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特許7021624直列多重電力変換装置およびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】直列多重電力変換装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20220209BHJP
   H02M 7/797 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/797
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018179634
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020054072
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】大井 一伸
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140858(JP,A)
【文献】特開2014-100026(JP,A)
【文献】特開2000-324845(JP,A)
【文献】米国特許第05642275(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
H02M 7/797
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各相においてブリッジセルのユニットを複数直列接続して構成され、三相交流の系統電源と連系する直列多重電力変換装置であって、
前記各ユニットごとに、電圧指令値と、少なくとも前記電圧指令値の1周期の間一定の値をとる2種類のゲート閾値と、を比較してスイッチング素子のゲート信号を生成するパルス幅変調回路を備え、
1相あたりの前記各ユニット内の前記ゲート閾値はすべて異なる値をとり、
前記ゲート閾値を周期的に切り替え、
前記ゲート閾値の切替周期は前記電圧指令値の周期の整数倍とすることを特徴とする直列多重電力変換装置。
【請求項2】
前記電圧指令値のプラス側のピーク時に前記ゲート閾値を切り替えることを特徴とする請求項1記載の直列多重電力変換装置。
【請求項3】
前記ブリッジセルとして第1ユニットと第2ユニットとを各相に備え、
前記第1ユニットのゲート閾値Vth1aとVth1bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、
前記第2ユニットのゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、
前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bは、以下の表1に示す大小関係となることを特徴とする請求項2記載の直列多重電力変換装置。
【表1】
p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
【請求項4】
前記ブリッジセルとして、第1ユニットと第2ユニットと第3ユニットと第4ユニットとを各相に備え、
前記第1ユニットの前記ゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、
前記第2ユニットの前記ゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、
前記第3ユニットの前記ゲート閾値のVth3aとVth3bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、
前記第4ユニットの前記ゲート閾値のVth4aとVth4bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、
前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2b、Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bは、以下の表2に示す大小関係となることを特徴とする請求項2記載の直列多重電力変換装置。
【表2】
p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
【請求項5】
前記ブリッジセルとして、第1ユニットと第2ユニットと第3ユニットと第4ユニットとを各相に備え、
前記第1ユニットの前記ゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに符号が反対の値であり、
前記第2ユニットの前記ゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに符号が反対の値であり、
