(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】ミラー表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20220209BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20220209BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220209BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1347
G02F1/1335 510
B60R1/04 D
(21)【出願番号】P 2017107115
(22)【出願日】2017-05-30
【審査請求日】2020-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】郷原 良寛
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-041274(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136100(WO,A1)
【文献】特開2009-265842(JP,A)
【文献】特開2001-318374(JP,A)
【文献】特開2005-301315(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166937(WO,A1)
【文献】国際公開第99/004315(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/112525(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0148063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1347
G02F 1/1335 - 1/13363
B60R 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示状態で第一方向に振動する画像光としての光を出射するモニタ表示素子と、
前記モニタ表示素子の表示面側に設けられており、前記第一方向に振動する光を透過させるとともに前記第一方向と直交する第二方向に振動する光を反射する反射型偏光板と、前記反射型偏光板の表示面側に設けられており、前記第一方向に振動する光を透過させるとともに前記第二方向に振動する光を吸収する吸収型偏光板と、前記反射型偏光板及び前記吸収型偏光板の間に設けられる液晶セルと、を有するミラー光学素子と、
を備え、
前記ミラー光学素子は、
前記吸収型偏光板側からの前記第一方向に振動する光が、前記液晶セルによって前記第二方向に振動するように変換されて前記反射型偏光板で反射されるとともに、前記液晶セルによって前記第一方向に振動するように変換されて前記吸収型偏光板から出射される反射状態と、
前記反射型偏光板側からの前記第一方向に振動する光が、前記液晶セルを前記第一方向に振動するままで通過して前記吸収型偏光板から出射される透過状態と、
を切替可能であり、
車両の車室内において、左右方向に配列される運転席及び助手席よりも前方であるとともに運転者のアイポイントよりも上、かつ、左右方向において前記運転席及び前記助手席の間に設けられており、
前記第一方向及び前記第二方向は、それぞれ上下軸及び左右軸の両方に対して斜め方向に設定されて互いに直交しているとともに、前記ミラー光学素子の面内方向において透過率が最も高い方向である前記ミラー光学素子の優先透過方向の向きは、
前記運転者の視認方向からズレるとともに前記運転席及び前記助手席の間に対応する真下方向に設定されて
いる
ことを特徴とするミラー表示装置。
【請求項2】
画像表示状態で第一方向に振動する画像光としての光を出射するモニタ表示素子と、
前記モニタ表示素子の表示面側に設けられており、前記第一方向に振動する光を透過させるとともに前記第一方向と直交する第二方向に振動する光を反射する反射型偏光板と、前記反射型偏光板の表示面側に設けられており、前記第二方向に振動する光を透過させるとともに前記第一方向に振動する光を吸収する吸収型偏光板と、前記反射型偏光板及び前記吸収型偏光板の間に設けられる液晶セルと、を有するミラー光学素子と、
を備え、
前記ミラー光学素子は、
前記吸収型偏光板側からの前記第二方向に振動する光が、前記液晶セルを前記第二方向に振動するままで通過して前記反射型偏光板で反射されるとともに、前記液晶セルを前記第二方向に振動するままで通過して前記吸収型偏光板から出射される反射状態と、
前記反射型偏光板側からの前記第一方向に振動する光が、前記液晶セルによって前記第二方向に振動するように変換されて前記吸収型偏光板から出射される透過状態と、
を切替可能であり、
車両の車室内において、左右方向に配列される運転席及び助手席よりも前方であるとともに運転者のアイポイントよりも上、かつ、左右方向において前記運転席及び前記助手席の間に設けられており、
