(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】染毛料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20220209BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20220209BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q5/06
A61K8/365
(21)【出願番号】P 2017149440
(22)【出願日】2017-08-01
【審査請求日】2020-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西川 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】楠見 真実
(72)【発明者】
【氏名】笠木 美弥
(72)【発明者】
【氏名】末田 朋与
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-020247(JP,A)
【文献】特開2015-113329(JP,A)
【文献】特開2007-302677(JP,A)
【文献】特開平08-268849(JP,A)
【文献】特開平05-105615(JP,A)
【文献】特開昭60-028913(JP,A)
【文献】米国特許第05601620(US,A)
【文献】特開2004-018505(JP,A)
【文献】Hoyu, Japan,Hair Manicure,Mintel GNPD [online],2010年03月,ID#1304133,[検索日:2021.05.25], Internet <URL:https://portal.mintel.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接染料を含有する染毛料組成物であって、
(A)ベンジルアルコール 1質量%以上で7質量%未満、
(B)レブリン酸
2質量%以上で25質量%未満、
(C)2価以上の多価アルコールから選ばれる1種以上 1~10質量%、
を含有し、かつ界面活性剤を含有せず又はその含有量が1質量%未満であることを特徴とする染毛料組成物。
【請求項2】
更に、(D)アクリル酸系ポリマーの1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の染毛料組成物。
【請求項3】
更に、(E)炭素数4以下の脂肪族1価アルコールの1種以上を含有し、(A)成分の含有量に対する(E)成分の含有量の質量比(E)/(A)が1.5~5の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の染毛料組成物。
【請求項4】
吐出部に櫛状又は毛束状の塗布部材を備えた染毛料容器を用いて毛髪に適用されるものであることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の染毛料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は染毛料組成物に関し、更に詳しくは、良好な染毛性能と地肌汚れの抑制を両立でき、かつ塗布具の不具合を起さない染毛料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
直接染料を含有しヘアマニキュアとも呼ばれる染毛料組成物では、特に酸性染毛料において、染毛性能の向上と地肌汚れの防止との両立がしばしば問題となってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-268849号公報
【文献】特許2571490号公報
【0004】
例えば、上記特許文献1が開示する頭髪用酸性染毛料組成物では、直接染料の一種である酸性染料とベンジルアルコールとの含有量比、及び組成物のpHを特定の範囲内とすることで、更に多価アルコール等も配合することで、良好な染着性と皮膚の汚れの防止を両立できる、としている。
【0005】
また、上記特許文献2が開示する頭髪用酸性染毛料組成物では、酸性染料とベンジルアルコールに加え、特定のシリコーン系ポリマーを配合することで、更にレブリン酸等も配合することで、染着性と使用後の毛髪感触の向上を両立できる、としている。
【0006】
ところで近年、チューブ入りの染毛料組成物を絞り出してから刷毛等を用いて毛髪に塗布する従来型のヘアマニキュアの他に、染毛料容器の吐出部に設けた櫛状又は毛束状の塗布部材を利用して、吐出した染毛料組成物をそのまま毛髪に塗布できるタイプの便利なヘアマニキュアが増えている。
【0007】
しかしこのような塗布部材付きのヘアマニキュア容器では、前記のチューブタイプとは異なり、塗布部材や、塗布部材に染毛料組成物を供給する容器吐出口を、非使用時に空気と接触しない状態で密閉することが難しい。従って、染毛料の使い残りが塗布部材や容器の吐出口付近の部位で固まってしまい、次回使用時の吐出不良を起こす恐れがある。
【0008】
