(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】周波数選択板及び電子レンジ加熱用容器
(51)【国際特許分類】
H05B 6/64 20060101AFI20220209BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20220209BHJP
H05B 6/70 20060101ALI20220209BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
H05B6/64 Z
B65D81/34 W
H05B6/70 F
A47J27/00 107
(21)【出願番号】P 2017209801
(22)【出願日】2017-10-30
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】堀越 智
(72)【発明者】
【氏名】須田 保
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-150782(JP,U)
【文献】特開2004-239465(JP,A)
【文献】特開2000-262260(JP,A)
【文献】特開2006-075617(JP,A)
【文献】特開平09-132279(JP,A)
【文献】特開平09-163939(JP,A)
【文献】特開2007-180114(JP,A)
【文献】特開平06-068975(JP,A)
【文献】特開2008-060015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/64-6/80
F24C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波加熱対象又はマイクロ波乾燥対象の表面に浸透可能である一方で、マイクロ波加熱対象又はマイクロ波乾燥対象の内部に浸透不能であるような、マイクロ波表面加熱用又はマイクロ波表面乾燥用の周波数を有する電磁波を透過
し、
マイクロ波非加熱対象又はマイクロ波非乾燥対象の表面に浸透可能であるとともに、マイクロ波非加熱対象又はマイクロ波非乾燥対象の内部に浸透可能であるような、マイクロ波内部加熱用又はマイクロ波内部乾燥用の周波数を有する電磁波を遮断する
ことを特徴とする周波数選択板。
【請求項2】
前記マイクロ波表面加熱用又はマイクロ波表面乾燥用の周波数において設計される
ことを特徴とする、請求項
1に記載の周波数選択板。
【請求項3】
フラクタル形状を有する素子パターンを格子状に複数個備える
ことを特徴とする、請求項1
又は2に記載の周波数選択板。
【請求項4】
導電性物質により形成される素子パターンを備え、前記導電性物質により形成される素子パターンの隙間を通して、可視光の一部を一方の側から他方の側へと通過させる
ことを特徴とする、請求項1から
3のいずれかに記載の周波数選択板。
【請求項5】
透明導電性物質により形成される素子パターンを備え、前記透明導電性物質により形成される素子パターンを通して、可視光を一方の側から他方の側へと透過させる
ことを特徴とする、請求項1から
3のいずれかに記載の周波数選択板。
【請求項6】
前記マイクロ波表面加熱用又はマイクロ波表面乾燥用の周波数を有する電磁波を吸収しない部材に印刷される
ことを特徴とする、請求項1から
5のいずれかに記載の周波数選択板。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれかに記載の周波数選択板を備え、前記周波数選択板は、電子レンジの電磁波発生器から見て、内容物を覆う位置に配置される
ことを特徴とする電子レンジ加熱用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非加熱対象又は非乾燥対象へのマイクロ波による非加熱又は非乾燥と、加熱対象又は乾燥対象へのマイクロ波による加熱又は乾燥と、を選択する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非加熱対象へのマイクロ波による非加熱と、加熱対象へのマイクロ波による加熱と、を選択する技術として、特許文献1、2に開示の技術が存在する。特許文献1では、電子レンジを用いて、電磁波の周波数及び位相を調整することにより、マイクロ波による非加熱と加熱とを選択する。特許文献2では、金属箔を用いて、電磁波発生器から見て非加熱対象を被覆することにより、マイクロ波による非加熱と加熱とを選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-129141号公報
