(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】吐水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/05 20060101AFI20220209BHJP
H01H 35/00 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
E03C1/05
H01H35/00 V
(21)【出願番号】P 2018066876
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】家令 稔
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203347(JP,A)
【文献】特開2012-113280(JP,A)
【文献】特開2014-219278(JP,A)
【文献】特開2003-096850(JP,A)
【文献】特開2015-025956(JP,A)
【文献】特開昭50-102873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
H01H 35/00
G01J 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を吐出する吐水口を有する吐水部と、
給水源から前記吐水口に水を導く給水路と、
前記給水路を開閉する開閉弁と、
検出光を投光し、前記検出光の反射光を受光し、前記反射光の受光量に対応した受信信号を出力する光電センサと、
前記受信信号を基に対象物の有無を検出し、前記対象物の検出結果に応じて前記開閉弁の開閉を制御する制御部と、
を備え、
前記光電センサは、
前記検出光を投光する投光素子と、
前記反射光を受光する受光素子と、
前記投光素子の前方に設けられ、前記検出光に含まれる第1偏光の光を透過させ、前記第1偏光と異なる偏光の光を遮断する第1偏光部材と、
前記受光素子の前方に設けられ、前記反射光に含まれる光のうち、前記第1偏光の光が鏡面反射することで形成された第2偏光の光を遮断し、前記第2偏光と異なる第3偏光の光を透過させる第2偏光部材と、
を有し、
前記受光素子の受光可能な波長帯域は、前記投光素子の前記検出光の波長帯域以外の波長も有しており、
前記第2偏光部材が前記第2偏光を遮断可能な波長帯域は、前記受光素子の前記波長帯域以外の波長も有していることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記第1偏光及び前記第2偏光は、水平面に対して平行な方向に振動する直線偏光であることを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
前記第2偏光部材は、金属製のワイヤグリッド偏光板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投光素子と受光素子とから構成される光電センサを備えた吐水装置が知られている。このような吐水装置の光電センサにおいて、投光素子及び受光素子の前面に偏光部材を配置することが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
投光素子から投光された検出光は、偏光部材で所定の偏光光に変換され、対象物に照射される。そして、対象物で反射した光のうち、投光時と異なる偏光光が、偏光部材を透過し、受光素子に入射される。これにより、拡散反射した手の反射光は、偏光部材を透過して受光素子に受光され、金属などで鏡面反射した光は、偏光部材によって遮断される。そのため、光電センサによって、対象物を確実に検出することができる。
【0004】
投光素子は、所定の波長帯域の検出光を投光する。受光素子の受光可能な光の波長帯域が、投光素子から投光される検出光の波長帯域よりも狭いと、投光素子から照射された検出光の一部を受光できず、検知精度が低下してしまうおそれがあった。このため、受光素子の受光の波長帯域は、投光素子の投光の波長帯域よりも広く設定されることが望ましい。
【0005】
しかしながら、受光素子の受光の波長帯域を投光素子の投光の波長帯域よりも広くすると、受光素子が、その分だけ投光素子の検出光以外の光も受光してしまう。投光素子の検出光以外の光は、例えば、照明光や太陽光などの周囲の光である。また、受光素子側の偏光部材の偏光する光の波長帯域は、投光素子の投光の波長帯域に応じて設定される。このため、検出光の波長帯域以外の光は、受光素子側の偏光部材に偏光されることなく受光素子に入射してしまう。従って、検出光以外の光は、ノイズとなり、吐水装置の誤動作の要因となってしまう。
