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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】活性化触媒の自己加熱を制限する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20220209BHJP
   B01J 31/34 20060101ALI20220209BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
B01J37/02 301Z
B01J31/34 M
B01J37/00 F
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2015134398
(22)【出願日】2015-07-03
(65)【公開番号】P2016016405
(43)【公開日】2016-02-01
【審査請求日】2018-06-25
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】1456359
(32)【優先日】2014-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512021210
【氏名又は名称】ユーレキャット ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】ピエール デュフレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】パウリーヌ ガリュ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー バフェール
(72)【発明者】
【氏名】シャラス キルマッキ
【合議体】
【審判長】日比野 隆治
【審判官】原 賢一
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-104499(JP,A)
【文献】特公昭53-43475(JP,B2)
【文献】特開昭56-40151(JP,A)
【文献】米国特許第2976253(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化により活性化されている炭化水素の水素化処理のための触媒粒子の自己加熱を制限する方法であって、該活性化触媒粒子が、これらを通過し30~150℃の範囲の温度を有する高温ガス流内に運動状態で配置される一方で、溶媒と0.1~50質量%の1種以上のフィルム形成ポリマーとを含む液状組成物が、該粒子の表面上に該フィルム形成ポリマーを含む保護層が得られるまで、該動いている粒子上で霧化され、該保護層が20μm以下の平均の厚みを持ち、前記液状組成物が、溶液または分散液であり、前記1種以上のフィルム形成ポリマーが、ビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリサッカライド、およびこれらの混合物から選択され、前記方法が、
- 有孔ドラム内で実施され、その中で、前記触媒粒子が、該有孔ドラムを連続的に通過する前記高温ガス流とともに運動状態に置かれるか、または
- 前記高温ガス流によって、前記触媒粒子を流動床に配置することにより実施される、
前記方法。
【請求項2】
前記液状組成物が、該組成物の全質量に対して、0.5~25質量%のフィルム形成ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒粒子を通過するガス流が、50~100℃の範囲の温度を持つ、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガスの流量が、1時間当たりかつ触媒1kg当たり5~100m3の範囲にある、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記保護層が、50~100質量%の1種以上のフィルム形成ポリマーを含む、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記保護層が、完全に1種または数種のフィルム形成ポリマーから形成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記フィルム形成ポリマーが、ポリビニルアルコール、および、ビニルアルコールとオレフィンモノマーとから形成されるコポリマーの中から選択される、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記フィルム形成ポリマーが、エチレンとビニルアルコールモノマーとから形成されるコポリマー(EVOHコポリマー)の中から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記保護層の平均の厚みが、0.2~10μmの範囲にある、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記使用されるフィルム形成ポリマーの全量が、前記保護層で被覆する前の前記活性化触媒の全質量に対して、0.1~6質量%の範囲にある、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記使用されるフィルム形成ポリマーの全量が、前記保護層で被覆する前の前記活性化触媒の全質量に対して、0.5~4質量%の範囲にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記活性化触媒粒子によって排出される可能性のある有毒ガスの量を減じるための、請求項1~11の何れか1項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性化触媒の、例えばその保存中、取扱い中および輸送中の自己加熱を制限する方法に関する。
本発明によれば、該方法は、またこれらの触媒により放出される可能性のある有毒ガスを制限することをも可能とする。
同様に、本発明の目的は、上記した方法により得られる、被覆され活性化された水素化転化触媒にある。
本発明の方法によって処理し得る触媒は、例えば炭化水素処理工程、特に石油精製および石油化学の領域において、およびより特定的には炭化水素の水素化転化工程において使用されている触媒であるが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0002】
精油所および/または石油化学ユニットにおいて行われている炭化水素処理工程は、場合により水素の存在下で行われる一定数の処理を含み、これら処理は、該炭化水素分子の構造を変えることを目的とした、および/または、望ましからぬ化合物、例えば硫黄、窒素、芳香族および金属化合物から、炭化水素化された留分を排除するための処理である。非限定的な例としては、水素化分解または水素化転化、改質、異性化、アルキル化、水素化、脱水素化工程および所謂水素化処理工程、例えば水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱芳香族(hydrodearomatization)、水素化脱金属、水素化脱酸素工程を挙げることができる。
