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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】マルチレベル電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/483 20070101AFI20220209BHJP
【FI】
H02M7/483
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018179633
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020054071
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勇
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0141779(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/483
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基本セルと第2基本セルを有する各相共通の共通モジュールと、1相以上の相モジュールと、を備え、直流-交流変換、または、交流-直流変換を行うマルチレベル電力変換装置であって、
前記第1基本セルは、
第1直流リンクキャパシタと、
前記第1直流リンクキャパシタの正極端に一端が接続された第1半導体スイッチと、
前記第1直流リンクキャパシタの負極端に一端が接続された第2半導体スイッチと、
前記第1半導体スイッチの他端と前記第2半導体スイッチの他端との間に接続された第1フライングキャパシタと、
前記第1フライングキャパシタに直列接続された第1リアクトルと、
前記第1半導体スイッチの他端と前記第2半導体スイッチの他端との間に直列接続された第3,第4半導体スイッチと、を有し、
前記第2基本セルは、
前記第1直流リンクキャパシタに直列接続された第2直流リンクキャパシタと、
前記第2直流リンクキャパシタの正極端に一端が接続された第5半導体スイッチと、
前記第2直流リンクキャパシタの負極端に一端が接続された第6半導体スイッチと、
前記第5半導体スイッチの他端と前記第6半導体スイッチの他端との間に接続された第2フライングキャパシタと、
前記第2フライングキャパシタに直列接続された第2リアクトルと、
前記第5半導体スイッチの他端と前記第6半導体スイッチの他端との間に直列接続された第7,第8半導体スイッチと、を有し、
前記相モジュールは、
前記第1半導体スイッチの一端、および、前記第3,第4半導体スイッチの共通接続点、および、前記第2,第5半導体スイッチの共通接続点、および、前記第7,第8半導体スイッチの共通接続点、および、前記第6半導体スイッチの一端と、交流端子との間にそれぞれスイッチングデバイスを有し、前記スイッチングデバイスをON,OFFすることにより、前記各端子の電圧を選択的に出力することを特徴とするマルチレベル電力変換装置。
【請求項2】
下記表1、表2に基づいて前記第1,第2基本セルの各Modeを選択し、
前記第1基本セルのMode1の時は、前記第1,第4半導体スイッチをオン、前記第2,第3半導体スイッチをオフとし、
前記第1基本セルのMode2の時は、前記第2,第3半導体スイッチをオン、前記第1,第4半導体スイッチをオフとし、
前記第2基本セルのMode1の時は、前記第5,第8半導体スイッチをオン、前記第6,第7半導体スイッチをオフとし、
前記第2基本セルのMode2の時は、前記第6,第7半導体スイッチをオン、前記第5,第8半導体スイッチをオフとし、
各基本セル毎に、Mode1とMode2の切り替え時に、基本セル内のすべての半導体スイッチをオフするデッドタイムTdを設け、
前記デッドタイムTdは、以下の(2)式の値とすることを特徴とする請求項1記載のマルチレベル電力変換装置。
【表1】
【表2】
【数2】
Vc1:第1フライングキャパシタの電圧
E:フライングキャパシタの電圧指令値
Id1:第3,第4半導体スイッチの共通接続点の電流
Vc2:第2フライングキャパシタの電圧
Id2:第7,第8半導体スイッチの共通接続点の電流
I0:初期電流値(装置が動作する範囲での最大電流(固定値))
L:第1,第2リアクトルのインダクタンス値
【請求項3】
前記第3,第4半導体スイッチの共通接続点および前記第7,第8半導体スイッチの共通接続点、もしくは、前記第1,第2リアクトルに直列に電流センサを設け、
下記表1、表2に基づいて前記第1,第2基本セルの各Modeを選択し、
前記第1基本セルのMode1の時は、前記第1,第4半導体スイッチをオン、前記第2,第3半導体スイッチをオフとし、
前記第1基本セルのMode2の時は、前記第2,第3半導体スイッチをオン、前記第1,第4半導体スイッチをオフとし、
前記第2基本セルのMode1の時は、前記第5,第8半導体スイッチをオン、前記第6,第7半導体スイッチをオフとし、
前記第2基本セルのMode2の時は、前記第6,第7半導体スイッチをオン、前記第5,第8半導体スイッチをオフとし、
前記各基本セル毎に、Mode1とMode2の切り替え時に、基本セル内のすべての半導体スイッチをオフするデッドタイムTdを設け、
