(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】ブッシングカバー
(51)【国際特許分類】
H02G 15/02 20060101AFI20220209BHJP
H01F 27/04 20060101ALI20220209BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20220209BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20220209BHJP
H01B 17/26 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
H02G15/02
H01F27/04 B
H02G1/14
H01B17/58 Z
H01B17/26 Z
(21)【出願番号】P 2018000691
(22)【出願日】2018-01-05
【審査請求日】2020-12-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 特許法第30条第2項適用、北海道電力株式会社に納品
(73)【特許権者】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000139573
【氏名又は名称】株式会社愛洋産業
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】坂口 義行
(72)【発明者】
【氏名】岸 泰至
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-179206(JP,A)
【文献】実開昭49-070498(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/02
H01F 27/04
H02G 1/14
H01B 17/58
H01B 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土台部から重力方向に沿って上方に延びる電線路であって、前記土台部上に設置された碍子部、前記碍子部上に形成された充電部、及び、前記充電部から上方に向かって延びる被覆電路部を有する前記電線路に取り付けられるブッシングカバーにおいて、
前記充電部の全部、及び、前記被覆電路部の下方側の一部を、重力方向に沿った軸周りに囲う囲繞部であって、少なくとも前記充電部については、前記充電部から離れた位置で囲う囲繞部と、
前記充電部の所定部位に嵌る嵌合開口を有する水受部であって、前記嵌合開口に前記充電部の前記所定部位が嵌まるように前記充電部に取り付けられると、当該水受部よりも上方側の前記
囲繞部が囲う囲繞空間を閉じるとともに、前記囲繞空間内を流れる水を受ける水受部と、
を備え、
前記囲繞部は、上方側の開口の内径が、前記被覆電路部の外径と略同じ大きさに形成され、
前記水受部には、前記嵌合開口に前記充電部の前記所定部位が嵌るように前記充電部に取り付けられているときに、前記碍子部に下方から上方に向かって重力方向に平行な平行光線を当てて当該水受部に前記碍子部の影を投影した場合、前記碍子部の影の外側に形成される孔部であって、水を通すことができる前記孔部が形成されて
おり、
前記水受部は、
当該水受部の下方側の面に形成された突出部であって、前記孔部より前記囲繞部側の前記孔部の近傍に設けられ、下方に向かって突出した前記突出部を備えるブッシングカバー。
【請求項2】
請求項1に記載のブッシングカバーにおいて、
前記囲繞部は、
前記碍子部の少なくとも上方側の一部をも囲い、前記碍子部についても、前記碍子部から離れた位置で囲うブッシングカバー。
【請求項3】
請求項2に記載のブッシングカバーにおいて、
前記囲繞部は、上下に別れており、
前記碍子部の少なくとも上方側の一部、及び、前記充電部の下方側の一部である下方部分を覆う下方覆部と、
前記下方覆部と組み合わせ可能な上方覆部であって、前記充電部の下方部分よりも上方側の上方部分、及び、前記被覆電路部の下方側の一部を覆う前記上方覆部と、
を備えるブッシングカバー。
【請求項4】
請求項3に記載のブッシングカバーにおいて、
前記下方覆部は、
前記水受部を備え、
前記上方覆部は、
当該上方覆部の内壁面上を伝う水を、前記水受部上に導く導水部を備えるブッシングカバー。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のブッシングカバーにおいて、
