(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】質量分析装置、質量分析方法および質量分析プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20220209BHJP
【FI】
G01N27/62 Y
(21)【出願番号】P 2020533948
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2018028727
(87)【国際公開番号】W WO2020026353
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 賢志
(72)【発明者】
【氏名】緒方 是嗣
(72)【発明者】
【氏名】野村 静男
(72)【発明者】
【氏名】田村 廣人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晃代
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/131274(WO,A1)
【文献】特開2015-184020(JP,A)
【文献】特表2017-515481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部に接続可能な質量分析装置であって、
複数のサンプルの各々について分析データを取得するデータ取得部と、
複数のサンプルを複数の基本グループに分類する分類部と、
前記複数の基本グループについて複数の特定の薬剤に対する耐性を含む薬剤耐性のパターンの類似度に基づいて、複数のノードを含む系統樹を作成する系統樹作成部と、
前記作成された系統樹を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記複数のノードのうちいずれかのノードの指定を着目ノードの指定として受け付けるノード受付部と、
前記系統樹において前記指定された着目ノードについての複数の子ノードに属する複数の基本グループを、それぞれ前記複数の子ノードに対応する複数のグループに再編成することにより複数の再編成グループを生成する再編成部と、
前記複数の再編成グループの各々に対応する1または複数の分析データに基づいて、前記複数の再編成グループ間で分析データの差異の解析を行うことにより、前記指定された着目ノードに対応する薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを探索する解析部とを備える、質量分析装置。
【請求項2】
前記再編成部は、前記ノード受付部により前記着目ノードの指定が受け付けられるごとに、指定された着目ノードについての複数の子ノードに属する複数の基本グループを、それぞれ前記複数の子ノードに対応する複数のグループに再編成することにより複数の再編成グループを生成し、
前記解析部は、前記再編成部により複数の再編成グループが生成されるごとに、生成された複数の再編成グループの各々に対応する1または複数の分析データに基づいて、前記複数の再編成グループ間で分析データの差異の解析を行うことにより、前記指定された着目ノードに対応する薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを探索する、請求項1記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記探索されたマーカピークを示す情報を前記表示部に表示させる、請求項1または2記載の質量分析装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記複数の再編成グループを前記表示部に表示させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の質量分析装置。
【請求項5】
前記複数の分析データは複数のマススペクトルデータであり、前記複数のマススペクトルデータは、複数のピークについての質量電荷比および検出強度を含み、
前記解析部は、
前記データ取得部により取得された前記複数のマススペクトルデータに基づいて、前記複数のピークの質量電荷比と各ピークの検出強度とを示すピークリストをサンプルごとに作成するピークリスト作成部と、
複数のサンプルについての前記複数のピークリストと前記複数の再編成グループとに基づいて、第1の方向に配列される前記複数の質量電荷比と第2の方向に配列される前記複数の再編成グループのサンプルと前記複数の質量電荷比および前記複数のサンプルに対応する複数の検出強度とを含むピーク行列を作成するピーク行列作成部と、
前記ピーク行列の各質量電荷比に対応する複数の検出強度に基づいて前記複数の再編成グループ間の差異を解析することによりマーカピークを探索する探索部とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の質量分析装置。
【請求項6】
前記探索部は、前記ピーク行列の各質量電荷比に対応する複数の検出強度の単変量解析により、前記指定された着目ノードに対応するマーカピークを探索する、請求項5記載の質量分析装置。
【請求項7】
前記複数の特定の薬剤に対する耐性は複数の薬剤に対する耐性の有無を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の質量分析装置。
【請求項8】
前記薬剤耐性のパターンは遺伝子情報を含み、
前記複数の特定の薬剤に対する耐性は複数の遺伝子の種類を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の質量分析装置。
【請求項9】
複数のサンプルの各々について分析データを記憶する記憶装置と、
使用者により操作される操作部と、
表示部とをさらに備え、
