IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンファーマ株式会社の特許一覧 ▶ 日本農薬株式会社の特許一覧

特許7021827非晶質化剤、非晶質化剤を含んでなる非晶質の組成物及びその使用
<>
  • 特許-非晶質化剤、非晶質化剤を含んでなる非晶質の組成物及びその使用 図1
  • 特許-非晶質化剤、非晶質化剤を含んでなる非晶質の組成物及びその使用 図2
  • 特許-非晶質化剤、非晶質化剤を含んでなる非晶質の組成物及びその使用 図3
  • 特許-非晶質化剤、非晶質化剤を含んでなる非晶質の組成物及びその使用 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】非晶質化剤、非晶質化剤を含んでなる非晶質の組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/32 20060101AFI20220209BHJP
   A61K 31/4178 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220209BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220209BHJP
   C07D 409/06 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K31/4178
A61K47/12
A61P31/10
C07D409/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017062515
(22)【出願日】2017-03-28
(65)【公開番号】P2017186317
(43)【公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2016071569
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512073600
【氏名又は名称】サンファーマ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000232623
【氏名又は名称】日本農薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】増田 孝明
(72)【発明者】
【氏名】藤井 香穂梨
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩一
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/102241(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/102243(WO,A1)
【文献】特開2001-048731(JP,A)
【文献】特開2008-074911(JP,A)
【文献】特開2015-114210(JP,A)
【文献】国際公開第2009/031643(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 47/00-47/69
A61P 31/00-31/22
C07D 409/00-409/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルピロリドンからなる、ルリコナゾール及び/又はその塩の非晶質化剤。
【請求項2】
さらに乳酸を含有する、請求項1に記載の非晶質化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の非晶質化剤、該非晶質化剤を含んでなる非晶質の組成物並びにその使用に関する。
【0002】
【化1】
【背景技術】
【0003】
ルリコナゾール或いはラノコナゾールといった一般式(1)で表される化合物は、結晶性が高く、すぐれた抗真菌活性を有していることが知られているが、その反面、結晶析出性も高く、製造工程において扱いにくい特性を有している。また、安定性の面でも光安定性に難があるため、製造或いは製剤化の工程において、時間がかかりすぎると、類縁体の産生量が多くなる可能性も存していた(例えば、特許文献1~2を参照)。また、製剤においても即時的結晶化が生体内への移行を阻害することもこれらの特許文献では明らかにされ、結晶化の抑制手段の開発も一般式(1)で表される化合物の製剤上の課題でもあった。また、これらの特許文献には、乳酸などのα-ヒドロキシ酸が一般式(1)で表される化合物の即時結晶性を抑制することも開示されていたが、かかる即時結晶性の抑制がどの様なメカニズムによるかは全く開示されていない。
【0004】
この様な結晶化の抑制技術としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン等の可塑剤を大過剰に用い液状の粘ちょう性被膜を作成する技術が知られていた(例えば、特許文献3を参照)が、かかる技術では被膜に含有できる一般式(1)で表される化合物の質量が限られている欠点が存した。
【0005】
一般的に、非晶質化することにより、溶解性、特に溶解速度が改善されることは知られている。その為、注射剤などでは非晶質化が重要な技術となっている(例えば、特許文献4を参照)。
【0006】
一方、一般式(1)で表される化合物について、単斜晶の結晶系は知られているが、非晶質の固体については全く知られていない。
【0007】
即ち、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の使用性を高めるべく、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の非晶質化技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2007/102241
【文献】WO2007/102243
【文献】WO2003/105841
