(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】留置針
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20220209BHJP
A61M 25/06 20060101ALI20220209BHJP
A61B 17/34 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
A61M5/158 500D
A61M25/06 580
A61B17/34
(21)【出願番号】P 2019547041
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2018037480
(87)【国際公開番号】W WO2019070076
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2017196112
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515161102
【氏名又は名称】株式会社アルチザンラボ
(73)【特許権者】
【識別番号】399012734
【氏名又は名称】金子メディックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和彦
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-125389(JP,A)
【文献】特開2012-045156(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152497(WO,A1)
【文献】特開平06-086814(JP,A)
【文献】実開昭62-072649(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 25/06
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管に挿入される先端部と、
前記先端部に連結された軸部と、
前記軸部を支持する支持部と、
を備える内套針、及び、
前記内套針の側面を囲むように設けられた筒状の外套針を有し、
前記内套針の前記軸部と前記外套針との間には、血液の流路となる空間が設けられ
、
前記空間は、前記内套針の前記軸部の長手方向に沿って設けられた平面部により形成され、
前記軸部の前記先端部側は、前記先端部側に向かって先細となるテーパー形状となっており、前記平面部は該テーパー形状の部分にかかるように形成されている留置針。
【請求項2】
前記内套針の前記先端部は、丸い突起状又は鋭い形状である請求項
1に記載の留置針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば皮膚表面から血管まで形成されているボタンホールへの挿入、あるいは通常の皮膚から血管への挿入に用いられる留置針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液透析においては、皮膚表面から血管まで、留置針の通路となるホール(以下「ボタンホール」という)を形成し、このボタンホールに沿って留置針を挿入することで血液透析を行うボタンホール穿刺が行われている。留置針としては、外套針と内套針とを組み合わせたクランプ針が用いられており、このようなクランプ針としては例えば特許文献1のものが知られている。このようなクランプ針をボタンホールに挿入し、血管から血液が流入してクランプ針の内部に向かって流動してきていること(逆血)を目視的に確認してから、内套針をボタンホールから引抜き、血液回路に接続して血液透析を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハッピーキャス クランプキャス P(painless needle)(メディキット社製)のように、内套針に内腔を有さず血液の逆流が目視できない穿刺用針も存在する。こうした針は挿入時の痛みの軽減等の利点を有するが、血液の逆血を容易に確認することはできないことから、血管に到達したことを逆血で確認することができない。従って、針が血管に到達したかどうかを術者の感触で判断する必要がある。このため、ハッピーキャス クランプキャス Pでの穿刺は逆血を確認できる針に比して難しい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、血管に挿入した際に、血液の逆血を目視で容易に判断することができる留置針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、血管に挿入される先端部と、前記先端部に連結された軸部と、前記軸部を支持する支持部と、を備える内套針、及び、前記内套針の側面を囲むように設けられた筒状の外套針を有し、前記内套針の前記軸部と前記外套針との間には、血液の流路となる空間が設けられている留置針を提供する。
【0007】