前記デッドタイムTdは以下の(3)式の値とすることを特徴とする請求項1記載のマルチレベル電力変換装置。
【表1】
【表2】
【数3】
Vc1:第1フライングキャパシタの電圧
E:フライングキャパシタの電圧指令値
Id1:第3,第4半導体スイッチの共通接続点の電流
Vc2:第2フライングキャパシタの電圧
Id2:第7,第8半導体スイッチの共通接続点の電流
I0:初期電流値(電流センサで検出した値)
L:第1,第2リアクトルのインダクタンス値
【請求項4】
前記第1基本セルがMode2からMode1へ移行する場合、デッドタイム後、かつ、Mode1の前に、下記表3に示す前記第1,第2、第3,第4半導体スイッチのスイッチングパターンを追加し、
前記第1基本セルがMode1からMode2へ移行する場合、デッドタイム後、かつ、Mode2の前に、下記表3に示す前記第1,第2、第3,第4半導体スイッチのスイッチングパターンを追加し、
前記第2基本セルがMode2からMode1へ移行する場合、デッドタイム後、かつ、Mode1の前に、下記表4に示す前記第5,第6、第7,第8半導体スイッチのスイッチングパターンを追加し、
前記第2基本セルがMode1からMode2へ移行する場合、デッドタイム後、かつ、Mode2の前に、下記表4に示す前記第5,第6、第7,第8半導体スイッチのスイッチングモードを追加することを特徴とする請求項3記載のマルチレベル電力変換装置。
【表3】
【表4】
Id1:第3,第4半導体スイッチの共通接続点の電流
Id2:第7,第8半導体スイッチの共通接続点の電流
Sf1~Sf8:第1~第8半導体スイッチ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチレベル電力変換装置に係り、各相共通のフライングキャパシタを有するマルチレベル電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は従来のマルチレベル電力変換装置を示す回路図である。C1、C2は第1,第2フライングキャパシタであり、U相、V相、W相の相モジュール2の共通電源として用いられる。第1,第2フライングキャパシタC1、C2は共通モジュール1内の半導体スイッチのオンオフ動作によって充放電を行い、第1,第2フライングキャパシタC1、C2の電圧を所定の電圧に制御する。
【0003】
図11において、PN端子間に直流電源、U相,V相,W相の交流端子にモータなどの3相交流負荷を接続した場合には、このマルチレベル電力変換装置はインバータとして動作する。U相,V相,W相の交流端子にリアクトルやコンデンサなどから成るフィルタ回路を介して3相交流電源を接続し、PN端子間に負荷を接続した場合には、このマルチレベル電力変換装置はコンバータとして動作する。
【0004】
また、図11の相モジュール2はマルチレベル電力変換装置の相数に応じて並列接続される。3相の場合は、相モジュール2の並列接続数=3となる。なお、図11の相モジュール2のダイオードD5、D6は、IGBTなどのスイッチング素子に置き換えてもよい。
【0005】
次に、図11のような回路構成におけるフライングキャパシタの電圧制御法について説明する。 図12に示すように、第1基本セルCell1では、第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点を流れる電流Id1を検出する。第2フライングキャパシタC2を有するもう一方の第2基本セルCell2でも同様に、第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8を流れる電流Id2を検出する。
【0006】
図12中の破線の矢印は第1フライングキャパシタC1に流れる電流を表す。電流Id1は図12の矢印の向きを正とする。検出した電流Id1を用いる場合、第1フライングキャパシタC1の電圧をVc1、第2フライングキャパシタC2の電圧をVc2、Vc1の指令値およびVc2の指令値をEとすると、Vc1とId1、Vc2とId2、Mode1、Mode2の関係はそれぞれ表1、表2に示すようになる。
【0007】
【表1】
【0008】
【表2】
【0009】
表1では、Vc1-E>0の時に「1」、Vc1-E≦0の時に「0」となる。Id1>0の時に「1」、Id1≦0の時に「0」となる。表1の選択信号Aが「1」(Mode2)のときに、第1基本セルCell1の第2,第3半導体スイッチSf2、Sf3をオンする。選択信号Aが「0」(Mode1)のときに、第1基本セルCell1の第1,第4半導体スイッチSf1、Sf4をオンする。
【0010】
表2では、Vc2-E>0の時に「1」、Vc2-E≦0の時に「0」となる。Id2>0の時に「1」、Id2≦0の時に「0」となる。表2の選択信号Bが「1」(Mode2)のときに、第2基本セルCell2の第6,第7半導体スイッチSf6、Sf7をオンする。選択信号Bが「0」(Mode1)のときに、第2基本セルCell2の第5,第8半導体スイッチSf5、Sf8をオンする。
【0011】