【0006】
対策として、新たな部材、回路、もしくは制御などを追加することにより、検出光以外の光の影響を抑制することも考えられる。しかしながら、こうした新たな構成を追加すると、吐水装置のサイズの大型化やコストアップ、あるいは反応速度の低下などを招いてしまう恐れが生じる。このため、吐水装置では、検出光以外の光の影響を簡単な構成で抑制できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、検出光以外の光の影響を簡単な構成で抑制できる吐水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、水を吐出する吐水口を有する吐水部と、給水源から前記吐水口に水を導く給水路と、前記給水路を開閉する開閉弁と、検出光を投光し、前記検出光の反射光を受光し、前記反射光の受光量に対応した受信信号を出力する光電センサと、前記受信信号を基に対象物の有無を検出し、前記対象物の検出結果に応じて前記開閉弁の開閉を制御する制御部と、を備え、前記光電センサは、前記検出光を投光する投光素子と、前記反射光を受光する受光素子と、前記投光素子の前方に設けられ、前記検出光に含まれる第1偏光の光を透過させ、前記第1偏光と異なる偏光の光を遮断する第1偏光部材と、前記受光素子の前方に設けられ、前記反射光に含まれる光のうち、前記第1偏光の光が鏡面反射することで形成された第2偏光の光を遮断し、前記第2偏光と異なる第3偏光の光を透過させる第2偏光部材と、を有し、前記受光素子の受光可能な波長帯域は、前記投光素子の前記検出光の波長帯域以外の波長も有しており、前記第2偏光部材が前記第2偏光を遮断可能な波長帯域は、前記受光素子の前記波長帯域以外の波長も有していることを特徴とする吐水装置である。
【0010】
この吐水装置によれば、第2偏光部材が第2偏光を遮断可能な波長帯域が、受光素子の波長帯域以外の波長も有していることにより、受光素子の受光可能な波長帯域が、投光素子の検出光の波長帯域以外の波長も有している場合にも、検出光以外の光の第2偏光と同じ成分も第2偏光部材によって遮断することができる。これにより、受光素子に入射する検出光以外の光の入射量も低減させることができる。新たな部材、回路、もしくは制御などを追加することなく、検出光以外の光による吐水装置の誤動作などを抑制することができる。従って、検出光以外の光の影響を簡単な構成で抑制できる吐水装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1偏光及び前記第2偏光は、水平面に対して平行な方向に振動する直線偏光であることを特徴とする吐水装置である。
【0012】
例えば、光がブリュースター角と呼ばれる角度で水やガラスなどに入射した場合、光に含まれる界面に対して平行な方向に振動する成分(いわゆるS波)は、比較的強く界面で反射する。反対に、光に含まれる界面に対して垂直な方向に振動する成分(いわゆるP波)は、界面での反射が抑制され、水やガラスなどに入射する。そこで、この吐水装置では、第1偏光及び第2偏光を、水平面に対して平行な方向に振動する直線偏光とする。すなわち、水平面に対して平行な方向に振動する光を、第2偏光部材によって遮断できるようにする。これにより、水面やガラスなどで反射した周囲の光などが受光素子に入射してしまうことを、より確実に抑制することができる。従って、検出光以外の光による吐水装置の誤動作などを、より確実に抑制することができる。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記第2偏光部材は、金属製のワイヤグリッド偏光板であることを特徴とする吐水装置である。
【0014】
この吐水装置によれば、第2偏光を遮断可能な波長帯域が、受光素子の波長帯域よりも広い第2偏光部材を、比較的容易に製造することができる。また、金属は、紫外線を通し難いため、内部の樹脂部品などの劣化を抑制することもできる。より具体的には、投光素子と受光素子を構成している樹脂が紫外線によって劣化すると検知精度の劣化を招くが、前方に金属があることによって紫外線の入射光量を低減することができる。また、紫外線の波長領域でも偏光性能を発揮することによって、更に光が遮断され、入射光量を更に低減することも可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、検出光以外の光の影響を簡単な構成で抑制できる吐水装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態にかかる水栓装置を表す説明図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は実施形態に係る水栓装置の一部を表すブロック図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は実施形態に係る水栓装置の一部を表すブロック図である。