前記データ取得部は、前記記憶装置から前記複数の分析データを取得し、前記表示制御部は、作成された系統樹を前記表示部に表示させ、前記解析部は、使用者による前記操作部の操作に基づいてマーカピークを探索する、請求項1~8のいずれか一項に記載の質量分析装置。
【請求項10】
表示部を用いた質量分析方法であって、
複数のサンプルの各々について分析データを取得するステップと、
複数のサンプルを複数の基本グループに分類するステップと、
前記複数の基本グループについて複数の特定の薬剤に対する耐性を含む薬剤耐性のパターンの類似度に基づいて、複数のノードを含む系統樹を作成するステップと、
前記作成された系統樹を前記表示部に表示させるステップと、
前記複数のノードのうちいずれかのノードの指定を着目ノードの指定として受け付けるステップと、
前記系統樹において前記指定された着目ノードについての複数の子ノードに属する複数の基本グループを、それぞれ前記複数の子ノードに対応する複数のグループに再編成することにより複数の再編成グループを生成するステップと、
前記複数の再編成グループの各々に対応する1または複数の分析データに基づいて、前記複数の再編成グループ間で分析データの差異の解析を行うことにより、前記指定された着目ノードに対応する薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを探索するステップとを含む、質量分析方法。
【請求項11】
表示部に接続された処理装置により実行可能な質量分析プログラムであって、
複数のサンプルの各々について分析データを取得する処理と、
複数のサンプルを複数の基本グループに分類する処理と、
前記複数の基本グループについて複数の特定の薬剤に対する耐性を含む薬剤耐性のパターンの類似度に基づいて、複数のノードを含む系統樹を作成する処理と、
前記作成された系統樹を前記表示部に表示させる処理と、
前記複数のノードのうちいずれかのノードの指定を着目ノードの指定として受け付ける処理と、
前記系統樹において前記指定された着目ノードについての複数の子ノードに属する複数の基本グループを、それぞれ前記複数の子ノードに対応する複数のグループに再編成することにより複数の再編成グループを生成する処理と、
前記複数の再編成グループの各々に対応する1または複数の分析データに基づいて、前記複数の再編成グループ間で分析データの差異の解析を行うことにより、前記指定された着目ノードに対応する薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを探索する処理とを、
前記処理装置に実行させる、質量分析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルの分析データを解析する質量分析装置、質量分析方法および質量分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の微生物等のサンプルを同定するために質量分析装置が用いられる。複数のサンプルについて得られた複数のマススペクトルを比較することにより、各サンプルを識別するための指標となるピークを検出することができる。近年、MALDI-MS(マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析法)による微生物同定システムが急速に普及している(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1には、「MALDI-MSによるバクテリア分析」という題目の論文が掲載されている。臨床現場でのMALDI-MSシステムは、主として菌種の同定のために活用されている。
【0003】
【文献】寺本華奈江著「MALDI-MSによるバクテリア分析」、島津評論、2017年9月、第74巻、第1・2号、p.51-62
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、質量分析装置により菌種の同定に留まらず、薬剤耐性の有無等を判定することが望まれる。そのためには、微生物のサンプルから薬剤耐性の有無の判定に寄与するバイオマーカの探索を行う必要がある。
【0005】
マススペクトルにおいてバイオマーカに対応するピークを探索するために、例えば次の方法が考えられる。複数のサンプルが薬剤耐性を有するサンプルのグループと薬剤耐性を有しないサンプルのグループとに分類され、質量分析装置により各サンプルのマススペクトルが得られる。2つのグループ間でサンプルのマススペクトルが比較されることにより、2つのグループ間で有意差を有するピークが検出される。検出されたピークが薬剤耐性の有無を判定するためのマーカピークとして用いられる。
【0006】
グループの数および薬剤の数が少ない場合には、マススペクトルからマーカピークを探索することは容易である。しかしながら、グループの数および薬剤の数が多い場合には、グループと薬剤との多数の組み合わせについてマーカピークを探索することは効率的ではない。特定の薬剤に対する耐性の有無に限らず、特定の遺伝子の有無等を判定するマーカピークを探索する場合にも、同様の課題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、所望の薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを効率的に探索することが可能な質量分析装置、質量分析方法および質量分析プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一局面に従う質量分析装置は、表示部に接続可能な質量分析装置であって、複数のサンプルの各々について分析データを取得するデータ取得部と、複数のサンプルを複数の基本グループに分類する分類部と、複数の基本グループについて複数の特定の薬剤に対する耐性を含む薬剤耐性のパターンの類似度に基づいて、複数のノードを含む系統樹を作成する系統樹作成部と、作成された系統樹を表示部に表示させる表示制御部と、複数のノードのうちいずれかのノードの指定を着目ノードの指定として受け付けるノード受付部と、系統樹において指定された着目ノードについての複数の子ノードに属する複数の基本グループを、それぞれ複数の子ノードに対応する複数のグループに再編成することにより複数の再編成グループを生成する再編成部と、複数の再編成グループの各々に対応する1または複数の分析データに基づいて、複数の再編成グループ間で分析データの差異の解析を行うことにより、指定された着目ノードに対応する薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを探索する解析部とを備える。
