(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】表面欠陥検査装置および該方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20220209BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G01N21/84 E
(21)【出願番号】P 2019521989
(86)(22)【出願日】2018-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2018014682
(87)【国際公開番号】W WO2018221005
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2017105515
(32)【優先日】2017-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】原田 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】柏原 将人
(72)【発明者】
【氏名】脇村 泰三
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/136111(WO,A1)
【文献】特開2014-002041(JP,A)
【文献】特開2010-188236(JP,A)
【文献】特開2006-010562(JP,A)
【文献】特開2007-064728(JP,A)
【文献】特開2002-148195(JP,A)
【文献】特開2003-215049(JP,A)
【文献】特開平08-050103(JP,A)
【文献】特開平08-086633(JP,A)
【文献】特開2000-009454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 11/00-G01B 11/30
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の被検査面に照明光を照射して前記被検査面を撮像した画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検出する表面欠陥検査装置であって、
明領域と暗領域との組を少なくとも1つ形成して前記照明光を照射する照明部と、
前記明領域の幅を、前記欠陥の視認性の程度および前記被検査物の種類に対応付けて対応関係情報として記憶する対応関係情報記憶部と、
前記欠陥の視認性の程度および前記被検査物の種類の入力を受け付ける入力部と、
前記対応関係情報記憶部に記憶された前記対応関係情報から、前記入力部で受け付けた前記欠陥の視認性の程度および前記被検査物の種類に対応する前記明領域の幅を決定し、前記決定した前記明領域の幅に調整する明領域調整部とを備え、
前記被検査物は、外装塗装された車両であり、
前記欠陥は、塗装面における凹凸であり、
前記被検査物の種類は、前記車両のクラス、前記車両の仕向地および前記車両の部位で分類されている、
表面欠陥検査装置。
【請求項2】
被検査物の被検査面に照明光を照射して前記被検査面を撮像した画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検出する表面欠陥検査方法であって、
前記明領域の幅を、前記欠陥の視認性の程度および前記被検査物の種類に対応付けて対応関係情報として記憶する対応関係情報記憶工程と、
前記欠陥の視認性の程度および前記被検査物の種類の入力を受け付ける入力工程と、
前記対応関係情報記憶工程で記憶された前記対応関係情報から、前記入力工程で受け付けた前記欠陥の視認性の程度および前記被検査物の種類に対応する前記明領域の幅を決定し、前記決定した明領域の幅に調整する明領域調整工程と、
前記明領域調整工程で調整された幅の明領域と暗領域との組を少なくとも1つ形成して前記照明光を照射する照明工程とを備え、
前記被検査物は、外装塗装された車両であり、
前記欠陥は、塗装面における凹凸であり、
前記被検査物の種類は、前記車両のクラス、前記車両の仕向地および前記車両の部位で分類されている、
表面欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の欠陥を検出する表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のボディーにおける塗装表面の欠陥を画像処理によって検出する表面欠陥検査装置が知られており、例えば、特許文献1等に開示されている。前記欠陥は、例えばいわゆる「ブツ」、「ダレ」および「ハジキ」等と呼称される塗装面における凹凸等である。
【0003】
この特許文献1に開示された表面欠陥検査装置は、被検査体の被検査面に明暗パターンの光を照射し、前記被検査面からの反射光に基づいて受光画像を作成し、この受光画像に基づいて被検査面上の欠陥を検査する装置である。
【0004】
前記特許文献1のように、光が照明された被検査面を撮像することによって得られた画像から欠陥を検出する場合、前記欠陥が無ければ撮像部へ向かう反射光が前記欠陥によって撮像部へ向かう方向とは異なる方向に反射されるため、前記欠陥は、画像上では、暗く写る。このため、画像処理によって前記画像における暗い部分が抽出され、前記欠陥が検出される。一方、効率化の観点から、一度に検査する面積を広げることが望まれる。このため、幅の広い光で被検査面が照明されることになる。このような幅の広い光で被検査面が照明されると、実際には欠陥が生じているにもかかわらず、前記欠陥が画像上で暗く写らず、前記欠陥が検出し難くなる場合がある。これは、前記欠陥に入射される光の入射角が、相対的に幅の狭い光が前記欠陥に照明される場合に較べて多様となるため、前記欠陥から撮像部へ向かう反射光が増加するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、欠陥検出の精度を少なくとも維持しつつ、効率化を図ることができる表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法を提供することである。
【0007】
