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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】車体上部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
B62D25/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019047328
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020147203
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】清下 大介
(72)【発明者】
【氏名】中村 岳司
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102004016849(DE,A1)
【文献】特開2011-093449(JP,A)
【文献】特開2018-131033(JP,A)
【文献】特開平09-076936(JP,A)
【文献】特開2018-100068(JP,A)
【文献】特開2010-083248(JP,A)
【文献】特開2010-125980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 - 25/08
B62D 25/14 - 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の上部における当該車体の幅方向における両側の部分を構成する一対の第1の構造体と、
前記幅方向に延び、前記一対の第1の構造体と協働してウインドシールドの取付けが可能なウインド開口部の少なくとも一部を画定するように、前記一対の第1の構造体のそれぞれに接合された第2の構造体と、
を備えており、
前記第2の構造体は、
前記一対の第1の構造体のそれぞれに接合されたロアサイドメンバと、
アッパメンバと、
前記幅方向に延び、前記第1の構造体に接合される部位から離間した位置で、前記ロアサイドメンバの一部に重なり合った状態で接合されたロアセンタメンバと
を備えており、
前記ロアサイドメンバは、前記ロアセンタメンバとの重合部分における前記ロアサイドメンバの端部において、減衰部材を介して前記ロアセンタメンバに接合され、それとともに、前記アッパメンバは、前記一対の第1の構造体に、減衰部材を介して接合されている
車体上部構造。
【請求項2】
前記アッパメンバは、前記一対の第1の構造体のそれぞれに接合された低剛性部と、前記低剛性部が前記第1の構造体に接合された部位から離間した位置に配置され、前記低剛性部よりも剛性が高い高剛性部とを備えている
請求項1に記載の車体上部構造。
【請求項3】
前記ロアサイドメンバは、前記第1の構造体に減衰部材で接合されている、
請求項1または2に記載の車体上部構造。
【請求項4】
前記ロアセンタメンバは、前記重合部分から離間した位置において当該ロアセンタメンバの他の部分よりも剛性が部分的に高い強化部分を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の車体上部構造。
【請求項5】
前記ロアセンタメンバは、板状部材によって構成され、
前記強化部分は、前記板状部材が当該板状部材の板厚方向に曲がるように変形された部分である、
請求項に記載の車体上部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両では、車体上部の前部や後部に形成された開口部には、ウインドシールドが接着などによって接合されている。このような車体上部構造では、車両の走行時において、ホイールやパワートレインで発生する振動が車体フレームを介してウインドシールドに入力されることにより、ウインドシールドが振動して、その振動が車室内に騒音として伝わるおそれがある。
【0003】
そこで、ウインドシールドへの振動の伝達を抑制するために、特許文献1記載の車体構造では、振動減衰性能を有する接着材を用いて、ウインドシールドを車体フレームに接着している。振動減衰性能を有する接着材は、振動エネルギーを熱エネルギーに変換することにより振動を減衰する機能を有している。
【0004】
また、特許文献2記載の車体構造には、車体フレームにおけるウインドシールド開口部を画定するリヤヘッダー部材とリヤピラー側ブロックとの間を振動減衰性能を有する接着材によって接着することにより、ウインドシールドへの振動の伝達を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-125980号公報