この真理値表通りにMode1、Mode2のパターンを選択することで第1,第2フライングキャパシタC1,C2の電圧Vc1、Vc2を指令値Eに制御することが可能となる。例えば、表1の最上位の行の状態(Vc1-E≦0、Id1<0)では、Id<0の電流極性で第1フライングキャパシタC1を充電する必要がある。そこで、図12に示すようなMode2(充電)が選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2015-47056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、図11の回路は共通モジュール1のスイッチングパターンMode1,Mode2を切り替える際に電流が流れている場合、半導体スイッチの特性などに起因して、 図13の点線丸部のように共通モジュール1の半導体スイッチ(Sf1など)のスイッチング時に電流と電圧が重なり、スイッチング損失(ターンオン損失とターンオフ損失)が発生する。
【0014】
したがって、共通モジュール1の損失が増大し、電力変換装置の効率の悪化、冷却器の大型化を引き起こすという問題があった。
【0015】
以上示したようなことから、フライングキャパシタを有するマルチレベル電力変換装置において、スイッチング損失を低減し、装置の小型化、高効率化を図ることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、第1基本セルと第2基本セルを有する各相共通の共通モジュールと、1相以上の相モジュールと、を備え、直流-交流変換、または、交流-直流変換を行うマルチレベル電力変換装置であって、前記第1基本セルは、第1直流リンクキャパシタと、前記第1直流リンクキャパシタの正極端に一端が接続された第1半導体スイッチと、前記第1直流リンクキャパシタの負極端に一端が接続された第2半導体スイッチと、前記第1半導体スイッチの他端と前記第2半導体スイッチの他端との間に接続された第1フライングキャパシタと、前記第1フライングキャパシタに直列接続された第1リアクトルと、前記第1半導体スイッチの他端と前記第2半導体スイッチの他端との間に直列接続された第3,第4半導体スイッチと、を有し、前記第2基本セルは、前記第1直流リンクキャパシタに直列接続された第2直流リンクキャパシタと、前記第2直流リンクキャパシタの正極端に一端が接続された第5半導体スイッチと、前記第2直流リンクキャパシタの負極端に一端が接続された第6半導体スイッチと、前記第5半導体スイッチの他端と前記第6半導体スイッチの他端との間に接続された第2フライングキャパシタと、前記第2フライングキャパシタに直列接続された第2リアクトルと、前記第5半導体スイッチの他端と前記第6半導体スイッチの他端との間に直列接続された第7,第8半導体スイッチと、を有し、前記相モジュールは、前記第1半導体スイッチの一端、および、前記第3,第4半導体スイッチの共通接続点、および、前記第2,第5半導体スイッチの共通接続点、および、前記第7,第8半導体スイッチの共通接続点、および、前記第6半導体スイッチの一端と、交流端子との間にそれぞれスイッチングデバイスを有し、前記スイッチングデバイスをON,OFFすることにより、前記各端子の電圧を選択的に出力することを特徴とする。
【0017】
また、その一態様として、下記表1、表2に基づいて前記第1,第2基本セルの各Modeを選択し、前記第1基本セルのMode1の時は、前記第1,第4半導体スイッチをオン、前記第2,第3半導体スイッチをオフとし、前記第1基本セルのMode2の時は、前記第2,第3半導体スイッチをオン、前記第1,第4半導体スイッチをオフとし、前記第2基本セルのMode1の時は、前記第5,第8半導体スイッチをオン、前記第6,第7半導体スイッチをオフとし、前記第2基本セルのMode2の時は、前記第6,第7半導体スイッチをオン、前記第5,第8半導体スイッチをオフとし、各基本セル毎に、Mode1とMode2の切り替え時に、基本セル内のすべての半導体スイッチをオフするデッドタイムTdを設け、前記デッドタイムTdは、以下の(2)式の値とすることを特徴とする。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【数2】
【0021】
Vc1:第1フライングキャパシタの電圧
E:フライングキャパシタの電圧指令値
Id1:第3,第4半導体スイッチの共通接続点の電流
Vc2:第2フライングキャパシタの電圧
Id2:第7,第8半導体スイッチの共通接続点の電流
I0:初期電流値(装置が動作する範囲での最大電流(固定値))
L:第1,第2リアクトルのインダクタンス値。
【0022】
また、他の態様として、前記第3,第4半導体スイッチの共通接続点および前記第7,第8半導体スイッチの共通接続点、もしくは、前記第1,第2リアクトルに直列に電流センサを設け、下記表1、表2に基づいて前記第1,第2基本セルの各Modeを選択し、前記第1基本セルのMode1の時は、前記第1,第4半導体スイッチをオン、前記第2,第3半導体スイッチをオフとし、前記第1基本セルのMode2の時は、前記第2,第3半導体スイッチをオン、前記第1,第4半導体スイッチをオフとし、前記第2基本セルのMode1の時は、前記第5,第8半導体スイッチをオン、前記第6,第7半導体スイッチをオフとし、前記第2基本セルのMode2の時は、前記第6,第7半導体スイッチをオン、前記第5,第8半導体スイッチをオフとし、前記各基本セル毎に、Mode1とMode2の切り替え時に、基本セル内のすべての半導体スイッチをオフするデッドタイムTdを設け、前記デッドタイムTdは以下の(3)式の値とすることを特徴とする。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【数3】