特許文献1、2等では、ベンジルアルコールやレブリン酸等の成分を専ら染毛料組成物の染毛性能や地肌汚れの点で検討しているが、本願発明者が上記の吐出不良の問題も併せて検討したところ、これらの各成分の技術的意味が大きく異なって来ることが判明した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、染毛性能の向上と地肌汚れの防止の両立という課題に加え、櫛状又は毛束状の塗布部材付きの容器を用いて毛髪に適用する染毛料における、吐出不良の防止という新規な課題も同時に解決できる染毛料組成物を構成することを、解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明は、直接染料を含有する染毛料組成物であって、
(A)ベンジルアルコールを1質量%以上で7質量%未満、
(B)レブリン酸、
(C)2価以上の多価アルコールから選ばれる1種以上を1~10質量%、
を含有し、かつ界面活性剤を含有せず又はその含有量が1質量%未満である染毛料組成物である。
【0011】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明においては、前記第1発明に係る染毛料組成物が、更に(D)アクリル酸系ポリマーの1種以上を含有する。
【0012】
本願明細書において、アクリル酸系ポリマーとは、アクリル酸系モノマーを構成単位として含むポリマーをいう。アクリル酸系モノマーには、(メタ)アクリル酸、その塩及びその誘導体が含まれる。また、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。アクリル酸系ポリマーには、特定の1種のアクリル酸系モノマーのみを構成単位とするホモポリマー、2種以上のアクリル酸系モノマーのみを構成単位とするコポリマー、アクリル酸系モノマーの1種以上とアクリル酸系モノマー以外のモノマーの1種以上とを構成単位とするコポリマーのいずれもが包含される。
【0013】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明においては、前記第1発明又は第2発明に係る染毛料組成物が、更に(E)炭素数4以下の脂肪族1価アルコールの1種以上を含有し、(A)成分の含有量に対する(E)成分の含有量の質量比(E)/(A)が1.5~5の範囲内である。
【0014】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明においては、前記第1発明~第3発明のいずれかに係る染毛料組成物が、吐出部に櫛状又は毛束状の塗布部材を備えた染毛料容器を用いて毛髪に適用されるものである。
【発明の効果】
【0015】
(第1発明の効果)
直接染料を含有する染毛料において、(A)ベンジルアルコールは染毛力を高める一方で地肌汚れを悪化させる。しかし本願発明者の研究により、(A)成分は染毛料を固まり難くする効果、即ち、段落0006~0007で前記した塗布部材付きの染毛料容器(以下、単に「塗布部材付き容器」ともいう)における吐出不良を起こり難くする効果が高いことが判明した。
次に、有機酸を含有させると、染毛力は維持しつつ、染毛料が固まり難くなる。この効果は、(B)レブリン酸において特に顕著である。
更に、(C)2価以上の多価アルコールも染毛料を固まり難くする効果があるが、過剰に含有させると染毛力を損なう。
【0016】
以上の点から、(A)ベンジルアルコールの含有量を1質量%以上で7質量%未満とすることで、染毛力の向上と地肌汚れの防止を両立させると共に、塗布部材付き容器の吐出不良を防止することができる。また、(B)レブリン酸を含有し、更に(C)2価以上の多価アルコールを1~10質量%含有することで、染毛力を維持しつつ、地肌汚れを抑制でき、かつ塗布部材付き容器の吐出不良を防止できる。
【0017】
更に詳述すると、(A)成分を7質量%未満とするので地肌汚れの防止が十分に図られ、(A)成分の相対的減量による塗布部材付き容器の吐出不良防止効果の不十分さは、(B)成分及び1~10質量%の(C)成分を含有することで補償される。また、その際に染毛力は少なくとも低下せず(あるいは、やや向上し)、しかも(B)、(C)両成分は地肌汚れの抑制効果を伴う。
【0018】
また、第1発明の染毛料組成物は界面活性剤を含有せず、又はその含有量が1質量%未満であるため良好なゲル状組成物とすることができ、吐出性が良くなる。
【0019】
(第2発明の効果)
アクリル酸を構成単位として含むポリマーには、染毛料を固まり難くして、塗布部材付き容器の吐出不良を防止する効果を期待できる。
【0020】
(第3発明の効果)
染毛料が(A)ベンジルアルコールと共に(E)炭素数4以下の脂肪族1価アルコールを含有し、両成分の含有量の質量比(E)/(A)が1.5~5の範囲内である場合、染毛料組成物の製剤安定性が優れる。
【0021】
(第4発明の効果)
第4発明では、吐出部に櫛状又は毛束状の塗布部材を備えた染毛料容器を用いて第1発明~第3発明の染毛料組成物を毛髪に適用するので、染毛力の向上と地肌汚れの防止を両立したもとで、染毛料容器の吐出不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】吐出部に毛束状の塗布部材を備えた染毛料容器の外観図である。
【符号の説明】
【0023】
1 染毛料容器
2 外容器
3 吐出部
4 塗布部材
5 キャップ