【文献】特開2011-93449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の車体上部構造では、いずれも振動減衰性能を有する接着材を用いてウインドシールドへの振動の伝達を抑制している。ところで、車両の操縦安定性(操安性)を向上させるためには、車体の剛性を向上させることが必要である。車体上部構造であれば、ルーフサイドレールやフロントピラーやフロントヘッダなどの剛性を向上する必要がある。しかし、フロントピラーやフロントヘッダなどのウインドシールドが接合される開口部画定用の構成部材の剛性を向上させれば、構成部材それ自体が振動の伝達路として機能しやすくなってしまい、接着材によるウインドシールドへの振動伝達を抑制する効果を向上させることが難しくなることが懸念される。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、車体の剛性を確保しながらウインドシールドへの振動伝達を抑制する効果を向上させることが可能な車体上部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の車体上部構造は、車体の上部における当該車体の幅方向における両側の部分を構成する一対の第1の構造体と、前記幅方向に延び、前記一対の第1の構造体と協働してウインドシールドの取付けが可能なウインド開口部の少なくとも一部を画定するように、前記一対の第1の構造体のそれぞれに接合された第2の構造体と、を備えており、前記第2の構造体は、前記一対の第1の構造体のそれぞれに接合されたロアサイドメンバと、アッパメンバと、前記幅方向に延び、前記第1の構造体に接合される部位から離間した位置で、前記ロアサイドメンバの一部に重なり合った状態で接合されたロアセンタメンバとを備えており、前記ロアサイドメンバは、前記ロアセンタメンバとの重合部分における前記ロアサイドメンバの端部において、減衰部材を介して前記ロアセンタメンバに接合され、それとともに、前記アッパメンバは、前記一対の第1の構造体に、減衰部材を介して接合されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成では、一対の第1の構造体と協働してウインド開口部の少なくとも一部を画定する第2の構造体は、一対の第1の構造体のそれぞれに接合されたロアサイドメンバと、ロアセンタメンバとを備えている。一対のロアサイドメンバのそれぞれは、ロアセンタメンバと重なり合って接合されている重合部分では部分的に剛性が高くなっているのに対し、ロアセンタメンバと重なり合っていない部分では、当該重合部分よりも相対的に剛性が低くなっている。
【0010】
そこで、上記のように、ロアサイドメンバは、ロアセンタメンバとの重合部分における第1の構造体側の端部において、減衰部材を介してロアセンタメンバに接合されることにより、ロアサイドメンバのうちロアセンタメンバと重なり合っていない部分も重合部分の範囲内の減衰部材を介してロアセンタメンバに接合することが可能になる。
【0011】
このような構成では、第1の構造体から第2の構造体へ伝達される振動は、まず第2の構造体のロアサイドメンバにおけるロアセンタメンバと重なり合っていない低剛性の部分に振動が集中する。この部分は、上記のように減衰部材によってロアセンタメンバに接合されているので、この部分に集中する振動は減衰部材により効果的に減衰される。一方、第2の構造体は、ロアサイドメンバロアセンタメンバとが重なり合って接合されている高剛性の重合部分によって、第2の構造体の剛性を確保することが可能である。その結果、車体の剛性を確保しながら減衰部材によるウインドシールドへの振動伝達を抑制する効果を向上させることが可能になる。
上記の車体上部構造において、前記アッパメンバは、前記一対の第1の構造体のそれぞれに接合された低剛性部と、前記低剛性部が前記第1の構造体に接合された部位から離間した位置に配置され、前記低剛性部よりも剛性が高い高剛性部とを備えているのが好ましい。
【0012】
上記の車体上部構造において、前記ロアサイドメンバは、前記第1の構造体に減衰部材で接合されているのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、ロアサイドメンバにおけるロアセンタメンバと重なり合っていない低剛性の部分は、第1の構造体およびロアセンタメンバにそれぞれ減衰部材を介して接合されているので、この部分に集中する振動を2か所の減衰部材によってさらに効果的に減衰することが可能になる。
【0014】