上述した目的を実現するために、本発明の一側面を反映した表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法は、被検査物の被検査面に照明光を照射して前記被検査面を撮像した画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検出する装置および方法であって、明領域と暗領域との組を少なくとも1つ形成して前記照明光を照射し、予め定義された欠陥の視認性の程度に応じて前記明領域の幅に調整する。
【0008】
発明の1または複数の実施形態により与えられる利点および特徴は、以下に与えられる詳細な説明および添付図面から十分に理解される。これら詳細な説明及び添付図面は、例としてのみ与えられるものであり本発明の限定の定義として意図されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態における表面欠陥検査装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】前記表面欠陥検査装置の構成を示す概略外観模式図である。
【
図3】前記表面欠陥検査装置における第1態様の照明部およびその照明パターンの一例を説明するための図である。
【
図4】前記表面欠陥検査装置に記憶される第1態様の対応関係情報テーブルを示す図である。
【
図5】欠陥の視認性の程度と明領域の幅との関係を説明するための図である。
【
図6】前記表面欠陥検査装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図6に示すフローチャートにおける欠陥の検出処理を説明するための図である。
【
図8】
図7に示す欠陥候補の検出処理を説明するための図である。
【
図9】
図7に示す膨張、縮小の処理を説明するための図である。
【
図10】前記表面欠陥検査装置における第2態様の照明部およびその照明パターンの一例を説明するための図である。
【
図11】前記表面欠陥検査装置に記憶される第2態様の対応関係情報テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0011】
本実施形態における表面欠陥検査装置は、被検査物Obの被検査面に照明光を照射して前記被検査面を撮像した画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検出する装置であって、明領域と暗領域との組を少なくとも1つ形成して前記照明光を照射する照明部と、予め定義された欠陥の視認性の程度に応じて前記明領域の幅に調整する明領域調整部とを備える。このような表面欠陥検査装置およびこれに実装された表面欠陥検査方法は、予め定義された欠陥の視認性の程度に応じて照明光における明領域の幅に調整するので、欠陥検出の精度を少なくとも維持しつつ、効率化を図ることができる。以下、このような表面欠陥検査装置およびこれに実装された表面欠陥検査方法について、より具体的に説明する。
【0012】
図1は、実施形態における表面欠陥検査装置の構成を示すブロック図である。
図2は、前記表面欠陥検査装置の構成を示す概略外観模式図である。
図3は、前記表面欠陥検査装置における第1態様の照明部およびその照明パターンの一例を説明するための図である。
図3Aは、第1照明パターンで照明光を放射している照明部1a-1(1a-2)を示し、
図3Bは、第2照明パターンで照明光を放射している照明部1a-1(1a-2)を示す。
図4は、前記表面欠陥検査装置に記憶される第1態様の対応関係情報テーブルを示す図である。
図5は、欠陥の視認性の程度と明領域の幅との関係を説明するための図である。
図5Aは、欠陥の視認性の程度に対し明領域の幅が適当な場合を示し、
図5Bは、欠陥の視認性の程度に対し明領域の幅が不適当な場合を示す。
【0013】
実施形態における表面欠陥検査装置Dは、
図1および
図2に示すように、例えば、照明部1aと、撮像部2と、装置本体PCとを備える。装置本体PCは、制御処理部3と、入力部4と、出力部5と、インターフェース部(IF部)6と、記憶部7とを備える。
【0014】
照明部1aは、装置本体PCの制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、明領域と暗領域との組を少なくとも1つ形成して照明光を照射する装置である。本実施形態では、照明部1aは、
図2に示すように、撮像部2を挟んで互いに並置された2個の第1および第2照明部1a-1、1a-2を備える。第1および第2照明部1a-1、1a-2は、それぞれ、例えば、光を放射する光源部と、明領域と暗領域との組を少なくとも1つ形成して前記光源部から放射された光を前記照明光として照明する明暗領域形成部とを備えて構成される。このような第1および第2照明部1a-1、1a-2は、それぞれ、
図3に示すように、例えば、高輝度液晶表示装置等の高輝度ディスプレイを備えて構成される。照明部1aが高輝度液晶表示装置である場合では、光を放射する、そのバックライトが、前記光源部の一例に相当し、前記バックライトにおける光放射面の前方に配置され、バックライトからの光を透過させるか遮光するかを画素ごとに制御する、その液晶パネルが前記明暗領域形成部の一例に相当する。
【0015】
撮像部2は、装置本体PCの制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、被検査物Obの被検査面を撮像し、画像を生成する装置である。欠陥は、後述するように、画像を画素値で画像処理することによって検出するので、撮像部2は、例えば、カラーで画像を生成するカメラを備えて構成されて良く、モノクロで画像を生成するカメラを備えて構成されて良い。
【0016】
入力部4は、装置本体PCの制御処理部3に接続され、例えば、検査の開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば欠陥の視認性の程度等の前記検査を行う上で必要な各種データを表面欠陥検査装置Dに入力する装置であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ、キーボードおよびマウス等である。出力部5は、装置本体PCの制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、入力部4から入力されたコマンドやデータ、および、当該表面欠陥検査装置Dによって求められた検出結果を出力する装置であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0017】
