特許 7021667 表面欠陥検査装置および該方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-02-08

(45)【発行日】2022-02-17

(54)【発明の名称】表面欠陥検査装置および該方法

(51)【国際特許分類】

   G01N 21/88 20060101AFI20220209BHJP

   G06T 7/00 20170101ALI20220209BHJP

【ＦＩ】

G01N21/88 Z

G06T7/00 610

【請求項の数】 7

(21)【出願番号】P 2019521990

(86)(22)【出願日】2018-04-06

(86)【国際出願番号】 JP2018014684

(87)【国際公開番号】W WO2018221006

(87)【国際公開日】2018-12-06

【審査請求日】2020-12-23

(31)【優先権主張番号】P 2017105516

(32)【優先日】2017-05-29

(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP

(73)【特許権者】

【識別番号】000001270

【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100067828

【弁理士】

【氏名又は名称】小谷 悦司

(74)【代理人】

【識別番号】100115381

【弁理士】

【氏名又は名称】小谷 昌崇

(74)【代理人】

【識別番号】100111453

【弁理士】

【氏名又は名称】櫻井 智

(72)【発明者】

【氏名】原田 孝仁

(72)【発明者】

【氏名】柏原 将人

(72)【発明者】

【氏名】脇村 泰三

【審査官】嶋田 行志

(56)【参考文献】

【文献】特開平０８－０８６６３３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平０２－１４９３７７（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１４－００２０４１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００３－２７０１６２（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許第０６０１２８２５（ＵＳ，Ａ）

【文献】実開平０１－１３４２０７（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｇ０１Ｎ ２１／８４－Ｇ０１Ｎ ２１／９５８

Ｇ０１Ｂ １１／００－Ｇ０１Ｂ １１／３０

Ｇ０６Ｔ ７／００

ＪＳＴＰｌｕｓ／ＪＭＥＤＰｌｕｓ／ＪＳＴ７５８０（ＪＤｒｅａｍＩＩＩ）

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

被検査物の被検査面に照明光を照射して前記被検査面を撮像した画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検出する表面欠陥検査装置であって、
明領域と暗領域との組を少なくとも１つ形成して前記照明光を照射する照明部と、
前記被検査面の欠陥を検出する際に、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じて、前記明領域の照明光で照射された前記被検査面を写し込んだ画像に設定される、欠陥を検出するための欠陥検出画像領域の範囲を調整する領域調整部と、
前記欠陥検出画像領域の範囲を調整するための調整値を前記ゆず肌の視認性の程度に対応付けて対応関係情報として記憶する対応関係情報記憶部と、
前記ゆず肌の視認性の程度の入力を受け付ける入力部とを備え、
前記領域調整部は、前記対応関係情報記憶部に記憶された前記対応関係情報から、前記入力部で受け付けた前記ゆず肌の視認性の程度に対応する前記調整値を決定し、前記決定した調整値で前記欠陥検出画像領域の範囲を調整する、
表面欠陥検査装置。

【請求項2】

前記対応関係情報記憶部は、前記調整値を、許容される欠陥の程度が異なる前記被検査物の種類にさらに対応付けて前記対応関係情報として記憶し、
前記入力部は、前記被検査物の種類の入力をさらに受け付け、
前記領域調整部は、前記対応関係情報記憶部に記憶された前記対応関係情報から、前記入力部で受け付けた前記ゆず肌の視認性の程度および前記被検査物の種類に対応する前記調整値を決定し、前記決定した調整値で前記欠陥検出画像領域の範囲を調整する、
請求項１に記載の表面欠陥検査装置。

【請求項3】

前記被検査物は、外装塗装された車両であり、
前記被検査物の種類は、前記車両の部位で分類されている、
請求項２に記載の表面欠陥検査装置。

【請求項4】

前記明領域の範囲の入力を受け付ける第２入力部と、
前記第２入力部で受け付けた前記明領域の範囲となるように前記照明部を制御する制御部とをさらに備える、
請求項１ないし請求項３のいずれか１項に記載の表面欠陥検査装置。

【請求項5】

前記対応関係情報記憶部は、前記ゆず肌の視認性の程度に対応した複数の調整値を記憶しており、
前記入力部は、複数の選択肢の中から前記ゆず肌の視認性の程度に応じた１つを選択するものである、
請求項１ないし請求項４のいずれか１項に記載の表面欠陥検査装置。

【請求項6】

被検査物の被検査面に照明光を照射して前記被検査面を撮像した画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検出する表面欠陥検査方法であって、
明領域と暗領域との組を少なくとも１つ形成した照明光を照射する照明工程と、
前記被検査面の欠陥を検出する際に、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じて、前記明領域の照明光で照射された前記被検査面を写し込んだ画像に設定される、欠陥を検出するための欠陥検出画像領域の範囲を調整する領域調整工程と、
前記欠陥検出画像領域の範囲を調整するための調整値を前記ゆず肌の視認性の程度に対応付けて対応関係情報として対応関係情報記憶部に記憶する対応関係情報記憶工程と、
前記ゆず肌の視認性の程度の入力を受け付ける入力工程とを備え、
前記領域調整工程は、前記対応関係情報記憶部に記憶された前記対応関係情報から、前記入力工程で受け付けた前記ゆず肌の視認性の程度に対応する前記調整値を決定し、前記決定した調整値で前記欠陥検出画像領域の範囲を調整する、
表面欠陥検査方法。

【請求項7】

前記対応関係情報記憶部は、前記ゆず肌の視認性の程度に対応した複数の調整値を記憶しており、
前記入力工程は、複数の選択肢の中から前記ゆず肌の視認性の程度に応じた１つを選択するものである、
請求項６に記載の表面欠陥検査方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、表面の欠陥を検出する表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、車両のボディーにおける塗装表面の欠陥を画像処理によって検出する表面欠陥検査装置が知られており、例えば、特許文献１等に開示されている。前記欠陥は、例えばいわゆる「ブツ」、「ダレ」および「ハジキ」等と呼称される塗装面における凹凸等である。

【0003】

この特許文献１に開示された表面欠陥検査装置は、被検査物体の被検査面に明暗パターンの光を照射し、前記被検査面からの反射光に基づいて受光画像を作成し、この受光画像に基づいて被検査面上の欠陥を検査する装置である。