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態をその最良の形態を含めて説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態によって限定されない。
【0025】
〔染毛料組成物〕
本発明の染毛料組成物は直接染料を含有し、(A)ベンジルアルコール 1質量%以上で7質量%未満、(B)レブリン酸、(C)2価以上の多価アルコールから選ばれる1種以上 1~10質量%、を含有し、かつ界面活性剤を含有せず、又はその含有量が1質量%未満である。
【0026】
染毛料組成物の剤型は限定されないが、1剤型のゲル状製剤であることが好ましい。但し、使用時に混合する2剤型以上の多剤型とすることもできるし、ゲル状以外の乳化系、可溶化系の製剤とすることもできる。以下に説明する各成分の含有量(配合量)は、染毛料組成物が多剤型である場合には、使用時の混合状態における含有量を意味する。
【0027】
〔直接染料〕
直接染料の種類は限定されないが、特に酸性染料が好ましい。酸性染料としては、「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)に定める酸性染料である赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色201号、赤色227号、赤色230号の(1)、赤色230号の(2)、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、だいだい色205号、だいだい色207号、だいだい色402号、緑色3号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、かっ色201号、黒色401号等が挙げられる。
【0028】
酸性染料以外の直接染料も、酸性染料に代えて、又は酸性染料と共に用いることができる。例えば、塩基性染料、ニトロ染料、アゾ染料、ニトロソ染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、キノリン染料、アントラキノン染料、インジゴ染料などが挙げられる。具体的には、ニトロパラフェニレンジアミン、パラニトロオルトフェニレンジアミン、パラニトロメタフェニレンジアミン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、2-アミノ-5-ニトロフェノール、ピクラミン酸、N1,N4,N4-トリス(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロパラフェニレンジアミン、4-〔(2-ニトロフェニル)アミノ〕フェノール、N1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロパラフェニレンジアミン、2,2’-〔(4-アミノ-3-ニトロフェニル)イミノ〕ビスエタノール、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロアニリン、2-〔〔2-(2-ヒドロキシエトキシ)-4-ニトロフェニル〕アミノ〕エタノール、N1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ニトロオルトフェニレンジアミンおよびそれらの塩、1,4-ジアミノアントラキノン等が例示される。
【0029】
酸性染料等の直接染料の含有量は限定されないが、染毛力確保という面からは染毛料組成物中の0.001~3質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.01~1.5質量%である。酸性染料を含有する染毛料組成物のpHは限定されないが、毛髪の等電点であるpH4.5~5.5程度よりも低い酸性域であることが好ましく、酸性染料の安定性、皮膚刺激の低減等を図りつつ良好な染毛力を実現する見地からは、2.0~3.5のpH域が特に好ましい。
【0030】
〔直接染料以外の必須成分〕
本発明の染毛料組成物は、直接染料の他に、(A)成分であるベンジルアルコール、(B)成分であるレブリン酸及び(C)成分である2価以上の多価アルコールの1種以上を必須成分とする。
(A)ベンジルアルコールの含有量は1質量%以上で7質量%未満である。より好ましくは2~6質量%である。1質量%以上であると、染毛料組成物の吐出性能及び染毛性能の維持の点から好ましく、7質量%未満であると、地肌汚れの防止の点から好ましい。
(B)レブリン酸の含有量は限定されないが、その含有量の下限値は、ベンジルアルコールの相対的減量を補償する点から好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、その含有量の上限値は、染毛料組成物の染毛性能に対する影響の点から25質量%未満が好ましく、20質量%未満が更に好ましい。
(C)2価以上の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示される。好ましい(C)成分として1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが挙げられる。(C)成分の含有量は、塗布部材付き容器の吐出不良を防止する点から1質量%以上、染毛力を低下させない点から10質量%以下とする。より好ましくは2~9質量%である。2種以上の(C)成分を併用することが好ましい。