前記第3ユニットの前記ゲート閾値のVth3aとVth3bは、互いに符号が反対の値であり、
前記第4ユニットの前記ゲート閾値のVth4aとVth4bは、互いに符号が反対の値であり、
すべての入力信号pにおいて、|Vth1a-Vth1b|と|Vth2a-Vth2b|と|Vth3a-Vth3b|と|Vth4a-Vth4b|は一定値であり
前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2b、Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bは、以下の表3に示す大小関係となることを特徴とする請求項2記載の直列多重電力変換装置。
【表3】
p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
【請求項6】
各相においてブリッジセルのユニットを複数直列接続して構成され、三相交流の系統電源と連系する直列多重電力変換装置の制御方法であって、
前記各ユニットごとに、電圧指令値と、少なくとも前記電圧指令値の1周期の間一定の値をとる2種類のゲート閾値と、を比較して、スイッチング素子のゲート信号を生成し、
1相あたりの前記各ユニット内の前記ゲート閾値はすべて異なる値をとり、
前記ゲート閾値を周期的に切り替え、
前記ゲート閾値の切替周期は前記電圧指令値の周期の整数倍とすることを特徴とする直列多重電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流の系統に連系するシングルスター・ブリッジセル(SSBC)のモジュラー・マルチレベル・カスケード変換器(MMCC)に係り、特に、各ユニットの損失による熱責務を均等化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、周波数が50Hzもしくは60Hzの系統電源と連系し、ブリッジセルBを3台直列接続してMMCCの1相を構成した電力変換装置の例が開示されている。
【0003】
図8に1相あたりブリッジセルBを2台直列接続した電力変換装置の構成を示す。図8に示すように、ブリッジセルB(ユニット11)は4つのスイッチング素子U1,V1,X1,Y1とコンデンサC1によって構成される。
【0004】
電圧指令値Vrefをキャリア三角波ではなく、固定のゲート閾値と比較しゲート信号を得る方法がある。電圧指令値と固定のゲート閾値とを比較すると基本波1周期あたりワンパルスの駆動となる。特許文献1は、基本波1周期あたりワンパルスでの駆動を特徴としている。図9にブリッジセルB2台構成におけるワンパルスでの駆動波形を示す。
【0005】
また、図9の例では、固定のゲート閾値Vth1a、Vth1b、Vth2a、Vth2bとゲート信号GU1、GX1、GV1、GY1、GU2、GX2、GV2、GY2(すなわち、スイッチング素子のオンオフ状態)の関係を以下のように割り当てている。
【0006】
・Vref>Vth1aならばスイッチング素子U1をON、スイッチング素子X1をOFF、Vref<Vth1aならばスイッチング素子U1をOFF、スイッチング素子X1をON。
【0007】
・Vref>Vth2aならばスイッチング素子U2をON、スイッチング素子X2をOFF、Vref<Vth2aならばスイッチング素子U2をOFF、スイッチング素子X2をON。
【0008】
・Vref>Vth2bならばスイッチング素子Y2をON、スイッチング素子V2をOFF、Vref<Vth2bならばスイッチング素子Y2をOFF、スイッチング素子V2をON。
【0009】
・Vref>Vth1bならばスイッチング素子Y1をON、スイッチング素子V1をOFF、Vref<Vth1bならばスイッチング素子Y1をOFF、スイッチング素子V1をON。
【0010】
なお、各ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bと電圧指令値Vrefが同値の場合は、2つのスイッチング素子のうちどちらをONとし、どちらをOFFとしても良い。
【0011】
この動作により、第1,第2ユニット11,12の出力電圧Vo1、Vo2、合計出力電圧Voとして図9の波形が得られる。図9は第1,第2ユニット11,12を2台直列接続した構成であるが、ユニットを複数多重接続し、ゲート閾値も複数用意すれば正弦波に近い合計出力電圧Voが得られる。
【0012】
また、各スイッチング素子は出力電圧の基本波1周期に対して最大1回(ターンオン1回、ターンオフ1回)のスイッチングとなるため、周波数の高いキャリア三角波と電圧指令値を比較してゲート信号を生成する方式よりもスイッチング回数が少なくなって、スイッチング損失を低減できる。
【0013】
