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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】レーザビーム用光学装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20220209BHJP
【FI】
B23K26/00 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021153798
(22)【出願日】2021-09-22
【審査請求日】2021-09-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146087
【氏名又は名称】株式会社松浦機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光慶
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔太
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-533176(JP,A)
【文献】特表2020-536740(JP,A)
【文献】特開平09-174274(JP,A)
【文献】特表2020-520810(JP,A)
【文献】特開2013-173176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を透過するレンズ並びに外部への透過窓及びレーザ光を反射するミラーによる光学素子を備えたレーザ用光学装置において、前記光学素子の外側周囲の加熱領域に1単位又は複数単位の電熱素子を備えると共に、各光学素子から離れ、かつレーザ光の透過を遮蔽しない位置に各放射温度計を設置し、各光学素子の作動段階において、各光学素子に備えた各加熱手段が、加熱を行う前段階において各放射温度計の表示領域における最も高い温度以上の温度にて加熱を継続する一方、光学素子の何れかが作動段階において粉塵の付着を原因として1個のピーク温度又は複数個のピーク温度が当該光学素子に対し、前記位置に設置されている放射温度計によって表示された場合、当該光学素子に備えられた加熱手段が、当該1個のピーク温度以上の温度による加熱、又は当該複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度以上の温度による加熱を、当該1個のピーク温度又は当該複数個のピーク温度の表示が消失するまで継続し、かつ当該1個のピーク温度又は複数個のピーク温度を示す表示が消失された後においても前記加熱を継続するという操作を採用しているレーザビーム用光学装置において、当該装置が、レーザビーム発振源から入射するレーザビームを透過するダイナミックフォーカスレンズ、レーザビームの透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー、及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラー、第2ミラーからテーブル面に積載されている粉末層を照射するレーザビームを透過する透過窓を備えているガルバノスキャナであって、ガルバノスキャナが、レーザビーム発振源とダイナミックフォーカスレンズとの間にコリメータレンズ、及びダイナミックフォーカスレンズと第1ミラーとの間にオブジェクトレンズを備えており、前記各レンズに対する加熱が行われていることを特徴とするレーザビーム用光学装置。
【請求項2】
レーザ光を透過するレンズ並びに外部への透過窓及びレーザ光を反射するミラーによる光学素子を備えたレーザ用光学装置において、前記光学素子の外側周囲の加熱領域に1単位又は複数単位の電熱素子を備えると共に、各光学素子から離れ、かつレーザ光の透過を遮蔽しない位置に各放射温度計を設置し、各光学素子の作動段階において、各光学素子に備えた各加熱手段が、加熱を行う前段階において各放射温度計の表示領域における最も高い温度以上の温度にて加熱を継続する一方、光学素子の何れかが作動段階において粉塵の付着を原因として1個のピーク温度又は複数個のピーク温度が当該光学素子に対し、前記位置に設置されている放射温度計によって表示された場合、当該光学素子に備えられた加熱手段が、当該1個のピーク温度以上の温度による加熱、又は当該複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度以上の温度による加熱を、当該1個のピーク温度又は当該複数個のピーク温度の表示が消失するまで継続し、かつ当該1個のピーク温度又は複数個のピーク温度を示す表示が消失された後においても前記加熱を継続するという操作を採用しているレーザビーム用光学装置において、当該装置が、レーザビーム発振源から入射するレーザビームを透過するダイナミックフォーカスレンズ、レーザビームの透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー、及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラー、第2ミラーからテーブル面に積載されている粉末層を照射するレーザビームを透過する透過窓を備えているガルバノスキャナであって、第1ミラー及び第2ミラーの外側周囲の加熱手段として電熱素子を選択し、当該電熱素子から突設している円柱部が電源と接続しているブラシとスライド自在状態にて接触していることを特徴とするレーザビーム用光学装置。
【請求項3】
1単位の加熱手段を採用した上で、1個のピーク温度又は複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度と同一温度の加熱によって放射温度計における1個又は複数個のピーク温度の表示が消失する場合には、当該1個のピーク温度又は当該最も高いピーク温度と同一温度による加熱を行い、上記同一温度では上記表示が消失しない場合には、当該1個のピーク温度又は当該最も高いピーク温度よりも更に高い温度による加熱を行うことを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載のレーザビーム用光学装置。
【請求項4】
複数単位に区分されている加熱手段を採用した上で、放射温度計の温度表示領域の外側周囲に加熱手段の区分領域に対応する区分領域を設定し、かつ1個のピーク温度又は複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度を呈している部位に最も近い放射温度計における前記区分領域から、対応する各区分領域に配置されている加熱手段に対し、1個のピーク温度又は当該最も高いピーク温度と同一の温度による加熱信号を伝達する一方、放射温度計における他の各区分領域から、対応する他の各区分領域に配置されている加熱手段に対し、1個のピーク温度又は当該最も高いピーク温度よりも更に高い温度による加熱信号を伝達することを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載のレーザビーム用光学装置。
【請求項5】