【0004】

この特許文献１のように、光が照明された被検査面を撮像することによって得られた画像から欠陥を検出する場合、前記欠陥が無ければ撮像部へ向かう反射光が前記欠陥によって撮像部へ向かう方向とは異なる方向に反射されるため、前記欠陥は、画像上では、暗く写る。このため、画像処理によって前記画像における暗い部分が抽出され、前記欠陥が検出される。一方、塗装表面には、いわゆるゆず肌と呼ばれる、欠陥ではない凹凸が存在する。上述の手法によって欠陥が検出される場合、ゆず肌の凹凸が欠陥として誤検出されてしまう場合がある。そこで、前記特許文献１に開示された表面欠陥検査装置は、受光画像において、欠陥候補領域の面積Ｓが予め設定された基準の面積Ｓｒｅｆ以上である場合に明暗パターンの境界領域を膨張、収縮することで、明暗パターン近傍に発生するゆず肌を前記明暗パターンの境界領域に一体化し、これによってゆず肌の誤検出を防止している。

【0005】

前記特許文献１に開示された表面欠陥検査装置では、前記基準の面積Ｓｒｅｆが比較的大きな値に設定されると、欠陥候補領域の面積Ｓが前記基準の面積Ｓｒｅｆ以上であるケースが低減するので、明暗パターンの境界領域を膨張、収縮する画像処理が低減し、この結果、画像処理時間、すなわち、検査時間が短縮化できる。しかしながら、この場合では、前記欠陥候補領域がゆず肌に基づくものでも、その面積Ｓが前記基準の面積Ｓｒｅｆ以上とならず、ゆず肌が誤検出されてしまいかねない。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【文献】特開平１０－９８３５号公報

【発明の概要】

【0007】

本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、ゆず肌の誤検出を低減しつつ、検査時間の短縮化を図ることができる表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法を提供することである。

【0008】

上述した目的を実現するために、本発明の一側面を反映した表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法は、被検査物の被検査面に照明光を照射して前記被検査面を撮像した画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検出する装置および方法であって、明領域と暗領域との組を少なくとも１つ形成して前記照明光を照射し、前記被検査面の欠陥を検出する際に、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じて、前記明領域の照明光で照射された前記被検査面を写し込んだ画像に設定される、欠陥を検出するための欠陥検出画像領域の範囲を調整する。

【0009】

発明の１または複数の実施形態により与えられる利点および特徴は、以下に与えられる詳細な説明および添付図面から十分に理解される。これら詳細な説明及び添付図面は、例としてのみ与えられるものであり本発明の限定の定義として意図されるものではない。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】実施形態における表面欠陥検査装置の構成を示すブロック図である。

【図2】前記表面欠陥検査装置の構成を示す概略外観模式図である。

【図3】前記表面欠陥検査装置における第１態様の照明部およびその照明パターンの一例を説明するための図である。

【図4】前記表面欠陥検査装置に記憶される第１態様の対応関係情報テーブルを示す図である。

【図5】ゆず肌の視認性の程度と調整値との関係を説明するための図である。

【図6】前記表面欠陥検査装置の動作を示すフローチャートである。

【図7】図６に示すフローチャートにおける欠陥の検出処理を説明するための図である。

【図8】図７に示す欠陥候補の検出処理を説明するための図である。

【図9】図７に示す膨張、縮小の処理を説明するための図である。

【図10】前記表面欠陥検査装置における第２態様の照明部およびその照明パターンの一例を説明するための図である。

【図11】前記表面欠陥検査装置に記憶される第２態様の対応関係情報テーブルを示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。

【0012】

本実施形態における表面欠陥検査装置は、被検査物Ｏｂの被検査面に照明光を照射して前記被検査面を撮像した画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検出する装置であって、明領域と暗領域との組を少なくとも１つ形成して前記照明光を照射する照明部と、前記被検査面の欠陥を検出する際に、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じて、前記明領域の照明光で照射された前記被検査面を写し込んだ画像に設定される、欠陥を検出するための欠陥検出画像領域の範囲を調整する領域調整部とを備える。このような表面欠陥検査装置およびこれに実装された表面欠陥検査方法は、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じて前記欠陥検出画像領域の範囲を調整するので、ゆず肌の誤検出を低減しつつ、検査時間の短縮化を図ることができる。以下、このような表面欠陥検査装置およびこれに実装された表面欠陥検査方法について、より具体的に説明する。

【0013】

図１は、実施形態における表面欠陥検査装置の構成を示すブロック図である。図２は、前記表面欠陥検査装置の構成を示す概略外観模式図である。図３は、前記表面欠陥検査装置における第１態様の照明部およびその照明パターンの一例を説明するための図である。図３Ａは、第１照明パターンで照明光を放射している照明部１ａ－１（１ａ－２）を示し、図３Ｂは、第２照明パターンで照明光を放射している照明部１ａ－１（１ａ－２）を示す。図４は、前記表面欠陥検査装置に記憶される第１態様の対応関係情報テーブルを示す図である。図５は、ゆず肌の視認性の程度と調整値との関係を説明するための図である。図５Ａは、ゆず肌の視認性が相対的に高く、調整値を相対的に大きくする必要がある場合を示し、図５Ｂは、ゆず肌の視認性が相対的に低く、調整値を相対的に小さくできる場合を示す。

【0014】

実施形態における表面欠陥検査装置Ｄは、図１および図２に示すように、例えば、照明部１ａと、撮像部２と、装置本体ＰＣとを備える。装置本体ＰＣは、制御処理部３と、入力部４と、出力部５と、インターフェース部（ＩＦ部）６と、記憶部７とを備える。

【0015】

照明部１ａは、装置本体ＰＣの制御処理部３に接続され、制御処理部３の制御に従って、明領域と暗領域との組を少なくとも１つ形成して照明光を照射する装置である。本実施形態では、照明部１ａは、図２に示すように、撮像部２を挟んで互いに並置された２個の第１および第２照明部１ａ－１、１ａ－２を備える。第１および第２照明部１ａ－１、１ａ－２は、それぞれ、例えば、光を放射する光源部と、明領域と暗領域との組を少なくとも１つ形成して前記光源部から放射された光を前記照明光として照明する明暗領域形成部とを備えて構成される。このような第１および第２照明部１ａ－１、１ａ－２は、それぞれ、図３に示すように、例えば、高輝度液晶表示装置等の高輝度ディスプレイを備えて構成される。照明部１ａが高輝度液晶表示装置である場合では、光を放射する、そのバックライトが、前記光源部の一例に相当し、前記バックライトにおける光放射面の前方に配置され、バックライトからの光を透過させるか遮光するかを画素ごとに制御する、その液晶パネルが前記明暗領域形成部の一例に相当する。