なお、入力部4および出力部5からタッチパネルが構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部4は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置であり、出力部5は、表示装置である。このタッチパネルでは、表示装置の表示面上に位置入力装置が設けられ、表示装置に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置を触れると、位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として表面欠陥検査装置Dに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い表面欠陥検査装置Dが提供される。
【0018】
IF部6は、装置本体PCの制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、IrDA(Infrared Data Asscoiation)規格等の赤外線通信を行うインターフェース回路、および、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等である。IF部6は、外部機器との間で通信を行う回路であり、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等であっても良い。
【0019】
記憶部7は、装置本体PCの制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。
【0020】
前記各種の所定のプログラムには、制御プログラム、明領域調整プログラムおよび欠陥検出プログラム等が含まれる。前記制御プログラムは、表面欠陥検査装置Dの各部1a、2、4~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御するプログラムである。前記明領域調整プログラムは、予め定義された欠陥の視認性の程度に応じて前記明領域の幅に調整するプログラムである。前記欠陥検出プログラムは、撮像部2によって生成された画像に基づいて被検査物Obの被検査面に生じている欠陥を検出するプログラムである。前記各種の所定のデータには、例えば、対応関係情報、撮像部2で生成された画像、後述のように欠陥を検出する画像処理で生成される各種の中間画像等の、各プログラムを実行する上で必要なデータ等が含まれる。
【0021】
記憶部7は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。記憶部7は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部3のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。そして、記憶部5は、前記対応関係情報を記憶するために、対応関係情報記憶部71を機能的に備える。
【0022】
対応関係情報記憶部71は、予め定義された欠陥の視認性の程度に応じた前記明領域の幅を表す情報を記憶するものであり、本実施形態では、前記明領域の幅を前記欠陥の視認性の程度に対応付けて対応関係情報として記憶する。前記欠陥の視認性の程度とは、欠陥の見え易さの度合いであり、前記欠陥の視認性の程度は、例えば、予め適宜に設定されたグレードレベルで表され、本実施形態では、グレードI、グレードII、グレードIII、・・・の順で順次に前記欠陥の視認性の程度が高くなる。
【0023】
本実施形態では、光が照明された被検査面を撮像することによって得られた画像から欠陥が検出される。このような検出手法では、例えば、
図5Aに示すように、被検査物Obの被検査面に欠陥DEが無ければカメラへ向かう反射光が前記欠陥DEによって前記カメラへ向かう方向とは異なる方向に反射されるため、前記欠陥DEは、画像SP1上では、欠陥画像PDEとして暗く写る。このため、画像処理によって前記画像SP1における暗い部分が抽出され、前記欠陥DEが検出できる。ところが、効率化の観点から、例えば、
図5Bに示すように、相対的に幅LAbの広い光で前記被検査面が照明されると、実際には前記欠陥DEが生じているにもかかわらず、前記欠陥DEに入射される光の入射角が、相対的に幅LAaの狭い光が前記欠陥DEに照明される場合に較べて多様となるので、前記欠陥DEからカメラへ向かう反射光が増加するため、カメラで見え難くなり、前記欠陥DEが画像SP2上で暗く写らず、前記欠陥DEが検出し難くなる。このように欠陥DEの視認性の程度と照明光(明領域)の幅LAとは、相関関係があり、前記欠陥DEの視認性の程度に応じた適当な照明光(明領域)の幅LAが存在する。
【0024】
なお、
図5Aにおいて、画像SP1における明画像PLAaは、前記被検査面の、幅LAaの明領域を持つ照明部によって照明された部分の画像であり、画像SP1における暗画像PDAa-1、PDAa-2は、前記被検査面の、前記照明部によって照明された部分を除く残余の部分の画像であり、黒点PDEは、画像SP1に写り込んだ欠陥DEの画像であり、
図5Bにおいて、画像SP2における明画像PLAbは、前記被検査面の、幅LAaより広い幅LAbの明領域を持つ照明部によって照明された部分の画像であり、画像SP2における暗画像PDAb-1、PDAb-2は、前記被検査面の、前記照明部によって照明された部分を除く残余の部分の画像である。
【0025】
