(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】電動ポンプおよび電動ポンプの制御装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/02 20060101AFI20220209BHJP
F04D 13/06 20060101ALI20220209BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
F04B49/02 311
F04D13/06
F04D15/00 J
(21)【出願番号】P 2020017113
(22)【出願日】2020-02-04
(62)【分割の表示】P 2016101110の分割
【原出願日】2016-05-20
【審査請求日】2020-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000150844
【氏名又は名称】株式会社鶴見製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-002197(JP,A)
【文献】特開2011-209244(JP,A)
【文献】特開2006-017549(JP,A)
【文献】特開平06-284215(JP,A)
【文献】特開2014-034745(JP,A)
【文献】特開2016-065824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/02
F04D 13/06
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ本体部と、
無線信号を送受信する第1通信部と、
排水領域の液体を吸引する吸水部と、
前記第1通信部と前記無線信号を送受信する第2通信部とを備え、
前記第2通信部は、前記第1通信部に前記無線信号を所定の時間間隔で繰り返し送信するように構成され、
前記第2通信部が水没することにより、前記第1通信部が前記第2通信部から送信される前記無線信号を受信できなくなるとともに、前記第1通信部から送信される前記無線信号が前記第2通信部と通信できなくなることに基づいて、前記ポンプ本体部の運転を開始する制御、または、前記ポンプ本体部の運転を促す制御を行うように構成されている、電動ポンプ。
【請求項2】
前記第2通信部は、前記吸水部の吸引口よりも高い位置に設けられている、請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記第1通信部は、前記吸水部よりも高い位置に設けられている、請求項1または2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記第1通信部は、前記ポンプ本体部近傍に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記第1通信部は、前記第2通信部よりも高い位置に設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記ポンプ本体部は、前記第1通信部が前記第2通信部から送信される前記無線信号を受信したことに基づいて、運転を停止するように構成されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記第1通信部は、前記第2通信部による前記無線信号が所定の時間内に前記第1通信部によって受信されないことに基づいて、前記第2通信部に無線信号を送信するように構成されている、請求項1~
6のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項8】
前記第2通信部は、前記吸水部の近傍に配置されている、請求項1~
7のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項9】
無線信号を所定の時間間隔で繰り返し送信するように構成された第2通信部と
前記無線信号を送受信する第1通信部と、
前記第2通信部が水没することにより、前記第1通信部が前記第2通信部から送信される前記無線信号を受信できなくなるとともに、前記第1通信部から送信される前記無線信号が前記第2通信部と通信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部の運転を開始する制御、または、前記ポンプ本体部の運転を促す制御を行うように構成されている制御部と、を備える、電動ポンプの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水領域の液体を排出する電動ポンプおよび電動ポンプの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水領域の液体を排出する電動ポンプが知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0003】
