(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】混繊構造を形成するためのマルチダイ式メルトブローシステム及びその方法
(51)【国際特許分類】
D01D 5/08 20060101AFI20220209BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20220209BHJP
D04H 1/736 20120101ALI20220209BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
D01D5/08 C
B01D39/16 A
D04H1/736
D04H3/16
(21)【出願番号】P 2016573594
(86)(22)【出願日】2015-06-16
(86)【国際出願番号】 US2015036007
(87)【国際公開番号】W WO2015195648
(87)【国際公開日】2015-12-23
【審査請求日】2018-05-10
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-08
(32)【優先日】2014-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500131561
【氏名又は名称】グロッツ-ベッケルト・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】プールデイヒミ,ベーナム
(72)【発明者】
【氏名】シム,ウンギョン
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】久保 克彦
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-545440(JP,A)
【文献】国際公開第2013/089213(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/080955(WO,A1)
【文献】特開平7-216709(JP,A)
【文献】特開昭62-90320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D5/08
D04H1/736
D04H3/16
B01D36/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織繊維構造を製造するためのメルトブローシステムであって、
複数の繊維を受け取るように配置された表面を有するコレクタと、
500以下のメルトフローインデックスを有する第1の供給液体ポリマーに流体連通する第1のダイと、を含み、第1のダイは、コレクタの表面に対向する複数の紡糸ノズルを含み、第1のダイは、それぞれのノズルを囲む個別の同心空気噴流を備えたノズルを含む同心空気型の構成を備え、第1のダイは、不織繊維構造に強度を付与する大きさの繊維径を有する第1の複数の繊維を引き出すように構成されており、
500以上のメルトフローインデックスを有する第2の供給液体ポリマーに流体連通する第2のダイをさらに含み、第2のダイは、第1のダイの紡糸ノズルよりも小さいキャピラリー直径を有する複数の紡糸ノズルを含み、第2のダイは、10μmよりも小さい繊維径を有する第2の複数の繊維を引き出し、第1の複数の繊維と第2の複数の繊維とがコレクタの表面上に混繊不織ウェブを形成するように配置され、繊維からなる混繊不織ウェブは、様々な繊維径を有し、第1の複数の繊維は、第2の複数の繊維よりも大きい平均直径を有しており、
コレクタの表面上の混繊不織ウェブに任意選択で第3の材料を導入するように配置された任意選択の適用装置をさらに含
み、
第1のダイは、500μmから850μmの範囲のキャピラリー直径を有する紡糸ノズルを有し、第2のダイは、100μmから500μmの範囲のキャピラリー直径を有する紡糸ノズルを有する、ことを特徴とするメルトブローシステム。
【請求項2】
第1のダイは、最大で30μmの繊維径を有する第1の複数の繊維を引き出すように構成されることを特徴とする請求項1に記載のメルトブローシステム。
【請求項3】
第2のダイは、それぞれのノズルを囲む個別の同心空気噴流を備えたノズルを含む同心空気型ダイであるか、または、ダイ先端部の両側からの空気流が衝突する単列キャピラリー型ダイであることを特徴とする請求項1に記載のメルトブローシステム。
【請求項4】
第1の供給液体ポリマーは、第2の供給液体ポリマーと同じポリマー種であり、第1の供給液体ポリマーのメルトフローインデックスは、第2の供給液体ポリマーのメルトフローインデックスと異なることを特徴とする請求項1に記載のメルトブローシステム。
【請求項5】
第1の供給液体ポリマーは、第2の供給液体ポリマーと異なるポリマー種であることを特徴とする請求項1に記載のメルトブローシステム。
【請求項6】
第2の供給液体ポリマーは、第1のポリオレフィンポリマーを含み、第1の供給液体ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、エラストマー、第2のポリオレフィン、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のメルトブローシステム。
【請求項7】
第2の供給液体ポリマーは、ポリプロピレンを含み、第1の液体供給ポリマーは、ポリブチレンテレフタレートを含むことを特徴とする請求項1に記載のメルトブローシステム。
【請求項8】
第3の材料は、粒子材料、繊維材料、複数のカプセル、及びこれらの組合せからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載のメルトブローシステム。
【請求項9】
第3の材料は、複数の繊維を含むカーディングされたウェブもしくは繊維構造、フィルム状材料、または紙であることを特徴とする請求項1に記載のメルトブローシステム。
【請求項10】
不織繊維構造を製造するためのメルトブローシステムであって、
混繊ウェブを形成するように構成可能な第1のダイを含み、第1のダイは、個別の同心空気噴流を伴うノズルを備えた複数列同心空気型ダイであり、第1のダイは、第1の融液粘度を有する第1のポリマーを含む第1の繊維を引き出すように構成され、
混繊ウェブを形成するように構成可能な第2のダイをさらに含み、第2のダイは、個別の同心空気噴流を伴うノズルを備えた複数列同心空気型ダイであり、第2のダイは、第2の融液粘度を有する第2のポリマーを含む第2の繊維を引き出すように構成され、
第1の繊維及び第2の繊維を受け取るように配置されたコレクタと、
混繊ウェブに第3の材料を任意選択で導入する任意選択の適用装置と、をさらに含んでおり、
第2のダイは、複数列のキャピラリーを含み、それぞれのキャピラリーは、100μmから500μmの範囲の直径を有し、第1のダイは、複数列のキャピラリーを含み、それぞれのキャピラリーは、500μmから850μmの範囲の直径を有する、ことを特徴とするメルトブローシステム。
【請求項11】
混繊メルトブロー繊維の不織繊維構造を形成する方法であって、
第1の液体ポリマー及び第2の液体ポリマーを請求項1から
9のいずれか1項に記載のメルトブローシステムに導入するステップと、
第1のダイから第1の複数の繊維を引き出すステップと、
第2のダイから第2の複数の繊維を引き出すステップと、
混繊メルトブロー繊維構造を形成するために、第1の複数の繊維及び第2の複数の繊維をコレクタの表面上に収集するステップと、を含み、
混繊メルトブロー繊維構造は、500以下のメルトフローインデックスを有するポリマーからなる第1の複数の繊維、及び、500以上のメルトフローインデックスを有するポリマーからなる第2の複数の繊維を含み、第1の複数の繊維は、不織繊維構造に強度を付与する大きさの繊維径を有し、第2の複数の繊維は、10μmよりも小さい繊維径を有し、第1の複数の繊維は、第2の複数の繊維よりも大きい平均繊維径を有しており
、
第1のダイは、500μmから850μmの範囲のキャピラリー直径を有する紡糸ノズルを有し、第2のダイは、100μmから500μmの範囲のキャピラリー直径を有する紡糸ノズルを有する、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
第1の複数の繊維は、最大で30μmの繊維径を有していることを特徴とする請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
不織繊維構造は、プリーツ加工可能または成形可能であることを特徴とする請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混繊不織繊維構造を形成するように構成可能な2つ以上のダイを含むメルトブローシステム、並びに、粒子及び他の添加剤をウェブに組み込むこのようなシステムを使用して形成される混繊不織繊維構造に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維は、より強く、より薄く、そしてより軽い製品を提供するために、多くの多様な用途で広く使用されている。さらに、熱可塑性の合成繊維は、通常、熱融着性があるため、不織布の製造業者にとって、単独でも、または他の非熱可塑性の繊維(例えば、綿、毛、及び、木材パルプ)との混合においても特に魅力がある。そして、不織繊維網は、従来の織布に代わってますます使用されており、その理由の一部は、製造コストが低いことである。不織繊維は、初期的には、天然または人工の未結合の繊維または長繊維である。不織繊維構造(不織布)の製造における重要な工程には、様々な繊維または長繊維を結合することが含まれる。繊維または長繊維が結合される方法は様々であり、その方法には、機械的方法及び化学的方法の両方が含まれ、それらは最終製品の所望の特性に部分的に基づいて選択される。
【0003】
メルトブロー法は、溶融ポリマー流を高速のガス噴流中に射出することによって、マイクロ繊維を製造するために使用可能な溶融紡糸工程である。従来のメルトブロー繊維構造は、高度に延伸されたマイクロ繊維及びナノ繊維のウェブを形成するために、低分子量かつ低粘度のポリマーから形成される。例えば、従来のメルトブロー繊維構造の多くは、ポリプロピレン(PP)から形成される。これは、微細繊維を形成するために必要な低粘度のポリプロピレンが容易に入手可能であるからである。メルトブロー繊維構造は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、及び他の繊維グレードのポリマーから形成することも可能ではあるものの、これらのポリマーは、粘度が高いために繊維が大きくなり、メルトブロー繊維構造として望ましくない場合がある。メルトブロー繊維構造は、一般に、HVACフィルターからフェイスマスクまで、また人工呼吸器から液体の濾過までに及ぶフィルターの用途で使用されるからである。このように、従来のメルトブロー繊維は微細なものであり、それらから形成される繊維構造は、弱く、かつ伸長性が限定されている。この結果、従来のメルトブロー繊維構造では、プリーツ加工(ひだ付け)及び/または成形をすることが困難な場合がある。
【0004】