図8の構成では、ユニットの直流部分にコンデンサのみが接続されているため、無効電力のみを扱うことができる。そのため、無効電力補償装置として使用される。しかし、ユニットの直流部分にバッテリーやその他電力変換装置を接続すれば、有効電力を入出力する装置としても使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2014-100026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、図9に示されるゲート信号生成方法では各ユニットで発生する損失が大きくばらつく問題点がある。図10にこのような例を示す。
【0016】
図10では電圧指令値Vrefの振幅が図9よりも小さく、電圧指令値Vrefの絶対値はゲート閾値Vth1a,Vth1bの絶対値よりも小さい。このとき、スイッチング素子X1とスイッチング素子Y1は常時ONとなり導通損のみが発生する。スイッチング素子U1とスイッチング素子V1は常時OFFであり損失は零である。スイッチング素子U2,V2,X2,Y2は導通損とスイッチング損の両方が発生する。
【0017】
ただし、出力電圧Vo2が零の期間では必ずスイッチング素子X2,Y2がONするため、電流がスイッチング素子X2,Y2を通過する時間はスイッチング素子U2,V2の時間よりも長くなり、スイッチング素子X2,Y2で発生する導通損もスイッチング素子U2,V2より大きくなる。
【0018】
以上のように、出力電圧によっては各ユニット、各スイッチング素子で発生する損失(導通損とスイッチング損の合計)が大きくばらついてしまう。この場合、損失が最大となるユニットやスイッチング素子に合わせて冷却設計を行うと損失の小さなユニットに対しては設計が過剰となり、コストや装置容積が増加してしまう。
【0019】
一方、ユニットごとに冷却設計を変更すると設計に時間がかかり、ユニットの量産効果が出ずコストの増加、装置の組み立ても複雑になる、といった問題が生じる。
【0020】
さらに、系統連系インバータの場合は瞬低発生時にも運転を継続するフォルド・ライド・スルー(FRT)対応が求められる場合がある。瞬低時には少数のユニットのみスイッチング損失が発生し、残り大半のユニットでは発生するスイッチング損失が零となる。系統が不安定で瞬低の頻度が高い場合、特定のスイッチング素子にのみ熱責務が集中することで熱疲労が発生することになるため、装置の寿命が短くなってしまう。
【0021】
以上示したようなことから、直列多重電力変換装置において、各ユニット,各スイッチング素子で発生する損失を均一にすることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、各相においてブリッジセルのユニットを複数直列接続して構成され、三相交流の系統電源と連系する直列多重電力変換装置であって、前記各ユニットごとに、電圧指令値と、少なくとも前記電圧指令値の1周期の間一定の値をとる2種類のゲート閾値と、を比較してスイッチング素子のゲート信号を生成するパルス幅変調回路を備え、1相あたりの前記各ユニット内の前記ゲート閾値はすべて異なる値をとり、前記ゲート閾値を周期的に切り替え、前記ゲート閾値の切替周期は前記電圧指令値の周期の整数倍とすることを特徴とする。
【0023】
また、その一態様として、前記電圧指令値のプラス側のピーク時に前記ゲート閾値を切り替えることを特徴とする。
【0024】
また、その一態様として、前記ブリッジセルとして第1ユニットと第2ユニットとを各相に備え、前記第1ユニットのゲート閾値Vth1aとVth1bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、前記第2ユニットのゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bは、以下の表1に示す大小関係となることを特徴とする。
【0025】
【表1】
【0026】
p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値。
【0027】
また、他の態様として、前記ブリッジセルとして、第1ユニットと第2ユニットと第3ユニットと第4ユニットとを各相に備え、前記第1ユニットの前記ゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、前記第2ユニットの前記ゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、前記第3ユニットの前記ゲート閾値のVth3aとVth3bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、前記第4ユニットの前記ゲート閾値のVth4aとVth4bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2b、Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bは、以下の表2に示す大小関係となることを特徴とする。
【0028】
【表2】
【0029】
p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値。
