(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】配管洗浄装置及び配管洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 9/032 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
B08B9/032 328
B08B9/032 325
(21)【出願番号】P 2018017987
(22)【出願日】2018-02-05
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000179328
【氏名又は名称】リックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【氏名又は名称】大川 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100120994
【氏名又は名称】山田 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100112483
【氏名又は名称】丹羽 純二
(72)【発明者】
【氏名】中島 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英史
(72)【発明者】
【氏名】山田 高明
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-136939(JP,A)
【文献】特開2008-279320(JP,A)
【文献】特開平07-080427(JP,A)
【文献】特開昭60-118280(JP,A)
【文献】特開2012-200712(JP,A)
【文献】特表2016-540667(JP,A)
【文献】特開2012-050925(JP,A)
【文献】特開平05-005799(JP,A)
【文献】特公平08-029310(JP,B2)
【文献】国際公開第2005/049239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧気体を供給する高圧気体供給部と、
前記高圧気体供給部に一端部が接続され、他端部が洗浄対象である配管に接続され
た下方向に凸のU字状の管状部材であって、前記一端部及び他端部の間を閉塞して分断するように所定量
且つ静止状態の洗浄液を内部に保持し、
その後に前記高圧気体供給部から供給された高圧気体と共に前記他端部から前記所定量の洗浄液を排出する洗浄液保持部と、
前記洗浄液保持部よりも高い液面もつように前記洗浄液を貯蔵し、吐出方向にのみ前記洗浄液を流すことができる逆止弁を介して前記管状部材に接続され、重力により前記洗浄液保持部内に前記洗浄液を移動させる洗浄液タンクと、
前記洗浄液保持部に保持される前記洗浄液が前記配管を通って一気に排出するように前記高圧気体を供給するように前記高圧気体供給部を制御する制御部と、
前記配管を通過して排出される前記洗浄液を回収する洗浄液回収部と、
を有し、
前記所定量は前記配管内部の容積未満の量である、
配管洗浄装置。
【請求項2】
前記配管を通過した後、前記洗浄液回収部に至るまでに前記洗浄液の圧力を低減させる圧力拡散部を有する請求項1に記載の配管洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄液保持部の前記他端部と前記配管との間には、前記配管に流れる前記洗浄液の向きを入替可能に切り替えることができる切り替え手段を有し、
前記制御部は、前記切り替え手段により前記洗浄液が流れる方向を順次切り替えながら、前記所定量の洗浄液が複数回流れるように制御する請求項1又は2に記載の配管洗浄装置。
【請求項4】
請求項1~3のうちの何れか1項に記載の配管洗浄装置を用いて前記配管を洗浄する配管洗浄方法であって、
前記洗浄液タンクから前記洗浄液保持部内に前記所定量の洗浄液を供給する工程と、
前記高圧気体供給部から前記洗浄液保持部の前記一端部に前記高圧気体を供給して、前記配管内部