これら炭化水素処理工程の多くは、「触媒粒子(catalyst grains)」とも呼ばれる固体粒子触媒に頼っている。これらの触媒粒子は、1種または2種の耐火性無機酸化物基材で作られた多孔質支持体を含んでおり、該支持体上には1種または数種の触媒的に活性な金属が堆積されている。これらの金属は、殆どの場合、元素の周期分類の第VIII族に属する1種またはそれ以上の金属、および/または1種または数種の第VIB族に属する金属を含む。
上記炭化水素処理反応の速度論は、とりわけ、上記触媒の孔内に存在する触媒サイトに向かう、該炭化水素分子の拡散速度によって制限(しばしばサイズによりかなりの程度に)される。それが、製造業者等ができる限り大きな比表面積および多孔度を持つ触媒を調製しようとしている理由であり、このことは小さなサイズの粒子触媒へと導く。
【0003】
上記触媒製造の終了時点において、または以前に既に使用された触媒の場合におけるその再生の終了時点において、その活性金属は、それ自体は活性でない金属酸化物に変化している。
上記触媒が、上記様々な炭化水素処理工程に対して活性であり得るためには、該触媒の活性化が必要とされ、換言すれば該金属酸化物を活性な金属種に変換するために、該触媒の処理が必要とされる。
それ故、炭化水素の水素化処理触媒の場合、活性化は、一般的に該触媒の硫化によって行われ、該硫化は硫黄化合物によって該触媒の処理を行うことからなっており、これは、少なくとも部分的に該金属酸化物を、該触媒の活性相を構成する混合硫黄(mixed sulfurs)に変換することを目的としている。
この活性化段階は特に重要であり、その理由は、この段階が該触媒を後に使用する際のその活性を条件付けるからである。
上記触媒のこの活性化は、その場で(換言すれば、反応器を始動する前に、該触媒を使用する該反応器内で直接)または実験施設内(換言すれば、該反応器の外部)で行うことができる。
これらユニットの収率を最適化するために、および特に触媒が使い果たされた場合の、上記反応器における触媒更新操作中の該ユニットの停止時間を減じるために、益々該触媒の活性化処理は、実験施設内で行われることになる。
【0004】
故に、触媒は、硫黄化合物を使用する特別な処理ユニット内で活性化され、次いで多少とも長期間に渡り保存することができ、該保存期間は、該触媒が装填されることになる反応器に搬送される前に、しばしば2か月にも及ぶ可能性がある。
しかし、活性化触媒は、とりわけ化学的に不安定になるという欠点を持つ。活性化金属サイトは特に感度が高く、また該サイトは、例えば空気と接触した際に反応する。硫黄触媒の場合、該触媒粒子の表面に存在する金属硫化物は反応性であり、また有毒ガスであるSO2の形成へと導く可能性のある発熱性酸化反応を引起す。
このSO2の形成は、装填中に存在する職員にとっての危険因子に相当する現象である。例えば、該触媒床の小部分が自己加熱を経ると即座に、このガスが上記反応器内で生成する恐れがある。しかし、短期間に渡る許容暴露限度閾値は極めて低い(5ppm)。
活性化触媒は、また結果として自己加熱現象をもたらすことが知られており、また特に保存、輸送および取扱い中に、厳格な予防策を講じなければならない。
ある材料の自己加熱特性は、UN(「危険物の輸送に関する勧告。テストおよび基準に関するマニュアル(Recommendation on the transport of dangerous goods. Manual for Tests and Criteria)」, ISSN 1014-7160, 第33.3章)の文書により記載された、国際的なテストにより特徴付けすることができる。このテストは、あるサンプルの自己加熱の程度を測定するための手順を説明しており、様々な温度(100、120または140℃)にて、1Lのボックス内で行われて、該材料が置かれるであろうカテゴリーを決定付ける。幾つかの場合においては、15mLの小さなボックスを用いる手順も使用することができる。
【0005】
あらゆる危険性を防止するために、自己加熱する触媒は、例えば窒素を用いて不活性雰囲気内に保持しなければならない。上記反応器内への活性化触媒の装填操作は、一般的に窒素を用いて行われ、これはこれらの操作を著しく複雑化し、またかなりの付随的な必要経費を発生する。
加えて、これらの予防策にも拘らず、活性化触媒の保存、輸送および取扱いは、その自己加熱性のために、大いに危険なままであり、またこれらの触媒と接触する職員および装置に対する危険性はかなりの程度残されたままである。
その結果として、一方でこれら活性化触媒の使用に係る危険性を出来得る限り減じ、かつ他方においてこれ等を不活性雰囲気内に保持する必要性を一掃することのできる、新たな解決策を見出し、同時に潜在的な有毒ガスの排出を、高度に制限する必要性がある。
その目的のために、一定数の解決策が、従来技術において提案されている。
例えば、特許US 5,681,787およびUS 3,453,217には、多少とも完全に、上記触媒粒子の多孔性を、殆どの場合炭化水素である、活性サイトの保護を目的とする化合物で満たすことを提案している。
しかし、従来技術において提案されたこれら解決策は、完全に満足なものではない。
【0006】
特に、上記解決策は、特別厳しい今日の規定に関して、上記活性化触媒の自己加熱特性を、常に十分に減じることを可能とするものではない。更に、これら解決策は、有害ガス排出の著しい低減をもたらすことはない。
しばしば、上記触媒を効果的に保護するために、比較的厚い保護材料の層を設ける必要があり、これは結果として上記反応器における触媒装填密度を低下し、またそれ故に該反応器の収率を低下する。事実、この層で占有される部分は、該粒子の実際の直径、および結果として各粒子によって占有される体積をもかなり増大する。結果として、必然的に制限される装填すべき該反応器の体積は、被覆された触媒の場合、上記保護材料により部分的に占有され、またこれは大きな厚みの該触媒層を含む場合にはなおさらである。触媒床の性能は、活性触媒物質の量に比例し、結果的に該性能は該被覆層が厚過ぎる場合にはかなり減じられる可能性があり、これは許容し得ない。更に、該保護材料層の除去中に、該保護層によって占有される体積は開放される。この占有体積がかなり大きい場合、該触媒床は変更されることになり、該床を介して循環する供給原料に対して優先的な通路を生成する可能性があり、これは該反応器内での該触媒床全体に渡る該供給原料の完全な分布に係る要件に反するものであり、また特に該ユニットの性能評定にとって有害となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、一方では上記活性化触媒の自己加熱現象を効果的に制限し、かつ他方において従来技術に係る上記方法の欠点を排除することを可能とする方法を提案することを目的としている。
意外なことに、本出願人は、上記活性化触媒粒子を、特定の方法を用いてフィルム形成ポリマーの極めて薄い保護層で被覆する方法により、この目的がうまく処理されることを見出した。該特定の方法において、該粒子は、高温ガス流内で移動し続け、一方で該フィルム形成ポリマーを含有する液状組成物が該粒子上で霧化される。