前記第一方向及び前記第二方向は、それぞれ上下軸及び左右軸の両方に対して斜め方向に設定されて互いに直交しているとともに、前記ミラー光学素子の面内方向において透過率が最も高い方向である前記ミラー光学素子の優先透過方向の向きは、
前記運転者の視認方向からズレるとともに前記運転席及び前記助手席の間に対応する真下方向に設定されて
いる
ことを特徴とするミラー表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー状態と画像を表示する画像表示状態とを切替可能なミラー表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用後写鏡は、車両後方の状況を視認するために車内あるいは車外に設けられており、鏡面が後方を向いて設けられている。夜間走行時には、後方車両のヘッドランプの光が鏡面に入射して反射するために、運転者が眩しさを感じる場合がある。そのため、従来から、車両用後写鏡として防眩機能を有するものが用いられている。
【0003】
特許文献1には、画素を形成する電極を設けた液晶セルと、該液晶セルの裏側に配置されたハーフミラーと、該ハーフミラーの裏側に配置されたバックライト装置と、液晶セルの電極駆動手段とを備える画像形成可能な防眩ミラーが記載されている。
【0004】
かかる防眩ミラーでは、ハーフミラーを用いているため、透過及び反射のいずれであっても、光量が約二分の一になってしまい、画像を表示すると画面が暗くなってしまうという問題があった
【0005】
これに対し、特許文献2には、電源ONの状態でモニタとして利用することができるとともに、電源OFFの状態で鏡として利用することができる液晶防眩ミラーが記載されている。当該液晶防眩ミラーは、入射光を反射させる反射型偏光板と、反射型偏光板の前面側に配置された液晶部と、液晶部の前面側に配置された吸収型偏光板(透過型偏光板ともいう)とを含んで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-243914号公報
【文献】特開2009-8881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2には、モニタ表示素子やミラー光学素子の構成について具体的記載がない。すなわち、特許文献2に記載の液晶防眩ミラーは、TN(Twisted Nematic)型である液晶部の透過率が見る方向によって異なるにも関わらず、それを考慮したものではない。そのため、特許文献2に記載の液晶防眩ミラーでは、モニタ表示素子の表示特性が十分に発揮できない可能性がある。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みて創案されたものであり、モニタ表示素子の表示特性を好適に引き出すことが可能なミラー表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために、本発明のミラー表示装置は、画像表示状態で第一方向に振動する画像光としての光を出射するモニタ表示素子と、前記モニタ表示素子の表示面側に設けられており、前記第一方向に振動する光を透過させるとともに前記第一方向と直交する第二方向に振動する光を反射する反射型偏光板と、前記反射型偏光板の表示面側に設けられており、前記第一方向に振動する光を透過させるとともに前記第二方向に振動する光を吸収する吸収型偏光板と、前記反射型偏光板及び前記吸収型偏光板の間に設けられる液晶セルと、を有するミラー光学素子と、を備え、前記ミラー光学素子は、前記吸収型偏光板側からの前記第一方向に振動する光が、前記液晶セルによって前記第二方向に振動するように変換されて前記反射型偏光板で反射されるとともに、前記液晶セルによって前記第一方向に振動するように変換されて前記吸収型偏光板から出射される反射状態と、前記反射型偏光板側からの前記第一方向に振動する光が、前記液晶セルを前記第一方向に振動するままで通過して前記吸収型偏光板から出射される透過状態と、を切替可能であり、車両の車室内において、左右方向に配列される運転席及び助手席よりも前方であるとともに運転者のアイポイントよりも上、かつ、左右方向において前記運転席及び前記助手席の間に設けられており、前記第一方向及び前記第二方向は、それぞれ上下軸及び左右軸の両方に対して斜め方向に設定されて互いに直交しているとともに、前記ミラー光学素子の面内方向において透過率が最も高い方向である前記ミラー光学素子の優先透過方向の向きは、前記運転者の視認方向からズレるとともに前記運転席及び前記助手席の間に対応する真下方向に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、モニタ表示素子の表示特性を好適に引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係るミラー表示装置の設置状態を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係るミラー表示装置を示す分解斜視図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係るミラー表示装置のミラー状態を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係るミラー表示装置の画像表示状態を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係るミラー光学素子の透過率を説明するための図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態に係るミラー表示装置の画像表示状態での透過率のシミュレーション結果を説明するための図である。