上記特許文献1には、排水領域の液体の水位を検知する2つの水位検出部を備える電動ポンプが開示されている。2つの水位検出部は、それぞれ、フレキシブルに変形可能な棒形状を有し、先端に液体が接触することにより、水位を検知するように構成されている。そして、電動ポンプは、2つの水位検出部による液体の検知に基づいて運転を開始するように構成されている。なお、水位検出部の先端は、ユーザにより高さ位置が調整される。
【0004】
また、上記特許文献2には、排水領域の液体の水位を検知する、上部水位検出部と、下部水位検出部とからなる2つの水位検出部を備える電動ポンプが開示されている。2つの水位検出部は、それぞれ露出した電極で構成されており、上部水位検出部に水位が達した時に上部水位検出部の露出した電極を通じて導通状態が検出され、導通状態の検出により、電動ポンプを駆動するように構成されている。また、下部水位検出部の電極の位置よりも下に水位が下がった時に、下部水位検出部の電極を通じた導通状態が断たれ、この導通状態切断の検出により、電動ポンプを停止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-315367号公報
【文献】特開2008-82259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、2つの水位検出部がそれぞれフレキシブルに変形可能であること、および、ユーザによって、2つの水位検出部の先端の高さ位置が調整されることにより、2つの水位検出部の先端の高さ位置(水位の検知位置)が安定しないという不都合がある。たとえば、液体が波打つことなどにより、水位検出部の先端の高さ位置が不意に変わってしまう場合があると考えられる。このため、電動ポンプが運転を開始する水位が安定しないという問題点がある。また、2つの水位検出部のそれぞれの先端の高さ位置を調整する必要があり、調整作業が煩雑であるという問題点もある。
【0007】
また、上記特許文献2では、2つの水位検出部をそれぞれ電極で構成し、電極の導通状態の検出により電動ポンプを運転させるという構成であるため、電極への導通を取るために電力を要するとともに、電極が水に触れている間は導通状態となるため、電極に電食が生じてしまうという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、電力消費を抑制するとともに、排水領域の状態を検知する構成に電食を生じさせることなく、水位検知のための調整作業が煩雑となるのを抑制しながら、所定水位において電動ポンプの運転を安定して開始させることが可能な電動ポンプおよび電動ポンプの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1の局面による電動ポンプは、ポンプ本体部と、無線信号を送受信する第1通信部と、排水領域の液体を吸引する吸水部と、第1通信部と無線信号を送受信する第2通信部とを備え、第2通信部は、第1通信部に無線信号を所定の時間間隔で繰り返し送信するように構成され、第2通信部が水没することにより、第1通信部が第2通信部から送信される無線信号を受信できなくなるとともに、第1通信部から送信される無線信号が第2通信部と通信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部の運転を開始する制御、または、ポンプ本体部の運転を促す制御を行うように構成されている。
【0010】
この発明の第2の局面における電動ポンプの制御装置は、無線信号を所定の時間間隔で繰り返し送信するように構成された第2通信部と無線信号を送受信する第1通信部と、第2通信部が水没することにより、第1通信部が第2通信部から送信される無線信号を受信できなくなるとともに、第1通信部から送信される無線信号が第2通信部と通信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部の運転を開始する制御、または、ポンプ本体部の運転を促す制御を行うように構成されている制御部と、を備える。
【0011】
この発明の第1の局面による電動ポンプ、および、第2の局面による電動ポンプの制御装置では、上記のように、第2通信部が水没することにより、第1通信部が第2通信部から送信される無線信号を受信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部の運転を開始する制御、または、ポンプ本体部の運転を促す制御を行うように構成する。これにより、無線通信による信号の受信の有無により、排水領域の所定水位の液体の有無を判断しており、従来のように水位検知のためにフレキシブルな水位検知部を用いる必要がないので、第2通信部から第1通信部に無線信号が届かなくなる所定水位(水没水位)において電動ポンプの運転を安定して開始させることができる。また、従来のように水位検知部の形状を変化させて水位検知のための高さ位置を調整する必要がないので、水位検知ための調整作業が煩雑となるのを抑制することができる。また、第1通信部が無線信号を受信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部の運転の開始させることができるので、容易に電動ポンプの運転を開始させることができる。