【0009】
この質量分析装置においては、複数のサンプルの各々について分析データが取得される。また、複数のサンプルが複数の基本グループに分類され、複数の基本グループについて複数の特定の薬剤に対する耐性を含む薬剤耐性のパターンの類似度に基づいて、複数のノードを含む系統樹が作成される。作成された系統樹は表示部に表示され、複数のノードのうちいずれかのノードの指定が着目ノードの指定として受け付けられる。
【0010】
系統樹において指定された着目ノードについての複数の子ノードに属する複数の基本グループが、それぞれ複数の子ノードに対応する複数のグループに再編成されることにより複数の再編成グループが生成される。複数の再編成グループの各々に対応する1または複数の分析データに基づいて、複数の再編成グループ間で分析データの差異の解析が行われることにより、指定された着目ノードに対応する薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークが探索される。
【0011】
この構成によれば、使用者は、グループの数および薬剤の数が多い場合でも、表示部に表示された系統樹において所望の薬剤に対応するノードを着目ノードとして容易に指定することができる。また、使用者は、着目ノードに属する複数のグループを複数の子ノードにそれぞれ属する1以上のグループに再構築するための操作を行う必要がない。これにより、所望の薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを効率的に探索することができる。
【0012】
(2)再編成部は、ノード受付部により着目ノードの指定が受け付けられるごとに、指定された着目ノードについての複数の子ノードに属する複数の基本グループを、それぞれ複数の子ノードに対応する複数のグループに再編成することにより複数の再編成グループを生成し、解析部は、再編成部により複数の再編成グループが生成されるごとに、生成された複数の再編成グループの各々に対応する1または複数の分析データに基づいて、複数の再編成グループ間で分析データの差異の解析を行うことにより、指定された着目ノードに対応する薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを探索してもよい。
【0013】
この場合、使用者は、着目ノードの指定を再帰的に繰り返すことができる。これにより、所望の複数の薬剤に対する耐性をそれぞれ判定するための複数のマーカピークを効率的に探索することができる。
【0014】
(3)表示制御部は、探索されたマーカピークを示す情報を表示部に表示させてもよい。この場合、使用者は、表示部を視認することにより探索されたマーカピークを示す情報を容易に認識することができる。
【0015】
(4)表示制御部は、複数の再編成グループを表示部に表示させてもよい。この場合、使用者は、表示部を視認することにより再編成グループを容易に認識することができる。
【0016】
(5)複数の分析データは複数のマススペクトルデータであり、複数のマススペクトルデータは、複数のピークについての質量電荷比および検出強度を含み、解析部は、データ取得部により取得された複数のマススペクトルデータに基づいて、複数のピークの質量電荷比と各ピークの検出強度とを示すピークリストをサンプルごとに作成するピークリスト作成部と、複数のサンプルについての複数のピークリストと複数の再編成グループとに基づいて、第1の方向に配列される複数の質量電荷比と第2の方向に配列される複数の再編成グループのサンプルと複数の質量電荷比および複数のサンプルに対応する複数の検出強度とを含むピーク行列を作成するピーク行列作成部と、ピーク行列の各質量電荷比に対応する複数の検出強度に基づいて複数の再編成グループ間の差異を解析することによりマーカピークを探索する探索部とを含んでもよい。この場合、複数のマススペクトルデータに基づくマススペクトルにおいて、所定の薬剤に対する耐性の有無を判定するためのマーカピークを効率的に探索することができる。
【0017】
(6)探索部は、ピーク行列の各質量電荷比に対応する複数の検出強度の単変量解析により、指定された着目ノードに対応するマーカピークを探索してもよい。この場合、複数の再編成グループ間でマススペクトルデータの差異を容易に解析することができる。
【0018】
(7)複数の特定の薬剤に対する耐性は複数の薬剤に対する耐性の有無を含んでもよい。この場合、所定の薬剤耐性の有無を判定するマーカピークを効率的に探索することができる。
【0019】
(8)薬剤耐性のパターンは遺伝子情報を含み、複数の特定の薬剤に対する耐性は複数の遺伝子の種類を含んでもよい。この場合、薬剤耐性遺伝子等の所定の遺伝子の有無を判定するマーカピークを効率的に探索することができる。
【0020】
(9)質量分析装置は、複数のサンプルの各々について分析データを記憶する記憶装置と、使用者により操作される操作部と、表示部とをさらに備え、データ取得部は、記憶装置から複数の分析データを取得し、表示制御部は、作成された系統樹を表示部に表示させ、解析部は、使用者による操作部の操作に基づいてマーカピークを探索してもよい。
【0021】