【0026】
Vc1:第1フライングキャパシタの電圧
E:フライングキャパシタの電圧指令値
Id1:第3,第4半導体スイッチの共通接続点の電流
Vc2:第2フライングキャパシタの電圧
Id2:第7,第8半導体スイッチの共通接続点の電流
I0:初期電流値(電流センサで検出した値)
L:第1,第2リアクトルのインダクタンス値。
【0027】
また、その一態様として、前記第1基本セルがMode2からMode1へ移行する場合、デッドタイム後、かつ、Mode1の前に、下記表3に示す前記第1,第2、第3,第4半導体スイッチのスイッチングパターンを追加し、前記第1基本セルがMode1からMode2へ移行する場合、デッドタイム後、かつ、Mode2の前に、下記表3に示す前記第1,第2、第3,第4半導体スイッチのスイッチングパターンを追加し、前記第2基本セルがMode2からMode1へ移行する場合、デッドタイム後、かつ、Mode1の前に、下記表4に示す前記第5,第6、第7,第8半導体スイッチのスイッチングパターンを追加し、前記第2基本セルがMode1からMode2へ移行する場合、デッドタイム後、かつ、Mode2の前に、下記表4に示す前記第5,第6、第7,第8半導体スイッチのスイッチングモードを追加することを特徴とする。
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
Id1:第3,第4半導体スイッチの共通接続点の電流
Id2:第7,第8半導体スイッチの共通接続点の電流
Sf1~Sf8:第1~第8半導体スイッチ 。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、フライングキャパシタを有するマルチレベル電力変換装置において、スイッチング損失を低減し、装置の小型化、高効率化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施形態1におけるマルチレベル電力変換装置の回路図。
図2】実施形態1における半導体スイッチのゲート信号と半導体スイッチの電圧と電流の波形を示すタイムチャート。
図3】実施形態1におけるスイッチングパターンの遷移を示す図。
図4】実施形態1におけるスイッチングパターンの遷移を示す図。
図5】実施形態2におけるマルチレベル電力変換装置の回路図。
図6】実施形態2におけるスイッチングパターンの遷移を示す図。
図7】実施形態2における半導体スイッチのゲート信号と半導体スイッチの電圧と電流の波形を示すタイムチャート。
図8】実施形態3におけるスイッチングパターンの遷移を示す図。
図9】実施形態3におけるスイッチングパターンの遷移を示す図。
図10】実施形態3における半導体スイッチのゲート信号と半導体スイッチの電圧と電流の波形を示すタイムチャート。
図11】従来のマルチレベル電力変換装置の一例を示す回路図。
図12】基本セルのスイッチングモードを示す図。
図13】従来技術における半導体スイッチのゲート信号と半導体スイッチの電圧と電流の波形を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本願発明におけるマルチレベル電力変換装置の実施形態1~3を図1図10に基づいて詳述する。
【0034】
[実施形態1]
図1に本実施形態1におけるマルチレベル電力変換装置の回路構成を示す。本実施形態1におけるマルチレベル電力変換装置は、各相共通の共通モジュール1と、1相以上の相モジュール2と、各相共通のスナバ回路3と、を備え、直流-交流変換、または、交流-直流変換を行う。なお、図1では、簡略化して相モジュール2を1相分のみ示している。
【0035】
共通モジュール1は、直列接続された第1,第2直流リンクキャパシタCDC1,CDC2を有する。第1直流リンクキャパシタCDC1の正極端に第1半導体スイッチSf1の一端が接続される。第1直流リンクキャパシタCDC1の負極端に第2半導体スイッチSf2の一端が接続される。第1半導体スイッチSf1の他端と第2半導体スイッチSf2の他端との間に第1フライングキャパシタC1と第1リアクトルL1が直列接続される。
【0036】
第1半導体スイッチSf1の他端と第2半導体スイッチSf2の他端との間に第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4が直列接続される。ここで、第1~第4半導体スイッチSf1~Sf4,第1リアクトルL1,第1フライングキャパシタC1を第1基本セルCell1とする。
【0037】
第2直流リンクキャパシタCDC2の正極端に第5半導体スイッチSf5の一端が接続される。第2直流リンクキャパシタCDC2の負極端に第6半導体スイッチSf6の一端が接続される。第5半導体スイッチSf5の他端と第6半導体スイッチSf6の他端との間に第2フライングキャパシタC2と第2リアクトルL2が直列接続される。
【0038】
第5半導体スイッチSf5の他端と第6半導体スイッチSf6の他端との間に第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8が直列接続される。ここで、第5~第8半導体スイッチSf5~Sf8,第2リアクトルL2,第2フライングキャパシタC2を第2基本セルCell2とする。