前記上方覆部には、
前記下方覆部に組み合わされたとき、前記下方覆部の上方側の一部を覆うスカート部が形成されているブッシングカバー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のブッシングカバーにおいて、
前記水受部には、
前記嵌合開口に前記充電部の前記所定部位が嵌るように前記充電部に取り付けられているときに前記嵌合開口の側から前記孔部に向かって下る傾斜が形成されているブッシングカバー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のブッシングカバーにおいて、
前記水受部は、
前記囲繞部が前記電線路から離れた位置で前記電線路を覆うため、前記碍子部及び前記充電部と前記囲繞部との間隔を保持するスペーサであるブッシングカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SVR等の配電用機器の筐体上面その他の土台部から上方に延びる電線路に形成された充電部を覆うブッシングカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
SVR(自動電圧調整器:Step Voltage Regulator)には、その筐体上面から重力方向に沿って上方に延びる電線路が形成される。
図6に示すように、電線路100は、SVR400の筐体の上面401上に設置される碍子部110、この碍子部110上に形成される充電部140、及び、充電部140から上方に向かって延びる被覆電路部180を有する。
【0003】
ところで、SVR400の筐体の上面401から延びる電線路100には、鳥獣害対策のため、充電部140を覆うブッシングカバー300が取り付けられる。
【0004】
ブッシングカバー300としては、ゴムで構成された
図6に示す例が知られている。この例のブッシングカバー300は、SVR400の筐体の上面401から延びる電線路100のうち、充電部140の全部、及び、充電部140から上方に向かって延線された被覆電路部180の下方側の一部、を覆うことができる。
【0005】
このブッシングカバー300の上方側の開口である上方開口310の内径は、被覆電路部180を構成する被覆された配電線200の外径と略同じ大きさに形成されている。ブッシングカバー300がSVR400の筐体の上面401から延びる電線路100に取り付けられるとき、この上方開口310には被覆された配電線200が通される。そして、ブッシングカバー300の上端が位置する部分で、被覆された配電線200からブッシングカバー300の上端部分にかけて絶縁テープを巻きつけて、ブッシングカバー300の上方開口310から当該ブッシングカバー300内に水が浸入しないようにするとともに、ブッシングカバー300を被覆電線に固定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、雪が多い海沿いの地域では、絶縁テープが劣化しやすく、劣化すると、ブッシングカバー300の上方開口310から、ブッシングカバー300の内部に塩を含んだ塩水が侵入することがある。
ブッシングカバー300内に塩水が侵入すると、その塩水は、
図6中に符号XやYで示すように、ブッシングカバー300の上方開口310から、ブッシングカバー300の内壁面上や充電部140上を流れ、ブッシングカバー300の下方側の開口から外部に出る。そして、ブッシングカバー300の下方側の開口から外部に出た塩水は、碍子部110を構成する一番上の碍子130の傘部131上を流れる。
【0007】
塩水が上記のようにブッシングカバー300内を流れると、塩水のうち水分だけが飛び、塩水が通った道筋に沿って塩が残る場合がある。そして、その道筋に沿って、塩水が繰り返し流れると、ブッシングカバー300内には、ブッシングカバー300の上方開口310から下方側の開口に至る、塩で形成された路(塩水路)が形成されることがある。
この塩水路が形成されると、ブッシングカバー300内を流れる塩水の多くは、この塩水路を伝って流れ、ブッシングカバー300の下方側の開口のうち、塩水路の下端近傍の一定の場所から、外部に流れ出る。
【0008】
すると、ブッシングカバー300内から碍子130に流れ出た塩水は、ブッシングカバー300内に形成された塩水路の下端近傍の一定の場所から流れ出るため、上述した3つの碍子130のうち一番上の碍子130にも、塩水路が形成されることがある。具体的には、