上記の車体上部構造において、前記ロアセンタメンバは、前記重合部分から離間した位置において当該ロアセンタメンバの他の部分よりも剛性が部分的に高い強化部分を有するのが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、ロアセンタメンバにおけるロアサイドメンバとの接合部分から離間した位置に剛性が高い強化部分を有しているので、ロアセンタメンバだけでなく、ロアセンタメンバを含む第2の構造体全体の剛性を向上することが可能である。
【0016】
上記の車体上部構造において、前記ロアセンタメンバは、板状部材によって構成され、前記強化部分は、前記板状部材が当該板状部材の板厚方向に曲がるように変形された部分であるのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、板状部材に対してプレス加工などの加工を施すことによって強化部分を容易に形成することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車体上部構造によれば、車体の剛性を確保しながら減衰部材によるウインドシールドへの振動伝達を抑制する効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る車体上部構造の全体斜視図である。
図2図1のフロントピラーとフロントヘッダとの接合部分およびその周辺を拡大した拡大斜視図である。
図3図2のフロントヘッダを分解した状態を示す斜視説明図である。
図4】の図2のIV-IV線断面図である。
図5図2のフロントヘッダを上側から見たときの接着材の配置を示す斜視説明図である。
図6図2のフロントヘッダを下側から見たときの接着材の配置を示す斜視説明図である。
図7】の図2のVII-VII線断面図である。
図8】の図2のVIII-VIII線断面図である。
図9図3のアッパメンバの平面図である。
図10図3のロアサイドメンバとロアセンタメンバとを組み合わせた状態を下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0021】
本発明の一実施形態として、図1~4に示される車体1の上部構造は、フロント側のウインドシールド5の取付けが可能なウインド開口部4を画定する構造に関するものであり、一対の第1の構造体としての一対のフロントピラー2と、第2の構造体としてのフロントヘッダ3と、フロントヘッダ3をフロントピラー2に接合する減衰ボンド21、23と、フロントヘッダ3内の後述の構成部材間(ロアサイドメンバ7とロアセンタメンバ8との間)を接合する減衰ボンド22とを備えている。
【0022】
減衰ボンド21、22、23は、本発明の減衰部材に含まれるものであり、振動エネルギーを熱エネルギーに変換することにより振動を減衰する機能を有していればよく、本発明では減衰ボンドの材料や物性についてはとくに限定しない。減衰ボンド21、22、23としては、たとえば、車体のアウタパネルとインナパネルとのヘミング部に多く用いられるシーラーやゴム系の接着材であって、温度が20℃で、かつ加振力の周波数が30Hzである条件下において、貯蔵弾性率が500MPa以下で、かつ、損失係数が0.2以上あることによって振動減衰特性を有する接着材などが用いられる。
【0023】
一対のフロントピラー2は、車体1の上部における当該車体1の幅方向Wにおける両側の部分を構成する構造体である。各フロントピラー2は、車体1の後方へ向かうにつれて上方へ行く方向に延びる長尺な部材である。各フロントピラー2は、図3~4に示されるように、車体1の外側を向くアウタメンバ2aと、車体1の内側を向くインナメンバ2bと、アウタメンバ2aの上端部にから車体1の幅方向Wにおける内側へ突出する突出部2cとを有する。
【0024】
フロントヘッダ3は、図1~2に示されるように、車体1の上部前側に配置され、車体1の幅方向Wに延び、一対のフロントピラー2と協働してフロント側のウインドシールド5の取付けが可能なウインド開口部4の少なくとも一部を画定するように、一対のフロントピラー2のそれぞれに接合された構造体である。ウインドシールド5は、フロントピラー2およびフロントヘッダ3によって形成されたウインド開口部4の内側に突出する部分、例えば後述のアッパメンバ6のフランジ部6c(図3参照)などに対して減衰ボンド(図示せず)によって接着されている。
【0025】
フロントヘッダ3は、図3~6に示されるように、当該フロントヘッダ3の上面を構成するアッパメンバ6と、当該フロントヘッダ3の下面の両側の部分を構成する一対の第1の構成部材としての一対のロアサイドメンバ7(図10参照)と、当該フロントヘッダ3の下側の中央の部分を構成する第2の構成部材としてのロアセンタメンバ8とによって構成されている。
【0026】