この場合、記憶装置に記憶された複数のサンプルの各々について分析データがデータ取得部により取得される。また、系統樹作成部により作成された系統樹が表示制御部により表示部に表示される。使用者による操作部の操作に基づいてマーカピークが解析部により探索される。これにより、所望の薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを効率的に探索することができる。
【0022】
(10)本発明の他の局面に従う質量分析方法は、表示部を用いた質量分析方法であって、複数のサンプルの各々について分析データを取得するステップと、複数のサンプルを複数の基本グループに分類するステップと、複数の基本グループについて複数の特定の薬剤に対する耐性を含む薬剤耐性のパターンの類似度に基づいて、複数のノードを含む系統樹を作成するステップと、作成された系統樹を表示部に表示させるステップと、複数のノードのうちいずれかのノードの指定を着目ノードの指定として受け付けるステップと、系統樹において指定された着目ノードについての複数の子ノードに属する複数の基本グループを、それぞれ複数の子ノードに対応する複数のグループに再編成することにより複数の再編成グループを生成するステップと、複数の再編成グループの各々に対応する1または複数の分析データに基づいて、複数の再編成グループ間で分析データの差異の解析を行うことにより、指定された着目ノードに対応する薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを探索するステップとを含む。
【0023】
この質量分析方法によれば、使用者は、グループの数および薬剤の数が多い場合でも、表示部に表示された系統樹において所望の薬剤に対応するノードを着目ノードとして容易に指定することができる。また、使用者は、着目ノードに属する複数のグループを複数の子ノードにそれぞれ属する1以上のグループに再構築するための操作を行う必要がない。これにより、所望の薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを効率的に探索することができる。
【0024】
(11)本発明のさらに他の局面に従う質量分析プログラムは、表示部に接続された処理装置により実行可能な質量分析プログラムであって、複数のサンプルの各々について分析データを取得する処理と、複数のサンプルを複数の基本グループに分類する処理と、複数の基本グループについて複数の特定の薬剤に対する耐性を含む薬剤耐性のパターンの類似度に基づいて、複数のノードを含む系統樹を作成する処理と、作成された系統樹を表示部に表示させる処理と、複数のノードのうちいずれかのノードの指定を着目ノードの指定として受け付ける処理と、系統樹において指定された着目ノードについての複数の子ノードに属する複数の基本グループを、それぞれ複数の子ノードに対応する複数のグループに再編成することにより複数の再編成グループを生成する処理と、複数の再編成グループの各々に対応する1または複数の分析データに基づいて、複数の再編成グループ間で分析データの差異の解析を行うことにより、指定された着目ノードに対応する薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを探索する処理とを、処理装置に実行させる。
【0025】
この質量分析プログラムによれば、使用者は、グループの数および薬剤の数が多い場合でも、表示部に表示された系統樹において所望の薬剤に対応するノードを着目ノードとして容易に指定することができる。また、使用者は、着目ノードに属する複数のグループを複数の子ノードにそれぞれ属する1以上のグループに再構築するための操作を行う必要がない。これにより、所望の薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを効率的に探索することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、所定の薬剤に対する耐性を判定するためのマーカピークを効率的に探索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は本発明の一実施の形態に係る質量分析装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2はグループ受付画面の一例を示す図である。
【
図3】
図3はピークマトリクスの一例を示す図である。
【
図5】
図5は作成された系統樹の一例を示す図である。
【
図6】
図6は再編成前および再編成後のグループを示す図である。
【
図7】
図7はデータ解析装置の構成を示す図である。
【
図8】
図8は質量分析プログラムにより行われる質量分析処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は質量分析プログラムにより行われる質量分析処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(1)質量分析装置の構成
以下、本発明の実施の形態に係る質量分析装置、質量分析方法および質量分析プログラムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る質量分析装置の構成を示す図である。
図1においては、主として質量分析装置1のハードウエアの構成が示される。
図1に示すように、質量分析装置1は、分析部3および処理装置10を含む。
【0029】
分析部3は、MALDI(マトリックス支援レーザ脱離イオン化法)を用いて、微生物等の種々のサンプルのマススペクトルを示すマススペクトルデータを生成する。複数のサンプルは、所定の特性を基準として複数のグループに分類される。ここで、所定の特性を特定するために複数の特性要素を含む特性情報が用いられる。本実施の形態では、複数の特性要素は複数の薬剤に対する耐性の有無であり、特性情報は薬剤耐性のパターン(複数の薬剤に対する耐性の有無の組み合わせ)である。
【0030】
