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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】自己免疫および多発性硬化症の処置
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/20 20160101AFI20220209BHJP
   A61K 31/223 20060101ALI20220209BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220209BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
A23L33/20
A61K31/223
A61P37/06
A61P29/00
A61K38/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020020901
(22)【出願日】2020-02-10
(62)【分割の表示】P 2016559645の分割
【原出願日】2015-04-02
(65)【公開番号】P2020096620
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】61/974,189
(32)【優先日】2014-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515333798
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ サザン カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】University of Southern California
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロンゴ,ヴァルター ディー.
(72)【発明者】
【氏名】チェ,イン ヨン
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特許第6727130(JP,B2)
【文献】国際公開第2014/153416(WO,A1)
【文献】Antioxidants and Redox Signaling,2013年12月20日,Vol. 19, No. 18,p. 2286-2334
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 31/00-33/29
A61K 38/00
A61K 31/223
A61P 37/06
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において乏突起膠細胞を再生させるためのキットであって、前記キットが:
第1日乃至第5日の期間、前記対象に提供する断食もどき食であって、
(i)第1日用の断食もどき食であって、前記対象の体重1ポンドあたり4.5~7キロカロリーを提供し、100g未満の炭水化物、1日あたり30g未満の糖、1日あたり28g未満のタンパク質/アミノ酸、1日あたり20~30gの一価不飽和脂肪、1日あたり6~10gの多価不飽和脂肪、および、1日あたり2~12gの飽和脂肪を含む第1日用の断食もどき食;および
(ii)第2日乃至第5日用の断食もどき食であって、前記対象の体重1ポンドあたり3~5キロカロリーを提供し、100g未満の炭水化物、1日あたり20g未満の糖、1日あたり18g未満のタンパク質/アミノ酸、1日あたり10~15gの一価不飽和脂肪、1日あたり3~5gの多価不飽和脂肪、および、1日あたり1~6gの飽和脂肪を含む第2日乃至第5日用の断食もどき食
を具える断食もどき食
を具えることを特徴とするキット。
【請求項2】
対象において乏突起膠細胞を再生させるためのキットであって、前記キットが:
第1日乃至第4日の期間、前記対象に提供する断食もどき食であって、
(i)第1日用の断食もどき食であって、前記対象の体重1ポンドあたり4.5~7キロカロリーを提供し、100g未満の炭水化物、1日あたり25g未満の糖、1日あたり23g未満のタンパク質/アミノ酸、1日あたり16~25gの一価不飽和脂肪、1日あたり4.8~8gの多価不飽和脂肪、および、1日あたり1~10gの飽和脂肪を含む第1日用の断食もどき食;および
(ii)第2日乃至第4日用の断食もどき食であって、前記対象の体重1ポンドあたり2.4~4キロカロリーを提供し、100g未満の炭水化物、1日あたり16g未満の糖、1日あたり15g未満のタンパク質/アミノ酸、1日あたり8~12gの一価不飽和脂肪、1日あたり2~4gの多価不飽和脂肪、および、1日あたり1~6gの飽和脂肪を含む第2日乃至第4日用の断食もどき食
を具える断食もどき食
を具えることを特徴とするキット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のキットにおいて、前記断食もどき食が、前記対象の標準的なカロリー摂取量の60%未満を提供することを特徴とするキット。
【請求項4】