【文献】特開平09-163939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、電磁波の周波数及び位相を調整するため、容易にはマイクロ波による非加熱と加熱とを選択できない。そして、特許文献2では、金属箔により金属放電が発生するため、安全にはマイクロ波による非加熱と加熱とを選択できない。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、容易にかつ安全にマイクロ波による非加熱又は非乾燥と加熱又は乾燥とを選択することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、マイクロ波に対する周波数選択板を用いて、非加熱対象又は非乾燥対象の表面に浸透可能であるとともに、非加熱対象又は非乾燥対象の内部に浸透可能であるような、内部加熱用又は内部乾燥用の周波数を有する電磁波を遮断する。
【0007】
具体的には、本開示は、マイクロ波非加熱対象又はマイクロ波非乾燥対象の表面に浸透可能であるとともに、マイクロ波非加熱対象又はマイクロ波非乾燥対象の内部に浸透可能であるような、マイクロ波内部加熱用又はマイクロ波内部乾燥用の周波数を有する電磁波を遮断することを特徴とする周波数選択板である。
【0008】
この構成によれば、周波数選択板の使用の有無に応じて、容易にかつ安全にマイクロ波による非内部加熱又は非内部乾燥と内部加熱又は内部乾燥とを選択することができる。
【0009】
また、本開示は、マイクロ波加熱対象又はマイクロ波乾燥対象の表面に浸透可能である一方で、マイクロ波加熱対象又はマイクロ波乾燥対象の内部に浸透不能であるような、マイクロ波表面加熱用又はマイクロ波表面乾燥用の周波数を有する電磁波を透過することを特徴とする周波数選択板である。
【0010】
この構成によれば、周波数選択板を用いて容易にかつ安全に、マイクロ波による内部加熱又は内部乾燥を行わず、マイクロ波による表面加熱又は表面乾燥を行うことができる。
【0011】
また、本開示は、前記マイクロ波表面加熱用又はマイクロ波表面乾燥用の周波数において設計されることを特徴とする周波数選択板である。
【0012】
表面加熱用又は表面乾燥用の周波数は、内部加熱用又は内部乾燥用の周波数より、一般的に高い。この構成によれば、非内部加熱対象又は非内部乾燥対象かつ表面加熱対象又は表面乾燥対象が小さいときであっても、周波数選択板を用いることができる。
【0013】
また、本開示は、フラクタル形状を有する素子パターンを格子状に複数個備えることを特徴とする周波数選択板である。
【0014】
フラクタル形状を有する素子パターンのサイズは、フラクタル形状を有さない素子パターンのサイズより、フラクタルの階層数に応じて小さい。この構成によれば、非内部加熱対象又は非内部乾燥対象が小さいときであっても、周波数選択板を用いることができる。
【0015】
また、本開示は、導電性物質により形成される素子パターンを備え、前記導電性物質により形成される素子パターンの隙間を通して、可視光の一部を一方の側から他方の側へと通過させることを特徴とする周波数選択板である。
【0016】
この構成によれば、非内部加熱対象又は非内部乾燥対象を周波数選択板で被覆するときであっても、非内部加熱対象又は非内部乾燥対象を視認することができる。そして、導電性物質を用いるため、周波数選択板の熱損電力を低減することができる。
【0017】
また、本開示は、透明導電性物質により形成される素子パターンを備え、前記透明導電性物質により形成される素子パターンを通して、可視光を一方の側から他方の側へと透過させることを特徴とする周波数選択板である。
【0018】
この構成によれば、非内部加熱対象又は非内部乾燥対象を周波数選択板で被覆するときであっても、非内部加熱対象又は非内部乾燥対象を視認することができる。そして、透明導電性物質を用いるため、周波数選択板の透明性を向上することができる。
【0019】
また、本開示は、前記マイクロ波内部加熱用又はマイクロ波内部乾燥用の周波数を有する電磁波を吸収しない部材に印刷されることを特徴とする周波数選択板である。