前記欠陥DEの視認性の程度は、前記欠陥DEの大きさ(面積)、前記被検査面を基準に前記欠陥DEにおける凸部の高さ、前記欠陥DEにおける凹部の深さまたは前記欠陥DEにおける凹凸部の高低差、および、前記欠陥DEが生じている層の色(透明層に生じた凹凸の欠陥DEは目立ち難いが、有色層に生じた凹凸の欠陥DEは目立ち易い)等に応じて異なる。例えば、前記欠陥DEの大きさ(面積)が大きい(広い)ほど、前記欠陥DEの視認性の程度は、高くなり、これに応じて照明光(明領域)の幅LAは、より広くできる。一方、逆に、前記欠陥DEの大きさ(面積)が小さい(狭い)ほど、前記欠陥DEの視認性の程度は、低くなり、これに応じて照明光(明領域)の幅LAは、より狭くする必要がある。また例えば、前記欠陥DEの高さ、深さまたは高低差が大きいほど、前記欠陥DEの視認性の程度は、高くなり、これに応じて照明光(明領域)の幅LAは、より広くできる。一方、逆に、前記欠陥DEの高さ、深さまたは高低差が小さい(狭い)ほど、前記欠陥DEの視認性の程度は、低くなり、これに応じて照明光(明領域)の幅LAは、より狭くする必要がある。また例えば、有色層に生じた凹凸の欠陥DEは、目立ち易いので、これに応じて照明光(明領域)の幅LAは、より広くできる。一方、透明層に生じた凹凸の欠陥DEは、目立ち難いので、これに応じて照明光(明領域)の幅LAは、より狭くする必要がある。このような観点から、前記欠陥DEの視認性の程度は、複数のグレードに適宜に分類され(グレード分けされ)、これら複数のグレードそれぞれに応じた照明光(明領域)の各幅LAが例えば複数のサンプルを用いた結果から適宜に設定される。
【0026】
このような前記欠陥の視認性の程度と前記明領域の幅との対応関係を表す対応関係情報は、本実施形態では、テーブル形式で対応関係情報記憶部71に記憶されている。この対応関係情報を登録する対応関係情報テーブルTBaは、例えば、
図4に示すように、前記欠陥の視認性の程度を表すグレードを登録する視認性程度フィールド711と、視認性程度フィールド711に登録されたグレードに対応する前記明領域の幅を登録する明領域幅フィールド712とを備え、各グレードごと(視認性の各程度ごと)にレコードを持つ。
図4に示す例では、前記欠陥の視認性の程度がグレードIである場合には明領域幅は、50mmに、前記欠陥の視認性の程度がグレードIIである場合には明領域幅は、70mmに、そして、前記欠陥の視認性の程度がグレードIIIである場合には明領域幅は、90mmに、それぞれ、対応付けられている。
【0027】
図1および
図2に戻って、制御処理部3は、表面欠陥検査装置Dの各部1a、2、4~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、被検査物Obの被検査面における欠陥を検出するための回路である。制御処理部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部3は、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部31、明領域調整部32および欠陥検出部33を機能的に備える。
【0028】
制御部31は、表面欠陥検査装置Dの各部1a、2、4~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、表面欠陥検査装置D全体の制御を司るものである。
【0029】
明領域調整部32は、予め定義された欠陥の視認性の程度に応じて前記明領域の幅に調整するものである。より具体的には、明領域調整部32は、記憶部7の対応関係情報記憶部71に記憶された対応関係情報から、入力部4で受け付けた前記欠陥の視認性の程度(本実施形態ではグレード)に対応する前記明領域の幅を決定し、この決定した前記明領域の幅に調整する。より詳しくは、上述したように、照明部1aが光源部および明暗領域形成部を備えて構成される場合、明領域調整部32は、前記欠陥の視認性の程度に応じた明領域の幅となるように、前記明暗領域形成部を制御する。本実施形態では、上述したように、照明部1aは、例えば高輝度液晶表示装置等の高輝度ディスプレイであり、明領域調整部32は、前記欠陥の視認性の程度に応じた明領域の幅となるように、前記高輝度ディスプレイを制御する。例えば、照明部1aが高輝度液晶表示装置である場合では、明領域調整部32は、前記欠陥の視認性の程度に応じた明領域の幅となるように、前記高輝度液晶表示装置における液晶パネルの各画素を制御する。
【0030】
欠陥検出部33は、照明部1aで照明された被検査物Obの被検査面を、撮像部2で撮像することによって生成された画像に基づいて欠陥を検出し、この検出した検出結果を記憶部7に記憶し、そして、出力部5に出力するものである。欠陥の検出手法は、公知の手法が用いられて良いが、本実施形態の手法については、後述する。
【0031】
なお、このような制御処理部3、入力部4、出力部5、IF部6および記憶部7を備える装置本体PCは、例えば、デスクトップ型やノード型等のコンピュータによって構成可能である。
【0032】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図6は、前記表面欠陥検査装置の動作を示すフローチャートである。
図7は、
図6に示すフローチャートにおける欠陥の検出処理を説明するための図である。
図8は、
図7に示す欠陥候補の検出処理を説明するための図である。
図9は、
図7に示す膨張、縮小の処理を説明するための図である。
図9Aは、一例として、膨張処理前の二値化画像I(BN)を示し、
図9Bは、一例として、膨張処理後の二値化画像I(BN)を示す。
【0033】
このような構成の表面欠陥検査装置Dは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部3には、制御部31、明領域調整部32および欠陥検出部33が機能的に構成される。
【0034】
そして、被検査物Obの被検査面における欠陥の検出にあたって、
図6において、表面欠陥検査装置Dは、まず、制御処理部3の明領域調整部32によって、出力部5から前記欠陥の視認性の程度(グレードの値)の入力を促すメッセージ(例えば「欠陥のグレードを入力ください。」等)を出力し、入力部4から前記欠陥の視認性の程度(グレードの値)の入力を受け付ける(S1)。
【0035】
ユーザ(オペレータ)は、前記メッセージに促されて前記欠陥の視認性の程度(グレードの値)を入力する。
【0036】