請求項1または2に記載のキットにおいて、前記断食もどき食が、ケトジェニック食であることを特徴とするキット。
【請求項5】
請求項1または2に記載のキットにおいて、前記断食もどき食が、前記対象に周期的に投与されることを特徴とするキット。
【請求項6】
請求項1または2に記載のキットにおいて、前記断食もどき食が、4~16週の時間間隔で前記対象に投与されることを特徴とするキット。
【請求項7】
請求項1または2に記載のキットにおいて、前記断食もどき食が、ビタミン、ミネラル、および必須脂肪酸の1日あたり推奨栄養所要量(RD)の100%を含むことを特徴とするキット。
【請求項8】
請求項1または2に記載のキットにおいて、前記対象が哺乳類であることを特徴とするキット。
【請求項9】
請求項1または2に記載のキットにおいて、前記対象がヒトであることを特徴とするキット。
【請求項10】
請求項1または2に記載のキットにおいて、前記対象が多発性硬化症を有することを特徴とするキット。
【請求項11】
請求項1または2に記載のキットにおいて、前記対象がI型糖尿病を有することを特徴とするキット。
【請求項12】
請求項1、3乃至11の何れか1項に記載のキットにおいて、
前記第1日乃至第5日の期間に続いて第2の所定期間、前記対象に投与する非断食食であって、前記対象に標準的なカロリー摂取量を提供し、前記第2の所定期間が1日以上または60日以下である非断食食
をさらに具えることを特徴とするキット。
【請求項13】
請求項2乃至11の何れか1項に記載のキットにおいて、
前記第1日乃至第4日の期間に続いて第2の所定期間、前記対象に投与する非断食食であって、前記対象に標準的なカロリー摂取量を提供し、前記第2の所定期間が1日以上または60日以下である非断食食
をさらに具えることを特徴とするキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年4月2日出願の米国仮特許出願第61/974,189号明細書の利益を主張する。この開示は、その全体が引用を以って本明細書中に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)/国立老化研究所(National Institute of Aging)によって授与された契約番号PO1AGT034906の下に、政府支援を受けてなされた。政府は、本発明に対して、一定の権利を有する。
【0003】
少なくとも1つの態様において、本発明は、多発性硬化症、I型糖尿病、および他の自己免疫疾患/炎症性疾患を処置し、かつ回復に向かわせる(reversing)ための、そして自己免疫および炎症を緩和する、予防する、または回復に向かわせること、かつ病変部位での再生を促進することによって、疾患の再発を部分的に予防するための食事処方(dietary formulation)および方法の同定に関する。
【背景技術】
【0004】
自己免疫疾患は、正常な組織が異常な免疫応答によって損傷を受ける病気のクラスである。Tリンパ球集団が、多くの自己免疫疾患/慢性炎症性疾患の免疫病因において重大な役割を果たす。反応性CD4T細胞と細胞障害性CD8T細胞の双方、および関連するサイトカインが、重要なことに、多発性硬化症、1型糖尿病、HIV、慢性関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、パーキンソン病、過敏性大腸症候群、喘息、および肝炎が挙げられる主要な自己免疫疾患/慢性炎症性疾患の病因に寄与することが示されてきた。
【0005】
これらの自己免疫疾患/炎症性疾患は、多くの場合、対象自身の細胞型のT細胞介在性の攻撃によって生じるが、細胞、組織および臓器に損傷を直接引き起こし得る、TNFおよびインターロイキンが挙げられる種々のサイトカインも関与することがある。自己免疫を調節し得る抗体、ワクチン、サイトカイン、化学物質、および幹細胞移植が、T細胞介在性の自己免疫疾患および慢性炎症性疾患を処置するための潜在的治療法として考えられてきた。しかしながら、従来の治療に関連した、静脈内(IV)投与の不便、ならびに高いコストおよび有害な事象(貧血、好中球減少、および血小板減少が挙げられる)は、第一選択薬(first-line medication)としてのそれらの広い利用を妨げている。
【0006】
多発性硬化症は、異常な炎症反応、慢性的な脱ミエリン化、および軸索喪失を伴う中心神経系(CNS)の自己免疫疾患である。MS病変は、内在性乏突起膠細胞前駆細胞(OPC)によって修復され得るが、殆どの場合、ミエリン再形成が起こらない、または不十分であり、慢性的な身体障害の原因となる。現在のMS処置は、殆どの場合、CNSミエリンの再生における、そして、疾患症候および損傷作用の回復における効果が微小である免疫抑制薬である。したがって、免疫抑制効果だけでなくミエリン再形成も促進する治療法の開発が、MS処置において、また、免疫細胞またはサイトカインが特異的な組織の損傷に関与する、1型糖尿病、HIV、慢性関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、パーキンソン病、過敏性大腸症候群、喘息、および肝炎が挙げられる種々の自己免疫疾患および炎症性疾患において、重要な進歩を表すであろう。