【
図4】実施形態にかかる水栓装置の動作を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態にかかる水栓装置を表す説明図である。
図1に表したように、水栓装置10(吐水装置)は、対象物(人体や物体等)を検出して自動的な吐止水を行うものであり、洗面台に備え付けられる洗面器11に対して吐止水を行う。
【0018】
洗面器11は、洗面カウンタ12の下面に設けられる。洗面カウンタ12の上には、洗面器11のボウル面11aに対して水を吐出するためのスパウトを構成する水栓13(吐水部)が設けられる。水栓13は、水を吐出する吐水口13aを有し、この吐水口13aから吐出される水が洗面器11のボウル面11a内に吐出されるように設けられる。
【0019】
水栓13が吐水口13aから吐出する水は、給水路14により供給される。給水路14は、水道管等の給水源から供給される水を吐水口13aへと導く。洗面器11には、排水路15が接続されている。排水路15は、吐水口13aから洗面器11のボウル面11a内に吐水された水を排出する。
【0020】
水栓装置10は、電磁弁16(開閉弁)と、光電センサ18と、制御部20とを備える。光電センサ18は、制御部20と分離されている。光電センサ18は、例えば、水栓13の内部に収容される。電磁弁16及び制御部20は、例えば、洗面台の下側に収容される。電磁弁16及び制御部20は、例えば、洗面カウンタ12の下方に設けられるキャビネット(図示は省略)内に収容される。
【0021】
光電センサ18と制御部20とは、接続ケーブル17で接続されている。制御部20は、例えば、接続ケーブル17を介して光電センサ18に電源電圧を供給し、接続ケーブル17を介して光電センサ18を制御する。
【0022】
電磁弁16は、給水路14に設けられ、給水路14の開閉を行う。電磁弁16が開くと、給水路14から供給された水が吐水口13aから吐出される吐水状態となり、電磁弁16が閉じると、給水路14から供給された水が吐水口13aから吐出されない止水状態となる。
【0023】
電磁弁16は、制御部20に接続されており、制御部20は、電磁弁16を駆動して開/閉動作を制御する。電磁弁16は、制御部20からの制御信号に従って電気的に制御され、給水路14の開閉を行う。このように、電磁弁16は、吐水口13aから吐水される水の給水路14を開閉する給水バルブとして機能する。
【0024】
電磁弁16は、いわゆるラッチング・ソレノイド・バルブと称される自己保持型電磁弁(ラッチ式電磁弁)であり、ソレノイドコイルへの一方向への通電によって閉状態から開状態に動作(開動作)し、その後ソレノイドコイルへの通電を遮断しても開状態を保持し、ソレノイドコイルへの他方向への通電によって開状態から閉状態に動作(閉動作)し、その後ソレノイドコイルへの通電を遮断しても閉状態を保持する。給水路14の開閉は、電磁弁16に限ることなく、制御部20の制御に応じて給水路14を開閉可能な他の開閉弁機構で行ってもよい。
【0025】
光電センサ18は、吐水口13aに接近する対象物(手など)を検出する。この吐水口13aの吐水先が、光電センサ18の検出領域となる。光電センサ18は、検出光を投光し、検出光の反射光を受光し、反射光の受光量に対応した受信信号を出力する。これにより、対象物の位置や動き等を検出する。
【0026】
光電センサ18は、例えば、赤外光の検出光を用いた光センサである。光電センサ18から投光される検出光は、例えば、可視光などでもよい。以下では、検出光を赤外光として説明を行う。なお、「赤外光」とは、例えば、0.7μm以上1000μm以下の波長の光である。光電センサ18は、例えば、0.7μm以上2.5μm以下の近赤外線の検出光を投光する。
【0027】
光電センサ18は、水栓13の吐水口13a近くの内部に設けられ、洗面台の使用者側(
図1において左側)に向けて検出光を投光するように配置される。これにより、光電センサ18は、吐水口13aに人体が近づいてきたことや、吐水口13aに近づいた人体から吐水口13aに向けて手が差し出されたこと等を検出可能にする。
【0028】