【文献】特開2006-312598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況下為されたものであり、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の使用性を高めるべく、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の非晶質化技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような状況に鑑みて、本発明者らは、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の使用性を高めるべく、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の非晶質化技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた。その結果、水溶性高分子及び酸から選ばれる1種乃至は2種以上を非晶質化剤として用いることにより、このような非晶質化をなし得ることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。
【0011】
[1] 水溶性高分子及び酸から選ばれる1種又は2種以上からなる、以下の一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の非晶質化剤。
【0012】
【化2】
【0013】
(但し、式中R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【0014】
[2] 前記水溶性高分子は、ビニル系水溶性高分子又はセルロース系水溶性高分子である、[1]に記載の非晶質化剤。
[3] 前記ビニル系水溶性高分子は、ポリビニルピロリドン又はカルボキシビニルポリマーである、[2]に記載の非晶質化剤。
[4] 前記セルロース系水溶性高分子は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース又はエチルセルロースである、[2]に記載の非晶質化剤。
[5] 前記酸は、有機酸である、[1]~[4]の何れかに記載の非晶質化剤。
[6] 水溶性高分子及び酸からなる、[1]~[5]の何れかに記載の非晶質化剤。
[7] 前記一般式(1)で表される化合物は、ルリコナゾール又はラノコナゾールである、[1]~[6]の何れかに記載の非晶質化剤。
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
[8] 一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩と、該化合物及び/又はその塩の質量の0.05~10倍の質量の[1]~[7]の何れかに記載の非晶質化剤を均一に混合し、固化させる工程を含む、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の非晶質化方法。
[9] 一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩と、該化合物及び/又はその塩の質量の0.05~10倍の質量の[1]~[7]の何れかに記載の非晶質化剤とを含んでなる非晶質の組成物。
[10] [9]に記載の非晶質の組成物を中間仕掛品として、該中間仕掛品を溶解する工程を含む、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩を含有する医薬組成物の製造方法。
[11] 一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩と、該化合物及び/又はその塩の質量の0.05~10倍の質量の[1]~[7]の何れかに記載の非晶質化剤を含んでなる、組成物。
[12] 更に、揮散すべき溶媒を含む、[11]に記載の組成物。
[13] 医薬である、[11]又は[12]に記載の組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の非晶質化技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例1の組成物が被膜を形成する過程を示す図(図面代用写真)である。LLCZはルリコナゾールを、PVPはポリビニルピロリドンを示す。図1Aは滴下直後の写真、図1Bは滴下4時間後の写真、図1Cは滴下1日後の写真、図1Dは滴下4日後の写真である。図1A~Dについて、それぞれ左側が非晶質化剤を含まない試料(ルリコナゾール溶液)、右側が非晶質化剤を含む試料(ルリコナゾール+ポリビニルピロリドン溶液)を示す。図1A~Dについて、それぞれ上段が光学顕微鏡観察像、下段が偏光顕微鏡観察像を示す。
図2図2は、実施例2の組成物が被膜を形成する過程を示す図(図面代用写真)である。写真は、滴下後、0.5分後の写真である。引き出し線は、現れ始めたミセルを示す。
図3図3は、実施例2の組成物が被膜を形成する過程を示す図(図面代用写真)である。写真は、滴下後、1分後の写真である。ミセルが分散した構造を示す。
図4図4は、実施例2の組成物が被膜を形成する過程を示す図(図面代用写真)である。写真は、滴下後、3分後の写真である。連続相様の非晶質に、ミセル様構造の非晶質が分散した被膜を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1)本発明の非晶質化剤
本発明の非晶質化剤は、一般式(1)で表される化合物及び/またはその塩の非晶質化
剤であって、水溶性高分子及び酸から選ばれる1種又は2種以上からなることを特徴とする。
前記水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどのビニル系水溶性高分子、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルローステレフタレート、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース系水溶性高分子、アラビアゴム、トラガカントゴム、キサンタンゴムなどの多糖類水溶性高分子などが好適に例示できる。これらのうちビニル系水溶性高分子又はセルロース系水溶性高分子が好ましく例示できる。ビニル系高分子としては、ポリビニルピロリドン又はカルボキシビニルポリマーが好ましく例示でき、セルロース系水溶性高分子としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース又はエチルセルロースが好ましく例示できる。水溶性高分子として、1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