【0007】
したがって、自己免疫疾患および炎症性疾患、特に多発性硬化症を処置する方法の向上が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、少なくとも1つの実施形態において、自己免疫および炎症を部分的に緩和する/予防する/回復に向かわせることによって、かつ再生を部分的に促進することによって、自己免疫疾患の症候を軽減し、かつ/または自己免疫疾患を処置する方法を提供することによって、先行技術の1つまたは複数の問題を解決する。本方法は、自己免疫疾患または炎症性疾患を有する対象を同定するステップを含む。断食もどき食(fasting mimicking diet)が、第1の所定期間、対象に投与される。断食もどき食は、カロリー制限食および/またはケトジェニック食であり、典型的にはタンパク質/アミノ酸および炭水化物が制限されるが、別のやり方で高い微量栄養素を提供するものである。非断食食が、第1の期間に続いて第2の期間、対象に投与される。非断食食は、正常かつ健康な体重に戻るのに必須の標準的な、またはなお一層高められたカロリー摂取量を、対象に提供する。
【0009】
別の実施形態において、多発性硬化症もしくは別の自己免疫疾患/炎症性疾患の症候を軽減し、かつ/または多発性硬化症もしくは別の自己免疫疾患/炎症性疾患を処置する方法が提供される。本方法は、多発性硬化症または別の自己免疫疾患/炎症性疾患を有する対象を同定するステップを含む。断食もどき食が、第1の所定期間、対象に投与される、断食もどき食。断食もどき食は、カロリー制限食および/またはケトジェニック食であり、典型的にはタンパク質および炭水化物が制限される。非断食食が、第1の期間に続いて第2の期間、対象に投与される。非断食食は、正常かつ健康な体重に戻るのに必須の標準的な、またはなお一層高められたカロリー摂取量を、対象に提供する。
【0010】
さらに別の実施形態において、T細胞もしくはサイトカイン介在性疾患の症候を軽減し、かつ/またはT細胞もしくはサイトカイン介在性疾患を処置する方法が提供される。本方法は、T細胞またはサイトカイン介在性疾患を有する対象を同定するステップを含む。断食もどき食が、第1の所定期間、対象に投与される。断食もどき食は、カロリー制限食および/またはケトジェニック食であり、典型的には、タンパク質/アミノ酸および炭水化物が制限されるが、別のやり方で高い微量栄養素を提供するものである。非断食食が、第1の期間に続いて第2の期間、対象に投与される。非断食食は、正常かつ健康な体重に戻るのに必須の標準的な、またはなお一層高められたカロリー摂取量を、対象に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、主要な自己免疫疾患および慢性炎症性疾患を処置するための治療標的としてのFMD改変T細胞集団およびサイトカインを示す表1を提供する。
図2図2は、MOG35~55誘導EAE MSマウスモデルの断食もどき食(FMD)処置済みマウスの平均臨床EAE重篤度スコアを示す棒グラフである。
図3図3は、膵臓組織の蛍光染色を示し、膵臓浸潤T細胞(CD3+)がFMDのサイクルによって非常に減らされることが観察されたことを実証している。
図4図4は、FMDが、パイロットヒト試験において、循環C反応性タンパク質のレベルを引き下げる(p<0.05;n=5)ことを示す棒グラフである。
図5図5は、FMDが、パイロットヒト試験において、循環コルチゾールのレベルを増大させる(p<0.05;n=5)ことを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の現在好ましい組成物、実施形態および方法に詳細に言及することとする。図は、必ずしも一定の比率であるわけではない。開示される実施形態は単に、種々の、そして代替の形態で実現されてもよい、本発明の例示である。したがって、本明細書中に開示される具体的な詳細は、限定として解釈されるべきでなく、単に、本発明の任意の態様についての代表的なベースとして、かつ/または本発明を様々に使用する当業者に教示するための代表的なベースとして解釈されるべきである。
【0013】
例示を除き、または特に明示的に示されない限り、材料の量、または反応および/もしくは使用の条件を示す本記載における全ての数値量が、本発明の最も広い範囲を記載する際の文言「約」によって修飾されると理解されるべきである。述べられる数的限界内での実行が概して好ましい。また、明示的に矛盾して述べられない限り:パーセント、「の部」、および比率の値は、重量による;本発明に関連する所与の目的に適切な、または好ましい材料のグループまたはクラスの記載は、グループまたはクラスのメンバーの何れか2つ以上の混合物が、等しく適切である、または好ましいことを意味する;化学用語における成分の記載は、記載において特定されるあらゆる組合せへの付加時の成分に言及するが、一旦混合された混合物の成分間の化学相互作用を必ずしも排除するわけではない;頭字語または他の略語の最初の定義は、同じ略語の本明細書中の以降の全ての使用に当てはまり、そして、必要な修正をして、最初に定義された略語の標準的な文法上の変形に当てはまる;そして、明示的に矛盾して述べられない限り、性質の測定値は、同じ性質について以前に、または後に引用されるのと同じ技術によって判定される。