【0016】

撮像部２は、装置本体ＰＣの制御処理部３に接続され、制御処理部３の制御に従って、被検査物Ｏｂの被検査面を撮像し、画像を生成する装置である。欠陥は、後述するように、画像を画素値で画像処理することによって検出するので、撮像部２は、例えば、カラーで画像を生成するカメラを備えて構成されて良く、モノクロで画像を生成するカメラを備えて構成されて良い。

【0017】

入力部４は、装置本体ＰＣの制御処理部３に接続され、例えば、検査の開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えばゆず肌の視認性の程度や明領域ＬＡの範囲等の前記検査を行う上で必要な各種データを表面欠陥検査装置Ｄに入力する装置であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ、キーボードおよびマウス等である。出力部５は、装置本体ＰＣの制御処理部３に接続され、制御処理部３の制御に従って、入力部４から入力されたコマンドやデータ、および、当該表面欠陥検査装置Ｄによって求められた検出結果を出力する装置であり、例えばＣＲＴディスプレイ、ＬＣＤ（液晶表示装置）および有機ＥＬディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。

【0018】

なお、入力部４および出力部５からタッチパネルが構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部４は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置であり、出力部５は、表示装置である。このタッチパネルでは、表示装置の表示面上に位置入力装置が設けられ、表示装置に入力可能な１または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置を触れると、位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として表面欠陥検査装置Ｄに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い表面欠陥検査装置Ｄが提供される。

【0019】

ＩＦ部６は、装置本体ＰＣの制御処理部３に接続され、制御処理部３の制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路であり、例えば、シリアル通信方式であるＲＳ－２３２Ｃのインターフェース回路、Ｂｌｕｅｔｏｏｔｈ（登録商標）規格を用いたインターフェース回路、ＩｒＤＡ（Ｉｎｆｒａｒｅｄ Ｄａｔａ Ａｓｓｃｏｉａｔｉｏｎ）規格等の赤外線通信を行うインターフェース回路、および、ＵＳＢ（Ｕｎｉｖｅｒｓａｌ Ｓｅｒｉａｌ Ｂｕｓ）規格を用いたインターフェース回路等である。また、ＩＦ部６は、外部機器との間で通信を行う回路であり、例えば、データ通信カードや、ＩＥＥＥ８０２．１１規格等に従った通信インターフェース回路等であっても良い。

【0020】

記憶部７は、装置本体ＰＣの制御処理部３に接続され、制御処理部３の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。

【0021】

前記各種の所定のプログラムには、制御プログラムおよび欠陥検出プログラム等が含まれる。前記制御プログラムは、表面欠陥検査装置Ｄの各部１ａ、２、４～７を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御するプログラムである。本実施形態では、照明部１ａを制御する際に、前記制御プログラムは、入力部４で受け付けた明領域ＬＡの範囲となるように照明部１ａを制御する。前記欠陥検出プログラムは、撮像部２によって生成された画像に基づいて被検査物Ｏｂの被検査面に生じている欠陥を検出するプログラムである。本実施形態では、前記被検査面の欠陥を検出する際に、前記欠陥検出プログラムは、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じて、前記明領域の照明光で照射された前記被検査面を写し込んだ画像に設定される、欠陥を検出するための欠陥検出画像領域の範囲を調整する。前記各種の所定のデータには、例えば、対応関係情報、撮像部２で生成された画像、後述のように欠陥を検出する画像処理で生成される各種の中間画像等の、各プログラムを実行する上で必要なデータ等が含まれる。

【0022】

記憶部７は、例えば不揮発性の記憶素子であるＲＯＭ（Ｒｅａｄ Ｏｎｌｙ Ｍｅｍｏｒｙ）や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるＥＥＰＲＯＭ（Ｅｌｅｃｔｒｉｃａｌｌｙ Ｅｒａｓａｂｌｅ Ｐｒｏｇｒａｍｍａｂｌｅ Ｒｅａｄ Ｏｎｌｙ Ｍｅｍｏｒｙ）等を備える。記憶部７は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部３のワーキングメモリとなるＲＡＭ（Ｒａｎｄｏｍ Ａｃｃｅｓｓ Ｍｅｍｏｒｙ）等を含む。そして、記憶部７は、前記対応関係情報を記憶するために、対応関係情報記憶部７１を機能的に備える。

【0023】

対応関係情報記憶部７１は、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じた前記欠陥検出画像領域の範囲を表す情報を記憶するものであり、本実施形態では、前記欠陥検出画像領域の範囲を調整するための調整値を前記ゆず肌の視認性の程度に対応付けて対応関係情報として記憶する。前記ゆず肌の視認性の程度とは、ゆず肌の見え易さの度合いであり、前記ゆず肌の視認性の程度は、例えば、予め適宜に設定されたグレードレベルで表され、本実施形態では、グレードＩ、グレードＩＩ、グレードＩＩＩ、・・・の順で順次に前記ゆず肌の視認性の程度が高くなる（前記ゆず肌が見え易くなる）。

【0024】

本実施形態では、明領域と暗領域との組を少なくとも１つ形成した照明光が照明された被検査面を撮像することによって得られた画像から欠陥が検出される。このような検出手法では、図５Ａおよび図５Ｂに示すように、ゆず肌は、被検査面を写し込んだ画像ＳＰ１、ＳＰ２では、明領域の照明光によって照明された部分の画像（明画像）における周辺部（前記明画像のうち、明領域と暗領域との境界に寄った部分）で見え易く、前記明画像の中央位置に近づくほど見えなくなる。このようなゆず肌は、現実には、見え易い前記明画像の周辺部でも一様な視認性を有しておらず、ゆず肌の性状によって、図５Ａに示すように、視認性が相対的に高い場合もあれば、図５Ｂに示すように、視認性が相対的に低い場合もある。したがって、ゆず肌の視認性が相対的に高ければ、ゆず肌を欠陥として検出しないようにするために、図５Ａに示すように、前記明画像の周辺部が第１調整値ＲＳ１で相対的に大きく削除され、欠陥検出画像領域ＲＡ１の範囲を相対的に狭くする必要がある。一方、ゆず肌の視認性が相対的に低ければ、画像ＳＰ２における明領域と暗領域との境界から、前記中央位置へ向かう方向で、ゆず肌が見えなくなるまでの距離が、ゆず肌の視認性が相対的に高い場合に較べて短いので、図５Ｂに示すように、明領域の照明光によって照明された部分の画像における周辺部が相対的に小さい第２調整値ＲＳ２の削除で済み、欠陥検出画像領域ＲＡ２の範囲を相対的に広くできる（ＲＳ１＞ＲＳ２、ＲＡ１＜ＲＡ２）。このような観点から、前記ゆず肌の視認性の程度は、複数のグレードに適宜に分類され（グレード分けされ）、これら複数のグレードそれぞれに応じた欠陥検出画像領域の範囲、本実施形態では、前記欠陥検出画像領域の範囲を調整するための調整値が例えば複数のサンプルを用いた結果から適宜に設定される。