図6中に符号Zで示したように、碍子130の突状部132の上端から碍子130の傘部131の外縁まで塩水が繰り返し流れて、結果的に塩水路が形成されることがある。
【0009】
この碍子130の突状部132の上端部分は、充電部140に近接しているので、碍子130に形成された塩水路は、充電部140から、碍子130の外縁に至る電路となる。そのため、SVR400の筐体の上面401上に雪が積もり、その積もった雪がその碍子130近くに達すると、その雪も電路となり、充電部140からSVR400の筐体の上面に至る電路が形成されて、充電部140からSVR400の筐体の上面401に漏電する地絡が発生してしまうおそれがあった。
【0010】
本発明は、土台部から上方に延びる電線路に形成された充電部を覆うブッシングカバーであって、当該ブッシングカバー内に塩水が侵入し、土台部上に雪が積もっても、充電部から雪を介して土台部に漏電する地絡が発生する確率を低く抑えることができるブッシングカバーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明のブッシングカバーは、土台部から重力方向に沿って上方に延びる電線路であって、土台部上に設置された碍子部、碍子部上に形成された充電部、及び、充電部から上方に向かって延びる被覆電路部を有する電線路に取り付けられるカバーである。
【0012】
本発明のブッシングカバーは、充電部の全部、及び、被覆電路部の下方側の一部を、重力方向に沿った軸周りに囲う囲繞部であって、少なくとも充電部については、充電部から離れた位置で囲う囲繞部と、充電部の所定部位に嵌る嵌合開口を有する水受部であって、嵌合開口に充電部の所定部位が嵌まるように充電部に取り付けられると、当該水受部よりも上方側の囲繞空間を閉じるとともに、囲繞空間内を流れる水を受ける水受部と、を備えている。
【0013】
そして、囲繞部は、上方側の開口の内径が、被覆電路部の外径と略同じ大きさに形成され、水受部には、嵌合開口に充電部の所定部位が嵌るように充電部に取り付けられているときに、碍子部に下方から上方に向かって重力方向に平行な平行光線を当てて当該水受部に碍子部の影を投影した場合、碍子部の影の外側に形成される孔部であって、水を通すことができる孔部が形成されている。
【0014】
本発明のブッシングカバーは、囲繞空間を通る水を水受部が受ける。そして、その水受部に、水が通る孔部が設けられ、その孔部は、碍子部を水受部上に投影した影の外側に形成されている。そのため、囲繞空間内に塩水が侵入しても、その塩水は、水受部で受け止められた後、孔部から下方に落ち、しかも碍子部に当たることもない。したがって、本発明のブッシングカバーは、囲繞空間内に侵入した塩水が、充電部から碍子部の外縁に至る塩水路を形成することを抑止できる。
【0015】
したがって、本発明のブッシングカバーを用いると、ブッシングカバー内に塩水が侵入しても、充電部から雪を介して土台部に漏電する地絡が発生する確率を低く抑えることができる。
(2)本発明のブッシングカバーを構成する囲繞部は、碍子部の少なくとも上方側の一部をも囲うものであってもよい。その場合、囲繞部は、碍子部について、碍子部から離れた位置で囲うようにしてもよい。
【0016】
本発明のブッシングカバーは、土台部上に設置された碍子部の上方側の一部を囲繞部が覆っているので、土台部上に雪が積もっても、その雪が、碍子部のうち、塩水路が形成されやすい上方側の一部まで達する確率は低くなる。
したがって、本発明のブッシングカバーを用いると、ブッシングカバー内に塩水が侵入しても、充電部から雪を介して土台部に漏電する地絡が発生する確率を低く抑えることができる。
【0017】
(3)本発明のブッシングカバーを構成する囲繞部は、碍子部の少なくとも上方側の一部、及び、充電部の下方側の一部である下方部分を覆う下方覆部と、下方覆部と組み合わせ可能な上方覆部であって、充電部の下方部分よりも上方側の上方部分、及び、被覆電路部の下方側の一部を覆う上方覆部とを備えていてもよい。
【0018】
充電部は、碍子部側と、被覆電路部側とに分離可能に構成されていることが多い。この場合、本発明のように囲繞部を上下に別れるように形成すれば、碍子部側の充電部に下方覆部を被せ、被覆電路部側の充電部に上方覆部を被せ、分離された充電部をつないで、上方覆部と下方覆部とを組み合わせるだけの簡単な作業で、本発明のブッシングカバーを電線路に設置することができる。