に前記洗浄液を
前記高圧気体と共に一気に通過させて洗浄する洗浄工程と、
前記配管を通過して排出される前記洗浄液を回収する洗浄液回収工程と、
を有する配管洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄液を前記配管に流す方向を切り替えながら、複数回、前記所定量の洗浄液を流す請求項4に記載の配管洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄液回収工程は、前記配管を通過した前記洗浄液の圧力を低減させる圧力拡散工程をもつ請求項4又は5に記載の配管洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内の付着物を液体により洗浄する配管洗浄装置及び配管洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配管内の付着物を洗浄する方法としては、洗浄液を配管の一端側から他端側に向けて連続的に導入し、その洗浄液の流れにより付着物を除去する方法が知られている(特許文献1など)。洗浄液の洗浄力を向上するために、配管中において洗浄液内に気泡を導入したり、水撃作用を期待して連続的に流れる洗浄液中に圧縮空気を導入したりしている技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-77549号公報
【文献】特開2017-13038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、洗浄液を用いる洗浄方法では、発生した洗浄廃液の処理が問題となる。洗浄液の使用量はできるだけ少なく出来ることが望まれる。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて完成したものであり、洗浄液を減らしても同等の洗浄力を発揮することができる配管洗浄装置及び配管洗浄方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決する目的で鋭意検討を行った結果、洗浄対象である配管内部の容量よりも少量の洗浄液を用い、その洗浄液を高圧気体により配管内を高速移動させることで効果的な配管の洗浄が実現できることを見出した。つまり、特許文献2の方法のような配管内を満たしている洗浄液中への高圧気体の導入では、高圧気体の導入により洗浄液に水撃作用が生じさせることにより配管内壁に付着する付着物を除去するため、必要な洗浄液の総量自体は多いままであるのに対して、配管内部の容量よりも少量の洗浄液を高圧気体により高速移動させる方法では、洗浄能力を保ったまま洗浄液の総量を減らすことができる。
【0007】
ここで、少量の洗浄液を配管内で高速移動させるために、高圧気体から少量の洗浄液に対して効果的に圧力を加える方法を開発・採用した。具体的には、一端部から高圧気体を導入し他端部から排出する構造をもつ洗浄液保持部を採用し、その洗浄液保持部の内部に洗浄液を保持した状態で一端部から高圧気体を供給することで他端部から洗浄液を高速に排出する。洗浄液保持部の他端部には、洗浄対象である配管が接続され、排出された洗浄液が配管に供給される。
【0008】
洗浄液保持部の形状としては、使用する量の洗浄液を保持するときに、洗浄液保持部の一端部と他端部との間が分断できるように洗浄液保持部内の一部が保持される洗浄液によって閉塞される形状をもつ。一端部と他端部との間を洗浄液にて分断することで一端部から供給される高圧気体からの圧力が洗浄液に効果的に加えられ、洗浄液が他端部から勢いよく排出できる。
【0009】
(1)本発明は上記知見に基づき完成したものであり、上記課題を解決する配管洗浄装置は、高圧気体を供給する高圧気体供給部と、
前記高圧気体供給部に一端部が接続され、他端部が洗浄対象である配管に接続されており、前記一端部及び他端部の間を閉塞して分断するように所定量の洗浄液を内部に保持し、前記高圧気体供給部から供給された高圧気体と共に前記他端部から前記所定量の洗浄液を排出する洗浄液保持部と、