光電センサ18は、反射光の受光量(対象物の検出結果)に対応した受信信号を接続ケーブル17を介して制御部20に出力する。制御部20は、光電センサ18から出力された受信信号に基づいて、対象物の有無を検出する。制御部20は、例えば、受信信号に基づいて、対象物の位置や動き等を検出する。そして、制御部20は、この検出結果に基づいて電磁弁16の開/閉動作を制御する。また、制御部20は、光電センサ18に対して制御信号を出力して、光電センサ18のセンシング動作を制御する。
【0029】
以上のように、本実施形態の水栓装置10は、水栓13と、給水路14と、電磁弁16と、光電センサ18と、制御部20とを備え、光電センサ18の受信信号に基づいて制御部20が制御することにより、電磁弁16の開/閉動作が制御される。これにより、吐水口13aに接近する対象物の検出結果(洗面台の使用者の動き等)に応じた吐水を行う。制御部20は、対象物の検出に応じて吐水を行い、対象物の非検出に応じて吐水を停止させる。すなわち、水栓装置10では、使用者が吐水口13aの近くに手などを差し出している間、自動的に吐水が行われる。
【0030】
また、光電センサ18は常に動作しているのではなく、センシングを必要とするタイミングに動作をするように、制御部20が制御している。これにより、光電センサ18の消費電力を下げることができる。制御部20は、例えば、使用者が不便に感じない程度に光電センサ18のセンシング動作の頻度を下げる。これにより、水栓装置10全体の低消費電力化を図ることができる。
【0031】
図2(a)及び
図2(b)は、実施形態に係る水栓装置の一部を表すブロック図である。
図2(a)及び
図2(b)に表したように、光電センサ18は、投光部30と、受光部40と、を有する。投光部30は、対象物の検出領域に向けて検出光を投光する。受光部40は、検出光の反射光を受光し、反射光の受光量に対応した受信信号を制御部20に出力する。
【0032】
なお、
図2(a)は、光電センサ18から投光された検出光が拡散反射物2aで反射した場合を表し、
図2(b)は、光電センサ18から送信された検出光が鏡面反射物2bで反射した場合を表している。拡散反射物2aとは、例えば、陶器製の洗面器11などである。また、人体の手などの対象物も拡散反射物2aに含まれる。鏡面反射物2bとは、例えば、ステンレス製の洗面器11などである。また、水栓装置10をシステムキッチンに用いる場合がある。この場合、拡散反射物2aは、タイル貼りのキッチンシンクなどであり、鏡面反射物2bは、ステンレス製のキッチンシンクなどである。
【0033】
投光部30は、投光素子32と、第1偏光部材34と、を有する。投光素子32は、検出光を投光する。投光素子32は、例えば、非偏光の検出光(自然光)を投光する。投光素子32は、例えば、非偏光の赤外光を投光する。投光素子32には、例えば、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子が用いられる。投光部30は、制御部20と電気的に接続され、制御部20の制御に基づいて、投光素子32からの検出光の投光、及び検出光の投光の停止を切り替える。
【0034】
第1偏光部材34は、投光素子32の光軸上において、投光素子32の前方に設けられる。投光素子32から投光された非偏光の検出光は、第1偏光部材34に入射する。換言すれば、投光素子32は、第1偏光部材34に向けて非偏光の検出光を投光する。第1偏光部材34は、投光素子32から投光された非偏光の検出光に含まれる第1偏光の光を透過させ、第1偏光と異なる偏光の光を遮断する。
【0035】
投光素子32から投光された非偏光の検出光は、第1偏光の成分と、第1偏光と異なる偏光の成分と、を有する。投光素子32は、例えば、前方斜め下方に向かって検出光を投光する(
図1参照)。換言すれば、投光素子32の光軸(検出光の投光する方向)は、水平面に対して傾斜している。この場合、第1偏光は、例えば、水平面に対して平行な方向に振動する直線偏光である。また、この場合、第1偏光と異なる偏光は、例えば、第1偏光に対して垂直な方向に振動する直線偏光である。
【0036】
なお、水平面に対して平行な方向に振動する直線偏光は、水平面に対して厳密に平行でなくてもよい。本願明細書においては、例えば、水平面に対して偏光面が±5°程度傾斜した状態も、水平面に対して平行な方向に振動する直線偏光に含むものとする。同様に、本願明細書においては、例えば、垂直面に対して偏光面が±5°程度傾斜した状態も、水平面に対して垂直な方向に振動する直線偏光に含むものとする。
【0037】