また、従来のように、排水領域の水位を検出するための電極を有していないことから、電極を導通状態にする必要がないので、電力消費を抑制することができる。また、排水領域に配置される第2通信部(排水領域の状態を検知する構成)は、従来のように、電極を設けた構成ではないので、第2通信部に電食が生じることが無い。そして、第2通信部が水没することにより、第1通信部が第2通信部から送信される無線信号を受信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部の運転を開始する制御、または、ポンプ本体部の運転を促す制御を行うように構成されている。このように構成すれば、第2通信部が水没することにより、無線による無線信号が第2通信部から第1通信部に届かなくなることによって、ポンプ本体部の運転の開始、または、ポンプ本体部の運転を促す通知を行うことができる。また、第2通信部は、第1通信部に無線信号を所定の時間間隔で繰り返し送信するように構成されている。このように構成すれば、ポンプ本体部を排水領域の水位が上昇してから所定の時間間隔内に運転させることができる。
【0012】
上記第1の局面による電動ポンプにおいて、好ましくは、第2通信部は、吸水部の吸引口よりも高い位置に設けられている。
【0013】
上記第1の局面による電動ポンプにおいて、好ましくは、第1通信部は、吸水部よりも高い位置に設けられている。
【0014】
上記第1の局面による電動ポンプにおいて、好ましくは、第1通信部は、ポンプ本体部近傍に配置されている。
【0015】
上記第1の局面による電動ポンプにおいて、好ましくは、第1通信部は、第2通信部よりも高い位置に設けられている。
【0017】
上記第1の局面による電動ポンプにおいて、好ましくは、ポンプ本体部は、第1通信部が第2通信部から送信される無線信号を受信したことに基づいて、運転を停止するように構成されている。
【0018】
上記第1の局面による電動ポンプにおいて、好ましくは、第1通信部は、第2通信部による無線信号が所定の時間内に第1通信部によって受信されないことに基づいて、第2通信部に無線信号を送信するように構成されている。このように構成すれば、第1通信部が水位上昇以外の要因(障害物など)により第2通信部からの無線信号を受信できない場合に、第2通信部における無線信号の受信の可否により、第1通信部が無線信号を受信できないことを確認することができる。このため、排水領域に液体が溜まっていない場合におけるポンプ本体部の空運転を抑制することができる。
【0019】
上記第1の局面による電動ポンプにおいて、好ましくは、第2通信部は、吸水部の近傍に配置されている。このように構成すれば、第2通信部が吸水部の近傍に配置されるので、排水領域の吸水部近傍に液体が溜まっており、吸水部による液体の吸引が可能であるか否かをより精度よく判断することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記のように、電力消費を抑制するとともに、排水領域の状態を検知する構成に電食を生じさせることなく、水位検知のための調整作業が煩雑となるのを抑制しながら、所定水位において電動ポンプの運転を安定して開始させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1および第2実施形態による電動ポンプの全体構成を示した図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による電動ポンプの第2通信部の第1動作例について説明するための図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による電動ポンプの第2通信部の第2動作例について説明するための図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による電動ポンプの第2通信部の第3動作例について説明するための図である。
【
図5】本発明の第2実施形態による電動ポンプの第2通信部の動作例について説明するための図である。
【
図6】本発明の第3実施形態による電動ポンプの全体構成を示した図である。
【
図7】本発明の第3実施形態による電動ポンプの第2通信部の動作例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1~
図4を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態による電動ポンプ100は、
図1に示すように、排水領域H(2点鎖線で囲う領域)に溜まった水などの液体を排出するように構成されている。詳細には、電動ポンプ100は、排水領域H内と排水領域H外とにおいて無線による信号の送受信を行い、無線による信号が受信できなくなった場合に、排水領域H内に浸入した液体によって無線による信号が途絶えた(第2通信部3が水没した)と判断して、排水領域Hの排水を行うように構成されている。なお、第2通信部3は、特許請求の範囲の「送信部」の一例である。