【0030】
また、他の態様として、前記ブリッジセルとして、第1ユニットと第2ユニットと第3ユニットと第4ユニットとを各相に備え、前記第1ユニットの前記ゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに符号が反対の値であり、前記第2ユニットの前記ゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに符号が反対の値であり、前記第3ユニットの前記ゲート閾値のVth3aとVth3bは、互いに符号が反対の値であり、前記第4ユニットの前記ゲート閾値のVth4aとVth4bは、互いに符号が反対の値であり、すべての入力信号pにおいて、|Vth1a-Vth1b|と|Vth2a-Vth2b|と|Vth3a-Vth3b|と|Vth4a-Vth4b|は一定値であり前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2b、Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bは、以下の表3に示す大小関係となることを特徴とする。
【0031】
【表3】
【0032】
p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、直列多重電力変換装置において、各ユニット,各スイッチング素子で発生する損失を均一にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施形態1におけるパルス幅変調回路を示すブロック図。
図2】実施形態1におけるゲート閾値および各波形の一例を示すタイムチャート。
図3】実施形態2,3におけるパルス幅変調回路を示すブロック図。
図4】実施形態2におけるゲート閾値および各波形の一例を示すタイムチャート。
図5】閾値切替パターンによるユニットの出力有効電力を示すタイムチャート。
図6】実施形態3におけるゲート閾値および各波形の一例を示すタイムチャート。
図7】実施形態3におけるユニットの出力有効電力を示すタイムチャート。
図8】直列多重電力変換装置の一例を示す回路構成図。
図9】従来技術におけるゲート閾値および各波形の一例を示すタイムチャート。
図10】従来技術において電圧指令値の振幅が小さき時のゲート閾値および各波形の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本願発明における直列多重電力変換装置の実施形態1~3を図1図8に基づいて詳述する。
【0036】
[実施形態1]
本実施形態1は、図8に示す直列多重電力変換装置を例として、各ユニット,各スイッチング素子で発生する損失を均一にする方法を説明する。まず、図8に示す直列多重電力変換装置の構成について説明する。
【0037】
図8に示すように、本実施形態1における直列多重電力変換装置は、各相において、2つの第1ユニット11,21,31と第2ユニット12,22,32を備える。第1ユニット11,21,31はスイッチング素子U1,V1,X1,Y1がブリッジ接続され、第2ユニット12はスイッチング素子U2,V2,X2,Y2がブリッジ接続される。スイッチング素子U1,V1の共通接続点とスイッチング素子X1,Y1の共通接続点との間にコンデンサC1が接続され、スイッチング素子U2,V2の共通接続点とスイッチング素子X2,Y2の共通接続点との間にコンデンサC2が接続される。
【0038】
第1ユニット11,21,31のスイッチング素子U1とスイッチング素子X1の共通接続点はリアクトルLを介して三相交流の系統電源1の各相に接続される。第1ユニット11,21,31のスイッチング素子V1,Y1の共通接続点と第2ユニット12,22,32のスイッチング素子U2,X2の共通接続点が接続される。第2ユニット12,22,32のスイッチング素子V2とスイッチング素子Y2の共通接続点同士は接続される。
【0039】
スイッチング素子U1,X1の共通接続点とスイッチング素子V1,Y1の共通接続点との間を第1ユニット11の出力電圧Vo1とし、スイッチング素子U2,X2の共通接続点とスイッチング素子V2,Y2の共通接続点との間を第2ユニット12の出力電圧Vo2とする。また、第1ユニット11のスイッチング素子U1,X1の共通接続点と、第2ユニット12のスイッチング素子V2,Y2の共通接続点との間を合計出力電圧Voとする。
【0040】
図1に実施形態1のパルス幅変調回路のブロック図を示す。 入力信号pは、ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に増加する信号である。入力信号pは、図2に示す波形の横軸(時間軸)に対応する。
【0041】
テーブル2は、入力信号pを入力し、予め保存された入力信号pに対応したゲート閾値Vth1aを参照し、出力する。
【0042】