本発明の留置針であれば、内套針の側面を囲むように外套針が設けられているので、この留置針を血管(例えば、皮膚表面から血管まで形成されているボタンホール)に挿入することで、先端部が血管に到達したときに血管内を流れる血液を外套針の内部に逆血(バックフロー)させることができる。このとき、内套針の軸部と外套針との間には血液の流路となる空間が設けられているため、血管から外套針の内部に逆血した際、逆血する血液を徐々に留置針の空間に導くことができる。従って、この状態で外套針の内部を目視すると、上記の空間を血液が流れていることを確認することができる。これにより、内套針の先端部が血管に到達した際に、血液の逆血が生じていることを確認することができる。即ち、本発明の留置針であれば、血液の逆血を目視で容易に判断することができる。
【0008】
本発明の第1の参考態様に係る留置針において、前記空間は、前記内套針の前記軸部にらせん状又は直線状に連続して設けられた溝部により形成されることが好ましい。
【0009】
内套針の軸部にらせん状に連続した溝部を設けていれば、空間内を流れる血液をあらゆる方向から確認することが可能となるため、穿刺者が針の方向を確認する必要がなくなる。先端部が血管内にあればらせん状に長い溝部を血液が徐々に流れてゆくので、先端部が血管外に出て逆血が停止した場合に気付きやすくなる。即ち、溝部がらせん状であれば、先端部が血管内にあるかどうかを連続的に把握することが可能になる。一方、内套針の軸部に直線状に連続した溝部を設ける場合、軸部に直線状の溝部を設けるだけでよいので、留置針の構造を簡略化できる。ただし、この場合、一方向からしか逆血を確認することができず、先端部から支持部(基部)までの距離が短いので、逆流が終了すればそれ以降の情報が取れなくなる。従って、留置針が血管から逸脱したことを逆流で確認できなくなる場合がある。
【0010】
本発明の第2の参考態様に係る留置針において、前記軸部の側面には、前記空間内に流れる血液の流れをせき止めるせき止め部が形成されていることが好ましい。このせき止め部は気体だけを通し、血液をせき止めるものであることが望ましい。
【0011】
内套針の軸部に上記のようなせき止め部が設けられていれば、留置針内を面状に逆血する血液の流れをせき止めることができる。これにより、逆血の確認の際に血液が留置針内や内套針の外側に流れすぎてしまうことを防止できる。
【0012】
本発明の第1の態様に係る留置針において、前記空間は、前記内套針の前記軸部の長手方向に沿って設けられた平面部により形成されることが視認性を高める。前記軸部の前記先端部側は、前記先端部側に向かって先細となるテーパー形状となっており、前記平面部は該テーパー形状の部分にかかるように形成されている。
【0013】
内套針の軸部の長手方向に沿って平面部を設ける場合、軸部に平面部を設けるだけでよいので、留置針の構造を簡略化できる。内套針の軸部と外套針との間に設けられる空間が、軸部の平面部により形成されることにより、逆血の視認性を高めることができる。例えば平面部を内套針の軸部の上下方向両側に設ける場合、軸部の片側に平面部を設けた後、専用治具等を使用せずに内套針を裏返しにして軸部の反対側に平面部を研削して設けるだけでよいので、工程を単純化できる。従って、専用治具の製作や工程数の増加による費用増加を抑制することができる。
【0014】
上記留置針において、前記内套針の前記先端部は、丸い突起状又は鋭い形状であることが好ましい。
【0015】
先端部が丸い突起状であれば、ボタンホールや血管等を傷つけることなく、愛護的に留置針をボタンホールに挿入することができる。先端部が鋭い形状であれば、ボタンホール法でなくても、通常穿刺により留置針を血管に挿入することが可能になる。
【0016】
本発明は、第3の参考態様として、血管に挿入される先端部と、前記先端部に連結された軸部と、前記軸部を支持する支持部と、を備える内套針、及び、前記内套針の側面を囲むように設けられた筒状の外套針を有し、前記内套針の前記軸部と前記外套針との間には、血液の流路となる空間が設けられている留置針を準備する準備工程と、前記留置針を前記血管に挿入する挿入工程と、前記血管に挿入された前記留置針から前記内套針を引抜く引抜工程と、を有する留置針の使用方法を提供する。
【0017】
本発明の第3の参考態様に係る留置針の使用方法では、留置針として、内套針と外套針とを有するものを用いるので、この留置針を血管(例えば、皮膚表面から血管まで形成されているボタンホール)に挿入することで、先端部が血管に到達したときに血管内を流れる血液を外套針の内部に逆血(バックフロー)させることができる。このとき、内套針の軸部と外套針との間には血液の流路となる空間が設けられているため、血管から外套針の内部に逆血した際、逆血する血液を徐々に留置針の空間に導くことができる。従って、この状態で外套針の内部を目視すると、上記の空間を血液が流れていることを確認することができる。これにより、内套針の先端部が血管に到達した際に、血液の逆血が生じていることを確認することができる。即ち、本発明の第3の参考態様に係る留置針の使用方法であれば、血液の逆血を目視で容易に判断することができる。
【0018】
上記留置針の使用方法において、前記留置針として、前記空間が、前記内套針の前記軸部にらせん状又は直線状に連続して設けられた溝部により形成されたものを用いることが好ましい。
【0019】