又、酸としては、有機酸や無機酸が好ましく例示でき、前記有機酸としては、クエン酸、乳酸、グルコン酸などのヒドロキシ酸、蓚酸、酒石酸、アジピン酸などの二塩基酸、ギ酸、酢酸などのカルボン酸などが好ましく例示でき、ヒドロキシ酸又は二塩基酸が特に好ましい。中でも、ヒドロキシ酸としては乳酸が好ましく、二塩基酸としては酒石酸が特に好ましい。前記無機酸としては、鉱酸などが好ましく例示できる。酸として、1種又は2種以上を用いることができる。
【0022】
水溶性高分子及び酸は、ただ1種を用いることもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。好ましい態様は、水溶性高分子と酸とを併用する態様である。
【0023】
本発明の非晶質化剤は、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の総質量に対して、0.05~10倍の質量で用いることが好ましく、より好ましくは0.5~5倍の質量、更に好ましくは0.7~3倍の質量が例示できる。これは量が少ないと充分に非晶質化できない場合が存し、多すぎると剤形的な制限が生じるためである。水溶性高分子と酸とを併用した場合、その質量比は酸に対して水溶性高分子が1~15質量%になるように設定することが好ましく、4~10質量%になる様に設定することがより好ましい。
【0024】
本発明の非晶質化剤としては、一般式(1)で表される化合物としてルリコナゾールを用いた場合には、非晶質化剤としては、乳酸とポリビニルピロリドンの組み合わせが好ましく、ラノコナゾールを用いた場合には、ヒドロキシプロピルセルロース、酒石酸及び乳酸の組み合わせが好ましい。
【0025】
(2)一般式(1)で表される化合物及び/またはその塩
本発明の非晶質化剤が対象とする化合物は、一般式(1)で表されることを特徴とする。
一般式(1)において、R1、R2で表される基は、水素原子又はハロゲン原子であり、当該ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子などが好適に例示でき、水素原子又は塩素原子が特に好ましい。
【0026】
一般式(1)で表される化合物及び/またはその塩のうち、特に好ましいものは、ルリコナゾール(R1=R2=Cl;(R)-(-)-(E)-〔4-(2,4-ジクロロフェニル)-1,3-ジチオラン-2-イリデン〕-1-イミダゾリルアセトニトリル)とラノコナゾール(R1=Cl、R2=H;4-(2-クロロフェニル)-1,3-ジチオラン-2-イリデン-1-イミダゾリルアセトニトリル)であり、ルリコナゾールが特に好ましい。
かかる化合物は、例えば、特開昭60-218387号に記載されている方法に従って
合成することができる。具体的には、下記式に記載の方法により合成することができる。即ち、以下のように、1-シアノメチルイミダゾールと二硫化炭素とを反応させ、(III)の化合物を得、これと脱離基を有する一般式(II)の化合物と反応させることにより、一般式(I)で表される化合物を得ることができる。脱離基としては、例えば、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基又はハロゲン原子等が好適に例示できる。下記式中、R及びXは、水素原子又はハロゲン原子を表す。
【0027】
【化5】
【0028】
本発明の非晶質化剤が対象とする一般式(1)で表される化合物は、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等ともに生理学的に許容できる塩と為して用いることもできる。この時、塩は前記非晶質化剤の存在下、安定に存在できる塩とする。
【0029】
(3)本発明の非晶質の組成物
本発明の非晶質の組成物は、前記本発明の非晶質化剤と、前記一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩とを必須の構成とする。本発明の非晶質の組成物は、一般式(1)で表される化合物及び/又は塩と、該化合物/又はその塩の質量の0.05~10倍の質量の非晶質化剤を均一に混合し、溶媒揮散させ固化させて得ることができる。また、一般式(1)で表される化合物及び/又は塩と、該化合物及び/又はその塩の質量の0.05~10倍の質量の非晶質化剤を均一に混合させて得られる組成物は、本発明の組成物である。本発明の組成物は、一般式(1)で表される化合物及び/又は塩と、非晶質化剤に加え、さらに、溶媒を含んでもよい。本発明の組成物は、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩が、抗真菌効果を有することから、医薬組成物であってよく、好ましくは抗真菌医薬組成物、より好ましくは爪用の抗真菌医薬組成物である。また、本発明の組成物は、医薬品調製用の組成物、即ち、医薬品製造のための中間仕掛品であってよい。
本発明の非晶質の組成物もまた、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩が、抗真菌効果を有することから、医薬組成物であってよく、好ましくは抗真菌医薬組成物、より好ましくは爪用の抗真菌医薬組成物である。
該医薬組成物の剤形としては、被膜剤形が好ましい。その使用態様は、患者の体重、年令、性別、症状等を考慮して適宜選択できるが、通常成人の場合、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩を1日当たり0.01~1g投与するのが好ましい。また、真菌による疾病に通常使用されている一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の使