【0019】
(4)本発明のブッシングカバーは、下方覆部が、水受部を備え、上方覆部が、当該上方覆部の内壁面上を伝う水を、水受部上に導く導水部を備えるようにしてもよい。
このようにすると、当該上方覆部の内壁面上を伝う塩水は、導水部によって水受部に導かれるので、当該上方覆部の内壁面上を伝う塩水が、水受部に形成された孔部以外の場所から外部に漏れ出ることを抑止できる。
【0020】
(5)本発明のブッシングカバーを構成する上方覆部には、下方覆部に組み合わされたとき、下方覆部の上方側の一部を覆うスカート部が形成されていてもよい。このようにすると、雪は、スカート部と下方覆部との間に入り込まなければ、囲繞部の外側から上方覆部と下方覆部との組み合わせ部分に近づけなくなる。そのため、塩を含む雪が溶けた塩水が、上方覆部と下方覆部との組み合わせ部分を介して囲繞部の外部空間から囲繞空間内に侵入しにくくなる。そのため、本発明のブッシングカバーを用いると、囲繞空間内に侵入する塩水が少なくなるので、塩水路が碍子部上に形成される確率を低く抑えることができる。
【0021】
(6)本発明のブッシングカバーを構成する水受部には、嵌合開口に充電部の所定部位が嵌るように充電部に取り付けられているときに嵌合開口の側から孔部に向かって下る傾斜が形成されていてもよい。このようにすると、ブッシングカバー内に塩水が侵入した場合に、その塩水が孔部に集まりやすくなるため、孔部以外の場所、特に嵌合開口から塩水が外部に出て、その塩水が碍子部上で塩水路を形成することを抑制できる。
【0022】
(7)本発明のブッシングカバーを構成する水受部は、囲繞部が電線路から離れた位置で電線路を覆うため、碍子部及び充電部と囲繞部との間隔を保持するスペーサであってもよい。このように、水受部がスペーサであれば、他にスペーサを備えなくてもよいので、ブッシングカバーの部品点数を少なくすることができる。
【0023】
(8)本発明のブッシングカバーの構成する水受部は、当該水受部の下方側の面に形成された突出部であって、孔部より囲繞部側の孔部の近傍に設けられ、下方に向かって突出した突出部を備えるようにしてもよい。このようにすると、孔部から外部に出た水は、その表面張力によって突出部、すなわち、碍子部から離れる方向に導かれ、下方に落ちる。そのため、本発明のブッシングカバーを用いると、孔部から直接塩水が落ちる場合よりも、碍子部から離れた位置で塩水を落とすことができるので、塩水路が碍子部上に形成される確率を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態のブッシングカバーの説明図であり、(a)は、ブッシングカバーの斜視図、(b)はブッシングカバーの正面図、(c)は、ブッシングカバーの中心軸を通る断面で切断した断面図である。
【
図2】実施形態のブッシングカバーを構成する上方覆部の説明図であり、(a)は、上方覆部の斜視図、(b)は、上方覆部の中心軸を通る断面で切断した断面図である。
【
図3】実施形態のブッシングカバーを構成する下方覆部の説明図であり、(a)は、下方覆部の斜視図、(b)は、下方覆部の中心軸を通る断面で切断した断面図である。
【
図4】
図3(b)の一部拡大図であり、
図3(b)中の符号αで示した部分の一部拡大図である。
【
図5】実施形態のブッシングカバーを電線路に取り付けた様子を示す説明図であり、ブッシングカバーについては、ブッシングカバーの中心軸を通る断面で切断した断面図で示している説明図である。
【
図6】従来のブッシングカバーの説明図であり、ブッシングカバーについては、ブッシングカバーの中心軸を通る断面で切断した断面図で示している説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態のブッシングカバー1について、
図1~
図5を用いて説明する。本実施形態のブッシングカバー1は、
図5に示すように、SVR(自動電圧調整器:Step Voltage Regulator)400の筐体の上面から重力方向に沿って上方に延びる電線路100に取り付けられるものである。具体的には、ブッシングカバー1は、電線路100のうち、SVR400の筐体の上面上に設置される碍子部110や、碍子部110上に形成される充電部140を覆うように電線路に取り付けられる。
【0026】
以下ではまず、ブッシングカバー1が用いられる前提となる電線路100について説明し、その後、ブッシングカバー1について説明する。なお、電線路100について背景技術の欄で説明した構成については、同一符号を付けて説明する。
