の制御系統の電気的構成を概略的に示すブロック図である。図3に示されるECU100は、エンジンを統括的に制御するためのマイクロプロセッサであり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。
【0059】
ECU100には各種センサによる検出情報や各種スイッチの操作信号が入力される。
【0060】
具体的に、車両1には、クランク角センサSN20、水温センサSN21、外気温センサSN22、アクセルセンサSN23、ブレーキセンサSN24、車速センサSN25、Liバッテリ電圧センサSN26、Liバッテリ電流センサSN27、イグニッションスイッチSW28、PTCヒータスイッチSW29、シートヒータスイッチSW30等が設けられている。
【0061】
クランク角センサSN20は、クランクシャフト2aの回転速度ひいてはエンジン回転数を検出する。水温センサSN21は、エンジン2を冷却するためのエンジン冷却水の温度を検出する。外気温センサSN22は、外気温つまり車両1の周囲の気温を検出する。アクセルセンサSN23は、車両1に設けられたアクセルペダルの踏込量を検出する。ブレーキセンサSN24は、フットブレーキペダルの踏込量を検出する。車速センサSN25は、車速を検出する。Liバッテリ電圧センサSN26、Liバッテリ電流センサSN27は、それぞれ、Liバッテリ9の出力・入力電圧および出力・入力電流を検出する。イグニッションSW(イグニッションスイッチ)20は、前記のように、乗員がエンジン2の始動/停止を行うためのスイッチである。PTCヒータSW28は、乗員がPTCヒータ6の駆動/停止を行うためのスイッチである。シートヒータSW29は、乗員がシートヒータ5の駆動/停止を行うためのスイッチである。
【0062】
ECU100は、各センサ、各スイッチの入力情報に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつ車両1に設けられた各装置を制御する。ECU100は、インジェクタ30、点火プラグ31、スタータ3、ISG4、シートヒータ5、PTCヒータ6、DC-DCコンバータ10、低電圧電気機器13等と電気的に接続されており、前記演算の結果等に基づいてこれらの機器にそれぞれ制御用の信号を出力する。このECU100は、請求項にいう「制御装置」に相当する。
【0063】
例えば、水温センサSN21で検出されたエンジン冷却水の温度が所定温度未満のときにイグニッションSW20が操作されると、ECU100は、冷間始動時であると判定して、スタータ3を駆動させる。ECU100は、PTCヒータSW28、シートヒータSW29等のスイッチの操作に応じて、シートヒータ5、PTCヒータ6、低電圧電気機器13等を駆動させる。
【0064】
また、ECU100は、アクセルセンサSN23により検出されたアクセルペダルの踏込量が所定値以下であれば、インジェクタ30および点火プラグ31の駆動を停止する減速フューエルカットを実施するとともに、ISG4を発電機として駆動させる。ECU100は、アクセルペダルの踏込量やクランク角センサSN20により検出されたエンジン回転数等に基づいてエンジン負荷を算出し、エンジン負荷が所定値未満のときは、ISG4を電動機として駆動させてISG4からエンジン2にトルクを付与する。
【0065】
また、ECU100は、エンジン冷却水の温度が所定の温度以上である、アアクセルペダルがオフ状態(アクセル開度がゼロ)である、フットブレーキペダルの踏込量が0より大きい(フットブレーキペダルが踏み込まれている)、エンジン回転数が所定の回転数以下である、という条件を含むアイドルストップ許可条件が成立するとエンジン2を自動停止(アイドルストップ)させる。さらに、その後、ブレーキペダルが踏み込まれておらずアクセルペダルが踏み込まれている等の条件の成立が成立すると、ISG4を電動機として駆動させてエンジン2を再始動させる。
【0066】
ここで、前記のように、高電圧回路14と低電圧回路15とをつなぐコンバータとして、降圧機能を有するDC-DCコンバータ10を用いれば、コストを極めて小さく抑えることができる。しかしながら、この構成では、エンジン2の再始動時に低電圧回路15に接続された低電圧電気機器13に付与される電圧が急低下するおそれがある。
【0067】
図5を用いて具体的に説明する。図5は、後述する出力電圧低下制御を実施しなかったときの車両の各パラメータの時間変化を模式的に示した図である。図5には、上から順に、車速、エンジン回転数、Liバッテリ9の電圧、DC-DCコンバータ10の出力電圧、低電圧電気機器に入力される電圧を示している。
【0068】