例えば、薬剤耐性のパターンが異なるNG個のグループのいずれかに属するNS個のサンプルが準備される。また、NS個のサンプルにそれぞれ対応するNS個のマススペクトルデータが生成される。NGおよびNSは、それぞれ2以上の自然数であり、NSはNGよりも大きい。なお、グループの特性情報は、複数の薬剤に対する耐性の有無の組み合わせに限らず、遺伝子情報等であってもよい。例えば、遺伝子情報に含まれる複数の特性要素は複数の遺伝子である。
【0031】
以下、初期のNG個のグループを基本グループと呼ぶ。また、基本グループを後述する方法で再編成することにより得られるグループを再編成グループと呼ぶ。基本グループおよび再編成グループの両方をグループと総称する。
【0032】
処理装置10は、CPU(中央演算処理装置)11、RAM(ランダムアクセスメモリ)12、ROM(リードオンリメモリ)13、記憶装置14、操作部15、表示部16および入出力I/F(インターフェイス)17により構成される。CPU11、RAM12、ROM13、記憶装置14、操作部15、表示部16および入出力I/F17はバス18に接続される。CPU11、RAM12およびROM13がデータ解析装置2を構成する。
【0033】
RAM12は、CPU11の作業領域として用いられる。ROM13にはシステムプログラムが記憶される。記憶装置14は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、質量分析プログラムを記憶する。CPU11が記憶装置14に記憶された質量分析プログラムをRAM12上で実行することにより、後述する質量分析処理が行われる。また、記憶装置14は、分析部3により生成されたサンプルのマススペクトルデータを記憶する。
【0034】
操作部15は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。表示部16は、液晶表示装置等の表示デバイスである。使用者は、操作部15を用いてデータ解析装置2に各種指示を行うことができる。表示部16は、データ解析装置2による解析結果を示す画像を表示可能である。入出力I/F17は、分析部3に接続される。
【0035】
データ解析装置2は、任意の特性要素を判定するためのマーカピークを探索する。本実施の形態では、データ解析装置2は、任意の特性要素として任意の薬剤に対する耐性の有無を判定するためのマーカピークを探索する。以下、データ解析装置2の動作について説明する。
【0036】
(2)マーカピークの探索
基本グループを作成する指示、およびサンプルを作成された基本グループに分類する指示を受け付けるためのグループ受付画面が表示部16に表示される。使用者は、操作部15を用いてグループ受付画面上で基本グループを作成する指示、およびサンプルを作成された基本グループに分類する指示をデータ解析装置2に与えることができる。各基本グループには、1または複数のサンプルが属する。
【0037】
図2は、グループ受付画面の一例を示す図である。
図2に示すように、グループ受付画面20は、グループ欄21、サンプル欄22、グループ追加ボタン23、グループ削除ボタン24、サンプル追加ボタン25、サンプル削除ボタン26および決定ボタン27を含む。グループ欄21には、作成されている基本グループに付与されたグループ名の一覧(
図2の例では、「Group01」、「Group02」、…、「Group06」)が表示される。
【0038】
使用者は、グループ欄21に所望のグループ名を入力するとともに、グループ追加ボタン23を操作することにより、新たな基本グループを追加することができるまた、使用者は、グループ欄21のいずれかのグループ名を指定するとともに、グループ削除ボタン24を操作することにより、指定されたグループ名を有する基本グループを削除することができる。
【0039】
サンプル欄22には、グループ欄21においてグループ名が指定された基本グループに属するサンプルに付与されたサンプル名の一覧(
図2の例では、「Sample 01-1」、「Sample 01-2」、…、「Sample 02-1」)が表示される。また、サンプル欄22には、サンプル名に対応するマススペクトルデータに付与されたデータ名の一覧(
図2の例では、「Sample_01-1.txt」、「Sample_01-2.txt」、…、「Sample_02-1.txt」)が表示される。なお、サンプル欄22のスクロールバーを操作することにより、他のサンプル名およびデータ名をサンプル欄22に表示させることができる。
【0040】
使用者は、グループ欄21において基本グループを指定し、所望のサンプルに付与されたサンプル名を指定サンプル欄22に入力するとともに、サンプル追加ボタン25を操作することにより、指定された基本グループに新たなサンプルを追加することができる。
【0041】
使用者は、グループ欄21において基本グループを指定し、サンプル欄22のいずれかのサンプル名を指定するとともに、サンプル削除ボタン26を操作することにより、指定されたサンプル名に対応するサンプルを指定された基本グループから削除することができる。決定ボタン27が操作されることにより複数のサンプルの基本グループが確定する。
【0042】
マススペクトルデータに基づいて、マススペクトルにおける複数のピークの質量電荷比(m/z)と各ピークの検出強度との組を含むピークリストがサンプルごとに作成される。したがって、本例においては、NS個のサンプルに対応するNS個のピークリストが作成される。NS個のピークリストには、重複した質量電荷比を除くNP個の質量電荷比が含まれる。NP個は2以上の自然数である。また、ピークリストおよび複数の基本グループに基づいて、NP個の質量電荷比の各々とNS個の検出強度との関係を示すピーク行列が作成される。作成されたピーク行列は、表示部16に表示される。ピーク行列に基づいて複数の基本グループ間でのマススペクトルの差異の解析が行われる。同様に、ピークリストおよび後述する複数の再編成グループに基づいてピーク行列が作成され、作成されたピーク行列に基づいて複数の再編成グループ間でのマススペクトルの差異の解析が行われる。
