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特許7021604蒸煮爆砕装置及びそれを備えた蒸煮爆砕システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】蒸煮爆砕装置及びそれを備えた蒸煮爆砕システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/30 20220101AFI20220209BHJP
   F23K 1/00 20060101ALI20220209BHJP
   B02C 19/00 20060101ALI20220209BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20220209BHJP
【FI】
B09B3/00 Z ZAB
F23K1/00 Z
B02C19/00 Z
B09B3/00 303Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018108786
(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公開番号】P2019209282
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】プリヤント デディ
(72)【発明者】
【氏名】河西 英一
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-124981(JP,A)
【文献】特開2017-211164(JP,A)
【文献】特開2017-159229(JP,A)
【文献】特開昭63-105195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
F23K 1/00
B02C 19/00
D21B 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気が供給されるシェルと、
前記シェル内に配置されるチューブと、
前記チューブの入口側に接続され、前記チューブ内にバイオマスを供給するフィーダと、
前記チューブの入口側に介装される入口バルブと、
前記チューブの出口側に介装される出口バルブと、
前記入口バルブを開、前記出口バルブを閉とし、前記フィーダから前記入口バルブを経て前記チューブ内に前記バイオマスを供給し、前記入口及び出口バルブを閉とし、前記バイオマスを前記チューブ内に密閉し、前記チューブ内の前記バイオマスを前記シェル内の蒸気で加熱し、保持時間の経過後、前記入口バルブを閉、前記出口バルブを開とし、前記チューブ内の前記バイオマスをその含有水分で蒸気爆砕して微粉化バイオマスを生成する制御ユニットと、
前記チューブの出口側に接続され、前記チューブ内に生成された前記微粉化バイオマスから固体残渣と水蒸気とを分離する分離ユニットと、
前記分離ユニットで分離した水蒸気の少なくとも一部を前記チューブの入口側に戻す第1循環路と
を備え
前記第1循環路は、前記分離ユニットで分離した水蒸気の凝縮を抑制する保温ユニットを有する、蒸煮爆砕装置。
【請求項2】
前記分離ユニットで分離した固体残渣の少なくとも一部を前記チューブの入口側に戻す第2循環路をさらに備える、請求項1に記載の蒸煮爆砕装置。
【請求項3】
蒸気が供給されるシェルと、
前記シェル内に配置されるチューブと、
前記チューブの入口側に接続され、前記チューブ内にバイオマスを供給するフィーダと、
前記チューブの入口側に介装される入口バルブと、
前記チューブの出口側に介装される出口バルブと、
前記入口バルブを開、前記出口バルブを閉とし、前記フィーダから前記入口バルブを経て前記チューブ内に前記バイオマスを供給し、前記入口及び出口バルブを閉とし、前記バイオマスを前記チューブ内に密閉し、前記チューブ内の前記バイオマスを前記シェル内の蒸気で加熱し、保持時間の経過後、前記入口バルブを閉、前記出口バルブを開とし、前記チューブ内の前記バイオマスをその含有水分で蒸気爆砕して微粉化バイオマスを生成する制御ユニットと、
前記チューブの出口側に接続され、前記チューブ内に生成された前記微粉化バイオマスから固体残渣と水蒸気とを分離する分離ユニットと、
前記分離ユニットで分離した水蒸気の少なくとも一部を前記チューブの入口側に戻す第1循環路と
を備えた蒸煮爆砕装置を複数備える蒸煮爆砕システムであって、
前記第1循環路は、前記分離ユニットで分離した水蒸気を異なる前記蒸煮爆砕装置の前記チューブの入口側に戻す、蒸煮爆砕システム。
【請求項4】
前記蒸煮爆砕装置は、前記分離ユニットで分離した固体残渣の少なくとも一部を前記チューブの入口側に戻す第2循環路をさらに備える、請求項3に記載の蒸煮爆砕システム。
【請求項5】
前記分離ユニットは、複数の前記蒸煮爆砕装置において共用されている、請求項3又は4に記載の蒸煮爆砕システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸煮爆砕装置及びそれを備えた蒸煮爆砕システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有機性廃棄物を容器内に収容し、高温・高圧の水蒸気によって廃棄物を加熱(蒸煮)した後、容器内圧力を瞬間的に開放し、水の断熱膨張のエネルギによって固体成分を粉砕(爆砕)する水蒸気爆砕(蒸煮爆砕)方式の廃棄物処理装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、複数の耐圧容器を直列に配置して各容器間をバルブで接続した装置を使用し、一段目の容器に繊維質材料を供給して高温高圧で蒸煮した後、各容器にて段階的に圧力を降下させながら爆砕する多段式爆砕方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-37536号公報