【0025】

このような前記ゆず肌の視認性の程度と前記欠陥検出画像領域の範囲（本実施形態では調整値）との対応関係を表す対応関係情報は、本実施形態では、テーブル形式で対応関係情報記憶部７１に記憶されている。この対応関係情報を登録する対応関係情報テーブルＴＢａは、例えば、図４に示すように、前記ゆず肌の視認性の程度を表すグレードを登録するゆず肌視認性程度フィールド７１１と、ゆず肌視認性程度フィールド７１１に登録されたグレードに対応する前記調整値を登録する調整値フィールド７１２とを備え、各グレードごと（視認性の各程度ごと）にレコードを持つ。図４に示す例では、前記ゆず肌の視認性の程度がグレードＩである場合には調整値は、５画素に、前記ゆず肌の視認性の程度がグレードＩＩである場合には調整値は、３０画素に、そして、前記ゆず肌の視認性の程度がグレードＩＩＩである場合には調整値は、６０画素に、それぞれ、対応付けられている。図４に示す例では、前記調整値は、前記明画像の周辺部から、前記明画像を削る削り幅であり、画素数で表されている。

【0026】

図１および図２に戻って、制御処理部３は、表面欠陥検査装置Ｄの各部１ａ、２、４～７を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、被検査物Ｏｂの被検査面における欠陥を検出するための回路である。制御処理部３は、例えば、ＣＰＵ（Ｃｅｎｔｒａｌ Ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ Ｕｎｉｔ）およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部３は、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部３１および欠陥検出部３２を機能的に備え、欠陥検出部３２は、領域調整部３２１を機能的に備える。

【0027】

制御部３１は、表面欠陥検査装置Ｄの各部１ａ、２、４～７を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、表面欠陥検査装置Ｄ全体の制御を司るものである。本実施形態では、照明部１ａを制御する際に、制御部３１は、入力部４で受け付けた明領域ＬＡの範囲となるように照明部１ａを制御する。より具体的には、上述したように、照明部１ａが光源部および明暗領域形成部を備えて構成される場合、制御部３１は、入力部４で受け付けた明領域の範囲となるように、前記明暗領域形成部を制御する。本実施形態では、上述したように、照明部１ａは、例えば高輝度液晶表示装置等の高輝度ディスプレイであり、制御部３１は、入力部４で受け付けた明領域の範囲となるように、前記高輝度ディスプレイを制御する。例えば、照明部１ａが高輝度液晶表示装置である場合では、制御部３１は、入力部４で受け付けた明領域の範囲となるように、前記高輝度液晶表示装置における液晶パネルの各画素を制御する。

【0028】

欠陥検出部３２は、照明部１ａで照明された被検査物Ｏｂの被検査面を、撮像部２で撮像することによって生成された画像に基づいて欠陥を検出し、この検出した検出結果を記憶部７に記憶し、そして、出力部５に出力するものである。

【0029】

領域調整部３２１は、前記被検査面の欠陥を検出する際に、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じて、前記明領域の照明光で照射された前記被検査面を写し込んだ画像に設定される、欠陥を検出するための欠陥検出画像領域の範囲を調整するものである。より具体的には、領域調整部３２１は、記憶部７の対応関係情報記憶部７１に記憶された対応関係情報から、入力部４で受け付けた前記ゆず肌の視認性の程度（本実施形態ではグレード）に対応する前記調整値を決定し、この決定した調整値で前記欠陥検出画像領域の範囲を調整する。

【0030】

なお、このような制御処理部３、入力部４、出力部５、ＩＦ部６および記憶部７を備える装置本体ＰＣは、例えば、デスクトップ型やノード型等のコンピュータによって構成可能である。

【0031】

次に、本実施形態の動作について説明する。図６は、前記表面欠陥検査装置の動作を示すフローチャートである。図７は、図６に示すフローチャートにおける欠陥の検出処理を説明するための図である。図８は、図７に示す欠陥候補の検出処理を説明するための図である。図９は、図７に示す膨張、縮小の処理を説明するための図である。図９Ａは、一例として、膨張処理前の二値化画像Ｉ（ＢＮ）を示し、図９Ｂは、一例として、膨張処理後の二値化画像Ｉ（ＢＮ）を示す。

【0032】

このような構成の表面欠陥検査装置Ｄは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部３には、制御部３１および欠陥検出部３２が機能的に構成され、欠陥検出部３２には、領域調整部３２１が機能的に構成される。

【0033】

そして、被検査物Ｏｂの被検査面における欠陥の検出にあたって、図６において、表面欠陥検査装置Ｄは、まず、制御処理部３によって、出力部５から前記ゆず肌の視認性の程度（グレードの値）の入力および明領域の範囲の入力を促すメッセージ（例えば「欠陥のグレードおよび明領域の幅を入力ください。」等）を出力し、入力部４から前記ゆず肌の視認性の程度および明領域の範囲の各入力を受け付ける（Ｓ１）。