【0024】
電動ポンプ100は、ポンプ本体部1と、第1通信部20および制御部21を含む制御装置2と、第2通信部3と、吸水部4とを備えている。なお、第1通信部20は、特許請求の範囲の「受信部」の一例である。
【0025】
ポンプ本体部1は、排水領域Hの外に配置されている。また、ポンプ本体部1は、吸水部4を介して、排水領域Hから液体を吸い上げるように構成されている。また、ポンプ本体部1は、排水領域Hから吸い上げた液体を排水領域Hの外側に排出するように構成されている。また、ポンプ本体部1は、駆動源としてのモータ10を含んでおり、制御部21による制御の下、モータ10の運転の開始および運転の停止を行うように構成されている。また、ポンプ本体部1は、第1通信部20を介して、商用電源などの電源部Dから電力が供給されるように構成されている。
【0026】
第1通信部20は、ポンプ本体部1側に設けられている。また、具体的には、第1通信部20は、排水領域Hの外のポンプ本体部1近傍に配置されている。ここで、制御装置2は、電気プラグを有する配線2aにより電源部Dに接続され、電源部Dから電力が供給されるように構成されている。また、制御装置2は、ポンプ本体部1と配線2bにより電気的に接続され、電源部Dから供給された電力をポンプ本体部1に供給するように構成されている。すなわち、制御装置2(第1通信部20)は、ポンプ本体部1と共通の電源部Dから電力が供給されるように構成されている。
【0027】
第2通信部3は、電池3aを取り付け可能に構成されており、電池3aから電力が供給されるように構成されている。電池3aは、例えば1つまたは2つ以上のボタン電池、あるいは単三電池により構成されている。また、第1通信部20は、無線による信号を受信可能に構成されている。また、第1通信部20は、約400MHz以上から約1000MHz以下の周波数を有する電波により無線通信を行うように構成されている。また、第1通信部20および第2通信部3は、互いに無線による信号の送受信を行うことが可能に構成されている。また、第1通信部20は、第2通信部3から送信される第1信号P1を受信できなくなった場合、制御部21による制御の下、第2通信部3に無線による確認のための第2信号P2を送信するように構成されている。なお、確認とは、第2通信部3からの無線による信号が、第1通信部20に届かない状態にあるか否かの確認である。要するに、第2通信部3が水没しているか否かの確認である。また、第1通信部20が第1信号P1を受信できなくなった場合とは、第1信号P1が含んでいる第2通信部3からの情報を第1通信部20が読み取れなくなった場合である。たとえば、第1通信部20が第1信号P1を受信できなくなった場合とは、第1通信部20において、第2通信部3から発信された信号であることを判断できない程度に信号強度が弱まった場合である。なお、第1信号P1は、特許請求の範囲の「無線信号」の一例である。
【0028】
第1通信部20は、第2通信部3からの第1信号P1を受信した場合には、第2通信部3に第1信号P1に対する応答として応答信号Q(
図2参照)を送信するように構成されている。
【0029】
第1通信部20は、第2通信部3からの第1信号P1を受信できず、応答信号Qが送信されない場合(制御部21が第1信号P1を受信できなかったと判断した場合)には、第2通信部3が第1信号P1を送信する間隔である第1時間間隔t1(
図2参照)よりも短い第2時間間隔t2(
図2参照)内に第2信号P2を複数回(たとえば5回)送信するように構成されている。なお、一例として、第2時間間隔t2は、約1秒間に設定され、第2信号P2は5回送信される。
【0030】
第2通信部3は、排水領域Hに配置されている。詳細には、第2通信部3は、吸水部4の近傍に配置され、吸水部4の吸引口となる後述する溝部4bよりも僅かに高い位置に配置された状態で吸水部4に設置されている。
【0031】
第2通信部3は、第1通信部20に無線による第1信号P1を送信するように構成されている。また、第2通信部3は、約400MHz以上から約1000MHz以下の周波数を有する電波により無線通信を行うように構成されている。また、第2通信部3は、第1通信部20に第1信号P1を第1時間間隔t1で繰り返し送信するように構成されている。なお、一例として、第1時間間隔t1は、約10秒間に設定される。
【0032】
第2通信部3は、第1通信部20から送信された第2信号P2を受信した場合には、第1通信部20に無線による確認のための第3信号P3を送信するように構成されている。
【0033】
第2通信部3は、第1信号P1に対する第1通信部20からの応答として応答信号を受信するように構成されている。
【0034】
吸水部4は、ポンプ本体部1に設けられている。詳細には、吸水部4には、液体を通す通水路4aが設けられており、吸水部4は、通水路4aを介してポンプ本体部1に接続されている。また、吸水部4には、排水領域Hの底面に沿って延びる溝部4bが設けられており、吸水部4は、溝部4bを介して排水領域Hに浸入した液体を吸引するように構成されている。
【0035】