メルトブロー繊維を強化または改質するために、添加剤が使用されている。同様に、メルトブロー繊維構造の成形、プリーツ加工、または整形が容易になるようにメルトブロー繊維構造を強化し、高い伸長性を与えるため、様々な結合法または他の処理をメルトブロー繊維構造に対して適用することができる。例えば、Legareへ付与された欧州特許第0848636号、Aigner等へ付与された欧州特許第0498002号、Straussに付与された欧州特許第1050331号、Dickerson等に付与された欧州特許第1208959号、Dohertyに付与された欧州特許第1339477号、Wuに付与された欧州特許第2043756号、Brandner等に付与された欧州特許第2049226号、Angadjivand等に付与された欧州特許第2162028号、Freeman等に付与された欧州特許第2227308号、Osendorfに付与された米国特許第5306321号、Osendorfに付与された米国特許第5427597号、Mullins等に付与された米国特許第6585838号、Hornfeck等に付与された米国特許第7326272号、Ptak等に付与された米国特許第8343251号、及びLim等に付与された米国特許第8361180号を参照されたい。これらの文献は、参照により本明細書に援用される。メルトブロー繊維構造のプリーツ加工性を改善する試みについては、米国特許第5306321号、米国特許第5427597号、米国特許第7326272号、米国特許第8361180号、米国特許第8343251号、欧州特許出願公開第139477号、欧州特許出願公開第2043756号、欧州特許第2049226号、欧州特許第2162028号、欧州特許第2167714号、及び欧州特許出願公開第2227308号も参照されたい。これらの文献は、参照により本明細書に援用される。
【0005】
メルトブロー繊維構造のプリーツ加工性を改善するために多くの試みがなされてきた。例えば、プリーツ加工をしやすくするために、メルトブロー繊維構造を積層化して、より重いスパンボンド繊維構造またはスクリムとすることが通例である。このような場合、メルトブロー繊維構造は、スパンボンドされたウェブまたはスクリムに付着され、所望形状を保持するように機能するこの重い層によって担持される。例えば、参照により本明細書に援用される欧州特許第1050331号では、2層または多層の繊維構造が使用され、それらの1つの層が、メルトブローされた中間層である。欧州特許第0848636号及び欧州特許出願公開第0498002号に例示される繊維構造も参照されたい。これらの文献は、参照により本明細書に援用される。例えば、メルトブローされた中間層に剛性を追加し、それによってプリーツ加工を可能にするために、超音波結合も使用される。例えば、米国特許第6585838号及び欧州特許第1208959号を参照されたい。これらの文献は、参照により本明細書に援用される。
【0006】
複合繊維構造が形成されるように複数のメルトブロー繊維流を混合できることが知られている。例えば、米国特許第3971373号、米国特許第7754041号、米国特許第7682554号、米国特許第7807591号、及び米国特許第8372175号を参照されたい。これらの文献は、参照により本明細書に援用される。加えて、第3の材料(例えば、繊維及び/または粒子)を混繊ウェブ内に、及び/または、単一のメルトブロー繊維流内に、堆積させることができる。例えば、欧州特許出願公開第0156160号及び欧州特許出願公開第0080382号を参照されたい。これらの文献は、参照により本明細書に援用される。米国特許第8834762号は、同じ材料から構築された太い繊維と細い繊維とを含むプリーツ加工可能な不織繊維構造に関する。但し、この不織繊維構造では、500MFIを十分に下回る高粘度のポリマー溶融物の使用が必要とされ、特に、非常に小径の繊維を達成するために高粘度のポリマー溶融物が必要であることが強調されている。ハイブリッド型混繊繊維構造のプリーツ加工性及び/または成形性を改善すること、並びに、粒子または第3の成分をウェブ内に導入することが可能な方法が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のことから、メルトブロー繊維構造が、典型的には、単独でプリーツ加工可能ではないことが明らかである。したがって、容易にプリーツ加工可能であってかつプリーツ形状を維持可能であり、また、メルトブロー繊維構造の効率的な製造に資するような製造方法を使用して形成することが可能な自己支持型の単一層のメルトブロー繊維構造に対する要望がある。このような繊維構造は、プリーツ加工性を達成するための追加の層、結合剤、または繊維を要しないため、低コストの成形性/プリーツ加工性を提供する。さらに、最終的な繊維構造は、比較的薄く、単位面積当たりのプリーツ数を増大させることが可能であり、これによって、フィルター面積の増大による圧力損失が改善される。
【0008】
混繊繊維構造を形成するための新規の改善されたシステム及び方法であって、強度及びプリーツ加工性/成形性、並びに、ウェブ内に粒子または第3の成分を「捕捉」する能力を増大させるシステム及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、複数の繊維流が集束する2以上の種類及び/または構成のダイを含む。それぞれのダイは、異なる技術または同じ技術の異なる構成に対応するものであり、これによって、固有の不織繊維構造を形成するために異なる種類及び/または寸法の繊維を混合することが可能となる。本発明の特定の実施形態は、第3の成分をハイブリッド型混繊メルトブロー繊維構造内に捕捉することもできる。様々な実施形態において、マルチダイシステム中の少なくとも1つのダイは、同心空気型ダイであってもよく、これによって、低いメルトフローインデックスを有するポリマーをシステム内でより容易に使用することができる。このようなポリマーによって、形成されたメルトブロー繊維構造に良好な強度及び保全性を付与することができる。
【0010】
したがって、改善されたハイブリッド型混繊繊維構造、特に、濾過特性に関して、単一のダイを使用して形成された混繊繊維構造よりも有利な特性を示すハイブリッド型混繊繊維構造を形成することができる。以下に詳述するように、本明細書に記載されたシステム及び方法は、少なくとも部分的に混繊された少なくとも2種の繊維を含み得る繊維構造を備えた不織メルトブロー材料を提供することができる。2種以上の繊維は、異なる直径を有する繊維及び/または異なる種類のポリマーからなる繊維を含むものであってもよい。
【0011】
本発明の様々な実施形態において、不織繊維構造を製造するためのメルトブローシステムが提供される。このシステムは、複数の繊維を受け取るように配置された表面を有するコレクタ、及び、約500以下のメルトフローインデックスを有する第1の供給液体ポリマーに流体連通する第1のダイを含むものであってもよい。第1のダイは、コレクタの表面に対向する複数の紡糸ノズルを含む。第1のダイは、それぞれのノズルを囲む個別の同心空気噴流を備えたノズルを含む同心空気型の構成を備える。第1のダイは、約30μmよりも小さい繊維径を有する第1の複数の繊維を引き出すように構成される。このシステムは、約500以上のメルトフローインデックスを有する第2の供給液体ポリマーに流体連通する第2のダイを含むものであってもよい。第2のダイは、第1のダイの紡糸ノズルよりも小さいキャピラリー直径を有する複数の紡糸ノズルを含む。第2のダイは、約10μmよりも小さい繊維径を有する第2の複数の繊維を引き出し、第1の複数の繊維と第2の複数の繊維とがコレクタの表面上に混繊不織ウェブを形成するように配置される。繊維からなる混繊不織ウェブは、様々な繊維径を有し、第1の複数の繊維は、第2の複数の繊維よりも大きい平均直径を有している。このシステムは、コレクタの表面上の混繊不織ウェブに任意選択で第3の材料を導入するように配置された任意選択の適用装置をさらに含むものであってもよい。
【0012】
特定の実施形態において、第2のダイは、それぞれのノズルを囲む個別の同心空気噴流を備えたノズルを含む同心空気型ダイであってもよく、または、ダイ先端部の両側からの空気流が衝突する単列キャピラリー型ダイであってもよい。様々な実施形態において、第1のダイは、約500μmから約850μmの範囲のキャピラリー直径を有する紡糸ノズルを有するものであってもよく、第2のダイは、約100μmから約500μmの範囲のキャピラリー直径を有する紡糸ノズルを有するものであってもよい。
【0013】
上述したメルトブローシステムの幾つかの実施形態において、第1の供給液体ポリマーは、第2の供給液体ポリマーと同じポリマー種であってもよく、第1の供給液体ポリマーの融液流動粘度は、第2の供給液体ポリマーの融液流動粘度と異なるものであってもよい。幾つかの実施形態において、第1の供給液体ポリマーは、第2の供給液体ポリマーと異なるポリマー種であってもよい。特定の実施形態において、第2の供給液体ポリマーは、第1のポリオレフィンポリマーを含むものであってもよく、第1の供給液体ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、エラストマー、第2のポリオレフィン、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含むものであってもよい。例えば、第2の供給液体ポリマーは、ポリプロピレンを含むものであってもよく、第1の液体供給ポリマーは、ポリブチレンテレフタレート、または、ポリ乳酸(PLA)もしくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含む他のポリエステルを含むものであってもよい。
【0014】
特定の実施形態において、第3の材料は、粒子材料(例えば、ナノ粒子を含む粉体を含む様々な粉体)、繊維材料(例えば、連続的繊維、サブミクロン繊維、複数のカット繊維または短繊維)、複数のカプセル、及びこれらの組合せからなるグループから選択されるものであってもよい。幾つかの実施形態において、第3の材料は、複数の繊維を含むカーディングされたウェブまたは繊維構造であってもよい。幾つかの実施形態において、第3の材料は、フィルム状材料または紙材料であってもよい。
【0015】
直径の異なる複数の混繊メルトブロー繊維を含む不織繊維構造も提供される。この不織繊維構造は、約500以下のメルトフローインデックスを有するポリマーからなる第1の複数の繊維、及び、約500以上のメルトフローインデックスを有するポリマーからなる第2の複数の繊維を含むものであってもよい。第2の複数の繊維は、約10μmよりも小さい繊維径を有するものであってもよく、第1の複数の繊維は、第2の複数の繊維よりも大きい平均繊維径を有するものであってもよい。幾つかの実施形態において、第2のポリマーは、第1のポリオレフィンポリマーを含むものであってもよく、第1のポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、エラストマー、第2のポリオレフィン、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含むものであってもよい。例えば、第2のポリマーは、ポリプロピレンを含むものであってもよく、第1のポリマーは、ポリブチレンテレフタレートを含むものであってもよい。様々な実施形態において、この不織繊維構造は、プリーツ加工または成形されたフィルター媒質の形をなすものであってもよい。
【0016】
混繊メルトブロー繊維の不織繊維構造を形成する方法も提供される。この方法は、第1の液体ポリマー及び第2の液体ポリマーを本明細書に記載されるメルトブローシステムに導入するステップと、第1のダイから第1の複数の繊維を引き出すステップと、第2のダイから第2の複数の繊維を引き出すステップと、混繊メルトブロー繊維構造を形成するために、第1の複数の繊維及び第2の複数の繊維をコレクタの表面上に収集するステップとを含むものであってもよい。混繊メルトブロー繊維構造は、約500以下のメルトフローインデックスを有するポリマーからなる第1の複数の繊維、及び、約500以上のメルトフローインデックスを有するポリマーからなる第2の複数の繊維を含むものであってもよい。第2の複数の繊維は、約10μmよりも小さい繊維径を有し、第1の複数の繊維は、第2の複数の繊維よりも大きい平均繊維径を有するものである。幾つかの実施形態において、この不織繊維構造は、プリーツ加工可能または成形可能なものであってもよい。
【0017】
本発明は、以下の実施形態を含むが、これらによって限定されるものではない。
〔実施形態1〕