【0039】
なお、図1では、第1,第2リアクトルL1,L2を第1,第5半導体スイッチSf1,Sf5側、第1,第2フライングキャパシタC1,C2を第2,第6半導体スイッチSf2,Sf6側に接続した構成を示しているが、第1,第2リアクトルL1,L2と第1,第2フライングキャパシタC1,C2の接続位置は逆でも良い。
【0040】
相モジュール2は、第1半導体スイッチSf1の一端と第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点との間に第1,第2スイッチングデバイスS1,S2が直列接続される。
【0041】
第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8の共通接続点と第6半導体スイッチSf6の一端との間に第7,第8スイッチングデバイスS7,S8が直列接続される。第1,第2スイッチングデバイスS1,S2の共通接続点と、第7,第8スイッチングデバイスS7,S8の共通接続点との間に第3,第4,第5,第6スイッチングデバイスS3,S4,S5,S6が直列接続される。
【0042】
第3,第4スイッチングデバイスS3,S4の共通接続点と第5,第6スイッチングデバイスS5,S6の共通接続点との間に第5,第6ダイオードD5,D6が直列接続される。なお、この第5,第6ダイオードD5,D6は、第9,第10スイッチングデバイス(IGBT等)に置き換えても良い。
【0043】
スナバ回路3は、第1半導体スイッチSf1の一端と第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点との間に第1スナバコンデンサCf1と第1スナバダイオードD1が直列接続される。第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点と第2半導体スイッチSf2の一端との間に第2スナバダイオードD2と第2スナバコンデンサCf2が直列接続される。第1スナバコンデンサCf1と第1スナバダイオードD1の共通接続点と第2スナバダイオードD2と第2スナバコンデンサCf2の共通接続点との間に第1抵抗Rf1が接続される。
【0044】
第5半導体スイッチSf5の一端と第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8の共通接続点との間に第3スナバコンデンサCf3と第3スナバダイオードD3が直列接続される。第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8の共通接続点と第6半導体スイッチSf6の一端との間に第4スナバダイオードD4と第4スナバコンデンサCf4が接続される。第3スナバコンデンサCf3と第3スナバダイオードD3の共通接続点と第4スナバダイオードD4と第4スナバコンデンサCf4の共通接続点との間に第2抵抗Rf2が接続される。
【0045】
第2,第5半導体スイッチSf2,Sf5の共通接続点と第5,第6ダイオードD5,D6(第9,第10スイッチングデバイスS9,S10)の共通接続点とを接続する。第4,第5スイッチングデバイスS4,S5の共通接続点を交流端子とする。
【0046】
なお、図1内の各半導体スイッチ,スイッチングデバイス(またはダイオード)は、複数の半導体スイッチ,スイッチングデバイス(またはダイオード)を直列接続または並列接続する構成としてもよい。
【0047】
図2は、第1~第4半導体スイッチSf1~Sf4のゲート信号および第1半導体スイッチSf1の電圧、電流を示す波形図である。図2図13と比較して、第1半導体スイッチSf1ターンオン時のdi/dt(電流の傾き)がリアクトルLにより抑制されていることがわかる。よって、スイッチング損失が低減される。
【0048】
このような構成により、スナバキャパシタCfの充電電流が流れる際に第1,第2リアクトルL1,L2によって電流iLのdi/dtが抑制されるためターンオン時のスイッチング損失を低減できる。
【0049】
図3図4に、Mode1,Mode2切換時における本実施形態1の回路動作例を示す。図3は第1リアクトルL1の電流初期値I0が負の場合を示しており、図4は、第1リアクトルL1の電流初期値I0が正の場合を示している。ここで、図3図4中の網掛けの素子は導通中の半導体スイッチ、スイッチングデバイスを表している。
【0050】
図3(a)は、定常時において、Mode1、出力電圧がEの場合を示している。具体的には、第1,第4半導体スイッチSf1,Sf4,第2,第3,第4スイッチングデバイスS2,S3,S4がONとなっている。そして、第1直流リンクキャパシタCDC1→第1半導体スイッチSf1→第1リアクトルL1→第1フライングキャパシタC1→第4半導体スイッチSf4→第2スイッチングデバイスS2→第3スイッチングデバイスS3→第4スイッチングデバイスS4の経路で電流が流れる。
【0051】
図3(b)は、デッドタイム時を示している。この時、第1基本セルCell1内の半導体スイッチはOFFとなる。第1リアクトルL1に蓄えられたエネルギーは、第1フライングキャパシタC1→第4半導体スイッチSf4のフリーホイールダイオード→第3半導体スイッチSf3のフリーホイールダイオードの経路で流れる。
【0052】