【0014】
勿論、特定の構成要素および/または条件が変化してよいので、本発明は、以下に記載される特定の実施形態および方法に限定されない。さらに、本明細書中で用いられる専門用語は、本発明の特定の実施形態を説明する目的で用いられるだけであり、いかなる形であれ限定することは意図されない。
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかな別段の指示がない限り、複数の指示物を含む。例えば、単数の構成要素への言及は、複数の構成要素を含むことが意図される。
【0016】
用語「キロカロリー」(kcal)および「大カロリー(Calorie)」は、食物カロリーを指す。用語「カロリー(calorie)」は、いわゆる小カロリーを指す。
【0017】
用語「対象」は、ヒト、または全ての哺乳類、例えば霊長類(特により高等な霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、およびウシが挙げられる動物を指す。
【0018】
「断食もどき食」は、カロリー制限食を対象に提供する食事を意味し、断食によって引き起こされる変化に類似する、グルコース、ケトン体、IGF-1、およびIGFBP1の変化を生じさせるように処方されるが、高栄養を提供して飢えを最小にすることが可能である。
【0019】
略語:
「AL」はアドリブを意味する。
「DAPI」は、蛍光染色である4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドールを意味する。
「EAE」は、実験的自己免疫性脳脊髄炎を意味する。
「FMD」は、断食もどき食を意味する。
「KB」は、ケトン体を意味する。
「KD」は、ケトジェニック食を意味する。
「MOG35~55」は、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質を意味する。
「MS」は、多発性硬化症を意味する。
「STZ」は、ストレプトゾトシンを意味する。
【0020】
実施形態として、自己免疫および炎症を部分的に緩和する/予防する/回復に向かわせることによって、かつ再生を部分的に促進することによって、自己免疫疾患または炎症性疾患の症候を軽減する方法が提供される。本方法は、自己免疫疾患または炎症性疾患を有する対象を同定するステップを含む。断食もどき食が、第1の所定期間、対象に投与される。一変形において、FMD食は、対象のIGF-Iの血清中濃度を25~90%、そして血中グルコース濃度を25~75%引き下げる。本発明において用いられ得るFMD食の例が、米国特許出願第14/060494号明細書および米国特許出願第14/178953号明細書において見出される;これらの全開示は、引用を以って本明細書中に組み込まれる。一改良において、断食もどき食は、対象の標準的なカロリー摂取量の60%未満を提供し、タンパク質/アミノ酸および炭水化物が制限される。一改良において、断食もどき食は、1日あたり100グラム未満の炭水化物および30g未満の糖、ならびに1日あたり28g未満のタンパク質/アミノ酸を提供する。別の改良において、断食もどき食は、本明細書中に説明されるように、カロリー制限の有無に拘らないケトジェニック食である。有用なケトジェニック食は、1日の総カロリー摂取量のうち、脂肪を52.4~82.4%、炭水化物を10~16.6%、そしてタンパク質を8~15%提供することとなる。
【0021】
変形において、非断食食は、以下に説明されるように、第1の期間の後、第2の期間、対象に投与される。一部の改良において、非断食食は、正常かつ健康な体重に戻るのに必須の標準的な、またはなお一層高められたカロリー摂取量を、対象に提供する。本発明の方法は、自己免疫疾患で苦しむあらゆる対象、特にヒトおよび他の哺乳類を処置するのに有用である。標準的なカロリー摂取量は、対象が対象の体重を維持するために消費するカロリー数である。典型的には、標準的なカロリー摂取量は、1日あたり約1600~2400大カロリー(すなわち、キロカロリー)である。改良において、標準的なカロリー摂取量は、1800~2200キロカロリーである。
【0022】
変形において、本発明の方法は、対象において、自己免疫疾患および慢性炎症性疾患が挙げられるT細胞介在性疾患を処置するために用いられる。この変形において、本方法は、T細胞介在性疾患を有する対象を同定するステップを含む。断食もどき食が、第1の所定期間、対象に投与され、断食もどき食は、対象の標準的なカロリー摂取量の60%未満を提供し、タンパク質および炭水化物が制限される。改良において、断食もどき食は、100グラム未満の炭水化物を提供し、1日あたりの糖が30g未満、そして1日あたりのタンパク質/アミノ酸が28g未満である。更なる改良において、断食もどき食は、1日あたり20g未満の糖を提供する。これらの改良のそれぞれにおいて、カロリーの収支は、脂肪由来である。変形において、非断食食が、以下でより詳細に説明されるように、第1の期間に続いて第2の期間、対象に投与される。