アッパメンバ6は、図2~5および図9に示されるように、金属薄板などの板状部材で構成され、一対のフロントピラー2をつなぐように延びる長尺な部材である。
【0027】
ロアサイドメンバ7およびロアセンタメンバ8もそれぞれ金属薄板などの板状部材で構成されている。
【0028】
本実施形態の車体1の上部構造では、アッパメンバ6およびそれを含むフロントヘッダ3は、一対のフロントピラー2のそれぞれの突出部2cに対してアッパメンバ6の端部6aの部位で接合された低剛性部11と、当該低剛性部11がフロントピラー2に接合された部位(端部6a)から離間した位置に配置され、低剛性部11よりも剛性が高い高剛性部12とを備えている。
【0029】
アッパメンバ6は、当該フロントヘッダ3の長手方向(すなわち幅方向Wと同じ方向)に延びる複数(本実施形態では2本)の稜線部13を有する。稜線部13は、フロントヘッダ3の長手方向に延びる突条によって構成されている。なお、稜線部13は、3本以上であってもよい。
【0030】
稜線部13を構成する突条は、図3および図7~8に示されるように、アッパメンバ6が当該アッパメンバ6の板厚方向に上方に曲がるように変形された部分によって構成されている。したがって、稜線部13は、アッパメンバ6の長手方向に延びる凸形状を有する。
【0031】
低剛性部11のうち、アッパメンバ6の端部6aは、図3~5に示されるように、減衰ボンド21によって、フロントピラー2における車体1の幅方向Wの内側に突出する突出部2cに接合されている。さらに、アッパメンバ6の端部6aは、突出部2cに溶接ポイントSにおいてスポット溶接されている。
【0032】
フロントヘッダ3の低剛性部11は、アッパメンバ6において、図2および図7に示されるように、複数の稜線部13の間隔が所定の第1の間隔A1になるように形成された部分を有する。
【0033】
本実施形態では、フロントヘッダ3の低剛性部11は、図7に示されるように、フロントヘッダ3の長手方向を法線方向とする1つの閉断面19で構成されている。閉断面19は、図5~7に示されるように、フロントヘッダ3を構成するアッパメンバ6とロアサイドメンバ7とがそれぞれのフランジ部6c、7c同士で重ね合され、当該フランジ部6c、7c間を複数の溶接ポイントSでスポット溶接することによって形成される。
【0034】
さらに本実施係形態では、図3~5および図9に示されるように、低剛性部11は、アッパメンバ6において、閉断面19を構成する部分の一部に形成された開口部14を有する。
【0035】
フロントヘッダ3の高剛性部12は、アッパメンバ6において、図2および図8に示されるように、複数の稜線部13の間隔が低剛性部11における稜線部13の第1の間隔A1(図7参照)よりも狭い第2の間隔A2になるように形成された部分を有する。また、本実施形態では、高剛性部12における複数の稜線部13のそれぞれの幅B2は、低剛性部11における稜線部13の幅B1(図7参照)よりも広くなっている。
【0036】
高剛性部12は、長手方向を法線方向とする複数(本実施形態では2つ)の閉断面20で構成されている。複数の閉断面20は、図5~6および図8に示されるように、フロントヘッダ3を構成するアッパメンバ6とロアセンタメンバ8とがそれぞれのフランジ部6c、8c同士で重ね合され、当該フランジ部6c、8c間を複数の溶接ポイントSでスポット溶接することによって形成される。
【0037】
高剛性部12における複数の閉断面20の間は、ロアセンタメンバ8の中間位置において上方に突出することにより形成された膨出部18とアッパメンバ6の中間位置において下方に凹むことにより形成された膨出部17とが当接することによって仕切られている。このように複数の閉断面20を有する高剛性部12は、複数の閉断面20を形成する膨出部17、18によって補強されているので、1つの閉断面19しか持たない低剛性部11よりも剛性が高くなる。
【0038】
また、本実施形態では、図4および図6に示されるように、一対のロアサイドメンバ7の車体1の幅方向Wにおける外側の端部7dは、それぞれ、減衰ボンド23によって、一対のフロントピラー2のインナメンバ2bにそれぞれ接合されている。さらに、ロアサイドメンバ7は、当該インナメンバ2bに対して複数の溶接ポイントSでスポット溶接されている。
【0039】
なお、ロアサイドメンバ7は、減衰ボンド23(図4および図6参照)による接着およびスポット溶接によって、図3に示されるようにあらかじめフロントピラー2に接合しておいた状態にしておき、その後、ロアセンタメンバ8およびアッパメンバ6を当該ロアサイドメンバ7に接合するのが好ましい。この場合、ロアセンタメンバ8およびアッパメンバ6をあらかじめ合体させたサブアッシーの状態で、図4~5に示されるように、ロアセンタメンバ8をロアサイドメンバ7に減衰ボンド22で接合するとともに、アッパメンバ6の開口部14を通して、溶接ポイントSでスポット溶接してもよい。または、ロアセンタメンバ8およびアッパメンバ6をサブアッシーの状態にしない場合でも、ロアセンタメンバ8をロアサイドメンバ7に接合した後に、アッパメンバ6の開口部14を通して、ロアセンタメンバ8をロアサイドメンバ7に追加のスポット溶接をしてもよい。