図3(c)は、スイッチング切り替え後のMode2、出力電圧Eの場合を示している。具体的には、第2,第3半導体スイッチSf2,Sf3,第2,第3,第4スイッチングデバイスS2,S3,S4がONとなっている。第2半導体スイッチSf2→第1フライングキャパシタC1→第1リアクトルL1→第3半導体スイッチSf3→第2スイッチングデバイスS2→第3スイッチングデバイスS3→第4スイッチングデバイスS3の経路で電流が流れる。
【0053】
図4(a)は、定常時において、Mode1、出力電圧がEの場合を示している。具体的には、第1,第4半導体スイッチSf1,Sf4,第2,第3,第4スイッチングデバイスS2,S3,S4がONとなっている。そして、第4スイッチングデバイスS4→第3スイッチングデバイスS3→第2スイッチングデバイスS2→第4半導体スイッチSf4→第1フライングキャパシタC1→第1リアクトルL1→第1半導体スイッチSf1→第1直流リンクキャパシタCDC1の経路で電流が流れる。
【0054】
図4(b)は、デッドタイム時を示している。この時、第1基本セルCell1内の半導体スイッチはOFFとなる。第1リアクトルL1に蓄えられたエネルギーは、第1半導体スイッチSf1のフリーホイールダイオード→第1直流リンクキャパシタCDC1→第2半導体スイッチSf2のフリーホイールダイオード→第1フライングキャパシタC1の経路で流れる。
【0055】
図4(c)は、スイッチング切り替え後のMode2、出力電圧Eの場合を示している。具体的には、第2,第3半導体スイッチSf2,Sf3,第2,第3,第4スイッチングデバイスS2,S3,S4がONとなっている。そして、第4スイッチングデバイスS4→第3スイッチングデバイスS3→第2スイッチングデバイスS2→第3半導体スイッチSf3→第1リアクトルL1→第1フライングキャパシタC1→第2半導体スイッチSf2の経路で電流が流れる。
【0056】
図3図4では、第1基本セルCell1について説明したが、第2基本セルCell2も同様である。
【0057】
このように、デッドタイムTdの期間で図3(b)、図4(b)のように動作することで第1,第2リアクトルL1,L2のエネルギーを第1,第2直流リンクキャパシタCDC1,CDC2、第1,第2フライングキャパシタC1,C2に充電することにより第1,第2リアクトルL1,L2の電流を零にする。
【0058】
さらに、各第1,第2基本セルCell1,Cell2において、すべての半導体スイッチがオフになるデッドタイム期間Tdを適切な値に設定する。 次にデッドタイム期間Tdの設計方法について説明する。デッドタイム期間Td中の第1,第2リアクトルL1,L2の放電経路は、電流方向別に図3(b)、図4(b)に示したような第1,第2半導体スイッチSf1,Sf2、または、第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4のフリーホイールダイオードを流れるループとなる。この時、第1,第2リアクトルL1,L2に流れる電流iは電流初期値(放電開始時の電流)をI0とし、第1直流リンクキャパシタCDC1の電圧を2E、第1フライングキャパシタC1の電圧をEとすると、第1リアクトルL1に印加される電圧はEとなる事から、E=Ldi/dtが成り立つ。これを積分すると、以下の(1)と表すことができる。
【0059】
【数1】
【0060】
L:第1,第2リアクトルL1,L2のインダクタンス値
E:第1,第2フライングキャパシタの電圧指令値
したがって、電流iが零となる条件がデッドタイムTdの必要条件となる。よって、必要なデッドタイムTdは、(1)式にi=0を代入することで、以下の(2)式となる。
【0061】
【数2】
【0062】
(2)式のデッドタイムTdを確保することで、共通モジュール1のスイッチング損失を低減できる。
【0063】
この時、装置が動作する範囲での最大電流(固定値)を(2)式の電流初期値I0に設定することで、装置の全運転範囲において(2)式の条件を満たすことができるため、ターンオン時の電流を零にでき、ターンオン損失を低減できる。以上により共通モジュール1のターンオン時に零電流スイッチングが達成でき、共通モジュール1のスイッチング損失が低減できる。
【0064】
以上示したように、本実施形態1によれば、第1,第2フライングキャパシタC1,C2に直列接続された第1,第2リアクトルL1,L2により、di/dtが抑制されるため、ターンオン時のスイッチング損失を低減できる。また、デッドタイムTdを(2)式を満足するように設定することにより、ターンオン時の電流を零にでき、さらにターンオン時のスイッチング損失を低減することができる。その結果、電力変換装置の冷却器の小型化、高効率化を実現す ることが可能となる。
【0065】
[実施形態2]
本実施形態2では共通モジュール1の出力端(第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点、第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8の共通接続点)もしくは第1,第2リアクトルL1,L2に直列に電流センサ4を設けることで第1,第2リアクトルL1,L2に流れている電流値を検出し、運転状態ごとに最適なデッドタイムTd時間を設定する方法を説明する。
【0066】