複数単位に区分されている加熱手段を採用した上で、放射温度計における外側周囲から中心位置に至るまでの温度表示領域を、当該外側周囲につき前記複数単位の加熱手段における区分に対応して区分し、かつ1個のピーク温度又は複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度の発生を表示している区分領域の外側周囲から対応する区分領域に配置されている加熱手段に対し、1個のピーク温度又は当該最も高いピーク温度と同一温度による加熱信号を伝達する一方、ピーク温度の発生を表示していないか、又はピーク温度を表示するも最も高いピーク温度を表示している訳ではない放射温度計における各区分領域から、対応する区分領域に配置されている加熱手段に対し、1個のピーク温度又は当該最も高いピーク温度よりも更に高い温度による加熱信号を伝達することを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載のレーザビーム用光学装置。
【請求項6】
各放射温度計の表示領域における最も高い温度よりも高い温度として5℃だけ高い温度を加熱温度として選択することを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載のレーザビーム用光学装置。
【請求項7】
1個のピーク温度又は複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度よりも更に高い温度として10℃だけ高い温度を加熱温度として選択することを特徴とする請求項1、2、3、4、5の何れか一項に記載のレーザビーム用光学装置。
【請求項8】
加熱が行われている各光学素子の周辺領域にガスの流動源から冷却ガスを流動するか、又は周辺領域に設置したパイプに冷却水を流通することによって、各光学素子を冷却することによって、前記ピーク温度を低下していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7の何れか一項に記載のレーザビーム用光学装置。
【請求項9】
冷却ガスの流動量及び温度又は冷却水の流通量及び温度を、0℃を基準として、ピーク温度に対し1/2以下とするように設定していることを特徴とする請求項記載のレーザビーム用光学装置。
【請求項10】
レーザ光を透過するレンズ並びに外部への透過窓及びレーザ光を反射するミラーによる光学素子を備えているレーザビーム用光学装置において、各光学素子の全周辺領域にて1単位の電熱素子、又はガスの流動源から流動する加熱ガス、又はパイプ中を流通する加熱水による加熱手段を備えると共に、各光学素子から離れ、かつレーザ光の透過を遮蔽しない位置に各放射温度計を設置した上で、前記加熱手段が加熱が行われる前段階にて全放射温度計によって表示された温度のうち最も高い温度以上の温度による加熱を継続する一方、光学素子の何れかが作動段階において、粉塵の付着を原因として1個又は複数個のピーク温度が当該光学素子に対し、前記位置に設置されている放射温度計によって表示された場合、加熱手段が当該1個又は複数個のピーク温度よりも高い温度による加熱を、当該1個又は複数個のピーク温度の表示が消失するまで継続し、かつ当該1個又は複数個のピーク温度を示す表示が消失した後においても前記加熱を継続するという操作を採用しているレーザビーム用光学装置において、当該装置が、レーザビーム発振源、ダイナミックフォーカスレンズ、レーザビームの透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラー、第2ミラーからテーブル面に積載されている粉末層に対しレーザビームを透過する透過窓を備えているガルバノスキャナであって、ダイナミックフォーカスレンズ、第1ミラー、第2ミラー、透過窓の全てにつき温度調整が行われており、かつガルバノスキャナがレーザビーム発振源とダイナミックフォーカスレンズとの間にコリメータレンズ、及びダイナミックフォーカスレンズと第1ミラーとの間にオブジェクトレンズを備えており、かつ前記各レンズに対し、加熱が行われていることを特徴とするレーザビーム用光学装置。
【請求項11】
全放射温度計の表示領域における最も高い温度よりも高い温度として5℃だけ高い温度を加熱温度として選択することを特徴とする請求項10記載のレーザビーム用光学装置。
【請求項12】
1個のピーク温度又は複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度よりも更に高い温度として10℃だけ高い温度を加熱温度として選択することを特徴とする請求項10記載のレーザビーム用光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームを透過するレンズ並びに透過窓、及びレーザビームを反射するミラーによる光学素子を備えているレーザビーム用光学装置を対象としている。
【背景技術】
【0002】
レーザビーム用光学装置は、当該レーザを対象物に照射することによって、対象物を造形することを目的としているが、レンズ並びに透過窓を所定のスポット径を有するレーザビームが透過する場合及びミラーによってレーザビームが反射される場合には、当該透過位置及び反射位置が均等ではなく、限定されている。
【0003】
その結果、透過領域及び反射領域には、レーザビームの熱エネルギーが発生するが、当該熱エネルギーは、透過しない領域及び反射しない領域に拡散し、しかも表面から放射されている。
【0004】
従って、前記透過及び前記反射によって、各光学素子が直ちに高温となる訳ではなく、通常の作動の場合には、精々、1℃~2℃程度の温度上昇が発生するに過ぎない。
【0005】
しかしながら、レーザビームによる照射の対象物が容易に溶融しない場合には、エネルギー密度の高いレーザビームを透過又は反射する場合には、1℃~2℃の温度上昇ではなく、5℃程度の温度上昇に至る場合がある。
【0006】
このような場合、所定のスポット径を有するレーザビームの透過領域及び反射領域において異変が発生する範囲は広範であって、広範な領域による各光学素子の厚みが増加することを原因として凸レンズが形成される一方、周囲の領域は、当該凸レンズの形成に伴う応力による反作用として凹レンズが形成される場合が少なからず発生する。
【0007】
このような透過及び反射によって形成される凸レンズは、著しい変形を伴う訳ではないが、形成領域が広範であるため、レンズ並びに透過窓における正確な透過及びミラーにおける正確な反射に対する弊害に該当する。
尚、周囲にて形成される凹レンズは、通常の作動では、レンズの透過及びミラーの反射領域に該当しないため、上記例外も発生しないが、透過窓の場合には周囲を透過する場合があるため、正確な透過に対する弊害の原因とならざるを得ない。
【0008】
このようなレーザビームの透過及び反射を伴う弊害とは別に、前記対象物の造形に伴って、当該レンズ並びに当該透過窓及び当該ミラーにおいては、造形環境等の影響又は造形の対象物から発散する粉塵によって汚れが発生することを避けることができない。
【0009】
通常、レーザビーム用光学装置は、当該粉塵の影響を避けるため、仕切り板によって前記造形対象物と遮蔽する構成を採用しているが、透過窓の場合には、このような構成を採用したところで、粉塵の付着を避けることができない。
【0010】
しかも、遮蔽が不十分な場合には、レンズ及びミラーにおいては、前記粉塵の付着による被害を完全に防止することは不可能である。
【0011】
このように、各光学素子に対し、粉塵が付着した場合には、当該付着領域においてレーザビームの熱エネルギーが貯留することを原因として、当該付着領域においては、他の領域と異なるピーク温度の発生を伴う局所的な発熱が発生し、ひいては表面形状が変形することによって、局所的な凸レンズ及び凹レンズが形成されるという弊害が発生している。