時刻t11にて車両が減速を開始すると、ISG4が発電機として駆動されて発電を行うことでLiバッテリ9の電圧は上昇する。しかし、時刻t12にてエンジン回転数がアイドル回転数に低下したこと等に伴ってエンジン2が自動停止されると、Liバッテリ9の電圧は徐々に低下していく。その後、時刻t13にて、エンジンを再始動させる要求があると、ISG4が電動機として駆動されてエンジン2を強制的に回転させる。このとき、Liバッテリ9からはISG4に向けて非常に大きな電力が放出され、Liバッテリ9の電圧は急降下してしまう。この電圧低下量が大きいと、Liバッテリ9の電圧が、破線で示したDC-DCコンバータ10の出力電圧よりも低下してしまう。そして、Liバッテリ9の電圧がDC-DCコンバータ10の出力電圧よりも低下すると、DC-DCコンバータ10は、降圧機能しか有していないことから、Liバッテリ9から低電圧回路15側へ電力が供給されなくなり、低電圧電気機器13に入力される電圧が急低下する。
【0069】
本実施形態では、低電圧回路15に鉛バッテリ12が設けられていることから、DC-DCコンバータ10から電力が出力されなくても、鉛バッテリ12によって低電圧回路15に設けられた各低電圧電気機器13への電力供給を持続することはできる。しかし、前記のように、DC-DCコンバータ10の出力電圧は、基本的に、鉛バッテリ12の公称電圧よりも十分に高い値とされている。そのため、DC-DCコンバータ10から電力が出力されなくなって各低電圧電気機器13への電力供給源が鉛バッテリ12に切り替わると、これら低電圧電気機器13に供給される電圧が急低下して、低電圧電気機器13の作動状態が変化してしまう。例えば、低電圧電気機器13としてライトが作動しているときに、このライトがちらつく場合がある。また、低電圧電気機器13としてオーディオが作動しているときに、オーディオの音量が変化する場合がある。これらは、乗員に違和感を生じさせる。
【0070】
そこで、本実施形態では、このような低電圧電気機器13に供給される電圧が急低下するのを防止するために、Liバッテリ9を強制的に充放電させて昇温する強制充放電制御を実施する。また、本実施形態では、エンジンの自動停止時にDC-DCコンバータ10の出力電圧を低下させる出力電圧低下制御を実施する。
【0071】
(電力制御)
図6のフローチャート等を用いて、強制充放電制御を含むLiバッテリ9の電力制御について説明する。
【0072】
ステップS1にて、ECU100は、各センサの検出値を含む車両の各種情報を読み込む。ステップS1の後はステップS2に進む。
【0073】
ステップS2では、ECU100は、エンジン2が稼働中であるか否かを判定する。具体的には、ECU100は、エンジン回転数が0より大きいか否かを判定する。
【0074】
ステップS2の判定がNOであってエンジン2が停止中(エンジン回転数が0)のときは、ECU100はそのまま処理を終了する(ステップS1に戻る)。一方、ステップS2の判定がYESであってエンジン2が稼働中のときは、ステップS3に進む。
【0075】
ステップS3では、ECU100は、車両が減速中であるか否かを判定する。具体的には、ECU100は、車速が低下していると車両が減速中であると判定する。なお、これに代えて、フューエルカットがなされている、あるいは、車速が低下し且つフューエルカットがなされていると、車両が減速中であると判定してもよい。
【0076】
ステップS3の判定がYESであって車両が減速中のときは、ステップS4に進む。ステップS4では、ECU100は、ISG4を発電機として駆動させて処理を終了する(ステップS1に戻る)。前記のように、ISG4で生成された電力はLiバッテリ9に充電される。また、余剰分は鉛バッテリ12に充電される。
【0077】
一方、ステップS3の判定がNOであって車両が減速中でないときは、ステップS5に進む。ステップS5では、ECU100は、Liバッテリ9の内部抵抗を推定する。ECU100は、Liバッテリ9の温度とLiバッテリ9の劣化の進み具合とに基づいてLiバッテリ9の内部抵抗を推定する。
【0078】
具体的には、ECU100は、Liバッテリ9が充放電に伴って発熱した量をLiバッテリ電圧センサSN26およびLiバッテリ電流センサSN27により検出されたLiバッテリ9の入出力電圧および入出力電流に基づいて随時推定するとともに、推定した発熱量に基づいてこの発熱に伴うLiバッテリ9の温度上昇量を随時推定している。さらに、ECU100は、この温度上昇量と外気温とに基づいて、Liバッテリ9の温度を随時推定している。
【0079】
また、ECU100は、エンジンの再始動に伴ってISG4が駆動されたときにLiバッテリ9から放出された電流と電圧(Liバッテリ電圧センサSN26およびLiバッテリ電流センサSN27により検出された電流と電圧)とに基づいて、Liバッテリ9の劣化の進み具合を推定する。具体的には、ECU100は、Liバッテリ9から放出された電流が少ないほど且つ放出された電圧が低いほどLiバッテリ9の劣化が進んでいると推定する。本実施形態では、これら電流が少ないほど且つ電圧が低いほど大きい値となるパラメータであってLiバッテリ9の劣化の進み具合を数値化したパラメータ(以下、適宜、劣化パラメータという)が設定されており、ECU100は、前記電流および電圧に基づいて劣化パラメータの値を算出する。ECU100は、エンジンの再始動に伴ってISG4が駆動される毎に劣化パラメータの値を算出して更新し、記憶する。