制御部21は、第2通信部3を制御するように構成されている。また、制御部21は、第2通信部3が水没することにより、第1通信部20が第2通信部3から送信される第1信号P1を受信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部1の運転の開始を行うように構成されている。詳細には、
図2~
図4を参照して、以下の3つの場合について説明する。
【0036】
図2を参照して、第2通信部3の第1動作例について説明する。すなわち、
第1通信部20が継続して第1信号P1を受信できる場合について説明する。制御部21は、
第1通信部20が第1信号P1を受信したならば、ポンプ本体部1の運転の開始(稼動)を行うことなく、ポンプ本体部1の運転の停止を維持するように構成されている。すなわち、制御部21は、第2通信部3からの第1信号P1を第1通信部20が受信したならば、応答信号Qを生成して、第1通信部20から第2通信部3へ応答信号Qを送信し、第2通信部3が水没していないとして、ポンプ本体部1の運転の停止を維持するように構成されている。なお、第2通信部3が水没して、第2通信部3からの第1信号P1を第1通信部20が受信できなくなる排水領域H(
図1参照)の所定水位を、以下では水没水位とする。
【0037】
次に、
図3を参照して、第2通信部3の第2動作例について説明する。すなわち、
第1通信部20が第1信号P1を受信できなくなる場合(水位が水没水位にまで上昇する場合)について説明する。制御部21は、
第1通信部20が第1信号P1を受信できないならば、第1通信部20に、第1時間間隔t1経過した時点から起算される第2時間間隔t2内に第2信号P2を複数回(5回)第2通信部3に向けて送信させるように構成されている。そして、制御部21は、第2信号P2に対する第2通信部3からの応答として第3信号P3を第1通信部20が受信できないならば、ポンプ本体部1の運転の開始(稼動)を行うように構成されている。すなわち、制御部21は、第2信号P2に対する第2通信部3からの応答がないのであれば、第2通信部3が水没している(無線による信号が液体により遮られて第1通信部20に届かないため、無線通信できない状態にある)として、ポンプ本体部1の運転の開始(稼動)を行うように構成されている。なお、第2通信部3から第1信号P1が送信されてから、第1通信部20が最初の第2信号P2を送信するまでには僅かなタイムラグt3がある。また、
第1通信部20から第2信号P2が送信されてから、ポンプ本体部1が運転を開始するまでには僅かなタイムラグt4がある。これらのタイムラグt3およびt4は、
第1通信部20が
第2通信部3からの第1信号P1または第3信号P3を受信する可能性がある待機時間に相当する。
【0038】
そして、制御部21は、第1通信部20が再び第1信号P1を受信したならば、ポンプ本体部1の運転の停止を行うように構成されている。すなわち、制御部21は、ポンプ本体部1の運転により、水位が水没水位未満になり、第2通信部3からの第1信号を第1通信部20が受信できるようになったならば、第2通信部3の水没が解消されたとして、ポンプ本体部1の運転の停止を行うように構成されている。
【0039】
次に、
図4を参照して、第2通信部3の第3動作例について説明する。すなわち、第2通信部3が水没することなく(水位が水没水位にまで上昇せずに)、
第1通信部20が第1信号P1を受信できなくなる場合について説明する。制御部21は、
第1通信部20が第1信号P1を受信した後、第1時間間隔t1経過しても第1信号P1を再び受信できないならば、第1通信部20に、第1時間間隔t1経過した時点から起算される第2時間間隔t2内に第2信号P2を複数回第2通信部3に向けて送信させるように構成されている。
【0040】
制御部21は、
第1通信部20が第2信号P2を複数回第2通信部3に向けて送信している際に、第2通信部3からの第3信号P3を第1通信部20が受信したならば、ポンプ本体部1の運転の開始(稼動)を行うことなく、ポンプ本体部1の運転の停止を維持するように構成されている。また、制御部21は、
第1通信部20が第2信号P2の送信を所定の回数(5回)行う前に、
第1通信部20が第3信号P3を受信した場合には、第1通信部20に、第2信号P2の送信を途中で停止させるように構成されている(
図4では3回で停止している)。なお、水位が水没水位まで上昇していないにも関らず、第1通信部20が第1信号P1を受信できなくなる理由として、たとえば、人などの障害物が第1通信部20と第2通信部3との間に位置することにより、通信を阻害することなどが考えられる。
【0041】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0042】