不織繊維構造を製造するためのメルトブローシステムであって、複数の繊維を受け取るように配置された表面を有するコレクタと、約500以下のメルトフローインデックスを有する第1の供給液体ポリマーに流体連通する第1のダイと、を含み、第1のダイは、コレクタの表面に対向する複数の紡糸ノズルを含み、第1のダイは、それぞれのノズルを囲む個別の同心空気噴流を備えたノズルを含む同心空気型の構成を備え、第1のダイは、約30μmよりも小さい繊維径を有する第1の複数の繊維を引き出すように構成されており、約500以上のメルトフローインデックスを有する第2の供給液体ポリマーに流体連通する第2のダイをさらに含み、第2のダイは、第1のダイの紡糸ノズルよりも小さいキャピラリー直径を有する複数の紡糸ノズルを含み、第2のダイは、約10μmよりも小さい繊維径を有する第2の複数の繊維を引き出し、第1の複数の繊維と第2の複数の繊維とがコレクタの表面上に混繊不織ウェブを形成するように配置され、繊維からなる混繊不織ウェブは、様々な繊維径を有し、第1の複数の繊維は、第2の複数の繊維よりも大きい平均直径を有しており、コレクタの表面上の混繊不織ウェブに任意選択で第3の材料を導入するように配置された任意選択の適用装置をさらに含む、ことを特徴とするメルトブローシステム。
【0018】
〔実施形態2〕
任意の上述したまたは後述するメルトブローシステムの実施形態において、第2のダイは、それぞれのノズルを囲む個別の同心空気噴流を備えたノズルを含む同心空気型ダイであるか、または、ダイ先端部の両側からの空気流が衝突する単列キャピラリー型ダイであることを特徴とするメルトブローシステム。
【0019】
〔実施形態3〕
任意の上述したまたは後述するメルトブローシステムの実施形態において、第1のダイは、約500μmから約850μmの範囲のキャピラリー直径を有する紡糸ノズルを有し、第2のダイは、約100μmから約500μmの範囲のキャピラリー直径を有する紡糸ノズルを有することを特徴とするメルトブローシステム。
【0020】
〔実施形態4〕
任意の上述したまたは後述するメルトブローシステムの実施形態において、第1の供給液体ポリマーは、第2の供給液体ポリマーと同じポリマー種であり、第1の供給液体ポリマーの融液流動粘度は、第2の供給液体ポリマーの融液流動粘度と異なることを特徴とするメルトブローシステム。
【0021】
〔実施形態5〕
任意の上述したまたは後述するメルトブローシステムの実施形態において、第1の供給液体ポリマーは、第2の供給液体ポリマーと異なるポリマー種であることを特徴とするメルトブローシステム。
【0022】
〔実施形態6〕
任意の上述したまたは後述するメルトブローシステムの実施形態において、第2の供給液体ポリマーは、第1のポリオレフィンポリマーを含み、第1の供給液体ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、エラストマー、第2のポリオレフィン、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とするメルトブローシステム。
【0023】
〔実施形態7〕
任意の上述したまたは後述するメルトブローシステムの実施形態において、第2の供給液体ポリマーは、ポリプロピレンを含み、第1の液体供給ポリマーは、ポリブチレンテレフタレートを含むことを特徴とするメルトブローシステム。
【0024】
〔実施形態8〕
任意の上述したまたは後述するメルトブローシステムの実施形態において、第3の材料は、粒子材料、繊維材料、複数のカプセル、及びこれらの組合せからなるグループから選択されることを特徴とするメルトブローシステム。
【0025】
〔実施形態9〕
任意の上述したまたは後述するメルトブローシステムの実施形態において、第3の材料は、複数の繊維を含むカーディングされたウェブもしくは繊維構造、フィルム状材料、または紙であることを特徴とするメルトブローシステム。
【0026】
〔実施形態10〕
不織繊維構造を製造するためのメルトブローシステムであって、混繊ウェブを形成するように構成可能な第1のダイを含み、第1のダイは、個別の同心空気噴流を伴うノズルを備えた複数列同心空気型ダイであり、第1のダイは、第1の融液粘度を有する第1のポリマーを含む第1の繊維を引き出すように構成され、混繊ウェブを形成するように構成可能な第2のダイをさらに含み、第2のダイは、個別の同心空気噴流を伴うノズルを備えた複数列同心空気型ダイであり、第2のダイは、第2の融液粘度を有する第2のポリマーを含む第2の繊維を引き出すように構成され、第1の繊維及び第2の繊維を受け取るように配置されたコレクタと、混繊ウェブに第3の材料を任意選択で導入する任意選択の適用装置と、をさらに含んでおり、第2のダイは、複数列のキャピラリーを含み、それぞれのキャピラリーは、約100μmから約500μmの範囲の直径を有し、第1のダイは、複数列のキャピラリーを含み、それぞれのキャピラリーは、約500μmから約850μmの範囲の直径を有する、ことを特徴とするメルトブローシステム。
【0027】
〔実施形態11〕
任意の上述したまたは後述する不織繊維構造の実施形態において、約500以下のメルトフローインデックスを有するポリマーからなる第1の複数の繊維、及び、約500以上のメルトフローインデックスを有するポリマーからなる第2の複数の繊維を含み、第2の複数の繊維は、約10μmよりも小さい繊維径を有し、第1の複数の繊維は、第2の複数の繊維よりも大きい平均繊維径を有している、直径の異なる複数の混繊メルトブロー繊維を含む不織繊維構造。
【0028】
〔実施形態12〕
任意の上述したまたは後述する不織繊維構造の実施形態において、第2のポリマーは、第1のポリオレフィンポリマーを含み、第1のポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、エラストマー、第2のポリオレフィン、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする不織繊維構造。
【0029】
〔実施形態13〕
任意の上述したまたは後述する不織繊維構造の実施形態において、第2のポリマーは、ポリプロピレンを含み、第1のポリマーは、ポリブチレンテレフタレートを含むことを特徴とする不織繊維構造。
【0030】
〔実施形態14〕
任意の上述したまたは後述する不織繊維構造の実施形態において、プリーツ加工または成形されたフィルター媒質の形をなすことを特徴とする不織繊維構造。
【0031】
〔実施形態15〕
混繊メルトブロー繊維の不織繊維構造を形成する方法であって、第1の液体ポリマー及び第2の液体ポリマーを本明細書に記載されたメルトブローシステムに導入するステップと、第1のダイから第1の複数の繊維を引き出すステップと、第2のダイから第2の複数の繊維を引き出すステップと、混繊メルトブロー繊維構造を形成するために、第1の複数の繊維及び第2の複数の繊維をコレクタの表面上に収集するステップと、を含み、混繊メルトブロー繊維構造は、約500以下のメルトフローインデックスを有するポリマーからなる第1の複数の繊維、及び、約500以上のメルトフローインデックスを有するポリマーからなる第2の複数の繊維を含み、第2の複数の繊維は、約10μmよりも小さい繊維径を有し、第1の複数の繊維は、第2の複数の繊維よりも大きい平均繊維径を有している、ことを特徴とする方法。
【0032】
〔実施形態16〕
任意の上述したまたは後述する混繊メルトブロー繊維の不織繊維構造を形成する方法の実施形態において、不織繊維構造は、プリーツ加工可能または成形可能であることを特徴とする方法。
【0033】
本発明の様々な実施形態において、不織繊維構造を製造するためのメルトブローシステムが提供される。このシステムは、混繊ウェブを形成するように構成可能な第1のダイを含む。第1のダイは、個別の同心空気噴流を伴うノズルを備えた同心空気型ダイであり、第1の融液粘度を有する第1のポリマーを含む第1の繊維を引き出すように構成される。このシステムは、混繊ウェブを形成するように構成可能な第2のダイをさらに含む。第2のダイは、ダイ先端部の両側から空気流が衝突する単列キャピラリー型ダイであり、第2の融液粘度を有する第2のポリマーを含む第2の繊維を引き出すように構成される。このシステムは、第1の繊維及び第2の繊維を受け取るように配置されたコレクタと、混繊ウェブに第3の材料を任意選択で導入する任意選択の適用装置と、をさらに含む。
【0034】
幾つかの実施形態において、第1のダイは、約500μmから約850μmの範囲の直径を有するキャピラリーを含むものであってもよい。特定の実施形態において、第2のダイは、約100μmから約500μmの範囲の直径を有するキャピラリーを含むものであってもよい。様々な実施形態において、第1のダイ及び第2のダイは、約100μmから約850μmの範囲の同一の寸法を有するキャピラリーを含むものであってもよい。
【0035】
上述したシステムの様々な実施形態において、第1のポリマーは、第2のポリマーと同じポリマー種であってもよく、第1の融液粘度は、第2の融液粘度と異なるものであってもよい。融液粘度は、メルトフローインデックス(MFI)(もしくは、メルトフローレート(MFR)として知られる)として表現された場合、例えば、約30から約7000の範囲であってもよい。特定の実施形態において、第1のポリマーは、第2のポリマーと異なるものであってもよい。様々な実施形態において、第1のメルトフローインデックスは、第2のメルトフローインデックスよりも低いものであってもよい。例えば、第1のメルトフローインデックスは、500であってもよく、一方、第2のメルトフローインデックスは、1600であってもよい。様々な実施形態において、第2の供給ポリマーは、第1のポリオレフィンポリマーを含み、第1の供給ポリマーは、ナイロン、ポリエステル、エラストマー、第2のポリオレフィン、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含むものであってもよい。例えば、第2の供給ポリマーは、ポリプロピレンを含み、第1の液体供給ポリマーは、ポリブチレンテレフタレート、またはポリ乳酸(PLA)もしくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含む他のポリエステルを含むものであってもよい。
【0036】
幾つかの実施形態において、第1のダイは、第1のノズル寸法及び第1のノズル形状を有するものであってもよい。第2のダイは、第2のノズル寸法及び第2のノズル形状を有するものであってもよい。特定の実施形態において、第1のノズル寸法及び第1のノズル形状は、第2のノズル寸法及び第2のノズル形状と異なるものである。
【0037】
本発明の様々な実施形態には、不織繊維構造を製造するためのメルトブローシステムが含まれる。このシステムは、混繊ウェブを形成するように構成可能な第1のダイを含む。第1のダイは、ダイ先端部の両側から空気流が衝突する単列キャピラリー型ダイであり、第1の融液粘度を有する第1のポリマーを含む第1の繊維を引き出すように構成される。このシステムは、混繊ウェブを形成するように構成可能な第2のダイをさらに含む。第2のダイは、ダイ先端部の両側から空気流が衝突する単列キャピラリー型ダイであり、第2の融液粘度を有する第2のポリマーを含む第2の繊維を引き出すように構成される。このシステムは、第1の繊維及び第2の繊維を受け取るように配置されたコレクタと、混繊ウェブに第3の材料を任意選択で導入する任意選択の適用装置とをさらに含む。幾つかの実施形態において、第1のダイは、複数列のキャピラリーを含み、それぞれのキャピラリーは、約500μmから約850μmの範囲の直径を有しており、第2のダイは、複数列のキャピラリーを含み、それぞれのキャピラリーは、約100μmから約500μmの範囲の直径を有している。特定の実施形態において、第1のダイは、第1の複数のキャピラリーを含み、第2のダイは、第2の複数のキャピラリーを含んでおり、第1の複数のキャピラリーは、第2の複数のキャピラリーとは異なるパターンで配列されるものであってもよい。
【0038】