【0040】
ロアセンタメンバ8は、車体1の幅方向Wに延びる長尺な部材であり、図4および図6に示されるように、フロントヘッダ3のロアサイドメンバ7におけるフロントピラー2に接合される部位(ロアサイドメンバ7の幅方向Wの外側の端部7d)から離間した重合部分15の位置で、一対のロアサイドメンバ7のそれぞれの一部に重なり合った状態で接合されている。
【0041】
具体的には、ロアセンタメンバ8の端部8aは、ロアサイドメンバ7の端部7aに上方から重ね合され、端部8a付近の係合孔8bに端部7a付近の係合突起7bが係合される。これにより、図4に示される重合部分15が形成される。そして、ロアサイドメンバ7は、ロアセンタメンバ8との重合部分15におけるフロントピラー2側の端部(具体的には、ロアセンタメンバ8の端部8a付近の部分)において、減衰ボンド22を介してロアセンタメンバ8に接合されている。さらに、ロアセンタメンバ8は、重合部分15の内部でロアサイドメンバ7に対して複数の溶接ポイントSでスポット溶接されている。ロアサイドメンバ7とロアセンタメンバ8との間のスポット溶接は、図5に示されるアッパメンバ6の開口部14を通して行われる。
【0042】
また、本実施形態では、図6および図10に示されるように、ロアセンタメンバ8は、その両端部における重合部分15から離間した位置において当該ロアセンタメンバ8の他の部分よりも剛性が部分的に高い強化部分として膨出部18を有する。
【0043】
膨出部18は、ロアセンタメンバ8を構成する板状部材が当該板状部材の板厚方向(本実施形態ではロアセンタメンバ8の上方)に曲がるように変形された部分である。本実施形態では、複数個の膨出部18が、ロアセンタメンバ8の長手方向に沿って形成されている。ロアセンタメンバ8の長手方向における中間位置に形成された膨出部18は、突出量が最も大きくなるように形成されている。
【0044】
なお、上記の減衰ボンド21、22、23は、本実施形態のように、溶接スポットSにおけるスポット溶接と併用されることを考慮すれば、ウインドシールド5をウインド開口部4の縁に接着するために用いられる接着材よりも接着力が弱い接着材を採用してもよい。
【0045】
なお、上記の実施形態では、本発明の車体上部構造の一例として、フロント側のウインドシールド5の取付けが可能なウインド開口部4を画定する構造を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、セダンなどのリヤウインド用ウインド開口部、またはサンルーフ用ウインド開口部を画定する構造にも本発明の車体上部構造を適用することが可能である。
【0046】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の車体1の上部構造は、第1の構造体としての一対のフロントピラー2と、第2の構造体としてのフロントヘッダ3と、当該フロントヘッダ3内の構成部材である一対のロアサイドメンバ7(第1の構成部材)とロアセンタメンバ8(第2の構成部材)との間を接合する減衰ボンド22(図3~6参照)とを備えている。
【0047】
一対のロアサイドメンバ7は、図3~4および図6に示されるように、一対のフロントピラー2のそれぞれに接合されている。ロアセンタメンバ8は、車体1の幅方向Wに延び、フロントピラー2に接合される部位(ロアサイドメンバ7の幅方向Wの外側の端部7d)から離間した位置で、一対のロアサイドメンバ7のそれぞれの一部に重なり合った状態で接合されている。ロアサイドメンバ7は、ロアセンタメンバ8との重合部分15におけるフロントピラー2側の端部(本実施形態では、ロアセンタメンバ8の端部8a付近の部分)において、減衰ボンド22を介してロアセンタメンバ8に接合されている。
【0048】
この構成では、一対のフロントピラー2と協働してウインド開口部4の少なくとも一部を画定するフロントヘッダ3は、一対のフロントピラー2のそれぞれに接合された一対のロアサイドメンバ7と、ロアセンタメンバ8とを備えている。一対のロアサイドメンバ7のそれぞれは、ロアセンタメンバ8と重なり合って接合されている重合部分15では部分的に剛性が高くなっているのに対し、ロアセンタメンバ8と重なり合っていない部分16(図4および図6参照)では、当該重合部分15よりも相対的に剛性が低くなっている。