投光素子32の光軸は、必ずしも水平面に対して傾斜していなくてもよい。投光素子32の光軸は、例えば、水平面と直交してもよい。換言すれば、投光素子32は、真下に向けて検出光を投光してもよい。この場合、投光素子32の光軸が水平面と直交する状態において、水栓13の向く方向を正面側すると、第1偏光は、例えば、正面側から見て左右方向に振動する直線偏光である。第1偏光と異なる偏光は、例えば、正面側から見て上下方向に振動する直線偏光である。この場合、水栓13の正面側から入射する周囲光の第1偏光の成分を遮断する。
【0038】
水栓13は、一般的にボウル面11aの後方側に配置され、ボウル面11a側を向けて設けられる。これにより、ボウル面11aに向けて水を吐出することが可能となる。このように、水栓13は、所定の方向に向けて設けられる。投光素子32の光軸が水平面と直交する状態において、水栓13の向く方向を正面側とした場合、第1偏光は、例えば、正面側から見て左右方向に振動する直線偏光である。第1偏光と異なる偏光は、例えば、正面側から見て上下方向に振動する直線偏光である。
【0039】
第1偏光は、上記に限ることなく、任意の方向の直線偏光でよい。また、第1偏光と異なる偏光は、第1偏光に対して直交する方向の直線偏光に限ることなく、第1偏光の偏光方向と異なる任意の偏光方向の直線偏光でよい。以下では、第1偏光を水平面に対して平行な方向に振動する直線偏光(いわゆるS波)、第1偏光と異なる偏光を水平面に対して垂直な方向に振動する直線偏光(いわゆるP波)として説明を行う。なお、第1偏光は、直線偏光に限ることなく、円偏光や楕円偏光などでも同様の実施形態が可能である。第1偏光と異なる偏光は、直線偏光に限ることなく、第1偏光と異なる任意の方向の偏光でよい。
【0040】
第1偏光部材34は、例えば、投光素子32から投光された非偏光の検出光に含まれるS波の成分を透過させ、投光素子32から投光された非偏光の検出光に含まれるP波の成分を遮断する。これにより、第1偏光部材34は、非偏光の検出光をS波の検出光に変換する。このように、投光部30は、第1偏光部材34を透過したS波の検出光を検出領域に投光する。
【0041】
なお、本願明細書において、「遮断」とは、光が完全に透過しない状態のみならず、僅かに透過している状態も含むものとする。「遮断」とは、例えば、光の透過率が10%以下の状態である。また、「透過」とは、例えば、光の透過率が80%以上の状態である。
【0042】
受光部40は、受光素子42と、第2偏光部材44と、を有する。受光素子42は、反射光を受光する。第2偏光部材44は、受光素子42の光軸上において、受光素子42の前方に配置される。第2偏光部材44は、反射光に含まれる光のうち、第1偏光の光が鏡面反射することで形成された第2偏光の光を遮断し、第2偏光と異なる第3偏光の光を透過させる。
【0043】
第1偏光がS波である場合、鏡面反射することで形成された第2偏光もS波である。第3偏光は、例えば、P波である。従って、この例において、第2偏光部材44は、反射光に含まれるS波の成分を遮断し、反射光に含まれるP波の成分を透過させる。第2偏光部材44は、例えば、反射及び吸収の少なくとも一方により、S波の成分を遮断する。
【0044】
受光素子42は、第2偏光部材44を透過したP波の反射光を受光する。受光素子42は、例えば、受光したP波の反射光を光電変換することにより、P波の反射光の受光量に応じた電気信号を出力する。受光素子42には、例えば、赤外光に感度を有するフォトトランジスタやフォトダイオードなどが用いられる。
【0045】
受光部40は、受光素子42の受光量に対応した受信信号を制御部20に出力する。受光部40は、例えば、受光素子42から出力された電気信号に対応した受信信号を制御部20に出力する。
【0046】
受光素子42の受光可能な波長帯域は、投光素子32の検出光の波長帯域以外の波長も有している。受光素子42の受光可能な波長帯域は、例えば、投光素子32の検出光の波長帯域よりも広い。受光素子42の受光可能な波長帯域は、投光素子32の検出光の波長帯域に対して、短波長側及び長波長側の両側に広い状態に限ることなく、短波長側のみに広い状態、または長波長側のみに広い状態でもよい。すなわち、受光素子42の受光可能な波長帯域は、投光素子32の検出光の波長帯域の少なくとも一部と重なる。受光素子42の受光可能な波長帯域は、投光素子32の検出光の波長帯域の全体と重なることが、より好ましい。
【0047】