【0012】
このようなピーク温度の発生を伴う局所的な凸レンズ及び凹レンズの発生を原因とする表面形状の異変によって、レンズの正確な焦点距離を前提とする透過機能、透過窓の正確な透過機能、ミラーの反射機能には異変が生じ、必要かつ正常な機能を維持することが不可能とならざるを得ない。
【0013】
具体的には、凸レンズの場合には、局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成によって、焦点距離が変化するだけでなく、当該焦点の位置にてレーザ光を集束することが不可能となり、凹レンズの場合においても、単に焦点距離が変化するだけでなく、一様なレーザ光の拡散が不可能とならざるを得ない。
【0014】
外部への透過窓の場合には、局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成によって、透過窓を介して、レーザ光が曲折し、目標とする位置にレーザ光を正確に照射することが不可能と化す。
【0015】
ミラーの場合には、局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成によって、等角度による反射に支障が生じ、造形対象物における目標とする位置にレーザビームを正確に照射することが不可能と化す。
【0016】
各光学素子において、表面形状の変化に伴う支障に対処するために、公知技術においては様々な工夫が行われている。
【0017】
例えば、特許文献1においては、レーザビームの透過の継続に伴って変化したレンズの焦点距離を算出し、当該レンズの移動によって焦点距離を調整している。
【0018】
しかしながら、このような焦点距離の調整を行ったところで、粉塵の付着を原因とする表面においてピーク温度の提示を伴う局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成に対処することは不可能である。
【0019】
特許文献2においては、レーザビームの支障に伴って発生するレンズの反りを調節ネジ2の螺合及び進出又は後退に伴う移動によって、当該反りの是正を行っている。
【0020】
しかしながら、このような是正を行ったところで、特許文献1の場合と同様に、表面における前述の局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成を是正することはできないことに変わりはない。
【0021】
特許文献3においては、レーザビームを反射するミラーについて、ミラーにおける反射の継続を原因として発生した表面の変形を干渉縞によって測定し、当該変形を補正する補正手段を設置しており、具体的補正方法として、光源からの収束状態を調整する補正手段(請求項4)、特に当該補正手段として、光波面の位相分布を調整する方法等を採用している。
【0022】
しかしながら、上記測定方法は極めて煩雑である一方、上記調整を行ったところで、ミラーの表面における前述の局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成を是正したことにはならない。
【0023】
特許文献4においては、レーザビームの透過の継続を原因とする集光レンズの変形に対処することを目的として、2個の微小レンズによってビームの透過状態を変更する構成を採用しているが、このような構成を採用したところで、レンズの表面における前述の局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成を是正したことにはならない。
【0024】
このように、従来技術の場合には、レーザ用光学装置においてレーザビームの透過又は反射及び汚れを原因とするレンズ、透過窓、ミラーの何れか又は全ての表面においてピーク温度の提示を伴う凸レンズ及び凹レンズの形成に対処する具体的な解決手段は、全く提唱されていない状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】特開平1-122688号公報
【文献】特開平9-090187号公報
【文献】特開2006-201199号公報
【文献】特開2008-093710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、レンズ並びに外部への透過窓及びミラーにおいてレーザビームの透過又は反射を原因とする凸レンズの形成、及びこれらの表面における粉塵の付着を原因とするピーク温度の発生を伴う局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成を抑制し得るような熱力学による処理を採用しているレーザビーム用光学装置の構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)レーザ光を透過するレンズ並びに外部への透過窓及びレーザ光を反射するミラーによる光学素子を備えたレーザ用光学装置において、前記光学素子の外側周囲の加熱領域に1単位又は複数単位の電熱素子を備えると共に、各光学素子から離れ、かつレーザ光の透過を遮蔽しない位置に各放射温度計を設置し、各光学素子の作動段階において、各光学素子に備えた各加熱手段が、加熱を行う前段階において各放射温度計の表示領域における最も高い温度以上の温度にて加熱を継続する一方、光学素子の何れかが作動段階において粉塵の付着を原因として1個のピーク温度又は複数個のピーク温度が当該光学素子に対し、前記位置に設置されている放射温度計によって表示された場合、当該光学素子に備えられた加熱手段が、当該1個のピーク温度以上の温度による加熱、又は当該複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度以上の温度による加熱を、当該1個のピーク温度又は当該複数個のピーク温度の表示が消失するまで継続し、かつ当該1個のピーク温度又は複数個のピーク温度を示す表示が消失された後においても前記加熱を継続するという操作を採用しているレーザビーム用光学装置において、当該装置が、レーザビーム発振源から入射するレーザビームを透過するダイナミックフォーカスレンズ、レーザビームの透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー、及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラー、第2ミラーからテーブル面に積載されている粉末層を照射するレーザビームを透過する透過窓を備えているガルバノスキャナであって、ガルバノスキャナが、レーザビーム発振源とダイナミックフォーカスレンズとの間にコリメータレンズ、及びダイナミックフォーカスレンズと第1ミラーとの間にオブジェクトレンズを備えており、前記各レンズに対する加熱が行われていることを特徴とするレーザビーム用光学装置、