好ましくは、該霧化は、噴霧ノズルを用いて行われ、該ノズル内で、該液状組成物は加圧下にあるガス、好ましくは圧縮空気と混合され、該加圧ガスは極めて微細な液滴を得ることを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による方法の目的は、触媒粒子の外部表面に保護材料の連続相を生成することである。触媒を保護材料によって保護することからなる基本的原理は、既に従来技術において記載されているが、上記要件を満足する触媒を得ることは極めて複雑である。本出願人は、これら要件全てを効果的に満たすためには、特定のフィルム形成ポリマーを主成分とする保護材料を、高精度の被覆工程と関連付けるべきであることを発見した。
結果として、本発明の目的は、活性化粒子触媒の自己加熱を制限するための方法にあり、該方法において、触媒粒子は、これらを通過する高温ガス流内に運動状態で配置され、また1種または数種のフィルム形成ポリマーを含む液状組成物は、該粒子の表面上で、該フィルム形成ポリマーを含み、かつ20μm以下の平均の厚みを持つ保護層が得られるまで、該動いている粒子上で霧化される。
本発明によれば、上記の方法は、従来技術において説明した方法の欠点を改善することを可能とする。
本発明の方法により処理された活性化触媒では、その自己加熱性がかなりの程度まで減じられることが分かる。
更に、本出願人は、意外にも、本発明による方法が、特に効果的な方法で有毒ガスの排出を減じることができることを観測した。
即ち、本発明の方法で処理された触媒は、例えばかなりの体積を持つバッグまたは容器に入れて、大量に保存または運搬することができ、また特別な予防策なしに取扱う(例えば、反応器に装填)ことができる。
更に、本出願人は、本発明に従う方法が、上記活性化触媒を装填するユニットの良好な効率の維持を、保護層で被覆された触媒粒子の装填に起因する如何なる活性の実質的な喪失もなしに、可能とすることをも観測した。
最後に、このような保護の実施は、上記活性化触媒の活性に影響を及ぼすことはなく、該触媒が、最早該保護被覆を持たない状態となれば、該触媒は、その完全な活性を保持する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によれば、上記触媒粒子は、1種またはそれ以上のフィルム形成ポリマーを含む保護層で被覆されている。
本発明の意味において、「ポリマー」という用語は、少なくとも2つの繰返し単位、好ましくは少なくとも3つの繰返し単位およびより特別には少なくとも10個の繰返し単位を含む化合物として理解される。
「フィルム形成ポリマー」という用語は、それ自体既に公知である如く、それ自体でまたは補助的なフィルム形成剤の存在下で、支持体上に、例えば無機酸化物基礎材料、例えばアルミナ等の上に巨視的に連続フィルムを形成することのできるポリマーを意味する。
【0010】
本発明による保護層または被覆は、1種または数種の他の化合物と混合された1種または数種のフィルム形成ポリマーを含むことができ、該他の化合物はポリマーまたはポリマー以外であり得る。従って、本発明に従う保護層中に存在し得る該他の化合物は、該フィルム形成ポリマー(1または複数)との混合物として、上記動いている粒子上で霧化される上記液状組成物中に導入される。
上記保護層は、また完全に1種または数種のフィルム形成ポリマーからなっていてもよい。
好ましくは、本発明に従う保護層は、50~100質量%の1種または数種のフィルム形成ポリマーを含む。特に好ましくは、本発明に従う保護層は、完全に1種または数種のフィルム形成ポリマーで構成されている。
【0011】
好ましくは、本発明において使用するフィルム形成ポリマーは、以下に列挙するものから選択される:
・ビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマー、例えばポリビニルアルコールおよびビニルアルコールとオレフィンモノマーとから形成されるコポリマー、例えばエチレンとビニルアルコールモノマーとから形成されるコポリマー(EVOHコポリマー);
・部分的に加水分解されたビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマー、換言すれば依然として加水分解されていない酢酸ビニル単位を含むもの;
・ポリエチレングリコール;
・コラーゲン;
・ポリエチレンテレフタレート(PET);
・ポリエチレンナフタレート(PEN);
・ポリアミド;
・ポリサッカライド、特にセルロースポリマーおよびその誘導体(これらの中でもC1-C4アルキルセルロースが好ましく、またより一層特定的にはメチルセルロースである)およびことによっては加工でんぷん;
・ポリビニルクロリド(PVC);
・ポリビニリデンクロリド(PVDC);
・ポリアクリロニトリル(PAN);
・ポリアクリレート樹脂、例えば特にメチルポリアクリレート;
・コポリマーであって、そのモノマーの少なくとも一つが、アクリレート型のモノマーである該コポリマー;および
・これらの混合物。
【0012】
ポリビニルアルコールおよびビニルアルコールとオレフィンモノマーとから形成されるコポリマーが特に好ましい。後者の中で、特に好ましいものは、EVOHコポリマーとも呼ばれる、ビニルアルコールとエチレンモノマーとから作られるコポリマーである。
本発明によれば、上記フィルム形成ポリマー(1または複数)を含む上記液状組成物の霧化は、上記粒子の表面上で、規定された平均の厚み(いずれにしろ、20μm以下)を持つ保護層が得られるまで継続され、このことは、以下において定義するように、該所定の厚みを持つ保護層が得られた場合に、この霧化は停止されることを意味する。
本発明による保護層の平均の厚みは、20μm以下、および好ましくは10μm以下である。
より好ましくは、上記保護層の平均の厚みは、0.1~10μm、より一層好ましくは0.2~10μm、および更に一層好ましくは0.5~8μmの範囲にある。
上記触媒粒子を覆っている上記層または被覆の平均の厚みは、走査型電子顕微鏡法により測定し得る。
本発明によれば、使用するフィルム形成ポリマーの量は、出来得る限り完全な上記触媒粒子の被覆を可能とするに十分なものとし、一方で確実に該保護層をできる限り薄いままに留めておく必要がある。
その目的のために、使用するフィルム形成ポリマーの全量は、有利には、上記初期触媒の全質量に対して、0.1~6質量%、好ましくは0.5~4質量%、およびより一層好ましくは1~3質量%の範囲にある。
【0013】
上記初期触媒の全質量とは、ここでは未処理の、換言すれば本発明に従って上記保護層で被覆する前の活性化触媒の質量を示す。
本発明による上記保護層内に存在し得る、上記フィルム形成ポリマー(1または複数)並びに上記他の化合物は、これらを含有する液状組成物を霧化することにより上記触媒上に堆積される。
第一の態様によれば、上記触媒粒子上で霧化される上記液状組成物は水、有機溶媒または水と有機溶媒との混合物の中から選択される溶媒、並びに該溶媒中に溶解または分散された該フィルム形成ポリマー(1または複数)を含む。これは、また適用可能である場合には、1種または数種の安定剤をも含むことができる。