改良において、本方法は、病原性T細胞の数および循環サイトカインのレベルを変更して、自己免疫傷害の重篤度を軽減し、かつ、EAE誘導多発性硬化症(MS)が挙げられる炎症性疾患と非常に関連するマーカーを、そしてSTZ誘導1型糖尿病(T1D)マウスモデルにおけるマーカーを引き下げる。例えば、本方法は、CD4T細胞およびCD8T細胞の数を少なくとも20パーセント、そして循環サイトカインのレベルを少なくとも20重量パーセント減少させることができる。一部の改良において、本方法は、CD4T細胞およびCD8T細胞の数を少なくとも30パーセント、40パーセント、または50パーセント減少させることができる。他の改良において、本方法は、循環サイトカインのレベルを少なくとも30重量パーセント、40重量パーセント、または50重量パーセント減少させることができる。さらに、本方法の少なくとも一部の変形が、炎症性T細胞によって失われた、または攻撃された未分化前駆細胞および分化機能細胞の再生を刺激する。
【0023】
FMDのサイクルが、循環Tリンパ球の数、および病原性T細胞によって引き起こされる傷害を部分的に引き下げることによって、多発性硬化症および1型糖尿病等の自己免疫疾患/炎症性疾患を軽減する。FMDは、炎症性疾患と関連するマーカー、すなわちTNFアルファ、T細胞、およびC反応性タンパク質を減らす。初期要件が最小であり、かつ安全性/利益が長期にわたる、T細胞集団および炎症性マーカーに及ぼすこの高い効率、広い効果により、本発明の方法は、生物学的療法および薬物療法に関わる治療法が挙げられる、種々のタイプの治療法に組み込まれ得る。全体として、FMDは、自己免疫疾患/炎症性疾患の予防と処置の双方における大きな潜在性を提示する(ここで示される様々な、しかし類似の疾患:1型糖尿病、多発性硬化症、および炎症性皮膚炎でここに実証される);したがって、FMD処置は、他の自己免疫疾患/炎症性疾患の処置に広く適用可能である。FMD処置は、侵襲的アプローチを必要とせずに、T細胞集団を直接的に調節して、かつ/またはサイトカインを間接的に変えて、炎症性自己免疫傷害を改善し得るようにして、従来の免疫調節アプローチに利益をもたらし得る。ここで、発明者らは、断食を模倣する一方で栄養失調を予防することが可能な特異的な栄養分の制限の、集中的であるが短い形態としての断食もどき食(FMD)が、大多数の自己免疫の重要な治療標的であるT細胞集団の数値的プロフィールおよび機能的プロフィール、ならびに循環サイトカインのレベルを変更することができ、かつ炎症性疾患と関連するマーカーを引き下げることを示す(表1)。表1は、本発明の方法で処置され得る疾患および症状の例を提供する。また、FMDは、MSおよびI型糖尿病モデルにおける乏突起膠細胞の再生を促進することも実証される。FMDのサイクルがまた、前駆細胞(乏突起膠細胞前駆細胞)の、機能細胞型(乏突起膠細胞)の増大に至る分化を促進することによって、MSにおける乏突起膠細胞の再生を増大させる。FMDは、120時間の断食に好ましい。なぜなら、遵守の低さおよび栄養失調の副作用により、ヒト対象が首尾よく断食することが極めて困難であるからである。好都合にも、本発明は代用食を用い、これは、免疫系を再調節して再生を促進する際に、断食条件の有益な効果に干渉することなく、微量栄養素を最大にする。
【0024】
少なくとも1つの実施形態において、多発性硬化症(MS)の症候の再発を処置し、軽減し、かつ予防する方法が提供される。本方法は、多発性硬化症の診断がされた、または多発性硬化症の1つもしくは複数の症候を示す対象を同定するステップを含む。多発性硬化症の症候の例として、限定されないが、神経機能障害(例えば、自律神経機能障害、視力障害、運動機能障害、および感覚機能障害)、筋力低下、筋痙攣、鬱病、気分変動、神経系の病変(例えば、強膜(sclera))、脱ミエリン化その他が挙げられる。対象は、本明細書中で説明されるように、多発性硬化症の症候を処置または軽減するために、断食もどき食(FMD)が周期的に投与される。例えば、改良において、断食もどき食は、対象の標準的なカロリー摂取量の60%未満を提供し、タンパク質/アミノ酸および炭水化物が制限される。更なる改良において、断食もどき食は、1日あたり100グラム未満の炭水化物および30g未満の糖、ならびに1日あたり28g未満のタンパク質/アミノ酸を提供する。別の改良において、断食もどき食は、本明細書中で説明されるように、カロリー制限の有無に拘らないケトジェニック食である。有用なケトジェニック食は、1日の総カロリー摂取量のうち、52.4~82.4%の脂肪、10~16.6%の炭水化物、および8~15%のタンパク質を提供することとなる。
【0025】