図5に本実施形態2におけるマルチレベル電力変換装置を示す。実施形態1では(2)式の電流初期値I0に装置が動作する範囲での最大電流(固定値)を設定するため、電流が低い状態でも不必要にデッドタイムTdが長くなってしまう。デッドタイムTdが必要以上に長くなることは、マルチレベル電力変換装置の出力電圧精度の低下につながる。
【0067】
そこで、本実施形態2のように、電流センサ4を用いて第1,第2リアクトルL1,L2の電流初期値I0を検出して、(1)式を変形した(3)式に代入することで、最適なデッドタイムTdを決定することができるようになる。なお、本実施形態2での第1,第2リアクトルL1,L2の電流初期値I0は、デットタイム開始の直前(共通モジュール1のすべての半導体スイッチをオフする直前)に検出する。
【0068】
【数3】
【0069】
以上示したように、本実施形態2によれば、実施形態1と同様の作用効果を奏する。また、電流検出値(電流初期値)I0、電圧指令値Eより(3)式を用いて必要なデッドタイムTdを演算することにより、運転状態に応じた最適なデッドタイムを生成することができる。
【0070】
[実施形態3]
実施形態1、実施形態2では共通モジュール1のデッドタイム期間中に第1,第2リアクトルL1,L2の電流iを零にすることでターンオン時のスイッチング損失を低減していた。また、実施形態2では電流センサ4により第1,第2リアクトルL1,L2に流れる電流iを検出し、第1,第2基本セルCell1,Cell2のデッドタイムTdの大きさが最小となるようにデッドタイムTdを可変とする方法を説明した。
【0071】
しかし、第1,第2リアクトルL1,L2の電流初期値I0が0の場合、スイッチング損失は低減されるが、負荷電流と第1,第2リアクトルL1,L2の電流iが一致するまでは第1,第2リアクトルL1,L2に電圧が印加されるため、図4(c)のようなスイッチング切り替え後に第1,第2リアクトルL1,L2の印加電圧分の電圧降下が電力変換装置の出力電圧にも発生し、出力電圧の誤差となってしまう。
【0072】
特に、図1のようなスナバ回路3を接続している場合、図6図7に示す例のように第1リアクトルL1に印加される電圧VlがE-Vs1となり低くなってしまうため、リアクトル電流iが負荷電流と同じ値になるまで時間がかかる。(Vs1はSf3とSf4の共通接続点の電圧である。)そのため、出力電圧誤差が大きくなる。
【0073】
本実施形態3では、上記の課題を解決するために実施形態2と同様の構成で第1,第2リアクトルL1,L2に流れている電流の方向と大きさを検出し、スイッチングパターンにより第1,第2リアクトルL1,L2の電流iを負荷電流と等しくなるまでの時間を早めることで、出力電圧誤差を低減する。
【0074】
図8図9に、本実施形態3における回路動作例を示す。図8はMode2からMode1への切り替えを示し、図9はMode1からMode2への切り替えを示す。
【0075】
図8(a)は、Mode2の状態を示し、第2,第3半導体スイッチSf2,Sf3がONとなっている。そして、第2半導体スイッチSf2→第1フライングキャパシタC1→第1リアクトルL1→第3半導体スイッチSf3の経路で電流が流れる。
【0076】
図8(b)はデッドタイムの状態を示す。この時、第1リアクトルL1に蓄えられたエネルギーは、第1半導体スイッチSf1のフリーホイールダイオード→第1直流リンクキャパシタCDC1→第2半導体スイッチSf2のフリーホイールダイオード→第1フライングキャパシタC1の経路で電流が流れ、第1リアクトルL1に流れる電流を0にする。
【0077】
図8(c)では、第1,第2半導体スイッチSf1,Sf2をオンする。そしして、第1直流リンクキャパシタCDC1→第1半導体スイッチSf1→第1リアクトルL1→第1フライングキャパシタC1→第2半導体スイッチSf2の経路に強制的に電流を流し、第1リアクトルL1に流れる電流を負荷電流付近まで上昇させる。第1リアクトルL1に印加される電圧VlはVl=2E-E=Eとなる。
【0078】
その後、第1リアクトルL1に流れる電流が負荷電流((3)式で代入したI0)に到達したら、図8(d)に示すように、Mode1へ移行する。Mode1では、第1,第4半導体スイッチSf1,Sf4をオンとする。第1直流リンクキャパシタCDC1→第1半導体スイッチSf1→第1リアクトルL1→第1フライングキャパシタC1→第4半導体スイッチSf1のフリーホイールダイオードの経路で電流が流れる。
【0079】
図9(a)は、Mode1の状態を示し、第1,第4半導体スイッチSf1,Sf4がONとなっている。そして、第1直流リンクキャパシタCDC1→第1半導体スイッチSf1→第1リアクトルL1→第1フライングキャパシタC1→第4半導体スイッチSf1のフリーホイールダイオードの経路で電流が流れる。
【0080】
図9(b)はデッドタイムの状態を示す。この時、第1リアクトルL1に蓄えられたエネルギーは、第1フライングキャパシタC1→第4半導体スイッチSf4のフリーホイールダイオード→第3半導体スイッチSf3のフリーホイールダイオードの経路で電流が流れ、第1リアクトルL1に流れる電流を0にする。
【0081】
図9(c)では、第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4をオンする。そしして、第1リアクトルL1→第3半導体スイッチSf3→第4半導体スイッチSf4→第1フライングキャパシタC1の経路に強制的に電流を流し、第1リアクトルL1に流れる電流を負荷電流付近まで上昇させる。第1リアクトルL1に印加される電圧VlはVl=2E-E=Eとなる。