加算器1a,1b,1cは、入力信号pに固定のオフセット値1/2,1/4,3/4をそれぞれ加算する。テーブル2は、入力信号p+1/2,p+1/4,p+3/4を入力し、入力信号p+1/2,p+1/4,p+3/4の小数点以下の数値を参照し、対応したゲート閾値Vth1b,Vth2a,Vth2bを出力する。テーブル2自体はゲート閾値Vth1aを算出するテーブル2と同一であり、入力信号のみがp,p+1/2,p+1/4,p+3/4と異なる。
【0043】
Vth1a,Vth1bは第1ユニット11用のゲート閾値である。Vth2a,Vth2bは第2ユニット12用のゲート閾値である。
【0044】
電圧指令値Vrefは予め振幅・周波数の決められた正弦波などが与えられる場合や、出力電圧や出力電流を指令値通りにするフィードバック制御によって得られる場合がある。
【0045】
減算器3a~3dは、電圧指令値Vrefとゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bとの差をそれぞれ演算する。
【0046】
比較器4a~4dは、減算器3a~3dの演算結果を入力し、0と比較する。ただし、比較器4a,4cと比較器4b,4dとで大小関係が異なる。
【0047】
比較器4aは、減算器3aの演算結果が0よりも大きいとき、すなわち、Vref>Vth1aのとき1を出力し、Vref≦Vth1aのとき0を出力する。比較器4bは、減算器3bの演算結果が0よりも小さいとき、すなわち、Vref<Vth1bのとき1を出力し、Vref≧Vth1bのとき0を出力する。比較器4cは、減算器3cの演算結果が0よりも大きいとき、すなわち、Vref>Vth2aのとき1を出力し、Vref≦Vth2aのとき0を出力する。比較器4dは、減算器3dの演算結果が0よりも小さいとき、すなわち、Vref<Vth2bのとき1を出力し、Vref≧Vth2bのとき0を出力する。
【0048】
デッドタイム処理器5a~5dは、比較器4a~4dの出力を入力とし、デッドタイムを付加してゲート信号GU1,GX1,GV1,GY1,GU2,GX2,GV2,GY2を生成する。なお、GU1、GX1、GV1、GY1、GU2、GX2、GV2、GY2は、図13のスイッチング素子U1、X1、V1、Y1、U2、X2、V2、Y2のゲート信号である。
【0049】
本実施形態1におけるテーブルの内容を図2に示す。図2では、横軸を入力信号p、縦軸を出力するゲート閾値Vthとしている。入力信号pに対応するゲート閾値Vth1aを太い実線で、入力信号p+1/2に対応するゲート閾値Vth1bを破線で示している。同様に、入力信号p+1/4に対応するゲート閾値Vth2aを太い実線で、入力信号p+3/4に対応するゲート閾値Vth2bを破線で示している。
【0050】
図2の波形では、0<p<2の範囲を示している。入力信号pが図2の範囲外の場合でも、nが整数ならばゲート閾値Vthの波形はVth(n+p)=Vth(p)が成立する周期性のあるものである。
【0051】
図2では、Vth1a=-Vth1b、Vth2a=-Vth2bの関係にある。
【0052】
下記の表1は、図2において電圧指令値Vrefの周期と各ゲート閾値の大小関係を示した表である。
【0053】
【表1】
【0054】
図2や表1からわかるように、各ゲート閾値は少なくとも電圧指令値Vrefの1周期の間一定の値をとっている。
【0055】
本実施形態1は、ゲート信号生成のために電圧指令値Vrefと比較するゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bを周期的に変化させることで、ゲート信号を他のユニットのものに切り替え、ユニットで生じる損失を均一にするものである。
【0056】
図2に本実施形態1によって得られる各スイッチング素子のゲート信号GU1,GX1,GV1,GY1,GU2,GX2,GV2,GY2、ユニットの出力電圧Vo1,Vo2を併せて示す。各ゲート信号が1のとき、対応するスイッチング素子がON状態となる。各ゲート信号が0のとき、対応するスイッチング素子がOFF状態となる。
【0057】
各ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bは、電圧指令値Vrefが最大(プラス側のピーク)となる位相のタイミングで変化させる。ゲート閾値Vth1aとゲート閾値Vth1bの大小関係を周期的に反転させることにより、すべてのスイッチング素子のON時間を揃え、導通損を等しくする。
【0058】
スイッチング損失についても、出力電圧の基本波1周期の単位でスイッチング動作を行うスイッチング素子を入れ替えているため、特定のスイッチング素子が特定の位相でのみスイッチングすることを避けることができる。動作が定常状態であり電圧指令値Vref,出力電流の波形が変化しなければ、任意の条件で全てのスイッチング素子U1,V1,X1,Y1,U2,V2,X2,Y2のスイッチング損失を揃えることができる。
【0059】