【
図7】本発明の第一の実施形態に係るミラー表示装置の優先透過方向と視認方向との関係を示す図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係るミラー表示装置の画像表示状態を模式的に示す図である。
【
図9】本発明の第二の実施形態に係るミラー表示装置のミラー状態を模式的に示す図である。
【
図10】本発明の第三の実施形態に係るミラー表示装置のミラー状態を模式的に示す図である。
【
図11】本発明の第三の実施形態に係るミラー表示装置の画像表示状態を模式的に示す図である。
【
図12】本発明の第三の実施形態に係るミラー光学素子の透過率を説明するための図である。
【
図13】本発明の第三の実施形態に係るミラー表示装置の画像表示状態での透過率のシミュレーション結果を説明するための図である。
【
図14】本発明の第三の実施形態に係るミラー表示装置の優先透過方向と視認方向との関係を示す図である。
【
図15】本発明の第四の実施形態に係るミラー表示装置の画像表示状態を模式的に示す図である。
【
図16】本発明の第四の実施形態に係るミラー表示装置のミラー状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、本発明のミラー表示装置を車両の車室内前部に設けられるルームミラー(インナーリアビューミラーともいう)に適用した場合を例にとり、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、前後上下左右といった方向は、車両の運転者を基準とする。
【0013】
なお、第一及び第三の実施形態に係るミラー表示装置は、ミラー光学素子の電圧無印加状態(非通電状態)でミラーとして機能する点で共通し、第二及び第四の実施形態に係るミラー表示装置は、ミラー光学素子の電圧印加状態(通電状態)でミラーとして機能する点で共通する。また、第一及び第二の実施形態に係るミラー表示装置は、後記する優先透過方向の向きが右下方向又は左下方向に設定されている点で共通し、第三及び第四の実施形態に係るミラー表示装置は、優先透過方向の向きが真下方向に設定されている点で共通する。また、各実施形態に係るミラー表示装置において、モニタ表示素子が出射する画像光の振動方向(すなわち、吸収型偏光板54の光透過軸方向)が、特許請求の範囲における第一方向である。
【0014】
<第一の実施形態>
図1に示すように、本発明の実施形態に係るミラー表示装置1Aは、運転者P1(
図7参照)の後方の視野を確保するために、車両Cの車室2内前部に設けられている。ミラー表示装置1Aは、表示面が後方に向けられており、後方視認鏡として機能するミラー状態と、画像を表示する画像表示状態と、を切替可能な装置である。本実施形態において、ミラー表示装置1Aは、フロントウィンドシールド(フロントガラス)3の車幅方向中央部の上端部に設けられている。すなわち、ミラー表示装置1Aは、運転者P1の基準的な視線位置であるアイポイントEPよりも前方かつ上方に設けられている(
図7参照)。
【0015】
図2に示すように、ミラー表示装置1Aは、外装ケース10と、フロントベゼル20と、構造体支持具30と、制御回路基板40と、モニタ表示素子50と、ミラー光学素子60と、を備える。
【0016】
<外装ケース>
外装ケース10は、後方へ向けられた開口部10aを有する筐体形状を呈する樹脂製又は金属製部材である。外装ケース10の前壁部には、図示しないケーブルが挿通される孔部10bが形成されている。外装ケース10は、構造体支持具30に対してネジ等によって固定されている。かかる外装ケース10内には、前側から順に、構造体支持具30、制御回路基板40、モニタ表示素子50及びミラー光学素子60が収容されている。なお、モニタ表示素子50及びミラー光学素子60の形状は、開口部10aの形状に合わせられている。
【0017】
<フロントベゼル>
フロントベゼル20は、外装ケース10の開口部10aの周縁部を封止する矩形枠形状を呈する樹脂製部材である。フロントベゼル20は、モニタ表示素子50及びミラー光学素子60の周縁部を後方から覆っている。なお、フロントベゼル20は、省略可能である。
【0018】
<構造体支持具>
構造体支持具30は、制御回路基板40及びモニタ表示素子50(並びにミラー光学素子60)が固定されるとともにミラー表示装置1A全体を支持する金属製又は樹脂製部材である。構造体支持具30は、孔部10bを介して車両C側の構造体(図示せず)に取り付けられている。
【0019】
<制御回路基板>