本発明の様々な実施形態において、不織繊維構造を製造するためのメルトブローシステムが提供される。このシステムは、混繊ウェブを形成するように構成可能な第1のダイを含む。第1のダイは、個別の同心空気噴流を伴うノズルを備えた複数列同心空気型ダイであり、第1の融液粘度を有する第1のポリマーを含む第1の繊維を引き出すように構成される。このシステムは、混繊ウェブを形成するように構成可能な第2のダイをさらに含む。第2のダイは、個別の同心空気噴流を伴うノズルを備えた複数列同心空気型ダイであり、第2の融液粘度を有する第2のポリマーを含む第2の繊維を引き出すように構成される。このシステムは、第1の繊維及び第2の繊維を受け取るように配置されたコレクタと、混繊ウェブに第3の材料を任意選択で導入する任意選択の適用装置とをさらに含む。幾つかの実施形態において、第1のダイは、複数列のキャピラリーを含み、それぞれのキャピラリーは、約500μmから約850μmの範囲の直径を有しており、第2のダイは、複数列のキャピラリーを含み、それぞれのキャピラリーは、約100μmから約500μmの範囲の直径を有している。特定の実施形態において、第1のダイは、第1の複数のキャピラリーを含み、第2のダイは、第2の複数のキャピラリーを含んでおり、第1の複数のキャピラリーは、第2の複数のキャピラリーとは異なるパターンで配列されるものであってもよい。
【0039】
メルトブローシステムの様々な実施形態において、第3の材料は、粉体、連続的繊維、電界紡糸繊維、複数のカット繊維、複数の短繊維、複数の粒子、複数のナノ粒子、複数のカプセル、及びこれらの組合せからなるグループから選択されるものであってもよい。幾つかの実施形態において、第3の材料は、複数の繊維を含むカーディングされたウェブであってもよい。幾つかの実施形態において、複数の繊維の直径は、約1μm以下であってもよい。あるいは、複数の繊維の直径は、約1μm以上であってもよい。特定の実施形態において、複数の繊維は、約5から約60の葉部を含むマクロ繊維であり、それによって、繊維に大きな表面積を付与するものであってもよい。
【0040】
直径の異なる複数の混繊メルトブロー繊維を含むプリーツ加工可能/成形可能な単一層不織繊維構造も提供される。幾つかの実施形態において、このプリーツ加工可能/成形可能な単一層不織繊維構造からフィルター媒質が形成されるものであってもよい。
【0041】
プリーツ加工可能/成形可能な単一層不織繊維構造を形成する方法も提供される。この方法の実施形態は、第1のダイ及び第2のダイを混繊ウェブを形成するように配置するステップを含む。第1のダイは、個別の同心空気噴流を伴うノズルを備えた同心空気型ダイであり、第1の融液粘度を有する第1のポリマーを含む第1の繊維を引き出すように構成される。第2のダイは、ダイ先端部の両側から空気流が衝突する単列キャピラリー型ダイであり、第2の融液粘度を有する第2のポリマーを含む第2の繊維を引き出すように構成される。この方法は、第1の繊維及び第2の繊維を受け取るコレクタを配置するステップをさらに含むものであってもよい。任意選択で、この方法は、混繊ウェブに第3の材料を任意選択で導入するように構成された適用装置を配置するステップを含むものであってもよい。
【0042】
本開示の上述した及び他の特徴、態様、並びに利点は、以下に簡単に説明する添付図面を参照しつつ、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。本発明は、上述した実施形態の2つ、3つ、4つ、またはこれより多くの任意の組合せを含むとともに、本開示で説明された特徴及び要素が本明細書に記載された特定の実施形態において明示的に組み合わせられているか否かに関わらず、このような特徴または要素の2つ、3つ、4つ、またはこれより多くの任意の組合せを含むものである。本開示は、文脈から明確に定まる場合を除き、開示された発明の、その様々な態様及び実施形態のうちの任意のものにおける任意の分離可能な特徴または要素が、組み合わせ可能であることが意図されているものとして見なされるべきである。
【0043】
以上、本開示を一般的な用語で説明した。ここで、添付図面を参照するが、これらの図面は、必ずしも縮尺通りに描かれているものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、ドラム形コレクタ上に堆積される繊維のメルトブロー流を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、繊維流を集束させ、かつ繊維流中に堆積される材料を捕捉するための2つのメルトブロー用ダイ及び堆積スロットを有するシステムを模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、本明細書に記載されるプリーツ加工可能な単一層不織繊維構造から形成されたフィルターの一実施形態を模式的に示す図である。
【
図4】
図4A-Cは、様々な集束角度を備えるメルトブロー繊維流を模式的に示す図である。
【
図5A】
図5Aは、各ノズルを取り囲む同心の空気噴流を有する同心空気型のダイ技術を模式的に示す図である。
【
図5B】
図5Bは、ダイ先端部の両側からの衝突空気流を有する衝突空気型のダイ技術を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、異なるキャピラリー直径を有する2つのメルトブロー用ダイを含むメルトブローシステムを模式的に示す図である。
【
図7A】
図7A-7Dは、高い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図7B】
図7A-7Dは、高い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図7C】
図7A-7Dは、高い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図7D】
図7A-7Dは、高い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図8A】
図8A-8Dは、中間の集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図8B】
図8A-8Dは、中間の集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図8C】
図8A-8Dは、中間の集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図8D】
図8A-8Dは、中間の集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図9A】
図9A-9Dは、低い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図9B】
図9A-9Dは、低い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図9C】
図9A-9Dは、低い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図9D】
図9A-9Dは、低い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図10A】
図10A-10Bは、高い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図10B】
図10A-10Bは、高い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図11A】
図11A-11Bは、低い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図11B】
図11A-11Bは、低い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図12】
図12は、2つのダイを有する装置で製造されたサンプルの濾過性能を、単一のダイシステムで製造されたサンプルの濾過性能と比較するグラフである。
【
図13A】
図13A-13Dは、高い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図13B】
図13A-13Dは、高い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図13C】
図13A-13Dは、高い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図13D】
図13A-13Dは、高い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図14A】
図14A-14Bは、低い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図14B】
図14A-14Bは、低い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図14C】
図14A-14Bは、低い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図14D】
図14A-14Bは、低い集束角度を備えたマルチダイシステムによって製造されたメルトブロー繊維構造のSEM画像である。
【
図15】2つのダイを有する装置で製造されたポリプロピレンのサンプルの濾過性能を、2つのダイを有する装置で製造されたポリプロピレン/PBTの濾過性能と比較するグラフである。
【
図16A】
図16A及び
図16Bは、マルチダイシステムによって製造され、プリーツ加工されたメルトブロー繊維構造の写真である。
【
図16B】
図16A及び
図16Bは、マルチダイシステムによって製造され、プリーツ加工されたメルトブロー繊維構造の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。図面には、本発明の(全てではなく)幾つかの実施形態が示されている。実際、これらの発明は、多くの異なる形で実施することができ、本明細書で説明される実施形態に限定されるものとして解されるべきではない。これらの実施形態は、むしろ、本明細書の開示が該当する法的要件を満たすために提供されるものである。全体を通じて、同様の要素には同様の番号が付される。本明細書及び請求項において、単数の名詞には、文脈から明確に定まる場合を除き、その意味するものが複数の場合も含まれる。
【0046】
本発明の実施形態は、混繊ウェブを製造するための複数配列されたメルトブロー用ダイを備えている。本明細書において、「混繊」という用語は、少なくとも部分的に混合された2種以上の繊維を含むウェブを指すものとして使用される。2種以上の繊維が混繊(すなわち、混合)される程度は、以下に詳述するように、様々であってもよい。幾つかの実施形態において、集束する繊維流上に他の材料を堆積することによって、混繊ウェブにその材料が導入されるものであってもよい。
【0047】
本明細書において、「繊維(ファイバー)」という用語は、繊維製品の基本要素であり、高いアスペクト比(例えば、少なくとも100倍)を有するものとして定義される。加えて、「長繊維(フィラメント)」/「連続的長繊維(連続的フィラメント)」は、非常に高いアスペクト比を有する極めて長い長さの繊維である。「短繊維(ステープルファイバー)」は、連続的長繊維から切り揃えられた繊維である。「多成分繊維」という用語は、物理的性質または化学的性質が異なる2種以上のポリマーを含む繊維を意味し、二成分繊維が含まれる。本明細書において、繊維材、ウェブ、マット、バット、シートに関連して使用される「不織」という用語は、繊維に定まった配向がない、または繊維がランダムに配向された繊維構造を意味する。
【0048】
本発明に従う繊維は、様々な態様をとり得るものであり、任意の種類の断面を有する繊維を含む。断面には、円形、長方形、正方形、長円形、三角形、及び多葉形の断面が含まれるが、これによって限定されるものではない。繊維は、単一成分(すなわち、繊維を通じて組成が均一な)繊維または多成分繊維から選択されるものであってもよい。多成分繊維は、シース/コア構造を有する繊維、海島構造を有する繊維、並びに、サイドバイサイド型、セグメント化パイ型、セグメント化クロス型、セグメント化リボン型、または、先端付き多葉型の断面を有する繊維を含むが、これによって限定されるものではない。
