(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】多液混合装置
(51)【国際特許分類】
B05B 7/26 20060101AFI20220209BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20220209BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20220209BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20220209BHJP
B01F 35/10 20220101ALI20220209BHJP
B01F 35/83 20220101ALI20220209BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
B05B7/26
B05B7/04
B01F3/08 Z
B01F5/00 D
B01F15/00 D
B01F15/04 A
B29C44/00 D
(21)【出願番号】P 2018049040
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 英憲
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 英一
(72)【発明者】
【氏名】片岡 伸介
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-044640(JP,A)
【文献】特表2015-510566(JP,A)
【文献】特開2016-175071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00-3/18
7/00-9/08
B01F1/00-5/26
15/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液体が混合される混合室と、該複数の液体を該混合室にそれぞれ供給する複数の供給路と、該複数の供給路の混合室への開口部にそれぞれ設けられ、該供給路の径よりも小さい開口径に絞られた開口を有する複数のオリフィス部とを備えた多液混合装置であって、
上記複数の供給路のそれぞれにおいて上記オリフィス部の開口に対して上流側で該開口の中心軸線に沿って離接する弁体を有し、該弁体の離接により該開口をそれぞれ開閉する開閉弁を備え、
上記複数の開閉弁の弁体はそれぞれ、上記オリフィス部の開口周縁部に当接して該オリフィス部の開口を閉じる球面状部を含
み、
上記複数の開閉弁は、流体の供給により上記弁体を駆動するアクチュエータをそれぞれ有し、
上記複数の開閉弁のアクチュエータへの流体供給系は、流体源と、該流体源と接続された共通流路と、該共通流路と上記複数の開閉弁用のアクチュエータとをそれぞれ接続する複数の個別流路と、上記共通流路に設けられ、上記複数の開閉弁を同時に開弁しかつ同時に閉弁するように作動させる切換弁とで構成されていることを特徴とする多液混合装置。
【請求項2】
請求項
1記載の多液混合装置において、
上記複数の個別流路の長さは略同じであり、
上記複数の個別流路の流路径は略同じであることを特徴とする多液混合装置。
【請求項3】
請求項
1又は
2記載の多液混合装置において、
上記流体源からの流体により駆動されて、上記混合室の内壁面に付着した付着物を掻き取るクリーニングピストンを更に備えていることを特徴とする多液混合装置。
【請求項4】
請求項
1~
3のいずれか1つに記載の多液混合装置において、
上記流体源は、エア源であることを特徴とする多液混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の液体が混合される混合室を備えた多液混合装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に示されているように、複数の液体(例えば、二液型発泡性ウレタン組成物の原料であるイソシアネート及びポリオール)を、チャンバ側壁に設けた細孔(オリフィス部の開口)からチャンバ(混合室)内にそれぞれ噴射して該複数の液体を混合するミキシングヘッド装置(多液混合装置)が知られている。このように複数の液体を細孔からそれぞれ噴射することで、該液体が微粒化されて混ざり易くなる。
【0003】
また、例えば特許文献2に記載のミキシングヘッド(多液混合装置)は、本体部分と、吐出充填ノズルを備えた先端部と、ミキシングヘッドを操作する作業者が手で握ることが可能なグリップ部とで構成されている。上記本体部分には、シリンダーと、該シリンダー内を油圧により摺動可能なピストンとが設けられている。このピストンには、ピストンロッドが取り付けられ、このピストンロッドは、細長い円柱状のシリンダ内に摺動可能に収容されている。このピストンロッドが摺動するシリンダの壁部には、該シリンダに向かって、各々、相対向するように配置された2つの噴射ノズル(オリフィス部)が設けられている。これら2つの噴射ノズルからそれぞれ液体(イソシアネート及びポリオール)が噴射されて混合され、該混合された液が吐出充填ノズルから噴射される。特許文献2では、上記ピストンロッドが摺動するシリンダ内における2つの噴射ノズルに対応する部分が混合室に相当する。
【0004】
特許文献2に記載のミキシングヘッド(多液混合装置)では、上記ピストンロッドが上記2つの噴射ノズルの開閉を行う弁の役割を有する。そして、上記ピストンが油圧により作動して上記ピストンロッドが上記シリンダ内において上記2つの噴射ノズルに対応する部分から退避すると、該2つの噴射ノズルが同時に開く一方、上記ピストンロッドが上記2つの噴射ノズルに対応する部分に変位すると、該2つの噴射ノズルが同時に閉じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】再公表特許WO2010/061464号公報