図2では、電圧指令値Vrefの振幅が絶対値最大のゲート閾値に比べて小さいため、合計出力電圧Voの波形は図10と同じ3レベルである。電圧指令値Vrefの振幅が絶対値最大のゲート閾値に比べて大きい場合は、合計出力電圧Voの波形は図9のように5レベルとなる。この条件でも、全てのスイッチング素子のスイッチング損失を揃えることができる。
【0060】
以上示したように、本実施形態1によれば、各ユニット、各スイッチング素子で発生する損失を均一にすることができる。これにより直列多重電力変換装置の熱設計が容易になり、また負荷変動時に特定のユニットのみ温度が大きく変動するといった事態がなくなるため、スイッチング素子やユニットの熱疲労を防ぐことができる。
【0061】
これにより、直列多重電力変換装置を長寿命化できる。さらに損失の均一化によって、損失の小さいユニットに対しての過剰設計がなくなり、直列多重電力変換装置の低コスト化、小型化を図ることができる。また、各ユニット出力電力責務を均一にすることもできる。
【0062】
[実施形態2]
本実施形態2は各相において、ブリッジセルBを4直列多重接続に拡張したものである。実施形態1では各相に第1,第2ユニットが設けられたが、本実施形態2では、各相に第1~第4ユニットが設けられる。図3に本実施形態2のパルス幅変調回路のブロック図を示す。実施形態1と同様の箇所は同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
加算器1d,1e,1f,1gは、入力信号pに1/8,5/8,3/8,7/8をそれぞれ加算する。テーブル2は、入力信号p+1/8,p+5/8,p+3/8,p+7/8を入力し、入力信号p+1/8,p+5/8,p+3/8,p+7/8の小数点以下の数値を参照し、対応したゲート閾値Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bを出力する。
【0064】
減算器3e~3hは、電圧指令値Vrefとゲート閾値Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bとの差をそれぞれ演算する。比較器4e~4hは、減算器3e~3hの演算結果を入力し、0と比較する。ただし、比較器4e,4gと比較器4f,4hとで大小関係が異なる。
【0065】
比較器4eは、減算器3eの演算結果が0よりも大きいとき、すなわち、Vref>Vth3aのとき1を出力し、Vref≦Vth3aのとき0を出力する。比較器4fは、減算器3fの演算結果が0よりも小さいとき、すなわち、Vref<Vth3bのとき1を出力し、Vref≧Vth3bのとき0を出力する。比較器4gは、減算器3gの演算結果が0よりも大きいとき、すなわち、Vref>Vth4aのとき1を出力し、Vref≦Vth4aのとき0を出力する。比較器4hは、減算器3hの演算結果が0よりも小さいとき、すなわち、Vref<Vth4bのとき1を出力し、Vref≧Vth4bのとき0を出力する。
【0066】
デッドタイム処理器5e~5hは、比較器4e~4hの出力を入力とし、デッドタイムを付加してゲート信号GU3,GX3,GV3,GY3,GU4,GX4,GV4,GY4を生成する。なお、GU3、GX3、GV3、GY3、GU4、GX4、GV4、GY4は、第3ユニットのスイッチング素子U3、X3、V3、Y3、第4ユニットのU4、X4、V4、Y4のゲート信号である。
【0067】
本実施形態2におけるテーブルの内容を図4に示す。各相においてユニットが4台に増加したため出力するゲート閾値Vthも8つの値をとる。これら8つの値を入力信号pに応じて周期的に切り替え、ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2b,Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bとして出力する。
【0068】
図4では、ゲート閾値Vth1a,Vth2a,Vth3a,Vth4aを実線,ゲート閾値Vth1b,Vth2b,Vth3b,Vth4bを破線で示している。また、Vth1a=-Vth1b、Vth2a=-Vth2b、Vth3a=-Vth3b、Vth4a=-Vth4bの関係にある。
【0069】
以下の表2は、図4において電圧指令値Vrefの周期と各ゲート閾値の大小関係を示した表である。
【0070】
【表2】
【0071】
本実施形態2には、有効電力の入出力時においてユニットのコンデンサ容量を低減する効果もある。図5を用いてこの効果を用いて説明する。
【0072】
図5上から2番目の波形は、図4の出力電圧Vo1と同じ波形を示している。
【0073】
一方、別のゲート閾値Vth(p)として、図5上から3番目の波形に示すように0<p<4/8ではVth(p)を単調減少、4/8<p<1ではVth(p)を単調増加とする方法も考えられる。このゲート閾値により生成された第1ユニット11の出力電圧をVo1’とする。
【0074】