第2偏光部材44が第2偏光を遮断可能な波長帯域は、受光素子42の受光可能な波長帯域以外の波長も有している。第2偏光部材44が第2偏光を遮断可能な波長帯域は、例えば、受光素子42の受光可能な波長帯域よりも広い。第2偏光部材44が第2偏光を遮断可能な波長帯域は、受光素子42の受光可能な波長帯域に対して、短波長側及び長波長側の両側に広い状態に限ることなく、短波長側のみに広い状態、または長波長側のみに広い状態でもよい。すなわち、第2偏光部材44が第2偏光を遮断可能な波長帯域は、受光素子42の受光可能な波長帯域の少なくとも一部と重なる。第2偏光部材44が第2偏光を遮断可能な波長帯域は、受光素子42の受光可能な波長帯域の全体と重なることが、より好ましい。
【0048】
投光素子32の検出光の波長帯域は、例えば、800nm以上1200nm以下である。ここで、投光素子32の検出光の波長帯域とは、例えば、エネルギー強度が最大の波長を100%とした時の各波長の相対的エネルギー強度において、1%以上の周波数帯域である。
【0049】
受光素子42の受光可能な波長帯域は、例えば、650nm以上1300nm以下である。このように、受光素子42の受光可能な波長帯域の一部は、投光素子32の検出光の波長帯域を近赤外域に設定した場合、可視光域に入る。ここで、受光素子42の受光可能な波長帯域とは、例えば、受光感度が最大の波長を100%とした時の各波長の相対的な受光感度において、1%以上の周波数帯域である。
【0050】
第2偏光部材44が第2偏光を遮断可能な波長帯域は、例えば、400nm以上1500nm以下である。第2偏光部材44が第2偏光を遮断可能な波長帯域は、例えば、受光素子42の受光可能な波長帯域よりも広く、且つ受光素子42の受光可能な波長帯域の全体に重なる任意の波長帯域でよい。ここで、第2偏光部材44が第2偏光を遮断可能な波長帯域とは、例えば、消光比(第2偏光の透過率に対する第3偏光の透過率の割合)が10以上の波長帯域である。換言すれば、第3偏光の透過率が、第2偏光の透過率に対して10倍以上の波長帯域である。
【0051】
第1偏光部材34及び第2偏光部材44は、例えば、金属製のワイヤグリッド偏光板である。但し、第1偏光部材34及び第2偏光部材44は、ワイヤグリッド偏光板に限ることなく、上記のような特性を有する任意の部材でよい。例えば、第2偏光部材44にワイヤグリッド偏光板を用い、第1偏光部材34に別の種類の偏光板などを用いてもよい。第2偏光部材44は、第1偏光部材34と別体に構成してもよいし、共通の基材などを介して第1偏光部材34と一体的に構成してもよい。
【0052】
拡散反射では、様々な方向に偏光した光が混ざり合い、非偏光となる。このため、
図2(a)に表したように、検出光が拡散反射物2aで反射した場合、反射光は、P波の成分と、S波の成分と、を含む。従って、検出光が拡散反射物2aで反射した場合には、反射光に含まれるP波の成分が第2偏光部材44を透過し、受光素子42に入射する。これにより、人体の手などの対象物の検出が可能となる。
【0053】
制御部20は、受光素子42からの電気信号を基に、受光素子42の受光量を求め、受光素子42の受光量が所定の閾値以上となった場合に、対象物が有ると検出する。
【0054】
また、
図1に表したように、検出光が対象物で反射するまでの距離L1は、検出光が洗面器11で反射するまでの距離L2よりも短い。従って、例えば、陶器製の洗面器11などで拡散反射した反射光のP波の成分を受光素子42が受光した場合には、対象物の場合と比べて受光量が小さくなる。このため、受光量の閾値を適切に設定することにより、対象物のみを検出し、検出光が陶器製の洗面器11などで拡散反射した場合の誤吐水を抑制することができる。
【0055】
一方、
図2(b)に表したように、検出光が鏡面反射物2bで反射した場合には、偏光状態が維持されるため、反射光は、概ねS波のみの状態となる。従って、反射光は第2偏光部材44によって遮断される。すなわち、受光素子42による鏡面反射光の受光が抑制される。これにより、鏡面反射光による誤吐水も抑制される。
【0056】
このように、反射光に含まれるS波の赤外光は、鏡面反射光の成分であり、反射光に含まれるP波の赤外光は、拡散反射光の成分であると考えることができる。制御部20は、鏡面反射光の成分(第2偏光)を用いることなく、拡散反射光に含まれる成分(第3偏光)を用いて、対象物の有無の検出を行う。
【0057】
図3(a)及び
図3(b)は、実施形態に係る水栓装置の一部を表すブロック図である。
図3(a)に表したように、例えば、照明光や太陽光などの周囲光が、鏡面反射物2bで鏡面反射し、第2偏光部材44に入射してしまう場合がある。周囲光は、非偏光の光である。このため、周囲光に含まれるP波の成分は、第2偏光部材44を透過し、受光素子42に受光されてしまう。従って、周囲光は、ノイズとなり、水栓装置10の誤動作の要因となってしまう可能性ある。