【文献】特許第4241957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような多液混合装置において、混合される各液の量を適切にするためには、複数のオリフィス部の開口を同時に開いたり同時に閉じたりする必要がある。上記特許文献2のように、複数のオリフィス部の開口を1つの弁(ピストンロッド)で開閉する構成にすれば、該弁により複数のオリフィス部の開口を同時に開いたり同時に閉じたりすることが容易にできるようになる。
【0007】
ところが、そのような構成では、ピストンロッドがシリンダ内を摺動するため、ピストンロッドとシリンダとの間にはどうしても隙間が生じ、このため、ピストンロッドがオリフィス部の開口を閉じているときのシール性を十分に確保することが困難である。また、ピストンロッドとシリンダとの嵌め合い精度を高めてシール性を確保しようとしても、シール性を確実なものとすることは困難であるとともに、ピストンロッドの摺動性が悪化して該ピストンロッドを動かすために大きな駆動力が必要になる。
【0008】
そこで、上記複数のオリフィス部の開口をそれぞれ開閉する複数の開閉弁を設けることが考えられる。この場合、開閉弁の弁体を、該弁体の中心軸線がオリフィス部の開口の中心軸線と一致するように配置して、該弁体を該弁体の中心軸線に沿って移動させることで、オリフィス部の開口を開閉するようにすれば、開閉弁の弁体がオリフィス部の開口を閉じているときのシール性を確保し易くなる。また、開閉弁の弁体の先端部をテーパ状に形成し、オリフィス部の開口の弁体側の端部にも、弁体の先端部に対応してテーパ部を形成しておき、弁体の先端部とオリフィス部の開口のテーパ部との当接によりオリフィス部の開口を閉じるようにすれば、部品の寸法誤差等により弁体の中心軸線がオリフィス部の開口の中心軸線に対してずれたり傾いたりしたとしても、弁体の先端部がテーパ部によりガイドされながら当接して、シール性を確保し易くなる。また、開閉弁(弁体)の駆動力が小さくて済み、工場等でよく用いられているエア源により開閉弁を駆動できるようになる。
【0009】
ここで、上記多液混合装置においては、複数の液体の混合をより一層十分に行うためには、オリフィス部の開口の長さ(液体流通方向の長さ)が短いことが好ましい。すなわち、オリフィス部の開口の長さが短いと、開口の出口から液体が広がって流出し易くなり、混合が良好に行われるようになる。
【0010】
このように開口長さが短くなると、オリフィス部の開口にテーパ部を形成することは困難であり、開閉弁の弁体の中心軸線がオリフィス部の開口の中心軸線に対してずれたり傾いたりした場合には、シール性を確保することが困難になる。
【0011】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、多液混合装置において、複数のオリフィス部の開口をそれぞれ開閉する複数の開閉弁を設ける場合に、開閉弁の弁体の中心軸線がオリフィス部の開口の中心軸線に対してずれたり傾いたりしたとしても、開閉弁の弁体がオリフィス部の開口を閉じているときのシール性を、該オリフィス部の開口にテーパ部を形成することなく、容易に確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明では、複数の液体が混合される混合室と、該複数の液体を該混合室にそれぞれ供給する複数の供給路と、該複数の供給路の混合室への開口部にそれぞれ設けられ、該供給路の径よりも小さい開口径に絞られた開口を有する複数のオリフィス部とを備えた多液混合装置を対象として、上記複数の供給路のそれぞれにおいて上記オリフィス部の開口に対して上流側で該開口の中心軸線に沿って離接する弁体を有し、該弁体の離接により該開口をそれぞれ開閉する開閉弁を備え、上記複数の開閉弁の弁体はそれぞれ、上記オリフィス部の開口周縁部に当接して該オリフィス部の開口を閉じる球面状部を含む、という構成とした。
【0013】
上記の構成により、開閉弁の弁体の球面状部がオリフィス部の開口周縁部に当接して該オリフィス部の開口を閉じるので、開閉弁の弁体の中心軸線がオリフィス部の開口の中心軸線に対してずれたり傾いたりしたとしても、開閉弁の弁体がオリフィス部の開口を閉じているときのシール性を確保することができる。よって、オリフィス部の開口にテーパ部を形成できなくても、簡単な構成で、上記シール性を確保することができる。
【0014】
さらに、上記多液混合装置において、上記複数の開閉弁は、流体の供給により上記弁体を駆動するアクチュエータをそれぞれ有し、上記複数の開閉弁のアクチュエータへの流体供給系は、流体源と、該流体源と接続された共通流路と、該共通流路と上記複数の開閉弁用のアクチュエータとをそれぞれ接続する複数の個別流路と、上記共通流路に設けられ、上記複数の開閉弁を同時に開弁しかつ同時に閉弁するように作動させる切換弁とで構成されている。
【0015】
このことにより、切換弁の作動によって複数のオリフィス部の開口を同時に開いたり同時に閉じたりすることが容易にできるようになり、混合する複数の液体の量を正確な量にすることができる。
【0016】
上記複数の開閉弁のアクチュエータへの流体供給系が、上記流体源と上記共通流路と上記複数の個別流路と上記切換弁とで構成されている場合、上記複数の個別流路の長さは略同じであり、上記複数の個別流路の流路径は略同じである、ことが好ましい。
【0017】
このことで、複数のオリフィス部の開口を同時に開いたり同時に閉じたりすることがより一層確実にできるようになる。
【0018】
上記複数の開閉弁のアクチュエータへの流体供給系が、上記流体源と上記共通流路と上記複数の個別流路と上記切換弁とで構成されている場合、上記流体源からの流体により駆動されて、上記混合室の内壁面に付着した付着物を掻き取るクリーニングピストンを更に備えている、ことが好ましい。
【0019】
このことにより、混合室内で混合された液を外部に吐出させた後(開閉弁を閉弁した後)に、開閉弁のアクチュエータを駆動する流体源と同じ流体源によりクリーニングピストンを作動させて、混合室のクリーニングを行うことができる。