【0049】
そこで、上記のように、ロアサイドメンバ7は、ロアセンタメンバ8との重合部分15におけるフロントピラー2側の端部(ロアセンタメンバ8の端部8a付近の部分)において、減衰ボンド22を介してロアセンタメンバ8に接合されることにより、ロアサイドメンバ7のうちロアセンタメンバ8と重なり合っていない部分16も重合部分15の範囲内の減衰ボンド22を介してロアセンタメンバ8に接合することが可能になる。
【0050】
このような構成では、フロントピラー2からフロントヘッダ3へ伝達される振動は、まずフロントヘッダ3のロアサイドメンバ7におけるロアセンタメンバ8と重なり合っていない低剛性の部分16(図4および図6参照)に振動が集中する。この低剛性の部分16は、上記のように減衰ボンド22によってロアセンタメンバ8に接合されているので、この低剛性の部分16に集中する振動は減衰ボンド22により効果的に減衰される。一方、フロントヘッダ3は、ロアサイドメンバ7とロアセンタメンバ8とが重なり合って接合されている高剛性の重合部分15によって、フロントヘッダ3の剛性を確保することが可能である。その結果、車体1の剛性を確保しながら減衰ボンド22によるウインドシールド5への振動伝達を抑制する効果を向上させることが可能になる。
【0051】
(2)
本実施形態の車体1の上部構造では、ロアサイドメンバ7における幅方向Wの外側の端部7dは、フロントピラー2に減衰ボンド23で接合されている。
【0052】
この構成では、ロアサイドメンバ7におけるロアセンタメンバ8と重なり合っていない低剛性の部分16は、フロントピラー2およびロアセンタメンバ8にそれぞれ減衰ボンド22、23を介して接合されているので、この部分に集中する振動を2か所の減衰ボンド22、23によってさらに効果的に減衰することが可能になる。
【0053】
(3)
本実施形態の車体1の上部構造では、図6および図10に示されるように、ロアセンタメンバ8は、重合部分15から離間した位置において当該ロアセンタメンバ8の他の部分よりも剛性が部分的に高い強化部分である膨出部18を有する。
【0054】
この構成では、ロアセンタメンバ8におけるロアサイドメンバ7との接合部分(重合部分15)から離間した位置に剛性が高い強化部分である膨出部18を有しているので、ロアセンタメンバ8だけでなく、ロアセンタメンバ8を含むフロントヘッダ3全体の剛性を向上することが可能である。
【0055】
(4)
本実施形態の車体1の上部構造では、ロアセンタメンバ8は、板状部材によって構成されている。強化部分である膨出部18は、板状部材が当該板状部材の板厚方向に曲がるように変形された部分である。この構成では、板状部材に対してプレス加工などの加工を施すことによって強化部分である膨出部18をロアセンタメンバ8に容易に形成することが可能である。
【0056】
(5)
本実施形態の車体1の上部構造は、第1の構造体としての一対のフロントピラー2と、第2の構造体としてのフロントヘッダ3と、当該フロントヘッダ3を一対のフロントピラー2に接合する減衰ボンド21、23(図3~6参照)とを備えている。
【0057】
フロントヘッダ3は、一対のフロントピラー2のそれぞれの突出部2cに接合された低剛性部11と、低剛性部11がフロントピラー2に接合された部位(端部6a、7d)から離間した位置に配置され、低剛性部11よりも剛性が高い高剛性部12とを備えている。
【0058】
本実施形態の低剛性部11は、図4に示されるように、減衰ボンド21、23によってフロントピラー2に接合されている。
【0059】
かかる構成では、一対のフロントピラー2と協働してウインド開口部4の少なくとも一部を画定するアッパメンバ6およびそれを含むフロントヘッダ3は、フロントピラー2に接合された低剛性部11(図2~6、図7、および図9参照)を備えている。そのため、フロントピラー2からフロントヘッダ3へ伝達される振動は、まず、フロントヘッダ3のアッパメンバ6およびロアサイドメンバ7の両方からフロントヘッダ3の低剛性部11に入力され、低剛性部11に振動が集中する。本実施形態のフロントヘッダ3の低剛性部11は、アッパメンバ6とフロントピラー2の突出部2cとの間の減衰ボンド21、およびロアサイドメンバ7とフロントピラー2のインナメンバ2bとの間の減衰ボンド23によって、フロントピラー2に接合されている。そのため、低剛性部11に集中する振動は減衰ボンド21、23により効果的に減衰される。一方、アッパメンバ6およびそれを含むフロントヘッダ3には、低剛性部11がフロントピラー2に接合された部位(端部6a、7d)から離間した位置に高剛性部12が配置されているので、フロントヘッダ3の剛性を確保することが可能である。その結果、車体1の剛性を確保しながら減衰ボンド21、23によるウインドシールド5への振動伝達を抑制する効果を向上させることが可能になる。