【0049】
不織ウェブを製造する手段は、様々とすることができる。一般に、不織ウェブは、3つの段階で製造される。それは、ウェブ形成、結合、及び仕上げ処置である。ウェブ形成は、この技術分野で周知の任意の手段によって達成することができる。例えば、ウェブは、乾式処理、スパン処理、または湿式処理によって形成されるものであってもよい。本発明の様々な実施形態において、不織ウェブは、メルトブロー処理によって製造される。
【0050】
メルトブロー法は、溶融ポリマー流を高速のガス噴流中に射出することによって、マイクロ繊維を製造するために使用することが可能な溶融紡糸工程である。例えば、
図1、
図5A、及び
図5Bに示すように、ポリマーが紡糸ノズル4から出てくると、高速のガス噴流がポリマーに衝突する。押出機1は、ポリマーを、第1のダイ3に対して、そして紡糸ノズル4を通じて供給することができる。空気は、吸気口5内に、そして空気マニホールド2内に入ることができる。次いで、高圧空気が使用されてポリマーが繊維として引き出され、この繊維をコレクタ6上に収集することができる。空気によって生じる引き出し力によって、繊維は急速に細径化され、その直径は、ノズルの直径から100倍程縮減する。メルトブローされたウェブは、典型的には、0.1~10μmの範囲の繊維を有し、単位重量当たりの面積が大きく、高い絶縁値を有し、自己結合性を有し、そして、高い防御性を伴いつつ高い通気性を有することが報告されている。
【0051】
メルトブローにおける繊維形成工程は、その工程の空気力学に大きく依存している。例えば、高速の空気による引き出し力は、繊維の細径化の主要な要因である。一次空気システムは、溶融ポリマー流がダイを出た時点で、その溶融ポリマー流に衝突する高速の空気噴流を含む。二次横断空気流を使用して低温の空気または環境空気を供給し、押し出された長繊維を急冷するものであってもよい。例えば、Gubernick等に付与された米国特許第5080569号を参照されたい。この文献は、参照により本明細書に援用される。Balkに付与された米国特許第5098636号に開示されるスパン結合式ダイシステムのための二次空気急冷システムも参照されたい。この文献は、参照により本明細書に援用される。空気速度を増大させるためにダイフェースの上方のダイ先端部に凹部を設けてダイフェースの下方の空気を加速することによって、引き出し力を増大させ、繊維の細径化を促進することができる。例えば、Arseneau等に付与された米国特許出願公開第2003/0173701号を参照されたい。このようなインセットダイでは、最大の乱流強度は、丁度ダイフェースの箇所で生じ、そこでは、絞りが最小であり、溶融ポリマーの繊維が振動し始めるとともにダイ先端部に固着する可能性がある。空気絞り部に先行する低温の二次空気流を、繊維の固化後の繊維の細径化を増大させるために使用することができる。例えば、国際公開第2006/037371号を参照されたい。この文献は、参照により本明細書に援用される。しかしながら、このようなダイフェースの近傍での繊維の急速な冷却の結果、繊維の直径が大きくなる場合があり、また、横方向の流れは、空気絞り部の縁部に繊維を固着または集積させる可能性がある。
【0052】
一般に、メルトブローによれば、比較的小径の繊維を形成することができる。メルトブロー繊維の直径及び他の特性は、様々な製造パラメータ(例えば、ダイ構成(詳細については後述する)、ダイのキャピラリー寸法、ポリマーの押出量、コレクタの配置、及びウェブの取扱い)を変更することによって調整することができる。ダイのキャピラリー寸法は、メルトブロー工程の間にポリマーが供給されるダイ中の穴の直径を意味する。ダイのキャピラリーの直径の増大は、製造される繊維の直径の増大の要因となり得る。ポリマーの押出量は、ポリマーの、穴毎の毎分のグラム数(ghm)で測定することができる。押出量の増大は、製造される繊維の粗大化(すなわち、直径の増大)の要因となり得る。空気圧を減衰させることは、繊維の寸法に影響を及ぼす。圧力を上昇させると、典型的には、製造される繊維が微細化し(例えば、最大で5μm(例えば、約1~5μm))、圧力を低下させると、製造される繊維が粗大化する(例えば、最大で約30μm(例えば、約10~30μm))。
【0053】
本発明の特定の実施形態において、不織ウェブは、約1μmから約10μmの範囲(例えば、約2μmから約5μmの範囲)の平均直径を有するメルトブロー繊維を含む。幾つかの実施形態において、メルトブローされた不織ウェブの平均流量細孔径は、約20μm以下、または約10μm以下、または約8μm以下、または約5μm以下、または約2μm以下、または約1μm以下であってもよい。メルトブロー繊維は、典型的には、単一成分繊維を含む。
【0054】
本明細書に開示されるように、混繊ウェブを製造するために、複数配列されたメルトブロー用ダイを使用することができる。例えば、
図2に示すシステムを参照されたい。例えば
図1に示すように、このシステムは、第1のポリマーを第1のダイに供給する第1の押出機と、第2のポリマーを第2のダイに供給する第2の押出機とを含むものであってもよい。このシステムは、さらに、第1及び第2のダイから繊維を受け取るように配置されたコレクタを含むものであってもよい。第1及び第2のダイは、コレクタ上に混繊ウェブが形成されるように配置されるものであってもよい。任意選択で、このシステムは、混繊ウェブ内に第3の材料を任意選択で導入するための適用装置を含むものであってもよい。
【0055】
本発明の実施形態は、複数の繊維流が集束する2以上の種類及び/または構成のダイを使用したシステムを提供する。それぞれのダイは、異なる技術または同じ技術の異なる構成に対応するものであり、これによって、固有のハイブリット型不織繊維構造を形成するために異なる種類及び/または寸法の繊維を混合することが可能となる。従来のメルトブロー用ダイの技術は、一般に、次の2つの範疇に分類される。(1)単列キャピラリー型または衝突空気型のダイ構成。これは、エクソンデザインとしても知られている。(2)複数列同心空気型のダイ構成。これは、バイアックス/シュワルツデザインとしても知られている。
【0056】
例えば、
図5Bに示すように、従来のメルトブロー法(すなわち、単列キャピラリー型または衝突空気型のダイ構成)では、繊維を引き出すためのダイ先端部の両側からの衝突空気流を伴う単一列の紡糸キャピラリーを有している。この工程の安全な動作圧力は、例えば、約10MPa(100bar)よりも低いものである。同心空気型のメルトブロー用ダイは、複数の列の紡糸ノズルを備えており、それぞれの同心の空気噴流が繊維を細径化する。このダイでは、紡糸ノズルにおいて溶融圧力を高めることが可能となり、したがって、広い動作範囲でより高い粘度のポリマーを使用することができる。例えば、R.Zhao,“Melt Blowing Polyoxymethylene Copolymer”,International Nonwoven Journal, Summer 2005, pp.19-21(2005)を参照されたい。この文献は、参照により本明細書に援用される。したがって、異なる種類のダイは、異なる寸法の繊維を製造し、かつ異なるポリマーを使用することができる。
【0057】
一般的なメルトブローグレードのポリプロピレン樹脂が100よりも高い(例えば、2400もの)メルトフローレートを有するのに対して、現在入手可能な目的のポリマーの大部分は、100よりも低いメルトフローレートを有している。言い換えれば、これらのポリマーのメルトブロー処理の間の溶融圧力は高いことが予想できる。同心空気型ダイでは、低いメルトフローレートを有するポリマーを使用することができる。例えば、同心空気型ダイは、ポリマーを引き出すために、約1600のメルトフローレートを備えたポリマーから約30以下のメルトフローレートを備えたポリマーまで使用することができる。同心空気型ダイは、それぞれ約100μmから約850μmの範囲の直径を有するキャピラリーを含むものであってもよい。
【0058】
本発明の様々な実施形態において、一連のダイが混繊システム中に配置され、このシステムは、第1のダイと第2のダイを含んでいる。第1のダイは、同心空気型ダイであってもよく、また、第2のダイは、同心空気型または単列穿孔穴型ダイであってもよい。第1のダイを同心空気型ダイの形で使用することは、混繊繊維構造上に直径が相対的に大きい繊維を形成するために有利である。これは、特に、直径が相対的に大きい繊維(例えば、ポリブチレンテレフタレート繊維)が、500以下のメルトフローインデックスを有するポリマーから構成される場合に、有利である。第2のダイは、直径が相対的に小さい繊維(例えば、ポリプロピレン繊維)を形成するために使用される。第2のダイは、例えば、主として混繊繊維構造に良好な濾過性能を提供する目的のために適したものとすることができる。有利には、直径が相対的に小さい繊維のメルトフローインデックスは、約500以上であってもよい。
【0059】
複数のダイは、それぞれのダイとコレクタとの間に、約10度から約90度までの広い範囲の角度が可能となるように配置されるものであってもよい。2つのダイとコレクタの表面との間の距離及びダイ間の角度も、様々な度合いの混繊が可能となるように調整されるものであってもよい。例えば、ダイ全体からコレクタへの距離は、約100mmから約500mmの範囲であってもよい。
【0060】
混繊メルトブローシステムの幾つかの実施形態において、このシステムは、第1のダイ及び第2のダイを含むものであってもよい。第1のダイは、第1のキャピラリー寸法を有するものであってもよく、また、第2のダイは、第2のキャピラリー寸法を有するものであってもよい。特定の実施形態において、第1のダイは、直径が相対的に大きい繊維を製造するために、約500μmから約850μmの範囲のキャピラリーを含む。特定の実施形態において、第2のダイは、より微細な繊維を製造するために、約100μmから約500μmの範囲のキャピラリーを含む。
【0061】
混繊メルトブローシステムの幾つかの実施形態において、このシステムは、同心空気型ダイを含むものであってもよい。このダイは、列をなして配置されるかまたは別のパターンで配置される様々に異なる寸法のキャピラリーを有している。同心空気型ダイは、有利には、直径が相対的に大きい繊維を製造するように構成され、混繊メルトブロー繊維構造に強度を付与するものである。同心空気型ダイは、例えば、約500μmから約600μmの寸法のキャピラリーを備える。このシステムは、さらに、より微細な繊維を製造するキャピラリー寸法(例えば、約100μmから約300μmのキャピラリー寸法)を備えた第2の同心空気型ダイまたは単列キャピラリー型ダイを含むものであってもよい。複数列同心空気型のダイ構成では、同じ1つのダイによって様々な寸法の繊維が供給されるように、ノズル列の間でキャピラリー寸法を変えることもできる。
【0062】
幾つかの実施形態において、第1のダイは、第1のノズル寸法及び第1のノズル形状を含むものであってもよい。また、第2のダイは、第2のノズル寸法及び第2のノズル形状を含むものであってもよい。特定の実施形態において、第1のノズル寸法及び第1のノズル形状は、第2のノズル寸法及び第2のノズル形状とは異なるものである。
【0063】
2つのメルトブローポリマー流が集束する態様によって、混繊の度合い(例えば、完全に混繊された構造、または、繊維のうちの幾らかが混繊された2つの層からなる構造)を定めることができる。例えば、
図4Aに示すように、約10度から約30度において、ウェブは、それぞれの層の繊維のうちの幾らかが混繊された層状になり得る。より高角度にすると、
図4B及び
図4Cに示すように、混繊の度合いは増大する。
【0064】
本明細書に記載されたメルトブローシステムの様々な実施形態において、例えば