【0020】
上記複数の開閉弁のアクチュエータへの流体供給系が、上記流体源と上記共通流路と上記複数の個別流路と上記切換弁とで構成されている場合、上記流体源は、エア源であることが好ましい。
【0021】
このことで、工場等でよく用いられているエア源を利用して、多液混合装置の開閉弁の弁体を容易に駆動することができる。また、作業者が多液混合装置(ミキシングヘッド)を持って、混合室内で混合された液を必要な箇所に吐出することが容易にできるようになる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の多液混合装置によると、複数の開閉弁の弁体がそれぞれ、オリフィス部の開口周縁部に当接して該オリフィス部の開口を閉じる球面状部を含むことにより、開閉弁の弁体の中心軸線がオリフィス部の開口の中心軸線に対してずれたり傾いたりしたとしても、開閉弁の弁体がオリフィス部の開口を閉じているときのシール性を、該オリフィス部の開口にテーパ部を形成することなく、容易に確保できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る多液混合装置を示す斜視図である。
【
図4】
図2のIV部分を拡大して示す断面図である。
【
図5】多液混合装置及び供給ユニットにおける第1液体及び第2液体の流れを示す図である。
【
図6】第1液体及び第2液体の流れを制御する弁を駆動するためのエアの供給システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1~
図3は、本発明の実施形態に係る多液混合装置1を示す。この多液混合装置1は、複数の液体を混合して、該混合した液体を、ブロック部材2に設けられた突起状の吐出部3より吐出して被供給部に供給するものである。本実施形態では、複数の液体は、第1液体及び第2液体であって、互いに混合されて発泡する発泡性材料である。第1液体及び第2液体は、例えば、二液型発泡性ウレタンの原料であるイソシアネート及びポリオール(互いに化学的に反応する反応性材料)である。上記被供給部は、例えば、内部に空間部101aを有する被供給部材101の該空間部101aである(
図5参照)。被供給部材101の空間部101aは、例えば、自動車における、ピラー、サイドシル、ルーフレール等の車体部材(フレーム)の閉断面空間部である。
【0026】
本実施形態では、多液混合装置1は、
図5に示すように、作業者8が手に持つことが可能なガン又はミキシングヘッドと呼ばれるものであって、上記混合した液体を被供給部材101の空間部101aに供給する際に、多液混合装置1に設けられた所定の操作スイッチ(図示せず)を操作したときに、後述の混合室11で上記第1液体及び上記第2液体がそれぞれ混合されて、該混合された液体が被供給部材101の空間部101aに供給されるようになっている。多液混合装置1には、作業者8が手に持つことが可能なグリップ部7が設けられている(
図1、
図3及び
図5参照)。多液混合装置1は、後述の供給チューブ54及び戻しチューブ55を介して、工場等の床上を自在に移動可能に構成された供給ユニット51と繋げられている。
【0027】
吐出部3には、筒状のノズル部材4が取り付けられる。このノズル部材4の先端部が、被供給部材101において空間部101aを形成する壁部101bを貫通するように設けた貫通孔101cに挿入され、この挿入状態で、上記混合された液体がノズル部材4から空間部101aに吐出供給される。尚、ノズル部材4の先端部が空間部101a内に、予め設定された設定量だけ入り込むように、ノズル部材4の外周面には、貫通孔101cの内径よりも大きい径の膨出部4a(
図3及び
図5参照)が設けられており、作業者8は、この膨出部4aを壁部101bにおける貫通孔101cの周囲に押し当てるようにする。
【0028】
ノズル部材4の一端部(先端部)は、被供給部材101の貫通孔101cに対して挿入及び抜去可能になされている。一方、ノズル部材4の他端部(基端部)は、該他端部に吐出部3が所定量だけ挿入された状態で該他端部が吐出部3の周囲に外嵌されるように吐出部3への取付け及び吐出部3からの取外しが可能になされている。吐出部3のノズル部材4内部への挿入量は、ノズル部材4が吐出部3に対してぐらつかないような量である。本実施形態では、吐出部3の全体がノズル部材4の内部に挿入される。このとき、詳細な図示は省略するが、ノズル部材4は、吐出部3から不用意に外れないように、ブロック部材2に設けられた係止部材に係止される。この係止は、作業者8が、ノズル部材4を吐出部3から取り外す際に解除可能である。
【0029】
ノズル部材4は、使い捨てのものであって、ノズル部材4からの1回の吐出(後述の所定時間の間の吐出)が終了すれば、別のノズル部材4に取り替える。このため、被供給部材101の量産に対応して、多数のノズル部材4を予め作製しておく。このようにノズル部材4を使い捨てのものとして使用することで、使用する毎にノズル部材4を洗浄する等といった煩わしさをなくすことができる。また、ノズル部材4を使い捨てのものとして使用しても、ノズル部材4は簡単なものであるので、多数のノズル部材4を容易にかつ低コストで作製することができる。
【0030】
以下、多液混合装置1において吐出部3が設けられた側を前側といい、その反対側を後側といい、前側から見た左側を左側といい、前側から見た右側を右側という(
図1参照)。
【0031】
多液混合装置1は、第1液体及び第2液体が混合される混合室11と、第1液体及び第2液体を該混合室11にそれぞれ供給する2つの供給路12とを備える。混合室11は、ブロック部材2の内部において前後方向に延びる断面円形状に形成されている。2つの供給路12は、多液混合装置1の前側部分における左側及び右側でそれぞれ左右方向に延びる2つのバルブボディ20の内部にそれぞれ形成されている。2つの供給路12はブロック部材2の近傍で拡径されている。ブロック部材2の前側の面における混合室11の延長線上に、吐出部3が混合室11に連通するように設けられている。吐出部3の内径は、混合室11の内径と略同じである。