(2)レーザ光を透過するレンズ並びに外部への透過窓及びレーザ光を反射するミラーによる光学素子を備えたレーザ用光学装置において、前記光学素子の外側周囲の加熱領域に1単位又は複数単位の電熱素子を備えると共に、各光学素子から離れ、かつレーザ光の透過を遮蔽しない位置に各放射温度計を設置し、各光学素子の作動段階において、各光学素子に備えた各加熱手段が、加熱を行う前段階において各放射温度計の表示領域における最も高い温度以上の温度にて加熱を継続する一方、光学素子の何れかが作動段階において粉塵の付着を原因として1個のピーク温度又は複数個のピーク温度が当該光学素子に対し、前記位置に設置されている放射温度計によって表示された場合、当該光学素子に備えられた加熱手段が、当該1個のピーク温度以上の温度による加熱、又は当該複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度以上の温度による加熱を、当該1個のピーク温度又は当該複数個のピーク温度の表示が消失するまで継続し、かつ当該1個のピーク温度又は複数個のピーク温度を示す表示が消失された後においても前記加熱を継続するという操作を採用しているレーザビーム用光学装置において、当該装置が、レーザビーム発振源から入射するレーザビームを透過するダイナミックフォーカスレンズ、レーザビームの透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー、及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラー、第2ミラーからテーブル面に積載されている粉末層を照射するレーザビームを透過する透過窓を備えているガルバノスキャナであって、第1ミラー及び第2ミラーの外側周囲の加熱手段として電熱素子を選択し、当該電熱素子から突設している円柱部が電源と接続しているブラシとスライド自在状態にて接触していることを特徴とするレーザビーム用光学装置、
(3)レーザ光を透過するレンズ並びに外部への透過窓及びレーザ光を反射するミラーによる光学素子を備えているレーザビーム用光学装置において、各光学素子の全周辺領域にて1単位の電熱素子、又はガスの流動源から流動する加熱ガス、又はパイプ中を流通する加熱水による加熱手段を備えると共に、各光学素子から離れ、かつレーザ光の透過を遮蔽しない位置に各放射温度計を設置した上で、前記加熱手段が加熱が行われる前段階にて全放射温度計によって表示された温度のうち最も高い温度以上の温度による加熱を継続する一方、光学素子の何れかが作動段階において、粉塵の付着を原因として1個又は複数個のピーク温度が当該光学素子に対し、前記位置に設置されている放射温度計によって表示された場合、加熱手段が当該1個又は複数個のピーク温度よりも高い温度による加熱を、当該1個又は複数個のピーク温度の表示が消失するまで継続し、かつ当該1個又は複数個のピーク温度を示す表示が消失した後においても前記加熱を継続するという操作を採用しているレーザビーム用光学装置において、当該装置が、レーザビーム発振源、ダイナミックフォーカスレンズ、レーザビームの透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラー、第2ミラーからテーブル面に積載されている粉末層に対しレーザビームを透過する透過窓を備えているガルバノスキャナであって、ダイナミックフォーカスレンズ、第1ミラー、第2ミラー、透過窓の全てにつき温度調整が行われており、かつガルバノスキャナがレーザビーム発振源とダイナミックフォーカスレンズとの間にコリメータレンズ、及びダイナミックフォーカスレンズと第1ミラーとの間にオブジェクトレンズを備えており、かつ前記各レンズに対し、加熱が行われていることを特徴とするレーザビーム用光学装置、
からなる。
【発明の効果】
【0028】
基本構成(1)、(2)、(3)においては何れも、各光学素子から離れ、かつレーザ光の透過を遮蔽しない位置に各放射温度計を設置することを前提としている。
【0029】
上記前提の下に、基本構成(1)、(2)においては、レンズ並びに透過窓及びミラーによる光学素子に対するレーザビームの透過又は反射に伴う温度上昇を原因とする中央位置における凸レンズの形成、及び周辺領域における凹レンズにおける形成については、各放射温度計によって測定された最も高い温度以上の温度による加熱の継続によって、各光学素子における温度の不均一状態を緩和し、前記凸レンズ及び凹レンズの形成を抑制している。
【0030】
しかも、粉塵の付着を原因とする1個又は複数個のピーク温度の提示を伴う局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成に対しては、加熱手段の外側周囲からの当該温度以上の温度による加熱を、当該ピーク温度の表示が消失するまで継続すると共に、当該ピーク温度の表示が解消した後においても、当該加熱を更に継続することによって、局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成を完全に防止することができる。
尚、複数個のピーク温度の場合、最も高いピーク温度を表示の解消の基準としているが、その根拠は、最も高いピーク温度が解消する場合には、他の複数個のピーク温度もまた解消し得ることにある。
【0031】
基本構成(3)においては、レンズ並びに透過窓及びミラーによる光学素子に対するレーザビームの透過又は反射に伴う温度上昇を原因とする中央位置における凸レンズの形成、及び周辺領域における凹レンズにおける形成については、全放射温度計によって表示された温度のうち最も高い温度以上の温度による加熱の継続によって、各光学素子における温度の不均一状態を緩和し、前記凸レンズ及び凹レンズの形成を抑制している。
尚、基本構成(1)、(2)においては、各放射温度計のうち最も高い温度を基準としているのに対し、基本構成(3)においては、全放射温度計によって表示された温度のうち、最も高い温度を基準としているのは、全光学素子に対する加熱が1個の加熱手段によって行われていることに由来している。
【0032】
しかも、基本構成(3)は、粉塵の付着を原因とする各光学素子の全周辺領域に設置されている1個又は複数個のピーク温度の提示を伴う局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成に対し、加熱手段による当該温度よりも高い温度による加熱を、当該ピーク温度の表示が消失するまで継続すると共に、当該ピーク温度の表示が解消した後においても、当該加熱を更に継続することによって、局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成を防止している。
【0033】
基本構成(3)の場合には、前記のように、各放射温度計によって表示された温度のうち最も高い温度以上の温度による加熱によって、各光学素子に対するレーザビームの透過又は反射に伴う温度上昇を原因とする凸レンズ及び凹レンズの形成を抑制していること、更には各光学素子の何れかの作動中にピーク温度が提示された場合に、他の光学素子についてもピーク温度よりも高い温度による加熱が行われている点において、基本構成(1)、(2)よりも高い温度による加熱処理が行われる傾向にある。
【0034】
基本構成(1)、(2)、(3)においては、レーザビームの透過及び反射を原因とする温度上昇の場合よりも、粉塵の付着を原因とする温度上昇の程度の方が著しいことから、上記付着を原因としている1個又は複数個のピーク温度による温度上昇を解消する場合には、各加熱手段による加熱温度は、前記透過及び反射を原因とする場合よりも高い温度を設定することを必要とする。
【0035】