【文献】特開昭63-105195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原料となるバイオマスが水分を多量に含む(例えば50wt%)、いわゆる湿潤バイオマスである場合、従来はバイオマスの水分が10wt%以下程度になるまで乾燥した乾燥バイオマスを粉砕してバイオマス燃料を生成している。この場合には、バイオマスを乾燥するための前処理設備が必要となるため、乾燥機を作動させるための電力等のエネルギ消費量が増大するとともに、乾燥機という前処理設備を要する。
【0006】
また、特許文献1に記載の廃棄物処理装置のように、ボイラで大量に発生する水蒸気を有効に活用し、バイオマスを水蒸気爆砕により粉砕する場合、バイオマスの粉砕に要するエネルギ消費量を低減することができる。しかし、この水蒸気爆砕では、水蒸気をバイオマスと混合することにより蒸煮するため、水蒸気爆砕後に大量の水蒸気が発生する。爆砕処理後に水蒸気を装置外に放出すると、熱量廃棄に伴うエネルギーロスが発生し、ボイラが設けられる火力発電所等の発電効率の低下を招きかねない。
【0007】
一方、特許文献2に記載の蒸煮爆砕装置は、各容器において段階的に爆砕することにより、一段目の爆砕で発生した水蒸気を次段の爆砕で利用している。しかし、特許文献1の場合と同様に、各容器において爆砕処理が終了した後には、水蒸気が装置外に放出され、熱量廃棄に伴うエネルギーロスが発生する。また、各段の爆砕で発生した大量の水分由来以外の蒸気や、凝縮水までもが次段の容器で再度蒸煮される。
【0008】
また、段階的に爆砕するため、所望の粒径を得られた材料までもが再度蒸煮、爆砕される。従って、水分由来以外の蒸気と凝縮水との再蒸煮、及び、所望の粒径を得られた材料の不要な再蒸煮及び再爆砕が行われた結果、エネルギーロスが増大するおそれがある。さらには、水分由来以外の蒸気により微粉化バイオマスが変質し、微粉化バイオマスの燃焼効率が悪化するおそれもある。しかも、多段の爆砕からなる一度の爆砕処理のために、多数の容器を要するため、装置コストが増大する。
【0009】
さらに、特許文献1、2の何れにおいても、爆砕処理後に所望の粒径を得られなかった固体残渣の扱いについて格別な配慮がなされていない。従って、バイオマスを少ないエネルギで効率的に微粉砕して燃料としての微粉化バイオマスを高い収率で生成することについては依然として課題が残されている。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バイオマスを少ないエネルギで効率的に微粉砕して燃料としての微粉化バイオマスを高い収率で生成することができる蒸煮爆砕装置及びそれを備えた蒸煮爆砕システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の蒸煮爆砕装置は、蒸気が供給されるシェルと、シェル内に配置されるチューブと、チューブの入口側に接続され、チューブ内にバイオマスを供給するフィーダと、チューブの入口側に介装される入口バルブと、チューブの出口側に介装される出口バルブと、入口バルブを開、出口バルブを閉とし、フィーダから入口バルブを経てチューブ内にバイオマスを供給し、入口及び出口バルブを閉とし、バイオマスをチューブ内に密閉し、チューブ内のバイオマスをシェル内の蒸気で加熱し、保持時間の経過後、入口バルブを閉、出口バルブを開とし、チューブ内のバイオマスをその含有水分で蒸気爆砕して微粉化バイオマスを生成する制御ユニットと、チューブの出口側に接続され、チューブ内に生成された微粉化バイオマスから固体残渣と水蒸気とを分離する分離ユニットと、分離ユニットで分離した水蒸気の少なくとも一部をチューブの入口側に戻す第1循環路とを備え、第1循環路は、分離ユニットで分離した水蒸気の凝縮を抑制する保温ユニットを有する
【0012】
一方、本発明の蒸煮爆砕システムは、蒸気が供給されるシェルと、シェル内に配置されるチューブと、チューブの入口側に接続され、チューブ内にバイオマスを供給するフィーダと、チューブの入口側に介装される入口バルブと、チューブの出口側に介装される出口バルブと、入口バルブを開、出口バルブを閉とし、フィーダから入口バルブを経てチューブ内にバイオマスを供給し、入口及び出口バルブを閉とし、バイオマスをチューブ内に密閉し、チューブ内のバイオマスをシェル内の蒸気で加熱し、保持時間の経過後、入口バルブを閉、出口バルブを開とし、チューブ内のバイオマスをその含有水分で蒸気爆砕して微粉化バイオマスを生成する制御ユニットと、チューブの出口側に接続され、チューブ内に生成された微粉化バイオマスから固体残渣と水蒸気とを分離する分離ユニットと、分離ユニットで分離した水蒸気の少なくとも一部をチューブの入口側に戻す第1循環路とを備えた蒸煮爆砕装置を複数備える蒸煮爆砕システムであって、第1循環路は、分離ユニットで分離した水蒸気を異なる蒸煮爆砕装置のチューブの入口側に戻す。
【発明の効果】
【0013】
本発明の蒸煮爆砕装置及びそれを備えた蒸煮爆砕システムによれば、バイオマスを少ないエネルギで効率的に微粉砕して燃料としての微粉化バイオマスを高い収率で生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る蒸煮爆砕装置を備えたボイラ装置を示す構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る蒸煮爆砕装置を示す構成図である。
図3図2のシェルを図2のA-A断面の矢視方向から見た断面図である。
図4図2の制御ユニットが実行する爆砕制御を説明したフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態に係る蒸煮爆砕装置を示す構成図である。
図6図5の制御ユニットが実行する爆砕制御を説明したフローチャートである。
図7】本発明の第3実施形態に係る蒸煮爆砕システムを示す構成図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る蒸煮爆砕システムの別形態を示す構成図である。