【0032】
2つのバルブボディ20は、左右方向に相対向する対向面で互いに突き合わされた状態で固定されている。ブロック部材2は、2つのバルブボディ20の対向面の間に挟持されている。各バルブボディ20には、供給ユニット51(詳細には、後述のタンク53)からの第1液体又は第2液体を各供給路12に導入するための導入口21と、後述の如く各オリフィス部13の開口が閉じられているときに、導入口21から各供給路12に導入された第1液体又は第2液体を供給ユニット51に戻すための導出口22とが設けられている。
【0033】
図2及び
図4に示すように、2つの供給路12は、それぞれオリフィス部13を介して混合室11に接続されている。すなわち、混合室11の左右両側に1つずつ、合わせて2つのオリフィス部13が、混合室11の径方向に互いに対向して設けられている。2つのオリフィス部13は、2つの供給路12の混合室11への開口部にそれぞれ設けられていることになる。2つのオリフィス部13は、対応する供給路12の径よりも小さい開口径に絞られた、混合室11に連通する開口を有する。
【0034】
本実施形態では、各オリフィス部13の開口は、小径部13aと該小径部13aよりも大径の大径部13bとの2段に構成されている。小径部13aはブロック部材2に設けられている一方、大径部13bは、供給路12内における小径部13aよりも上流側(拡径された部分)に設けられた有底筒状部材15の底部15aに設けられている。この有底筒状部材15は、ブロック部材2とは別体のものである。有底筒状部材15の底部15aは、ブロック部材2に密着するように固定されており、大径部13bは、底部15aにおいて小径部13aに対して連続しかつ同心状に開口している。導入口21から供給路12に導入された第1液体又は第2液体は、有底筒状部材15の内部を流れて、オリフィス部13の開口に向かう。そして、オリフィス部13の開口が開いているとき、第1液体又は第2液体は、大径部13b及び小径部13aを順に通って混合室11に供給される。
【0035】
第1液体及び第2液体をそれぞれオリフィス部13の開口を介して混合室11に供給することで、第1液体及び第2液体が微粒化されて混ざり易くなる。特に、各オリフィス部13の開口が上記のように小径部13a及び大径部13bの2段に構成されることで、第1液体及び第2液体がオリフィス部13の開口の出口から広がって流出し易くなり、混合室11での混合がより一層良好に行われるようになる。また、オリフィス部13の開口の長さ(液体流通方向の長さ)、つまり、小径部13a及び大径部13bの長さは、第1液体及び第2液体がオリフィス部13の開口の出口から広がって流出するようにするために、短くすることが好ましい。
【0036】
各オリフィス部13における大径部13bの内径に対する小径部13aの内径の比率は、上記微粒化の程度及び上記広がりの観点から、該オリフィス部13を流れる液体の粘性(粘度)に応じて設定される。本実施形態では、2つのオリフィス部13における小径部13aの径を同じにしておき、大径部13bの径を第1液体及び第2液体の粘性に応じてそれぞれ設定する。オリフィス部13を流れる液体の粘性が大きいほど、大径部13bの径を大きくすることが好ましい。第1液体及び第2液体がそれぞれイソシアネート及びポリオールである場合には、ポリオールの方が粘性が大きいので、ポリオールが通過する大径部13bの径が、イソシアネートが通過する大径部13bの径よりも大きくなる。有底筒状部材15をブロック部材2とは別体に構成しておくことで、混合室11で混合する液体を変更した場合、有底筒状部材15(つまり大径部13b)を変更するだけで済み、容易に行うことができる。
【0037】
また、開口15bの径(上記比率)は、液体の粘性に加えて、液体の混合室11への単位時間当たりの供給量も考慮して設定することが好ましい。液体の混合室11への単位時間当たりの供給量を変更した場合でも、有底筒状部材15(つまり開口15b)を変更するだけで済む。
【0038】
各バルブボディ20には、オリフィス部13の開口(本実施形態では、有底筒状部材15の開口である大径部13b)を開閉する開閉弁24が設けられている。各開閉弁24は、対応する供給路12内において大径部13bに対して上流側で該大径部13bの中心軸線に沿って左右方向に離接する弁体24aを有していて、該弁体24aの離接により大径部13bを開閉する。弁体24aは、有底筒状部材15の底部15aにおける大径部13bの開口周縁部に当接して該大径部13bを閉じる球面状部24bを含む。
【0039】
各バルブボディ20に設けられた開閉弁24は、流体(本実施形態では、エア)の供給により弁体24aを駆動するアクチュエータとしてのエアシリンダ26を有する。本実施形態では、このエアシリンダ26は、エア源71(
図6参照)からのエアの供給により弁体24aを駆動する。このエアシリンダ26は、バルブボディ20における上記対向面とは反対側の面に固定されている。
【0040】
エアシリンダ26は、該エアシリンダ26内に嵌挿されかつ弁体24aと連結されたピストン26aを有する。エアシリンダ26内におけるピストン26aの混合室11側に混合室側エア室26bが設けられ、ピストン26aの反混合室11側に反混合室側エア室26cが設けられている。また、エアシリンダ26には、混合室側エア室26bにエアを導入するための混合室側エア導入部26dが設けられているとともに、反混合室側エア室26cにエアを導入するための反混合室側エア導入部26eが設けられている。
【0041】
混合室側エア導入部26dより混合室側エア室26bにエアが導入されたときには、弁体24aが反混合室11側に移動して、弁体24aの球面状部24bが、有底筒状部材15の底部15aにおける大径部13bの開口周縁部から離れて、大径部13bが開かれる。一方、反混合室側エア導入部26eより反混合室側エア室26cにエアが導入されたときには、弁体24aが混合室11側に移動して、弁体24aの球面状部24bが、有底筒状部材15の底部15aにおける大径部13bの開口周縁部に当接して、大径部13bが閉じられる。
