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特許7021761金属フィルタ及び該金属フィルタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】金属フィルタ及び該金属フィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20220209BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20220209BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
B01D39/20 A
B01J35/02 J
A61L9/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2016239322
(22)【出願日】2016-12-09
(65)【公開番号】P2018094475
(43)【公開日】2018-06-21
【審査請求日】2019-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】506095456
【氏名又は名称】APSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秀満
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 剛文
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-214142(JP,A)
【文献】特開平11-257048(JP,A)
【文献】特開2002-153717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
46/00-46/54
B01J 20/00-38/74
A61L 9/00- 9/22
F01N 3/00- 3/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列状の山部と谷部が交互に複数形成された金属板本体の前記山部と谷部の一方又は双方に、流体を通過させるための列方向に延びる貫通溝を有し、
貫通溝の開口縁部に、当該山部又は谷部の凸面側に起立する起立片を有し、
前記起立片が、前記山部と前記谷部とを連結している中間壁部に対して略面一に突出しており、
且つ、触媒層又は吸着層が表面に形成されている金属フィルタ。
【請求項2】
前記起立片が、前記貫通溝を臨み互いに対向して列方向に延びる一対の開口縁部の双方にそれぞれ設けられている請求項1記載の金属フィルタ。
【請求項3】
前記開口縁部の双方に設けられる起立片が、各開口縁部のほぼ全長にわたって延びる長片である請求項2記載の金属フィルタ。
【請求項4】
前記開口縁部の双方に設けられる起立片の高さ寸法が、当該貫通溝の列方向に直交する幅方向の寸法の略半分の寸法である請求項2又は3記載の金属フィルタ。
【請求項5】
前記起立片が、切り起こし片である請求項4記載の金属フィルタ。
【請求項6】
前記山部又は谷部に、前記貫通溝が列方向に間隔をおいて複数設けられている請求項1~5の何れか1項に記載の金属フィルタ。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の金属フィルタの製造方法であって、
前記山部と谷部よりなる凹凸形状をプレス加工により形成する際に、同時に、打ち抜きによる切り起こし加工により前記起立片を形成し、これにより前記貫通溝も形成される金属フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光触媒、活性炭、芳香剤、二酸化マンガンなどの触媒層や吸着層などが表面に形成された流体の清浄化フィルタや厨房等のグリスフィルタとして好適に用いられる金属フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフィルタとして、例えば光触媒フィルタは、空気が光触媒層を通過する過程で、紫外線で励起した光触媒により空気中の有害物を分解・除去するフィルタであり、従来の構造としては、金属メッシュや金属網などの板状の基材の表面に、酸化チタンなどを担持させた光触媒層を形成するものが提案されている。しかし、金属メッシュや金属網を基材としたフィルタは、通過する空気が光触媒層に接する面積を十分に確保することができず、一枚で十分な清浄化効果を得ることができないという課題がある。