【0020】
この構成によれば、周波数選択板を簡便に製造することができる。
【0021】
また、本開示は、上記の周波数選択板を備え、前記周波数選択板は、電子レンジの電磁波発生器から見て、内容物を覆う位置に配置されることを特徴とする電子レンジ加熱用容器である。
【0022】
この構成によれば、周波数選択板の使用の有無に応じて、容易にかつ安全にマイクロ波による非内部加熱又は非内部乾燥と内部加熱又は内部乾燥とを選択することができる。
【発明の効果】
【0023】
このように、本開示は、容易にかつ安全にマイクロ波による非加熱又は非乾燥と加熱又は乾燥とを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の電子レンジ加熱用容器の構成を示す図である。
【
図2】本開示の周波数選択板の被覆方法を示す図である。
【
図3】本開示の周波数選択板の構成を示す図である。
【
図4】本開示の周波数選択板の構成を示す図である。
【
図5】本開示の周波数選択板の透過係数及び反射係数を示す図である。
【
図6】本開示の周波数選択板の透明化方法を示す図である。
【
図7】本開示の周波数選択板の電流分布を示す図である。
【
図8】本開示の周波数選択板の熱損電力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0026】
本開示の電子レンジ加熱用容器の構成を
図1に示す。周波数選択板1は、容器3に蓋部2が載っている状態で、容器3内の内容物4を被覆する。そして、周波数選択板1は、電子レンジの電磁波発生器から見て、容器3内の内容物4を覆う位置に配置される。
【0027】
本開示の周波数選択板の被覆方法を
図2に示す。周波数選択板1は、容器3から蓋部2が外された状態で、容器3内の内容物4を被覆する。そして、周波数選択板1は、電子レンジの電磁波発生器から見て、容器3内の内容物4を覆う位置に配置される。
【0028】
非加熱対象食品を被覆する周波数選択板1は、非加熱対象食品の表面に浸透可能であるとともに、非加熱対象食品の内部に浸透可能であるような、内部加熱用の周波数2.45GHzを有する電磁波を遮断する。そして、非加熱対象食品を被覆する周波数選択板1は、非加熱対象食品の表面に浸透可能である一方で、非加熱対象食品の内部に浸透不能であるような、表面加熱用の周波数5.8GHzを有する電磁波を遮断してもよい。
【0029】
表面加熱対象食品を被覆する周波数選択板1は、表面加熱対象食品の表面に浸透可能であるとともに、表面加熱対象食品の内部に浸透可能であるような、内部加熱用の周波数2.45GHzを有する電磁波を遮断する。そして、表面加熱対象食品を被覆する周波数選択板1は、表面加熱対象食品の表面に浸透可能である一方で、表面加熱対象食品の内部に浸透不能であるような、表面加熱用の周波数5.8GHzを有する電磁波を遮断する。
【0030】
ここで、「内部加熱用の周波数を有する電磁波が、食品の内部に浸透可能である」とは、「内部加熱用の周波数を有する電磁波が、食品の表面から例えば1cmのオーダーの深さまで浸透可能である」ことを意味する。一方で、「表面加熱用の周波数を有する電磁波が、食品の表面に浸透可能である」とは、「表面加熱用の周波数を有する電磁波が、食品の表面から例えば1mmのオーダーの深さまで浸透可能である」ことを意味する。
【0031】
そして、これらの周波数選択板1は、内部加熱用の周波数2.45GHzを有する電磁波を(表面加熱対象食品を被覆する周波数選択板1では、表面加熱用の周波数5.8GHzを有する電磁波も)吸収しない部材(例えば、プラスチックフィルム1’)に印刷される。よって、これらの周波数選択板1を簡便に製造することができる。
【0032】
内部加熱対象食品に対しては、これらの周波数選択板1を被覆する必要はない。非加熱対象食品として、例えば、
図6に示すポテトサラダ及び梅干し等が挙げられる。表面加熱対象食品として、例えば、(
図6に不図示であるが)ローストビーフ等が挙げられる。内部加熱対象食品として、例えば、
図6に示すご飯、煮物及び豚カツ等が挙げられる。
【0033】
このように、これらの周波数選択板1の使用の有無に応じて、容易にかつ安全に非内部加熱と内部加熱とを選択することができる。そして、これらの周波数選択板1を用いて容易にかつ安全に、内部加熱を行わず表面加熱を行うことができる。