【0080】
本実施形態では、ECU100には、図7に示すマップが記憶されている。このマップは、横軸をLiバッテリ9の温度、縦軸をLiバッテリ9の内部抵抗としたマップである。また、このマップに示された複数のラインは、劣化パラメータの値(Liバッテリ9の劣化の進み具合)が互いに異なるラインである。ECU100は、このマップから、現時点(ステップS7実施時点)でのLiバッテリ9の温度の推定値と、現時点(ステップS7実施時点)で記憶している劣化パラメータの値とに対応するLiバッテリ9の内部抵抗を抽出して、これを現時点(ステップS7実施時点)でのLiバッテリ9の内部抵抗として推定する。図7に示されるように、Liバッテリ9の温度が低いほど且つ劣化パラメータの値が大きくLiバッテリ9の劣化の進み具合が大きいほど、Liバッテリ9の内部抵抗は高い値に推定される。
【0081】
図6に戻り、ステップS5の後はステップS6に進む。ステップS6では、ECU100は、推定したLiバッテリ9の内部抵抗が予め設定されてECU100に記憶されている判定抵抗値以上であるか否かを判定する。
【0082】
判定抵抗値は、例えば、エンジンの再始動時のLiバッテリ9の電圧降下量が所定値以内に抑えられるLiバッテリ9の内部抵抗の最大値に設定されている。
【0083】
ステップS6の判定がYESであってLiバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値以上のときは、ステップS7に進む。ステップS7では、ECU100は、Liバッテリ9を強制的に充放電させて昇温する強制充放電制御を実施する。
【0084】
具体的には、ECU100は、図8に示すように、基準期間dtの間ISG4を発電機として駆動させる制御と基準期間dtの間ISG4を電動機として駆動させる制御とを交互に行う。つまり、ECU100は、予め設定された基準期間dtの間ISG4を発電機として駆動させ、その直後から基準時間dtの間ISG4を電動機として駆動させるという制御を連続して繰り返し実施する。ISG4が発電機として駆動されるとLiバッテリ9は充電される。一方、ISG4が電動機として駆動されるとLiバッテリ9は放電する。従って、図8に示すように、Liバッテリ9の電圧は、基準期間dtの間上昇し、基準期間dtの間減少するというのを繰り返し、これによって、Liバッテリ9の温度は上昇していく。
【0085】
ここで、ISG4を電動機として駆動させると、前記のように、ISG4からエンジン2に駆動力が付与される。従って、強制充放電制御時にLiバッテリ9から放出されたエネルギーは、エンジン2の駆動をアシストするアシストトルクとして利用される。
【0086】
この強制充放電制御は、基本的に、Liバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値以上の間(ステップS7の判定がNOの間)、継続される。ECU100は、Liバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値未満になると(ステップS8の判定がYESとなると)ステップS9に進み強制充放電制御を停止する。ステップS9の後は処理を終了する(ステップS1に戻る)。なお、図示は省略したが、強制充放電制御の実施中(ステップS7の実施中)であっても、エンジン2が停止する(ステップS2の判定がNOとなる)、あるいは、車両が減速を開始すると(ステップS3の判定がYESとなる)と、強制充放電制御は停止される。
【0087】
本実施形態では、強制充放電制御がいつ停止されても、強制充電放電制御の実施によってLiバッテリ9に充電される電力量と、この強制充放電制御の実施によってLiバッテリ9から放電される電力量とがほぼ同じになるように、基準期間dtは比較的短い時間に設定されている。ステップS6の後は処理を終了する(ステップS1に戻る)。なお、これに代えて、ステップS7の判定がNOとなっても、強制充放電制御の実施によってLiバッテリ9に充電される電力量とLiバッテリ9から放電される電力量とがほぼ同じになるまで、強制充放電制御を継続するようにしてもよい。
【0088】
一方、ステップS6の判定がNOであってLiバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値未満のときは、ステップS10に進む。ステップS10では、ECU100は、エンジン2が現在(ステップS10の実施時点で)、低負荷領域A1で運転されているか否かを判定する。低負荷領域A1は、エンジン負荷が予め設定された基準負荷Tq1未満の領域であって、例えば、図9に示すように設定されている。
【0089】
ステップS10の判定がNOであってエンジン2が低負荷領域A1で運転されていない場合は、処理を終了する(ステップS1に戻る)。
【0090】