前記洗浄液保持部に保持される前記洗浄液が前記配管を通って一気に排出するように前記高圧気体を供給するように前記高圧気体供給部を制御する制御部と、
前記配管を通過して排出される前記洗浄液を回収する洗浄液回収部と、
を有し、
前記所定量は前記配管内部の容積未満の量である。
【0010】
特に前記所定量の洗浄液を複数回排出して洗浄を行うことが好ましい。洗浄液を減らすことで洗浄による廃液の生成が抑制できる。洗浄効果に与える影響は、洗浄液の絶対量よりも、洗浄液の流れ始めや流れ終わりの部位(気体と洗浄液との境界)が配管内を通過した回数の方が大きいため、洗浄液の量を減らすことで「気体と洗浄液との境界」の数を増加したり、洗浄液を流す回数を複数にすることで洗浄効果を向上することができる。但し、洗浄液は高圧気体により配管内を移動するため、配管内を移動中であっても配管内を閉塞できる程度の量は用いることが好ましい。前記洗浄対象である配管の少なくとも一部の内径が15mm以上35mm以下であるときは、前記洗浄液の所定量は、100mL以上300mL以下であることができる。
【0011】
上記(1)に開示の配管洗浄装置は、下記(2)及び(3)のうちの1つ以上を組み合わせることができる。
【0012】
(2)前記配管を通過した後、前記洗浄液回収部に至るまでに前記洗浄液の圧力を低減させる圧力拡散部を有する。洗浄液は高圧気体と共に配管内に供給されるため、配管から排出される洗浄液も高圧になっており、排出された洗浄液はそのまま常圧に曝されると飛び散るおそれがある。そこで、配管から洗浄液回収部に至るまでに洗浄液の圧力を低減させる圧力拡散部を有することにより排出された洗浄液の回収が容易になる。
【0013】
(3)前記洗浄液保持部の前記他端部と前記配管との間には、前記配管に流れる前記洗浄液の向きを入替可能に切り替える切り替え手段を有し、前記制御部は、前記切り替え手段により前記洗浄液が流れる方向を順次切り替えながら、前記洗浄液が流れるように制御する。洗浄液を流す方向を切り替えることで洗浄の効果が高くなる。
【0014】
(4)上記課題を解決する本発明の配管洗浄方法は、洗浄対象である配管に対して、前記配管内部の容積未満の量である所定量の洗浄液を高圧気体と共に一気に通過させる工程と、前記配管を通過して排出された前記洗浄液を回収する工程とを有する。
【0015】
上記(4)に開示の配管洗浄方法は、下記(5)~(6)のうちの1つ以上を組み合わせることができる。
【0016】
(5)前記洗浄液を前記配管に流す方向を切り替えながら、複数回、前記所定量の洗浄液を流す。洗浄液を流す方向を切り替えることで洗浄の効果が高くなる。
【0017】
(6)前記洗浄液回収工程は、前記配管を通過した前記洗浄液の圧力を低減させる圧力拡散工程をもつ。
【発明の効果】
【0018】
本発明の配管洗浄装置及び配管洗浄方法は、上記構成を有することから以下の作用効果を発揮できる。すなわち、高圧気体によって「所定の量」毎に配管に洗浄液を供給して一気に洗浄を行うことで高い洗浄能力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態の配管洗浄装置(第1切り替え状態)の模式図である。
【
図2】本実施形態の配管洗浄装置(第2切り替え状態)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の配管洗浄装置及び配管洗浄方法について以下実施形態に基づき詳細に説明を行う。本実施形態では、図面に示すように、洗浄対象である被対象配管90を洗浄する配管洗浄装置及び方法について説明を行う。被対象配管90は、図面上では長方形にて模式的に記載しているが、種々の配管を適用することができる。被対象配管90としては、単純な構成のものでも複数の部品を組み合わせたものを採用しても良い。例えば、管、継ぎ手、弁、ロータリージョイントなどの配管部品を適宜組み合わせた配管システムを洗浄対象とすることができる。配管の径についても異なる径をもつ種々の部品を組み合わせることができる。その場合に径が変化する部分では導入する洗浄液が行き渡りづらいが本実施形態の配管洗浄装置を適用することで効率的に洗浄を行うことができる。更には配管には、計測器(流量計、圧力計、温度計など)やバルブなどのように配管を構成する流路に設けられる装置を含むことができる。