【0003】
これに対し、例えば、特許文献1では、アルミナ、コージライト、ムライト、ジルコニア、シリカ、マグネシア等の金属酸化物系のセラミック多孔質体や、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の非酸化物系のセラミック多孔質体よりなる板状の基材に、酸化チタンなどを担持させた光触媒層を形成するものが提案されている。また、特許文献2では、チタン箔に、非周期的パターンのエッチング処理を施して表裏貫通する多数の微細流路を有する非周期性海綿構造とし、これに陽極酸化処理を施した後、加熱処理を施して表面に酸化チタンベースを形成し、当該酸化チタンベースにアナターゼ型酸化チタン粒子を焼き付けて光触媒層を形成したものが提案されている。
【0004】
これら特許文献1、2のように、基材に複雑で微細な流路を形成し、その表面に光触媒層を被覆形成することで、通過する空気等の流体が光触媒層に接する面積を確保することが可能である。しかし、このような微細な流路に流体を流通させる際の圧損が大きくなり、流体の通過効率が低下してしまうという問題がある。また、微細流路の内部には紫外線が十分に行き渡らず、清浄化効果にも一定の限界がある。さらに、特許文献1のセラミックフィルタは材料や製造コストが高く、
形状の自由度が低く、衝撃等で割れないようにデリケートに扱う必要があり、特許文献2に記載のフィルタもエッチング処理に費用が嵩み、いずれも生産コスト低減に限界があるという問題もある。
【0005】
また、厨房等の排煙中の油脂分を取り除くフィルタとして金属製のグリスフィルタが使用されているが(例えば、特許文献3参照。)、従来からの構造は、枠体内に金属メッシュや金属網、パンチングメタルなどの板状の基材を複数組み合わせてセットしたものである。しかし、このような基材は製作コストがかかるうえ、排煙の通過抵抗も大きく、油脂分をより効率良く回収できるものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3150894号公報
【文献】特開2011-183240号公報
【文献】特開2003-336876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、通過する空気等の流体と触媒層や吸着層等との接触面積を十分に確保でき、流体の通過抵抗、すなわち圧損を小さく抑えて通過効率も向上させることができ、形状の自由度も高く、優れた清浄化効果等を効率よく得ることができる金属フィルタを低コストに実現する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
【0009】
(1) 列状の山部と谷部が交互に複数形成された金属板本体の前記山部と谷部の一方又は双方に、流体を通過させるための列方向に延びる貫通溝を有し、且つ、該貫通溝の開口縁部に、当該山部又は谷部の凸面側に起立する起立片を有することを特徴とする金属フィルタ。
【0010】
(2) 前記起立片が、前記貫通溝を臨み互いに対向して列方向に延びる一対の開口縁部の双方にそれぞれ設けられている(1)記載の金属フィルタ。
【0011】
(3) 前記開口縁部の双方に設けられる起立片が、各開口縁部のほぼ全長にわたって延びる長片である(2)記載の金属フィルタ。
【0012】
(4) 前記開口縁部の双方に設けられる起立片の高さ寸法が、当該貫通溝の列方向に直交する幅方向の寸法の略半分の寸法である(2)又は(3)記載の金属フィルタ。
【0013】
(5) 前記起立片が、切り起こし片である(4)記載の金属フィルタ。
【0014】
(6) 前記起立片が、前記山部と前記谷部とを連結している中間壁部に対して略面一に突出している(1)~(5)の何れかに記載の金属フィルタ。
【0015】
(7) 前記山部又は谷部に、前記貫通溝が列方向に間隔をおいて複数設けられている(1)~(6)の何れかに記載の金属フィルタ。
【発明の効果】
【0016】