一方、ステップS10の判定がYESであってエンジン2が低負荷領域A1で運転されている場合は、ステップS11に進む。ステップS11では、ECU100は、ISG4によりエンジン2をトルクアシストする。具体的には、ECU100は、Liバッテリ9の電力を用いてISG4を電動機として駆動し、ISG4からエンジン2に駆動力を付与する。
【0091】
このように、本実施形態では、エンジン2が低負荷領域A1で運転されているときは、ISG4からエンジン2に駆動力を付与してエンジン2を安定して回転させるようにしている。ステップS11の後は処理を終了する(ステップS1に戻る)。
【0092】
(自動停止制御)
図10のフローチャート等を用いて、出力電圧低下制御を含むエンジン2の自動停止時の制御について説明する。以下の説明、および、図10では、エンジンの自動停止を、アイドルストップと記す。
【0093】
ステップS21にて、ECU100は、各センサの検出値を含む車両の各種情報を読み込む。ステップS21の後はステップS22に進む。
【0094】
ステップS22では、ECU100は、車両1がアイドルストップを実施することが可能な状態にあることを示す条件であるアイドルストップ許可条件が成立したか否かを判定する。本実施形態では、エンジン冷却水の温度が所定の温度以上であり、エンジン回転数が所定の回転数以下であり、アクセルペダルがオフ状態(アクセル開度がゼロ)であり、フットブレーキペダルの踏込量が0より大きい(フットブレーキペダルが踏み込まれている)ときに、アイドルストップ許可条件が成立したと、判定される。
【0095】
ステップS22の判定がNOであってアイドルストップ許可条件が非成立のときは、ECU100はそのまま処理を終了する(ステップS21に戻る)。
【0096】
一方、ステップS22の判定がYESであってアイドルストップ許可条件が成立したときは、ステップS23に進む。ステップS23では、ECU100は、車速が予め設定された第1判定車速以下且つ予め設定された第2判定車速よりも大きく、さらに、Liバッテリ9のSOC(State Of Charge:残容量)が予め設定された判定SOC以上であるという特定条件が成立しているか否かを判定する。第1判定車速は、0km/hよりも大きい値であって、例えば、16km/h程度に設定されている。第2判定車速は、第1判定車速よりも小さい値であって0km/hに設定されている。判定SOCは、0より大きく100%よりも小さい値に設定されている。
【0097】
ステップS23の判定がYESであって前記特定条件が成立しているとき、つまり、車速が第2判定車速以上よりも大きく車両は完全には停車していないが車速が第1判定車速以下と低く、かつ、Liバッテリ9のSOCが判定SOC以上であって比較的多く確保されている場合は、ステップS24に進む。ステップS24では、ECU100は、有車速フラグを1とする。この有車速フラグは、ステップS23の判定がYESのときに1となり、その他のときに0となるフラグである。なお、図示は省略したが、ステップS22の判定がNOのときは有車速フラグは0にリセットされる。ステップS24の後はステップS27に進む。
【0098】
一方、ステップS23の判定がNOであって前記特定条件が非成立のときは、ステップS25に進む。ステップS25では、ECU100は、車速が第2判定車速以下であって停車中であるか否かを判定する。
【0099】
ステップS25の判定がYESであって車速が第2判定車速以下の場合(停車中の場合)は、ステップS26に進む。ステップS26では、ECU100は、有車速フラグを0にする。ステップS26の次はステップS27に進む。
【0100】
ステップS27では、ECU100は、Liバッテリ9の内部抵抗が前記の判定抵抗値以上であるか否かを判定する。なお、このステップS27の判定に用いる閾値は前記の判定抵抗値とは別の値であってもよい。
【0101】
ステップS27の判定がNOであってLiバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値未満のときは、ECU100は、ステップS28に進む。ステップS28では、ECU100は、DC-DCコンバータ10の出力電圧の目標値である目標出力電圧を、基本出力電圧に維持し、ステップS33に進む。以下、適宜、DC-DCコンバータ10の出力電圧の目標値である目標出力電圧を、単に、目標出力電圧という。
【0102】
ステップS33では、ECU100は、アイドルストップを実施する。具体的には、ECU100は、インジェクタ30による燃料噴射を停止させるとともに、点火プラグ31による点火を停止させる。このように、Liバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値未満のときは、後述する出力電圧低下制御が実施されることなくアイドルストップが実施される。
【0103】
一方、ステップS27の判定がYESであってLiバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値以上のときは、ECU100は、ステップS28に進む。
【0104】