図9図1又は図5の蒸煮爆砕装置が受入タンクを備える形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の蒸煮爆砕装置及びそれを備えた蒸煮爆砕システムについて説明する。
図1は、蒸煮爆砕装置を備えたボイラ装置1の構成を示す。ボイラ装置1は、石炭焚きボイラ2を備え、火力発電所等に設置される。石炭焚きボイラ2は、例えば微粉炭焚きボイラ(PCボイラ:Pulverized Coal boiler)であって、火炉2a、後部伝熱部である過熱器2b、再熱器2c、及び節炭部2dを具備している。節炭部2dから煙突Pに至るまでの排ガス処理煙道3には、脱硝部4、エアヒータ5、集塵装置6、誘引ファン7、熱交換器8、脱硫部9及び押込みファン10が順次配置されている。
【0016】
エアヒータ5は、押込みファン11により導入される外部空気を脱硝部4から排出される排ガスの熱で暖め、石炭焚きボイラ2のバーナー部2eに燃焼用空気として送り込む。熱交換器8は、誘引ファン7により導かれて集塵装置6を通過した後の排ガスと、押込みファン10により導入されて脱硫部9を通過した後の排ガスとを熱交換する。熱交換器8を経た排ガスは煙突Pから排出される。
【0017】
石炭焚きボイラ2には、石炭Cを機械式のミル(粉砕機)20により粉砕処理した微粉炭燃料が供給される。この微粉炭燃料は、押込みファン11により導入される燃焼用空気とともにバーナー部2eを経て石炭焚きボイラ2の火炉2aに投入されて燃焼される。
【0018】
ボイラ装置1の石炭焚きボイラ2で微粉炭燃料が燃焼することで生じる蒸気は、過熱器2bから配管21を通って高圧タービン22に送られ、高圧タービン22を回転させる。高圧タービン22の仕事に供された蒸気は、配管23を通って再熱器2cに戻されて再度加熱される。そして、再度加熱された蒸気は、配管24を通って中・低圧タービン25に送られ、この中・低圧タービン25の仕事に供された後、配管26及び復水器27を経て石炭焚きボイラ2に戻される。
【0019】
また、ボイラ装置1は、原料であるバイオマスBを水蒸気爆砕により微粉化してバイオマス燃料としての微粉化バイオマスを製造する蒸煮爆砕装置30を備えている。バイオマスBは、例えば木質バイオマスからなる固形燃料であるが、含水率が30wt%~60wt%程度の湿潤バイオマスである。さらに、蒸煮爆砕装置30は、生成された微粉化バイオマスから固体残渣と水蒸気とを分離する分離ユニット50を備えている。
【0020】
<第1実施形態>
図2は、第1実施形態に係る蒸煮爆砕装置30の構成を示す。蒸煮爆砕装置30は、水蒸気が供給されるシェル32、及びシェル32内に配置される複数のチューブ34を有するシェル&チューブ構造の熱交換部36と、熱交換部36の上側に配置され、各チューブ34の入口側に接続されて各チューブ34内にバイオマスBを供給可能とするフィーダ38と、後述する分離ユニット50とを備えている。
【0021】
フィーダ38は、バイオマスBが投入されるホッパ38aと、ホッパ38aから自重で流下したバイオマスBを各チューブ34の入口に向けて搬送する搬送路38bとを備えている。また、蒸煮爆砕装置30の下部には火炉2aに接続された搬送路47が設けられている。
【0022】
シェル32は、円筒状の胴部32aと、胴部32aの上下をそれぞれ密閉する上壁32b、下壁32cとから形成された密閉容器である。胴部32aには、水蒸気の入口部32dと、出口部32eとが形成されている。例えば、入口部32dは胴部32aの上壁32b近傍に、出口部32eは胴部32aの下壁32c近傍に位置付けられている。入口部32dには、配管23から分岐する分岐配管28が接続されている。
【0023】
シェル32には、高圧タービン22を回転させた後に石炭焚きボイラ2の再熱器2cに戻る200℃~300℃の蒸気(再熱蒸気)の一部が分岐配管28を経て入口部32dから供給される。出口部32eには、配管23における分岐配管28の分岐点の下流側にて配管23に合流する合流配管29が接続されている。シェル32内を流れて各チューブ34、ひいては後述する特定のチューブ34内に供給されたバイオマスBの加熱に供した水蒸気は、合流配管29を経て配管23に戻されて石炭焚きボイラ2で再利用される。すなわち、シェル32内には石炭焚きボイラ2で生成された蒸気が循環されている。
【0024】
シェル32内には各チューブ34が配置され、各チューブ34はシェル32の上下壁32b、32cからシェル32内の気密性を保持しながらそれぞれ上下に突出して延設されている。また、各チューブ34のシェル32から上下に突出した部位には、チューブ34毎に入口バルブ40と、出口バルブ42とがそれぞれ設けられている。
【0025】
詳しくは、入口バルブ40は、シェル32の上側において、シェル32の上壁32bから突出した各チューブ34にそれぞれ介装されている。また、出口バルブ42は、シェル32の下側において、シェル32の下壁32cから突出した各チューブ34にそれぞれ介装されている。入口及び出口バルブ40、42は、例えばゲート弁(仕切弁)や、バタフライ弁であって、木質チップ等の固形物が開作動時に引っ掛かりなく円滑に且つ瞬時に流通し、閉作動時には詰まり等なく確実に流路を遮断可能なプレート状の弁体を有している。
【0026】
各チューブ34は、入口バルブ40の上側にシェル32の胴部32aの径方向中央に向けて傾斜した上傾斜管部34aをそれぞれ有している。また、各チューブ34は、出口バルブ42の下側にシェル32の胴部32aの径方向中央に向けて傾斜したそれぞれ下傾斜管部34bを有している。
【0027】
各チューブ34の各上傾斜管部34aと、フィーダ38の搬送路38bとの間には分岐配管(分岐路)44が設けられている。分岐配管44には、各上傾斜管部34aの上端に形成された各チューブ34の入口が接続されている。すなわち、各チューブ34は、分岐配管44、各入口バルブ40、搬送路38bを介してホッパ38aと連通可能に構成されている。