【0034】
【0035】
図3では、周波数選択板1は、内部加熱用の周波数2.45GHzにおいて設計される。
図3の左欄では、周波数選択板1は、十字模様を有する導体パターンを、紙面左右方向及び紙面上下方向に格子状にそれぞれ5個ずつ備える。それぞれの十字模様を有する導体パターンは、2.45GHzの電磁波の約半波長58.2mmのサイズを有し、周波数選択板1は、58.2mm×5=291mmのサイズを有する。
【0036】
図3の中欄では、周波数選択板1は、ヒルベルト模様のフラクタル形状を有する導体パターンを、紙面左右方向及び紙面上下方向に格子状にそれぞれ5個ずつ備える。それぞれのヒルベルト模様のフラクタル形状を有する導体パターンは、58.2mmより小さい22.4mmのサイズを有し、周波数選択板1は、22.4mm×5=112mmのサイズを有する。このように、周波数選択板1を小型化することができる。
【0037】
図3の右欄では、周波数選択板1は、4回回転対称のフラクタル形状を有する導体パターンを、紙面左右方向及び紙面上下方向に格子状にそれぞれ5個ずつ備える。4回回転対称のフラクタル形状の形成方法として、例えば、中央の正方形スロットの頂点の近傍から4回回転対称に第1の4枝スロットを延ばし、第1の各枝スロットの根元の近傍から4回回転対称に第2の各枝スロットを延ばし、・・・、第1~n(
図3では、n=6)の4枝スロットにより全体の正方形を埋める。それぞれの4回回転対称のフラクタル形状を有する導体パターンは、58.2mmより小さい18.4mmのサイズを有し、周波数選択板1は、91.2mmのサイズを有する。このように、周波数選択板1の偏波依存性をなくすことができる。
【0038】
図4では、周波数選択板1は、表面加熱用の周波数5.8GHzにおいて設計される。
図4の左欄では、周波数選択板1は、十字模様を有するスロットパターンを、紙面左右方向及び紙面上下方向に格子状にそれぞれ5個ずつ備える。それぞれの十字模様を有するスロットパターンは、5.8GHzの電磁波の約半波長24.6mmのサイズを有し、周波数選択板1は、24.6mm×5=123mmのサイズを有する。
【0039】
図4の中欄では、周波数選択板1は、ヒルベルト模様のフラクタル形状を有するスロットパターンを、紙面左右方向及び紙面上下方向に格子状にそれぞれ5個ずつ備える。それぞれのヒルベルト模様のフラクタル形状を有するスロットパターンは、24.6mmより小さい9.5mmのサイズを有し、周波数選択板1は、47mmのサイズを有する。このように、周波数選択板1を小型化することができる。
【0040】
図4の右欄では、周波数選択板1は、4回回転対称のフラクタル形状を有するスロットパターンを、紙面左右方向及び紙面上下方向に格子状にそれぞれ5個ずつ備える。4回回転対称のフラクタル形状の形成方法として、例えば、中央の正方形導体の頂点の近傍から4回回転対称に第1の4枝導体を延ばし、第1の各枝導体の根元の近傍から4回回転対称に第2の各枝導体を延ばし、・・・、第1~n(
図4では、n=6)の4枝導体により全体の正方形を埋める。それぞれの4回回転対称のフラクタル形状を有するスロットパターンは、24.6mmより小さい7.8mmのサイズを有し、周波数選択板1は、7.8mm×5=39mmのサイズを有する。このように、周波数選択板1の偏波依存性をなくすことができる。
【0041】
このように、表面加熱用の周波数(例えば、5.8GHz)は、内部加熱用の周波数(例えば、2.45GHz)より、一般的に高い。よって、表面加熱用の周波数において、周波数選択板1を設計することにより、非内部加熱対象又は非内部乾燥対象かつ表面加熱対象又は表面乾燥対象が小さいときであっても、周波数選択板1を用いることができる。
【0042】
そして、フラクタル形状を有する素子パターンのサイズは、フラクタル形状を有さない素子パターンのサイズより、フラクタルの階層数に応じて小さい。よって、非内部加熱対象又は非内部乾燥対象が小さいときであっても、周波数選択板1を用いることができる。
【0043】
本開示の周波数選択板の透過係数及び反射係数を
図5に示す。
【0044】
図5では、周波数選択板1は、内部加熱用の周波数2.45GHzにおいて設計され、4回回転対称のフラクタル形状を有する導体パターンを、紙面左右方向及び紙面上下方向に格子状にそれぞれ5個ずつ備える。つまり、それぞれの4回回転対称のフラクタル形状を有する導体パターンは、