【0034】

ユーザ（オペレータ）は、前記メッセージに促されて前記ゆず肌の視認性の程度（グレードの値）および明領域の範囲（本実施形態では明領域ＬＡの幅）を入力部４で入力する。

【0035】

次に、処理Ｓ１で前記欠陥の視認性の程度および明領域の範囲の各入力を入力部４で受け付けると、表面欠陥検査装置Ｄは、領域調整部３２１によって、この処理Ｓ１で入力された前記ゆず肌の視認性の程度（グレードの値）に基づいて調整値を決定する（Ｓ２）。より具体的には、領域調整部３２１は、記憶部７の対応関係情報記憶部７１から、処理Ｓ１で入力された前記ゆず肌の視認性の程度（グレードの値）に対応する調整値を取得する。より詳しくは、領域調整部３２１は、対応関係情報記憶部７１に記憶されている対応関係情報テーブルＴＢａから、そのゆず肌視認性程度フィールド７１１に、処理Ｓ１で入力された前記ゆず肌の視認性の程度（グレードの値）を登録するレコードを選定（検索）し、この選定したレコードにおける調整値フィールド７１２に登録されている調整値を取り出す。

【0036】

次に、表面欠陥検査装置Ｄは、制御部３１によって、この処理Ｓ１で受け付けた明領域の範囲となるように照明部１ａを調整し、照明する（Ｓ３）。より具体的には、上述したように、照明部１ａが光源部および明暗領域形成部を備えて構成される場合では、制御部３１は、前記処理Ｓ１で受け付けた明領域の範囲となるように、前記明暗領域形成部を制御する。より詳しくは、照明部１ａは、高輝度液晶表示装置であり、制御部３１は、前記処理Ｓ１で受け付けた明領域の範囲となるように、前記高輝度液晶表示装置における液晶パネルの各画素を制御する。一例の具体例では、制御部３１は、照明部１ａにおける第１および第２照明部１ａ－１、１ａ－２それぞれを、図３Ａに示すように、比較的幅の広い矩形状（帯状、ストライプ状）の第１明領域ＬＡ－１、第１明領域ＬＡ－１の幅より狭い幅を持つ矩形状の暗領域ＤＡ、および、第１明領域ＬＡ－１と同幅を持つ矩形状の第２明領域ＬＡ－２を順次に並置した照明パターンとなるように、制御する。また、他の一例の具体例では、制御部３１は、照明部１ａにおける第１および第２照明部１ａ－１、１ａ－２それぞれを、図３Ｂに示すように、比較的幅の狭い矩形状の４個の第１ないし第４明領域ＬＡ－１～ＬＡ－４、および、これら第１ないし第４明領域ＬＡ－１～ＬＡ－４と同幅を持つ矩形状の３個の第１ないし第３暗領域ＤＡ－１～ＤＡ－３を交互に並置した明暗照明パターンとなるように、制御する。このような例では、照明部１ａは、明領域ＬＡと暗領域ＤＡとの組を複数形成して照明光を照射する。これによってより広範囲で被検査面が検査できる。

【0037】

次に、このように処理Ｓ３で明領域と暗領域との組を少なくとも１つ形成した照明光で被検査物Ｏｂの被検査面を照明すると、表面欠陥検査装置Ｄは、制御処理部３の欠陥検出部３２によって、照明部１ａで上述のように照明された被検査物Ｏｂの被検査面を、撮像部２で撮像させ、撮像部２でその画像を生成して取得する（Ｓ４）。

【0038】

次に、表面欠陥検査装置Ｄは、欠陥検出部３２によって、この撮像部２で生成した画像に基づいて欠陥を検出し、この検出した検出結果を記憶部７に記憶する（Ｓ５）。

【0039】

欠陥の検出手法は、公知の手法が用いられて良いが、本実施形態では、次のような手法で、欠陥が検出されている。

【0040】

図７において、欠陥検出部３２は、処理Ｓ４で取得された画像Ｉ（Ｏ）に対し、照明光の明領域ＬＡよる画像（明画像）と、前記照明光における暗領域ＤＡによる画像（暗画像）との境界を残しながら、いわゆる画像のごま塩ノイズを消すために、所定の画像フィルタを用いてエッジ保存の平滑化処理を実行する。これによって処理Ｓ４で取得された画像Ｉ（Ｏ）から基準画像Ｉ（Ｂ）が生成される（Ｓ５１）。

【0041】

次に、欠陥検出部３２は、欠陥を予備検出する欠陥予備検出処理Ｓ５２および予備検出された欠陥から明画像に存在する欠陥を抽出するためのマスクを生成するマスク生成処理Ｓ５３を、互いに並列に、あるいは、欠陥予備検出処理Ｓ５２およびマスク生成処理Ｓ５３の順に順次に、あるいは、マスク生成処理Ｓ５３および欠陥予備検出処理Ｓ５２の順に順次に、実行する。

【0042】

この欠陥予備検出処理Ｓ５２では、より具体的には、まず、図８に示す曲線αにおける欠陥を示す急峻な落ち込みを検出するために、欠陥検出部３２は、処理Ｓ５１で生成した基準画像Ｉ（Ｂ）に対し、対象画素を移動させながら、例えば当該対象画素を中央に３×３や４×４等の所定の範囲で平均を求めて当該対象画素の画素値とする移動平均処理を実行することによって、前記基準画像Ｉ（Ｂ）からスムージング画像Ｉ（Ｓ）を生成する（Ｓ５２１）。つまり、スムージング画像Ｉ（Ｓ）は、欠陥を示す前記急峻な落ち込みを検出するため、図８に示す曲線αと曲線βの差異を発生させるために作成される。

【0043】

次に、欠陥検出部３２は、処理Ｓ５２１で生成したスムージング画像Ｉ（Ｓ）と処理Ｓ５１で生成した基準画像Ｉ（Ｂ）との差分を求めることによって、より具体的には処理Ｓ５２１で生成したスムージング画像Ｉ（Ｓ）から処理Ｓ５１で生成した基準画像Ｉ（Ｂ）を減算することによって、差分画像Ｉ（Ｓｕｂ）を生成する（Ｓ５２２）。この処理によって、例えば、図８に示すように、１つのライン（行）において、スムージング画像Ｉ（Ｓ）における各画素の各画素値からなるスムージング画像画素値曲線βと基準画像Ｉ（Ｂ）における各画素の各画素値からなる基準画像画素値曲線αとの差分を求めると、画像上では暗く写る欠陥部分では、その差が大きくなる。