図6に示すように、2つ以上のダイが、繊維間の混繊の度合いが変化するように配置されるものであってもよい。マルチダイ式メルトブローシステム60は、第1のダイ62及び第2のダイ64を含むものであってもよい。例えば、第1のダイは、相対的に
粗大な繊維を製造するように構成されるものであってもよく、また、第2のダイは、相対的に
微細な繊維を製造するように構成されるものであってもよい。使用されるポリマーまたは製造される所望のメルトブロー繊維の種類(例えば、微細な繊維または粗大な繊維)に応じて、様々に異なる寸法のキャピラリーを有するダイを使用することができる。2つのダイの配置構成を変えることによって、2種の繊維の間の集束の度合いを制御することができる。第1の配置構成において、ダイ62は、ダイ62から低集束流Aが供給されるように配置されるものであってもよい。集束の度合いが低い設定を使用すると、最初に第2のメルトブロー用ダイ64からの繊維が形成面(例えば、ドラム形コレクタ64)上に集積され、次いで、ダイ62からの繊維が、第2のメルトブロー用ダイ64からの繊維上に重ねられることになる。集束角度θを、2つのメルトブロー用ダイから来る2つの流れの間の角度として定義することができる。この低集束設定で使用される集束角度θは、例えば、約15°から約2
5°とすることができる。
【0065】
第2の配置構成において、メルトブロー用ダイ62は、ダイ62から中集束流Bが供給されるように配置されるものであってもよい。中集束流Bは、第2のメルトブロー用ダイ64から来る流れDと、これらの流れがドラム形コレクタ66に衝突する直前かまたはおおよそ衝突する位置において、部分的に混合される。この中集束流設定で使用される集束角度θは、例えば、約35°から約45°とすることができる。第3の配置構成において、メルトブロー用ダイ62は、ダイ62から高集束流Cが供給されるように配置されるものであってもよい。高集束流Cは、第2のメルトブロー用ダイ64から来る流れDと、これらの2つの流れがドラム形コレクタ66の表面に衝突する前に空気中で混合され、それによって、2つの流れの間に多量の混繊が生じる。この高集束設定で使用される集束角度θは、例えば、約50°から約60°とすることができる。
【0066】
本発明の様々な実施形態において、本明細書に記載された混繊不織繊維構造を製造するために、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び/またはそれらの混合物が使用されるものであってもよい。不織混繊ウェブの形成で使用される繊維は、例えば、次のグループから選択される1つまたは複数の熱可塑性ポリマーを含むものであってもよい。このグループは、ポリエステル、コポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアクリレート、熱可塑性液晶ポリマー、及び、例えばPBAX、ELASTOLLAN(登録商標)、KRATON(登録商標)、HYTREL(登録商標)のようなエラストマー、並びに、これらの組合せからなる。幾つかの実施形態において、単一層のメルトブロー繊維構造は、ポリエステル、コポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、または、ポリアミド型のポリマー材料、あるいは、これらの組合せを含む繊維から製造されるものであってもよい。様々な実施形態において、不織ウェブの、重量比で少なくとも約50%、または約60%、または約70%、または約80%は、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ELASTOLLAN(登録商標)、KRATON(登録商標)、HYTREL(登録商標)、またはこれらの組合せを含む。本明細書に記載された不織ウェブを形成するために、他の繊維グレードのポリマーを使用することもできる。本発明に係る混繊繊維構造の繊維を形成するために使用されるポリマー組成は、任意選択で、その所望の特性に悪影響を及ぼさない他の成分を含むものであってもよい。そのような成分の例には、酸化防止剤、安定剤、粒子、顔料、等々が含まれるが、これらによって限定されるものではない。これらの成分及び他の添加剤は、通常の量を使用することができる。
【0067】
様々な実施形態において、第1のダイに供給される第1のポリマーは、第2のダイに共有される第2のポリマーと同じ種類である。特定の実施形態において、第1のポリマーは、第2のポリマーと異なるものである。幾つかの実施形態において、第1の融液粘度を有する第1のポリマー成分が第1のダイを通じて供給されるものであってもよく、また、第2の融液粘度を有する第2のポリマー成分が第2のダイを通じて供給されるものであってもよい。特定の実施形態において、第1の融液粘度は、第2の融液粘度とは異なるものであってもよい。この際、第1の融液粘度は、第2の融液粘度よりも高いものであっても、または低いものであってもよい。特定の実施形態において、第1の融液粘度は、第2の融液粘度と同じ(等しい)ものであってもよい。融液粘度は、メルトフローインデックスとして表した場合、例えば、約30から約2400の範囲であってもよい。MFI/MFRは、ISO1133:2005を使用して算出され、10分毎のグラム数として表される。メルトフローインデックスを増大することは、例えば、過酸化物のような添加剤を添加することによって、ポリマーを解重合してその分子量を低減することで可能となる。これによって、7000という高いメルトフローインデックスが可能となる。
【0068】
好適な実施形態において、例えば、(例えば相対的に微細な繊維を形成するために使用される)第2のダイに供給されるポリマーは、第1のポリオレフィンであってもよく、また、(例えば相対的に粗大な繊維を形成するために使用される)第1のダイに供給されるポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、エラストマー、第2のポリオレフィン、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含むものであってもよい。相対的に粗大な繊維を形成するために使用されるポリマーの融液粘度は、相対的に微細な繊維を形成するために使用されるポリマーの粘度よりも高いものであってもよい。好適な実施形態において、第1のダイには、相対的に粗大な繊維を製造するために約500以下(例えば、約400以下または約300以下。例えば、約10から約400)のメルトフローインデックスを有する供給液体ポリマーが供給されるものであってもよく、また、第2のダイには、相対的に微細な繊維を製造するために約500以上(例えば、約600以上または約700以上(例えば、約500から約2400))のメルトフローインデックスを有する供給液体ポリマーが供給されるものであってもよい。特定の実施形態において、第1のダイは、約500以下のメルトフローインデックスを有するポリマーから相対的に粗大な繊維を製造するように構成された同心空気型ダイであってもよい。
【0069】
幾つかの実施形態において、個々の繊維流中及び/または混繊された繊維流中に、第3の材料が、構造中に「連結」されるように堆積されるものであってもよい。2つのノズルが集束する場合、この工程において、例えば、繊維(例えば、ナノ繊維/マイクロ繊維(すなわち、数マイクロメートルから100ナノメートルより小さい寸法の範囲の直径を備えた繊維)、連続的繊維、多葉形繊維、複数のカット繊維、例えば電界紡糸または他の手段により製造された繊維のようなサブミクロン繊維、複数の短繊維、等々)、粒子(ナノ粒子を含む)、繊維のウェブ(例えば、カーディングされたウェブまたは他の繊維構造)、吸収剤、例えばフィルムまたは紙のような他の材料、及びこれらの組合せを、集束流中に堆積させることが可能である。第3の材料は、第1のダイ及び第2のダイから形成された繊維と混合され得るものである。例えば、電界紡糸繊維を集束流上に堆積させ、(例えば、それぞれ同心空気型ダイ及び単列キャピラリー型ダイからの)微細なメルトブロー繊維及び粗大なメルトブロー繊維と、集束流の中間の電界紡糸繊維からなる混繊繊維構造を形成することができる。繊維は、まだ粘着性を有しており、完全には固化していないため、堆積された材料は、繊維と結合する。
【0070】
本発明の様々な実施形態は、プリーツ加工可能/成形可能な単一層不織繊維構造を形成するための方法を説明するものである。方法の実施形態は、混繊ウェブを形成するための第1のダイ及び第2のダイを配置するステップを含む。第2のダイは、単列穿孔穴型ダイであり、ダイ先端部の両側からの衝突空気流が、第1の融液粘度を有する第1のポリマーを含む第1の繊維を引き出すように構成される。第1のダイは、個々の同心空気噴流を伴うノズルを備える同心空気型ダイである。第2のダイは、第2の融液粘度を有する第2のポリマーを含む第2の繊維を引き出すように構成される。上述したように、それぞれのダイの互いに対する位置及びコレクタに対する位置によって、押し出された繊維の混繊の度合いを制御することができる。
【0071】
この方法は、さらに、第1の繊維及び第2の繊維を受け取るためのコレクタを配置するステップを含む。任意選択で、この方法は、任意選択で混繊ウェブ中に第3の材料を導入するように構成された適用装置を配置するステップを含むものであってもよい。ダイとコレクタとの間の距離は、ウェブの統合性の度合いが所望の程度に設定されるように調整可能である。例えば、この距離は、ウェブの2以上の層が混繊された後、約10cmから約50cmに調整されるものであってもよい。
【0072】
好適な実施形態において、混繊されたメルトブロー繊維の不織繊維構造を形成する方法は、第1の液体ポリマー及び第2の液体ポリマーを、本明細書に記載されたメルトブローシステムに導入し、第1のダイから第1の複数の繊維を引き出し、第2のダイから第2の複数の繊維を引き出すステップを含むものであってもよい。この方法は、さらに、混繊メルトブロー繊維構造を形成するために、第1の複数の繊維及び第2の複数の繊維をコレクタの表面上に収集するステップを含むものであってもよい。混繊メルトブロー繊維構造は、例えば、約500以下のメルトフローインデックスを有するポリマーから形成された第1の複数の繊維、及び、約500以上のメルトフローインデックスを有するポリマーから形成された第2の複数の繊維を含むものであってもよい。第2の複数の繊維は、10μmよりも小さい繊維径を有し、但し、第1の複数の繊維は、第2の複数の繊維(例えば、約1μmから約5μm)よりも大きな平均繊維径を有するものであってもよい。繊維径は、SEM画像を使用した繊維の外観検査によって測定することができる。本明細書に記載した繊維径は、個別の繊維に関するものであり、より大きな直径が観測される繊維構造中の複数の繊維の凝集部に関するものではない。
【0073】
有利には、本発明は、異なるメルトフローインデックス及び異なる平均繊維径を有する複数のポリマーから形成することができ、混繊ウェブに強度を付与する相対的に粗大な繊維成分(例えば、PBTのようなポリエステル)、及び、良好な濾過性能を付与する相対的に微細な繊維成分(例えば、PPのようなポリオレフィン)を備える混繊メルトブロー繊維構造を形成するための方法及びシステムを提供するものである。相対的に粗大な繊維成分を製造するための同心空気型ダイの使用によって、比較的高いメルトフローインデックスを有するポリマーを良好な押出速度で使用することが可能となる。驚くべきことに、本発明に従って混繊メルトブロー繊維構造を形成することによって、良好な濾過性能を示す濾過媒体を提供することができることが分かった。特定の実施形態において、混繊メルトブロー繊維構造は、製造を複雑化する可能性のある追加のスクリムまたは他の繊維構造を使用することなく、プリーツ加工可能/成形可能である。
【0074】