以上にしてなる本願発明に係る金属フィルタは、列状の山部と谷部が交互に複数形成された金属板本体の前記山部と谷部の一方又は双方に、流体を通過させるための列方向に延びる貫通溝を有し、且つ、該貫通溝の開口縁部に、当該山部又は谷部の凸面側に起立する起立片を有するので、山部と谷部による凹凸表面により大きな表面積を備えるとともに、その山部又は谷部に形成される貫通溝の開口縁部の起立片の分も表面積が増え、凹凸表面にあたって貫通溝を通過することとなる流体と当該金属フィルタ表面との接触面積を十分に確保することができるため、たとえば光触媒、活性炭、芳香剤、二酸化マンガンなどの触媒層や吸着層などが表面に形成される場合にも、触媒反応や吸着作用が効率よく行われる。
【0017】
また、従来のような微細流路を流通させるものではなく、凹凸表面にあたった流体がそのまま貫通溝を通過する構造であり、且つ起立片も山部又は谷部の凸面側に起立しているため、流体の通過抵抗がほとんど生じなく、圧損を小さく抑えることができ、通過効率が向上して優れた清浄化効果や油脂分の除去効果を効率よく得ることができる。また、凹凸表面及び上記凸面側に起立する起立片によって表面積を稼いでいるため、特に光触媒の触媒層を表面に形成する場合でも、紫外線を当該触媒層に効率よく照射することができ、従来のような微細流路内部に紫外線を照射するものに比べ、格段に優れた清浄化効果が得られる。
【0018】
更に、凹凸状の金属板に貫通溝と起立片が形成される構造であるため、従来のセラミックフィルタやエッチング処理を必要とするフィルタに比べ、プレス等の機械加工により生産コストを低く抑えることが可能である。またセラミック製に比べて加工後に変形させることも容易であり、形状の自由度が高い。
【0019】
また、前記起立片が、前記貫通溝を臨み互いに対向して列方向に延びる一対の開口縁部の双方にそれぞれ設けられているものでは、貫通溝を通過する流体に対して双方から効率よく接触することができるので、圧損を抑えつつ流体との接触面積をより確実に確保できる。
【0020】
特に、前記開口縁部の双方に設けられる起立片が、各開口縁部のほぼ全長にわたって延びる長片であるものでは、上記流体との接触面積をより確実に確保できる。
【0021】
更に、前記開口縁部の双方に設けられる起立片の高さ寸法が、当該貫通溝の列方向に直交する幅方向の寸法の略半分の寸法であるものでは、起立片による圧損を抑えつつ効率よく接触面積を確保できる。特に、起立片を切り起こし片とする場合には、母材を無駄にすることなく、接触面積を最大限に維持することができる。
【0022】
また、前記起立片が切り起こし片であるものでは、当該起立片をろう付け等することなく機械加工で効率よく低コストに形成することができる。
【0023】
また、前記起立片が、前記山部と前記谷部とを連結している中間壁部に対して略面一に突出しているものでは、流体の通過抵抗をより小さく抑えることができ、流体の圧損を抑え、通過効率が向上し、優れた清浄化効果や油脂分の除去効果を効率よく得ることができる。
【0024】
また、前記山部又は谷部に、前記貫通溝が列方向に間隔をおいて複数設けられているものでは、間に母材が橋渡しされる構造となるため保形性が高まり、構造的に用途に応じた必要な保形性を出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の代表的実施形態にかかる金属フィルタを示す斜視図。
図2】同じく金属フィルタの平面図。
図3】同じく正面図。
図4】同じく要部の断面図。
図5】同じく要部の斜視図。
図6】同じく金属フィルタを光触媒フィルタとして構成した例の分解斜視図。
図7】同じく本発明の一例としての光触媒フィルタの斜視図。
図8】同じく光触媒フィルタを組み込んだ空気清浄機の分解斜視図。
図9】同じく空気清浄機における空気の流れを示す要部の説明図。
図10】(a)は同じく金属フィルタの他の使用形態を示す斜視図、(b)は同じく金属フィルタのさらに他の使用形態を示す斜視図。
図11】同じく金属フィルタのさらに他の使用形態を示す斜視図。
図12】(a)は同じく金属フィルタの変形例を示す要部の断面図、(b)は同じく金属フィルタの他の変形例を示す要部の断面図。
図13】同じく金属フィルタのさらに他の変形例を示す要部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