次に、処理S1で前記欠陥の視認性の程度(グレードの値)の入力を入力部4で受け付けると、表面欠陥検査装置Dは、明領域調整部32によって、この処理S1で入力された前記欠陥の視認性の程度(グレードの値)に基づいて明領域の幅を決定する(S2)。より具体的には、明領域調整部32は、記憶部7の対応関係情報記憶部71から、処理S1で入力された前記欠陥の視認性の程度(グレードの値)に対応する明領域の幅を取得する。より詳しくは、明領域調整部32は、対応関係情報記憶部71に記憶されている対応関係情報テーブルTBaから、その視認性程度フィールド711に、処理S1で入力された前記欠陥の視認性の程度(グレードの値)を登録するレコードを選定(検索)し、この選定したレコードにおける明領域幅フィールド712に登録されている明領域の幅を取り出す。
【0037】
次に、表面欠陥検査装置Dは、明領域調整部32によって、この処理S2で取得した明領域の幅となるように証明部1aを調整し、照明する(S3)。より具体的には、上述したように、照明部1aが光源部および明暗領域形成部を備えて構成される場合では、明領域調整部32は、前記処理S2で取得した明領域の幅となるように、前記明暗領域形成部を制御する。より詳しくは、照明部1aは、高輝度液晶表示装置であり、明領域調整部32は、前記処理S2で取得した明領域の幅となるように、前記高輝度液晶表示装置における液晶パネルの各画素を制御する。これによって、予め定義された欠陥の視認性の程度に応じて明領域の幅が調整され、明領域と暗領域との組を少なくとも1つ形成した照明光が被検査物Obの被検査面に照射される。一例の具体例では、処理S1でグレードIIIのように比較的高いグレード値が入力されると、視認性の程度が比較的高いため、明領域調整部32は、照明部1aにおける第1および第2照明部1a-1、1a-2それぞれを、
図3Aに示すように、比較的幅の広い矩形状(帯状、ストライプ状)の第1明領域LA-1、第1明領域LA-1の幅より狭い幅を持つ矩形状の暗領域DA、および、第1明領域LA-1と同幅を持つ矩形状の第2明領域LA-2を順次に並置した照明パターンとなるように、制御する。これによって視認性の程度が比較的高い欠陥DEを検知できる比較的広い幅を持つ、好ましくは前記グレードIIIでの最大幅を持つ矩形状の第1および第2明領域LA-1、LA-2で被検査物Obの被検査面が照明できる。また、他の一例の具体例では、処理S1でグレードIのように比較的低いグレード値が入力されると、視認性の程度が比較的低いため、明領域調整部32は、照明部1aにおける第1および第2照明部1a-1、1a-2それぞれを、
図3Bに示すように、比較的幅の狭い矩形状の4個の第1ないし第4明領域LA-1~LA-4、および、これら第1ないし第4明領域LA-1~LA-4と同幅を持つ矩形状の3個の第1ないし第3暗領域DA-1~DA-3を交互に並置した明暗照明パターンとなるように、制御する。これによって視認性の程度が比較的低い欠陥DEを検知できる幅を持つ、好ましくは前記グレードIでの最大幅を持つ矩形状の第1ないし第4明領域LA-1、LA-2、LA-3、LA-4で被検査物Obの被検査面が照明される。このような例では、照明部1aは、明領域LAと暗領域DAとの組を複数形成して照明光を照射する。これによってより広範囲で被検査面が検査できる。
【0038】
次に、このように処理S3で前記欠陥の視認性の程度に応じた明領域の幅を持つ照明光で被検査物Obの被検査面を照明すると、表面欠陥検査装置Dは、制御処理部3の欠陥検出部33によって、照明部1aで上述のように照明された被検査物Obの被検査面を、撮像部2で撮像させ、撮像部2でその画像を生成して取得する(S4)。
【0039】
次に、表面欠陥検査装置Dは、欠陥検出部33によって、この撮像部2で生成した画像に基づいて欠陥を検出し、この検出した検出結果を記憶部7に記憶する(S5)。
【0040】
欠陥の検出手法は、上述したように、公知の手法が用いられて良いが、本実施形態では、次のような手法で、欠陥が検出されている。
【0041】
図7において、欠陥検出部33は、処理S4で取得された画像I(O)に対し、照明光の明領域LAよる画像(明画像)と、前記照明光における暗領域DAによる画像(暗画像)との境界を残しながら、いわゆる画像のごま塩ノイズを消すために、所定の画像フィルタを用いてエッジ保存の平滑化処理を実行する。これによって処理S4で取得された画像I(O)から基準画像I(B)が生成される(S51)。
【0042】
次に、欠陥検出部33は、欠陥を予備検出する欠陥予備検出処理S52および予備検出された欠陥から明画像に存在する欠陥を抽出するためのマスクを生成するマスク生成処理S53を、互いに並列に、あるいは、欠陥予備検出処理S52およびマスク生成処理S53の順に順次に、あるいは、マスク生成処理S53および欠陥予備検出処理S52の順に順次に、実行する。
【0043】
この欠陥予備検出処理S52では、より具体的には、まず、
図8に示す曲線αにおける欠陥を示す急峻な落ち込みを検出するために、欠陥検出部33は、処理S51で生成した基準画像I(B)に対し、対象画素を移動させながら、例えば当該対象画素を中央に3×3や4×4等の所定の範囲で平均を求めて当該対象画素の画素値とする移動平均処理を実行することによって、前記基準画像I(B)からスムージング画像I(S)を生成する(S521)。つまり、スムージング画像I(S)は、欠陥を示す前記急峻な落ち込みを検出するため、
図8に示す曲線αと曲線βの差異を発生させるために作成される。
【0044】
次に、欠陥検出部33は、処理S521で生成したスムージング画像I(S)と処理S51で生成した基準画像I(B)との差分を求めることによって、より具体的には処理S521で生成したスムージング画像I(S)から処理S51で生成した基準画像I(B)を減算することによって、差分画像I(Sub)を生成する(S522)。この処理によって、例えば、
図8に示すように、1つのライン(行)において、スムージング画像I(S)における各画素の各画素値からなるスムージング画像画素値曲線βと基準画像I(B)における各画素の各画素値からなる基準画像画素値曲線αとの差分を求めると、画像上では暗く写る欠陥部分では、その差が大きくなる。
【0045】
なお、上述では、処理S521で生成したスムージング画像I(S)と処理S51で生成した基準画像I(B)との差分を求めることによって差分画像I(Sub)が生成されたが、差分画像I(Sub)に代え、処理S521で生成したスムージング画像I(S)と処理S51で生成した基準画像I(B)との比を求めることによって比画像I(Div)が生成されてもよい。