様々な実施形態において、メルトブローシステムは、様々に異なる直径の混繊メルトブロー繊維を含むプリーツ加工可能/成形可能な単一層不織繊維構造を形成することができる。好適な実施形態において、様々に異なる直径の混繊メルトブロー繊維を含む不織繊維構造は、上述した方法及びシステムによって形成することができる。この不織繊維構造は、約500以下のメルトフローインデックスを有するポリマーから形成された第1の複数の繊維、及び、約500以上のメルトフローインデックスを有するポリマーから形成された第2の複数の繊維を含む。第2の複数の繊維は、約10μmよりも小さい繊維径を有し、但し、第1の複数の繊維は、第2の複数の繊維よりも大きい平均繊維径を有するものであってもよい。
【0075】
粗大繊維成分と微細繊維成分の相対的な量は、様々とすることができる。但し、粗大繊維成分を、重量の観点から、混繊メルトブロー繊維構造中の主な繊維成分とすることが有利である。例えば、粗大繊維成分は、少なくとも約50重量%(例えば、少なくとも約55重量%または少なくとも約60重量%)の量だけ存在するものであってもよい。特定の実施形態において、粗大繊維成分は、繊維構造の全重量に基づいて、少なくとも約70重量%または少なくとも約80重量%の量だけ存在するものであってもよい。
【0076】
メルトブローウェブの秤量(W)及び厚み(t)は、測定することができる。例えば、布の単位面積当たりの質量(重量)のための標準試験法(ASTM D3776)を使用して、本明細書に記載された繊維構造の秤量を測定することができる。本発明の様々な実施形態において、混繊メルトブロー繊維構造は、約45から約150gsm(グラム毎平方メートル)、約40から約90gsm、約40から約50gsm、または、約40から約45gsmの秤量を有するものであってもよい。本発明の様々な実施形態において、混繊メルトブロー繊維構造は、約300~1200μm、約400~800μm、または、約400~600μmの厚みを有するものであってもよい。
【0077】
繊維構造の充填率(solidity)も算出することができる。充填率(α)は、次の式を使用して計算できる。
【数1】
ここで、ρ
fは、繊維密度である。
本発明の様々な実施形態において、混繊メルトブロー繊維構造は、約4から約20%、約5から約15%、または、約6から約12%の充填率を有するものであってもよい。
【0078】
さらに、繊維構造の濾過特性を測定することもできる。濾過性能は、TSI社製モデル3160フィルター試験装置を使用して、5.3cm/秒の面風速で評価することができる。例えば、0.3μmの粒子を使用して捕集効率を測定することができる。捕集効率(E)、圧力損失(Δp)、及び、性能指数(Q.F.)を記録することができる。性能指数(Q.F.)は、次式で定義される。
【数2】
ここで、Pは、粒子透過率(P=1-E/100)である。
【0079】
本発明の様々な実施形態において、混繊メルトブロー繊維構造は、約5から約20Paの圧力損失において、約20から約50%の捕集効率を有するものであってもよい。例えば、混繊メルトブロー繊維構造は、約20から約40Paの圧力損失において、約25から約55%の捕集効率を有するものであってもよい。例えば、混繊メルトブロー繊維構造は、約40から約60Paの圧力損失において、約35から約55%の捕集効率を有するものであってもよい。本発明の様々な実施形態において、混繊メルトブロー繊維構造は、約0.01から約0.05Pa-1、約0.01から約0.025Pa-1、または、約0.01から約0.015Pa-1の性能指数を有するものであってもよい。特定の実施形態において、性能指数は、少なくとも約0.010Pa-1、または、少なくとも約0.014Pa-1、または、少なくとも約0.020Pa-1として、表すことができる。
【0080】
幾つかの実施形態において、フィルター媒質は、プリーツ加工可能/成形可能な単一層不織繊維構造から形成することができる。例えば、
図3に示す、プリーツ(ひだ)35を備えるフィルター30を参照されたい。また、本発明に係るプリーツ加工された混繊不織繊維構造を示す
図16を参照されたい。
【0081】
〔実験〕
本発明を、以下の例を用いてより詳細に説明する。これらの例は、本発明を説明するために記載されたものであり、本発明を限定するものとして解されるべきものではない。
【0082】
例1
異なる寸法のキャピラリーを有する2つ以上のダイを有することによって、微細繊維と粗大繊維の混繊繊維構造を形成することができる。代わりに、2つ以上の同様のダイまた異なるダイを使用することもできる。但し、キャピラリーの押出量は、微細繊維及び粗大繊維が形成されるよう調整される。好適な実施形態において、2つの異なる種類のダイが使用される。この際、一方は、同心空気型の設計に基づき、他方は、単列穿孔穴型の設計に基づく。
【0083】
例2
2つ以上のメルトブロー用ダイと、メルトブロー繊維流中に電界紡糸繊維ウェブを射出する電界紡糸繊維流とを有することによって、メルトブローウェブと電界紡糸ウェブの混線繊維構造を形成することができる。ドラム形のコレクタは、電界紡糸システムのグランドとして機能する。このようなシステムの利点は、同心空気型ダイ及びPET、PBT等のようなポリマーを使用して、(プリーツ加工/成形のため)及び前置フィルターのための比較的大きな繊維層を形成することができ、かつ、2つの集束するメルトブロー繊維流の中間に堆積される電界紡糸繊維の層を形成することができることである。したがって、微細繊維の層の間に及び/または微細繊維の層と少なくとも部分的に混繊されるように、繊維の第3の層が挿入されるものであってもよい。
【0084】
例3
2つ以上のメルトブロー用ダイを有すること、及び、集束するメルトブロー繊維流中に繊維及び/またはウェブを堆積することで、ばら繊維(loose fiber)及び/または短繊維の形でカット繊維を堆積することによって、メルトブロー繊維の混繊繊維構造を形成することができる。繊維は、回転するブラシまたはコレクタを使用して粒子が投入及び添加される粉体塗装装置中の粒子の堆積と同様の技術を使用することによって、堆積される。
【0085】
例4
2つ以上のメルトブロー用ダイを有すること、及び、粉体、粒子、及び/またはパルプをメルトブロー繊維の集束流中に堆積することによって、粒子、パルプ等とメルトブロー繊維の混繊繊維構造を形成することができる。粒子は、活性炭、金属有機構造体(MOF)、ZIF、セラミック、金属酸化物等であってもよい。
【0086】
例5
キャピラリーの寸法が異なる2つ以上の同種のダイを有することによって、微細繊維と粗大繊維の混繊繊維構造を形成することができる。好適な実施形態において、2つの同種のダイが使用される。この際、一方のダイは、500から850μmの範囲のキャピラリーを備えた同心空気型の設計に基づき、第2のダイは、100から550μmの範囲のキャピラリーを備えた同心空気型の設計に基づく。
【0087】
例6
キャピラリーの寸法が異なる2つ以上の同種のダイを有することによって、微細繊維と粗大繊維の混繊繊維構造を形成することができる。好適な実施形態において、2つの同種のダイが使用される。この際、一方のダイは、500から850μmの範囲のキャピラリーの単一の列を備えた単列衝突空気型の設計に基づき、第2のダイは、100から550μmの範囲のキャピラリーを備えた単列キャピラリー型の設計に基づく。
【0088】
例7
キャピラリーの寸法が異なる2つ以上の同種のダイを有することによって、微細繊維と粗大繊維の混繊繊維構造を形成することができる。好適な実施形態において、2つの同種のダイが使用される。この際、一方のダイは、25.4mm(1インチ)当たり20から30個の500から850μmの範囲の直径を有するキャピラリーの単一の列を備えた単列衝突空気型の設計に基づき、第2のダイは、25.4mm(1インチ)当たり30から50個の100から550μmの範囲の直径を有するキャピラリーを備えた単列キャピラリー型の設計に基づく。
【0089】
例8-22
例えば、
図6に示すような、2つの同心空気型ダイを有するマルチダイ式メルトブローシステムを使用して、混繊メルトブロー繊維構造の例が製造された。マルチダイ式メルトブローシステム60は、2つのメルトブロー用ダイを含む。
第2のメルトブロー用ダイ6
4は、228μmの直径を備えるキャピラリーを有し、微細繊維を形成する。第
1のダイ6
2は、508μmの直径を備えるキャピラリーを有し、粗大繊維を形成する。使用されるポリマー及び製造する所望の種類のメルトブロー繊維(例えば、微細繊維または粗大繊維)に応じて、異なる寸法のキャピラリーを有するダイを使用することもできる。
【0090】
例えば、
図6に示すように、2つのダイの配置構成を変えることによって、集束の度合いを制御することができる。集束角度θは、2つのメルトブロー用ダイからの2つの流れの間の角度として定義できる。この場合の低集束設定で使用される集束角度θは、約15°から約25°とすることができる。この場合の中間集束設定で使用される集束角度θは、約35°から約45°とすることができる。この場合の高集束設定で使用される集束角度θは、約50°から約60°とすることができる。
【0091】
例8-22では、Lyondellbaseell社から供給されている、500のメルトフローレートを有するポリプロピレン樹脂のMETOCENE(登録商標)MF650Wが使用されている。両方のダイに同じポリマーが使用された。空気流及び押出量は、繊維径を変化させた。集束角度も、変化させた。例8-22の詳細な製造条件は、以下の表1に示されている。繊維比は、混繊ウェブを構成する2種の複数の繊維の質量または重量の比として記載されている。
【0092】
【0093】
TSI社製3160フィルター試験装置を使用し、5.3cm/秒の面風速で濾過性能を評価した。捕集効率を測定するために、0.3μmの粒子を使用した。捕集効率(E)、圧力損失(Δp)、及び性能指数(Q.F.)を記録した。例8-22で製造された繊維構造の特性は、以下の表2に示されている。
【0094】
【0095】
例えば、
図7A-7Dには、高い集束角度を使用した例のSEM画像が示されている。それぞれの繊維構造のサンプルには、小キャピラリー側と大キャピラリー側の2つの面がある。
図7Aには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号10の繊維構造の小キャピラリー側が示されている。
図7Bには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号10の繊維構造の大キャピラリー側が示されている。
図7Cには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号11の繊維構造の小キャピラリー側が示されている。
図7Dには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号11の繊維構造の大キャピラリー側が示されている。これらのSEM画像に示されるように、高い集束角度でメルトブローされたサンプルの2つの面の外観は同様のものであり、区別するのは困難である。
【0096】
例えば、
図8A-8Dには、中間の集束角度を使用した例のSEM画像が示されている。上述したように、それぞれの繊維構造のサンプルには、小キャピラリー側と大キャピラリー側の2つの面がある。
図8Aには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号15の繊維構造の小キャピラリー側が示されている。
図8Bには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号15の繊維構造の大キャピラリー側が示されている。
図8Cには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号16の繊維構造の小キャピラリー側が示されている。
図8Dには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号16の繊維構造の大キャピラリー側が示されている。これらのSEM画像に示されるように、中間の集束角度でメルトブローされたサンプルの2つの面の外観は同様のものであるが、高い集束角度のサンプルの2つの面よりは区別し易くなっている。