【0043】
図3は、ピーク行列の一例を示す図である。
図3に示すように、ピーク行列は、行数N
P×列数N
Sの形式を有する。N
S個のピークリストに含まれるN
P個の質量電荷比が、ピーク行列のN
P個の行にそれぞれ割り当てられる。
図3の例においては、質量電荷比は昇順に配列される。また、複数のグループ(基本グループまたは再編成グループ)に分類されたN
S個のサンプルの識別子が、ピーク行列のN
S個の列にそれぞれ割り当てられる。なお、行と列との配列が逆であってもよい。ピーク行列の各要素には、対応するサンプルでかつ対応する質量電荷比における検出強度が配置される。ピーク行列のいずれかの要素の検出強度が0である場合もあり得る。
【0044】
グループ間に差異が存在するという帰無仮説の下で、作成されたピーク行列の各行に対応するNS個の検出強度に対して単変量解析が行われる。単変量解析としては、t検定またはマン・ホイットニーのU検定等の統計的仮説検定が用いられ、グループの数が3以上である場合には分散分析(ANOVA:analysis of variance)等が用いられる。単変量解析の結果として、グループ間の差異の統計的信頼性を示すp値(p-value)が行ごとに算出される。
【0045】
各行のp値が予め定めた有意水準αと比較される。有意水準αは、例えば0.05であってもよいし、0.01であってもよい。p値と有意水準αとの比較の結果、p値が有意水準αよりも小さい行、すなわちグループ間で有意差を有する行の質量電荷比が特定される。特定された質量電荷比に対応するピークがマーカピークとして特定される。特定された質量電荷比およびマーカピークを示す解析結果が表示部16に表示される。
【0046】
(3)グループの再編成
本実施の形態においては、
図2で作成された複数の基本グループを任意の特性に基づいて少数(例えば2個)の再編成グループに再編成することができる。本実施の形態では、薬剤耐性のパターンに基づいて複数の基本グループを少数の再編成グループに再編成することができる。また、再編成グループを別の再編成グループに再編成することができる。これにより、1または少数の薬剤に対する耐性の有無を判定するマーカピークを探索することができる。以下、その方法について説明する。
【0047】
複数の基本グループに特性要素を設定するための特性受付画面が表示部16に表示される。
図4は、特性受付画面の一例を示す図である。
図4に示すように、特性受付画面30は、行数N
G×列数N
Dの形式を有するテーブルであり、基本グループと特性要素との対応関係を示す。本実施の形態においては、特性情報は、薬剤耐性のパターンであり、具体的にはN
D個の薬剤に対する耐性の有無の組み合わせである。特性要素は、各薬剤に対する耐性の有無である。特性受付画面30のN
G個の行には、N
G個の基本グループが割り当てられる。特性受付画面30のN
D個の列には、N
D個の薬剤が割り当てられる。N
Dは2以上の自然数である。
【0048】
使用者は、操作部15を用いて、各行に対応するND個の列の各々に「+」記号または「-」記号を入力することにより、各基本グループについての薬剤耐性のパターンを設定することができる。なお、「+」記号は、基本グループが対応する薬剤に対して耐性を有することを意味する。「-」記号は、基本グループが対応する薬剤に対して耐性を有しないことを意味する。NG個の基本グループの各々に薬剤耐性のパターンが設定される。なお、本実施の形態では、使用者が複数の基本グループへの薬剤耐性のパターンを設定を行うが、複数の基本グループと薬剤耐性のパターンとの関係が予め記憶されていてもよい。
【0049】
NG個の基本グループにおいては、薬剤耐性のパターンの類似度が異なる。複数の基本グループ間の類似度は、系統樹(dendrogram)で表される。系統樹は、階層クラスタ分析の結果として表される。
【0050】
図5は、薬剤耐性のパターンについて複数の基本グループ間の類似度の関係を示す系統樹の一例を示す図である。
図5の例では、基本グループの数N
Gは6である。
図5の系統樹において、横軸は基本グループを表し、縦軸は類似度を表す。系統樹は、複数のノードn1~n10およびそれらを結ぶ複数の枝により構成される。縦軸の値が小さいほど類似度が高く、縦軸の値が大きいほど類似度が低い。最上部のノードn0は根ノード(root node)と呼ばれ、最下部のノードn5~n10は葉ノード(leaf node)と呼ばれる。最上部のノードn0と最下部のノードn5~n10との間にノードn1~n4が存在する。
【0051】
図5の例では、ノードn5~n10に「Group01」、「Group05」、「Group02」、「Group04」、「Group03」および「Group06」がそれぞれ属する。ノードn5とノードn6とがノードn4で結合している。これは、「Group01」の薬剤耐性のパターンと「Group05」の薬剤耐性のパターンとが最も類似していることを意味する。ノードn4とノードn7とがノードn3で結合している。これは、「Group02」の薬剤耐性のパターンが「Group01」および「Group05」の薬剤耐性のパターンに次に類似していることを意味する。例えば、「Group01」と「Group05」とは、1つの薬剤に対する耐性の有無において異なり、他の複数の薬剤に対する耐性の有無において同じである。例えば、「Group02」は、2つの薬剤に対する薬剤耐性の有無において異なり、他の複数の薬剤に対する耐性の有無において同じである。「Group06」の薬剤耐性のパターンは、「Group01」、「Group05」、「Group02」、「Group04」および「Group03」の薬剤耐性のパターンと最も異なる。
【0052】