【0028】
一方、各チューブ34の下傾斜管部34bと、火炉2aに至る搬送路47との間には合流配管(合流路)46が設けられている。合流配管46には、下傾斜管部34bの下端に形成された各チューブ34の出口が接続されている。すなわち、各チューブ34は、各出口バルブ42、合流配管46、搬送路47を介して火炉2aと連通可能に構成されている。
【0029】
鉛直方向を基準としたときの各上及び下傾斜管部34a、34bの傾斜角は、シェル32の胴部32a近傍に位置する各チューブ34の角度が最も大きく、シェル32の胴部32aの径方向中央に位置する各チューブ34の角度が最も小さい。
【0030】
これらの上及び下傾斜管部34a、34bの傾斜角は、フィーダ38側から各チューブ34に供給されるバイオマスB、及び、各チューブ34から火炉2a側に送出されるバイオマスBが自重で円滑に流下可能な角度に設定されている。これにより、図2に示すように、フィーダ38から供給されたバイオマスBは、分岐配管44及び各上傾斜管部34aに高い充填率で充填され、閉作動された各入口バルブ40により堰き止められる。
【0031】
各入口バルブ40が開作動されることにより、バイオマスBは、分岐配管44及び各上傾斜管部34aで詰まることなくシェル32内の各チューブ34に供給される。そして、入口及び出口バルブ40、42は、蒸煮爆砕装置30の制御ユニット48に電気的に接続されている。入口及び出口バルブ40、42が制御ユニット48の信号に基づいて開閉されることにより、蒸煮爆砕装置30で行う水蒸気爆砕を制御する爆砕制御が実行される。
【0032】
図3は、シェル32を図2のA-A断面の矢視方向から見た断面図である。シェル32内には、例えば24本のチューブ34が離間して配置されている。また、入口及び出口バルブ40、42も、各チューブ34に対応して、それぞれ24個ずつ設けられている。24本のチューブ34は、例えば、破線で囲った4つの第1~第4チューブ群34A~34Dから構成され、第1~第4チューブ群34A~34Dは、それぞれ6本のチューブ34から構成されている。
【0033】
また、24個の入口バルブ40は、第1~第4チューブ群34A~34Dに対応する4つの第1~第4入口バルブ群から構成され、第1~第4入口バルブ群は、それぞれ6個の入口バルブ40から構成されている。また、24個の出口バルブ42も、入口バルブ40と同様に、第1~第4チューブ群34A~34Dに対応する4つの第1~第4出口バルブ群から構成され、第1~第4出口バルブ群は、それぞれ6個の出口バルブ42から構成されている。
【0034】
以下、図4に示すフローチャートを参照して、制御ユニット48が実行する爆砕制御について説明する。先ず、制御ユニット48が爆砕制御を開始すると、ステップS1では、先ず第1チューブ群34Aでの爆砕(第n群におけるn=1の場合)を行うべく、第1入口バルブ群の各入口バルブ40を開作動し、第1出口バルブ群の各出口バルブ42を閉作動する。これにより、第1入口バルブ群の各入口バルブ40で堰き止められていたバイオマスBが第1チューブ群34Aの各チューブ34内に供給され、チューブ34内のバイオマスBが予め設定された充填率となるまで充填される。
【0035】
次に、ステップS2では、第1入口バルブ群の各入口バルブ40を閉作動し、第1チューブ群34Aの各チューブ34に充填されたバイオマスBをこれら各チューブ34内に密閉する。このバイオマスBは、前述したように、含水率が30wt%~60wt%程度の湿潤バイオマスである。
【0036】
そして、ボイラ装置1からシェル32内に供給され、シェル32を循環する蒸気により、第1チューブ群34Aの各チューブ34を介してこれら各チューブ34内のバイオマスBが間接的に加熱される。すなわち、ボイラ装置1で生成された蒸気は、各チューブ34の加熱源としてシェル32に供給されるものであり、各チューブ34内には供給されず、バイオマスBには接触しない。
【0037】
シェル32内を循環する蒸気の熱によって各チューブ34は高温となっているため、第1チューブ群34Aの各チューブ34内に密閉状態で保持されたバイオマスBの含有水分が徐々に蒸発する。これにより、第1チューブ群34Aの各チューブ34内は蒸気が充満して昇圧し、バイオマスBの含有水分に基づく蒸気がバイオマスBの水蒸気爆砕に利用される。
【0038】
チューブ34内における水蒸気爆砕の条件は、チューブ34の内径、長さ、材質、厚み等によって異なるが、蒸煮温度は例えば200℃~250℃程度、保持時間(密閉時間)tは例えば10分~30分程度、蒸煮圧力(密閉圧力)は1.6MPa~4.0MPa程度である。また、蒸煮爆砕装置30は、例えば、各チューブ34の外径が100mm、管長が8m程度であるとき、1ton/時程度の微粉化バイオマスを生成可能である。
【0039】
また、保持時間tは、長すぎると爆砕中にバイオマスの粉砕から分解が進行し、逆に燃焼効率が悪化するため、上記範囲の適正な時間に設定される。
こうして、シェル32内を循環される蒸気によってチューブ34を介してバイオマスBが間接的に密閉状態で加熱され、バイオマスBはチューブ34内にてバイオマスBの含有水分によって蒸煮される。
【0040】
次に、ステップS3では、ステップS2から移行した後の保持時間tが経過したか否かを判定する。判定結果がYes(真)である場合には、第1チューブ群34Aの各チューブ34内で好適な水蒸気爆砕が可能な蒸煮が十分に行われたと判定し、ステップS4に移行する。一方、判定結果がNo(偽)である場合には、第1チューブ群34Aの各チューブ34内で水蒸気爆砕が可能な蒸煮が十分に行われていないと判定し、ステップS3に留まって待機する。
【0041】
次に、ステップS4では、第1出口バルブ群の各出口バルブ42を開作動する。これにより、第1チューブ群34Aの各チューブ34内の圧力が瞬時に開放され、これら各チューブ34内の急速減圧が行われ、水蒸気爆砕によって微粉化されたバイオマス燃料が第1出口バルブ群の各出口バルブ42から噴出して生成される。