碍子部110には、ベース具120、3つの碍子130が含まれる。
ベース具120は、円盤形状に形成された金属製のベース金具121と、ベース金具121よりも径が小さい円柱形状に形成された陶器製の柱状支持具122とを備えている。ベース金具121及び柱状支持具122は、中心軸が一致するように配置されるとともに、ベース金具121の中心軸に垂直な2つの盤面のうち、一方の盤面上から柱状支持具122が突出するように、接合されている。ベース具120は、柱状支持具122が設けられていない側の盤面が、SVR400の筐体の上面401に面接触するように設置される。このようにベース具120がSVR400の筐体の上面401に設置されると、柱状支持具122は、SVR400の筐体の上面401に対して上方に向かって起立した状態となる。
【0027】
3つの碍子130は、いずれも同一形状の碍子である。円盤形状に形成された傘部131と、傘部131よりも径が小さい円柱形状に形成された突状部132とを備えている。傘部131及び突状部132は、中心軸が一致するように配置されるとともに、傘部131の中心軸に垂直な2つの盤面のうち、一方の盤面上から突状部132が突出するように一体に形成されている。各碍子130は、傘部131が下方側、突状部132が上方側に位置し、ベース具120及び各碍子130の中心軸が一致するように、柱状支持具122上に積み重ねられる。
【0028】
充電部140は、碍子側金具150、電線側接続用金具170が含まれる。碍子側金具150、電線側接続用金具170は、金属で構成されており、電路に電気がながれると、外気に対して絶縁されていない状態となるので、碍子側金具150、電線側接続用金具170が含まれる部分を「充電部」と呼んでいる。
【0029】
碍子側金具150は、下部碍子側金具151、中間金具160、ブッシング金具152とを備えている。
下部碍子側金具151は、円盤形状に形成されている。下部碍子側金具151は、碍子130の傘部131よりも肉厚であるが、径が小さい円盤形状に形成されている。また、下部碍子側金具151は、その中心軸に垂直な2つの面のうち一方の面の縁部が削がれたような形状に形成されている。下部碍子側金具151は、縁部が削がれた側の面が下方を向くように、最も上方側に積まれた碍子130上に積み重ねられる。また、下部碍子側金具151は、その中心軸と、碍子部110の中心軸(ベース具120及び3つの碍子130の中心軸)とが一致するように、最も上方側に積まれた碍子130上に積み重ねられる。
【0030】
中間金具160は、下部碍子側金具151と同一径の円盤形状に形成された下方側中間金具部161と、下方側中間金具部161よりも径が小さい円柱形状に形成された上方側中間金具部162とからなる。下方側中間金具部161及び上方側中間金具部162は、それぞれの中心軸が一致するように配置されるとともに、下方側中間金具部161の中心軸に垂直な2つの盤面のうち、一方の盤面上から上方側中間金具部162が突出するように、一体に形成されている。
【0031】
中間金具160は、下方側中間金具部161のうち、上方側中間金具部162が設けられていない側の盤面が、下部碍子側金具151の上面に面接触し、中間金具160の中心軸と下部碍子側金具151の中心軸とが一致するように、下部碍子側金具151に重ねられる。そして、下方側中間金具部161と下部碍子側金具151とはボルトで固定される。このように中間金具160が下部碍子側金具151に固定されると、上方側中間金具部162が、上方に向かって突出した状態となる。
【0032】
ブッシング金具152は、長方形状に形成された金具である。ブッシング金具152は、その長手方向が、上方側中間金具部162の中心軸に沿い、かつ、短手方向(幅方向)の中間位置が、上方側中間金具部162の中心軸上に位置するように、上方側中間金具部162から上方に向かって立設されている。ブッシング金具152は、上方側中間金具部162に固定されている。
【0033】
電線側接続用金具170は、被覆された配電線200の先端部分の被覆を剥いて裸電線にされた部分の先端に取り付けられる受け金具171と、裸電線に被せられたスリーブ172とを備えている。
受け金具171は、ブッシング金具152同様、長方形状に形成されている。受け金具171は、その幅方向の中心を通り、長手方向に沿った図示しない軸が、配電線200の中心軸と一致するように、配電線200の先端に取り付けられている。この受け金具171は、図示しないアンカー部が配電線200の被覆を剥いた部分に埋設されている。