【0060】
(6)
本実施形態の車体1の上部構造では、フロントヘッダ3は、図3図5および図7~9に示されるように、アッパメンバ6において、当該フロントヘッダ3の長手方向に延びる複数の稜線部13を有している。低剛性部11は、複数の稜線部13の間隔が所定の第1の間隔A1になるように形成された部分を有している。高剛性部12は、複数の稜線部13の間隔が第1の間隔A1よりも狭い第2の間隔A2になるように形成された部分を有している。
【0061】
この構成では、図7に示される稜線部13の間隔A1を図8に示される稜線部13の間隔A2へ変えるだけで、フロントヘッダ3において低剛性部11および高剛性部12を容易に形成することが可能である。また、低剛性部11および高剛性部12を所望の剛性になるようにフロントヘッダ3を設計することが容易になる。
【0062】
また、本実施形態では、高剛性部12における複数の稜線部13のそれぞれの幅B2は、低剛性部11における稜線部13の幅B1(図7参照)よりも広くなっているので、高剛性部12における各稜線部13は、低剛性部11における稜線部13よりも剛性が向上しているので、高剛性部12の剛性をさらに向上している。
【0063】
(7)
本実施形態の車体1の上部構造では、稜線部13は、フロントヘッダ3の長手方向に延びる突条によって構成されている。したがって、フロントヘッダ3の長手方向に延びる突条を当該フロントヘッダ3のアッパメンバ6に形成することによって稜線部13を構成することが可能になり、稜線部13の設計および加工を容易に行うことが可能になる。
【0064】
(8)
本実施形態の車体1の上部構造では、フロントヘッダ3は、一対のフロントピラー2をつなぐように延びる板状部材で構成されたアッパメンバ6を有する。稜線部13を構成する突条は、アッパメンバ6が当該アッパメンバ6の板厚方向に曲がるように変形された部分である。
【0065】
この構成では、金属薄板などの板状部材からなるアッパメンバ6に対してプレス加工などの加工を施すことによって稜線部13を構成する突条を容易に形成することが可能である。
【0066】
(9)
本実施形態の車体1の上部構造では、高剛性部12は、板状部材からなるアッパメンバ6が下方へ凹むことにより形成された膨出部17を有する。そのため、高剛性部12およびそれを含むフロントヘッダ3(とくにアッパメンバ6)の上方への突出を抑えながら剛性を向上することが可能である。
【0067】
(10)
本実施形態の車体1の上部構造では、図7に示される低剛性部11は、フロントヘッダ3の長手方向を法線方向とする1つの閉断面19で構成されている。図8に示される高剛性部12は、長手方向を法線方向とする複数(2つ)の閉断面20で構成されている。
【0068】
この構成では、閉断面19、20の数を変えることによって低剛性部11および高剛性部12をそれぞれ構成することが可能になり、低剛性部11および高剛性部12における各閉断面19、20の外形寸法を大きく変える必要が無くなる。その結果、フロントヘッダ3の周囲に配置される車体1の構成部材(ルーフパネルなど)への形状や配置に関する影響を低減することが可能である。
【0069】
なお、図8に示される高剛性部12は、2つの閉断面20で構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、3つ以上の閉断面で高剛性部12を構成してもよい。
【0070】
(11)
本実施形態の車体1の上部構造では、図3~5および図9に示される低剛性部11は、閉断面19を構成する部分の一部に形成された開口部14を有する。このように低剛性部11における閉断面19の一部に開口部14を形成することにより、低剛性部11の剛性をさらに低減することが可能になる。これにより、低剛性部11に振動をより集中させることが可能になり、減衰ボンド21、23(とくにアッパメンバ6側の減衰ボンド21)によるウインドシールド5への振動伝達を抑制する効果をさらに向上させることが可能になる。
【符号の説明】
【0071】
1 車体
2 フロントピラー(第1の構造体)
3 フロントヘッダ(第2の構造体)
4 ウインド開口部
5 ウインドシールド
6 アッパメンバ
7 ロアサイドメンバ(第1の構成部材)
8 ロアセンタメンバ(第2の構成部材)
11 低剛性部
12 高剛性部
13 稜線部
14 開口部
15 重合部分
16 重なり合っていない部分
17、18 膨出部
19、20 閉断面
21、22、23 減衰ボンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10