【0031】
〔その他の好ましい成分〕
第3発明及び第4発明に関して前記したように、(D)アクリル酸系ポリマーと、(E)炭素数4以下の脂肪族1価アルコールは、本発明において好ましい成分である。
【0032】
(D)アクリル酸系ポリマーとして、前記のように、アクリル酸系モノマーであるアクリル酸、メタクリル酸、それらの塩及びそれらの誘導体の1種以上を構成単位として含むポリマーが挙げられる。また、特定のアクリル酸系モノマーのホモポリマー、2種以上のアクリル酸系モノマーのコポリマー、アクリル酸系モノマーとアクリル酸系モノマー以外のモノマーとのコポリマーも挙げられる。また、アニオン性、カチオン性及び両性のアクリル酸系ポリマーが特に限定なく含まれる。
アクリル酸系ポリマーの具体例として、例えば以下のものが挙げられる。
(ア)アクリル酸Na・アクリロイルジメチルタウリンNa共重合体
(イ)アクリル酸・ジアリル4級アンモニウム塩共重合体(例えば、アクリル酸・ジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体:ポリクオタニウム-22)
(ウ)アクリル酸・ジアリル4級アンモニウム塩・アクリルアミド共重合体(例えば、アクリル酸・ジメチルジアリルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体:ポリクオタニウム-39)
(エ)アクリル酸・アクリル酸メチル・塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム共重合体
(オ)ホモポリマーであるアクリル酸系ポリマーとして、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウムなど
【0033】
染毛料組成物における(D)成分の含有量は特段に限定されず、適宜に設定できるが、例えば0.3~3質量%の範囲内とすることができる。より好ましくは0.8~2.5質量%の範囲内、特に好ましくは1.2~2質量%の範囲内である。
【0034】
(A)成分や(D)成分の溶剤である(E)炭素数4以下の脂肪族1価アルコールとしては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、イソブタノールが例示される。好ましい(E)成分としてエタノールが挙げられる。(E)成分の含有量は限定されないが、前記(A)成分との含有量の質量比(E)/(A)が1.5~5の範囲内であることが好ましく、2~3の範囲内であることが、より好ましい。
【0035】
〔染毛料組成物の任意成分〕
本発明の染毛料組成物は、上記した必須成分及び有効成分の他に、以下の成分を任意に含有することができる。これらの成分の含有量は、必要に応じて適宜に決定することができる。
【0036】
(界面活性剤)
本発明の染毛料組成物は、界面活性剤を含有しても良いし、含有しなくても良い。界面活性剤を含有する場合、その種類は限定されず、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上を適宜に含有できる。1種以上の界面活性剤を含有する場合の合計含有量は1質量%未満であり、より好ましくは0.6質量%以下である。
【0037】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、「POE」という)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル、POEノニルフェニルエーテルやPOEオクチルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル、モノオレイン酸POEソルビタンやモノステアリン酸POEソルビタン等のPOEソルビタン脂肪酸エステル、モノステアリン酸POEグリセリンやモノミリスチン酸POEグリセリン等のPOEグリセリルモノ脂肪酸エステル、テトラオレイン酸POEソルビットやモノラウリン酸POEソルビット等のPOEソルビトール脂肪酸エステル、モノオレイン酸ポリエチレングリコールやモノステアリン酸ポリエチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル、各種の高級脂肪酸グリセリンエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ラノリン誘導体、ヒマシ油/硬化ヒマシ油誘導体、アルキロールアミド、ショ糖脂肪酸エステル等が例示される。
【0038】
カチオン界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(ベヘントリモニウムクロリド)、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が例示される。
【0039】
アニオン界面活性剤としては、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEステアリルエーテル硫酸ジエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸ナトリウム、POEオレイルエーテルリン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ラウロイルサルコシンナトリウム、オレイン酸やステアリン酸等のナトリウム塩やカリウム塩等が例示される。