この場合、上記液状組成物が、溶媒中のフィルム形成ポリマーの溶液または分散液である場合、該組成物は、その全質量に対して、0.1~50質量%のフィルム形成ポリマー、および好ましくは0.5~25質量%、およびより一層好ましくは1~10質量%のフィルム形成ポリマーを含むことが有利である。
溶媒中の上記フィルム形成ポリマー(1または複数)の分散液の場合において、該分散されているポリマー粒子の大きさは、500nm以下および好ましくは200nm以下であることが有利である。
第二の態様によれば、上記触媒粒子上で霧化される上記液状組成物は、溶融状態にある上記フィルム形成ポリマー(1または複数)を含む。特に、該触媒粒子上で霧化される該液状組成物は、完全に、溶融状態にある該フィルム形成ポリマー(1または複数)によって構成されていてもよい。
【0014】
本発明によれば、上記触媒粒子は、これらを通過する高温ガス流内、換言すれば該動いている粒子の大部分を通過するガス流中に運動状態で配置されている。
この目的の実現を可能とする任意のデバイスを本発明に対して使用することができる。
第一の変形によれば、本発明による方法は、有孔ドラム内で実施することができ、該有孔ドラムにおいて、上記触媒粒子は運動状態に置かれ、また上記高温ガス流は、これを介して連続的に流れる。
第二の変形によれば、本発明の方法は、上記高温ガス流によって上記触媒粒子を流動床に配置することにより実施し得る。この変形において、本発明による方法は、バッチ式または連続式で行うことができる。
上記運動中の触媒粒子を通過する上記高温ガス流は、任意のガスまたはガス混合物からなるものであり得る。好ましくは、これは空気流である。
「高温」ガス流とは、温度が周囲温度よりも高い、換言すれば25℃よりも高いガス流であるものと理解される。
有利には、上記触媒粒子を通過する上記ガス流は、30~150℃の範囲、および好ましくは50~100℃の範囲の温度を持つ。
【0015】
上記ガスの流量は、有利には1時間当たりかつ触媒1kg当たり5~100m3の範囲にある。
上記フィルム形成ポリマー(1または複数)を含有する上記組成物は、好ましくは連続的に、上記運動中の触媒粒子上で微細な液滴に霧化される。
好ましくは、霧化は、噴霧によって、換言すれば加圧下にあるガス、好ましくは圧縮空気と混合された上記液状組成物を霧化することにより行われる。
一般に、上記液状組成物は、有利には25~200℃の範囲の温度にて霧化される。
上記液状組成物が溶媒に溶解または分散された状態にある上記フィルム形成ポリマー(1または複数)を含む場合には、該組成物は、好ましくは25~100℃の範囲の温度にて霧化される。
上記液状組成物が溶融状態にある上記フィルム形成ポリマー(1または複数)を含む場合には、該組成物は、50~150℃の範囲の温度にて霧化されることが好ましい。
本発明による方法が有孔ドラム内で実施される場合、霧化は、上記触媒床上面の上で行われることが好ましい。
本発明による方法が、流動床内に上記触媒粒子を配置することにより達成される場合には、霧化は、該触媒床上面の上または該床内部で直接行うことができる。
上述の方法は、上記粒子の外表面上に連続する保護層の生成を可能とし、これは、本発明による方法の最大の効率を保証する。
【0016】
上記触媒粒子を本発明に従う保護層で被覆した後、該粒子を、必要ならば、例えば外気中でまたはガス状空気流または任意の他の適当なガスの存在下で、乾燥することが可能である。
本発明による方法は、粒子の形状にある任意の固体状活性化触媒、例えば炭化水素供給原料の処理、例えば石油精製または石油化学の領域における該処理のために使用されるものに対して適用し得る。
「活性化触媒(activated catalyst)」との用語により、本発明においては、例えば空気および/または水分と接触した際に、自発的に反応し得る活性サイトを含む触媒を示す。
活性サイトは、水素化処理触媒の場合においては、特に金属硫黄(metal sulfurs)であり得る。
本発明による方法は、特に炭化水素の水素化転化用の活性化触媒の保護のために適用する。これら触媒は粒子の形状にあり、該粒子は耐火性酸化物支持体を含み、該支持体上には、元素の周期分類の第VIII族金属および同第VIB族金属の中から選択される少なくとも1種の金属硫黄が堆積される。
好ましくは、上記触媒は元素の周期分類の第VIII族に属する少なくとも1つの金属、例えばコバルト、ニッケル、鉄、パラジウム、白金を含む。これら金属は、第VIB族の少なくとも一つの金属、例えばモリブデン、タングステン、クロムと会合させることが可能である。1または複数の第VIII族金属の含有率は、一般的に、上記未保護触媒の全質量に対して、0.1~20質量%の間に位置し、しばしば50%までである。1または複数の第VIB族金属の含有率は、一般的に、該触媒(未保護)の全質量に対して、3~30質量%の間に位置する。
【0017】
好ましくは、上記触媒の支持体はアルミナ、シリカ、アモルファスまたは結晶化されたシリカ-アルミナ(ゼオライト(zeoliths))の中から選択される。より好ましくは、該支持体は少なくとも30質量%、およびより一層好ましくは少なくとも50質量%のアルミナを含む。
本発明による方法は、アルミナを主成分とする支持体上に堆積された、以下の金属会合体(metal associations):CoMo, NiMo, NiW, NiCoMoの一種を含む触媒を処理するのに特に適している。
これら触媒は、1種または数種の添加剤、例えば有機添加剤、ハロゲン、ホウ素、リン化合物を含むことができる。
本発明が対象とする上記触媒は、様々な形状、好ましくは球、円筒、またはマルチローブ(multi-lobe)形状をとっており、また該触媒に関する数の上での最大平均寸法は、一般的に5mmを超えない。
形状において円筒またはマルチローブである触媒粒子に関して、その数の上での平均直径は、一般に0.8~4mmの範囲にあり、また数の上でのその平均長さは、一般に2.5~5mmの範囲にある。幾つかの用途において、球形の粒子が使用され、該粒子に対する数の上での平均直径は、一般に1.5~5mmの範囲で変動する。
【0018】
上記触媒粒子の数の上での平均寸法は、既に知られているように、ビデオ粒度(video grain size)によりまたはノギスを用いることにより測定することができる。典型的には、レッチェ社(RETSCH company)により開発された、カムサイザービデオグレインサイザー(CAMSIZER video grain sizer)を使用することができる。
これらの触媒は、一般的に100~300m2/gの間にある、ベット(BET)法により測定された比表面、0.20~1mL/gの範囲の窒素吸収により測定された細孔容積、および7~20nmの範囲の窒素吸収により測定された平均孔径を持つことができる。
本発明による方法は、活性化処理が施されている新たな触媒、換言すれば未だ使用されていない触媒、並びに活性化された再生触媒、換言すれば炭化水素残渣(コークス)を除去し、また再利用を可能とすべく所定の活性レベルを回復するために再生されており、また引続き次に続く段階中に活性化された、使用済み触媒に適用される。