第1実施形態では、上記のように、無線による信号を受信可能な第1通信部20が、第2通信部3から送信される無線による第1信号P1を受信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部1の運転の開始を行うように構成する。これにより、無線通信による信号の受信の有無により、排水領域Hの所定水位の液体の有無を判断しており、従来のように水位検知のためにフレキシブルな水位検知部を用いる必要がないので、第2通信部3から第1通信部20に第1信号P1が届かなくなる所定水位(水没水位)において電動ポンプ100の運転を安定して開始させることができる。また、従来のように水位検知部の形状を変化させて水位検知のための高さ位置を調整する必要がないので、水位検知ための調整作業が煩雑となるのを抑制することができる。また、第1通信部20が第1信号P1を受信できなくなることに基づいてポンプ本体部1の運転の開始させることができるので、容易に電動ポンプ100の運転を開始させることができる。また、従来のように、排水領域の水位を検出するための電極を有していないことから、電極を導通状態にする必要がないので、電力消費を抑制することができる。また、排水領域に配置される第2通信部3(排水領域の状態を検知する構成)は、従来のように、電極を設けた構成ではないので、第2通信部3に電食が生じる事が無い。また、制御装置2からの電力供給で電動ポンプ100の運転、停止を制御できるので、電動ポンプ100に自動運転させるための制御的な構成を設けることなく、電動ポンプ100の自動運転を実現することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、上記のように、第2通信部3が水没することにより、第1通信部20が第2通信部3から送信される第1信号P1を受信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部1の運転の開始、または、ポンプ本体部1の運転を促す通知を行うように構成する。これにより、第2通信部3が水没することにより、無線による第1信号P1が第2通信部3から第1通信部20に届かなくなることによって、ポンプ本体部1の運転の開始、または、ポンプ本体部1の運転を促す通知を行うことができる。
【0044】
また、第1実施形態では、上記のように、第2通信部3を、第1通信部20に第1信号P1を第1時間間隔t1で繰り返し送信するように構成する。これにより、ポンプ本体部1を排水領域Hの水位が上昇してから第1時間間隔t1内に運転させることができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、第1通信部20および第2通信部3を、互いに無線による信号の送受信を行うことが可能に構成し、第1通信部20を、第1信号P1を受信できなくなった場合、第2通信部3に無線による確認のための第2信号P2を送信するように構成する。これにより、第1通信部20が水位上昇以外の要因(障害物など)により第2通信部3からの第1信号P1を受信できない場合に、第2通信部3における第2信号P2の受信の可否により、第1通信部20が第1信号P1を受信できないことを確認することができる。このため、排水領域Hに液体が溜まっていない場合におけるポンプ本体部1の空運転を抑制することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、第2通信部3を、第2信号P2を受信した場合には、第1通信部20に無線による確認のための第3信号P3を送信するように構成し、第1通信部20が第2信号P2を送信した後、所定時間経過しても第3信号P3を受信することができない場合には、ポンプ本体部1の運転の開始、または、ポンプ本体部1の運転を促す通知を行うように構成する。これにより、第1通信部20による第3信号P3の受信の可否によって、第2通信部3が水没しているか確認することができるので、排水領域Hに液体が溜まっていない場合におけるポンプ本体部1の空運転を容易に抑制することができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、第2通信部3を、第1通信部20に第1信号P1を第1時間間隔t1で繰り返し送信するように構成し、第1通信部20を、第1時間間隔t1よりも短い第2時間間隔t2内に第2信号P2を複数回送信するように構成する。これにより、短い時間で、第1通信部20が第1信号P1を受信できないことをより確実に確認することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、上記のように、第1通信部20および第2通信部3を、約400MHz以上から約1000MHz以下の周波数を有する電波により無線通信を行うように構成する。これにより、液体を通過しにくく、かつ、空気中を伝わりやすい約400MHz以上から約1000MHz以下の周波数を有する電波により無線通信を行うことによって、第1通信部20が水没したことをより正確に判断することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、上記のように、第2通信部3を、電池から電力が供給されるように構成し、第1通信部20を、ポンプ本体部1と共通の電源部Dから電力が供給されるように構成する。