基本構成(1)は、レーザビーム用光学装置が、レーザビーム発振源から入射するレーザビームを透過するダイナミックフォーカスレンズ、レーザビームの透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー、及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラー、第2ミラーからテーブル面に積載されている粉末層を照射するレーザビームを透過する透過窓を備えているガルバノスキャナであって、ガルバノスキャナが、レーザビーム発振源とダイナミックフォーカスレンズとの間にコリメータレンズ、及びダイナミックフォーカスレンズと第1ミラーとの間にオブジェクトレンズを備えており、前記各レンズに対する加熱が行われていることを特徴としている。
【0036】
即ち、コリメータレンズ及びオブジェクトレンズを採用したガルバノスキャナによって、正確なレーザビームの透過を実現している。
【0037】
基本構成(2)は、レーザビーム用光学装置が、レーザビーム発振源から入射するレーザビームを透過するダイナミックフォーカスレンズ、レーザビームの透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー、及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラー、第2ミラーからテーブル面に積載されている粉末層を照射するレーザビームを透過する透過窓を備えているガルバノスキャナであって、第1ミラー及び第2ミラーの外側周囲の加熱手段として電熱素子を選択し、当該電熱素子から突設している円柱部が電源と接続しているブラシとスライド自在状態にて接触していることを特徴としている。
【0038】
即ち、前記電熱素子の両側に突設された円柱部位に対するスライド自在のブラシによる接触という特徴点に基づき、レーザビーム用光学装置の精度を維持することができる。
【0039】
基本構成(3)は、レーザビーム用光学装置が、レーザビーム発振源、ダイナミックフォーカスレンズ、レーザビームの透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラー、第2ミラーからテーブル面に積載されている粉末層に対しレーザビームを透過する透過窓を備えているガルバノスキャナであって、ダイナミックフォーカスレンズ、第1ミラー、第2ミラー、透過窓の全てにつき温度調整が行われており、かつガルバノスキャナがレーザビーム発振源とダイナミックフォーカスレンズとの間にコリメータレンズ、及びダイナミックフォーカスレンズと第1ミラーとの間にオブジェクトレンズを備えており、かつ前記各レンズに対し、加熱が行われていることを特徴としている。
【0040】
即ち、コリメータレンズ及びオブジェクトレンズに対する温度調整によって、正確なレーザビームの透過を実現可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1基本構成(1)及び(2)のガルバノスキャナにおける加熱の特徴点を説明しており、(a)は、基本構成(1)の場合を示し、(b)は、基本構成(2)の場合を示す。 尚、図1(a)の加熱を行っている外側周囲の加熱領域については黒色によって図示する。
図2】レーザビーム用光学装置として、基本構成(1)と同一構成によるガルバノスキャナを採用し、かつ基本構成(3)の特徴点を説明している側断面図である。 尚、周辺における温度調整領域を斑点によって図示する。
図3】基本構成(1)、(2)の基本原理を説明しており、(a)は、レーザビーム用光学装置の全体の構成を示す側断面図であり、(b)、(c)、(d)は、1単位による加熱を行う場合のレンズ並びに透過窓及びミラーを対象とする加熱状態とを示す平面図であり、(e)、(f)、(g)は、複数単位の加熱を行う場合のレンズ並びに透過窓及びミラーを対象とする加熱状態との状態を示す平面図である。 尚、(a)においては、外側周囲の加熱領域を黒色によって示し、(b)、(c)、(d)、及び(e)、(f)、(g)においては、外側周囲の加熱領域をそれぞれ電熱素子による場合、加熱ガスによる場合、加熱水による場合を示し、しかも(e)、(f)、(g)は、複数単位として4単位の場合を示す。 更には、(c)、(d)及び(f)、(g)におけるハッチングの領域は、パイプに対する電熱素子による加熱領域を示す。
図4】基本構成(1)、(2)において、複数単位に区分された加熱手段と、放射温度計による温度測定状態との対応関係を示す模式図であって、(a)は、放射温度計が単一の温度分布状態を提示している場合を示しており、(b)は、放射温度計の測定領域が複数単位の加熱手段に対応して区分されている場合を示す。 尚、前記(a)、(b)において、放射温度計の外側周囲における各区分領域から光学素子の外側周囲に配置されているおける加熱手段の対応する区分領域に対する点線の矢印の表示は、放射温度計によって表示されている1個のピーク温度又は最も高いピーク温度が表示する部位が何れの区分領域に最も近いか否かの情報を伝達している状況を示す。
図5】基本構成(1)、(2)において、各光学素子の周辺領域にガスの流動源から冷却ガスを流動するか、又は周辺領域に設置したパイプに冷却水を流通することによって、各光学素子を冷却する実施形態を示す側面図であって、(a)は、冷却ガスを流動する場合を示しており、(b)は、冷却水を流通する場合を示す。
図6】基本構成(3)の基本原理を説明しており、(a)は、各光学素子の周囲を電熱素子によって加熱した場合を示す側断面図であり、(b)は、各光学素子の周辺にガスの流動源から加熱ガスを流動した場合を示す側断面図であり、(c)は、各光学素子の周辺にてパイプ中に加熱水を流通した場合を示す側断面図である。
図7】基本構成(1)、(2)、(3)において、放射温度計の設置状況を説明する側面図であって、(a)は、レンズ並びに透過窓の場合を示し、(b)は、ミラーの場合を示す。 尚、図3(a)、図6(a)、(b)、(c)においては、上記(a)、(b)のような放射温度計の設置状況の図示は省略されている。
図8】基本構成(1)、(2)、(3)において、レンズの外側周辺への接触領域にて加熱を行っていない場合、及び加熱手段による加熱を行った場合の温度分布の状況をそれぞれ上側及び下側の各グラフにおける実線によって示し、(a)は、レーザビームの透過のみを原因とする発熱が生じている場合を示し、(b)は、レーザビームの透過だけでなく、表面における粉塵の付着を原因としてピーク温度の発生を伴う局所的な発熱が生じている場合を示す。 尚、Wは、レンズの幅(通常の場合には直径)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