図3の右欄に示したように、18.4mmのサイズを有する。すると、内部加熱用の周波数2.45GHzにおいて、周波数選択板1の透過係数は極小値になり、周波数選択板1の反射係数は極大値になった。そして、表面加熱用の周波数5.8GHzにおいて、周波数選択板1の透過係数は十分に大きい値になり、周波数選択板1の反射係数は十分に小さい値になった。
【0045】
なお、それぞれの4回回転対称のフラクタル形状を有する導体パターンを、18.4mmのサイズに設計するのではなく、若干異なるサイズに設計するならば、内部加熱用の周波数2.45GHzにおいて、周波数選択板1の透過係数を極小値より若干大きい値にするとともに、周波数選択板1の反射係数を極大値より若干小さい値にすることができる。
【0046】
本開示の周波数選択板の透明化方法を
図6に示す。非内部加熱対象を周波数選択板1で被覆するときであっても、非内部加熱対象を視認できることが望ましい。
【0047】
そこで、周波数選択板1は、導電性物質により形成される素子パターンを備え、導電性物質により形成される素子パターンの隙間を通して、可視光の一部を一方の側から他方の側へと通過させる。ここで、可視光の一部を通過させるために、導電性物質の線幅を十分に細くして、導電性物質間の間隔を十分に広くする。或いは、周波数選択板1は、透明導電性物質により形成される素子パターンを備え、透明導電性物質により形成される素子パターンを通して、可視光を一方の側から他方の側へと透過させる。ここで、透明導電性物質として、酸化インジウムスズ及び導電性高分子物質等が挙げられる。
【0048】
ただし、導電性物質の線幅を十分に細くするときでも、周波数選択板1の熱損電力があまり大きくならないことが望ましく、周波数選択板1、蓋部2及び容器3が焼損する恐れがないことが望ましい。
図7及び
図8を用いて、このような恐れのないことを示す。
【0049】
本開示の周波数選択板の電流分布及び熱損電力を
図7及び
図8に示す。ここで、周波数選択板1は、内部加熱用の周波数2.45GHzにおいて設計され、4回回転対称のフラクタル形状を有する導体パターンを、紙面左右方向及び紙面上下方向に格子状にそれぞれ5個ずつ及び10個ずつ備える。そして、周波数2.45GHz及び電力500Wを有する球面波状の電磁波が、周波数選択板1の上30cmから照射される。
【0050】
図7に示したように、電磁波の偏波の方向が周波数選択板1の短辺方向に平行であるときには、周波数選択板1における電流分布は、約0mAから約100mAまでであった。
図8に示したように、周波数選択板1における電流分布が最大の約100mAであるときでも、周波数選択板1における熱損電力は、導電性物質の直径0.1mm及び0.2mmに対して、それぞれ約0.4mW及び約0.1mWであった。
【0051】
つまり、導電性物質の線幅を十分に細くするときでも、周波数選択板1の熱損電力があまり大きくならず、周波数選択板1、蓋部2及び容器3が焼損する恐れがない。
【0052】
このように、非内部加熱対象を周波数選択板1で被覆するときであっても、非内部加熱対象を視認することができる。そして、導電性物質の線幅を十分に細くするときでも、周波数選択板1の熱損電力を低減することができる。一方で、透明導電性物質を用いるときには、周波数選択板1の透明性を向上することができる。
【0053】
なお、
図1から
図8までを一般化して、周波数選択板1は、非加熱対象又は非乾燥対象の表面に浸透可能であるとともに、非加熱対象又は非乾燥対象の内部に浸透可能であるような、内部加熱用又は内部乾燥用の任意の周波数を有する電磁波を遮断してもよい。
【0054】
また、
図1から
図8までを一般化して、周波数選択板1は、加熱対象又は乾燥対象の表面に浸透可能である一方で、加熱対象又は乾燥対象の内部に浸透不能であるような、表面加熱用又は表面乾燥用の任意の周波数を有する電磁波を透過してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示の周波数選択板及び電子レンジ加熱用容器を用いて、容易にかつ安全にマイクロ波による非加熱又は非乾燥と加熱又は乾燥とを選択することができる。
【符号の説明】
【0056】
1:周波数選択板
1’:プラスチックフィルム
2:蓋部
3:容器
4:内容物