これにより、第2通信部3をポンプ本体部1から離間して配置した場合に、電源部Dから第2通信部3に電力を供給するように構成した場合と比べて、第2通信部3に電源部Dから電力を供給するための配線などを設ける必要がなく、装置構成を簡素化することができる。また、電池から電力が供給されるように構成することで、電極に電圧を印加してポンプ本体部を自動運転する従来の構成に比べ、省電力化を図ることができる。また、第1通信部20に、ポンプ本体部1と共通の電源部Dから電力を供給することができるので、ポンプ本体部1の電源部Dに加えて、別途電力の供給源を設ける必要がなく、装置構成を簡素化することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、上記のように、第2通信部3を、吸水部4の近傍に配置する。これにより、第2通信部3が吸水部4の近傍に配置されるので、排水領域Hの吸水部4近傍に液体が溜まっており、吸水部4による液体の吸引が可能であるか否かをより精度よく判断することができる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、
図1および
図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、制御部21により第1通信部20から第2信号P2を複数回連続して送信可能に構成した上記第1実施形態の構成とは異なり、制御部21aにより第1通信部20から第2信号P2を1回送信するように構成する例について説明する。
【0052】
第2実施形態による電動ポンプ200は、
図1に示すように、ポンプ本体部1と、第1通信部20および制御部21aを含む制御装置2と、第2通信部3と、吸水部4とを備えている。
【0053】
図5に示すように、制御部21aは、
第1通信部20が第1信号P1を受信できないならば、第1通信部20に、第2信号P2を1回だけ第2通信部3に向けて送信させるように構成されている。そして、制御部21aは、第2信号P2に対する第2通信部3からの応答として第3信号P3を第1通信部20が受信できないならば、ポンプ本体部1の運転の開始(稼動)を行うように構成されている。また、
第1通信部20は、第1実施形態とは異なり、第1信号に対して応答信号を送信しない。
【0054】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0055】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、無線による信号を受信可能な第1通信部20が、第2通信部3から送信される無線による第1信号P1を受信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部1の運転の開始を行うように構成する。これにより、電力消費を抑制するとともに、第2通信部3(排水領域の状態を検知する構成)に電食を生じさせることなく、水位検知のための調整作業が煩雑となるのを抑制しながら、所定水位において電動ポンプ200の運転を安定して開始させることができる。
【0056】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0057】
[第3実施形態]
次に、
図6および
図7を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、第1信号P1に基づいてポンプ本体部1の運転
を停止させた上記第2実施形態の構成とは異なり、第1信号P1に基づくことなく、ポンプ本体部1の運転負荷に基づいてポンプ本体部1の運転
を停止させる例について説明する。
【0058】
第3実施形態による電動ポンプ300は、
図6に示すように、ポンプ本体部1と、第1通信部20、制御部21aおよび電力計22を含む制御装置2と、第2通信部3と、吸水部4
とを備えている。
【0059】
図7に示すように、電力計22は、ポンプ本体部1の運転負荷を計測するように構成されている。ポンプ本体部1は、電力計22により計測される電力がしきい値以下となった場合に、運転を停止するように構成されている。すなわち、制御部21aは、電力計22により計測される電力がしきい値以下となった場合に、ポンプ本体部1の運転を停止させる制御を行なうように構成されている。したがって、電力のしきい値が、第2通信部3の水没が解消される所定の水位に対応するように設定されることにより、ポンプ本体部1は、第2通信部3の水没が解消される所定の水位になった場合に、運転を停止する。
【0060】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0061】
第3実施形態では、上記第1実施形態と同様に、無線による信号を受信可能な第1通信部20が、第2通信部3から送信される無線による第1信号P1を受信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部1の運転の開始を促す通知を行うように構成する。これにより、電力消費を抑制するとともに、第2通信部3(排水領域の状態を検知する構成)に電食を生じさせることなく、水位検知のための調整作業が煩雑となるのを抑制しながら、所定水位において電動ポンプ300の運転を安定して開始させることができる。