【0021】
配管システムとしては、食品、薬品、香粧品などの製造装置の一部乃至全部が例示できる。配管内をスラリーや溶液が流れるようなものに好適に適用できる。なお、説明に使用する図は全て模式図で有り、その構成においては主要構成要素のみの記載に留めている場合があり、構成要素間の大小・配置についても特に言及が無い場合には模式的な記載になっている。
【0022】
(構成)
本実施形態の配管洗浄装置は、高圧気体供給部30と洗浄液保持部17と制御部40とその他の構成要素とを有する。高圧気体供給部30は、コンプレッサーにより空気を圧縮して高圧気体とする装置である。高圧気体供給部30は、高圧気体路15を通じて高圧気体を供給する。高圧気体路15の途中には電磁弁16が設けられている。電磁弁16は、制御部40により開閉が制御される。高圧気体の圧力は、詳しくは後述するが必要に応じて設定される。
【0023】
洗浄液保持部17は、所定量の洗浄液を内部に保持する手段である。洗浄液保持部17はU字状に配置した管状部材であり、重力によってその下部60に洗浄液を保持する。洗浄液保持部17は、一端部に設けられたチーズ14にて高圧気体路15に接続される。チーズ14は、高圧気体路15と共に洗浄液供給路11にも接続される。洗浄液供給路11は、洗浄液タンク10に接続され、洗浄液供給路11の途中には、制御部40により開閉が制御される電磁弁12と洗浄液タンク10側から洗浄液保持部17側に向けての流れしか許容しない逆止弁13とが設けられている。
【0024】
洗浄液タンク10内に貯留された洗浄液は、電磁弁12を開くことで重力により洗浄液保持部17内に流れていく。そのため、洗浄液タンク10内の洗浄液の水面は、洗浄液保持部17よりも上方に位置するように設定される。なお、洗浄液タンク10内の洗浄液を洗浄液保持部17に供給するポンプを設けても良い。
【0025】
洗浄液としては、被対象配管90に付着する汚れの種類に応じて適正に選択できる。例えば、汚れを溶解できる溶媒(水や有機溶媒など)、その溶媒に界面活性剤などを溶解した溶液が例示できる。後述する洗浄液回収部51にて回収された洗浄液を再利用することもできる。複数回洗浄を行う場合には、最後の洗浄液として最終的に蒸発して除去可能なもの(水や溶媒のみのものなど)で最後に洗浄することで乾燥することにより被対象配管90を清浄化することができるため望ましい。
【0026】
洗浄液供給路11に設けられた逆止弁13により高圧気体路15から供給される高圧気体が洗浄液供給路11を通じて洗浄液タンク10に逆流することが防止できる。
【0027】
洗浄液保持部17の他端部では、第1流路19と第2流路20とに分岐するチーズ18が接続される。第1流路19は第1切替弁21を介して第3流路26と第5流路24に分岐して接続される。第1切替弁21は、第1流路19及び第5流路24のうちから一方を選択して第3流路26に接続する。
【0028】
第2流路20は第2切替弁22を介して第4流路27と第6流路25に分岐して接続される。第2切替弁22は、第2流路20及び第6流路25のうちから一方を選択して第4流路27に接続する。
【0029】
第1切替弁21と第2切替弁22は同期しており、第1切替弁21が第3流路26を第1流路19に接続するときには第2切替弁22は第4流路27を第6流路25に接続し(
図1:以下「第1切り替え状態」と称する)、第1切替弁21が第3流路26を第5流路24に接続するときには第2切替弁22は第4流路27を第2流路20に接続する(
図2:以下、「第2切り替え状態」と称する)。
【0030】
第3流路26は被対象配管90の一方側90aに接続され、第4流路27は被対象配管90の他方側90bに接続される。第5流路24と第6流路25とは、チーズ23にて合流し、排水管28に接続される。
【0031】