本発明の金属フィルタ1は、図1図5に示すように、列状の山部20と谷部21が交互に複数形成された金属板本体2の前記山部20と谷部21の一方又は双方に、流体を通過させるための列方向に延びる貫通溝10を設けるとともに、該貫通溝10の開口縁部11に、当該山部20又は谷部21の凸面側に起立する起立片30、31を設けたものである。
【0028】
金属フィルタ1は、図示しないが、さらに表面に光触媒、活性炭、芳香剤、二酸化マンガンなどの触媒層や吸着層などを形成した清浄化フィルタとして構成することや、このような触媒層などを形成することなく、金属材のまま厨房等のグリスフィルタとしても好適に用いることができる。触媒層や吸着層は、山部20と谷部21よりなる凹凸形状に形成する前の平板状態の表面に形成してもよいし、凹凸形状に形成した後の凹凸表面に形成してもよい。
【0029】
例えば、山部20と谷部21よりなる凹凸形状をプレス加工で成形する場合においては、あらかじめ表面に触媒層などを形成していると該層が剥がれてしまったり形状精度を狂わせる原因になることもある。これを避けるためには、凹凸形状に加工した後に上記層を形成すればよい。
【0030】
本発明の金属フィルタ1は、流体が山部20及び谷部21の凹凸表面にあたって貫通溝10を通過するように使用することができる。すなわち、従来の凹凸形状のフィルタ、例えば車の触媒に用いる金属フィルタは、同じように山部と谷部を有する凹凸形状のフィルタを渦巻状に巻き付けて構成されるが、流体は山部又は谷部が延びる方向に沿って通過させるものであるが、本発明の金属フィルタ1は、山部20、谷部21に形成した貫通溝10を通じて、流体を凹凸形状の一方の面から他方の面に通過させるものである。
【0031】
山部20又は谷部21の延びる方向に流体を供給又は排出してもよいが、供給後又は排出前の流体は各貫通溝10を通過して一方の面から他方の面に移動するように流通する。凹凸面に直交する方向、すなわち山部20又は谷部21の延びる方向と、山部20及び谷部21が並ぶ並び方向との双方に直交する方向に、流体を供給又は排出し、各貫通溝10に流体を通過させるようにしてもよい。流体の流通形態は種々可能であるが、いずれにしても山部20又は谷部21に形成された貫通溝10を流体が通過するように構成される。
【0032】
このような金属フィルタ1は、山部20と谷部21による凹凸表面によって、流体に接触する大きな表面積を備えると同時に、その山部20又は谷部21に形成される貫通溝10の内面、開口縁部の起立片30/31の分も、流体との接触面積が増えている。したがって、たとえば触媒層や吸着層などが表面に形成される場合、触媒反応や吸着作用が効率よく行われることになる。
【0033】
また、起立片30/31も山部20又は谷部21の凸面側に起立しているため、凹凸表面にあたる流体は滞りなく貫通溝10を通過して抜けてゆき、流体の通過抵抗がほとんどなく、圧損が小さく抑えられる。したがって、優れた清浄化効果が得られるとともに、不燃性でありグリスフィルタとして用いる場合にも油脂分の除去効果を効率よく得ることができる。また、光触媒の触媒層を表面に形成する場合においては、起立片30/31が紫外線の進入を邪魔することなく、凹凸表面や貫通溝内面、起立片30/31の表面に形成される当該触媒層に紫外線を効率よく照射することができる。
【0034】
山部20及び谷部21よりなる凹凸形状、及び起立片30/31は、プレス加工により低コストに形成することができる。特に起立片30/31は、凹凸形状のプレス加工と同時、または直後に、打ち抜きによる切り起こし加工により、効率よく形成することができる。勿論、このような加工方法、加工手順に限定されるものではない。
【0035】
本例では、山部20及び谷部21を角張った方形状に曲げ加工して全体として凹凸形状が構成されているが、山部及び谷部がなだらかな連続した曲面形状に曲げ加工して構成したものでもよい。「山部」及び「谷部」は、凹凸形状の凹凸面の一方の面を上面、他方の面を下面として、上面側に突出した部位を「山部」、下面側に突出した部位を「谷部」とする。
【0036】
貫通溝10は、本例では山部20及び谷部21の全てに形成しているが、これに何ら限定されない。例えば、山部20のみ、或いは谷部21のみでもよい。特に、本例のように山部20(谷部21)の頂面(底面)に向けて徐々に幅が狭くなるテーパー状の凹凸形状の場合において、例えば山部20側から流体を通すのであれば、図12に示すように、谷部21側にのみ貫通溝10を設けるようにすれば、勿論、山部20側に貫通溝が無い分だけ流通抵抗が増すが、流体は山部20にあたって流れが乱されるとともに、必ず谷部21に至るしだいに狭くなる空間を通ることになるため、その過程で流体は中間壁部22に押し付けられるように接し、接触による効果をより高めることができる。