用量を参考にすることができる。
例えば、一日に一回又は数回、疾病の箇所に適量を塗布することが例示でき、かかる処置は連日行われることが好ましい。
【0030】
かかる組成物は必須成分以外に、医薬組成物等で用いられる任意の成分を含有することができる。この様な任意成分としては、例えば、賦形剤、分散剤、矯味矯臭剤、着色剤、界面活性剤等が好適に例示できる。本発明の組成物における任意成分の割合は、非晶質を保つ限りにおいて制限はないが、大凡、その上限は非晶質の組成物全体に対して、50質量%が好ましい。すなわち、かかる組成物は、非晶質化剤と、前記一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩とを、非晶質の組成物全体に対して、50質量%超~100質量%含有することができる。非晶質化剤と、前記一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩との配合割合は、「(1)本発明の非晶質化剤」に前記された配合割合と同様である。
【0031】
また、本発明は、本発明の非晶質化剤による、一般式(1)で表される化合物及び/またはその塩の非晶質化方法に関する。本発明の非晶質化方法は、一般式(1)で表される化合物及び/又は塩と、該化合物/又はその塩の質量の0.05~10倍の質量の非晶質化剤を均一に混合し、固化させることを含む。一般式(1)で表される化合物及び/またはその塩と、非晶質化剤を均一に混合する方法としては、例えば、一般式(1)で表される化合物及び/またはその塩を溶媒で溶解し、非晶質化剤を加えて混合する方法が挙げられる。固化させる方法としては、例えば、混合後室温下保存し、溶媒除去することにより為しうる。
【0032】
また、本発明は、本発明の非晶質の組成物を中間仕掛品として、該中間仕掛品を溶解する工程を含む、一般式(1)で表される化合物及び/又は塩を含有する医薬組成物の製造方法に関する。
中間仕掛品としての本発明の非晶質の組成物は、溶解しやすい安定な中間仕掛品を提供する。この様な中間仕掛品を用いることにより、類縁体生成の少ない一般式(1)で表される化合物及び/又は塩を含有する医薬組成物の製造方法が提供できる。
【0033】
また、本発明の非晶質の組成物は、医薬品において、製品としての最終塗膜、製品製造のための中間仕掛品として用いることもできる。
【0034】
本発明の非晶質の組成物は、一般式(1)で表される化合物及び/またはその塩を安定に含有する医薬組成物を得るための中間仕掛品(「製造中間体」、「中間品」とも言う)とすることができる。この様な中間仕掛品を用いることにより、医薬組成物製造過程での類縁体の生成を少なく抑えることができる。
【0035】
また、本発明の非晶質の組成物は、製品としての塗膜製剤、あるいは、最終的に医薬組成物を対象部位に投与した際に生じる被膜であってよく、この様な非晶質化により、一般式(1)で表される化合物及び/またはその塩の皮膚への透過性を高め、且つ、組織内濃度を長時間高く保つこともできる。これは非晶質がリザーバーとして機能するためである。この様な最終製剤としての膜の非晶質化も、膜が非晶質膜という特質を有している限りにおいて、本発明の権利の関与するところである。
【0036】
前記最終製品としての塗膜は、例えば、顆粒等の担体上に有効成分の被膜として形成せしめ用いることもできるし、例えば、皮膚や爪上に形成する医薬組成物の塗膜として用いることもできる。この様な非晶質の組成物の塗膜は、有効成分である一般式(1)で表される化合物及び/又は塩の生体利用率を高めることができる。これは前記のリザーバー効果による。
【実施例
【0037】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
ルリコナゾール1質量%含有エタノール溶液と、ルリコナゾール1質量%及びポリビニルピロリドン0.1質量%含有エタノール溶液を調製し、スライドグラス上に滴下し、その性状を、滴下直後、滴下後室温保存4時間、滴下後室温保存1日、滴下後室温保存4日に顕微鏡下観察した。顕微鏡観察は、通常の光学顕微鏡及び偏光顕微鏡で行った。結果を図1に示す。これより、本発明の非晶質化剤により、結晶化に差異が見られ、ポリビニルピロリドンが非晶質化剤として作用していることがわかる。このように、結晶と非晶質が混在する場合においても、本来結晶のみであるべき状態であるものが、本発明の非晶質化剤を含有することにより、非晶質が並存する(非晶質構造が現れる)場合には、本発明の非晶質化剤の効果と判断する。
【0039】
<実施例2>
以下に示す処方の医薬組成物1について、次に示す手順で被膜製剤を製造した。
【0040】
【表1】
【0041】
ルリコナゾールと、エタノールとを合わせ、70℃で加熱攪拌し可溶化させ、次いで、乳酸とポリビニルピロリドンとを加え、70℃で加熱攪拌し、可溶化を確認した後、残りの溶剤成分を加え希釈し、攪拌可溶化し、可溶化を確認した後、室温まで攪拌冷却して医薬組成物1を得た。
【0042】
<製造された医薬組成物1の被膜形成過程>
医薬組成物1 1mLをチューブに取り、これに10mgのニュートラルレッドを200μLのメタノールで溶解させた液を100μL加え、良く攪拌した後、スライドグラスに滴下し、室温下、溶剤揮散、被膜形成過程を顕微鏡(400倍)で観察した。観察の経過を図2~4に示す。一様な相に、ミセル様の構造が現れはじめ(図2)、このミセル構造が増加し(図3)、連続相様の構造にミセル様の構造が一様に分散した非晶質の膜(図4)が観察された。これより、本発明の非晶質化剤である、ポリビニルピロリドンと乳酸の非晶質化効果が確かめられた。
【0043】
<実施例3>
実施例2に示す手順に従い、以下の表2に示す処方の医薬組成物2及び3(被膜製剤)
を製造した。さらに、実施例2に記載する方法に従い被膜形成過程を顕微鏡(400倍)で観察した。医薬組成物1と同様に、医薬組成物2及び3には、連続相様の構造にミセル様の構造が一様に分散した非晶質の膜が観察され非晶質化効果が認められた。
【0044】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、医薬品及び医薬品製造に応用できる。
図1
図2
図3
図4