【0042】
多液混合装置1の後側部分にも、エアシリンダ31が設けられている。このエアシリンダ31は、開閉弁24用のエアシリンダ26と同じエア源71からのエアにより、クリーニングピストン32を前後方向に駆動させるものである。エアシリンダ31内には、クリーニングピストン32と連結されたピストン31aと、ピストン31aの後側に位置する後側エア室31bと、ピストン31aの前側に位置する前側エア室31cとが設けられている。また、エアシリンダ31には、後側エア室31bにエアを導入するための第1エア導入部31dと、前側エア室31cにエアを導入するための第2エア導入部31eとが設けられている。第1エア導入部31dより後側エア室31bにエアが導入されたときには、ピストン31a及びクリーニングピストン32が前側に移動する一方、第2エア導入部31eより前側エア室31cにエアが導入されたときには、ピストン31a及びクリーニングピストン32が後側に移動する。
【0043】
混合室11で混合された液体を吐出部3及びノズル部材4より吐出しているときには、クリーニングピストン32の先端がオリフィス部13の開口よりも後側に位置している。クリーニングピストン32の最大外径は、断面円形の混合室11の内径と略同じであり、クリーニングピストン32は、混合された液体の吐出後に混合室11内を前側及び後側に順に移動して、混合室11の内壁面に付着した付着物(混合された液体又は発泡後の発泡性材料)を掻き取る。本実施形態では、クリーニングピストン32は、その先端が吐出部3の先端に達するまで前側に移動する。
【0044】
供給ユニット51は、車輪52a付きの筐体52を有し、この筐体52内には、上記第1液体及び上記第2液体をそれぞれ貯留する2つのタンク53が設けられている。各タンク53は、供給チューブ54を介して、多液混合装置1の各バルブボディ20の導入口21と接続される。また、各タンク53は、戻しチューブ55を介して、各バルブボディ20の導出口22と接続される。
【0045】
筐体52内における供給チューブ54の途中には、電動ポンプ57が設けられており、この電動ポンプ57により、各タンク53内の液体(上記第1液体又は上記第2液体)が、供給チューブ54を介して、多液混合装置1のバルブボディ20の導入口21に供給される。そして、大径部13bが開かれているとき、導入口21に供給された液体は、供給路12及びオリフィス部13を通って混合室11に供給される。2つの大径部13bは同時に開かれるようになっているので、上記第1液体及び上記第2液体が混合室11で混合されて、該混合された液体が吐出部3及びノズル部材4から吐出される。このことで、供給チューブ54及び供給路12は、タンク53内の液体を、吐出部3に供給するための供給経路65を構成する。
【0046】
一方、大径部13bが閉じられているときには、導入口21に供給された液体は、導出口22より導出されて、戻しチューブ55を介して、タンク53に戻される。このようにタンク53内の液体は、吐出部3から吐出する前において、供給チューブ54及び戻しチューブ55を介して循環される。このことで、供給チューブ54及び戻しチューブ55は、タンク53内の液体を、吐出部3から吐出しないときに、タンク53外に流出させた後にタンク53内に戻すように循環させるための循環経路66を構成する。本実施形態では、供給チューブ54は、供給経路65と循環経路66とを兼用する。循環経路66による第1液体及び第2液体の循環により、大径部13bが開かれた瞬間における、オリフィス部13を通って混合室11に供給される第1液体及び第2液体の流速が確保される。また、後述の如く、第1液体及び第2液体の循環中に該第1液体及び第2液体を所定温度に加温しておくことができる。
【0047】
尚、第1液体についての供給経路65及び循環経路66の構成は、第2液体についての供給経路65及び循環経路66の構成と基本的に同じである。但し、供給経路65及び循環経路66の径は、該供給経路65及び循環経路66を流れる液体の粘性に応じて設定され、第1液体及び第2液体の流速が略同じになるようにされる。また、後述の加温部材60であるオリフィス部材の開口径及び/又は開口の長さも、該加温部材60に接触する液体の粘性に応じて設定され、第1液体及び第2液体を加温する程度が略同じになるようにされる。
【0048】
第1液体及び第2液体をそれぞれ循環させる循環経路66(戻しチューブ55)には、第1の分岐路58と第2の分岐路59とが互いに並列接続されて設けられている。第1の分岐路58には、第1液体又は第2液体に接触して該第1液体又は第2液体を加温する加温部材60が設けられている。本実施形態では、加温部材60は、第1の分岐路58の径よりも小さい開口径に絞られた開口を有するオリフィス部材である。このオリフィス部材は、第1液体又は第2液体が上記開口を流動する際に該第1液体又は第2液体に対して流動抵抗を付与することで該第1液体又は第2液体を加温するように構成されている。第1液体及び第2液体がそれぞれイソシアネート及びポリオールである場合には、混合されたときの反応が50℃以上で良好に行われるので、第1液体及び第2液体の温度が共に55℃程度になるように第1液体及び第2液体を加温する。
【0049】
第2の分岐路59には、第1液体又は第2液体の温度を変化させる手段は設けられておらず、第1液体又は第2液体が第2の分岐路59を通過しても、第1液体又は第2液体の温度は基本的に変化しない。
【0050】
循環経路66(本実施形態では、供給経路65と循環経路66とを兼用する供給チューブ54)には、第1液体又は第2液体の温度を検出する温度センサ62(