【0042】
次に、ステップS5では、生成された微粉化バイオマス燃料の分離工程が分離ユニット50において行われる。分離工程の詳細は後述する。分離工程を経た微粉化バイオマス燃料は、押込みファン11により導入される燃焼用空気とともにバーナー部2eを経て石炭焚きボイラ2の火炉2aに投入され、ミル20により粉砕処理された微粉炭燃料とともに燃焼される。
【0043】
次に、ステップS6では、第1~第4チューブ群34A~34Dで微粉化バイオマスを段階的に順次生成するべく、上述した第1チューブ群34Aでの爆砕(n=1の場合)に加え、第2~第4チューブ群34B~34Dでの爆砕(n=2、n=3、n=4の場合)及び分離工程が全て完了したか否かを判定する。
【0044】
判定結果がYes(真)である場合には、第1~第4チューブ群34A~34Dでの爆砕及び分離工程が全て完了したと判定し、一連の爆砕制御を終了する。一方、判定結果がNo(偽)である場合には、ステップS1に戻り、ステップS1~S5を再び実行することにより、終えていない第2~第4チューブ群34A~34Dでの爆砕を順次段階的に行う。
【0045】
ここで、図2に示すように、分離ユニット50は、搬送路47に設けられ、換言すると、各チューブ34の出口側に接続されている。分離ユニット50は、例えば、図示しない遠心分離機、メッシュ、吸込管等を組み合わせて構成されており、爆砕制御により生成された微粉化バイオマスから水分由来の蒸気である水蒸気のみを抽出して分離する分離機能を備えている。生成された微粉化バイオマスに水分由来以外の蒸気や、凝縮水が含まれる場合、これらは抽出しない。
【0046】
また、分離ユニット50は、爆砕制御により生成された微粉化バイオマスから、燃焼効率の悪い、例えば2.0mm以上であって5.0mm程度となる粒径を有する固体残渣を分級して分離する分級機能をも備えている。固体残渣以外、すなわち例えば2.0mm未満の粒径の微粉化バイオマスは、燃料として火炉2aに投入される。
【0047】
分離ユニット50には、第1循環路52及び第2循環路54のそれぞれの一端が接続されている。第1循環路52は、配管であって、他端がシェル32の上壁32bから突出した各チューブ34に分岐して接続されており、分岐した第1循環路52の各チューブ34の近傍には開閉バルブ56がそれぞれ介装されている。分離ユニット50及び各開閉バルブ56の駆動部は、制御ユニット48に電気的に接続されている。
【0048】
そして、制御ユニット48は、爆砕制御におけるステップS5の分離工程において、分離ユニット50を起動するとともに、各開閉バルブ56を開作動する。これにより、生成された微粉化バイオマスから分離ユニット50で分離した水蒸気の少なくとも一部(例えば約50%程度)が第1循環路52を介して各チューブ34の入口側に戻される。なお、シェル32の外部であって各チューブ34の入口側であれば、図2に示した箇所以外に水蒸気を戻しても良い。
【0049】
一方、第2循環路54は、フィーダ38の上方まで延設された配管である。第2循環路54内には、例えばスクリューコンベア60が配置され、スクリューコンベア60は分離ユニット50で分離した固体残渣をフィーダ38に向けて搬送する。スクリューコンベア60の駆動部は、制御ユニット48に電気的に接続されている。なお、固体残渣の搬送手段はスクリューコンベア60以外であっても良い。
【0050】
そして、制御ユニット48は、爆砕制御におけるステップS5の分離工程において、分離ユニット50及びスクリューコンベア60を起動する。これにより、生成された微粉化バイオマスから分離ユニット50で分離した固体残渣の少なくとも一部(好ましくは約90%~100%程度)が第2循環路54を介して各チューブ34の入口側であるフィーダ38に戻される。なお、シェル32の外部であって各チューブ34の入口側であれば、フィーダ38以外の箇所に固体残渣を戻しても良い。
【0051】
ステップS5の分離工程は、第1~第4チューブ群34A~34Dで微粉化バイオマスを段階的に順次生成した後に都度行われる。さらに、第1循環路52には保温ユニット62が設けられている。保温ユニット62は、例えば、保温ダクトや、第1循環路52を覆う保温カバー等であって、第1循環路52に導かれた水蒸気を保温する。
【0052】
第1~第4チューブ群34A~34Dで微粉化バイオマスを段階的に順次生成する際、次の爆砕処理まで待機時間がある場合には、保温ユニット62で保温することにより分離ユニット50で分離した水蒸気の凝縮が抑制される。なお、分離ユニット50で分離した水蒸気の凝縮が問題とならない程度に待機時間が短い場合には、保温ユニット62を設けなくとも良い。
【0053】
以上のように、本実施形態の蒸煮爆砕装置30は、チューブ34内にて湿潤状態のバイオマスBを密閉して加熱し、バイオマスBの含有水分でバイオマスBを水蒸気爆砕して水分の少ない高熱量の微粉化バイオマスを生成することができる。従って、バイオマスBの乾燥等の前処理及びその設備が不要となり、従来の水蒸気爆砕に比して大幅に少ないエネルギでバイオマスBを微粉化することができる。加えて、蒸煮爆砕装置30ひいてはボイラ装置1におけるエネルギ消費及び設備コストを全体として大幅に削減し、蒸煮爆砕装置30ひいてはボイラ装置1の運転コストを低減することができる。
【0054】
さらに、本実施形態の蒸煮爆砕装置30は、生成された微粉化バイオマスから固体残渣と水蒸気とを分離する分離ユニット50と、分離ユニット50で分離した水蒸気の少なくとも一部を各チューブ34の入口側に戻す第1循環路52とを備えている。これにより、バイオマスを少ないエネルギで効率的に微粉砕して燃料としての微粉化バイオマスを高い収率で生成することができる。
【0055】
詳しくは、爆砕処理後に発生した水分由来の水蒸気のみを次の爆砕処理に利用することができるため、蒸煮爆砕装置30の装置外に放出される水蒸気を低減することができる。従って、熱量廃棄に伴うエネルギーロスを低減し、ボイラ装置1が設けられる火力発電所等の発電効率の低下を防止することができる。