【0046】
次に、欠陥検出部33は、処理S522で求めた差分画像I(Sub)に対し、各画素それぞれについて、予め設定された所定の閾値(第1の二値化閾値)と比較することによって二値化し、これによって欠陥候補を検出し、欠陥候補画像I(RD)を生成する(S523)。すなわち、画素値が0から255までの8ビットで表現される場合において、当該画素の画素値(処理S522での差分値)が前記第1の二値化閾値未満である場合には、当該画素の画素値が0とされ、当該画素の画素値(処理S522での差分値)が前記第2の二値化閾値以上である場合には、当該画素の画素値が255とされる。前記第1の二値化閾値は、複数のサンプルから予め適宜に設定される。
【0047】
次に、欠陥検出部33は、処理S523で生成した欠陥候補画像I(RD)から、画像上で画素値255が小面積で集合する部分をノイズとして消去するために、予め設定された所定の閾値(欠陥検出閾値)以上の面積で集合する部分を欠陥としてラベル(例えばシリアル番号)を付して抽出した欠陥画像I(D)を生成する(S524)。前記欠陥検出閾値は、複数のサンプルから予め適宜に設定される。
【0048】
このように欠陥予備検出処理S52が実行される。
【0049】
一方、マスク生成処理S53では、より具体的には、まず、欠陥検出部33は、明画像および暗画像を抽出するために、処理S51で生成した基準画像I(B)に対し、各画素それぞれについて、予め設定された所定の閾値(第2の二値化閾値)と比較することによって二値化し、二値化画像I(BN)を生成する(S531)。すなわち、画素値が0から255までの8ビットで表現される場合において、当該画素の画素値が前記第2の二値化閾値未満である場合には、当該画素の画素値が0とされ、当該画素の画素値が前記第2の二値化閾値以上である場合には、当該画素の画素値が255とされる。前記第2の二値化閾値は、複数のサンプルから予め適宜に設定される。
【0050】
例えば、
図9Aに示すように、処理S531で生成した二値化画像I(BN)が所々抜けた画像になるため、次に、欠陥検出部33は、処理S531で生成した二値化画像I(BN)に対し、
図9Bに示すように、明画像と暗画像との境界における暗画像を明画像側へ膨張してくっつける膨張処理を実行し、膨張した回数だけ縮小して元の大きさに戻し、膨張縮小画像I(EX)を生成する(S532)。
【0051】
明領域と暗領域との境界部分において画像上に出る、いわゆるゆず肌を除去するために、欠陥検出部33は、膨張縮小画像I(EX)に対し、明画像における暗画像との境界を明画像側へ後退させることによって、マスク画像I(M)を生成する(S533)。より具体的には、欠陥検出部33は、明画像と暗画像との境界から、予め設定された画素数だけ、明画像側を削る。すなわち、欠陥検出部33は、明画像と暗画像との境界から、予め設定された画素数だけ、明画像側の画素を暗画像に変える。
【0052】
このように欠陥予備検出処理S52が実行される。
【0053】
次に、欠陥検出部33は、欠陥予備検出処理S52における処理S524で生成した欠陥画像I(D)と、マスク生成処理S53における処理S533で生成したマスク画像I(M)とのANDを演算し、これによってマスク画像I(M)における明画像に当たる部分に生じている、欠陥画像I(D)の欠陥を、最終的な欠陥として抽出し(S54)、本欠陥の検出処理S5を終了する。
【0054】
欠陥の検出処理S5の次に、欠陥検出部33は、処理S5で求めた検出結果を出力部5に出力する。なお、必要に応じて、欠陥検出部33は、処理S5で求めた検出結果をIF部6から出力しても良い。
【0055】
次に、欠陥検出部33は、本処理が終了か否かを判定する(S7)。この判定の結果、例えばユーザにより入力部4で本処理の終了を受け付けるなどしている場合には、本処理の終了と判定し(Yes)、欠陥検出部33は、本処理を終了し、一方、本処理の終了ではない場合(No)には、次の検査を実行するために、欠陥検出部33は、処理を処理S4に戻す。例えば、前記欠陥の視認性の程度を表すグレード値を変えずに、次の被検査物Obや被検査物Obにおける次の被検査面が検査される場合には、被検査物Obや被検査面が次の被検査物Obや次の被検査面に変えられて処理が処理S4に戻され、一方、検査自体が終了される場合や前記欠陥の視認性の程度を表すグレード値を変えて次の被検査物Obや次の被検査面が検査される場合には、本処理が終了される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態における表面欠陥検査装置Dおよびこれに実装された表面欠陥検査方法は、予め定義された欠陥の視認性の程度に応じて明領域LAの幅に調整して被検査物Obの被検査面に照明光を照射する。したがって、上記表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法は、前記欠陥の視認性の程度に応じて明領域LAの幅を最大化できるので、欠陥検出の精度を少なくとも維持しつつ、効率化を図ることができる。
【0057】
上記表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法は、対応関係情報記憶部71に対応関係情報(本実施形態ではテーブル形式の対応関係情報テーブルTBa)を記憶するので、前記対応関係情報を参照することで、前記欠陥の視認性の程度から前記明領域の幅を容易に決定できる。
【0058】
なお、上述の実施形態では、照明部1aは、例えば高輝度液晶表示装置等の高輝度ディスプレイを備えて構成されたが、照明部1aは、これに限定されるものではなく、適宜に、変更できる。
【0059】
図10は、前記表面欠陥検査装置における第2態様の照明部およびその照明パターンの一例を説明するための図である。
図10Aは、第1照明パターンで照明光を放射している照明部1b-1(1b-2)を示し、
図10Bは、第2照明パターンで照明光を放射している照明部1b-1(1b-2)を示す。例えば、上述の照明部1aに換え、
図10に示す第1および第2照明部1b-1、1b-2を備える照明部1bが用いられても良い。これら第1および第2照明部1b-1、1b-2それぞれは、