図6参照)が設けられている。この温度センサ62による検出温度が上記所定温度(第1液体及び第2液体がそれぞれイソシアネート及びポリオールである場合には、55℃)よりも低いときには、循環経路66により第1液体又は第2液体を循環させているとき、第1液体又は第2液体が第1の分岐路58を通過するようにして、第1液体又は第2液体を加温部材60により加温する。そして、温度センサ62による検出温度が上記所定温度以上になったときには、第1液体又は第2液体の流路が第1の分岐路58から第2の分岐路59に切り換えられる。尚、本実施形態では、第1液体及び第2液体についての上記所定温度は同じであるが、互いに異なっていてもよい。
【0051】
第1液体及び第2液体が共に第2の分岐路59を通って循環しているときにおいて(このことは、例えば表示ランプ等によって作業者8に分かるようにしておく)、作業者8により上記操作スイッチが操作されたときに、第1液体及び第2液体の経路が循環経路66から供給経路65に同時に切り換えられて、第1液体及び第2液体が混合室11に供給されることになる。この切換えから所定時間が経過したときに、第1液体及び第2液体の経路が供給経路65から循環経路66に同時に切り換えられる。
【0052】
図6は、第1液体及び第2液体の流れを制御する弁(アクチュエータ)を駆動するためのエアの供給システムを示す。
図6では、エア供給路を破線で示す。
【0053】
2つのオリフィス部13の開口(大径部13b)をそれぞれ開閉する2つの開閉弁24の弁体24aを駆動するエアシリンダ26(混合室側エア導入部26d及び反混合室側エア導入部26e)への流体供給系は、1つの流体源であるエア源71と、該エア源71と接続された1つの共通流路72と、該共通流路72と2つの開閉弁24用のエアシリンダ26とをそれぞれ接続する2つの個別流路73と、共通流路72に設けられ、2つの開閉弁24を同時に開弁しかつ同時に閉弁するように作動させる1つの第1切換弁81とで構成されている。
【0054】
本実施形態では、各開閉弁24の開弁時には混合室側エア導入部26dにエアを導入し、閉弁時には反混合室側エア導入部26eにエアを導入するので、第1切換弁81よりも下流側において、共通流路72は、開弁用共通流路72aと閉弁用個別流路72bとを含む。そして、各個別流路73は、開弁用共通流路72aと2つの開閉弁24用のエアシリンダ26の混合室側エア導入部26dとそれぞれ接続された2つの開弁用個別流路73aと、閉弁用個別流路72bと2つの開閉弁24用のエアシリンダ26の反混合室側エア導入部26eとそれぞれ接続された2つの閉弁用個別流路73bとを含む。
【0055】
第1切換弁81は、その切換動作により、該第1切換弁81よりも上流側の共通流路72を、開弁用共通流路72a又は閉弁用個別流路72bに連通させる。
【0056】
第1切換弁81の切換動作により、該第1切換弁81よりも上流側の共通流路72が開弁用共通流路72aと連通したとき、エア源71からのエアは、開弁用共通流路72a及び2つの開弁用個別流路73aを通って混合室側エア導入部26dに導入され、そこから混合室側エア室26bに導入される。これにより、2つのオリフィス部13の大径部13bが同時に開かれる。
【0057】
一方、第1切換弁81よりも上流側の共通流路72が閉弁用共通流路72bと連通したとき、エア源71からのエアは、閉弁用共通流路72b及び2つの閉弁用個別流路73bを通って反混合室側エア導入部26eに導入され、そこから反混合室側エア室26cに導入される。これにより、2つのオリフィス部13の大径部13bが同時に閉じられる。
【0058】
本実施形態では、2つの開弁用個別流路73aの長さは略同じにされ、2つの閉弁用個別流路73bの長さも略同じにされている。また、2つの開弁用個別流路73aの流路径は略同じにされ、2つの閉弁用個別流路73bの流路径も略同じにされている。
【0059】
共通流路72における第1切換弁81の上流側の部分からは、クリーニングピストン32を駆動するエアシリンダ31(第1及び第2エア導入部31d,31e)にエアを供給する供給流路75が分岐している。この供給流路75には、第2切換弁82が設けられている。この第2切換弁82は、その切換動作により、エアを第1エア導入部31d又は第2エア導入部31eに供給させる。第2切換弁82の構成は、第1切換弁81の構成と同様である。
【0060】
第1液体及び第2液体をそれぞれ循環させる循環経路66(第1及び第2の分岐路58,59を除く部分)には、該循環経路66の開閉を行う開閉弁91が設けられ、該循環経路66の第1の分岐路58には、該第1の分岐路58の開閉を行う開閉弁92が設けられ、該循環経路66の第2の分岐路59には、該第2の分岐路59の開閉を行う開閉弁93が設けらている。各循環経路66の3つの開閉弁91~93は、それぞれ、開閉弁24の弁体24aを駆動するエアシリンダ26と同様のエアシリンダ91a,92a,93a(
図6にのみ示す)により弁体が駆動されて開弁及び閉弁される。
【0061】
2つの循環経路66にそれぞれ設けられた開閉弁91の弁体を駆動するエアシリンダ91aは、第3及び第4切換弁83,84のそれぞれの切換動作により、エア源71からのエアが開弁用又は閉弁用としてそれぞれ供給され、これにより、2つの開閉弁91がそれぞれ開弁及び閉弁される。
【0062】
2つの循環経路66の第1の分岐路58にそれぞれ設けられた開閉弁92の弁体を駆動するエアシリンダ92aは、第5及び第6切換弁85,86のそれぞれの切換動作により、エア源71からのエアが開弁用又は閉弁用としてそれぞれ供給され、これにより、2つの開閉弁92がそれぞれ開弁及び閉弁される。
【0063】
2つの循環経路66の第2の分岐路59にそれぞれ設けられた開閉弁93の弁体を駆動するエアシリンダ93aは、第7及び第8切換弁87,88のそれぞれの切換動作により、エア源71からのエアが開弁用又は閉弁用としてそれぞれ供給され、これにより、2つの開閉弁93がそれぞれ開弁及び閉弁される。第3乃至第8切換弁83~88の構成は、第1切換弁81の構成と同様である。
【0064】