本明細書において、本発明による方法が、たとえ炭化水素処理工程において使用される特定の触媒に関連して記載されているとしても、該方法は、特に脆弱なおよび/または反応性のおよび/または有毒ガスを生成し易い活性サイトを表面に持つ、任意の固体粒子触媒を保護するために実施できる。
上記触媒粒子の脱保護は、好ましくはこれらが使用されている反応器内に一旦装入してから行われる。
【0019】
これは、上記触媒を、該粒子の表面に存在する上記材料の層が排除される条件下に置くことにより行われる。
特に好ましい方法では、本発明において使用される上記フィルム形成ポリマー(1または複数)は、上記触媒が使用される反応器の始動中に、上記供給原料と接触した場合に、自然に排除されるように選択される。この態様は、極めて簡単かつ経済的に、該反応器の始動時点において該触媒を覆っている該保護層を除去することを可能とする。
従って、上記フィルム形成ポリマー(1または複数)は、周囲温度乃至上記反応器の稼働温度の間の温度、換言すれば25℃~400℃の範囲の温度および大気圧~20MPaの間の圧力にて、分解しまたは上記供給原料によって洗い流されるポリマーの中から選択されることが好ましい。
より好ましい方法において、上記フィルム形成ポリマー(1または複数)は50℃~400℃、好ましくは100~300℃の範囲の温度にて、および0.1~10MPaの範囲の圧力にて分解しまたは上記供給原料によって洗い流される化合物の中から選択される。
供給原料とは、炭化水素処理触媒の場合においては、典型的に大気圧にて、75~650℃の範囲に沸点範囲を持つ炭化水素カットを意味し、これは液体またはガス状態で該触媒との接触状態に置くことができる。
同様に、本発明の目的は、上記活性化触媒により排出される可能性のある有毒ガスの量を減じるための、上述の如き方法の使用である。
最後に、本発明の目的は、上記方法により得ることのできる、連続する保護層で被覆された粒子の形状にある、炭化水素を水素化転化する活性化触媒にある。
【0020】
この触媒は、活性化された(換言すれば、活性サイトを含んでいる)触媒粒子で構成されており、また該触媒粒子各々は、その表面において、0.1~20μmという平均の厚みを有する連続な保護層によって被覆されており、該保護層が、
・ビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、および、ビニルアルコールとオレフィンモノマーとから形成されるコポリマー、例えば、エチレンとビニルアルコールモノマーとから形成されるコポリマー(EVOHコポリマー);
・部分的に加水分解されたビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマー、換言すれば、依然として加水分解されていない酢酸ビニル単位を含むもの;
・ポリエチレングリコール;
・コラーゲン;
・ポリエチレンテレフタレート(PET);
・ポリエチレンナフタレート(PEN);
・ポリアミド;
・ポリサッカライド、特にセルロースポリマーおよびその誘導体(中でも特にC1-C4アルキルセルロースが好ましく、またより一層好ましくはメチルセルロースである)および場合により加工でんぷん;
・ポリビニルクロリド(PVC);
・ポリビニリデンクロリド(PVDC);
・ポリアクリロニトリル(PAN);
・ポリアクリレート樹脂、例えば、特にメチルポリアクリレート;
・コポリマーであって、そのモノマーの少なくとも一つが、アクリレート型のモノマーである該コポリマー;および
・これらの混合物
の中から選択される1種または数種のフィルム形成ポリマーを50~100質量%含む。
【0021】
「連続な」層とは、各触媒粒子がそれによって完全に被覆されまたは覆われるような層を意味する。該層の厚みは、異なる粒子の間で、または一つのおよび同一の粒子の表面において可変であり得るが、該厚みは、各触媒粒子のあらゆる点において決してゼロに等しくはなく、また好ましくは該厚みは、局部的には(換言すれば、任意の点において)、該層の平均の厚みの30%未満では決してない。
上述の如く、上記保護層は、好ましくは完全に1種または数種のフィルム形成ポリマーで作られる。
ポリビニルアルコールおよびビニルアルコールとオレフィンモノマーとから作製されるコポリマーが、特に好ましい。後者の中では、とりわけエチレンとビニルアルコールモノマーとから作られるコポリマー、即ちEVOHコポリマーが好ましい。
上述の通り、本発明による上記保護層の平均の厚みは、好ましくは0.1~10μmの範囲にある。より好ましくは、該保護層の平均の厚みは、0.2~10μmの範囲、およびより一層好ましくは0.5~8μmの範囲にある。
本発明による活性化された水素化転化触媒を被覆するフィルム形成ポリマーの全量は、上記初期触媒に対して(換言すれば、本発明により保護層で被覆される前の、上記未保護の活性化触媒に対して)、0.1~4質量%、好ましくは0.5~4質量%、およびより一層好ましい方法では1~3質量%に相当する。
言うまでもないが、上記保護工程に関して上記した全ては、本発明に従って保護された触媒にも適用する。
以下の実施例は、本発明の単なる例証として与えられる。
【実施例
【0022】
以下の実施例は、市販の再生された水素化処理触媒を用いて行った。該触媒は、アルミナ支持体上に20質量%のMoO3および5質量%のCoOを含み、かつ数の上での平均直径1.3mmおよび数の上での平均長さ3.2mmを持つ、円筒形状の押出粒子で作られている。
上記触媒の活性化:この触媒は、分圧夫々0.8×105 および0.2×105Paにある水素および硫化水素のガス状硫黄還元混合物が供給されている回転オーブン内に導入されており、該ガスおよび該固体は向流式に循環されている。該固体の硫化は、ターニングチューブ(turning tube)内にある該固体物質の置換中の温度を、最大温度330℃まで段階的に増加させることによって実現され、該オーブン内の滞留時間は約4時間である。該固体を反応性雰囲気にて冷却し、かつ窒素パージした後、該固体物質を窒素希釈空気と接触状態に置き、結果としてその温度を45℃以下に維持する。
このようにして得られた活性化触媒を、以下において触媒Aと呼ぶ。該触媒は10.2質量%の硫黄含有率を有し、これは95%という金属サイトの硫化化学量論に相当する。
【0023】
実施例1 (本発明による):
触媒Aは以下のように処理された。
3kgの触媒Aを、体積18L(有効体積5L)を持つステンレススチール製有孔ドラム内に、20回転/分の回転速度にて配置させ、霧化の間、該触媒床の温度を70℃に維持するために、該ドラムを介して90℃にて160m3/時の高温空気流を完全に通す。該高温空気流は、該霧化ジェットに対して平行に、かつ同一の方向(下降流)に行われる。
水に5質量%にて、900gのEVOHポリエチレン-ポリビニルアルコールコポリマーを溶解した溶液(クラレ社(Kuraray company)によりエクセバル(EXCEVAL)との名称の下に市販されている)を、溶液流量7g/分で、二流体噴霧ノズルにより、該触媒粒子に注入した。