排水管28は、圧力拡散部50に接続される。圧力拡散部50は、通過する洗浄液の圧力を低減する手段である。洗浄液の圧力を低減させることで、洗浄液の飛散が効果的に防止できる。
【0032】
圧力拡散部50の構成としては、排水管28と比べて急激に内径を増大させるなどにより体積を増大させて圧力を低減する構成が例示できる。圧力拡散部50の体積としては使用する洗浄液や高圧気体の量に応じて適正に設定できる。圧力拡散部50の体積を大きくすることで洗浄液を多くしたり高圧気体の圧力を高くしたりしても充分に圧力を低減させることが可能になる。圧力拡散部50を通じて洗浄液は洗浄液回収部51に回収される。回収された洗浄液はそのまま排液処理を行ったり、洗浄液として再利用したりすることができる。再利用する場合には、被対象配管90に付着する汚れの種類により洗浄液を濾過などにより異物を除去して再利用したり、洗浄液に完全に溶解する汚れの場合にはそのまま再利用したりできる。
【0033】
従って、第1切り替え状態では、第1切替弁21が第3流路26を第1流路19に接続し第2切替弁22は第4流路27を第6流路25に接続するように切り替えられ、
図1に示すように、洗浄液保持部17は、その他端部に接続されたチーズ18から、第1流路19、第1切替弁21、第3流路26、被対象配管90の一方側90a、他方側90b、第4流路27、第2切替弁22、第6流路25、チーズ23、排水管28の順に接続される。
【0034】
そして、第2切り替え状態では、第1切替弁21が第3流路26を第5流路24に接続し第2切替弁22は第4流路27を第2流路20に接続するように切り替えられ、
図2に示すように、洗浄液保持部17は、その他端部に接続されたチーズ18から、第2流路20、第2切替弁22、第4流路27、被対象配管90の他方側90b、一方側90a、第3流路26、第1切替弁21、第5流路24、チーズ23、排水管28の順に接続されることで、被対象配管90に流れる洗浄液の方向が逆転する。これらの第1流路19、第2流路、第1切替弁21、第2切替弁22、第3流路26、第4流路27、第5流路24、第6流路25は合わせて本発明の切り替え手段に相当し、第1切り替え状態と第2切り替え状態との間を切り替える手段を構成する。
【0035】
(作用効果)
本実施形態の配管洗浄装置について作用効果を説明する。電磁弁12及び16、第1切替弁21及び第2切替弁22については制御部40により制御されているが以下の説明では制御部40により制御される旨の説明は適宜省略している。
【0036】
最初に、第3流路26に被対象配管90の一方側90aを、第4流路27に被対象配管90の他方側90bを接続し、洗浄液タンク10内に洗浄液を貯留する。その後、電磁弁12を一定時間開くことで、重力の作用により所定量の洗浄液を洗浄液タンク10から電磁弁12及び逆止弁13を通じて洗浄液保持部17に供給する(
図1:F1・F2、
図2:f1・f2)。
【0037】
供給する洗浄液の量は、電磁弁12を開く時間により制御して所定量とする。所定量としては、できるだけ少ない方が好ましい。所定量としては、被対象配管90内の体積よりも少ない量とする。また、所定量としては、洗浄液保持部17の一端部14と他端部18との間を分断・閉塞することができる量とする。本実施例では洗浄液保持部17の屈曲した流路のうち、下部が充填できる程度の量以上の量とする。なお、分断・閉塞できる量は、洗浄液保持部17の形状を変更することで、その最小量を制御することができる。本実施例では、洗浄液保持部17の屈曲した流路のうちの下部の容量を変化させることで制御できる。
【0038】
更に、洗浄液の量としては、被対象配管90内において流れ方向の一部において流路を閉塞することができる程度の量にすることが好ましい。流路を閉塞できる程度の量にすることで供給された高圧気体により被対象配管90内を洗浄液が高速で移動することができるようになり洗浄効果が向上する。
【0039】