【0044】

なお、上述では、処理Ｓ５２１で生成したスムージング画像Ｉ（Ｓ）と処理Ｓ５１で生成した基準画像Ｉ（Ｂ）との差分を求めることによって差分画像Ｉ（Ｓｕｂ）が生成されたが、差分画像Ｉ（Ｓｕｂ）に代え、処理Ｓ５２１で生成したスムージング画像Ｉ（Ｓ）と処理Ｓ５１で生成した基準画像Ｉ（Ｂ）との比を求めることによって比画像Ｉ（Ｄｉｖ）が生成されてもよい。

【0045】

次に、欠陥検出部３２は、処理Ｓ５２２で求めた差分画像Ｉ（Ｓｕｂ）に対し、各画素それぞれについて、予め設定された所定の閾値（第１の二値化閾値）と比較することによって二値化し、これによって欠陥候補を検出し、欠陥候補画像Ｉ（ＲＤ）を生成する（Ｓ５２３）。すなわち、画素値が０から２５５までの８ビットで表現される場合において、当該画素の画素値（処理Ｓ５２２での差分値）が前記第１の二値化閾値未満である場合には、当該画素の画素値が０とされ、当該画素の画素値（処理Ｓ５２２での差分値）が前記第２の二値化閾値以上である場合には、当該画素の画素値が２５５とされる。前記第１の二値化閾値は、複数のサンプルから予め適宜に設定される。

【0046】

次に、欠陥検出部３２は、処理Ｓ５２３で生成した欠陥候補画像Ｉ（ＲＤ）から、画像上で画素値２５５が小面積で集合する部分をノイズとして消去するために、予め設定された所定の閾値（欠陥検出閾値）以上の面積で集合する部分を欠陥としてラベル（例えばシリアル番号）を付して抽出した欠陥画像Ｉ（Ｄ）を生成する（Ｓ５２４）。前記欠陥検出閾値は、複数のサンプルから予め適宜に設定される。

【0047】

このように欠陥予備検出処理Ｓ５２が実行される。

【0048】

一方、マスク生成処理Ｓ５３では、より具体的には、まず、欠陥検出部３２は、明画像および暗画像を抽出するために、処理Ｓ５１で生成した基準画像Ｉ（Ｂ）に対し、各画素それぞれについて、予め設定された所定の閾値（第２の二値化閾値）と比較することによって二値化し、二値化画像Ｉ（ＢＮ）を生成する（Ｓ５３１）。すなわち、画素値が０から２５５までの８ビットで表現される場合において、当該画素の画素値が前記第２の二値化閾値未満である場合には、当該画素の画素値が０とされ、当該画素の画素値が前記第２の二値化閾値以上である場合には、当該画素の画素値が２５５とされる。前記第２の二値化閾値は、複数のサンプルから予め適宜に設定される。

【0049】

例えば、図９Ａに示すように、処理Ｓ５３１で生成した二値化画像Ｉ（ＢＮ）が所々抜けた画像になるため、次に、欠陥検出部３２は、処理Ｓ５３１で生成した二値化画像Ｉ（ＢＮ）に対し、図９Ｂに示すように、明画像と暗画像との境界における暗画像を明画像側へ膨張してくっつける膨張処理を実行し、膨張した回数だけ縮小して元の大きさに戻し、膨張縮小画像Ｉ（ＥＸ）を生成する（Ｓ５３２）。

【0050】

明領域と暗領域との境界部分において画像上に出る、いわゆるゆず肌を除去するために、欠陥検出部３２は、膨張縮小画像Ｉ（ＥＸ）に対し、明画像における暗画像との境界を、処理Ｓ２で決定した調整値だけ明画像側へ後退させることによって、マスク画像Ｉ（Ｍ）を生成する（Ｓ５３３）。より具体的には、欠陥検出部３２は、明画像と暗画像との境界から、処理Ｓ２で決定した調整値の画素数の幅で、明画像側を削る。すなわち、欠陥検出部３２は、明画像と暗画像との境界から、処理Ｓ２で決定した調整値の画素数の幅だけ、明画像側の画素を暗画像に変える。本実施形態では、明領域の照明光によって照明された部分の画像である明画像が、欠陥検出画像領域の一例に相当するが、この処理Ｓ５３３において、明画像と暗画像との境界から、処理Ｓ２で決定した調整値の画素数だけ、明画像側を削ることによって、欠陥検出画像領域の範囲が前記調整値で調整される。

【0051】

このように欠陥予備検出処理Ｓ５２が実行される。

【0052】

次に、欠陥検出部３２は、欠陥予備検出処理Ｓ５２における処理Ｓ５２４で生成した欠陥画像Ｉ（Ｄ）と、マスク生成処理Ｓ５３における処理Ｓ５３３で生成したマスク画像Ｉ（Ｍ）とのＡＮＤを演算し、これによってマスク画像Ｉ（Ｍ）における明画像（すなわち、処理Ｓ５３３において調整値によって調整された欠陥検出画像領域の範囲）に当たる部分に生じている、欠陥画像Ｉ（Ｄ）の欠陥を、最終的な欠陥として抽出し（Ｓ５４）、本欠陥の検出処理Ｓ５を終了する。

【0053】

欠陥の検出処理Ｓ５の次に、欠陥検出部３２は、処理Ｓ５で求めた検出結果を出力部５に出力する。なお、必要に応じて、欠陥検出部３２は、処理Ｓ５で求めた検出結果をＩＦ部６から出力しても良い。

【0054】

次に、欠陥検出部３２は、本処理が終了か否かを判定する（Ｓ７）。この判定の結果、例えばユーザにより入力部４で本処理の終了を受け付けるなどしている場合には、本処理の終了と判定し（Ｙｅｓ）、欠陥検出部３２は、本処理を終了し、一方、本処理の終了ではない場合（Ｎｏ）には、次の検査を実行するために、欠陥検出部３２は、処理を処理Ｓ４に戻す。例えば、前記ゆず肌の視認性の程度を表すグレード値を変えずに、次の被検査物Ｏｂや被検査物Ｏｂにおける次の被検査面が検査される場合には、被検査物Ｏｂや被検査面が次の被検査物Ｏｂや次の被検査面に変えられて処理が処理Ｓ４に戻され、一方、検査自体が終了される場合や前記ゆず肌の視認性の程度を表すグレード値を変えて次の被検査物Ｏｂや次の被検査面が検査される場合には、本処理が終了される。