上記水を連続的に蒸発させたが、これはポリマー層の生成または該触媒粒子表面における被覆へと導く。
上記液体の完全な注入に続いて、上記触媒を依然として30分間70℃にて攪拌して、その乾燥を完全にし、次いで周囲温度にて冷却する。
このようにして、本発明による触媒Bを得た:上記粒子は、ポリエチレン-ポリビニルアルコールコポリマーの連続層で覆われており、該層に関する平均の厚みは、走査型電子顕微鏡法により観測された如く、5μmである。
触媒Bの分析は、該触媒が0.9%の炭素を含むことを示しており、これは、初期触媒Aに対して、該触媒上に堆積されたポリマーの1.5質量%に相当する。
【0024】
実施例2 (比較例):
触媒Aを、以下のように処理した:
3kgの触媒Aが、体積18L(有効体積5L)を持つ穿孔されていないステンレススチール製ドラム内に、20回転/分の回転速度にて配置され、また霧化の間、該触媒床を55℃に維持するために、95℃にて160m3/時の高温空気流が、該触媒床の表面に向けられる。該高温空気は、該ドラムの内側に位置する入口を通して入り、また、該触媒床(浸出床(leached bed))を通過することなしに、該ドラムの前部に位置する開口を通して出ていくが、このことは、熱交換がそれほど優れておらず、また結果として、該触媒床の内部では温度がそれほど高くないことを説明している。
水に5質量%にて、900gのEVOHポリエチレン-ポリビニルアルコールコポリマーを溶解した溶液(クラレ社(Kuraray company)によりエクセバル(EXCEVAL)との名称の下に市販されている)を、溶液流量5g/分で、噴霧ノズルにより、該触媒粒子に注入した。
上記水を連続的に蒸発させたが、これはポリマー層の生成または該触媒粒子表面における被覆へと導く。
【0025】
上記液体の完全な注入に続いて、上記触媒を依然として30分間55℃にて攪拌して、その乾燥を完全にし、次いで周囲温度にて冷却する。
このようにして触媒Cを得たが、これは本発明によるものではなく、これに関して、その粒子はポリエチレン-ポリビニルアルコールコポリマーの不連続層で被覆されており、該層に関する平均の厚みは、走査型電子顕微鏡法により観測された如く6μmであるが、これは極めて多くの局所的な厚みの変動を示す。特に、我々は、ポリマー層の存在が検出できなかった該触媒粒子の表面における点の存在に気付いた。ポリマー層が存在する地点において、その厚みは大きく変動し、0.1μm~約15μmに及んでいる。
触媒Cの分析は、これが0.8質量%の炭素を含むことを示しており、これは、初期触媒Aに対して、該触媒上に堆積されたポリマーの1.4質量%に相当する。
【0026】
実施例3 (比較例):
触媒Aを、以下のように処理した:
3kgの触媒Aを、体積18L(有効体積5L)を持つ穿孔されていないステンレススチール製ドラム内に、20回転/分の回転速度にて配置させ、また霧化の間、該触媒床を50℃に維持するために、80℃にて150m3/時の高温空気流が、該触媒床の表面に向けられる。該高温空気は、該ドラムの内側に位置する入口を通して入り、また、該触媒床を通過することなしに(浸出床(leached bed))、該ドラムの前部に位置する開口を通して出ていく。
酢酸エチルに20質量%にて、750gのポリアクリレート樹脂を溶解した溶液を、溶液流量4g/分にて噴霧ノズルを用いて該触媒粒子に注入した。
上記溶媒を連続的に蒸発させたが、これはポリマー層の生成または該触媒粒子表面における被覆へと導く。
【0027】
上記液体の完全な注入に続いて、上記触媒を依然として15分間50℃にて攪拌して、その乾燥を完全にし、次いで周囲温度にて冷却する。
このようにして触媒Dを得たが、これは本発明によるものではなく、これに関して、その粒子は、ポリアクリレート樹脂の不連続層で被覆されており、該層に関する平均の厚みは、走査型電子顕微鏡法により観測された如く20μmであるが、これは極めて多くの局所的な厚みの変動を示す。特に、我々は、ポリマー層の存在が検出できなかった該触媒粒子の表面における点の存在に気付いた。ポリマー層が存在する地点において、その厚みは大きく変動し、0.1μm~約50μmに及んでいる。
触媒Dの分析は、これが3質量%の炭素を含むことを示しており、これは、初期触媒Aに対して、該触媒上に堆積されたポリマーの5質量%に相当する。
【0028】
実施例4 (本発明による):
触媒Aを、以下のように処理した:
3kgの触媒Aを、体積18L(有効体積5L)を持つ穿孔されたステンレススチール製ドラム内に20回転/分の回転速度にて配置させ、それと共に霧化の間、該触媒床を45℃に維持するために、55℃にて150m3/時の高温空気流を該触媒床に十分貫流させる。該高温空気流は、該霧化ジェットに対して平行に、しかも同一の方向に(下降流)行われる。
酢酸エチルに20質量%にて、750gのポリアクリレート樹脂を溶解した溶液を、溶液流量4g/分で噴霧ノズルを用いて、該触媒粒子に注入した。
上記溶媒を連続的に蒸発させたが、これはポリマー層の生成または該触媒粒子表面における被覆へと導く。
上記液体の完全な注入に続いて、上記触媒を依然として30分間、45℃にて攪拌して、その乾燥を完全にし、次いで周囲温度にて冷却する。
このようにして本発明による触媒Eを得たが、これに関して、その粒子は、ポリアクリレート樹脂の連続層で被覆されており、該層に関する平均の厚みは、走査型電子顕微鏡法により観測された如く18μmである。
触媒Eの分析は、このものが3質量%の炭素を含むことを示すが、これは初期触媒Aに対して、該触媒上に堆積されたポリマーの5質量%に相当する。
【0029】
実施例5 (比較例):
本実施例においては、活性化された触媒Aに、上記実施例1におけるポリマー水性溶液を、脱イオン水(如何なるポリマーをも含まない)に変えることにより、実施例1において記載した方法と同一の方法を適用することによって、比較例触媒Fを製造した:
3kgの触媒Aを、体積18L(有効体積5L)を持つ十分に穿孔されたステンレススチール製ドラム内に、20回転/分の回転速度にて配置させ、霧化の間、該触媒床の温度を70℃に維持するために、該ドラムを介して90℃にて160m3/時の高温空気流を十分に通す。該高温空気流は、該霧化ジェットに対して平行に、かつ同一方向(下降流)に行われる。
次いで、900gの脱イオン水を、流量7g/分で、二流体噴霧ノズルを用いて、上記触媒粒子上に注入した。
上記水を連続的に蒸発させる。該液体の完全な注入に続いて、上記触媒を依然として30分間70℃にて攪拌して、その乾燥を完全にし、次いで周囲温度にて冷却する。
その結果として、比較例触媒Fを得た。
触媒Fの分析は、このものが少なくとも0.1質量%の炭素を含むことを示す。
【0030】
実施例6 (比較例):
本実施例においては、活性化された触媒Aに、上記した実施例5において記載したものと同様な方法を適用することにより、比較例触媒F'を製造した:
3kgの触媒Aを、体積18L(有効体積5L)を持つ十分に穿孔されたステンレススチール製ドラム内に、20回転/分の回転速度にて配置させ、霧化の間、該触媒床の温度を100℃に維持するために、該ドラムを介して130℃にて160m3/時の高温空気流を十分に通す。該高温空気流は、該霧化ジェットに対して平行に、かつ同一方向(下降流)に行われる。