【0037】
また、貫通溝10は、本例のように山部20及び谷部21の双方に設ける場合、或いは山部20又は谷部21の一方にのみ設ける場合であっても、すべての山部20又はすべての谷部21に設ける必要はない。一つ又は二つ以上の山部20又は谷部21を飛ばして形成してもよい。用途や大きさ等に応じた適した保形性や流通抵抗が得られるように、適宜貫通溝10の寸法や数、配置などを決めることができる。
【0038】
本例では、貫通溝10を列方向に長い溝とし、例えば図10(a)、(b)や図11に示すように全体を屈曲変形させて図示しない枠体に嵌め込んで使用する等できるように、変形容易となるように構成されているが、このような貫通溝10に形態以外にも、例えば列に直交する幅方向に長い溝を列方向に間隔をあけて複数断続的に設けたものでも勿論よい。
【0039】
本例では、一つの山部20又は谷部21に対して、列方向に長い貫通溝10を二つ、間隔をあけて連設し、間に形成される橋渡し部23(当該山部20又は谷部21における貫通溝10間の残部)によって全体として保形性を維持できる構造としている。ただし、板厚やその他の寸法、求められる保形性の程度に応じて、貫通溝10の長さや間隔を適宜決めることができ、例えば、列方向に貫通溝10を三つ以上連設してもよいし、一つのみ構成したものでもよい。
【0040】
起立片30、31は、貫通溝10を臨んで互いに対向して列方向に延びる一対の開口縁部11、11の双方にそれぞれ設けられ、貫通溝10を通過する流体に対して開口縁部11、11の双方から効率よく接触することができるように構成されている。ただし、図12(b)に示すように、一方の開口縁部11にのみ設けることも勿論できる。切り起こしの場合、当該一方の開口縁部11に形成する起立片30、31の突出長さを長くすることができる。
【0041】
開口縁部の双方に設けられる起立片30(31)は、各開口縁部のほぼ全長にわたって延びる長片とされているが、図13に示すように、間隔をあけて複数の起立片30を設けることも勿論できる。この場合、図13のように、両開口縁部11に交互に(千鳥状に)突出長さの長い起立片30(31)を切り起こしにより形成することができる。
【0042】
起立片30、31は、切り起こし片である。別途形成した片をろう付け等することもできるが、切り起こし片とすることで機械加工により効率良く低コストに形成できる。具体的には、山部20又は谷部21の中央に沿って両側に切り裂くように起立片30、31を切り起こし形成し、これにより貫通溝10を形成するものである。中央から両側に切り起こす結果、形成される貫通溝10の両側の開口縁部11、11の双方に設けられる起立片30(31)の高さ寸法は、同じ寸法となり、具体的には当該貫通溝の列方向に直交する幅方向の寸法の略半分の寸法となる。
【0043】
このように起立片30(31)を切り起こし加工により形成することで母材を無駄なく用いて形成することができ、接触面積を最大限に高めることが可能となる。起立片30(31)は、山部と谷部とを連結している中間壁部22に対して略面一に突出している。すなわち、起立片30(31)及び貫通溝10は、山部20(谷部21)の頂面(底面)の幅すべてを使って切り起こして形成され、貫通溝10と中間壁部22との段差が存在しないように構成されている。したがって、流体が通過する際の通過抵抗は最小限に抑えられ、流体の圧損を抑え、通過効率が向上し、優れた清浄化効果や油脂分の除去効果が得られる。
【0044】
以下、図6図9に基づき、本発明に係る金属フィルタ1を、表面に光触媒層を形成した光触媒フィルタとして構成し、該光触媒フィルタを用いた空気清浄機を構成した実施形態について説明する。
【0045】
空気清浄機は、図8及び図9に示すように、筐体40の前後壁を連結する上下左右の周壁の所定の位置に、筐体40の内部に空気を取り入れる流入口41、及び筐体40外部に空気を排出する排出口42がそれぞれ設けられ、筐体40内部には、単又は複数の光触媒フィルタ5と、これに対向して該光触媒フィルタ5に紫外線を照射する単又は複数の紫外線照射部6とが、前後に並設されている。紫外線照射部6は、光触媒フィルタ5の全面に対面する紫外線LED基板が設けられている。