【0055】

以上説明したように、本実施形態における表面欠陥検査装置Ｄおよびこれに実装された表面欠陥検査方法は、前記被検査面の欠陥を検出する際に、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じて前記欠陥検出画像領域の範囲（上述では明画像の範囲（明画像の幅））を調整する。したがって、上記表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法は、前記ゆず肌の視認性の程度に応じて前記欠陥検出画像領域の範囲（上述では明画像の範囲（明画像の幅））を最大化できるので、ゆず肌の誤検出を低減しつつ、検査時間の短縮化を図ることができる。

【0056】

上記表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法は、対応関係情報記憶部７１に対応関係情報（上述ではテーブル形式の対応関係情報テーブルＴＢａ）を記憶するので、前記対応関係情報を参照することで、前記ゆず肌の視認性の程度から前記調整値を容易に決定でき、この決定した調整値で前記欠陥検出画像領域の範囲（上述では明画像の範囲（明画像の幅））を調整できる。

【0057】

なお、上述の実施形態では、照明部１ａは、例えば高輝度液晶表示装置等の高輝度ディスプレイを備えて構成されたが、照明部１ａは、これに限定されるものではなく、適宜に、変更できる。

【0058】

図１０は、前記表面欠陥検査装置における第２態様の照明部およびその照明パターンの一例を説明するための図である。図１０Ａは、第１照明パターンで照明光を放射している照明部１ｂ－１（１ｂ－２）を示し、図１０Ｂは、第２照明パターンで照明光を放射している照明部１ｂ－１（１ｂ－２）を示す。例えば、上述の照明部１ａに換え、図１０に示す第１および第２照明部１ｂ－１、１ｂ－２を備える照明部１ｂが用いられても良い。これら第１および第２照明部１ｂ－１、１ｂ－２それぞれは、図１０に示すように、順次に並置された複数の直状照明ユニット１１を備えて構成される。この図１０に示す例では、複数の直状照明ユニット１１は、８個の第１ないし第８直状照明ユニット１１－１～１１－８を備えて構成されている。これら第１ないし第８直状照明ユニット１１－１～１１－８は、それぞれ、例えば直状蛍光灯や直線状に配置された複数の高輝度ＬＥＤ等の、光照射面が細長な矩形状（帯状、ストライプ状）を呈した直状の直状光源部と、前記直状光源部の前方に配置された矩形状の拡散板等を備え、前記直状光源部から前記拡散板を介して照明光を放射する。そして、このような照明部１ｂが用いられる場合では、制御部３１は、入力部４で受け付けた明領域の範囲となるように、前記複数の直状照明ユニット１１を点灯する。一例の具体例では、上述の処理Ｓ１および処理Ｓ３において、制御部３１は、照明部１ｂにおける第１および第２照明部１ｂ－１、１ｂ－２それぞれを、図１０Ａに示すように、比較的幅の広い矩形状の第１明領域ＬＡ－１、第１明領域ＬＡ－１の幅より狭い幅を持つ矩形状の暗領域ＤＡ、および、第１明領域ＬＡ－１と同幅を持つ矩形状の第２明領域ＬＡ－２を順次に並置した照明パターンとなるように、制御する。すなわち、上述の処理Ｓ３において、制御部３１は、第１ないし第３直状照明ユニット１１－１～１１－３および第６ないし第３直状照明ユニット１１－６～１１－８を点灯し、第４および第６直状照明ユニット１１－４、１１－５を消灯する。また、他の一例の具体例では、上述の処理Ｓ１および処理Ｓ３において、制御部３１は、照明部１ｂにおける第１および第２照明部１ｂ－１、１ｂ－２それぞれを、図１０Ｂに示すように、比較的幅の狭い矩形状の４個の第１ないし第４明領域ＬＡ－１～ＬＡ－４、および、これら第１ないし第４明領域ＬＡ－１～ＬＡ－４と同幅を持つ矩形状の４個の第１ないし第４暗領域ＤＡ－１～ＤＡ－４を交互に並置した明暗照明パターンとなるように、制御する。すなわち、上述の処理Ｓ３において、制御部３１は、第１、第３、第５および第７直状照明ユニット１１－１、１１－３、１１－５、１１－７を点灯し、第２、第４、第６および第８直状照明ユニット１１－２、１１－４、１１－６、１１－８を消灯する。

【0059】

また、上述の実施形態では、対応関係情報記憶部７１は、前記調整値を前記ゆず肌の視認性の程度に対応付けて対応関係情報として記憶したが、対応関係情報記憶部７１は、前記調整値を前記被検査物Ｏｂの種類にさらに対応付けて前記対応関係情報として記憶しても良い。この場合では、入力部４は、被検査物Ｏｂの種類の入力をさらに受け付け、領域調整部３２１は、対応関係情報記憶部７１に記憶された対応関係情報から、入力部４で受け付けた前記ゆず肌の視認性の程度および被検査物Ｏｂの種類に対応する前記調整値を決定し、この決定した調整値に調整する。被検査物Ｏｂの種類によって許容されるゆず肌の程度が異なる。例えば、車両のボンネットでは、許容されないゆず肌でも、ドアでは、許容される場合が有り得る。上記表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法は、前記調整値を前記ゆず肌の視認性の程度だけでなく被検査物Ｏｂの種類にも対応付けられているので、前記ゆず肌の視認性の程度だけでなく被検査物Ｏｂの種類も勘案することによって、前記調整値を決定できる。

【0060】

図１１は、前記表面欠陥検査装置に記憶される第２態様の対応関係情報テーブルを示す図である。このような被検査物Ｏｂの種類は、例えば被検査物Ｏｂが外装塗装された車両である場合、前記車両の部位で分類されている。対応関係情報記憶部７１は、前記調整値を前記ゆず肌の視認性の程度および前記車両の部位に対応付けて対応関係情報として記憶する。このような対応関係情報は、例えば図１１に示すように、テーブル形式で対応関係情報記憶部７１に記憶されている。この図１１に示す対応関係情報テーブルＴＢｂは、上述の、前ゆず肌の視認性の程度を表すグレードを登録するゆず肌視認性程度フィールド７１１、および、前記調整値を登録する調整値フィールド７１２を備えるだけでなく、例えばドアやルーフやボンネット等の、前記車両の部位を登録する部位フィールド７１３をさらに備え、前記調整値フィールド７１２には、ゆず肌視認性程度フィールド７１１および部位フィールド７１３それぞれに登録されたグレードおよび部位に対応する前記調整値が登録され、グレードおよび部位の組み合わせごとにレコードを持つ。なお、対応関係情報テーブルＴＢｂは、グレードおよび部位のすべての組み合わせに対し、各組み合わせごとにレコードを備えても良いが、前記すべての組み合わせの一部の組み合わせに対し、各組み合わせごとにレコードを備えても良い。