図10に示すように、順次に並置された複数の直状照明ユニット11を備えて構成される。この
図10に示す例では、複数の直状照明ユニット11は、8個の第1ないし第8直状照明ユニット11-1~11-8を備えて構成されている。これら第1ないし第8直状照明ユニット11-1~11-8は、それぞれ、例えば直状蛍光灯や直線状に配置された複数の高輝度LED等の、光照射面が細長な矩形状(帯状、ストライプ状)を呈した直状の直状光源部と、前記直状光源部の前方に配置された矩形状の拡散板等を備え、前記直状光源部から前記拡散板を介して照明光を放射する。そして、このような照明部1bが用いられる場合では、明領域調整部32は、前記欠陥の視認性の程度に応じた明領域LAの幅となるように、前記複数の直状照明ユニット11を点灯する。一例の具体例では、上述の処理S1でグレードIIIのように比較的高いグレード値が入力されると、視認性の程度が比較的高いため、上述の処理S2および処理S3において、明領域調整部32は、照明部1bにおける第1および第2照明部1b-1、1b-2それぞれを、
図10Aに示すように、比較的幅の広い矩形状の第1明領域LA-1、第1明領域LA-1の幅より狭い幅を持つ矩形状の暗領域DA、および、第1明領域LA-1と同幅を持つ矩形状の第2明領域LA-2を順次に並置した照明パターンとなるように、制御する。すなわち、上述の処理S3において、明領域調整部32は、第1ないし第3直状照明ユニット11-1~11-3および第6ないし第3直状照明ユニット11-6~11-8を点灯し、第4および第6直状照明ユニット11-4、11-5を消灯する。これによって視認性の程度が比較的高い欠陥DEを検知できる比較的広い幅を持つ、好ましくは前記グレードIIIでの最大幅を持つ矩形状の第1および第2明領域LA-1、LA-2で被検査物Obの被検査面が照明できる。また、他の一例の具体例では、処理S1でグレードIのように比較的低いグレード値が入力されると、視認性の程度が比較的低いため、上述の処理S2および処理S3において、明領域調整部32は、照明部1bにおける第1および第2照明部1b-1、1b-2それぞれを、
図10Bに示すように、比較的幅の狭い矩形状の4個の第1ないし第4明領域LA-1~LA-4、および、これら第1ないし第4明領域LA-1~LA-4と同幅を持つ矩形状の4個の第1ないし第4暗領域DA-1~DA-4を交互に並置した明暗照明パターンとなるように、制御する。すなわち、上述の処理S3において、明領域調整部32は、第1、第3、第5および第7直状照明ユニット11-1、11-3、11-5、11-7を点灯し、第2、第4、第6および第8直状照明ユニット11-2、11-4、11-6、11-8を消灯する。これによって視認性の程度が比較的低い欠陥DEを検知できる幅を持つ、好ましくは前記グレードIでの最大幅を持つ矩形状の第1ないし第4明領域LA-1、LA-2、LA-3、LA-4で被検査物Obの被検査面が照明される。
【0060】
また、上述の実施形態では、対応関係情報記憶部71と、明領域の幅を前記欠陥の視認性の程度に対応付けて対応関係情報として記憶したが、対応関係情報記憶部71は、前記明領域の幅を前記被検査物Obの種類にさらに対応付けて前記対応関係情報として記憶しても良い。この場合では、入力部4は、被検査物Obの種類の入力をさらに受け付け、明領域調整部32は、対応関係情報記憶部71に記憶された対応関係情報から、入力部4で受け付けた前記欠陥の視認性の程度および被検査物Obの種類に対応する前記明領域の幅を決定し、この決定した前記明領域の幅に調整する。被検査物Obの種類によって許容される欠陥の程度が異なる。例えば、上級クラスの車種では、許容されない欠陥でも、低級クラスの車種では、許容される場合が有り得る。上記表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法は、前記明領域の幅を前記欠陥の視認性の程度だけでなく被検査物Obの種類にも対応付けられているので、前記欠陥の視認性の程度だけでなく被検査物Obの種類も勘案することによって、前記明領域の幅を決定できる。
【0061】
図11は、前記表面欠陥検査装置に記憶される第2態様の対応関係情報テーブルを示す図である。このような被検査物Obの種類は、例えば被検査物Obが外装塗装された車両である場合、前記車両のクラス、前記車両の仕向地および前記車両の部位のうちの少なくとも1つで分類されている。例えば、前記被検査物Obの種類は、前記車両のクラス、前記車両の仕向地および前記車両の部位を含み、対応関係情報記憶部71は、前記明領域の幅を前記欠陥の視認性の程度、前記車両のクラス、前記車両の仕向地および前記車両の部位に対応付けて対応関係情報として記憶する。このような対応関係情報は、例えば
図11に示すように、テーブル形式で対応関係情報記憶部71に記憶されている。この
図11に示す対応関係情報テーブルTBbは、上述の、前記欠陥の視認性の程度を表すグレードを登録する視認性程度フィールド711、および、前記明領域の幅を登録する明領域幅フィールド712を備えるだけでなく、例えばSクラスやAクラス等の、前記車両のクラスを登録するクラスフィールド713、例えば日本向けや米国向け等の、前記車両の仕向地を登録する仕向地フィールド714および例えばドアやボンネットやルーフ等の、前記車両の部位を登録する部位フィールド715をさらに備え、前記明領域幅フィールド712には、視認性程度フィールド711、クラスフィールド713、仕向地フィールド714および部位フィールド715それぞれに登録されたグレード、車両のクラス、車両の仕向地および部位に対応する前記明領域の幅が登録され、グレード、車両のクラス、車両の仕向地および部位の組み合わせごとにレコードを持つ。なお、対応関係情報テーブルTBbは、グレード、車両のクラス、車両の仕向地および部位のすべての組み合わせに対し、各組み合わせごとにレコードを備えても良いが、前記すべての組み合わせの一部の組み合わせに対し、各組み合わせごとにレコードを備えても良い。
【0062】
このような表面欠陥検査装置Dおよび表面欠陥検査方法は、被検査物Obの種類が前記車両のクラスを含む場合では、前記欠陥の視認性の程度だけでなく前記車両のクラスも勘案することによって、前記明領域の幅を決定でき、被検査物Obの種類が前記車両の仕向地を含む場合では、前記欠陥の視認性の程度だけでなく前記車両の仕向地も勘案することによって、前記明領域の幅を決定でき、被検査物Obの種類が前記車両の部位を含む場合では、前記欠陥の視認性の程度だけでなく前記車両の部位も勘案することによって、前記明領域の幅を決定できる。