【0034】
スリーブ172は、配電線200の被覆を剥いた裸電線を挿入することができる円筒形状に形成された金具である。
配電線200は、先端部分の被覆が剥かれた後、スリーブ172が裸電線部分に取り付けられ、受け金具171のアンカー部分が裸電線に挿入された後、スリーブ172がかしめられる。すると、受け金具171が配電線200の先端に固定される。
【0035】
最後に、被覆電路部180について簡単に説明する。
被覆電路部180は、配電線200のうち、被覆が剥かれずに充電部140から上方に向かって延びている部分を指す。
次に、本実施形態のブッシングカバー1について説明する。
本実施形態のブッシングカバー1は、
図1に示すように、円錐形状に形成され、尖頭部位90が重力方向の上方を向き、底部部位91が重力方向の下方を向き、中心軸7の軸方向が重力方向に沿うように、電線路100(
図5参照)に取り付けられる。以下では、本実施形態のブッシングカバー1の形状等を説明する場合、円錐形状の尖頭部位90側を上方側、底部部位91側を下方側と呼んで説明する。
【0036】
本実施形態のブッシングカバー1は、重力方向に沿って上下に並んだ2つの覆部で構成されており、上方側の覆部を上方覆部3、下方側の覆部を下方覆部5と呼ぶ。
上方覆部3は、
図2に示すように、全体に上方側から下方側に向かって拡径する円錐形状に形成された本体部30を備える。ただし、上方覆部3の本体部30は、拡径する割合(上方側の径に対して下方側の径が大きくなる割合、以下、拡径率という)が異なる4つの部分からなる。最も上方側の部分を第1部分31、第1部分31に連続する下方側の部分を第2部分32、第2部分32に連続する下方側の部分を第3部分33、第3部分33に連続する下方側の部分を第4部分34とよぶ。
【0037】
上方覆部3の拡径率は、第2部分32が最も大きく、第4部分34、第1部分31、第3部分33の順に小さく、また、中心軸7に沿った長さは、第3部分33が最も長く、第4部分34、第1部分31、第2部分32の順に短い。第3部分33及び第4部分34は、充電部140から所定距離離れた位置で、充電部140を覆う径で形成されている(
図5参照)。
【0038】
本体部30の第4部分34の内側には、中心軸7に沿った長手方向の中間位置よりやや下方位置から、中心軸7に沿って下方に向かって突出した突出部35が形成されている(
図2(b))。この突出部35は、中心軸7に平行に配置された棒を中心軸7周りに回した回転体のような形状に形成されており、上方覆部3が下方覆部5と組み合わされるとき、突出部35の下方側の端部が、下方覆部5の上方側の開口を閉じる後述する水受部51に接し、下方覆部5に形成された後述する突起部55が、突出部35と本体部30の第4部分34との間に形成される空間に入って組み合わされる(
図1(c)参照)。
【0039】
また、第4部分34の本体部30は、中心軸7に沿った位置であって、突出部35の下方側の先端の位置よりも下方側の部分が、下方覆部5の上方側の一部を覆う大きさに形成されている。本体部30のうち、下方覆部5の上方側の一部を覆う部分を、スカート部36と呼ぶ。
【0040】
さらに、上方覆部3の本体部30は、上端と下端が開口しているが、このうち、第1部分31の上方側の開口37は、配電線200の被覆された部分の外径と略同じ大きさの内径の大きさの開口である(
図5参照)。
下方覆部5は、
図3に示すように、全体に上方側から下方側に向かってやや拡径した筒形形状に形成された本体部50を備えている。下方覆部5は、下方側は開口しているが、上方側は水受部51によって閉じられている。また、下方覆部5は、水受部51の縁部から上方に向かって突出した突起部55を備えている。
【0041】
水受部51は、円盤形状に形成され、下方覆部5の上方側の開口を閉じる。水受部51の中央には、下方覆部5の中心軸7上に中心を有する円形状に形成された開口であって、上方側中間金具部162(
図5参照)に嵌合可能な嵌合開口52が形成されている。嵌合開口52には、水受部51の上面のうち、嵌合開口52の縁部から上方に向かって突出するフランジ部53が形成されている。フランジ部53は、中心軸7に平行に配置された棒を中心軸7周りに回した回転体のような形状に形成されている。フランジ部53は、嵌合開口52に上方側中間金具部162が嵌合されるとき、中心軸7側の面が、上方側中間金具部162の側面(中心軸7に沿った面であって、中心軸7周りに形成されている面)に水密に接する。