【0061】

このような表面欠陥検査装置Ｄおよび表面欠陥検査方法は、前記ゆず肌の視認性の程度だけでなく前記車両の部位も勘案することによって、前記調整値を決定できる。

【0062】

本明細書は、上記のように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。

【0063】

一態様にかかる表面欠陥検査装置は、被検査物の被検査面に照明光を照射して前記被検査面を撮像した画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検出する装置であって、明領域と暗領域との組を少なくとも１つ形成して前記照明光を照射する照明部と、前記被検査面の欠陥を検出する際に、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じて、前記明領域の照明光で照射された前記被検査面を写し込んだ画像に設定される、欠陥を検出するための欠陥検出画像領域の範囲を調整する領域調整部とを備える。

【0064】

このような表面欠陥検査装置は、前記被検査面の欠陥を検出する際に、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じて前記欠陥検出画像領域の範囲を調整する。したがって、上記表面欠陥検査装置は、前記ゆず肌の視認性の程度に応じて前記欠陥検出画像領域の範囲を最大化できるので、ゆず肌の誤検出を低減しつつ、検査時間の短縮化を図ることができる。

【0065】

他の一態様では、上述の表面欠陥検査装置において、前記欠陥検出画像領域の範囲を調整するための調整値を前記ゆず肌の視認性の程度に対応付けて対応関係情報として記憶する対応関係情報記憶部と、前記ゆず肌の視認性の程度の入力を受け付ける入力部とをさらに備え、前記領域調整部は、前記対応関係情報記憶部に記憶された前記対応関係情報から、前記入力部で受け付けた前記ゆず肌の視認性の程度に対応する前記調整値を決定し、前記決定した調整値で前記欠陥検出画像領域の範囲を調整する。

【0066】

このような表面欠陥検査装置は、前記対応関係情報を記憶するので、前記対応関係情報を参照することで、前記ゆず肌の視認性の程度から前記調整値を容易に決定でき、この決定した調整値で前記欠陥検出画像領域の範囲を調整できる。

【0067】

他の一態様では、上述の表面欠陥検査装置において、前記対応関係情報記憶部は、前記調整値を前記被検査物の種類にさらに対応付けて前記対応関係情報として記憶し、前記入力部は、前記被検査物の種類の入力をさらに受け付け、前記領域調整部は、前記対応関係情報記憶部に記憶された前記対応関係情報から、前記入力部で受け付けた前記ゆず肌の視認性の程度および前記被検査物の種類に対応する前記調整値を決定し、前記決定した調整値で前記欠陥検出画像領域の範囲を調整する。

【0068】

被検査物の種類によって許容されるゆず肌の程度が異なる。例えば、車両のボンネットでは、許容されないゆず肌でも、ドアでは、許容される場合が有り得る。上記表面欠陥検査装置は、前記調整値を前記ゆず肌の視認性の程度だけでなく前記被検査物の種類にも対応付けられているので、前記ゆず肌の視認性の程度だけでなく前記被検査物の種類も勘案することによって、前記調整値を決定できる。

【0069】

他の一態様では、上述の表面欠陥検査装置において、前記被検査物は、外装塗装された車両であり、前記被検査物の種類は、前記車両の部位で分類されている。

【0070】

このような表面欠陥検査装置は、前記ゆず肌の視認性の程度だけでなく前記車両の部位も勘案することによって、前記調整値を決定できる。

【0071】

他の一態様では、これら上述の表面欠陥検査装置において、前記明領域の範囲の入力を受け付ける第２入力部と、前記第２入力部で受け付けた前記明領域の範囲となるように前記照明部を制御する制御部とをさらに備える。好ましくは、上述の表面欠陥検査装置において、前記照明部は、光を放射する光源部と、明領域と暗領域との組を少なくとも１つ形成して前記光源部から放射された光を前記照明光として照明する明暗領域形成部とを備え、前記制御部は、前記第２入力部で受け付けた前記明領域の範囲となるように、前記明暗領域形成部を制御する。好ましくは、上述の表面欠陥検査装置において、前記照明部は、例えば高輝度液晶表示装置等の高輝度ディスプレイであり、前記制御部は、前記第２入力部で受け付けた前記明領域の範囲となるように、前記高輝度ディスプレイを制御する。好ましくは、上述の表面欠陥検査装置において、前記照明部は、順次に並置された複数の直状照明ユニットを備え、前記制御部は、前記第２入力部で受け付けた前記明領域の範囲となるように、前記複数の直状照明ユニットを点灯する。好ましくは、上述の表面欠陥検査装置において、前記照明部は、明領域と暗領域との組を複数形成して前記照明光を照射する。

【0072】

他の一態様にかかる表面欠陥検査方法は、被検査物の被検査面に照明光を照射して前記被検査面を撮像した画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検出する方法であって、明領域と暗領域との組を少なくとも１つ形成した照明光を照射する照明工程と、前記被検査面の欠陥を検出する際に、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じて、前記明領域の照明光で照射された前記被検査面を写し込んだ画像に設定される、欠陥を検出するための欠陥検出画像領域の範囲を調整する領域調整工程とを備える。

【0073】

このような表面欠陥検査方法は、前記被検査面の欠陥を検出する際に、予め定義されたゆず肌の視認性の程度に応じて前記欠陥検出画像領域の範囲を調整する。したがって、上記表面欠陥検査方法は、前記ゆず肌の視認性の程度に応じて前記欠陥検出画像領域の範囲を最大化できるので、ゆず肌の誤検出を低減しつつ、検査時間の短縮化を図ることができる。

【0074】

この出願は、２０１７年５月２９日に出願された日本国特許出願特願２０１７－１０５５１６を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。

【0075】

本発明の実施形態が詳細に図示され、かつ、説明されたが、それは単なる図例及び実例であって限定ではない。本発明の範囲は、添付されたクレームの文言によって解釈されるべきである。

【0076】

本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および／または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。

【産業上の利用可能性】

【0077】

本発明によれば、表面の欠陥を検出する表面欠陥検査装置および表面欠陥検査方法が提供できる。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】