2つのオリフィス部13の開口(大径部13b)が同時に開かれたときには、これと同時に、2つの循環経路66にそれぞれ設けられた開閉弁91が閉弁されて、循環経路66による循環が不能になる。また、2つのオリフィス部13の開口が同時に閉じられたときには、これと同時に2つの開閉弁91が開弁されて循環が可能になる。さらに、各循環経路66において、開閉弁91が開かれたときには、温度センサ62による検出温度に応じて、第1及び第2の分岐路58,59の開閉弁のうちの1つが開弁される。第1及び第2の分岐路58,59の開閉弁92,93は、第1及び第2の分岐路58,59のうちの1つに液体を流す切換手段を構成することになる。
【0065】
尚、各循環経路66において、加温部材60が設けられる第1の分岐路58を複数設けてもよい。この場合、複数の第1の分岐路58にそれぞれ開閉弁92が設けられる。そして、複数の第1の分岐路58にそれぞれ設けられる加温部材60の加温性能を互いに異ならせることが好ましい。すなわち、加温部材60が上記のようなオリフィス部材である場合には、複数の第1の分岐路58にそれぞれ設けられるオリフィス部材の開口径及び/又は開口の長さを互いに異ならせる。これにより、第1液体又は第2液体の温度に応じて適切な第1の分岐路58を選択して、第1液体又は第2液体を上記所定温度に素早く調整することができる。また、上記所定温度が変更された場合であっても、容易に対応することができる。
【0066】
また、第1の分岐路58に、加温部材60に代えて、第1液体又は第2液体に接触して該第1液体又は第2液体を冷却する冷却部材を設けるようにしてもよい。このような冷却部材は、例えば、外周面に放熱フィンを有する、熱伝導性が良好な管状部材等で構成することができる。第1の分岐路58が複数設けられている場合、そのうちの一部の第1の分岐路58に加温部材60を設け、残りの第1の分岐路58に冷却部材を設けるようにしてもよい。液体の種類によっては、冷却が要求される場合もあり、このような液体を使用する場合でも、容易に対応することができる。
【0067】
さらに、第1液体又は第2液体の加温又は冷却は、上記加温部材60又は上記冷却部材によらないで、例えば、タンク53に接続された加熱又は冷却手段により行うようにしてもよい。
【0068】
第1乃至第8切換弁81~88及び電動ポンプ57の作動は、供給ユニット51の筐体52内に設けられたコントロールユニット110により制御される。このコントロールユニット110は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、コンピュータプログラム(OS等の基本制御プログラム、及び、OS上で起動されて特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)を実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されて上記コンピュータプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。
【0069】
コントロールユニット110には、第1液体及び第2液体をそれぞれ循環させる2つの循環経路66にそれぞれ設けられた温度センサ62からの検出情報と、上記操作スイッチの操作情報と、筐体52の外側の面に設けられた起動スイッチの操作情報とが入力される。
【0070】
コントロールユニット110は、上記起動スイッチが操作されたことを検出すると、エア源71からエアが第1乃至第8切換弁81~88に供給可能な状態にするとともに、電動ポンプ57を起動し、かつ、第1液体及び第2液体がそれぞれの循環経路66を循環するように、第1、第3及び第4切換弁81,83,84を制御する。また、コントロールユニット110は、温度センサ62による検出温度に応じた分岐路を第1液体及び第2液体が流れるように、第5乃至第8切換弁85~88を制御する。
【0071】
また、コントロールユニット110は、第1液体及び第2液体が共に第2の分岐路59を通って循環しているときにおいて、作業者8により上記操作スイッチが操作されたことを検出すると、第1液体及び第2液体がそれぞれの供給経路65を通って混合室11に同時に供給されるように、第1、第3及び第4切換弁81,83,84を制御する。上記操作スイッチの操作の検出から上記所定時間が経過したときには、第1液体及び第2液体の経路が供給経路65から環経経路66に同時に切り換えられるように、第1、第3及び第4切換弁81,83,84を制御する。
【0072】
さらに、コントロールユニット110は、混合室11で混合された液体を吐出部3及びノズル部材4より吐出しているときには、クリーニングピストン32の先端がオリフィス部13の開口よりも後側に位置し、かつ、該混合された液体の吐出後に混合室11内を前側及び後側に順に移動するように、第2切換弁82を制御する。
【0073】
多液混合装置1を用いて、被供給部材101の空間部101a内に、第1液体及び第2液体が混合された液体(発泡性材料)を供給するには、先ず、作業者8が上記起動スイッチを操作して、第1液体及び第2液体がそれぞれの循環経路66を循環するようにしておく。
【0074】
また、作業者8は、予め作製された未使用のノズル部材4を吐出部3に取り付けておく。このとき、ノズル部材4の基端部に吐出部3が所定量だけ挿入された状態で該基端部が吐出部3の周囲に外嵌されるように、ノズル部材4を吐出部3に取り付ける。その後、作業者8は、多液混合装置1(グリップ部7)を手に持って、吐出部3に取り付けたノズル部材4の先端部を被供給部材101の貫通孔101cに挿入する。
【0075】
尚、ノズル部材4を吐出部3に取り付ける前に、ノズル部材4の先端部を被供給部材101の貫通孔101cに挿入しておいてもよく、ノズル部材4を吐出部3に取り付けるのと略同時に、ノズル部材4の先端部を被供給部材101の貫通孔101cに挿入してもよい。
【0076】
続いて、作業者8は、第1液体及び第2液体が共に第2の分岐路59を通って循環していることを確認して、上記操作スイッチを操作する。これにより、第1液体及び第2液体が混合室11に供給されて混合され、該混合された液体が吐出部3から吐出されて、ノズル部材4を介して、被供給部材101の空間部101a内に供給される。