【0040】
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルベタインナトリウム液、ヤシ油アルキルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等が例示される。
【0041】
(その他の任意的配合成分)
本発明の染毛料組成物は、その効果を阻害しない限りにおいて、前記(A)、(C)、(E)の各成分に該当しない有機溶剤や油性成分、前記(B)成分以外の酸、前記(D)成分以外のポリマー、増粘剤、アミノ酸類、糖類、安息香酸ナトリウム等の防腐成分、EDTA-2Naやヒドロキシエタンジホスホン酸等のキレート成分、アセトアニリド、フェノキシエタノール等の安定成分、酸化防止剤、植物又は生薬の抽出物、ビタミン類、香料等を任意に含有できる。
【0042】
上記有機溶剤としては、N-メチルピロリドンやN-エチルピロリドン等のN-アルキルピロリドンが例示される。
【0043】
上記油性成分としては、シリコーン類、高級アルコール、油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステルが例示される。
【0044】
上記シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコノール)、高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーンが例示される。
【0045】
上記高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ベヘニルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、2-ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、ラノリンアルコールが例示される。
【0046】
上記油脂としては、ラノリン、オリーブ油、ツバキ油が例示される。
【0047】
上記ロウとしては、ミツロウ、キャンデリラロウが例示される。
【0048】
上記炭化水素としては、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、マイクロクリスタリンワックスが例示される。
【0049】
上記高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸が例示される。
【0050】
上記アルキルグリセリルエーテルとしては、バチルアルコール、キミルアルコールが例示される。
【0051】
上記エステルとしては、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリルが例示される。
【0052】
(B)成分以外の酸としては、有機酸である酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、ピロリドンカルボン酸等が例示され、無機酸である塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、炭酸等も例示される。それらの酸の塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩等が例示される。
【0053】
(D)成分以外のポリマーとしては、天然系高分子、半合成系高分子、合成系高分子が例示される。
【0054】
上記天然系高分子としては、アラビアガム、カラギーナン、グアーガム、マンナン、デンプン、キサンタンガム、デキストランが例示される。
【0055】
上記半合成系高分子としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、デンプンリン酸エステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸が例示される。
【0056】
上記合成系高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-酢酸ビニル(VP/VA)コポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピロリジニウムが例示される。
【0057】
〔染毛料容器〕
本発明の染毛料組成物に用いる染毛料容器の構成は限定されないが、外容器で保護された内容器の内部に染毛料組成物を収容し、内容器の吐出部には櫛状又は毛束状の塗布部材を備え、吐出した染毛料組成物を塗布部材を利用してそのまま毛髪に塗布できる染毛料容器、即ち前記「塗布部材付き容器」が好ましい。
また、この染毛料容器には、チューブ入りの染毛料組成物を手を使って絞り出す方式のものも含まれる。
以下に、塗布部材付き容器の一例を
図1に基づいて説明する。この染毛料容器(塗布部材付き容器)の構成と動作メカニズムは基本的に公知であり、本発明の効果と直接に関係しないため、詳しい説明は省略する。
【0058】