【0046】
筐体40の内部には、図9にも示すように、流入口41から光触媒フィルタ5の空気の入口に至る空気供給路43、及び該光触媒フィルタ5の空気の出口から排出口に至る空気排出路48が設けられ、空気供給路43又は空気排出路48の途中に、空気を強制的に流通させるファン8が設けられている。筐体40を構成する前側カバー部45A、中間の基体部45B、後側カバー部45Cのうち、前側カバー部45Aの内面側及び基体部45Bの前面側には、左右の流入口41から枠部46に取り付けられる光触媒フィルタ5及び集塵フィルタ7の前面に空気を供給する空気供給路43を構成する隔壁等が適宜突設されている。
【0047】
また、基体部45Bの後面側、及び後側カバー部45Cの前面側にも、集塵フィルタ7及び光触媒フィルタ5を通過して紫外線照射部6との隙間から側方、すなわち内側へ抜けた空気をファン8まで導くとともに、さらにファン8から上側の排出口42まで導く空気排出路を構成するための隔壁等が適宜突設されている。
【0048】
空気の流入口、排出口の位置は、例えば、左右壁とともに下壁にも流入口を設けたものや、上壁の代わりに下壁に排出口を設けたもの、下壁に流入口を設け、左右壁又は上壁に排出口を設けたもの、流入口、排出口をそれぞれ左右壁に設けたものなど、上下左右の周壁に流入口及び排出口を設けるものであれば、その他種々の構成が可能である。
【0049】
流入口41には、取り込む空気を光触媒フィルタ5が取り付けられる枠部46の前側に導くために、流入口41の開口縁の後側の縁部から筐体内側斜め前方に向けて延び、枠部46に前端に連続する導入壁47が設けられている。流入口41から取り込まれた空気は、この導入壁47と前側カバー部45Aの間の空間よりなる空気供給路43を通じて枠部46前側から集塵フィルタ7及び光触媒フィルタ5を通過し、空気排出路を通じてファンの側へ導かれることになる。
【0050】
このような導入壁47は、上記のとおり光触媒フィルタ5が取り付けられる枠部46の前側に空気を導く空気供給路43を構成するととともに、筐体40内において枠部46よりも後ろ側に配置される紫外線照射部6の発する紫外線が流入口41を通じて外部に漏れないようにするための遮断壁としての作用も奏している。
【0051】
光触媒フィルタ5は、図6及び図7に示すように、合成樹脂製の筒状の枠体51内に、上述した金属フィルタ1を嵌め込んで構成されている。枠体51は、金属フィルタ1の厚み方向一方の面(図6では下側の面)の周端部を掛止する掛止片52aが内周面に突設された枠本体52と、枠本体52の内周側において前記掛止片52aに掛止された状態に内装される金属フィルタ1の他方の面(図6では上側の面)の周端部を掛止する環状の枠部材53とより構成されている。
【0052】
枠部材53には、金属フィルタ1と反対側に延びる把持片54が設けられており、図8に示すように当該光触媒フィルタ5を取り付ける枠部46の内面にはこの把持片54を係止する係止溝46bが対応する位置に形成されている。光触媒フィルタ5は、この把持片54を手でつまんで枠部46から容易に取り外したり取り付けることができ、メンテナンス性が向上するとともに該把持片54により集塵フィルタ7を安定保持することができる。
【0053】
枠体51の外周部には軟質材料よりなる環状のシール材55が設けられている。具体的には、枠本体52と枠部材53の組み付けにより外周面に環状の凹条が形成され、該凹条に前記シール材55が装着されている。このシール材55は、好ましくはシリコーンゴムより構成される。このようなシール材55を設けることで、当該光触媒フィルタ5が筐体40の枠部46に密着して安定保持され、この密着のみで光触媒フィルタ5を着脱できるので作業性がよく、また密封性を高めて空気が光触媒フィルタ5の隙間を確実に流通するようにでき、さらに光触媒フィルタ5が枠部46内で振動して騒音が生じることを未然に防止する効果を奏する。
【0054】
光触媒としては、二酸化チタンの皮膜が金属フィルタ1の金属板本体2の表面全体に被覆形成されている。二酸化チタンの皮膜の形成は、公知の方法を採用できる。例えば、サンドブラストやエッチング、プレス加工時のジボ加工、化研処理、又はこれらの組み合わせにより表面を荒らしたうえで被覆形成することが好ましい。この光触媒に紫外線照射部3からの紫外線が照射されることでOHラジカルが発生し、空気中の有害成分や臭い成分が分解される。