基本構成(1)は、図1(a)、図3(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)及び図7(a)、(b)に示すように、レーザ光を透過するレンズ1並びに外部への透過窓2及びレーザ光を反射するミラー3による光学素子を備えたレーザ用光学装置において、前記光学素子の外側周囲の加熱領域4に1単位又は複数単位の電熱素子5を備えると共に、各光学素子から離れ、かつレーザ光の透過を遮蔽しない位置に各放射温度計9を設置し、各光学素子の作動段階において、各光学素子に備えた各加熱手段が、加熱を行う前段階において各放射温度計9の表示領域における最も高い温度以上の温度にて加熱を継続する一方、光学素子の何れかが作動段階において粉塵の付着を原因として1個のピーク温度又は複数個のピーク温度が当該光学素子に対し、前記位置に設置されている放射温度計9によって表示された場合、当該光学素子に備えられた加熱手段が、当該1個のピーク温度以上の温度による加熱、又は当該複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度以上の温度による加熱を、当該1個のピーク温度又は当該複数個のピーク温度の表示が消失するまで継続し、かつ当該1個のピーク温度又は複数個のピーク温度を示す表示が消失された後においても前記加熱を継続するという操作を採用しているレーザビーム用光学装置において、当該装置が、レーザビーム発振源10から入射するレーザビームLを透過するダイナミックフォーカスレンズ11、レーザビームLの透過方向と直交する方向の回動中心軸30を介して回動する第1ミラー31、及び第1ミラー31の回動と独立した状態にて前記第1ミラー31における回動中心軸30の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸30を介して回動する第2ミラー32、第2ミラー32からテーブル面に積載されている粉末層を照射するレーザビームLを透過する透過窓2を備えているガルバノスキャナ8であって、ガルバノスキャナ8が、レーザビーム発振源10とダイナミックフォーカスレンズ11との間にコリメータレンズ12、及びダイナミックフォーカスレンズ11と第1ミラー31との間にオブジェクトレンズ13を備えており、前記各レンズに対する加熱が行われていることを特徴とするレーザビーム用光学装置である。
【0043】
基本構成(1)の基本構成、及びコリメータレンズ12及びオブジェクトレンズ13を採用したガルバノスキャナ8による正確なレーザビームLの透過の実現については、既に発明の効果の項において説明した通りである。
【0044】
基本構成(2)は、図1(a)、図3(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)及び図7(a)、(b)に示すように、レーザ光を透過するレンズ1並びに外部への透過窓2及びレーザ光を反射するミラー3による光学素子を備えたレーザ用光学装置において、前記光学素子の外側周囲の加熱領域4に1単位又は複数単位の電熱素子5を備えると共に、各光学素子から離れ、かつレーザ光の透過を遮蔽しない位置に各放射温度計9を設置し、各光学素子の作動段階において、各光学素子に備えた各加熱手段が、加熱を行う前段階において各放射温度計9の表示領域における最も高い温度以上の温度にて加熱を継続する一方、光学素子の何れかが作動段階において粉塵の付着を原因として1個のピーク温度又は複数個のピーク温度が当該光学素子に対し、前記位置に設置されている放射温度計9によって表示された場合、当該光学素子に備えられた加熱手段が、当該1個のピーク温度以上の温度による加熱、又は当該複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度以上の温度による加熱を、当該1個のピーク温度又は当該複数個のピーク温度の表示が消失するまで継続し、かつ当該1個のピーク温度又は複数個のピーク温度を示す表示が消失された後においても前記加熱を継続するという操作を採用しているレーザビーム用光学装置において、当該装置が、レーザビーム発振源10から入射するレーザビームLを透過するダイナミックフォーカスレンズ11、レーザビームLの透過方向と直交する方向の回動中心軸30を介して回動する第1ミラー31、及び第1ミラー31の回動と独立した状態にて前記第1ミラー31における回動中心軸30の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸30を介して回動する第2ミラー32、第2ミラー32からテーブル面に積載されている粉末層を照射するレーザビームLを透過する透過窓2を備えているガルバノスキャナ8であって、第1ミラー31及び第2ミラー32の外側周囲の加熱手段として電熱素子5を選択し、当該電熱素子5から突設している円柱部51が電源50と接続しているブラシ40とスライド自在状態にて接触していることを特徴とするレーザビーム用光学装置である。
【0045】
基本構成(2)の基本構成、及び電熱素子5の両側に突設された円柱部51に対するスライド自在のブラシ40による接触に基づく良好な精度の維持については、既に発明の効果の項において説明した通りである。
【0046】
以下の通り、基本構成(1)、(2)の共通事項について、具体的に説明する。
【0047】
図3(c)、(d)、(f)、(g)の実線矢印に示すように、パイプ7における加熱ガスの流動、及び加熱水の流通は、電熱素子5による局所的な加熱によって、ガス又は水の密度(比重)の不均衡(アンバランス)が発生する一方、当該不均衡を解消するために、加熱ガス又は加熱水が移動することを原因としている。
【0048】
放射温度計9は、光学素子に対する赤外線の放射及び当該放射に対する反射によって、各光学素子の領域における温度分布を表示しかつ測定しているが、図7(a)に示すように、レンズ1又は透過窓2の場合には、レーザビームLの透過に支障が生じないような位置に配置する一方、ミラー3の場合には、図7(b)に示すように、ミラー3の裏面に配置する設計が通常採用されている。
【0049】
放射温度計9は、図7(a)、(b)に示すように、レンズ1又は透過窓2及びミラー3に対し、平行面を呈し、かつ同一面積の状態にて配置されていることが好ましいが、必ずしも平行面又は同一面積を必要とする訳ではない。
【0050】
基本構成(1)、(2)において、各光学素子に対する加熱に際し、放射温度計9によって表示された最も高い温度以上の温度による加熱を行うのは、図8(a)の上下のグラフによる対比に示すように、当該加熱によってレーザビームLの透過又は反射に伴う温度上昇による各光学素子内の不均一な温度状況の不均一状態を緩和し、ひいては当該温度上昇による凸レンズ及び凹レンズの発生を抑制し得ることにあり、かつこの点については、効果の項において既に説明した通りである。
【0051】
基本構成(1)、(2)においては、光学素子の何れかが作動段階において粉塵の付着を原因として1個のピーク温度又は複数個のピーク温度が当該光学素子に対し、前記の位置に設置された放射温度計9によって表示された場合には、当該ピーク温度以上の温度による加熱を、当該ピーク温度の表示が消失するまで継続し、かつ当該ピーク温度の表示が消失された後においても継続しているが、このような継続によって、図8(b)の上下のグラフによる対比に示すように、当該ピーク温度を原因とする不均一な温度分布を概略解消することができ、かつこのような効果については、既に効果の項において説明した通りである。
【0052】
図3(b)、(c)、(d)に示すように、1単位の加熱手段による加熱が行われる場合には、通常、1個のピーク温度又は複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度と同一温度の加熱によって放射温度計9における1個又は複数個のピーク温度の表示が消失する場合には、当該1個のピーク温度又は当該最も高いピーク温度と同一温度による加熱を行い、上記同一温度では上記表示が消失しない場合には、当該1個のピーク温度又は当該最も高いピーク温度よりも更に高い温度による加熱を行うという操作が採用されている。
【0053】