【0058】
例えば、受光素子42の波長帯域を検出光の波長帯域よりも広くし、受光素子42の波長帯域が赤外域から可視光域まで延びている場合に、第2偏光部材44の第2偏光を遮断可能な波長帯域が、検出光と同じ赤外域のみである構成が考えられる。このような構成の場合、周囲光の赤外域の光については、S波が第2偏光部材44によって遮断され、周囲光の赤外域のP波のみが受光素子42に入射する。一方、周囲光の可視光域の光については、S波もP波も第2偏光部材44に遮断されることなく受光素子42に入射してしまう。このため、周囲光の受光量が増加してしまう。
【0059】
これに対して、本実施形態に係る水栓装置10では、第2偏光部材44が第2偏光を遮断可能な波長帯域を、受光素子42の受光可能な波長帯域よりも広くしている。これにより、周囲光の可視光域の光についても、S波の成分を第2偏光部材44によって遮断することができ、受光素子42に入射する周囲光を抑制することができる。照明光や太陽光などの周囲光は、可視光の成分を多く含んでいるため、本実施形態に係る水栓装置10ように可視光域についても第2偏光の成分を遮断できるようにすることで、効果的にノイズを抑制することができる。
【0060】
図3(b)に表したように、例えば、照明光や太陽光などの周囲光が、水やガラスなどの反射物2cに対してブリュースター角と呼ばれる角度で入射した場合、周囲光に含まれるP波の成分は、反射物2cを透過し、周囲光に含まれるS波の成分のみが、反射物2cで反射する。
【0061】
特に、水栓13がボウル面11aの後方側に配置され、第2偏光部材44が水平面に対して傾斜した状態で設けられる場合、第2偏光部材44に対して水栓13の向く方向の反対方向側(正面側からみて奥側)に受光素子42が位置することになる。そのため、照明光や太陽光などの周囲光は、水栓13の向く方向(正面側)からボウル面11a内の水やガラス等に反射して受光部40に入射しやすい。
【0062】
なお、可視光のノイズを抑制するために、受光素子42の前方に可視光カット部材を追加することや、受光素子42自体を可視光カット樹脂で成形することも可能であるが、そうした場合でも、受光する波長帯域を投光素子32の検出光の波長帯域と完全に一致させることは困難である。そのため、受光する波長帯域は検出光の波長帯域以外にも有することとなり、周囲光によるノイズを受けてしまう。これは、可視光という波長帯域に限定されず、投光素子32の検出光の波長帯域以外の波長帯域全てにあてはまる。
【0063】
この際、本実施形態に係る水栓装置10では、第1偏光及び第2偏光を、水平面に対して平行な方向に振動する直線偏光とし、S波を第2偏光部材44で遮断できるようにしている。従って、周囲光がブリュースター角で反射した場合には、S波の周囲光を第2偏光部材44によって適切に遮断することができる。これにより、周囲光が受光素子42に入射してしまうことを、より確実に抑制することができる。
【0064】
図4は、実施形態にかかる水栓装置の動作を表すフローチャートである。
図4に表したように、水栓装置10の制御部20は、例えば、電源の投入などで動作を開始すると、所定時間の待機を行う(
図4のステップS101)。所定時間は、例えば、0.5秒である。待機時間は、これに限ることなく、任意の時間でよい。
【0065】
制御部20は、所定時間の待機を行った後、投光素子32に電流を供給することにより、投光素子32に検出光を投光させる(
図4のステップS102)。制御部20は、例えば、投光素子32にパルス状の電流(電圧)を供給することにより、投光素子32に所定回数パルス投光させる。
【0066】
制御部20は、所定回数のパルス投光を行った後、受光部40から入力された受信信号を基に、受光素子42の受光量が所定の閾値以上か否かを判定する。より詳しくは、所定回数のパルス投光にともなう受光量の積算値が、閾値以上か否かを判定する。
【0067】
制御部20は、受光量が閾値以上である場合、感知と判定する。すなわち、対象物が有ると検出する。そして、制御部20は、受光量が閾値未満である場合、非感知と判定する。すなわち、対象物が無いと検出する。
【0068】
制御部20は、所定回数のパルス投光にともなう今回の検出動作において、対象物を感知したか否かを判定する(
図4のステップS103)。
【0069】
制御部20は、感知したと判定した場合、止水中であるか否かを判定する(
図4のステップS104)。
【0070】