図1に外観を示す染毛料容器1は、外容器2の内部に染毛料組成物を収容した内容器(図示省略)を備えている。外容器2の上端部には扁平で幅広の形状の吐出部3が形成され、吐出部3の頂端部には前記扁平形状に沿って櫛状の塗布部材4が構成されている。内容器と塗布部材4は、開閉可能なバルブ機構を介在させた流路(図示省略)により空間的に連通されている。
そして、染毛料容器1の底部に設けたピストンボタン(図示省略)を染毛料容器1の内部方向へ押し込むと、所定の動作メカニズムに基づいて上記バルブが開弁され、内容器に収容された染毛料組成物の一部が流路を通過して櫛状の塗布部材4に吐出される。こうして吐出された染毛料組成物を、塗布部材4を用いて毛髪に適用する訳である。
【0059】
なお、染毛料容器1は一定の期間にわたって断続的に使用されるから、非使用時には塗布部材4を覆うキャップ5(想像線で示す)を装着する。しかし、キャップ5を装着しない場合はもちろん、キャップ5を装着した状態でも、塗布部材4に付着し、又は塗布部材4への吐出口部分に残留した使い残しの染毛料組成物はキャップ5内部の空気から遮断されていないので、経時的に固まってしまい、次回使用時の吐出不良を起こす恐れがある。本発明の染毛料組成物はこのような不具合を防止できる。
【実施例】
【0060】
次に、本発明の染毛料組成物の実施例及び比較例について具体的に説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施例及び比較例によって限定されない。
【0061】
〔染毛料組成物の調製〕
表1に組成を示す実施例1~8、比較例1~4の酸性染毛料組成物を常法に従って調製した。表1の成分の欄に示す各成分の内、本発明の(A)成分~(E)成分であるものについては、それぞれ左側の欄外に「A」~「E」と表記した。また、「d」と表記した成分は(D)成分に対する比較用の成分であることを示す。表1において含有量を示す数値は酸性染毛料組成物中の質量%を意味する。
【0062】
次に、表1の成分の欄に「pH」と表記した項目は、各実施例、比較例に係る酸性染毛料組成物を精製水で10倍に希釈して、HORIBA製のpH測定計「pH METER F-52」を用いて測定したpHの値を示す。
【0063】
また、表1の成分の欄に「E/A」と表記した項目は、各実施例、比較例に係る酸性染毛料組成物における(A)成分の含有量に対する(E)成分の含有量の質量比(E)/(A)の数値を示す。
【0064】
〔染毛料組成物の評価〕
上記のようにして調製した各実施例、比較例に係る酸性染毛料組成物について、それぞれ「吐出性」、「地肌汚れ」、「染毛性能」の3項目を下記の評価方法によって評価し、かつ下記の評価基準で評価ランクを決定した。
【0065】
(吐出性)
各実施例、比較例に係る酸性染毛料組成物を
図1に示す染毛料容器1に充填した。充填後、塗布部材4のクシ部分に組成物が出るまで空打ちし、出てきた組成物を毛束などで拭き取って、実際の「使用後」の状態にした。そしてキャップ5を外した状態で40℃の恒温槽中に3日間放置した後、恒温槽から取り出して室温下に戻し、再度クシ部分からの吐出を試みて、その様子を観察した。
【0066】
吐出性の評価基準としては、吐出不良を生じなかった場合の評価ランクを「◎」、出し始めは吐出に僅かに偏りがあったが、吐出を繰り返すと偏りがなくなった場合の評価ランクを「○」、吐出に偏りがあり、吐出を繰り返しても部分的にしか吐出できなかった場合を「×」と評価した。その評価結果を表1の「吐出性」の欄に表記した。
なお、吐出の「偏り」とは、クシ部分の一部に吐出不良が起こり、クシの全長にわたる組成物の均等な吐出ができない状態を言う。
【0067】
(地肌汚れ)
各実施例、比較例に係る酸性染毛料組成物を実験者の前腕内側に1cm程度の直径の円形に薄く塗布してから10分間放置し、次いで水洗の後、シャンプー及び水洗を2サイクル行った時点で地肌汚れの評価を行った。
【0068】
地肌汚れの評価基準として、地肌汚れの防止が良好と認められる場合の評価ランクを「○」、地肌汚れの防止が不良と認められる場合の評価ランクを「×」と評価した。その評価結果を表1の「地肌汚れ」の欄に表記した。
【0069】
(染毛性能)
各実施例、比較例に係る酸性染毛料組成物について、ビューラックス社製の30%白髪混じりの黒髪の毛束及び白髪の毛束を用いて染毛性能を評価した。
即ち、これらの乾いた毛束に、毛束重量の2倍量の酸性染毛料組成物を刷毛を用いて塗布し、30℃の温度下に10分間放置した。次いで水洗し、シャンプー及びトリートメントを行い、タオルドライの後、ドライヤーにて乾燥させて仕上げた。仕上がり後の毛束を目視観察し、上記2種類の毛束における評価を総合して染毛性能を評価した。
【0070】
染毛性能の評価基準としては、染毛性能が優秀である場合の評価ランクを「◎」、染毛性能が良好である場合の評価ランクを「○」、染毛性能が劣る場合の評価ランクを「△」、染毛性能が顕著に劣る場合の評価ランクを「×」と評価した。その評価結果を表1の「染毛性能」の欄に表記した。
【0071】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、染毛性能の向上と地肌汚れの防止の両立という課題に加え、櫛状又は毛束状の塗布部材付き容器を用いて毛髪に適用する場合における染毛料の吐出不良の防止という新規な課題も解決できる染毛料組成物が提供される。