例えば、被対象配管90を構成する部品のうちの一部が、内径15mm以上30mm以下であるときには、洗浄液の所定量は、100mL以上300mL以下であることが好ましい。この程度の量を所定量として設定することで、洗浄液の単位量あたりの洗浄力を極大化することができる。なお、所定量としては厳密に制御されていることは必ずしも必須ではなく量の多少が生じても良い。
【0040】
洗浄液保持部17に所定量の洗浄液を保持した後、電磁弁16を開くことにより高圧気体供給部30から供給される高圧気体が高圧気体路15を通じて洗浄液保持部17に供給される(洗浄工程、
図1:A1・A2、
図2:a1・a2)。供給される高圧気体の圧力及び量としては特に限定しないが、洗浄液保持部17に保持された洗浄液を被対象配管90内を抜けて排水管28から洗浄液回収部51に至るまで一気に通過できる程度にすることが望ましい。例えば0.2MPa程度を下限として設定できる。上限としては特に限定しないが、被対象配管90への影響などを考慮して適正に決定できる。例えば圧力としては、1MPa、0.75MPa、0.5MPa、0.4MPa、0.3MPa、0.25MPaが採用できる。量としては、本実施形態の配管洗浄装置内の体積と被対象配管90内の体積との合計を考慮して充分な量を採用する。
【0041】
ここで、洗浄液が無い配管内に洗浄液が到達すると、洗浄液の先端では配管内壁と洗浄液との間の相対速度が大きくなり、そこで発生する摩擦力により管壁に付着する付着物の除去が効果的に行われる。更に、洗浄液が流れていった終端でも洗浄液が高圧気体により配管の内壁から剥離するときに大きな摩擦力が加わって付着物の除去が効果的に進行する。
【0042】
それに対して、最初から被対象配管90の内部を洗浄液で満たしている場合や、継続的に洗浄液を流して被対象配管90を洗浄する場合には、配管内壁面近傍での洗浄液の流速がほぼ0になることは流体力学的にも明白なことであり、充分な洗浄効果が発揮できなくなる。
【0043】
特許文献2では層流中に空気を導入して洗浄する点では気泡の混入により流れが攪乱されるため前述のように洗浄液で環内が満たされている条件に比べれば洗浄効果が期待できるが、本実施形態の配管洗浄装置では同等又はそれ以上の洗浄効果を発揮しながら、洗浄液の量を大幅に低減できることが期待できる。
【0044】
洗浄液保持部17内の洗浄液は、供給された高圧気体により勢いよく流されていき(
図1:F3・F4・A3・A4、
図2:f3・f4・a3・a4)、被対象配管90の内部を進んでいく(
図1:F5・A5、
図2:f5・a5)。このときに被対象配管90の内壁では、洗浄液が進んでくる前は気体と接触していたのに対して、洗浄液が進んでくると、洗浄液の先端が勢いよく進んでくることになる。そのため、洗浄液の勢いにより被対象配管90の内壁に付着している付着物は脱離・除去されることになる。被対象配管90から流出した洗浄液と高圧気体は排水管28から洗浄液回収部51に排出される(
図1:F6~F8・A6~A8、
図2:f6~f8・a6~a8)。排水管28から洗浄液回収部51に向けて洗浄液が排出されるとき(洗浄液回収工程)に圧力拡散部50を通過することにより高圧気体と共に流れてくる洗浄液の圧力を低減することができ(圧力拡散工程)、使用済みの洗浄液の飛散が防止できて回収が容易になる。
【0045】
この洗浄操作は複数回繰り返すことが望ましい。この場合に複数回で用いる洗浄液の量と同量を一回の量として洗浄を行う場合と比べて複数回に分けて洗浄を行う方が洗浄効果が向上する。また、洗浄が終了した後には高圧気体のみを被対象配管90内に流すことで被対象配管90内を乾燥させることができるため好ましい。更に、複数回の洗浄操作を繰り返す場合には、それぞれの洗浄操作の間に高圧気体のみを流す工程を加えることが好ましい。例えば、洗浄液を高圧気体で流す際に洗浄液が流れ終わった後にもしばらく高圧気体の供給を続けることができる(例えば洗浄液を流し始めてから20秒~40秒程度)。
【0046】