【0077】
上記操作スイッチの操作から上記所定時間が経過すると、混合された液体の吐出が終了し、この所定時間の間に、予め決められた量の液体(発泡性材料)が被供給部材101の空間部101a内に供給されたことになる。この空間部101aに供給される量は、少なくとも、発泡した発泡性材料が空間部101aの必要箇所に充填されるような量であり、ノズル部材4の内部にも充填される。
【0078】
上記混合された液体の吐出が終了すると、クリーニングピストン32が前側に移動し、クリーニングピストン32の先端が吐出部3の先端に達した後、後側に移動して元の位置に戻る。
【0079】
本実施形態では、被供給部材101の空間部101a内に供給された液体(発泡性材料)は直ぐに発泡し始め、上記混合された液体の吐出の終了から、予め設定された設定時間が経過したときには、発泡が終了するとともに、クリーニングピストン32が元の位置に戻っている。
【0080】
作業者8は、上記設定時間が経過すれば(このことは、例えば表示ランプ等によって作業者8に分かるようにしておく)、ノズル部材4の先端部を貫通孔101cから抜去する。こうして、空間部101aに発泡性材料が充填された被供給部材101が完成する。使用したノズル部材4は、吐出部3から取り外した後、別の新しいノズル部材4と交換する。
【0081】
ここで、ノズル部材4の長さは、発泡した発泡性材料が吐出部3にまで達しないような長さに設定しておく。但し、発泡性材料の発泡分を正確に見込むことは困難であるので、発泡した発泡性材料が吐出部3内に入り込む可能性がある。これを防止するために、発泡が終了するような時間まで、クリーニングピストン32の先端を吐出部3の先端に位置させておいてもよい。或いは、発泡が終了した後にクリーニングピストン32を作動させれば、吐出部3内に入り込んだ発性泡材料をノズル部材4内に押し出すことができる。また、クリーニングピストン32の先端を吐出部3の外側にまで進出させるようにすれば、ノズル部材4内の発性泡材料を更に押し込むことができる。
【0082】
尚、作業者8は、上記混合された液体の吐出が終了した直後に、ノズル部材4を貫通孔101cに挿入したまま、ノズル部材4を吐出部3から取り外すことも可能である。仮に、上記混合された液体の吐出が終了した直後に、ノズル部材4を抜去した場合には、発泡した発泡性材料が貫通孔101cから被供給部材101の外部に溢れ出ることになるが、ノズル部材4を貫通孔101cに挿入しておくことで、発泡性材料が被供給部材101の表面に付着するのを防止することができる。また、その挿入しておいたノズル部材4の基端部側の開口から、発泡した発泡性材料が或る程度の量だけ溢れ出たとしても、その溢れ出た発泡性材料はほぼ硬化した状態にあり、該発泡性材料が被供給部材101の表面に垂れるようなことはない。
【0083】
本実施形態では、開閉弁24の弁体24aが、オリフィス部13の開口周縁部(有底筒状部材15の底部15aにおける大径部13bの開口周縁部)に当接して該オリフィス部13の開口(大径部15a)を閉じる球面状部24bを含む。これにより、開閉弁24の弁体24aの中心軸線がオリフィス部13の開口の中心軸線に対してずれたり傾いたりしたとしても、開閉弁24の弁体24aがオリフィス部13の開口(大径部15a)を閉じているときのシール性を確保することができる。これにより、長さを短くすることが好ましい大径部13bの内周面にテーパ部を形成することなく、上記シール性を容易に確保することができる。
【0084】
また、本実施形態では、第1切換弁81により、2つの開閉弁24を同時に開弁しかつ同時に閉弁するように作動させるようにしたので、混合する第1液体及び第2液体の量を正確な量にすることができる。
【0085】
しかも、2つの開弁用個別流路73aの長さが略同じにされ、2つの閉弁用個別流路73bの長さも略同じにされているとともに、2つの開弁用個別流路73aの流路径が略同じにされ、2つの閉弁用個別流路73bの流路径も略同じにされているので、2つのオリフィス部13の開口を同時に開いたり同時に閉じたりすることがより確実にできるようになる。
【0086】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0087】
例えば、上記実施形態では、オリフィス部13の開口が小径部13a及び大径部13bの2段に構成されているが、小径部13aのみで構成されていてもよい。この場合、有底筒状部材15が不要になるとともに、開閉弁24における弁体24bの球面状部24bが、ブロック部材2における小径部13aの開口周縁部に当接して該小径部13aを閉じることになる。
【0088】
また、上記実施形態では、多液混合装置1が、互いに混合されて発泡する発泡性材料である第1液体及び第2液体を混合するものとしたが、複数の液体をそれぞれオリフィス部13を介して混合室11に供給して該混合室11で複数の液体を混合するものであれば、液体の種類や数は限定されるものではない。但し、液体を加温部材60により加温する場合の該液体は、粘性を有する液体であることが好ましい。
【0089】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、複数の液体が混合される混合室と、該複数の液体を該混合室にそれぞれ供給する複数の供給路と、該複数の供給路の混合室への開口部にそれぞれ設けられ、該供給路の径よりも小さい開口径に絞られた開口を有する複数のオリフィス部とを備えた多液混合装置に有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 多液混合装置
11 混合室
12 供給路
13 オリフィス部
24 開閉弁
24a 弁体
24b 球面状部
26 エアシリンダ(アクチュエータ)
32 クリーニングピストン
71 エア源(流体源)
72 共通流路
73 個別流路
81 第1切換弁