ステップS28では、ECU100は、推定したLiバッテリ9の内部抵抗と有車速フラグとに基づいて目標出力電圧を決定する。
【0105】
図11は、Liバッテリ9の内部抵抗と、目標出力電圧との関係を示したグラフである。図11において、実線は有車速フラグが0のときのライン、破線は有車速フラグが1のときのラインである。前記のように、ステップS7の判定がNOであってLiバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値未満のときは、Liバッテリの出力電圧は基本出力電圧に維持される。一方、Liバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値以上のときは有車速フラグが1のときと0のときとのいずれにおいても、目標出力電圧は基本出力電圧よりも低い電圧とされる。また、Liバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値以上のときは、目標出力電圧は、Liバッテリ9の内部抵抗が大きいときの方が小さいときよりも小さい値とされる。図11の例では、Liバッテリ9の内部抵抗に比例してこの内部抵抗が増大するほど目標出力電圧は小さくされる。また、図11に示すように、Liバッテリ9の内部抵抗が同じであっても有車速フラグが1のときの方が0のときよりも、目標出力電圧は小さい値とされる。
【0106】
例えば、図11の例では、判定抵抗値は13mΩとされる。また、基本出力電圧は14.4Vとされる。そして、有車速フラグが1のときは、Liバッテリ内部抵抗が13.5mΩまで増加すると目標出力電圧は13.8V程度とされる。一方、有車速フラグが0のときは、Liバッテリ内部抵抗が13.5mΩまで増加すると目標出力電圧は14.2V程度とされる。
【0107】
図10に戻り、ステップS29の後は、ステップS30に進む。ステップS30では、ECU100は、Liバッテリ9の現在(ステップS30の実施時点)の出力電圧(現出力電圧)、ステップS29で決定した目標出力電圧との差に基づいて、Liバッテリの出力電圧の低下速度である電圧低下速度を決定する。本実施形態では、現出力電圧には、ECU100で設定されている出力電圧の指令値が用いられる。
【0108】
図12は、実出力電圧から目標出力電圧を引いた値であって出力電圧の低下量の目標値(以下、目標低下電圧という)と、電圧低下速度との関係を示した図である。図12に示すように、本実施形態では、目標低下電圧が大きいときの方が小さいときよりも電圧低下速度が大きくされる。図12の例では、目標低下電圧が所定値dV0以上では電圧低下速度は一定に維持され、目標低下電圧が所定値dV0未満では目標低下電圧に比例して目標低下電圧が大きくなるほど電圧低下速度は小さくされる。例えば、目標低下電圧は、0.5V/sec~2V/ses程度に設定される。
【0109】
ステップS30の後は、ステップS31に進む。ステップS31では、ECU100は、DC-DCコンバータ10の出力電圧を低下させる。具体的には、前記のように、ECU100は、DC-DCコンバータ10に内蔵されているスイッチング素子10a、10bのオンオフ時間を変更する。このとき、ECU100は、DC-DCコンバータ10の出力電圧がステップS30で設定した電圧低下速度で低下していくように、スイッチング素子10a、10bのオンオフ時間を調整する。これにより、DC-DCコンバータ10の出力電圧は、目標出力電圧に向けて漸減される。
【0110】
ステップS31の後は、ステップS32に進む。ステップS32では、DC-DCコンバータ10の現出力電圧が目標出力電圧以下になったか否かを判定する。この判定がNOであってDC-DCコンバータ10の現出力電圧がまだ目標出力電圧まで低下していない場合はステップS31に戻る。一方、この判定がYESとなってDC-DCコンバータ10の現出力電圧が目標出力電圧まで低下すると、ステップS33に進みアイドルストップを実施する。
【0111】
このように、本実施形態では、ECU100は、Liバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値未満のときは、アイドルストップ許可条件が成立しても、すぐにはアイドルストップを実施せず、DC-DCコンバータ10の出力電圧を基本目標電圧からこれよりも低い電圧に向けて漸減させる出力電圧低下制御を実施する。そして、DC-DCコンバータ10の出力電圧が目標出力電圧まで低下してはじめてアイドルストップを実施する。
【0112】
(3)作用等
図13は、車両走行時に、前記の強制充放電制御および出力電圧低下制御を含むエンジンの自動停止制御を実施したときの各パラメータの時間変化を模式的に示した図である。図13には、上から順に、車速、アイドルストップ許可フラグ、エンジン回転数、Liバッテリ9の温度、Liバッテリ9の内部抵抗、ISG4の駆動状態、Liバッテリ9の電圧、DC-DCコンバータ10の出力電圧、低電圧電気機器13に入力される電圧を示している。アイドルストップ許可フラグは、アイドルストップ許可条件が成立していると1になり、その他のときは0となるフラグである。