図3(e)、(f)、(g)に示すように、複数単位の加熱手段による加熱が行われる場合には、図4(a)に示すように、複数単位に区分されている加熱手段を採用した上で、放射温度計9の温度表示領域の外側周囲に加熱手段の区分領域に対応する区分領域を設定し、かつ1個のピーク温度又は複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度を呈している部位に最も近い放射温度計9における前記区分領域から、対応する各区分領域に配置されている加熱手段に対し、1個のピーク温度又は当該最も高いピーク温度と同一の温度による加熱信号を伝達する一方、放射温度計9における他の各区分領域から、対応する他の各区分領域に配置されている加熱手段に対し、1個のピーク温度又は当該最も高いピーク温度よりも更に高い温度による加熱信号を伝達することを特徴とする実施形態が好適に採用されている。
【0054】
上記実施形態においては、1個のピーク温度又は複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度を呈している部位に最も近い区分領域の加熱手段については、放射温度計9において外側周囲に備えている加熱手段の区分領域に対応する区分領域のうち、1個のピーク温度又は最も高いピーク温度を表示している部位に最も近い区分領域を当該部位と各区分領域の中心位置との距離の対比による算定に基づいて選択した上で、対応する区分領域に配置されている加熱手段に対し1個のピーク温度又は最も高いピーク温度と同一の温度による加熱信号を伝達しているが、その根拠は、最も近い領域の場合には、当該加熱によって加熱エネルギーがピーク温度領域に至るまでに放散する量が微量であると共に、当該同一温度による加熱は、温度制御として極めてシンプルであって、当該温度を速やかに設定し得ることにある。
【0055】
これに対し、放射温度計9による他の区分領域から対応する他の各区分領域に配置されている加熱手段に対し、1個のピーク温度又は最も高いピーク温度よりも更に高い温度による加熱信号を伝達しているが、その根拠は、1個のピーク温度又は最も高いピーク温度の領域に至るまでに、加熱エネルギーが放散する量が決して微量ではないことに由来している。
但し、粉塵の付着を原因とするピーク温度の程度は、ケースバイケースであることから、放射温度計9における温度表示が確実に消失するような温度を設定することを必要不可欠としている。
【0056】
上記実施形態とは別に、図4(b)に示すように、複数単位に区分されている加熱手段を採用した上で、放射温度計9における外側周囲から中心位置に至るまでの温度表示領域を、当該外側周囲につき前記複数単位の加熱手段における区分に対応して区分し、かつ1個のピーク温度又は複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度の発生を表示している区分領域の外側周囲から対応する区分領域に配置されている加熱手段に対し、1個のピーク温度又は当該最も高いピーク温度と同一温度による加熱信号を伝達する一方、ピーク温度の発生を表示していないか、又はピーク温度を表示するも最も高いピーク温度を表示している訳ではない放射温度計9における各区分領域から、対応する区分領域に配置されている加熱手段に対し、1個のピーク温度又は当該最も高いピーク温度よりも更に高い温度による加熱信号を伝達することを特徴とする実施形態が好適に採用されている。
【0057】
上記実施形態においては、放射温度計9において1個のピーク温度又は複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度の発生が表示されている区分領域については、放射温度計9の外側周囲における当該区分領域から対応する区分領域に配置されている加熱手段に対し、1個のピーク温度又は最も高いピーク温度と同一温度による加熱信号を伝達しているが、その根拠は、当該区分領域の場合には、たとえ周囲の加熱手段の加熱による加熱エネルギーが放散したとしても、ピーク温度領域に至るまでに放散する量が微量であると共に、当該同一温度による加熱は、温度制御として極めてシンプルであって、当該温度を速やかに設定し得ることにある。
【0058】
これに対し、ピーク温度の発生が表示されていないか、又はピーク温度を表示するも最も高いピーク温度を表示している訳ではない放射温度計9における各区分領域から、対応する区分領域に配置されている加熱手段に対しては、1個のピーク温度又は最も高いピーク温度よりも更に高い温度による加熱信号を伝達しているが、その根拠は、このような区分領域の外側からの加熱温度による加熱エネルギーがピーク温度領域に至るまでに放散する量が微量ではないことに由来している。
尚、放射温度計9における温度表示が確実に消失するような高い温度を設定することが好都合であることは、図4(a)に示す実施形態の場合と同様である。
【0059】
図4(a)の実施形態の場合には、1個のピーク温度が最も高いピーク温度を表示している部位に最も近い周囲の区分領域を、当該部位と、区分領域の中心位置との距離の計算の対比に基づいて選択するという制御プロセスが必要であるのに対し、図4(b)に示す実施形態の場合には、前記距離の計算に基づく対比をせずに、直ちに1個のピーク温度又は最も高いピーク温度を表示する区分領域を選択し得る点において優れている。
【0060】
発明者の経験では、各光学素子の最も高い温度よりも5℃だけ高い温度を加熱温度として選択した場合には、十分均一状態の温度分布を実現することができ、かつピーク温度よりも更に高い温度として、10℃だけ高い温度を加熱温度として選択した場合には、各光学素子の領域において十分均一な温度分布を呈することができる。
【0061】
図8(a)、(b)の下側のグラフに示すように、各光学素子における温度分布は基本的に均一化するが、完全に均一状態に至らない場合がある。
【0062】
このような場合に即して、図5(a)、(b)に示すように、加熱が行われているレンズ1並びに透過窓2及びミラー3による各光学素子の周辺領域にガスの流動源6から冷却ガスを流動するか、又は周辺領域に設置したパイプ7に冷却水を流通することによって、前記レンズ1並びに前記透過窓2及び前記ミラー3による各光学素子を冷却することによって、ピーク温度を低下するという実施形態を採用した場合には、ピーク温度による不均一な温度分布を低下することによって、局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成を十分防止することができる。
【0063】
特に、冷却ガスの流動量及び温度又は冷却水の流通量及び温度を、0℃を基準として、ピーク温度に対し1/2以下とするように設定していることを特徴とする実施形態においては、流動するガスにおける温度又は量、及び流通する冷却水の温度又は量を具体的な基準に即して、速やかに設定することが可能となる。
【0064】