制御部20は、止水中であると判定した場合、電磁弁16を開き、吐水を開始させた後、ステップS101の処理に戻る(
図4のステップS105)。一方、制御部20は、ステップS104において止水中ではないと判定した場合には、そのままステップS101の処理に戻る。
【0071】
制御部20は、ステップS103において非感知と判定した場合、吐水中であるか否かを判定する(
図4のステップS106)。
【0072】
制御部20は、吐水中であると判定した場合、電磁弁16を閉じ、吐水を終了させた後、ステップS101の処理に戻る(
図4のステップS107)。一方、制御部20は、ステップS106において吐水中ではないと判定した場合には、そのままステップS101の処理に戻る。
【0073】
制御部20は、上記の処理を繰り返す。これにより、水栓装置10では、使用者が手などを吐水口13aに近付けることにより、吐水口13aから自動で吐水が開始され、使用者が手などを吐水口13aから遠ざけることにより、吐水口13aからの吐水が終了される。
【0074】
以上、説明したように、本実施形態に係る水栓装置10では、第2偏光部材44が第2偏光を遮断可能な波長帯域が、受光素子42の波長帯域以外の波長も有していることにより、受光素子42の受光可能な波長帯域が、投光素子32の検出光の波長帯域以外の波長を有している場合にも、検出光以外の光の第2偏光と同じ成分も第2偏光部材44によって遮断することができる。これにより、受光素子42に入射する検出光以外の光の入射量も低減させることができる。新たな部材、回路、もしくは制御などを追加することなく、検出光以外の光による水栓装置10の誤動作などを抑制することができる。従って、検出光以外の光の影響を簡単な構成で抑制できる水栓装置10を提供することができる。
【0075】
なお、第2偏光部材44が第2偏光を遮断可能な波長帯域は、受光素子42の受光可能な波長帯域の短波長側(紫外線側)、もしくは長波長側(遠赤外線側)の片方だけが広い場合でも、受光素子42に入射する検出光以外の光の入射量を低減させることは可能である。そして、第2偏光部材44が第2偏光を遮断可能な波長帯域を、受光素子42の受光可能な波長帯域よりも広くし、受光素子42の受光可能な波長帯域の全体と重なるようにすることにより、受光素子42に入射する検出光以外の光の入射量を、より確実に低減させることができる。
【0076】
また、水栓装置10では、第1偏光及び第2偏光を、水平面に対して平行な方向に振動する直線偏光としている。すなわち、水平面に対して平行な方向に振動する光を、第2偏光部材44によって遮断できるようにしている。これにより、水面やガラスなどでブリュースター角で反射した周囲の光などが受光素子42に入射してしまうことを、より確実に抑制することができる。従って、検出光以外の光による水栓装置10の誤動作などを、より確実に抑制することができる。
【0077】
また、水栓装置10では、第2偏光部材44が、金属製のワイヤグリッド偏光板である。これにより、第2偏光を遮断可能な波長帯域が、受光素子42の波長帯域よりも広い第2偏光部材44を、比較的容易に製造することができる。また、金属は、紫外線を通し難いため、光電センサ18の内部の樹脂部品などの劣化を抑制することもできる。より具体的には、投光素子32と受光素子42を構成している樹脂が紫外線によって劣化すると検知精度の劣化を招くが、前方に金属があることによって紫外線の入射光量を低減することができる。また、紫外線の波長領域でも偏光性能を発揮することによって、更に光が遮断され、入射光量を更に低減することも可能となる。
【0078】
上記実施形態では、吐水装置の一例として、水を水栓13に供給して手洗いなどを可能とする水栓装置10を示している。吐水装置は、これに限ることなく、例えば、手などの対象物の検出に応じて水石鹸を吐出する吐水装置などでもよい。吐水装置の吐出する水は、水道水などに限ることなく、水石鹸などの液体を含んでもよい。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、水栓装置10などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0080】
2a 拡散反射物、 2b 鏡面反射物、 2c 反射物、 10 水栓装置、 11 洗面器、 11a ボウル面、 12 洗面カウンタ、 13 水栓、 13a 吐水口、 14 給水路、 15 排水路、 16 電磁弁、 17 接続ケーブル、 18 光電センサ、 20 制御部、 30 投光部、 32 投光素子、 34 第1偏光部材、 40 受光部、 42 受光素子、 44 第2偏光部材