先に説明される本方法の変形において、断食もどき食は、対象の標準的なカロリー摂取量の80パーセント、70パーセント、60パーセント、50パーセント、45パーセント、40パーセント、または35パーセント未満を対象に提供する。さらに他の改良において、断食もどき食は、好ましさの増す順に、対象の標準的なカロリー摂取量の10%、20%、25%、または30%超を対象に提供する。改良において、FMDは、第1の所定期間投与される。典型的には、断食もどき食は、1日あたり30g未満の糖、1日あたり28g未満のタンパク質、1日あたり20~30グラムの一価不飽和脂肪、1日あたり6~10gの多価不飽和脂肪、および1日あたり2~12gの飽和脂肪を対象に提供する。改良において、断食もどき食は、25g未満の糖、23g未満のタンパク質、16~25グラムの一価不飽和脂肪、4.8~8gの多価不飽和脂肪、および1~10gの飽和脂肪を提供する。別の改良において、断食もどき食は、1日あたり20g未満の糖、1日あたり18g未満のタンパク質、1日あたり10~15gの一価不飽和脂肪、1日あたり3~5gの多価不飽和脂肪、および1日あたり1~6グラムの飽和脂肪を対象に提供する。さらに別の改良において、断食もどき食は、16g未満の糖、15g未満のタンパク質、8~12gの一価不飽和脂肪、ならびに2~4gの多価不飽和脂肪および1~6グラムの飽和脂肪を提供する。典型的には、断食もどき食は、ビタミン、ミネラル、および必須脂肪酸について、1日あたり推奨栄養所要量(RD)の100%を提供する。
【0026】
先に説明される方法の変形において、第1の期間は、3から30日である。先に説明される方法の別の変形において、第1の期間は、3から7日である。改良において、第1の期間は、約1、2、3、4、5、6、または7日である。先に説明される方法の別の変形において、第1の期間は、3から7日である。改良において、第1の期間は、約1、2、3、4、5、6、または7日である。更なる改良において、第1の期間は、約5日である。典型的には、断食もどき食は、対象に周期的に投与される。一変形において、断食もどき食は、4~16週の時間間隔で、対象に投与される。別の変形において、断食もどき食は、2~4週の時間間隔で、対象に投与されてよい。変形において、対象は、断食もどき食の1日目に、対象の1ポンドあたり4.5~7キロカロリーが提供される。改良において、対象は、断食もどき食の1日目に、対象の1ポンドあたり3.5~5キロカロリーが提供される。この変形の断食もどき食の2~5日間に、対象は、対象の体重の1ポンドあたり3~5キロカロリーが提供される。14。断食もどき食が4日間投与される場合の変形において、断食もどき食は、2~4日間で、対象の1ポンドあたり2.4から4キロカロリーを提供する。
【0027】
先に説明される方法の変形において、FMDは、対象が正常な体重を取り戻すことができるように、非断食食(非FD)と交替する。典型的には、非FDは、FMDのサイクルの完了後日に投与される。改良において、非FDは、FMDのサイクルの完了1~7日(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日)後に投与される。非FD食は、標準的なカロリー摂取量を対象に提供する。非FDは、第2の期間投与される。典型的には、第2の期間は、1日から55日である。改良において、第2の期間は、好ましさの増す順に、1日、3日、7日、14日、または20日以上である。別の改良において、第2の期間は、1日から55日である。改良において、第2の期間は、好ましさの増す順に、60日、50日、40日、30日、または25日以下である。変形において、FMDおよび非FDは、処置の期間にわたって、2~4週毎に対象に投与される。別の変形において、FMDおよび非FDは、処置の期間にわたって、2~8週毎に対象に投与される。処置の期間は、典型的には、1ヵ月から数年、または対象の寿命の間である。
【0028】
以下の断食もどき食(FMD)および方法は、効果的に多発性硬化症を処置し、かつ多発性硬化症の再発を予防する-寛解するのに必要とされるであろう。これらは、標準的な/アドリブの摂取量ならびに多量養素および微量養素組成と比較した(標準組成と比較した)カロリー摂取量に基づいて、マウスの食事(図参照)から推測することによって、かつ、マウスの食事に類似するグルコース、ケトン体、IGF-IレベルおよびIGFBP-1レベルの濃度の倍変化レンジ(fold change range)に達し、そして抗炎症コルチコステロイドおよび炎症性マーカーに影響を及ぼす、継続中の臨床試験由来のヒトデータを用いることによって、開発された。
【0029】
以下の例は、本発明の種々の実施形態を示す。当業者であれば、本発明の精神および特許請求の範囲内にある多くの変形物を理解するであろう。
【0030】
代用食を、以下に説明する実験において、マウス用にスケーリングする。自己免疫疾患/炎症性疾患を処置し、かつ回復に向かわせるために、食事1または食事2の何れかを対象に与えてよく、サイクルの頻度は、正常な体重を取り戻す対象の能力および/または健康な体重(少なくとも18以上のBMI)とすべき医師の推奨に基づいて、決定するべきである。
【0031】
FMDサイクルが、グルコースおよび血清IGF-1レベルを減少させることが示された。血清IGF-1レベルの減少が、マウスおよびヒト中の造血幹細胞における、再生効果、ならびに幹細胞および/または前駆細胞の増大を示すバイオマーカーの1つであることが示されている(Cheng et al.,2014 Cell Stem Cell;特許出願中)。10週齢の雌C57B1/6マウスにおいて、FMDの1サイクルが、コントロールと比較して、体重を18%引き下げ、そしてグルコースレベルおよび血清IGF-1レベルを有意に引き下げた。再給餌直後に、FMDは正常な体重に回復させた。同様にして、ヒトでの進行中の臨床試験もまた、類似のFMD(ヒトに特異的な体重および他の要件について調整した)の単回サイクルが、血液グルコースレベルおよび血清IGF-Iレベルの引下げを示すことを示した。さらに、結合してIGF-1の生物学的利用能を引き下げるIGFBP-1が、単回FMDサイクル直後に有意に増大して、IGF-Iシグナリングの阻害にさらに寄与する。