基本構成(3)は、図6(a)、(b)、(c)及び図7(a)、(b)に示すように、レーザ光を透過するレンズ1並びに外部への透過窓2及びレーザ光を反射するミラー3による光学素子を備えているレーザビーム用光学装置において、各光学素子の全周辺領域にて1単位の電熱素子5、又はガスの流動源6から流動する加熱ガス、又はパイプ7中を流通する加熱水による加熱手段を備えると共に、各光学素子から離れ、かつレーザ光の透過を遮蔽しない位置に各放射温度計9を設置した上で、前記加熱手段が加熱が行われる前段階にて全放射温度計9によって表示された温度のうち最も高い温度以上の温度による加熱を継続する一方、光学素子の何れかが作動段階において、粉塵の付着を原因として1個又は複数個のピーク温度が当該光学素子に対し、前記位置に設置されている放射温度計9によって表示された場合、加熱手段が当該1個又は複数個のピーク温度よりも高い温度による加熱を、当該1個又は複数個のピーク温度の表示が消失するまで継続し、かつ当該1個又は複数個のピーク温度を示す表示が消失した後においても前記加熱を継続するという操作を採用しているレーザビーム用光学装置において、当該装置が、レーザビーム発振源10、ダイナミックフォーカスレンズ11、レーザビームLの透過方向と直交する方向の回動中心軸30を介して回動する第1ミラー31及び第1ミラー31の回動と独立した状態にて前記第1ミラー31における回動中心軸30の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸30を介して回動する第2ミラー32、第2ミラー32からテーブル面に積載されている粉末層に対しレーザビームLを透過する透過窓2を備えているガルバノスキャナ8であって、ダイナミックフォーカスレンズ11、第1ミラー31、第2ミラー32、透過窓2の全てにつき温度調整が行われており、かつガルバノスキャナ8がレーザビーム発振源10とダイナミックフォーカスレンズ11との間にコリメータレンズ12、及びダイナミックフォーカスレンズ11と第1ミラー31との間にオブジェクトレンズ13を備えており、かつ前記各レンズに対し、加熱が行われていることを特徴とするレーザビーム用光学装置である。
【0065】
基本構成(3)は、レンズ1並びに透過窓2及びミラー3による全光学素子に対し、1単位であって、しかも共通する電熱素子5又はパイプ7中を流動する加熱ガス、又はパイプ7中を流通する加熱水という加熱手段を採用している点において、基本構成(1)、(2)のような各光学素子に対する加熱を行う場合に比し、構成及び制御がシンプルである点に特徴を有している。
【0066】
このようなシンプルな構成でありながら、基本構成(3)の場合には、当初から、全放射温度計9が表示する最も高い温度以上の温度による加熱を行い、かつ特定の放射温度計9が表示するピーク温度よりも高い温度の加熱を行い、レーザビームLの透過又は反射を原因とする各光学素子における温度の不均一な状態を緩和し、かつ凸レンズ及び凹レンズの形成を抑制し、しかもピーク温度の発生を伴う局所的な凸レンズ及び凹レンズの形成を防止し得る点については、効果の項において既に説明した通りである。
【0067】
加熱手段による加熱が行われる前段階において、各放射温度計9によって表示された温度のうち最も高い温度以上の温度による加熱が行われているが、「以上」とは、当該最も高い温度と同一の温度による加熱によって、全光学素子における凸レンズ及び凹レンズの形成を抑制し得るのであれば、同一の温度による加熱を行い、当該同一の温度による加熱では光学素子における凸レンズ及び凹レンズの形成を十分抑制し得ない場合には、当該同一温度よりも高い温度による加熱を行うという趣旨である。
但し、上記同一温度よりも高い温度については、常に高温であるほど上記抑制に資するが、必要最小限度の高い温度については、個別のレーザビーム用光学装置の使用上の経験に即して把握することを不可欠とする。
【0068】
基本構成(3)において、光学素子の何れかの作動段階において、粉塵の付着を原因とする1個又は複数個のピーク温度を提示した場合に、当該ピーク温度よりも高い温度による加熱を、当該ピーク温度の表示が消失するまで継続し、かつ当該ピーク温度が消失された後においても、当該加熱を継続することによって、図8(b)の各グラフの対比に示すように、均一な温度分布を実現し、ひいては局所的な凸レンズ及び凹レンズの発生を防止している。
但し、基本構成(1)、(2)のように「ピーク温度以上」の加熱ではなく、ピーク温度よりも高い加熱温度による加熱を行っている根拠は、各光学素子に対する加熱が基本構成(1)、(2)の場合のような直接加熱ではなく、間接的な加熱が行われることに由来している。
【0069】
発明者の経験では、基本構成(3)において、全放射温度計9の表示領域における最も高い温度よりも5℃だけ高い温度を加熱温度として選択した場合には、光学素子において十分均一な温度分布を実現することができ、かつ1個のピーク温度又は複数個のピーク温度のうち最も高いピーク温度よりも更に高い温度として、10℃だけ高い温度を加熱温度として選択した場合には、各光学素子の領域において十分均一な温度分布を呈することができる。
【0070】
基本構成(3)においては、基本構成(1)、(2)の場合と同様に、図5(a)、(b)に示すような冷却ガスの流動及び冷却水の流通による実施形態を採用することも可能である。
但し、スペースの関係及び基本構成(1)、(2)の場合よりも高温による加熱を行っていることから、通常、このような実施形態は採用されていない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
このように、本願発明においては、レーザビーム用光学装置におけるレンズ並びに透過窓及びミラーによる各光学素子の外側周囲の加熱領域からの加熱の継続又は前記光学素子の全周辺領域からの加熱の継続によって、従来技術においては解決不可能であったレンズ並びに外部への透過窓及びミラーの表面におけるレーザビームの透過及び反射を原因とする凸レンズ及び凹レンズの形成を効率的に抑制し、しかも粉塵の表面への付着を原因とする局所的な凸レンズ及び凹レンズの発生を効率的に防止することによってレーザビーム用光学装置の精度を維持することが可能であって、ガルバノスキャナを始めとする様々なレーザビーム用光学装置において広範に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 レンズ
10 レーザビーム発振源
11 ダイナミックフォーカスレンズ
12 コリメータレンズ
13 オブジェクトレンズ
2 透過窓
3 ミラー
30 回動中心軸
31 第1ミラー
32 第2ミラー
4 各光学素子に対する外側周囲の加熱領域
40 ブラシ
5 電熱素子
50 電源
51 第1ミラー及び第2ミラーの電熱素子から突設された円柱部
6 ガスの流動源
7 ガスが流動、又は水が流通するパイプ
8 ガルバノスキャナ
9 放射温度計
P 循環用ポンプ
L レーザビーム
【要約】
【課題】レーザビームの透過又は反射及び粉塵の付着による凸レンズ及び凹レンズの形成を抑制する構成を提供すること。
【解決手段】レンズ1、透過窓2、ミラー3による各光学素子を備えたレーザ用光学装置において、各光学素子の外側周囲にて電熱素子5、パイプ7中を流動する加熱ガス、パイプ7中を流通する加熱水の何れかの加熱手段が、放射温度計9によって測定された加熱前段階における最も高い温度以上の温度による加熱を継続し、何れかの光学素子が放射温度計9の測定によって粉塵の付着を原因として1個又は複数個のピーク温度を呈した場合にピーク温度以上の温度による加熱を継続するか、又は全光学素子の全周辺領域に前記加熱手段を配設し、全放射温度計9による最も高い温度以上の温度による加熱を継続し、かつ1個又は複数個のピーク温度よりも高い温度による加熱を継続することによって課題を達成するレーザビーム用光学装置。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8