内套針の軸部にらせん状に連続した溝部を設けたものを用いれば、空間内を流れる血液をあらゆる方向から確認することが可能となるため、穿刺者が針の方向を確認する必要がなくなる。先端部が血管内にあればらせん状に長い溝部を血液が徐々に流れてゆくので、先端部が血管外に出て逆血が停止した場合に気付きやすくなる。即ち、溝部がらせん状であれば、先端部が血管内にあるかどうかを連続的に把握することが可能になる。一方、内套針の軸部に直線状に連続した溝部を設けたものを用いる場合、軸部に直線状の溝部を設けたものを用いるだけでよいので、留置針の構造を簡略化でき、調達が容易となる。ただし、この場合、一方向からしか逆血を確認することができず、先端部から支持部(基部)までの距離が短いので、逆流が終了すればそれ以降の情報が取れなくなる。従って、留置針が血管から逸脱したことを逆流で確認できなくなる場合がある。
【0020】
上記留置針の使用方法において、前記留置針として、前記軸部の側面には、前記空間内に流れる血液の流れをせき止めるせき止め部が形成されたものを用いることが好ましい。このせき止め部は気体だけを通し、血液をせき止めるものであることが望ましい。
【0021】
内套針の軸部に上記のようなせき止め部が設けられたものを用いれば、留置針内を面状に逆血する血液の流れをせき止めることができる。これにより、逆血の確認の際に血液が留置針内や内套針の外側に流れすぎてしまうことを防止できる。
【0022】
上記留置針の使用方法において、前記留置針として、前記空間が、前記内套針の前記軸部の長手方向に沿って設けられた平面部により形成されたものを用いることが好ましい。
【0023】
内套針の軸部の長手方向に沿って平面部が設けられたものを用いる場合、内套針として軸部に平面部が設けられたものを用意するだけでよいので、留置針の構造を簡略化できる。留置針として、内套針の軸部と外套針との間に設けられる空間が、軸部の平面部により形成されたものを用いることにより、逆血の視認性を高めることができる。内套針を用意するに当たって、専用治具の製作が不要となり、工程を単純化できるので、費用増加を抑制することができる。
【0024】
上記留置針の使用方法において、前記留置針として、前記内套針の前記先端部が丸い突起状又は鋭い形状であるものを用いることが好ましい。
【0025】
内套針の先端部が丸い突起状のものを用いれば、ボタンホールや血管等を傷つけることなく、愛護的に留置針をボタンホールに挿入することができる。先端部が鋭い形状のものを用いれば、ボタンホール法でなくても、通常穿刺により留置針を血管に挿入することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の留置針、及び第3の参考態様に係る留置針の使用方法によれば、血管に挿入した際に、血液の逆血を目視で容易に判断することができる。通常、逆流の確認は、針の中心を通った血液が後端に流入するのを確認することで行われる。この場合、視線を刺入部と手元に向ける必要が生じるが、本発明であれば、刺入点から視線をずらすことなく情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の留置針における内套針の一実施形態を示した正面図である。
【
図2】本発明の留置針の一実施形態を示した部分正面図である。
【
図3】本発明の留置針における内套針の別の一実施形態を示した正面図である。
【
図4】本発明の留置針における内套針のさらに別の一実施形態を示した正面図である。
【
図5】本発明の留置針における内套針のさらに別の一実施形態を示した上面図である。
【
図7】
図5の内套針における軸部及び先端部の上側斜視図である。
【
図8】
図5の内套針における軸部及び先端部の下側斜視図である。
【
図9】皮膚表面から血管まで形成されているボタンホールを示す断面図である。
【
図10】
図9に示されたボタンホールに
図2に示した留置針を挿入する状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る留置針、及び留置針の使用方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
〔留置針〕
図1は本発明の留置針における内套針の一実施形態を示した正面図である。
図1に示すように、本実施形態の内套針1には、血管に挿入される先端部5と、先端部5に連結された軸部2と、軸部2を支持する支持部3と、が設けられている。軸部2の側面には血液の流路となる空間4が設けられている。
【0030】
本実施形態の内套針1においては、空間4は、内套針1の軸部2にらせん状に連続して設けられた溝部7により形成される。本実施形態においては、この溝部7の断面形状を四角形としているが、これに限定されず、溝部7の断面形状を三角形や半円形としても良い。
【0031】
軸部2の寸法としては、特に限定されないが、操作上の観点から、長さは5~100mm程度、太さは直径0.1~5mm程度とするのが好ましい。
【0032】
支持部3は、軸部2を支持するものであり、その形状は特に限定されず、例えば棒状とすることができる。また、支持部3の寸法としては、長さは5~50mm程度、太さは直径0.1~3mm程度とすることができる。
【0033】
先端部5の形状は丸い突起状とする。このとき、この突起状の部分の長さは、例えば1~5mmとすることができる。ただし、これに限定されず、先端部5の形状を鋭い形状とすることもできる。
【0034】
軸部2、支持部3、及び先端部5の材質としては、好ましくは金属、樹脂等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0035】