制御回路基板40は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力回路等といった各種電子部品を搭載することによって構成されており、モニタ表示素子50及びミラー光学素子60を制御する。制御回路基板40は、例えば、車両Cの前方や後方等の死角を撮影するカメラによる撮影結果をモニタ表示素子50に表示させることができる。また、制御回路基板40は、DVD等の記録媒体に記録された映像、カーナビゲーション装置からの画像、ワンセグ放送の映像等をモニタ表示素子50に表示させてもよい、また、制御回路基板40は、車両Cの状態(車速等)、現在時刻、現在位置、気温、室温等といった各種情報をモニタ表示素子50に表示させてもよい。また、制御回路基板40は、車両Cに設けられたスイッチの操作結果、各種センサの検出結果等に基づいて、モニタ表示素子50に表示させる画像又は映像を選択することができる。
【0020】
<モニタ表示素子>
モニタ表示素子50は、制御回路基板40の制御に基づいて、後面である表示面から、画像を表示するための画像光(本実施形態では、縦方向に振動する光)を後方へ出射する。
図3及び
図4に示すように、モニタ表示素子50は、前側から順に、バックライト51と、吸収型偏光板52と、液晶セル53と、吸収型偏光板54と、を備える。
【0021】
≪バックライト≫
バックライト51は、制御回路基板40の制御によって点灯状態と消灯状態とを切替可能な白色光の面光源である。点灯状態において、バックライト51は、白色光を後方へ出射する。
【0022】
≪吸収型偏光板≫
吸収型偏光板52は、バックライト51の後面(発光面)に重ねて設けられている。吸収型偏光板52は、縦方向(例えば、鉛直方向)に振動する光を透過させるとともに、当該縦方向と直交する横方向(例えば、水平方向)に振動する光を吸収する。すなわち、吸収型偏光板52の光透過軸は、縦方向に設定されている。なお、各吸収型偏光板52,54,63における光の吸収及び遮断とは、該当する方向に振動する光を100%吸収したり遮断したりすることに限定されず、例えば、10%程度の透過を許容する概念である。
【0023】
≪液晶セル≫
液晶セル53は、吸収型偏光板52の後面に重ねて設けられている。液晶セル53は、複数の画素に分割されており、バックライト51によって発光された白色光を用いて画像を表示するための画像光を出射する。液晶セル53は、制御回路基板40の制御によって、縦方向に振動する光を透過させる透過状態と、縦方向に振動する光を遮断する遮断状態と、を画素ごとに切替可能である。
【0024】
液晶セル53としては、例えばIPS(In-Plane-Switching)型又はVA(Vertical Alignment)型の液晶セルが好適に利用可能である。液晶セル53がIPS型である場合には、液晶セル53は、電圧無印加状態で、光を遮断し、電圧印加状態で、光を透過させる。液晶セル53がVA型である場合にも、液晶セル53は、IPS型と同様に、電圧無印加状態で、光を遮断し、電圧印加状態で、光を透過させる。IPS型又はVA型の液晶セル53は、後記するTN(Twisted Nematic)型の液晶セル62と異なり、あらゆる視認方向に対して好適な光透過性を実現する。本実施形態において、液晶セル53は、IPS型である。
【0025】
≪吸収型偏光板≫
吸収型偏光板54は、液晶セル53の後面に重ねて設けられている。吸収型偏光板54は、縦方向に振動する光を透過させるとともに、当該縦方向と直交する横方向に振動する光を吸収する。すなわち、吸収型偏光板54の光透過軸は、吸収型偏光板52と同じく縦方向に設定されている。
【0026】
<モニタ表示素子の画像非表示状態と画像表示状態との切替>
モニタ表示素子50は、ミラー表示装置1Aがバックミラーとして用いられる通常状態(バックライト51:消灯状態、液晶セル53:電圧無印加状態)で、画像を表示しない画像非表示状態となる。
【0027】
また、モニタ表示素子50は、バックライト51が点灯されるとともに液晶セル53に電圧が印加された状態で、画像を表示する画像表示状態となる。画像表示状態において、バックライト51によって発光された光のうち縦方向に振動する光は、吸収型偏光板52、液晶セル53及び吸収型偏光板54を介してミラー光学素子60へ出射される。
【0028】
なお、IPS型又はVA型の液晶セル53を有するモニタ表示素子50において、各偏光板52,54の設置態様は前記したものに限定されない。すなわち、モニタ表示素子50は、画像光として縦方向に振動する光をミラー光学素子60へ出射するものであればよい。
【0029】
<ミラー光学素子>
図2に示すように、ミラー光学素子60は、モニタ表示素子50の表示面(後面)側に設けられており、制御回路基板40の制御に基づいて、後記する反射状態と透過状態とを電気的に切替可能な素子である。ミラー光学素子60は、モニタ表示素子50に対して光学カップリング樹脂、テープ等を用いて密着されていてもよく、モニタ表示素子50に対して離間して設けられていてもよい。
図3及び
図4に示すように、ミラー光学素子60は、前側から順に、反射型偏光板61と、液晶セル62と、吸収型偏光板63と、を備える。
【0030】
≪反射型偏光板≫