【0056】
また、水分由来以外の蒸気と凝縮水の再蒸煮は行われないため、これらに伴うエネルギーロスを低減することもできる。さらには、水分由来以外の蒸気と凝縮水によって蒸煮することによる微粉化バイオマスの変質の懸念が排除され、燃焼効率の良い高品質の微粉化バイオマスを製造することができる。
【0057】
なお、生成された微粉化バイオマスから分離された水蒸気は、元々、原料である湿潤状態のバイオマスBに含まれた含有水分に基づくものである。従って、分離ユニット50による分離工程を行ったとしても、バイオマスBの含有水分に基づく蒸気がバイオマスBの蒸煮爆砕に利用されることに変わりはない。
【0058】
また、蒸煮爆砕装置30は、生成された微粉化バイオマスから分離ユニット50で分離した固体残渣の少なくとも一部を各チューブ34の入口側に戻す第2循環路54を備えている。分離ユニット50で分離した固体残渣は、例えば2.0mm以上であって5.0mm程度となる粒径を有するものである。
【0059】
このような固体残渣は、爆砕処理により生成された微粉化バイオマスの一割程度を占めており、2.0mm未満の粒径を基準としたときの微粉化バイオマスの収率を悪化させる。また、固体残渣をそのまま火炉2aに投入すると、石炭焚きボイラ2における燃焼効率が悪化する。しかし、生成された微粉化バイオマスから固体残渣を分離して次回の爆砕制御で再び爆砕することにより、固体残渣を2.0mm未満の粒径の微粉化バイオマスに再生成することができるため、これらの問題を解決できることが判明した。
【0060】
具体的には、150MW級の石炭焚きボイラ2に、エネルギ(熱量)基準とした比率で25%の木質チップを混焼し、約21.2ton/時の微粉木質、つまり微粉化バイオマスの供給が必要となることを想定して実験を行った。この場合、分離工程を行わない、つまり分離ユニット50によりリサイクルを行わない従来の蒸煮爆砕装置においては、原料としてのバイオマスB(湿潤木質チップ)の必要な供給量は約47.2ton/時である。
【0061】
この場合において、高圧タービン22からシェル32に供給する水蒸気(432℃、6MPa)の必要な供給量は約37ton/時(9MWのエネルギーロスに相当)であり、従来の蒸煮爆砕装置において得られた微粉化バイオマスの収率は約70%であった。これに対し、本実施形態の蒸煮爆砕装置30においては、第1循環路52を介して分離ユニット50で分離した水蒸気の約50%を各チューブ34の入口側に戻す場合、高圧タービン22からシェル32に供給する水蒸気(432℃、6MPa)の必要な供給量は約17ton/時(4MWのエネルギーロスに相当)となった。
【0062】
このように、分離ユニット50を有する循環式の蒸煮爆砕装置30は、装置外に放出される水蒸気を大幅に低減することができる。また、固体残渣をフィーダ38に投入し、原料として再利用することにより、蒸煮爆砕装置30に投入するバイオマスBを低減することができるため、蒸煮爆砕装置30において得られた微粉化バイオマスの収率は約78%に上昇した。従って、本実施形態の蒸煮爆砕装置30は、分離ユニット50と、第1及び第2循環路52、54とを有することにより、バイオマスを少ないエネルギで効率的に微粉砕して燃料として高品質の微粉化バイオマスを高い収率で生成することができる。
【0063】
また、第1循環路52に保温ユニット62を設けたことにより、微粉化バイオマスを段階的に順次生成する際、次の爆砕処理まで待機時間がある場合には、保温ユニット62で保温することにより分離ユニット50で分離した水蒸気の凝縮が抑制される。従って、リサイクルする水蒸気の性状を維持することができるため、熱量廃棄に伴うエネルギーロスをさらに低減することができる。
【0064】
また、特に本実施形態の蒸煮爆砕装置30は、上述した爆砕制御を実行し、第1~第4チューブ群34A~34Dで微粉化バイオマスを段階的に順次生成する。これにより、蒸煮爆砕装置30における微粉化バイオマスの生成量を容易に調整することができ、蒸煮爆砕装置30で微粉化バイオマスを所定量ずつ段階的に生成して石炭焚きボイラ2で燃焼させることが可能である。
【0065】
従って、蒸煮爆砕装置30ひいてはボイラ装置1の運転の自由度を高めることができ、蒸煮爆砕装置30ひいてはボイラ装置1のエネルギ消費及び運転コストのさらなる低減を図ることができる。なお、このような微粉化バイオマスの段階的な生成は、石炭焚きボイラ2で生成された蒸気をシェル32内に連続的に循環させ、当該蒸気を連続供給可能なバイオマスBの加熱源として有効利用することで初めて実現されるものである。
【0066】
また、本実施形態では、チューブ34の数、ひいてはチューブ34に対応する入口バルブ40、出口バルブ42の数は適宜変更可能である。また、チューブ群の数、チューブ群に対応する入口バルブ群、出口バルブ群の数、ひいては、これら群を構成するチューブ34、入口バルブ40、出口バルブ42の数も適宜変更可能である。すなわち、制御ユニット48で実行される爆砕制御では、入口及び出口バルブ40、42の開閉により、フィーダ38から複数のチューブ34のうちの少なくとも1つ以上に段階的にバイオマスBを供給し、微粉化バイオマスが所定量ずつ段階的に順次生成される。
【0067】
<第2実施形態>
第2実施形態の蒸煮爆砕装置130は、入口及び出口バルブ40、42の数及び位置、シェル32の形状、及び制御ユニット48が実行する爆砕制御、第1循環路52の接続箇所を除き、第1実施形態の蒸煮爆砕装置30と同様の構成をなしている。従って、以下、これら相違点を主として説明し、第1実施形態と同様の構成は図面及び明細書中に同符号を付して説明を省略することがある。
【0068】