【0055】
紫外線照射部6は、図9にも示すように、光触媒フィルタ5の空気の出口側の面(図9では下面)に対向する位置であって該面から所定距離離れた位置に設けられ、該位置から光触媒フィルタ5の前記面に向けて紫外線を照射するように配置されている。これにより紫外線照射部6と光触媒フィルタ5との間に、光触媒フィルタ5から出た空気を前記出口側の面に略平行な側方に排出する空気排出路48が形成される。
【0056】
より具体的には、紫外線照射部6は、図9に示すように、基板60と、該基板60の光触媒フィルタ5に対面する側の面に付設された紫外線光源(本例では紫外線LED素子)61と、基板60と光触媒フィルタ5の間に介装され、基板60及び紫外線光源61を覆う光透過性のカバー板62とより構成されている。基板60及びカバー板62は、光触媒フィルタ5の空気の出口すべてに亘って、空気排出路48となる隙間を介して対面するように筐体40内の固定部に取り付けられている。
【0057】
光触媒フィルタ5を抜けて後面側(図9では下面側)に出た空気は、基本的に紫外線照射部6のカバー板62との間の隙間(空気排出路48)を通じ、カバー板62の表面に沿って側端の側(筐体中央側)へ排出されることになる。一部の空気はカバー板62の裏面と基板60の間を流通する。カバー板62は、基板60や紫外線光源61に埃等が溜まることを防止する。カバー板62の上に溜まる埃等は、光触媒フィルタ5のメンテナンスや交換の際にカバー板62上を清掃するだけで容易に除去できる。
【0058】
このように本例では光触媒フィルタ5の空気の出口側の面に紫外線照射部6が対面配置されているが、入口側の面に対向する位置であって該面から所定距離離れた位置に、該位置から前記入口側の面に紫外線を照射するように配置し、これにより紫外線照射部6と光触媒フィルタ5との間に、前記入口側の面に略平行な側方から空気を取り込み、光触媒フィルタ5に空気を供給するようにすることも好ましい。また、光触媒フィルタ5の空気の出口側と入口側の双方にそれぞれ紫外線照射部を同様に設け、同様の空気排出路及び空気供給路を形成するものでもよい。
【0059】
本実施形態の空気清浄機4は、このように表面に光触媒が担持された上述の金属フィルタ1を用いて光触媒フィルタ5を構成するとともに、該光触媒フィルタ5の空気の入口側又は出口側の面から所定距離離れた位置に紫外線照射部6を配置し、該紫外線照射部6との間に前記入口側の面に略平行な側方より空気を取り込む、又は前記出口側の面に略平行な側方に空気を排出する空気排出路を形成する空気清浄化構造を備えている。このような空気清浄化構造Sは、紫外線ランプの隙間を通じて空気を供給又は排出するものではないため紫外線照射部6の設計の自由度が著しく向上し、紫外線照射部6から光触媒フィルタ5の奥まで紫外線を効率よく照射することが設計上容易になる。
【0060】
また、光触媒フィルタ5と紫外線照射部6との間の隙間の側方から光触媒フィルタに対し空気を供給又は排出するので、紫外線照射部の反対側に空気の供給路又は排出路を設ける必要がなく、空気清浄機全体の厚みを抑えることができ、薄型コンパクト化が可能となる。図8及び図9に示すように、光触媒フィルタ5の山部20又は谷部21の延びる方向から空気を供給/排出するように構成されているため、すべての山部20又は谷部21に対して均等に効率よく空気を供給/排出できる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
1 金属フィルタ
2 金属板本体
3 紫外線照射部
4 空気清浄機
5 光触媒フィルタ
6 紫外線照射部
7 集塵フィルタ
8 ファン
10 貫通溝
11 開口縁部
20 山部
21 谷部
22 中間壁部
23 橋渡し部
30 起立片
31 起立片
40 筐体
41 流入口
42 排出口
43 空気供給路
45A 前側カバー部
45B 基体部
45C 後側カバー部
46 枠部
46b 係止溝
47 導入壁
48 空気排出路
51 枠体
52 枠本体
52a 掛止片
53 枠部材
54 把持片
55 シール材
60 基板
61 紫外線光源
62 カバー板
図1
図2
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