【0113】
図13に示すように、時刻t1では、減速中でないこと、および、Liバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値よりも低いことから、強制充放電制御が実施される。つまり、ISG4の機能が発電機と電動機とに交互に切り替えられて、Liバッテリ9が繰り返し充放電される。これに伴い、Liバッテリ9の電圧も昇降を繰り返す。そして、Liバッテリ9の温度は速い速度で上昇し、LIバッテリ9の内部抵抗が速い速度で低下する。
【0114】
時刻t2にて車両が減速を開始すると、強制充放電制御は停止され、ISG4が発電機として駆動されて発電を開始する。これに伴って、Liバッテリ9の電圧は、時刻t2後、徐々に増大する。その後、時刻t3において、アイドルストップ許可条件が成立する(アイドルストップ許可フラグが0から1になる)。なお、強制充放電制御が停止された時刻t2後も、車両の走行等に伴ってLiバッテリ9の温度は上昇する。ただし、その上昇速度は、強制充放電制御の実施時よりも遅い。
【0115】
時刻t3では、Liバッテリ9の内部抵抗はまだ判定抵抗値よりも大きい。そのため、時刻t3では、アイドルストップは実施されず、出力電圧低下制御が実施される。これにより、時刻t3後、DC-DCコンバータ10の出力電圧は漸減され、低電圧電気機器13の入力電圧も漸減していく。そして、時刻t4にて、DC-DCコンバータ10の出力電圧がLiバッテリ9の内部抵抗に基づいて設定された目標の出力電圧V1であって基本出力電圧V0よりも低い電圧V1まで低下すると、アイドルストップが実施されてエンジン2が停止される(エンジン回転数が0となる)。
【0116】
時刻t3より少し前のタイミング以後は、エンジン2がアイドル運転されることおよびエンジン2が停止されることに伴って、ISG4からLiバッテリ9への電力の供給が停止する。そのため、時刻t3以後はLiバッテリ9の電圧は徐々に低下していく。
【0117】
時刻t4にてアイドルストップ許可条件が非成立となりエンジンを再始動させる条件が成立すると、ISG4は電動機として駆動され、Liバッテリ9の電圧は急低下する。しかし、本実施形態では、強制充放電制御の実施によってLiバッテリ9の内部抵抗が低くされている。そのため、Liバッテリ9の電圧降下量は少なく抑えられる。また、DC-DCコンバータ10の出力電圧が低い電圧V1とされていることで、Liバッテリ9の電圧はDC-DCコンバータ10の出力電圧よりも高い値に維持される。従って、時刻t4において、低電圧電気機器13の入力電圧は急低下せず、低電圧電気機器13には安定して必要な電圧が供給される。
【0118】
時刻t5にてアイドルストップ許可条件が非成立となりエンジンが再始動されることに伴い、DC-DCコンバータ10の出力電圧は、基本出力電圧V0に戻される。図13の例では、このときDC-DCコンバータ10の出力電圧を基本出力電圧V0に向けて漸増される。
【0119】
時刻t5においても、まだ、Liバッテリ9の内部抵抗は判定抵抗値以上である。そのため、時刻t5にてエンジンが再始動された直後から、再び、強制充放電制御が実施される。これにより、Liバッテリ9の温度が再び比較的早い速度で上昇し、Liバッテリ9の内部抵抗は比較的早い速度で低下する。そして、時刻t6にて、Liバッテリ9の内部抵抗は判定抵抗値よりも低くなり、強制充放電制御は停止される。
【0120】
時刻t7において、車両が減速を開始すると、ISG4が発電機として駆動されて発電を開始する。これに伴って、Liバッテリ9の電圧は、時刻t2後、徐々に増大する。その後、時刻t8において、アイドルストップ許可条件が成立する(アイドルストップ許可フラグが0から1になる)。
【0121】
前記のように、時刻t6においてLiバッテリ9の内部抵抗は判定抵抗値を下回っており、時刻t8では、Liバッテリ9の内部抵抗は判定抵抗値よりも低い。そのため、時刻t8では、出力電圧低下制御は実施されず、アイドルストップ許可フラグが1になるとすぐさまアイドルストップが実施されてエンジン2が停止される。
【0122】
また、このように、Liバッテリ9の内部抵抗が低くなったことで、時刻t9でエンジンを再始動するべくISG4が電動機として駆動されたとき、Liバッテリ9の電圧降下量は少なく抑えられる。これにより、時刻t9では、DC-DCコンバータ10の出力電圧が基本出力電圧と高くされつつLiバッテリ9の電圧がこれよりも高くされて、低電圧電気機器13に高い電圧が付与される。
【0123】
このように、本実施形態に係る装置によれば、車両の減速時のエネルギーを電力としてLiバッテリ9に蓄電させることで車両全体のエネルギー効率を高くすることができる。また、エンジン2の再始動時にLiバッテリ9に蓄えられたこの電力によってISG4を駆動してエンジン2に駆動力を付与することができ、エンジン2を適切に再始動させることができる。
【0124】