図5は、第2実施形態に係る蒸煮爆砕装置130の構成を示す。本実施形態の蒸煮爆砕装置130には、入口及び出口バルブ40、42はチューブ34毎に設けられておらず、分岐配管44に1個の入口バルブ40が介装され、合流配管46に1個の出口バルブ42が介装されている。また、シェル32内には、各チューブ34の上傾斜管部34a、及び下傾斜管部34bが配置され、分岐配管44、合流配管46はシェル32の上下壁32b、32cからシェル32内の気密性を保持しながらそれぞれ上下に突出して位置付けられている。
【0069】
フィーダ38から供給されたバイオマスBは、分岐配管44の途中位置までに高い充填率で充填され、閉作動された入口バルブ40により堰き止められている。また、蒸煮爆砕装置130は、第1実施形態の場合と同様に、分離ユニット50、第1及び第2循環路52、54、開閉バルブ56、スクリューコンベア60、保温ユニット62を備えている。
【0070】
本実施形態の第1循環路52は、シェル32の上壁32bから突出した分岐配管44に接続されている。また、開閉バルブ56は第1循環路52に1個だけ設けられている。なお、シェル32の外部であって各チューブ34の入口側であれば、図5に示した箇所以外に第1循環路52を接続しても良い。
【0071】
以下、図6に示すフローチャートを参照して、制御ユニット48が実行する本実施形態の爆砕制御について説明する。先ず、制御ユニット48が爆砕制御を開始すると、ステップS11では、入口バルブ40を開作動し、出口バルブ42を閉作動する。これにより、入口バルブ40で堰き止められていたバイオマスBが24本の各チューブ34内に一括して供給、充填される。
【0072】
次に、ステップS12では、入口バルブ40を閉作動し、各チューブ34に充填されたバイオマスBをこれら各チューブ34内に密閉する。そして、シェル32内を循環される蒸気により、各チューブ34を介して各チューブ34内のバイオマスBが間接的に加熱される。
【0073】
各チューブ34内に密閉状態で保持されたバイオマスBの含有水分が徐々に蒸発し、各チューブ34内は蒸気が充満して昇圧し、バイオマスBの含有水分に基づく蒸気がバイオマスBの蒸煮爆砕に利用される。こうして、シェル32内を流れる蒸気によってチューブ34を介してバイオマスBが間接的に密閉状態で加熱され、バイオマスBはチューブ34内にてバイオマスBの含有水分によって蒸煮される。
【0074】
次に、ステップS13では、ステップS12から移行した後の保持時間tが経過したか否かを判定する。判定結果がYes(真)である場合には、各チューブ34内で好適な蒸煮爆砕が可能な蒸煮が十分に行われたと判定し、ステップS14に移行する。一方、判定結果がNo(偽)である場合には、各チューブ34内で蒸煮爆砕が可能な蒸煮が十分に行われていないと判定し、ステップS13に留まって待機する。
【0075】
次に、ステップS14では、出口バルブ42を開作動する。これにより、各チューブ34内の圧力が瞬時に開放され、これら各チューブ34内の急速減圧が行われ、蒸煮爆砕によって微粉化されたバイオマス燃料が出口バルブ42から噴出して生成され、爆砕制御を終了する。
【0076】
次に、ステップS15では、第1実施形態の場合と同様に、分離ユニット50による分離工程が行われる。分離工程において、制御ユニット48は、分離ユニット50を起動するとともに、開閉バルブ56を開作動する。これにより、生成された微粉化バイオマスから分離ユニット50で分離した水蒸気の少なくとも一部(例えば約50%程度)が第1循環路52を介してチューブ34の入口側に戻される。
【0077】
また、制御ユニット48は、分離ユニット50及びスクリューコンベア60を起動する。これにより、生成された微粉化バイオマスから分離ユニット50で分離した固体残渣の少なくとも一部(好ましくは約90%~100%程度)が第2循環路54を介して各チューブ34の入口側であるフィーダ38に戻される。
【0078】
蒸煮爆砕装置130で微粉化バイオマスを順次生成する際、次の爆砕処理まで待機時間がある場合には、保温ユニット62で保温することにより分離ユニット50で分離した水蒸気の凝縮が抑制される。なお、本実施形態の分離ユニット50及び分離工程において、前述した内容の例外となる構成は、第1実施形態の場合と同様に許容される。そして、分離工程を経た微粉化バイオマス燃料は、押込みファン11により導入される燃焼用空気とともにバーナー部2eを経て石炭焚きボイラ2の火炉2aに投入され、ミル20により粉砕処理された微粉炭燃料とともに燃焼される。
【0079】
以上のように本実施形態の蒸煮爆砕装置130では、第1実施形態の場合と同様に、チューブ34内にて湿潤状態のバイオマスBを密閉して加熱し、バイオマスBの含有水分でバイオマスBを水蒸気爆砕して水分の少ない高熱量の微粉化バイオマスを生成することができる。従って、従来の水蒸気爆砕に比して大幅に少ないエネルギでバイオマスBを微粉化することができ、蒸煮爆砕装置130ひいてはボイラ装置1におけるエネルギ消費及び設備コストを全体として大幅に削減し、蒸煮爆砕装置130ひいてはボイラ装置1の運転コストを低減することができる。
【0080】
さらに、本実施形態の蒸煮爆砕装置130は、第1実施形態の場合と同様に、分離ユニット50、第1及び第2循環路52、54を備えることから、バイオマスを少ないエネルギで効率的に微粉砕して燃料として高品質の微粉化バイオマスを高い収率で生成することができる。また、第1循環路52に保温ユニット62を設けたことにより、分離ユニット50で分離した水蒸気の凝縮が抑制され、熱量廃棄に伴うエネルギーロスをさらに低減することができる。
【0081】
また、特に本実施形態の蒸煮爆砕装置130は、入口及び出口バルブ40、42は1個で良いため、第1実施形態の場合に比して、入口及び出口バルブ40、42の個数を大幅に削減することができ、爆砕制御の制御システムも簡素化される。従って、蒸煮爆砕装置130は、その全体構成を大幅に簡素化することができるため、蒸煮爆砕装置130ひいてはボイラ装置1におけるエネルギ消費及び設備コストをさらに削減し、これらの運転コストをさらに低減することができる。
【0082】