【0032】
実験マウスFMDは、成分を同定した栄養スクリーンに基づき、これが低カロリー消費の期間中の高栄養を可能とする。マウスFMD食は、1日目の食事と2~3日目の食事をそれぞれこの順に給餌するように指定した2つの異なる構成要素からなる。1日目の食事は、7.87kJ/gに相当し、2~3日目の食事は、全ての給餌日で同じであり、1.51kJ/gに相当する。1日目および2~3日目の食事は、2週おきにアドリブコントロール群の平均摂取量(約4g)をFMDコホートに供給した。平均で、マウスはFMDレジメンの各日について、11.07kJ(植物ベースのタンパク質0.75kJ、炭水化物5.32kJ、脂肪5kJ)を消費した。MSおよびT1Dモデルの双方において、発明者らは、2~3日目の食事の終了後、4~7日間、アドリブでTD.7912食を供給した。FMDの持続期間およびTD.7912による再給餌の持続期間を、体重減少(≦20%)および回復(≧95%)によって調整してよい。MSモデルの場合、再給餌期間を4日に限定した。FMD食を供給する前に、動物を、フレッシュなケージ中に移して、残留食および糞食での給餌を回避した。実験マウスKDは、0.34kcal/gmのタンパク質、6.76kcal/gmの脂肪、および0.13kcal/gmの炭水化物に相当する。
【0033】
改変ヒト断食もどき食1:FMDは、対象の標準的な食事を、対象の疾患症状のタイプおよび重篤度、ならびに次のサイクルを開始する前に体重を取り戻す患者の能力に応じて、4~16週おきに5から7日の期間(下記参照)、代用することとする。体重を取り戻すことが可能な、症候がより重篤な患者は、4週おきに食事を受けることとなり、疾患がより穏やかな形態である患者は、8~16週おきに食事を受けることとなる。FMDは、一般に安全と認められる(RGAS:Generally Regarded As Safe)成分からなる。カロリーは、対象の体重に従って消費される。1日目の間の総カロリー消費は、1ポンドあたり18.8~29.2kJ(4.5~7kcal)(または1キログラムあたり42~67kJ)である。1日の食事は、100グラム未満の炭水化物を、30g未満の糖、28g未満のタンパク質/アミノ酸、20~30グラムの一価不飽和脂肪、6~10gの多価不飽和脂肪、および2~12gの飽和脂肪と共に含有するべきである。2~5または2~7日間の総カロリー消費は、1ポンドあたり12.5~20.9kJ(3~5kcal)(または1キログラムあたり29~46kJ)である。食事は、100グラム未満の炭水化物を、20g未満の糖、18g未満のタンパク質/アミノ酸、10~15gの一価不飽和脂肪、3~5gのポリ不飽和脂肪、および1~6グラムの飽和脂肪と共に含有するべきである。食事はまた、ビタミン、ミネラル+必須脂肪酸のRDAの100%を含有する高栄養であるべきである。
【0034】
改変ヒト断食もどき食2:FMDは、対象の標準的な食事を、対象の疾患症状のタイプおよび重篤度、ならびに次のサイクルを開始する前に体重を取り戻す患者の能力に応じて、4~16週おきに4日の期間(下記参照)、代用することとなる。体重を取り戻すことが可能な、症候がより重篤な患者は、2週おきに食事を受けることとなり、疾患がより穏やかな形態である患者は、4週おきに食事を受けることとなる。FMDは、一般に安全と認められる(RGAS)成分からなる。カロリーは、対象の体重に従って消費される。1日目の間の総カロリー消費は、1ポンドあたり18.8~29.2kJ(4.5~7kcal)(または1キログラムあたり42~67kJ)である。1日の食事は、100グラム未満の炭水化物を、25g未満の糖、23g未満のタンパク質/アミノ酸、16~25グラムの一価不飽和脂肪、4.8~8gの多価不飽和脂肪、および1~10gの飽和脂肪と共に含有するべきである。2~4日間の総カロリー消費は、1ポンドあたり10~16.7kJ(2.4~4kcal)(または1キログラムあたり22.2~36.8kJ)である。食事は、100グラム未満の炭水化物を、16g未満の糖、15g未満のタンパク質/アミノ酸、8~12gの一価不飽和脂肪、ならびに2~4gの多価不飽和脂肪および1~6グラムの飽和脂肪と共に含有するべきである。食事はまた、ビタミン、ミネラル+必須脂肪酸のRDAの100%を含有する高栄養であるべきである。
【0035】
改変ヒトケトジェニック食:KDは、対象の疾患症状が残存するまで、対象の標準的な食事を連続的に代用することとなる。ケトジェニック食は、大多数が一価-多価不飽和脂肪および飽和脂肪に由来する食物源を含有するべきである。簡潔に、ケトジェニック食は、1日の総カロリー摂取量のうち、脂肪を52.4~82.4%、炭水化物を10~16.6%、そしてタンパク質を8~15%含有するべきである。食事はまた、ビタミン、ミネラル、および必須脂肪酸のRDAの100%を含有する高栄養であるべきである。