次いで、900gの脱イオン水を、流量7g/分で、二流体噴霧ノズルを用いて、上記触媒粒子上に注入した。
上記水を連続的に蒸発させる。該液体の全注入に続いて、上記触媒を依然として30分間100℃にて攪拌して、その乾燥を完全にし、次いで周囲温度にて冷却する。
その結果として、比較例触媒F’を得た。
触媒F’の分析は、このものが少なくとも0.1質量%の炭素を含むことを示す。
【0031】
実施例7 (比較例):
本実施例においては、触媒Aを以下のように処理することによって、比較例触媒Gを製造した:
1kgの触媒Aを、体積3Lの穿孔されていないステンレススチール製ドラム内に、窒素雰囲気下で温度120℃にて、12回転/分の回転速度にて配置させた。
次いで、200gの鉱油(40℃における粘度120cPを持ち、トータル(Total)によりルーベオイル600ナチュラル(Lube Oil 600 Neutral)との名称の下に市販されている)を、流量6g/分で、上記触媒上で霧化させた。
上記オイルの完全な注入に続いて、上記触媒を周囲温度にて冷却する。
このようにして、比較例触媒Gを得た。
【0032】
実施例8 (上記得られた触媒の特徴付け):
上記実施例1~7において記載された触媒A~Gの特性を、以下の各パラメータを測定することにより評価した:
臨界自己加熱温度(Critical Self Heating Temperature)-CSHT
このパラメータは、UN標準に類似する手順(「危険物の輸送に関する勧告。テストおよび基準に関するマニュアル(Recommendation on the transport of dangerous goods. Manual for Tests and Criteria)」, ISSN 1014-7160,§33.3文書に記載されているテスト)を用いて、上記活性化された触媒の自己加熱特性を特徴付けする。このCSHTテストは、サンプルの体積のみが異なる2つの変法に従って行うことができる。このテスト手順は以下の通りである:
空気を通過させている立方形金属グリルボックスに、触媒サンプルを設置した。熱電対を該サンプル内に据え、また該ボックスを、サーモスタットを備えたオーブン内に設置する。
上記触媒の温度が、24時間の期間に渡り、60℃を超える差で上記オーブンの温度よりも高くない場合、同一の触媒の新たなサンプルを用い、かつ該オーブン温度を10℃だけ高めて、上記テストを繰り返す。
【0033】
これは、最大到達オーブン温度に相当する温度T1を決定する。これに関連して、上記触媒温度はT1+℃よりも高くなることはない。
上記臨界自己加熱温度、即ちCSHTは以下のように定義される:
CSHT(℃) = T1(℃) + 5℃
上記テストの第一の変形に関連して、上記立方形ボックスは、1Lの体積を有し、またこのようにして得られる温度は、CSHT-1Lと呼ばれた。該テストの第二の変形に関して、該立方形ボックスは、15mLの体積を有し、またこのようにして得られる温度は、CSHT-15mLと呼ばれた。
ヒドロサルフュレーション(hydrosulfuration)活性
各触媒のヒドロサルフュレーション活性を、パイロットユニットで測定した。
使用した供給原料は、以下の特徴を持つ「直留」ディーゼル燃料である。
【0034】
【0035】
各サンプルに対して、本テストのために使用した上記触媒の体積は10mLである。
上記水素化脱硫テストを開始する場合、上記ディーゼル燃料の供給原料は、VVH=3/時で注入され、また反応器は水素圧(30×105Pa)の下に置かれ、次いでその温度は320℃まで0.5℃/分にて高められる。この320℃というレベルを、テスト条件を用いる手順に先立って、5時間に渡り維持する。活性化された触媒に対するこの標準的な始動段階は、該触媒粒子を脱保護するのに十分である。
次いで、上記テスト供給原料を注入して、実際のテストを開始する。そのテスト条件は以下の通りであった:4MPa(40バール)の圧力;300というH2/軽油(gazole)(ディーゼル燃料)比;VVH=2/時;357~367℃の温度;6日間というテスト期間。
上記供給原料の硫黄含有量は、UV蛍光分析装置によって、上記ユニットの出口において測定される。上記脱硫反応の見掛けの定数は、以下の式E1に従って計算された:
ここで、Kv = 見掛けの反応定数;
α = 上記反応の次数(1.2に等しいものと考えられる);
S = 上記流出液の硫黄含有量;
S0 = 上記供給原料の硫黄含有量;
VVH = 上記液状供給原料の1時間当たりの体積速度。
【0036】
各サンプルの性能は、基準触媒の性能に対して評価された。そのために、相対容量活性(Relative Volume Activity; RVA)を、以下のEV式に従って計算した:
RVA = [Kv(サンプル)/Kv(基準)]×100 (E2)
基準としては、100というKvの値を、活性化触媒Aに割り当てた。
低温SO 2 排出
25gの触媒サンプルを計量し、次いで空気と共に1Lの容器に配置し、次にこれを、セプタムを備えたプラグを用いて封止する。次いで、この容器を、50℃にてサーモスタットを備えた加熱室内に、24時間に渡り設置する。24時間後、該容器を取出し、周囲温度にて放冷する。次に、シリンジを用いて該セプタムを介してサンプリングすることによって、該容器内に含まれるガスについて、SO2分析を行う。このガス分析は、該触媒から排出されるSO2のppmでの結果を即座に与える。
各触媒に対して、該触媒の製造直後に、2つの臨界自己加熱温度(CSHT-1LおよびCSHT-15mL)、RVA活性およびSO2形成を測定した。
各触媒に対して得られた結果を、以下の表1にまとめる:
【0037】
【0038】
上記結果は、活性化触媒Aが新たに活性化され、次いで空気安定化された状態におけるこの型の触媒にとって典型的な、低い臨界自己加熱温度(65℃)を持つことを示している。
本発明の方法で得られたフィルム形成ポリマーの層により与えられた保護が、特別に効率的な方法で、上記活性化触媒Aに関係する自己加熱の低減を可能とする:1Lボックスに関する上記臨界自己加熱温度はかなり増加する。というのは、該温度が触媒Bについて125℃であり、かつ触媒Eについて105℃であるからである。
更に、これら2つの触媒は、初期触媒Aよりも十分に低く、かつ5ppm閾値以下のSO2の排出を示す。
比較すると、上記保護を無孔ドラム内で行い、触媒粒子を介して空気流を通していない、本発明によらない触媒CおよびDは、85℃というCSHT-1Lを持つことから考えて、極めて高い自己加熱の特徴を持つ。加えて、そのSO2排出は、両者の場合において高いままである(15および50ppm)。結果として、これら2つの例は、上記フィルム形成ポリマーを含有する上記組成物の霧化の間に、該触媒粒子を通して空気流を循環させることによって、本発明による方法を実施することの重要性を示している。
【0039】