図2は本発明の留置針の一実施形態を示した部分正面図である。
図2に示すように、本実施形態の留置針10は、上記の内套針1、及び内套針1の側面を囲むように設けられた筒状の外套針6を有する。
【0036】
外套針6としては、従来知られた公知のものを用いることができるが、外套針の内部を目視しやすくするため、透明又は半透明の外套針6を用いることが好ましい。
【0037】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の留置針10であれば、内套針1の側面を囲むように外套針6が設けられているので、この留置針10を血管(例えば、皮膚表面から血管まで形成されているボタンホール)に挿入することで、先端部5が血管に到達したときに血管内を流れる血液を外套針6の内部に逆血(バックフロー)させることができる。このとき、内套針1の軸部2と外套針6との間には血液の流路となる空間4が設けられているため、血管から外套針6の内部に逆血した際、逆血する血液を徐々に留置針10の空間4に導くことができる。従って、この状態で外套針6の内部を目視すると、上記の空間4を血液が流れていることを確認することができる。これにより、内套針1の先端部5が血管に到達した際に、血液の逆血が生じていることを確認することができる。即ち、本実施形態の留置針10であれば、血液の逆血を目視で容易に判断することができる。
【0038】
内套針1の軸部2にらせん状に連続した溝部7を設けたものを用いれば、空間4内を流れる血液をあらゆる方向から確認することが可能となる。先端部5が血管内にあればらせん状に長い溝部7を血液が徐々に流れてゆくので、先端部5が血管外に出て逆血が停止した場合に気付きやすくなる。即ち、溝部7がらせん状であれば、先端部5が血管内にあるかどうかを連続的に把握することが可能になる。
【0039】
本実施形態のように、先端部5が丸い突起状であれば、内套針1に鋭利な部分がないことから、ボタンホールへの挿入時に、ボタンホールや血管等を傷つけることなく、愛護的に内套針1をボタンホールに挿入することができる。一方、先端部5が鋭い形状であれば、ボタンホール法でなくても、通常穿刺により留置針10を血管に挿入することが可能になる。
【0040】
以上のように、本実施形態の留置針10であれば、血管に挿入した際に、血液の逆血を目視で容易に判断することができる。
【0041】
図3は本発明の留置針における内套針の別の一実施形態を示した正面図である。
図3に示す内套針1は、内套針1の軸部2において、溝部7として直線状に連続した溝部が設けられていること以外は
図1と同様である。
【0042】
本実施形態においては、内套針1の軸部2に対し、直線状に連続した溝部7を2か所設けており、空間4がこれらの溝部7により形成されている。ただし、溝部7の数はこれに限定されず、例えば3~6か所設けてもよいし、それ以上設けてもよい。
【0043】
直線状に連続した溝部7の断面形状については、例えば四角形、三角形、半円形等とすることができる。
【0044】
図3に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
図3に示すように、内套針1の軸部2に直線状に連続した溝部7を設けることにより、軸部2に直線状の溝部7を設けるだけでよいので、留置針10の構造を簡略化できる。
【0045】
図4は本発明の留置針における内套針のさらに別の一実施形態を示した正面図である。
図4に示す内套針1は、内套針1の軸部2に溝部7を設ける代わりに、軸部2の側面に空間4内に流れる血液の流れをせき止めるせき止め部8が形成されていること以外は
図1と同様である。
【0046】
本実施形態の内套針1においては、軸部2の太さを支持部3及び先端部5よりも細くし、かつ、軸部2の側面に対し、せき止め部8を支持部3と一体になるように形成している。ただし、せき止め部8の形成の仕方としては、これに限定されない。例えば、軸部2の太さを支持部3及び先端部5と同じ又は支持部3及び先端部5よりも太くし、かつ、せき止め部8を支持部3とは独立するように軸部2の側面に形成してもよい。
【0047】
図4に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
図4に示すように、内套針1の軸部2の側面にせき止め部8を設けることにより、留置針10内を面状に逆血する血液の流れをせき止めることができる。これにより、逆血の確認の際に血液が留置針10内や内套針1の外側に流れすぎてしまうことを防止できる。
【0048】
次に、
図5~
図8を示して本発明の留置針における内套針のさらに別の一実施形態について説明する。
図5は本発明の留置針における内套針のさらに別の一実施形態を示した上面図である。
図5に示す内套針1は、内套針1の軸部2に溝部7を設ける代わりに、軸部2の長手方向に沿って平面部9が設けられている点、及び軸部2の先端部5側は、先端部5側に向かって先細となるテーパー形状となっている点以外は
図1と同様である。
【0049】
図5に示すように、本実施形態の内套針1においては、軸部2の長手方向に沿って平面部9が形成されており、平面部9における長手方向両側の端部は長手方向両側に向かって凸となる湾曲形状となっている。本実施形態の内套針1においては、軸部2の先端部5側は、先端部5側に向かって先細となるテーパー形状となっており、平面部9はこのテーパー形状の部分にかかるように形成されている。この平面部9の幅(長手方向に直交する方向の長さ)は、例えば0.2~0.6mm程度である。