しかも、エンジンの稼働中に、強制充放電制御を実施して、Liバッテリ9の充電と放電とを交互に繰り返して実施する。そのため、Liバッテリ9を早期に昇温してLiバッテリ9の内部抵抗を早期に低下させることができる。
【0125】
従って、エンジンの再始動時にISG4の駆動によってLiバッテリ9の電圧が低下しても、その低下量を少なく抑えることができ、Liバッテリ9の電圧をより高い電圧に維持できる。従って、エンジンの再始動時に、Liバッテリ9の電圧がDC-DCコンバータ10の出力電圧を下回ってLiバッテリ9から低電圧電気機器13への電力供給が停止するという事態、および、これに伴って低電圧電気機器13の作動状態が急変するのをより確実に防止できる。
【0126】
特に、本実施形態では、エンジンの稼働で且つ車両が減速中でないときに強制充放電制御を実施し、車両が減速中のときはISG4を発電機として駆動させてLiバッテリ9を充電する。そのため、車両の減速時のエネルギーをより確実にLiバッテリ9に蓄積させることができる。ただし、Liバッテリ9の蓄電量が十分に高いときにはLiバッテリ9にエネルギーを供給する必要性が小さい。そのため、Liバッテリ9の蓄電量が所定量以上のとき等には、強制充放電制御を実施してもよい。すなわち、強制充放電制御は、エンジンの稼働中に実施されればよく、車両が減速中のときに実施されてもよい。
【0127】
また、本実施形態では、この強制充放電制御をLiバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値以上のときにのみ実施し、Liバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値未満のときは強制充放電制御を禁止している。そのため、Liバッテリ9の内部抵抗が低いことでエンジンの再始動時にLiバッテリ9の電圧がDC-DCコンバータ10の出力電圧を下回らないと考えられるときまでLiバッテリ9が充放電されて、Liバッテリ9の劣化等が進むのを防止できる。
【0128】
また、本実施形態では、強制充放電制御の実施に伴ってLiバッテリ9から放電された電力によってISG4を電動機として駆動してエンジン2に駆動力を付与している。
【0129】
そのため、強制充放電制御の実施によって前記のように低電圧電気機器13を安定して適切に作動させつつ、Liバッテリ9から放出された電力を有効に利用して車両全体のエネルギー効率を高くすることができる。
【0130】
さらに、本実施形態では、エンジンの自動停止時に、DC-DCコンバータ10の出力電圧をエンジンの自動停止前の電圧よりも低い電圧に向けて漸減させる出力電圧低下制御を実施する。そのため、エンジンの再始動時に、DC-DCコンバータ10の出力電圧をより確実にLiバッテリ9の電圧よりも低い電圧にすることができる。そのため、エンジンの再始動時に、DC-DCコンバータ10を介したLiバッテリ9から低電圧電気機器13への電力供給を確実に持続でき、低電圧電気機器13をより確実に適切に作動させることができる。特に、本実施形態では、エンジンの自動停止時に、DC-DCコンバータ10の出力電圧を漸減させている。そのため、DC-DCコンバータ10の出力電圧を低下させて前記効果を得つつ、この出力電圧の低下によって低電圧電気機器13に加えられる電圧が急変するのも防止することができ、低電圧電気機器13を安定して適切に作動させることができる。
【0131】
また、本実施形態では、Liバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値以上のときにのみ前記の出力電圧低下制御を実施し、Liバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値未満のときには出力電圧低下制御を実施しない(禁止する)。そのため、Liバッテリ9の内部抵抗が高いためにLiバッテリ9の電圧降下が大きく低電圧電気機器13の入力電圧が急低下しやすい場合において、より確実にこの低電圧電気機器13の入力電圧の急低下を防止することができる。そして、Liバッテリ9の内部抵抗が比較的高く低電圧電気機器13の入力電圧の急低下が生じにくいときに出力電圧低下制御が禁止されることで、DC-DCコンバータ10の出力電圧ひいては低電圧電気機器13の入力電圧が過度に低くされるのを防止でき、低電圧電気機器13に高い電圧が安定して供給される機会を多く確保することができる。
【0132】
また、本実施形態では、図11を用いて説明したように、出力電圧低下制御を実施する場合において、有車速フラグが1であって停車していない状態でエンジンの自動停止がなされるときの方が、有車速フラグが0であって停車している状態でエンジンの自動停止がなされるときよりも、DC-DCコンバータ10の出力電圧が低くされる。
【0133】
そのため、エンジンの再始動時にLiバッテリ9の電圧がDC-DCコンバータの出力電圧よりも低くなるのを防止しながら、DC-DCコンバータ10の出力電圧が過度に低くされるのを防止して低電圧電気機器13に高い電圧が安定して供給される機会を多く確保することができる。