【0042】
また、水受部51は、下方覆部5の中心軸7周りに等間隔に設けられた複数の孔部54を備えている。これら孔部54は、嵌合開口52が上方側中間金具部162(
図5参照)に嵌るように下方覆部5が充電部140に取り付けられたときに、碍子130(特に最も上方側に配置された碍子130)に下方から上方に向かって重力方向に平行な平行光線を当てて水受部51に碍子130の影を投影した場合、碍子130の影の外側に形成される。これら孔部54は、水を通すことができる大きさに形成されている。
【0043】
また、水受部51には、水受部51の下方側の面に複数の突出部56が形成されている。これら突出部56は、各孔部54より本体部50側の孔部54の近傍に設けられ、下方に向かって突出している。
水受部51は、
図4に示すように、嵌合開口52に上方側中間金具部162が嵌められたときに嵌合開口52側から各孔部54側に向かって下る傾斜(傾斜角βで傾斜を示している)が形成されている。以下、この傾斜した部分を傾斜部57と呼ぶ。
【0044】
次に、上記のように構成されたブッシングカバー1を、電線路100に取り付ける手順について、
図5を用いて説明する。
1)最初に、下方覆部5を中間金具160に取り付ける。具体的には、嵌合開口52に上方側中間金具部162を嵌め、水受部51が、下方側中間金具部161上に乗るように下方覆部5を中間金具160に取り付ける。
【0045】
2)次に、上方覆部3を配電線200に取り付ける。具体的には、上方側の開口37に、配電線200のうち被覆がされた部分を通す。
3)配電線200の先端の被覆を剥いた裸電線部分にスリーブ172を差し込み、受け金具171の図示しないアンカー部を裸電線部分に差し込み、スリーブ172をかしめる。
【0046】
4)ブッシング金具152と受け金具171をネジ止めして、上方覆部3を下方覆部5に組み合わせる。
5)上方側の開口37からブッシングカバー1内に水が浸入しないように、配電線200のうち被覆された部分とブッシングカバー1とに絶縁テープを巻きつける。これによって上方覆部3は配電線200に固定される。
【0047】
以上説明したように構成されたブッシングカバー1を電線路100に取り付けると、以下のような作用効果がある。
ブッシングカバー1は、組み立てられると、水受部51が、上方覆部3の本体部30及び下方覆部5の本体部50からなる囲繞部が囲う囲繞空間を上下に分離する。この水受部51は、分離された囲繞空間のうち、上方側の囲繞空間を通る水を受ける。そして、その水受部51は、水が通る孔部54が設けられ、その孔部54は、碍子130を水受部51上に投影した影の外側に形成されている。そのため、水受部51によって上下に分離された囲繞空間のうち上方側の空間(以下「上方側空間8」という)内に塩水が侵入しても、その塩水は、水受部51で受け止められた後、孔部54から下方に落ち、しかも碍子130に当たることもない。したがって、本実施形態のブッシングカバー1は、上方側空間8内に侵入した塩水が、充電部140から碍子130の外縁に至る塩水路を形成することを抑止できる。
【0048】
また、ブッシングカバー1は、SVR400の筐体の上面401上に設置された3つの碍子130のうち上方側の2つの碍子130を下方覆部5の本体部50が覆っているので、SVR400の筐体の上面401上に雪が積もっても、その雪が、3つの碍子130のうち、塩水路が形成されやすい一番上の碍子130まで達する確率は低くなる。
【0049】
したがって、ブッシングカバー1を用いると、ブッシングカバー1内に塩水が侵入しても、充電部140から雪を介してSVR400の筐体に漏電する地絡が発生する確率を低く抑えることができる。
水受部51には、嵌合開口52の側から各孔部54に向かって下る傾斜部57が形成されている。そのため、ブッシングカバー1をブッシング部に取り付けると、上方側空間8内に塩水が侵入し、充電部140を伝う塩水があっても、その塩水が孔部54に集まりやすくなるため、孔部54以外の場所から塩水が外部に出て、その塩水が碍子130上で塩水路が形成されることを抑制できる。
【0050】
水受部51は、囲繞部(本体部30及び本体部50)が電線路から離れた位置で碍子130、充電部140を覆うため、碍子部110及び充電部140と囲繞部との間隔を保持するスペーサとしての機能も果たしている。このように、水受部51がスペーサとしての機能もはたせば、他にスペーサを備えなくてもよいので、ブッシングカバー1の部品点数を少なくすることができる。