ノードn4には「Group01」および「Group05」が属し、ノードn3には「Group01」、「Group05」および「Group02」が属し、ノードn2には「Group01」、「Group05」、「Group02」および「Group04」が属し、ノードn1には「Group01」、「Group05」、「Group02」、「Group04」および「Group03」が属する。
図5の系統樹は表示部16に表示される。
【0053】
使用者は、操作部15を操作することにより、表示部16に表示された系統樹における所望のノードniを指定することができる。ここで、iは1~10のいずれかである。指定されたノードniを着目ノードN
0と呼ぶ。着目ノードN
0が指定されると、着目ノードN
0の直下の子ノードN
1,N
2が特定される。
図5の例では、着目ノードN
0としてノードn0が指定される。それにより、子ノードN
1,N
2としてノードn1,n10が特定される。この場合、子ノードN
1に属する基本グループ「Group01」、「Group05」、「Group02」、「Group04」および「Group03」が再編成グループ「GR01」に再編成される。また、子ノードN
1に属する基本グループ「Group06」が再編成グループ「GR02」に再編成される。
【0054】
再編成の前後のグループが表示部16に表示される。
図6(a),(b)は、再編成前および再編成後のグループをそれぞれ示す図である。
図6(a)に示すように、グループの再編成前には、複数のサンプルが6個の基本グループ「Group01」~「Group06」に分類されている。着目ノードN
0の指定によるグループの再編後には、再編成グループ「GR01」には基本グループ「Group01」~「Group05」のサンプルが属し、再編成グループ「GR02」には基本グループ「Group06」のサンプルが属する。
【0055】
再編成グループ「GR01」と再編成グループ「GR02」とは、特定の1または少数の薬剤に対する耐性の有無において異なる。再編成グループ「GR01」および「GR02」について
図3のピーク行列が作成される。作成されたピーク行列に基づいて再編成グループ「GR01」および「GR02」に属するサンプルに対応するマススペクトルについて差異の解析が行われる。それにより、特定の1または少数の薬剤に対する耐性の有無を判定するためのマーカピークが探索される。
【0056】
同様に、使用者は、着目ノードN0として他の任意のノードniを指定することにより、再編成グループ「GR01」および「GR02」をさらに他の複数の再編成グループに再編成することができる。すなわち、着目ノードN0を変更することにより、複数の基本グループ「Group01」~「Group06」を再編成グループ「GR01」および「GR02」とは異なる複数の再編成グループに再編成することができる。それにより、他の特定の1または少数の薬剤に対する耐性の有無を判定するためのマーカピークが探索される。
【0057】
なお、表示部16には、
図6に示すように、再編成前および再編成後のグループにそれぞれ対応するチェックボックスが表示されるとともに、複数のサンプルにそれぞれ対応するチェックボックスが表示される。使用者は、操作部15を用いてこれらのチェックボックスを操作することにより、手動で一部のグループまたは一部のサンプルをマススペクトルによる差異の解析の対象から削除することができ、またはマススペクトルによる差異の解析の対象に追加することができる。それにより、再編成グループの再編成を手動で行うことも可能である。
【0058】
着目ノードN0を順次変更して同様の解析を繰り返すことにより、基本グループの数または薬剤の数が多い場合でも、所望の薬剤に対する耐性の有無を判定するためのマーカピークを効率よく探索することができる。
【0059】
(4)質量分析処理
図7は、データ解析装置2の構成を示す図である。
図8および
図9は、質量分析プログラムにより行われる質量分析処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図7に示すように、データ解析装置2は、機能部として、データ取得部A、ピークリスト作成部B、グループ受付部C、分類部D、特性受付部E、系統樹作成部F、ピーク行列作成部G、探索部H、ノード受付部I、再編成部Jおよび表示制御部Kを含む。ピークリスト作成部B、ピーク行列作成部Gおよび探索部Hが解析部Lを構成する。
【0060】
図1のCPU11が記憶装置14に記憶された質量分析プログラムを実行することにより、データ解析装置2の機能部が実現される。データ解析装置2の機能部の一部または全てが電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。以下、
図7のデータ解析装置2ならびに
図8および
図9のフローチャートを用いて質量分析処理を説明する。
【0061】
まず、データ取得部Aは、操作部15によりマススペクトルデータが指定されたか否かを判定する(ステップS1)。使用者は、操作部15を操作することにより、記憶装置14に記憶された複数のマススペクトルデータのうち所望のマススペクトルデータを指定することができる。マススペクトルデータが指定されない場合、データ取得部Aは、マススペクトルデータが指定されるまで待機する。マススペクトルデータが指定された場合、データ取得部Aは、指定されたマススペクトルデータを記憶装置14から取得する(ステップS2)。ピークリスト作成部Bは、取得されたマススペクトルデータに基づいてピークリストを作成する(ステップS3)。
【0062】
次に、データ取得部Aは、マススペクトルデータの指定の終了が指示されたか否かを判定する(ステップS4)。使用者は、操作部15を操作することにより、マススペクトルデータの指定の終了を指示することができる。マススペクトルデータの指定の終了が指示されない場合、データ取得部Aは、操作部15によりマススペクトルデータがさらに指定されたか否かを判定する(ステップS5)。マススペクトルデータがさらに指定された場合、データ取得部AはステップS2に戻る。マススペクトルデータがさらに指定されない場合、データ取得部AはステップS4に戻る。マススペクトルデータの指定の終了が指示されるまで、ステップS2~S5が繰り返される。