ユニットは有効電力を出力している場合を考え、出力電流Ioを図5上から5番目の波形(電圧指令値Vrefと同位相の正弦波)とする。ユニットの出力電力は、Po1=Vo1×Io1,Po1’=Vo1’×Io1で求めることができる。図5に出力電力Po1と出力電力Po1’の波形を示す。
【0075】
出力電力Po1’を見ると、パルスAの幅が最も小さく(零である)、パルスBの幅が最も大きい。パルスAからパルスBの変化に基本波2周期、パルスBからパルスAの変化に基本波2周期かかり、出力電力の脈動周期は基本波4周期である。
【0076】
一方、出力電力Po1はパルスAからパルスBの変化の途中にパルスC,パルスDをはさむ。パルスAからパルスCへの変化ではパルス幅が増加し、パルスCからパルスDへの変化ではパルス幅は減少し、パルスDからパルスBへの変化ではパルス幅は増加し、パルスBからパルスAへの変化ではパルス幅は減少する。パルスA→パルスC,パルスC→パルスD,パルスD→パルスBの変化はそれぞれ基本波1周期かかり、出力電力の脈動周期は基本波2周期となる。
【0077】
コンデンサのインピーダンス(=1/2πfC、f:周波数、C:コンデンサ容量)は周波数に反比例するため、電力脈動の周期が小さいほどインピーダンスが小さくなってコンデンサ電圧脈動を小さくすることができる。よって、許容するコンデンサ電圧脈動が同じ大きさならば、出力電力Po1’(Vo1’)よりも出力電力Po1(Vo1)の場合の方がコンデンサ容量を小さくすることができる。
【0078】
すなわち、出力電力Po1(Vo1)を出力する本実施形態2のゲート閾値テーブルのパターンは出力電力Po1’(Vo1’)を出力するパターンよりも、コンデンサ容量を低減できる効果を備えている。
【0079】
以上示したように、本実施形態2によれば、実施形態1と同等の効果を得ることができる。また、本実施形態2は出力電力脈動の周期を短くできるため、セルコンデンサ容量を削減することができ、直列多重電力変換装置の小型化・低コスト化を図ることができる。
【0080】
なお、本実施形態2は後述する実施形態3に比べ、各ユニットは零相電圧を出力しないため、絶縁(耐電圧)の設計が容易になる。
【0081】
[実施形態3]
本実施形態3は、主回路構成およびパルス幅変調回路は実施形態2と同一だが、ゲート閾値のテーブル2を別パターンとした例である。本実施形態3におけるテーブル2のパターンを図6に示す。
【0082】
本実施形態3では、常に|Vth(p)-Vth(p+1/2)|=1が成立するようにした点に特徴がある。つまり、すべての入力信号pにおいて、|Vth1a-Vth1b|と|Vth2a-Vth2b|と|Vth3a-Vth3b|と|Vth4a-Vth4b|を一定値としている。
【0083】
下記の表3は、図6において電圧指令値Vrefの周期と各ゲート閾値の大小関係を示した表である。
【0084】
【表3】
【0085】
図7に本実施形態3におけるユニットの出力有効電力(出力電力)Po1(=Vo×Io)の波形を示す。図5と同様に、出力電流Ioは電圧指令値Vrefと同位相の正弦波とする。
【0086】
本実施形態3における出力有効電力(出力電力)Po1の波形は、幅の大きなパルスと幅の小さなパルス(または幅零のパルス)が交互に並ぶ。この動作により、ユニットの出力電力の脈動は基本波1周期成分のものが中心となるため、許容するコンデンサ電圧脈動が同じ大きさならば、実施形態2よりもコンデンサ容量を小さくすることができる。
【0087】
その反面、ユニットには零相電圧が印加されるため、零相電圧を考慮した絶縁(耐電圧)の設計が求められる。
【0088】
以上示したように、本実施形態3によれば、実施形態1と同等の効果を得ることができる。また、本実施形態3は、実施形態2に比べ出力電力脈動の周期をさらに短くできるため、より小さなコンデンサ容量で装置を構成できる。
【0089】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0090】
実施形態1~3では、ゲート閾値の切替周期(つまり、ゲート閾値が一定値を保つ期間)が電圧指令値Vrefの周期と一致している。ゲート閾値の切替周期を電圧指令値Vrefの周期の整数倍としても、本発明は実施可能である。
【0091】
なお、各実施形態では、直列多重電力変換装置において、代表とする1相のブリッジセルユニットについての制御方法を説明した。残り2相のユニットに対しても、同様の方法でゲート信号を生成する。各相における制御方法の相違点は、電圧指令値Vrefの位相が120°ずつずれている点のみである。
【符号の説明】
【0092】
1a~1g…加算器
2…テーブル
3a~3h…減算器
4a~4h…比較器
5a~5h…デッドタイム処理器
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
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図10