【0051】
ブッシングカバー1は、下方側の充電部140(下部碍子側金具151、下方側中間金具部161)に下方覆部5を被せ、上方側の充電部140に上方覆部3を被せ、ブッシング金具152と受け金具171とをつなぎ、その後、上方覆部3と下方覆部5とを組み合わせるだけの簡単な作業で、ブッシングに設置することができる。
【0052】
ブッシングカバー1は、水受部51が、孔部54の近傍に突出部56を備えている。そのため、孔部54から水受部51の下面側に出た塩水は、その表面張力によって突出部56、すなわち、碍子130から離れる方向に導かれ、下方に落ちる。そのため、このブッシングカバー1を用いると、孔部54から直接塩水が落ちる場合よりも、碍子130から離れた位置で塩水を落とすことができるので、塩水路が碍子130上に形成される確率を低く抑えることができる。
【0053】
ブッシングカバー1の上方覆部3には、下方覆部5に組み合わされたとき、下方覆部5の上方側の一部を覆うスカート部が形成されている。そのため、雪は、スカート部と下方覆部5の本体部50との間に入り込まなければ、外側から上方覆部3の本体部30と下方覆部5の本体部50との組み合わせ部分に近づけなくなる。そのため、塩を含む雪が溶けた塩水が、上方覆部3の本体部30と下方覆部5の本体部50の組み合わせ部分を介して外部から上方側空間8内に侵入しにくくなる。そのため、ブッシングカバー1を用いると、上方側空間8内に侵入する塩水が少なくなるので、塩水路が碍子130上に形成される確率を低く抑えることができる。
【0054】
下方覆部5が、水受部51を備え、上方覆部3が、当該上方覆部3の内壁面上を伝う水を、孔部54よりも下方覆部5の本体部50側の水受部51上に導く導水部となる突出部35を備えている。そのため、上方覆部3の内壁面上を伝う塩水は、突出部35によって水受部51に導かれるので、上方覆部3の内壁面上を伝う塩水が、水受部51に形成された孔部54以外の場所から外部に漏れ出ることを抑止できる。
【0055】
[他の実施形態]
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲に記載された発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。
(1)上記実施形態のブッシングカバー1として、円錐形上に形成された例を示したが、円筒形状に形成されていればよく、必ずしも円錐形上に形成されていなくてもよい。
【0056】
(2)上記実施形態では、SVRの筐体上面に碍子部110が取り付けられる例について説明したが、碍子部110が取り付けられる対象は、SVR以外の配電機器でもよいことはもちろん、配電又は送電用設備でもよく、鉄骨等であってもよい。
【0057】
(3)上記実施形態では、ブッシングカバー1が上方覆部3と下方覆部5とに分かれているが、上方覆部3と下方覆部5とは一体に形成されていてもよい。
(4)上記実施形態では、孔部54が形成される位置を碍子130に塩水が当たらない位置としたが、碍子部110全体に塩水が当たらない位置としてもよい。
この場合、孔部54は、嵌合開口52が上方側中間金具部162(
図5参照)に嵌るように下方覆部5が充電部140に取り付けられたときに、碍子130(特に最も上方側に配置された碍子130)だけでなく碍子部110全体に下方から上方に向かって重力方向に平行な平行光線を当てて水受部51に碍子部110全体の影を投影した場合、碍子部110全体の影の外側に形成するとよい。
(5)本発明の各構成要素は概念的なものであり、上記実施形態に限定されない。例えば、1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…ブッシングカバー 3…上方覆部 5…下方覆部 7…中心軸
30…本体部 31…第1部分 32…第2部分 33…第3部分
34…第4部分 35…突出部 36…スカート部 37…上方側の開口
50…本体部 51…水受部 52…嵌合開口 53…フランジ部
54…孔部 55…突起部 56…突出部 57…傾斜部 90…尖頭部位
91…底部部位 100…電線路 110…碍子部 130…碍子
140…充電部 151…下部碍子側金具 152…ブッシング金具
160…中間金具 161…下方側中間金具部 162…上方側中間金具部
171…受け金具 172…スリーブ 200…配電線