【0134】
具体的には、停車していない状態でエンジンの自動停止がなされるときは、その後、停車していない状態でエンジンが再始動される可能性がある。そして、このように停車していない状態でエンジンが再始動される場合は、エンジンの再始動時にエンジンを車速に対応した高い回転数まで高めねばならず、停車した状態でエンジンの自動停止がなされるときよりもISG4の駆動力を高くせねばならない。また、ブレーキ装置に電力を供給せねばならないこと等からも、ISG4の駆動力を高くせねばならない。そのため、停車していない状態でエンジンが再始動される場合は、エンジンの再始動時におけるLiバッテリ9の電圧降下量が大きくなる。
【0135】
これに対して、前記のように構成されていることで、本実施形態によれば、停車していない状態でエンジンが自動停止されて停車していない状態でエンジンが再始動されるときにも、Liバッテリの電圧がDC-DCコンバータの出力電圧よりも低くなるのを確実に防止できる。そして、停車している状態でエンジンが自動停止したときであってエンジンの再始動時におけるLiバッテリ9の電圧降下量が少なく抑えられるときに、DC-DCコンバータ10の出力電圧が過度に低くされるのを防止することができる。
【0136】
また、本実施形態によれば、複数のLi蓄電池のセルが一列に並ぶように配設されたLiバッテリ9を用い、これをフロアパネル81の下方であってフロアトンネル83とサイドシル82との間の空間に配置している。従って、この空間を利用して、Liバッテリ9をISG4により近い位置に適切に配置することができる。ISG4とLiバッテリ9との距離、ひいては、これらをつなぐ電線を短く抑えることができる。
【0137】
ただし、このように複数の電池を1列に配置して複数の電池を直列に接続すると、Liバッテリ9の内部抵抗が大きくなりやすい。そして、Liバッテリ9の内部抵抗が大きいと、エンジンの再始動時にLiバッテリ9の電圧が大きく低下しやすい。これに対して、本実施形態では、前記のように、エンジンの再始動時にLiバッテリ9の電圧が低下してもDC-DCコンバータ10の出力電圧がLiバッテリ9の電圧よりも低い電圧に維持される。そのため、前記のレイアウトを実現しながら、Liバッテリ9から低電圧電気機器13への電力供給を維持してこれの作動を安定させることができる。
【0138】
(4)変形例
前記実施形態では、エンジン2の自動停止時において、Liバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値以上のときに強制充放電制御を実施し、Liバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値未満のときは強制充放電制御を実施しない(禁止する)場合について説明したが、Liバッテリ9の内部抵抗によらず常に強制充放電制御を実施してもよい。ただし、この場合は、Liバッテリ9の内部抵抗が低いときの方が高いときよりもLiバッテリ9の充放電量(充電量および放電量)を小さくし、これにより、Liバッテリ9の内部抵抗が低いときの強制充放電制御の実施を制限する。この構成によっても、Liバッテリ9の内部抵抗が高いときにこれを早期に低下させて、エンジンの再始動時に、Liバッテリ9の電圧がDC-DCコンバータ10の出力電圧を下回ってLiバッテリ9から低電圧電気機器13への電力供給が停止するという事態、および、これに伴って低電圧電気機器13の作動状態が急変するのをより確実に防止できるとともに、エンジンの再始動時にLiバッテリ9の電圧がDC-DCコンバータ10の出力電圧を下回らないと考えられるときまでLiバッテリ9が充放電されて、Liバッテリ9の劣化等が進むのを防止できる。
【0139】
また、前記実施形態のようにLiバッテリ9の内部抵抗が判定抵抗値以上のときにのみ強制充放電制御を実施する場合においても、Liバッテリ9の内部抵抗が低いときの方が高いときよりもLiバッテリ9の充放電量を小さくするようにしてもよい。
【0140】
また、前記実施形態では、強制充放電制御の実施時にLiバッテリ9から放出された電力によってISG4を電動機として駆動してエンジン2に駆動力を付与する場合について説明したが、Liバッテリ9から放出された電力の利用方法はこれに限らない。
【0141】
また、前記実施形態では、ISG4により発電された電力を蓄電する蓄電池としてLiバッテリ9を用いた場合について説明したが、この蓄電池はLiバッテリ9に限らない。
【0142】
また、前記のように、強制充放電制御は、エンジンの稼働中に実施されればよく、車両が減速中のときに実施されてもよい。
【符号の説明】
【0143】
2 エンジン
4 ISG(発電装置、駆動力付与装置)
9 Liバッテリ(蓄電池)
10 DC-DCコンバータ(降圧装置)
12 鉛バッテリ(2次蓄電池)
13 低電圧電気機器(電気負荷)
14 高電圧回路
15 低電圧回路
100 ECU(制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13