触媒FおよびF’は「ブランク」テストに相当し、これらは被覆条件(水の霧化および高温空気流)自体の、該触媒に及ぼす影響を容易に立証することを可能とする。CSHT-1Lが夫々65および85℃であるこれら2つの触媒の自己加熱特性は、従来技術により既に公知の活性相酸化(active phase oxidation)による不動態化方法と統一がとれている。該SO2の排出は、触媒F'について大きく増大しており、このことは、触媒Aが空気流の下に100℃にて配置された場合の、該活性相の比較的高い酸化的安定化により説明し得る。
また、保護材料としての鉱油の使用は、穏やかな臨界自己加熱温度の上昇およびSO2排出の僅かな減少に導き、フィルム形成ポリマーを用いた本発明による触媒BおよびEについて達せられたこれらの値と比較して低いままの値にある。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕活性化粒子触媒の自己加熱を制限する方法であって、該触媒粒子が、これらを通過する高温ガス流内に運動状態で配置され、および1種以上のフィルム形成ポリマーを含む液状組成物が、該粒子の表面上に該フィルム形成ポリマーを含む保護層が得られるまで、該動いている粒子上で霧化され、該保護層が20μm以下の平均の厚みを持つことを特徴とする、前記方法。
〔2〕前記液状組成物が、溶媒中の前記フィルム形成ポリマーの溶液または分散液であり、かつ該組成物の全質量に対して、好ましくは0.1~50質量%のフィルム形成ポリマー、より好ましくは0.5~25質量%、およびより一層好ましくは1~10質量%のフィルム形成ポリマーを含む、前記〔1〕記載の方法。
〔3〕前記方法が、有孔ドラム内で実施され、該有孔ドラム内で、該ドラムを連続的に通過する高温ガス流とともに、前記触媒粒子が運動状態に置かれる、前記〔1〕または〔2〕の1項に記載の方法。
〔4〕前記方法が、前記高温ガス流によって、触媒粒子を流動床に配置することにより実施される、前記〔1〕または〔2〕の1項に記載の方法。
〔5〕前記触媒粒子を通過するガス流が、30~150℃の範囲、および好ましくは50~100℃の範囲の温度を持つ、前記〔1〕~〔4〕の何れか1項に記載の方法。
〔6〕前記ガスの流量が、1時間当たりかつ触媒1kg当たり5~100m 3 の範囲にある、前記〔1〕~〔5〕の何れか1項に記載の方法。
〔7〕前記保護層が、50~100質量%の1種以上のフィルム形成ポリマーを含み、かつ好ましくは該保護層が、完全に1種または数種のフィルム形成ポリマーから形成される、前記〔1〕~〔6〕の何れか1項に記載の方法。
〔8〕前記フィルム形成ポリマーが、
・ビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、および、ビニルアルコールとオレフィンモノマーとから形成されるコポリマー、例えば、エチレンとビニルアルコールモノマーとから形成されるコポリマー(EVOHコポリマー);
・加水分解されていない酢酸ビニル単位を含む、部分的に加水分解されたビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマー;
・ポリエチレングリコール;
・コラーゲン;
・ポリエチレンテレフタレート(PET);
・ポリエチレンナフタレート(PEN);
・ポリアミド;
・ポリサッカライド、特にセルロースポリマーおよびその誘導体(中でも特にC 1 -C 4 アルキルセルロース、また一層特定的にはメチルセルロース)、および、場合により加工でんぷん;
・ポリビニルクロリド(PVC);
・ポリビニリデンクロリド(PVDC);
・ポリアクリロニトリル(PAN);
・ポリアクリレート樹脂、例えば、特にメチルポリアクリレート;
・コポリマーであって、そのモノマーの少なくとも一つが、アクリレート型のモノマーである該コポリマー;および
・これらの混合物
の中から選択される、前記〔1〕~〔7〕の何れか1項に記載の方法。
〔9〕前記フィルム形成ポリマーが、ポリビニルアルコール、および、ビニルアルコールとオレフィンモノマーとから形成されるコポリマーの中から、および好ましくはエチレンとビニルアルコールモノマーとから形成されるコポリマー(EVOHコポリマー)の中から選択される、前記〔8〕記載の方法。
〔10〕前記保護層の平均の厚みが、10μm以下であり、および好ましくは0.2~10μm、およびより一層好ましくは0.5~8μmの範囲にある、前記〔1〕~〔9〕の何れか1項に記載の方法。
〔11〕前記使用されるフィルム形成ポリマーの全量が、前記初期触媒の全質量に対して、0.1~6質量%、好ましくは0.5~4質量%、および、より一層好ましくは1~3質量%の範囲にある、前記〔1〕~〔10〕の何れか1項に記載の方法。
〔12〕前記活性化触媒によって排出される可能性のある有毒ガスの量を減じるための、前記〔1〕~〔11〕の何れか1項に記載の方法の使用。
〔13〕前記〔1〕~〔11〕の何れか1項に記載の方法によって得ることができ、活性化触媒粒子から形成された、活性化された、炭化水素の水素化転化触媒であって、該触媒粒子各々は、その表面において、0.1~20μmの範囲の平均の厚みを持つ連続的な保護層によって被覆されており、該保護層が、
・ビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマー;
・部分的に加水分解されたビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマー;
・ポリエチレングリコール;
・コラーゲン;
・ポリエチレンテレフタレート(PET);
・ポリエチレンナフタレート(PEN);
・ポリアミド;
・ポリサッカライド;
・ポリビニルクロリド(PVC);
・ポリビニリデンクロリド(PVDC);
・ポリアクリロニトリル(PAN);
・ポリアクリレート樹脂;
・コポリマーであって、そのモノマーの少なくとも一つが、アクリレート型のモノマーである該コポリマー;および
・これらの混合物
の中から選択される1種または数種のフィルム形成ポリマーを50~100質量%含み、
該フィルム形成ポリマーの全量が、前記初期触媒の全質量に対して、0.1~0.4質量%に相当することを特徴とする、前記触媒。
〔14〕前記保護層が、完全に1種または数種のフィルム形成ポリマーから形成されている、前記〔13〕記載の触媒。
〔15〕前記フィルム形成ポリマーが、ポリビニルアルコール、および、ビニルアルコールとオレフィンモノマーとから形成されるコポリマー、例えば、エチレンとビニルアルコールモノマーとから形成されるコポリマー(EVOHコポリマー)の中から選択される、前記〔13〕および〔14〕の1項に記載の触媒。
〔16〕前記保護層の平均の厚みが、0.1~10μm、好ましくは0.2~10μm、およびより一層好ましくは0.5~8μmの範囲にある、前記〔13〕~〔15〕の何れか1項に記載の触媒。
〔17〕前記フィルム形成ポリマーの全量が、前記初期触媒の全質量に対して、0.5~4質量%、およびより一層好ましくは1~3質量%に相当する、前記〔13〕~〔16〕の何れか1項に記載の触媒。
〔18〕前記触媒が、耐火性酸化物支持体を含み、該支持体上には、元素の周期分類に係る第VIII族金属および同第VIB族金属の中から選択される金属硫化物が堆積されている、前記〔13〕~〔17〕の何れか1項に記載の触媒。