【0063】
マススペクトルデータの指定の終了が指示された場合、表示制御部Kは、
図2のグループ受付画面20を表示部16に表示させる(ステップS6)。グループ受付部Cは、ステップS6で表示されたグループ受付画面20を通して、操作部15によりサンプルを基本グループに分類するための指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS7)。指示が受け付けられない場合、グループ受付部Cは指示が受け付けられるまで待機する。指示が受け付けられた場合、分類部Dは、受け付けられた指示に基づいて複数の基本グループを作成するとともに、サンプルを作成された複数の基本グループのいずれかに分類する(ステップS8)。表示制御部Kは、ステップS8で分類された基本グループ(
図6(a)参照)を表示部16に表示させる(ステップS9)。
【0064】
その後、ピーク行列作成部Gは、ステップS3で作成されたピークリストおよびステップS8で分類された基本グループに基づいてピーク行列を作成する(ステップS10)。表示制御部Kは、作成されたピーク行列を表示部16に表示させる(ステップS11)。探索部Hは、作成されたピーク行列に基づいて複数の基本グループの差異を解析し(ステップS12)、差異の解析結果に基づいてマーカピークを探索する(ステップS13)。表示制御部Kは、探索されたマーカピークを含む差異の解析結果を表示部16に表示させる(ステップS14)。
【0065】
続いて、表示制御部Kは、
図4の特性受付画面30を表示部16に表示させる(ステップS15)。特性受付部Eは、表示された特性受付画面30において、操作部15により特性情報が設定されたか否かを判定する(ステップS16)。特性情報が設定されていない場合、グループ受付部Cは特性情報が設定されるまで待機する。特性情報が設定された場合、系統樹作成部Fは、設定された特性情報の類似度に基づいて系統樹を作成する(ステップS17)。表示制御部Kは、作成された系統樹(
図5参照)を表示部16に表示させる(ステップS18)。ステップS18において、設定された複数の基本グループについての薬剤耐性のパターンを示す画面が系統樹とともに表示されてもよい。
【0066】
ノード受付部Iは、表示部16に表示された系統樹において、操作部15により着目ノードの指定を受け付けたか否かを判定する(ステップS19)。着目ノードの指定が受け付けられた場合、再編成部Jは、着目ノードに基づいてグループを再編成する(ステップS20)。表示制御部Kは、再編成グループ(
図6(b)参照)を表示部16に表示させる(ステップS21)。この場合、複数の基本グループが複数の再編成グループに再編成される。
【0067】
その後、ピーク行列作成部Gは、ステップS3で作成されたピークリストおよびステップS20で再編成された複数の再編成グループに基づいてピーク行列を作成する(ステップS22)。表示制御部Kは、作成されたピーク行列を表示部16に表示させる(ステップS23)。探索部Hは、作成されたピーク行列に基づいて複数の再編成グループの差異の解析を行い(ステップS24)、差異の解析結果に基づいてマーカピークを探索する(ステップS25)。表示制御部Kは、探索されたマーカピークを含む差異の解析結果を表示部16に表示させる(ステップS26)。その後、表示制御部Kは、ステップS19に戻る。
【0068】
ステップS19において、着目ノードの指定が受け付けられた場合、指定された着目ノードについてステップS20~S26の処理が行われる。ステップS19において、着目ノードの指定が受け付けられない場合、ノード受付部Iは、着目ノードの指定の終了が指示されたか否かを判定する(ステップS27)。着目ノードの指定の終了が指示されない場合、ノード受付部Iは、ステップS19に戻る。着目ノードの指定の終了が指示された場合、ノード受付部Iは質量分析処理を終了する。
【0069】
上記の質量分析処理において、一部の処理が省略されてもよい。例えば、ステップS9,S11,S14,S21,S26等の表示処理の一部または全部は省略されてもよい。また、基本グループが再編成される前のステップS10~S14は省略されてもよい。なお、ステップS19における着目ノードの指定は、着目ノードの取り消しの指定を含む。着目ノードの取り消しが指定された場合、ステップS20において、再編成グループが基本グループに再編成される。すなわち、サンプルのグループへの分類が、初期の基本グループへの分類に戻される。
【0070】
(5)効果
本実施の形態に係る質量分析装置1においては、使用者は、グループの数および薬剤の数が多い場合でも、表示部16に表示された系統樹において所望の薬剤に対応するノードを着目ノードとして容易に指定することができる。また、使用者は、着目ノードに属する複数のグループを複数の子ノードにそれぞれ属する1以上のグループに再構築するための操作を行う必要がない。さらに、使用者は、着目ノードの指定を再帰的に繰り返すことができる。その結果、所望の複数の薬剤に対する耐性をそれぞれ判定するための複数のマーカピークを効率的に探索することができる。
【0071】
(6)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、質量分析装置1はMALDIを用いた質量分析装置であるが、本発明はこれに限定されない。質量分析装置1は、他の方式を用いた質量分析装置であってもよいし、クロマトグラフィー等の他の分析装置であってもよい。
【0072】
(b)上記実施の形態において、グループの特性情報は複数の薬剤に対する耐性の有無の組み合わせであるが、本発明はこれに限定されない。グループの特性情報は、サンプルの遺伝子情報であってもよい。この場合、所定の遺伝子(例えば薬剤耐性遺伝子)の有無を判定するマーカピークを効率的に探索することができる。