【0082】
その後、第1リアクトルL1に流れる電流が負荷電流((3)式で代入したI0)に到達したら、図9(d)に示すように、Mode2へ移行する。Mode2では、第2,第3半導体スイッチSf2,Sf3をオンとする。第2半導体スイッチSf2→第1フライングキャパシタC1→第1リアクトルL1→第3半導体スイッチSf3の経路で電流が流れる。
【0083】
図8(c)、図9(c)のようなスイッチングパターンを追加することで第1リアクトルL1に印加される電圧をEとし、この期間中に第1リアクトルL1に流れる電流を強制的に負荷電流((3)式で代入したI0)まで上昇させる。
【0084】
図8のようにMode2からMode1への切り替えの場合、第1リアクトルL1の電流が零になってから第1半導体スイッチSf1,Sf2をオンさせ電流を流し、第1リアクトルL1の電流と負荷電流を等しくする。この時、第1半導体スイッチSflは図8(c)のリアクトル電流(すなわちSflの電流)が零のときにターンオンしているため、ターンオン損失は発生しない。第4半導体スイッチSf4は電流方向からフリーホイールダイオードを導通するため、ターンオン損失は発生しない。
【0085】
図9のようにMode1からMode2への切り替えの場合、第1リアクトルL1の電流が零になってから第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4をオンさせ、第1リアクトルL1の電流と負荷電流を等しくする。この時、第3半導体スイッチSf3は図9(c)のリアクトル電流(すなわちSf3の電流)が零のときにターンオンしているため、ターンオン損失は発生しない。第2半導体スイッチSf2は電流方向からフリーホイールダイオードを導通するため、ターンオン損失は発生しない。
【0086】
なお、図8図9は、第1基本セルの第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点を流れる電流Id1が正のときの動作である。Id1が負のときは、図8(c)および図9(c)でオンする半導体スイッチが異なる。
【0087】
第2基本セルにおいても同様で、第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8の共通接続点を流れる電流Id2の極性によって、オンする半導体スイッチが異なる。
【0088】
表3、表4に、図8(c)および図9(c)のモード時でのスイッチングパターンを示す。
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
表3では、Id1>0の時に「1」、Id1≦0の時に「0」となる。Sf1が「1」のときに、第1基本セルCell1の第1半導体スイッチSf1をオンする。Sf1が「0」のときに、第1基本セルCell1の第1半導体スイッチSf1をオフする。Sf2、Sf3、Sf4についても同様である。
【0092】
表4では、Id2>0の時に「1」、Id2≦0の時に「0」となる。Sf5が「1」のときに、第2基本セルCell2の第5半導体スイッチSf5をオンする。Sf5が「0」のときに、第2基本セルCell2の第5半導体スイッチSf5をオフする。Sf6、Sf7、Sf8についても同様である。
【0093】
以上のようにスイッチングパターンにより第1,第2リアクトルL1,L2に印加される電圧を調整し、電流の傾きを急峻にすることでリアクトル電流が負荷電流と等しくなるまでの時間を短縮できるため、電力変換装置の出力電圧誤差を低減することができる。さらに実施形態1、2と同様に、ターンオン損失を低減できる。
【0094】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0095】
例えば、実施形態1~3では、スナバ回路3を備えた回路を説明しているが、スナバ回路3は図1以外の回路構成でも良いし、スナバ回路3を省略しても良い。
【0096】
また、実施形態1~3では、特定の回路構成の相モジュール2を示しているが、相モジュール2は、第1半導体スイッチSf1の一端、および、第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点、および、第2,第5半導体スイッチSf2,Sf5の共通接続点、および、第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8の共通接続点、および、第6半導体スイッチSf6の一端と、交流端子との間にスイッチングデバイスを有し、スイッチングデバイスをON,OFFすることにより、各端子の電圧を選択的に出力する構成であれば、その他の回路構成でも良い。
【符号の説明】
【0097】
1…共通モジュール
2…相モジュール
3…スナバ回路
4…電流センサ
Cell1,Cell2…第1,第2基本セル
DC1,CDC2…第1,第2直流リンクキャパシタ
Sf1~Sf8…第1~第8半導体スイッチ
S1~S8…第1~第8スイッチングデバイス
L1,L2…第1,第2リアクトル
C1,C2…第1,第2フライングキャパシタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13