【0036】
図2は、MOG35~55誘導EAE MSマウスモデルの断食もどき食(FMD)処置済みマウスの平均臨床EAE重篤度スコアを示す棒グラフを提供する。実験的自己免疫性脳脊髄炎は、ヒト多発性硬化症に最も一般的に使用される齧歯類実験モデルである。断食もどき食(FMD)の周期的サイクル(1週あたり3日のFMDおよび4日のアドリブ)は、多発性硬化症のMOG35~55誘導EAE C57Bl/6マウスモデル、ならびに自己免疫の緩和および疾患の再発の予防に治療効果を有することが示される。断食もどき食(FMD)の週毎のサイクルは、コントロール食(CTRL)と比較して、EAE重篤度スコア(0-症候が観察可能でない、そして5-瀕死)を有意に引き下げる。連続的なケトジェニック食(KD)は、コントロールと比較して、FMDの範囲までではないがEAE重篤度の引下げを示した。
【0037】
代用食のサイクルは、自己免疫疾患の症候に関連するT細胞集団およびサイトカインを減らし、そして、多発性硬化症(MS)および1型糖尿病(T1D)のマウスモデルにおける症候をインビボで軽減した。表2は、FMDが、3日のFMDの終了後、MSのマウスモデル中の脾臓CD4T細胞およびCD8T細胞を減らすことを示す結果を提供する。
【0038】
表3.FMDは、脾臓CD4 CD8T細胞を減らす。p<0.05、***p<0.01。FMDは、3日のFMDの終了後。
【0039】
【0040】
表3は、FMDが、MSのマウスモデルの脊髄病変にて、乏突起膠細胞前駆体を促進して乏突起膠細胞を分化させたことを示す。NG2を、未分化乏突起膠細胞前駆細胞のマーカーとして用いる。BrdUを、増殖のマーカーとして用いる。GSTπを、分化乏突起膠細胞のマーカーとして用いる。BrdU GSTπ細胞は、再生のマーカーとして、ミエリン形成機能乏突起膠細胞に分化する、新たに増殖した前駆細胞を示す。FMD処置は、脊髄病変におけるNG2+乏突起膠細胞前駆細胞およびGSTπ成熟乏突起膠細胞の増大を示す。前駆乏突起膠細胞および分化乏突起膠細胞の、FMDが介在した増大は、成熟乏突起膠細胞(BrdU GSTπ)に首尾よく分化した増殖(BrdU細胞)の増大によるものである。これらの変化は、病変部位での再生を実証する。
【0041】
表3.FMDは、乏突起膠細胞前駆体、および分化乏突起膠細胞を促進する。
【0042】
【0043】
図3は、膵臓組織の蛍光染色を示す。膵臓浸潤T細胞(CD3+)が、FMDのサイクルによって非常に減らされることが観察された。表4は、FMDが、STZ誘導I型糖尿病において、病原性自己免疫反応を軽減することを実証する。表4は、FMDが、β細胞傷害と関連する循環サイトカインのレベルを引き下げることを示す。
【0044】
表4.FMDは、循環細胞障害性CD8T細胞を減らす。p<0.05、***p<0.005。FMDは、4日のFMDの終了時;ポストFMDは、再給餌の3日後。
【0045】
【0046】
表4.FMDは、循環サイトカインのレベルを引き下げる。p<0.05、***p<0.005。FMDは、4日のFMDの終了時。
【0047】
【0048】
図4は、FMDが、ヒト試験において、血清CRPレベルを引き下げ、かつコルチゾールレベルを増大させることを示す棒グラフである。CRPは、炎症性疾患の主なマーカーの1つであることが知られている。FMD処置が、ヒト臨床試験におけるCRPレベルの3倍の減少を示す。
【0049】
図5は、FMDが、ヒト臨床試験において、循環コルチゾールのレベルを増大させることを示す。(p<0.05;n=5)。コルチゾールは、T細胞増殖および活性化に干渉し、かつTNFアルファが挙げられる多種多様な細胞障害性サイトカインを減少させることによって、抗炎症性であることが知られているグルココルチコイドのクラスにある。FMD処置は、ヒト臨床試験において、コントロールと比較して、コルチゾールレベルの2倍近い増大を示す。
【0050】
代用食のサイクルは、表5に要約されるように、野生型C57Bl/6マウスにおける皮膚炎発生率の2倍の減少(コントロールコホートにおける20%対FMDコホートにおける10%)を示した。
【0051】
表5.FMDは、自然皮膚炎発生率を引き下げる。p<0.05。
【0052】
【0053】
表6は、疾患誘導マウスのパーセンテージが、1型糖尿病STZ自己免疫モデルおよびMS EAE自己免疫モデルから回復した/改善を示したことを示す。
【0054】
表6.FMD食で処置したマウスにおける1型糖尿病および多発性硬化症の症候の50~100%の改善。
【0055】
【0056】
例示的な実施形態が上記されているが、これらの実施形態が、本発明の考えられる全ての形態を記載することは意図されない。むしろ、本明細書において用いられる文言は、限定ではなく説明のための文言であり、種々の変更が本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされてよいことが理解される。加えて、種々の実施形態の特徴は、本発明の更なる実施形態を形成するために組み合わされてよい。
図1
図2
図3
図4
図5