図5には示していないが、内套針1の下面側(180°反対側)においても、軸部2に上記と同様の平面部9が形成されている。
【0050】
図6は、
図5の内套針のA-A断面図である。
図6に示すように、本実施形態の内套針1の軸部2の上下両側には、断面視で水平方向に平行な平面部9が形成されている。
【0051】
図7は、
図5の内套針における軸部及び先端部の上側斜視図であり、
図8は、
図5の内套針における軸部及び先端部の下側斜視図である。
図7及び
図8に示されるように、本実施形態の内套針1においては、軸部2の上下方向両側に、軸部2の長手方向に沿って平面部9がそれぞれ設けられている。
【0052】
図5~8に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
内套針1の軸部2の長手方向に沿って平面部9を設ける場合、軸部2に平面部9を設けるだけでよいので、留置針10の構造を簡略化できる。平面部9を内套針1の軸部2の上下方向両側に設ける場合、軸部2の片側に平面部9を設けた後、専用治具等を使用せずに内套針1を裏返しにして軸部2の反対側に平面部9を研削して設けるだけでよいので、工程を単純化できる。従って、専用治具の製作や工程数の増加による費用増加を抑制することができる。
【0053】
〔留置針の使用方法〕
次に、本発明の留置針の使用方法の一例について説明する。
図9は、皮膚表面から血管まで形成されているボタンホールを示す断面図である。ボタンホール11は、透析患者の腕等の皮膚12の表面のボタンホール口13から血管14までを貫通して形成されている。以下では、このようなボタンホール11に、
図2に示されるような留置針10を挿入する場合を一例として説明する。
【0054】
本発明の留置針の使用方法は、上述の本発明の留置針を準備する準備工程と、この留置針を血管に挿入する挿入工程と、血管に挿入された留置針から内套針を引抜く引抜工程と、を有する。
【0055】
(準備工程)
準備工程においては、上述した本実施形態の留置針を準備する。ここでは一例として、
図2に示す留置針10を準備し、以下の工程を行う。
【0056】
(挿入工程)
挿入工程においては、
図10の直線の矢印に示すように、準備工程において準備した留置針10を、ボタンホール口13に正確に差し込み、ボタンホール11に挿入する。このとき、内套針1の先端部5が血管14に到達したときに血管14内を流れる血液が外套針6の内部に逆血(バックフロー)される。
【0057】
(引抜工程)
引抜工程においては、挿入工程においてボタンホール11に挿入された留置針10から内套針1を引抜く。内套針1を引抜いた後、留置針10に血液回路を接続することで、血液透析を行うことができる。
【0058】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の留置針の使用方法では、留置針10として、内套針1の軸部2と外套針6との間に血液の流路となる空間4が設けられたものを用いる。これにより、血管14から外套針6の内部に逆血した際、逆血する血液を徐々に留置針10の空間4に導くことができる。従って、この状態で外套針6の内部を目視すると、上記の空間4を血液が流れていることを確認することができる。これにより、内套針1の先端部5が血管14に到達した際に、血液の逆血が生じていることを確認することができる。即ち、本実施形態の留置針の使用方法であれば、血液の逆血を目視で容易に判断することができる。
【0059】
本実施形態では、留置針10として、内套針1の軸部2にらせん状に連続した溝部7を設けたものを用いる。これにより、空間4内を流れる血液をあらゆる方向から確認することが可能となる。先端部5が血管14内にあればらせん状に長い溝部7を血液が徐々に流れてゆくので、先端部5が血管14外に出て逆血が停止した場合に気付きやすくなる。即ち、溝部7がらせん状であれば、先端部5が血管14内にあるかどうかを連続的に把握することが可能になる。
【0060】
本実施形態では、留置針10として、内套針1の先端部5が丸い突起状であるものを用いる。内套針1の先端部5が丸い突起状のものを用いれば、ボタンホール11や血管14等を傷つけることなく、愛護的に留置針10をボタンホール11に挿入することができる。
【0061】
本実施形態においては、留置針10として、内套針1の軸部2に直線状に連続した溝部7を設けたもの、軸部2の側面に空間4内に流れる血液の流れをせき止めるせき止め部8が形成されたもの、あるいは内套針1の軸部2の長手方向に沿って平面部9を設けたものを用いてもよい。内套針1の先端部5が鋭い形状であるものを用いてもよい。
【0062】
以上のように、本実施形態の留置針の使用方法であれば、留置針を血管に挿入した際に、血液の逆血を目視で容易に判断することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 内套針
2 軸部
3 支持部
4 空間
5 先端部
6 外套針
7 溝部
8 せき止め部
9 平面部
10 留置針
11 ボタンホール
12 皮膚
13 ボタンホール口
14 血管