【0063】
本明細書は、上記のように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0064】
一態様にかかる表面欠陥検査装置は、被検査物の被検査面に照明光を照射して前記被検査面を撮像した画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検出する表面欠陥検査装置であって、明領域と暗領域との組を少なくとも1つ形成して前記照明光を照射する照明部と、予め定義された欠陥の視認性の程度に応じて前記明領域の幅に調整する明領域調整部とを備える。好ましくは、上述の表面欠陥検査装置において、前記照明部は、光を放射する光源部と、明領域と暗領域との組を少なくとも1つ形成して前記光源部から放射された光を前記照明光として照明する明暗領域形成部とを備え、前記明領域調整部は、前記欠陥の視認性の程度に応じた明領域の幅となるように、前記明暗領域形成部を制御する。好ましくは、上述の表面欠陥検査装置において、前記照明部は、例えば高輝度液晶表示装置等の高輝度ディスプレイであり、前記明領域調整部は、前記欠陥の視認性の程度に応じた明領域の幅となるように、前記高輝度ディスプレイを制御する。好ましくは、上述の表面欠陥検査装置において、前記照明部は、順次に並置された複数の直状照明ユニットを備え、前記明領域調整部は、前記欠陥の視認性の程度に応じた明領域の幅となるように、前記複数の直状照明ユニットを点灯する。好ましくは、上述の表面欠陥検査装置において、前記照明部は、明領域と暗領域との組を複数形成して前記照明光を照射する。
【0065】
このような表面欠陥検査装置は、予め定義された欠陥の視認性の程度に応じて前記明領域の幅に調整して被検査物の被検査面に照明光を照射する。したがって、上記表面欠陥検査装置は、前記欠陥の視認性の程度に応じて明領域の幅を最大化できるので、欠陥検出の精度を少なくとも維持しつつ、効率化を図ることができる。
【0066】
他の一態様では、上述の表面欠陥検査装置において、前記明領域の幅を前記欠陥の視認性の程度に対応付けて対応関係情報として記憶する対応関係情報記憶部と、前記欠陥の視認性の程度の入力を受け付ける入力部とをさらに備え、前記明領域調整部は、前記対応関係情報記憶部に記憶された前記対応関係情報から、前記入力部で受け付けた前記欠陥の視認性の程度に対応する前記明領域の幅を決定し、前記決定した前記明領域の幅に調整する。
【0067】
このような表面欠陥検査装置は、前記対応関係情報を記憶するので、前記対応関係情報を参照することで、前記欠陥の視認性の程度から前記明領域の幅を容易に決定できる。
【0068】
他の一態様では、上述の表面欠陥検査装置において、前記対応関係情報記憶部は、前記明領域の幅を前記被検査物の種類にさらに対応付けて前記対応関係情報として記憶し、前記入力部は、前記被検査物の種類の入力をさらに受け付け、前記明領域調整部は、前記対応関係情報記憶部に記憶された前記対応関係情報から、前記入力部で受け付けた前記欠陥の視認性の程度および前記被検査物の種類に対応する前記明領域の幅を決定し、前記決定した前記明領域の幅に調整する。
【0069】
被検査物の種類によって許容される欠陥の程度が異なる。例えば、上級クラスの車種では、許容されない欠陥でも、低級クラスの車種では、許容される場合が有り得る。上記表面欠陥検査装置は、前記明領域の幅を前記欠陥の視認性の程度だけでなく前記被検査物の種類にも対応付けられているので、前記欠陥の視認性の程度だけでなく前記被検査物の種類も勘案することによって、前記明領域の幅を決定できる。
【0070】
他の一態様では、上述の表面欠陥検査装置において、前記被検査物は、外装塗装された車両であり、前記被検査物の種類は、前記車両のクラス、前記車両の仕向地および前記車両の部位のうちの少なくとも1つで分類されている。
【0071】
このような表面欠陥検査装置は、前記被検査物の種類が前記車両のクラスを含む場合では、前記欠陥の視認性の程度だけでなく前記車両のクラスも勘案することによって、前記明領域の幅を決定でき、前記被検査物の種類が前記車両の仕向地を含む場合では、前記欠陥の視認性の程度だけでなく前記車両の仕向地も勘案することによって、前記明領域の幅を決定でき、前記被検査物の種類が前記車両の部位を含む場合では、前記欠陥の視認性の程度だけでなく前記車両の部位も勘案することによって、前記明領域の幅を決定できる。
【0072】
他の一態様にかかる表面欠陥検査方法は、被検査物の被検査面に照明光を照射して前記被検査面を撮像した画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検出する表面欠陥検査方法であって、予め定義された欠陥の視認性の程度に応じて明領域の幅に調整する明領域調整工程と、前記明領域調整工程で調整された幅の明領域と暗領域との組を少なくとも1つ形成して前記照明光を照射する照明工程とを備える。
【0073】
このような表面欠陥検査方法は、予め定義された欠陥の視認性の程度に応じて前記明領域の幅に調整して被検査物の被検査面に照明光を照射する。したがって、上記表面欠陥検査方法は、前記欠陥の視認性の程度に応じて明領域の幅を最大化できるので、欠陥検出の精度を少なくとも維持しつつ、効率化を図ることができる。
【0074】
この出願は、2017年5月29日に出願された日本国特許出願特願2017-105515を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0075】
本発明の実施形態が詳細に図示され、かつ、説明されたが、それは単なる図例及び実例であって限定ではない。本発明の範囲は、添付されたクレームの文言によって解釈されるべきである。
【0076】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、表面の欠陥を検出する表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法が提供できる。