反射型偏光板61は、モニタ表示素子50の表示面、すなわち、吸収型偏光板54の後面側に設けられている。反射型偏光板61は、縦方向に振動する光を透過させるとともに、当該縦方向と直交する横方向に振動する光を反射させる。すなわち、反射型偏光板61の光透過軸は、縦方向に設定されている。なお、反射型偏光板61における光の反射とは、該当する方向に振動する光を100%反射することに限定されず、例えば、10%程度の透過及び吸収を許容する概念である。
【0031】
≪液晶セル≫
液晶セル62は、反射型偏光板61の後面(表示面側)に重ねて設けられている。液晶セル62は、TN(Twisted Nematic)型であって、前後一対の透明基材(例えば、ガラス)62a,62bと、透明基材62a,62b間に封止された液晶62cと、を備える。
図3に示すように、液晶62cは、いわゆるラビング処理によって、一方の透明基材62aから他方の透明基材62bに向かって90度ねじれるように螺旋状に配列されている。
【0032】
図3に示すように、液晶62cは、電圧無印加状態で、旋光性を有する。すなわち、液晶62cは、電圧無印加状態で、吸収型偏光板63側からの縦方向に振動する光を、反射型偏光板61側へ通過させる際に横方向に振動する光に変換する。また、液晶62cは、電圧無印加状態で、反射型偏光板61によって反射された反射型偏光板61側からの横方向に振動する光を、吸収型偏光板63側へ通過させる際に縦方向に振動する光に変換する。
【0033】
図4に示すように、液晶62cは、電圧印加状態で、液晶分子の配列が変わって旋光性が解消される。すなわち、液晶62cは、電圧印加状態で、縦方向に振動する光を透過させる。
【0034】
なお、
図3及び
図4に示す液晶62cの分子の向きは、模式的なものであり、実際の分子の向きを正確に表したものではない(他の図面も同様)。また、
図3及び
図4において各偏光板52,54,61,63内に描かれた平行線(縞模様)は、各偏光板52,54,61,63の光透過軸の方向を示す(他の実施形態における
図8~11,15,16も同様)。
【0035】
≪吸収型偏光板≫
図3及び
図4に示すように、吸収型偏光板63は、液晶セル62の後面(表示面側)に重ねて設けられている。吸収型偏光板63は、縦方向に振動する光を透過させるとともに、当該縦方向と直交する横方向に振動する光を吸収する。すなわち、吸収型偏光板63の光透過軸は、縦方向に設定されている。
【0036】
<ミラー光学素子の反射状態と透過状態との切替>
図3に示すように、ミラー光学素子60は、通常状態(液晶セル62:電圧無印加状態)で、反射状態となる。反射状態において、吸収型偏光板63側からの縦方向に振動する光は、液晶セル62によって横方向に振動するように変換されて反射型偏光板61で反射されるとともに、液晶セル62によって縦方向に振動するように変換されて吸収型偏光板63から出射される。また、反射状態において、吸収型偏光板63側からの横方向に振動する光は、吸収型偏光板63によって吸収される。また、反射状態において、反射型偏光板61側からの縦方向に振動する光は、反射型偏光板61を透過し、液晶セル62によって横方向に振動するように変換され、吸収型偏光板63によって遮断される。このように、反射状態においては、反射型偏光板61側からの光がミラー光学素子60を通過して後方へ出射されることはないため、もし仮にモニタ表示素子50が画像光を出射した場合であっても、ミラー光学素子60は、ミラーとしての機能を好適に実現することができる。
【0037】
図4に示すように、ミラー光学素子60は、液晶セル62に電圧が印加された状態で、透過状態となる。透過状態において、縦方向に振動する光は、ミラー光学素子60を双方向(反射型偏光板61側⇔吸収型偏光板63側)に透過する。また、透過状態において、吸収型偏光板63側からの横方向に振動する光は、吸収型偏光板63によって吸収される。
【0038】
<動作例>
続いて、本発明の第一の実施形態に係るミラー表示装置1Aの動作例について、ミラー状態、画像表示状態の順に説明する。
【0039】
≪ミラー状態≫
図3に示すように、ミラー状態において、制御回路基板40は、モニタ表示素子50のバックライト51を消灯させ、モニタ表示素子50の液晶セル53及びミラー光学素子60の液晶セル62に電圧を印加しない。
【0040】
かかる状態において、ミラー光学素子60の吸収型偏光板63の後面に入射する外部光のうち、横方向に振動する光は、当該吸収型偏光板63に吸収され、縦方向に振動する光は、当該吸収型偏光板63を通過する。吸収型偏光板63を通過した縦方向に振動する光は、液晶セル62を前方へ通過する際に当該液晶セル62によって横方向に振動する光に変換される。液晶セル62によって横方向に振動するように変換された光は、反射型偏光板61によって反射される。反射型偏光板61によって反射された光は、液晶セル62を後方へ通過する際に当該液晶セル62によって縦方向に振動する光に変換される。液晶セル62によって縦方向に振動するように変換された光は、吸収型偏光板63を通過し、後方へ出射される。
【0041】
すなわち、ミラー状態において、ミラー表示装置1Aのミラー光学素子60は、後方からの光のうち縦方向に振動する光を反射するミラーとして機能する。
【0042】
≪画像表示状態≫