また、本実施形態では、上述した爆砕制御を実行し、入口及び出口バルブ40、42の開閉により、フィーダ38から24本のチューブ34内に一括してバイオマスBを供給し、微粉化バイオマスを生成する。しかも、各チューブ34の上傾斜管部34a、及び下傾斜管部34bにもバイオマスBを充填して蒸煮爆砕を行うことができる。これにより、石炭焚きボイラ2で生成された蒸気を利用しながら、微粉化バイオマスを一度に大量に生成することができ、蒸煮爆砕装置130の爆砕能力を大幅に高めることができる。
【0083】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る蒸煮爆砕システムは、ボイラ装置1に設けられ、蒸煮爆砕装置30又は130を複数備えている。以下、第2実施形態の蒸煮爆砕装置130を複数備える場合を代表して説明し、第2実施形態と同様の構成は図面及び明細書中に同符号を付して説明を省略することがある。
【0084】
図7は、複数の蒸煮爆砕装置130のうちの一部をなす装置130A、130Bを図示した蒸煮爆砕システム200を示す。装置130Aの第1循環路52は、隣り合う装置130Bの分岐配管44に接続されている。一方、装置130A、130Bの第2循環路54は、それぞれ装置130A、130Bの各フィーダ38の上方まで延設される。なお、図7、及び後述する図8においては、制御ユニット48の図示を省略している。
【0085】
装置130Aの分離ユニット50で分離した水蒸気は、異なる装置130Bの各チューブ34の入口側に戻され、装置130Aの爆砕処理後に発生した水分由来の水蒸気を装置130Bの爆砕処理に利用することができる。従って、蒸煮爆砕システム200の装置外に放出される水蒸気を低減することができるため、熱量廃棄に伴うエネルギーロスを低減することができる。
【0086】
また、装置130A、130Bにおいて微粉化バイオマスを順次段階的に生成することにより、装置130Aと装置130Aとの爆砕処理の間に待機時間を極力短くすることができる。これにより、保温ユニット62を設けなくとも、リサイクルする水蒸気の性状を維持することができるため、設備コストを低減しながら熱量廃棄に伴うエネルギーロスを削減することができる。
【0087】
さらに、図8に示すように、蒸煮爆砕システム200において、分離ユニット50を複数の蒸煮爆砕装置130で共用しても良い。例えば、蒸煮爆砕システム200が装置130A、130Bから構成される場合、分離ユニット50は1つだけ設けられ、第1循環路52は、装置130A、130Bの各分岐配管44に向けて分岐して接続される。
【0088】
また、第2循環路54は、装置130A、130Bの各フィーダ38の上方に向けて分岐して延設される。分岐した第2循環路54の各フィーダ38の近傍には、それぞれ開閉バルブ58が介装されている。開閉バルブ58の駆動部は、制御ユニット48に電気的に接続されている。制御ユニット48は、爆砕制御におけるステップS5の分離工程において、分離ユニット50及びスクリューコンベア60を起動するとともに、何れかの開閉バルブ58を開作動する。
【0089】
これにより、生成された微粉化バイオマスから分離ユニット50で分離した固体残渣の一部が第2循環路54を介して選択されたフィーダ38に戻される。このような図8の形態の場合には、蒸煮爆砕システム200の分離ユニット50の数を減らすことができるため、設備コストを低減しながらコンパクトな蒸煮爆砕システム200を実現することができる。
【0090】
以上で本発明の各実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、蒸煮爆砕装置30、130は、分離ユニット50と第1循環路52とを備えていれば、第2循環路54を備えていなくとも良い。バイオマスBの性状や、蒸煮爆砕装置30、130の爆砕能力によっては、固体残渣の量が少ない場合もあり得るからである。
【0091】
また、例えば、図9に示すように、蒸煮爆砕装置30(蒸煮爆砕装置130でも良い)は、チューブ34内に生成された微粉化バイオマスを受け入れる受入タンク64を備えても良い。この場合には、蒸煮爆砕装置30において分離ユニット50を経た微粉化バイオマスを火炉2aに直接投入して燃焼するのではなく、受入タンク64で一旦保管することができる。これにより、蒸煮爆砕装置30及びボイラ装置1の運転の自由度をさらに高めることができる。
【0092】
また、上記各実施形態では、ボイラ装置1が備える蒸煮爆砕装置30、130で蒸煮爆砕を行うことで、バイオマスBの含水量で微粉化バイオマスを生成する場合について説明した。この場合には、石炭焚きボイラ2で生じている高温の蒸気のうちの再熱蒸気(高圧タービン22を回転させた後に再熱器2cに戻る蒸気)の一部をチューブ34の加熱源として利用している。
【0093】
これにより、新たな電力消費を要さずに、少ないエネルギでバイオマスBを微粉化することができる。しかし、これに限らず、上記加熱源として、中・低圧タービン25の仕事に供された後の蒸気を利用しても良いし、石炭焚きボイラ2で発生する水蒸気を直接利用しても良いし、石炭焚きボイラ2で発生する排ガスで蒸気を追い焚きして利用しても良い。
【0094】
また、ボイラ装置1以外の他の装置や設備に、蒸煮爆砕装置30、130の態様をなす微粉化バイオマス製造装置を設け、蒸気以外の加熱源を利用してチューブ34を加熱して微粉化バイオマスを生成しても良い。
また、本発明で微粉化可能なバイオマスは、水分を含む潤湿バイオマスであれば良く、木質系に限らず草木系を含む未利用バイオマスであっても良いし、廃棄物系バイオマスであっても良い。
【符号の説明】
【0095】
30、130 蒸煮爆砕装置
32 シェル
34 チューブ
40 入口バルブ
42 出口バルブ
48 制御ユニット
50 分離ユニット
52 第1循環路
54 第2循環路
62 保温ユニット
200 蒸煮爆砕システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9