【0062】
また、第3実施形態では、上記のように、ポンプ本体部1は、運転負荷がしきい値以下となった場合に、運転を停止するように構成されている。このように構成すれば、運転負荷が小さくなった場合に、ポンプ本体部1の運転を停止させることができるので、容易にポンプ本体部1の運転を停止させることができる。
【0063】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0064】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0065】
たとえば、上記第1実施形態では、第2信号を最大で5回連続して送信可能に構成した例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、第2信号を最大で2~4回または6回連続して送信可能に構成してもよい。
【0066】
また、上記第1から第3実施形態では、第1通信部が第1信号を受信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部の運転の開始を行うように構成した例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、第1通信部が第1信号を受信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部の運転を促す通知を行うように構成してもよい。また、第1通信部が第1信号を受信できなくなることに基づいて、ポンプ本体部の運転の開始、および、ポンプ本体部の運転を促す通知の両方を行うように構成してもよい。
【0067】
また、上記第1および第2実施形態では、第1通信部が第1信号を受信できなくなった後、再び第1信号を受信した場合に、ポンプ本体部の運転を停止させるように構成する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、たとえば、第1通信部が第1信号を受信できなくなった後、再び第1信号を受信した場合に、第1信号を再び受信してから所定時間、ポンプ本体部の運転が継続されるように構成してもよい。
【0068】
また、上記第1~第3実施形態では、制御装置が制御部を含む例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、制御装置が制御部を含んでいなくてもよい。たとえば、ポンプ本体部が制御部を含んでいてもよい。
【0069】
また、上記第1~第3実施形態では、第2通信部を、第1信号を第1時間間隔で繰り返し送信するように構成する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、たとえば、第2通信部が第1信号を送信する間隔として、第1の時間間隔(たとえば10秒間隔)および第2の時間間隔(たとえば20秒間隔)を交互に繰り返してもよい。
【0070】
また、上記第1~第3実施形態では、第2通信部を、電池、例えば1つまたは2つ以上のボタン電池、あるいは単三電池から電力が供給されるように構成する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、たとえば、第2通信部を、ボタン電池、あるいは単三電池以外の、電源部から電力供給を受けるよりも小さい電力量の電池から電力が供給されるように構成してもよい。
【0071】
また、上記第1~第3実施形態では、第2通信部を吸水部の近傍に配置する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、第2通信部は、排水領域内に設置されるのであれば、吸水部の近傍に配置しなくてもよい。
【0072】
また、上記第1~第3実施形態では、第1通信部および第2通信部を、約400MHz以上から約1000MHz以下の周波数を有する電波により無線通信を行うように構成する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、第2通信部が水没することにより、第1通信部が第2通信部からの第1信号を受信ができなくなる電波強度であれば良いので、第1通信部および第2通信部の少なくとも一方を、400MHz未満から1000MHz以上の周波数を有する電波により無線通信を行うように構成してもよい。
【0073】
また、上記第1~第3実施形態では、電力計によりポンプ本体部の運転負荷を測定する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、たとえば、モータの回転軸のトルクを測定することによりポンプ本体部の運転負荷を測定してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 ポンプ本体部
3 第2通信部(送信部)
3a 電池
4 吸水部
20 第1通信部(受信部)
100、200、300 電動ポンプ
H 排水領域
P1 第1信号(無線信号)
P2 第2信号
P3 第3信号