図4に示すように、画像表示状態において、制御回路基板40は、モニタ表示素子50のバックライト51を点灯させ、モニタ表示素子50の液晶セル53及びミラー光学素子60の液晶セル62に電圧を印加する。なお、液晶セル53は、実際には画素ごとに電圧の印加の有無が制御されるが、以下では、電圧が印加された画素における状態について説明する。
【0043】
かかる状態において、バックライト51が発光した光のうち、横方向に振動する光は、吸収型偏光板52に吸収され、縦方向に振動する光は、当該吸収型偏光板52を通過する。吸収型偏光板52を通過した縦方向に振動する光は、液晶セル53をそのまま(縦方向に振動する光のまま)通過する。液晶セル53を通過した縦方向に振動する光は、吸収型偏光板54を通過する。
【0044】
また、吸収型偏光板54を通過した縦方向に振動する光は、ミラー光学素子60の反射型偏光板61を通過する。反射型偏光板61を通過した縦方向に振動する光は、液晶セル62をそのまま(縦方向に振動する光のまま)通過する。液晶セル62を通過した縦方向に振動する光は、吸収型偏光板63を通過し、後方へ出射される。
【0045】
すなわち、画像表示状態において、ミラー表示装置1Aのミラー光学素子60は、モニタ表示素子50に表示された画像の光を透過させる光透過層として機能する。
【0046】
<優先透過方向と視認方向との関係>
図3に示すように、電圧無印加状態におけるTN型のミラー光学素子60は、反射型偏光板61側及び吸収型偏光板63側の両方の配光膜によって液晶セル62内の液晶分子の配列にねじれを発生させている。このため、
図5に示すように、ミラー光学素子60を見る角度によって透過率に差が生じる。ここで、ミラー光学素子60の面内方向において、透過率が最も高い(最大値T
MAX)方向(換言すると、透過率が最も低い(最小値T
min)方向の反対方向)を、優先透過方向X1とする。優先透過方向X1は、前記したラビング処理の方向によって決まるものであり、反射型偏光板61及び吸収型偏光板63の透過軸方向(ここでは、鉛直方向)に対してミラー光学素子60の面(上下方向及び左右方向を含み、前後方向と直交する面)内で45度の方向となる。
本発明の第一の実施形態に係るミラー表示装置1Aにおいて、優先透過方向X1は、右下方向(鉛直下方に対して右下45度の方向)又は左下方向(鉛直下方に対して左下45度の方向)に設定されている。優先透過方向X1は、右下方向及び左下方向のうち、運転席4(
図7参照)側の方向に設定されていることがより好ましい。
【0047】
ミラー光学素子60の透過率の視認方向に対する変化率は、当該ミラー光学素子60の面内方向において、優先透過方向X1付近では小さく、優先透過方向X1から離れるにつれて大きくなる。すなわち、ミラー光学素子60は、優先透過方向X1付近では透過率が略同一であり、優先透過方向X1から離れるにつれて透過率が小さくなるのに加えて透過率の変化率も大きくなる。
ここで、ミラー表示装置1Aに関して、右ハンドル車を優先してミラー光学素子60の優先透過方向X1が右ハンドル車の運転席4側に向くように設計されている場合において、別途当該ミラー表示装置1Aを左ハンドル車に適用する場合が考えられる。このような場合において、ミラー表示装置1Aは、左ハンドル車の運転席5の方向への透過率が右ハンドル車の運転席4の方向よりもわずかに低下するものの左右の透過率の差は小さいため、左ハンドル車の運転席5の方向に対して実用上支障の無い透過率を有する。
同様に、ミラー表示装置1Aに関して、左ハンドル車を優先してミラー光学素子60の優先透過方向X1が左ハンドル車の運転席5側に向くように設計されている場合において、別途当該ミラー表示装置1Aを右ハンドル車に適用する場合が考えられる。このような場合において、ミラー表示装置1Aは、右ハンドル車の運転席4の方向への透過率が左ハンドル車の運転席5の方向よりもわずかに低下するものの左右の透過率の差は小さいため、右ハンドル車の運転席4の方向に対して実用上支障の無い透過率を有する。
【0048】
ここで、本発明の第一の実施形態に係るミラー表示装置1Aの透過率のシミュレーション結果について説明する。
図6に示すように、ミラー光学素子60に電圧を印加してモニタ表示素子50による画像を表示した場合の透過率の等高線CLに対して、ミラー表示装置1Aの視認領域Rを重ねると、優先透過方向X1側からミラー表示装置1Aを見る状態で、ミラー表示装置1Aに表示された画像の視認性が最も良くなることが分かる。
【0049】
すなわち、
図7に示すように、ミラー光学素子60の優先透過方向X1の向きは、利用者である運転者P1の視認方向Y1に応じて設定されている。なお、
図7に示すミラー表示装置1A中の平行線(縞模様)は、吸収型偏光板63の光透過軸の方向を示している。
本実施形態では、ミラー表示装置1Aは、運転者P1のアイポイントEPよりも前方かつ上方に設けられており、ミラー光学素子60の優先透過方向X1の向きは、右下方向及び左下方向のうち、右の運転席4側の方向に設定されている。
【0050】
なお、運転者P1等が着用するサングラスSGには、縦方向に振動する光を透過するとともに横方向に振動する光をカットする偏光レンズを用いることで、防眩性を持たせたものがある。ミラー表示装置1Aは、吸収型偏光板63が縦方向に振動する光を透過するとともに横方向に振動する光を吸収するように設定されているので、サングラスSGを着用した運転者P1に対しても、ミラー機能及び画像表示機能を好適に実現することができる。