【0097】
例えば、
図9A-9Dには、低い集束角度を使用した例のSEM画像が示されている。それぞれの繊維構造のサンプルには、小キャピラリー側と大キャピラリー側の2つの面がある。
図9Aには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号20の繊維構造の小キャピラリー側が示されている。
図9Bには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号20の繊維構造の大キャピラリー側が示されている。
図9Cには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号21の繊維構造の小キャピラリー側が示されている。
図9Dには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号21の繊維構造の大キャピラリー側が示されている。これらのSEM画像に示されるように、低い集束角度でメルトブローされたサンプルの2つの面の外観は、相当に異なっている。これらの2つの面は、高い集束角度または中間の集束角度のサンプルの2つの面よりも区別し易い。
【0098】
例23-28
図6に示して上述したような2つの同心空気型ダイを有するマルチダイ式メルトブローシステムを使用して、混繊メルトブロー繊維構造の例を製造した。
例23-28は、Lyondellbaseell社から供給されている、500のメルトフローレートを有するポリプロピレン樹脂のMETOCENE(登録商標)MF650Wを含む。両方のダイに同じポリマーが使用された。0.102ghmの押出量を有する第
1のダイによって供給される粗大繊維中に微細繊維を混繊させるために、第
2のダイには0.023ghmの低い押出量が使用された。集束角度は、その詳細を上述したように変化させた。例8-222の詳細な製造条件は、以下の表3に示されている。
【0099】
【0100】
TSI社製3160フィルター試験装置を使用し、5.3cm/秒の面風速で濾過性能を評価した。捕集効率を測定するために、0.3μmの粒子を使用した。例23-28で製造された繊維構造の特性は、以下の表4に示されている。
【0101】
【0102】
例えば、
図10A-10Bには、高い集束角度を使用した例のSEM画像が示されている。それぞれの繊維構造のサンプルには、小キャピラリー側と大キャピラリー側の2つの面がある。
図10Aには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号25の繊維構造の小キャピラリー側が示されている。
図10Bには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号25の繊維構造の大キャピラリー側が示されている。
【0103】
例えば、
図11A-11Bには、低い集束角度を使用した例のSEM画像が示されている。それぞれの繊維構造のサンプルには、小キャピラリー側と大キャピラリー側の2つの面がある。
図11Aには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号28の繊維構造の小キャピラリー側が示されている。
図11Bには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号28の繊維構造の大キャピラリー側が示されている。上述した例8-22と同様に、低い集束角度でメルトブローされたサンプルの2つの面の外観は、相当に異なっている。これらの2つの面は、高い集束角度のサンプルの2つの面よりも区別し易い。
【0104】
比較例29-31
単一ダイ式のREICOFIL(登録商標)メルトブロー装置(単列衝突空気型)を使用して、比較例29-31を製造した。このダイは、400μmの直径を備えるキャピラリーを有する。これらのサンプルの秤量は、例8-28のうちの幾つかど同様に、約40gsmであった。例29及び例30は、500のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンを含む。特に、例29及び例30には、Lyondellbaseell社から供給されている、METOCENE(登録商標)MF650Wが使用された。例31は、1200のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンを含む。特に、例31には、Lyondellbaseell社から供給されている、METOCENE(登録商標)MF650Xが使用された。例29-31の詳細な製造条件は、以下の表5に示されている。
【0105】
ウェブの秤量及び厚みを測定した。また、TSI社製3160フィルター試験装置を使用し、5.3cm/秒の面風速で濾過性能を評価した。捕集効率を測定するために、0.3μmの粒子を使用した。例29-31で製造された繊維構造の特性は、以下の表5に示されている。
【0106】
【0107】
図12は、2つのダイを備えた装置を使用して製造された例(例8-28)と、単一ダイ式のシステムを使用して(すなわち、複数の繊維流を混繊させることなく)製造された比較例29-31の濾過性能を比較するグラフである。図に示されるように、2つのダイを備えた装置を使用して製造された例は、略同一の圧力損失において相対的に高い捕集効率を示している。さらに、例8-28の性能指数は、例29-31の性能指数よりも大幅に高い。これは、微細繊維と粗大繊維が混繊された本発明に係るメルトブロー繊維構造に関して、濾過性能が向上したことを示している。
【0108】
例32-42
図6に示して上述したような2つの同心空気型ダイを有するマルチダイ式メルトブローシステムを使用して、混繊メルトブロー繊維構造の例を製造した。
例32-42は、Lyondellbaseell社から供給されている、500のメルトフローレートを有するポリプロピレン樹脂のMETOCENE(登録商標)MF650W、及び、DuPont社から供給されている、33g/10分のメルトフローレートを有するポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂のCRASTIN(登録商標)FGS600F40NC010を含む。粗大繊維流は、PBTを含むダイ
1(例えば、
図6のシステム60におけるダイ6
2)から射出され、微細繊維流は、ポリプロピレンを含むダイ
2(例えば、
図6のシステム60におけるダイ6
4)から射出される。例32-42の詳細な製造条件は、以下の表6に示されている。
【0109】
【0110】
ウェブの秤量及び厚みを測定した。また、TSI社製3160フィルター試験装置を使用し、5.3cm/秒の面風速で濾過性能を評価した。捕集効率を測定するために、0.3μmの粒子を使用した。例32-42で製造された繊維構造の特性は、以下の表7に示されている。
【0111】
【0112】
例えば、
図13A-13Dには、高い集束角度を使用した例のSEM画像が示されている。それぞれの繊維構造のサンプルには、小キャピラリー側と大キャピラリー側の2つの面がある。
図13Aには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号32の繊維構造の小キャピラリー側が示されている。
図13Bには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号32の繊維構造の大キャピラリー側が示されている。
図13Cには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号35の繊維構造の小キャピラリー側が示されている。
図13Dには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号35の繊維構造の大キャピラリー側が示されている。
【0113】
例えば、
図14A-14Dには、低い集束角度を使用した例のSEM画像が示されている。それぞれの繊維構造のサンプルには、小キャピラリー側と大キャピラリー側の2つの面がある。
図14Aには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号38の繊維構造の小キャピラリー側が示されている。
図14Bには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号38の繊維構造の大キャピラリー側が示されている。
図14Cには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号41の繊維構造の小キャピラリー側が示されている。
図14Dには、上表に記載されたパラメータに従って製造された例番号41の繊維構造の大キャピラリー側が示されている。上述した例と同様に、低い集束角度でメルトブローされたサンプルの2つの面の外観は、相当に異なっている。これらの2つの面は、高い集束角度のサンプルの2つの面よりも区別し易い。
【0114】
図15は、例32-42及び例8-28のPP混繊サンプルにおいて、2つのダイを備えた装置を使用して製造されたポリプロピレンのサンプルの濾過性能を、2つのダイを備えた装置を使用して製造されたPP/PBTサンプルの濾過性能と比較するグラフである。明らかに、混繊PP/PBT繊維構造は、PPのみのサンプルと比較して、同等の圧力損失において高い捕集効率を示している。
【0115】
特定の市販のフィルター媒質について、試験前にEN779規格に準拠してIPA浸漬で放電させ、フィルター製造の間に導入された静電気を除去したとき、約10~25Paの圧力損失における捕集効率は約2~15%、約25~40Paの圧力損失における捕集効率は約5~25%、約40~60Paの圧力損失における捕集効率は、約20~30%である。したがって、
図15から明らかなように、本発明に従う2つのダイを備えた装置を使用して製造された混繊サンプルは、特定の市販のフィルター媒質よりも濾過性能が向上している。
【0116】
例33及び例39の繊維構造は、ディジタルCNC制御のブレードプリーツ加工機を使用してプリーツ加工された。例えば、
図16A及び
図16Bに示すように、これらの繊維構造は、良好にプリーツ加工され、かつ自立可能なものであった。
【0117】
比較例43-44
比較例43-44は、
図6に示すマルチダイシステムの第2のダイ64(同心空気型)のみを使用して製造されたものである。例43-44は、500のメルトフローレートを有するポリプロピレンを含む。特に、例43-44には、Lyondellbaseell社から供給されているMETOCENE(登録商標)MF650Wが使用された。例43-44で製造された繊維構造の特性は、以下の表8に示されている。
【0118】
【0119】
ウェブの秤量及び厚みを測定した。また、TSI社製3160フィルター試験装置を使用し、5.3cm/秒の面風速で濾過性能を評価した。捕集効率を測定するために、0.3μmの粒子を使用した。例43-44で製造された繊維構造の特性は、以下の表9に示されている。
【0120】
【0121】
これらの比較例の濾過試験の結果を
図15のデータと比較すると、単一ダイによる(すなわち、複数の繊維流の混繊がない)比較例は、同等の濾過性能を備えないことが明らかである。例えば、本例における全ての混繊サンプルは、10Paと20Paの間の圧力損失において20%よりも高い捕集効率を示している。
【0122】
本発明が属する技術分野の当業者は、上述した説明中に開示された教示の利益を有する本発明の多くの修正及び他の実施形態に容易に想到するものである。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、かつ、他の実施形態は、添付請求項の範囲内に含まれることが意図されているものとして理解されるべきである。本明細書において特定の用語が使用されていたとしても、それらの用語は一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。