そして、第1切り替え状態と第2切り替え状態とを切り替えることで被対象配管90内を双方向から洗浄することが可能になる。このように双方向から洗浄液を流す機構を採用すると、弁や異形管の接合部などのような被対象配管90の内部で管径が変化する部分、配管が屈曲する部分、その他配管内部の形状が複雑な場合などにおいても洗浄液が充分に行き渡らたせることが可能になって充分な洗浄を実現することができる。更に、第1切り替え状態と第2切り替え状態との間の切り替えを複数回行うことが好ましい。切り替えを複数回行うことにより効果的な洗浄が実現できる。
【0047】
例えば、異なる管径の配管が接続される部分においては、管径が縮小する方向に向けて洗浄液を流すことができれば内壁について満遍なく洗浄液を接触させることが可能になるが、反対の管径が拡がる方向に向けて洗浄液を流す場合には管径が拡がる部分では、デッドゾーンが生じ、洗浄液が内壁から浮き上がって充分に接触できない場合が考えられる。このような場合においても双方向から洗浄液を流すようにすることで、双方向のうちの少なくとも一方では洗浄液を内壁に充分に接触させることが可能になって洗浄能力が向上できる。
【0048】
同様に、配管が屈曲している部分においても双方向から洗浄液を流す構成にすることにより、充分に洗浄液が接触しない内壁の部分を減らすことが可能になって付着物の除去を確実に行うことができる。
【実施例】
【0049】
図1及び2に記載の配管洗浄装置を用いて以下の実験を行った。被対象配管90としては、洗浄機連結ホース(長さ1620mm、内径19mm、流路内面積4590cm
2)、フィルタケース(長さ620mm、内径97mm、流路内面積45794cm
2)、渡りホース(長さ690mm、内径19mm、流路内面積1955cm
2)、流量計ダミー(2-ヘルール径違いチーズ1S×8A/Φ23×Φ10.5の内径23mmのうちの一方をメクラ蓋にて塞いだものを2つと、それらの間を接続する2-エルボ8A/Φ10.5が2個を連結したもの、流路内面積75277cm
2)、洗浄機連結ホース(長さ1330mm、内径19mm、流路内面積3769cm
2)をこの順に接続したものであり、総流路長さ4712mm、総流路内面積131385cm
2のものを採用した。
【0050】
モデル付着物はカルボキシメチルセルロースの1%水溶液を用い、内部にモデル付着物を充填した状態から洗浄を開始した。
【0051】
洗浄液としては、モデル洗浄液を利用し、所定量としては電磁弁12を開く時間を一定にすることで設定した。高圧気体の圧力は、0.25MPaとした。洗浄液の所定量と洗浄回数とを変化させたときにフィルタケース内に残存するモデル付着物の質量を測定した。結果を表1に示す。また、所定量×洗浄回数で算出される洗浄液量も併記した。
【0052】
【0053】
表より明らかなように、洗浄液総量は同程度であっても洗浄回数を増やすことで洗浄力が大きくなる傾向になることが分かった。例えば2L弱程度の洗浄水を使用する場合に、325mLで6回の洗浄を行う場合よりも、260mLで8回の場合、113mLで18回、96mLで20回の方が洗浄効果が高かった。但し、単純に洗浄回数が多ければ洗浄力が単純に上がるわけではなく、これらの場合では260mLで8回が一番洗浄力が高かった。これは、一回の洗浄液の量を一定以上にすることで、被対象配管90内に洗浄液が充分に行き渡るようになるからであると推測できる。
【0054】
今回の被対象配管90においては、一回あたり260mLの量を所定量にすることで洗浄力が最大になることがわかった。但し、83mLで20回の洗浄を行う方が、洗浄水総量が同じ1.66Lであっても138mLで12回の洗浄を行う場合よりも洗浄力が高いことが明らかとなり、洗浄回数を増加する効果も一定程度は存在することが明らかとなった。
【符号の説明】
【0055】
10…洗浄液タンク 11…洗浄液供給路 12…電磁弁 13…逆止弁 14…チーズ 15…高圧気体路 16…電磁弁 17…洗浄液保持部 18…チーズ 19…第1流路 20…第2流路 21…第1切替弁 22…第2切替弁 23…チーズ 24…第5流路 25…第6流路 26…第3流路 27…第4流路 28…排水管 30…高圧気体供給部 40…制御部 50…圧力拡散部 51…洗浄液回収部 60…下部 90…被対象配管 90a…一方側 90b…他方側