【0051】
本発明の第一の実施形態に係るミラー表示装置1Aは、TN型であるミラー光学素子60の優先透過方向X1の向きが利用者である運転者P1の視認方向Y1に応じて設定されている。したがって、ミラー表示装置1Aは、方向によって透過率が異なるミラー光学素子60を優先透過方向X1の向きが運転者P1の視認方向Y1に応じる姿勢で設けることによって、モニタ表示素子50による画像を表示する際に、モニタ表示素子50の表示特性を好適に引き出し、運転者P1に好適に視認させることができる。また、ミラー表示装置1Aは、右ハンドル車及び左ハンドル車のどちらに適用された場合であっても、モニタ表示素子50による画像を表示して運転者P1又は運転者P2に好適に視認させることができ、ひいては右ハンドル車及び左ハンドル車において製品の共通化を好適に実現することができる。
【0052】
また、ミラー表示装置1Aは、ミラー光学素子60の反射状態を電圧無印加で実現するので、乗車前後及び降車前後の電源OFF時、電源喪失時等においてミラーとしての機能を自動的に実現することができる。
【0053】
また、ミラー表示装置1Aは、当該ミラー表示装置1Aが運転者P1のアイポイントEPよりも上に設けられているとともにミラー光学素子60の優先透過方向X1が下向きに設定されているので、モニタ表示素子50による画像を表示して運転者P1により好適に視認させることができる。また、ミラー表示装置1Aは、右ハンドル車及び左ハンドル車のどちらに適用された場合であっても、モニタ表示素子50による画像を表示して運転者P1又は運転者P2により好適に視認させることができ、ひいては右ハンドル車及び左ハンドル車において製品の共通化をより好適に実現することができる。
【0054】
また、ミラー表示装置1Aは、優先透過方向X1の向きが右下方向又は左下方向に設定されているので、車両Cの車室2内に設けられるルームミラーとして好適に利用可能である。
【0055】
また、ミラー表示装置1Aは、優先透過方向X1の向きが右下方向及び左下方向のうち運転席4側の方向に設定されているので、モニタ表示素子50による画像を表示して運転者P1にさらに好適に視認させることができる。
【0056】
また、ミラー表示装置1Aは、吸収型偏光板63が縦方向に振動する光を透過するとともに横方向に振動する光を吸収するので、運転者P1がサングラスSGを着用している場合であっても、ミラー機能及び画像表示機能を好適に実現することができる。
【0057】
<第二の実施形態>
続いて、本発明の第二の実施形態に係るミラー表示装置について、第一の実施形態に係るミラー表示装置1Aとの相違点を中心に説明する。
【0058】
図8及び
図9に示すように、本発明の第二の実施形態に係るミラー表示装置1Bのモニタ表示素子50は、第一の実施形態のモニタ表示素子50に対して、後方から見て時計回りに90度回転させて配置されている。また、本発明の第二の実施形態に係るミラー表示装置1Bの反射型偏光板61は、第一の実施形態の反射型偏光板61に対して、前後軸周りに90度回転させて配置されている。
【0059】
<ミラー光学素子の反射状態と透過状態との切替>
図8に示すように、ミラー光学素子60は、ミラー表示装置1Bが表示装置として用いられる状態(液晶セル62:電圧無印加状態)で、透過状態となる。透過状態において、反射型偏光板61側からの横方向に振動する光は、液晶セル62によって縦方向に振動するように変換されて吸収型偏光板63から出射される。また、透過状態において、吸収型偏光板63側からの縦方向に振動する光は、液晶セル62によって横方向に振動するように変換されて反射型偏光板61から前方へ出射される。また、透過状態において、反射型偏光板61側からの縦方向に振動する光は、当該反射型偏光板61で反射される。また、透過状態において、吸収型偏光板63側からの横方向に振動する光は、吸収型偏光板63によって吸収される。
【0060】
図9に示すように、ミラー光学素子60は、液晶セル62に電圧が印加された状態で、反射状態となる。反射状態において、吸収型偏光板63側からの縦方向に振動する光は、液晶セル62をそのまま通過して反射型偏光板61で反射されるとともに、液晶セル62をそのまま後方へ通過して吸収型偏光板63から出射される。また、反射状態において、反射型偏光板61側からの縦方向に振動する光は、当該反射型偏光板61で反射される。また、反射状態において、吸収型偏光板63側からの横方向に振動する光は、吸収型偏光板63によって吸収される。また、反射状態において、反射型偏光板61側からの横方向に振動する光は、反射型偏光板61を透過し、液晶セル62を通過して吸収型偏光板63によって吸収される。このように、反射状態においては、反射型偏光板61側からの光がミラー光学素子60を通過して後方へ出射されることはないため、もし仮にモニタ表示素子50が画像光を出射した場合であっても、ミラー光学素子60は、ミラーとしての機能を好適に実現することができる。
【0061】
<動作例>
続いて、本発明の第二の実施形態に係るミラー表示装置1Bの動作例について、ミラー状態、画像表示状態の順に説明する。
【0062】
≪ミラー状態≫
図9に示すように、ミラー状態において、制御回路基板40は、モニタ表示素子50のバックライト51を消灯させ、モニタ表示素子50の液晶セル53に電圧を印加せず、ミラー光学素子60の液晶セル62に電圧を印加する。
【0063】
かかる状態において、ミラー光学素子60の吸収型偏光板63の後面に入射する外部光のうち、横方向に振動する光は、当該吸収型偏光板63に吸収され、縦方向に振動する光は、当該吸収型偏光板63を通過する。吸収型偏光板63を通過した縦方向に振動する光は、液晶セル62をそのまま(縦方向に振動する光のまま)通過する。液晶セル62を通過した縦方向に振動する光は、反射型偏光板61によって反射される。反射型偏光板61によって反射された光は、液晶セル62をそのまま(縦方向に振動する光のまま)後方へ通過する。液晶セル62を後方へ通過した縦方向に振動する光は、吸収型偏光板63を通過し、後方へ出射される。
【0064】
≪画像表示状態≫
図8に示すように、画像表示状態において、制御回路基板40は、モニタ表示素子50のバックライト51を点灯させ、モニタ表示素子50の液晶セル53に電圧を印加し、ミラー光学素子60の液晶セル62に電圧を印加しない。
【0065】
かかる状態において、バックライト51が発光した光のうち、縦方向に振動する光は、吸収型偏光板52に吸収され、横方向に振動する光は、当該吸収型偏光板52を通過する。吸収型偏光板52を通過した横方向に振動する光は、液晶セル53をそのまま(横方向に振動する光のまま)通過する。液晶セル53を通過した横方向に振動する光は、吸収型偏光板54を通過する。
【0066】
また、吸収型偏光板54を通過した横方向に振動する光は、ミラー光学素子60の反射型偏光板61を通過する。反射型偏光板61を通過した横方向に振動する光は、液晶セル62を後方へ通過する際に当該液晶セル62によって縦方向に振動する光に変換される。液晶セル62によって縦方向に振動するように変換された光は、吸収型偏光板63を通過し、後方へ出射される。
【0067】
本発明の第二の実施形態に係るミラー表示装置1Bは、TN型であるミラー光学素子60の優先透過方向X1の向きが利用者である運転者P1の視認方向Y1に応じて設定されている。したがって、ミラー表示装置1Bは、方向によって透過率が異なるミラー光学素子60を優先透過方向X1の向きが運転者P1の視認方向Y1に応じる姿勢で設けることによって、モニタ表示素子50による画像を表示する際に、モニタ表示素子50の表示特性を好適に引き出し、運転者P1に好適に視認させることができる。また、ミラー表示装置1Bは、右ハンドル車及び左ハンドル車のどちらに適用された場合であっても、モニタ表示素子50による画像を表示して運転者P1又は運転者P2に好適に視認させることができ、ひいては右ハンドル車及び左ハンドル車において製品の共通化を好適に実現することができる。
【0068】
<第三の実施形態>
続いて、本発明の第三の実施形態に係るミラー表示装置について、第一の実施形態に係るミラー表示装置1Aとの相違点を中心に説明する。
【0069】
図10及び
図11に示すように、本発明の第三の実施形態に係るミラー表示装置1Cのモニタ表示素子50及びミラー光学素子60は、第一の実施形態のモニタ表示素子50及びミラー光学素子60に対して、それぞれ、後方から見て時計回りに45度回転させて配置されている。すなわち、各偏光板52,54,61,63の光透過軸の方向は、左下から右上へ延びる斜め方向(鉛直軸に対して45度傾斜)に設定されており、液晶セル53,62も、かかる光透過軸の方向に対応して設置されている。
【0070】
図12に示すように、本発明の第三の実施形態に係るミラー表示装置1Cにおいて、ミラー光学素子60の優先透過方向X1は、真下方向(すなわち鉛直下方)に設定されている。
【0071】
ここで、本発明の第三の実施形態に係るミラー表示装置1Cの透過率のシミュレーション結果について説明する。
図13に示すように、ミラー光学素子60に電圧を印加してモニタ表示素子50による画像を表示した場合の透過率の等高線CLに対して、ミラー表示装置1Cの視認領域Rを重ねると、優先透過方向X1側からミラー表示装置1Cを見る状態で、ミラー表示装置1Cに表示された画像の視認性が最も良くなることが分かる。
【0072】
すなわち、
図14に示すように、ミラー光学素子60の優先透過方向X1の向きは、利用者である運転者P1の視認方向Y1に応じて設定されている。なお、
図14に示すミラー表示装置1C中の平行線(縞模様)は、吸収型偏光板63の光透過軸の方向を示している。
本実施形態では、ミラー表示装置1Cは、運転者P1のアイポイントEPよりも前方かつ上方に設けられており、ミラー光学素子60の優先透過方向X1の向きは、真下方向に設定されている。この場合、右ハンドル車の運転席4の運転者P1の視認方向Y1及び左ハンドル車の運転席5の運転者P2の視認方向Y2が優先透過方向X1とはズレるものの、ミラー表示装置1Cは、右ハンドル車の運転者P1及び左ハンドル車の運転者P2の方向への透過率の差を小さくし、右ハンドル車及び左ハンドル車の双方の運転者P1,P2に対して高い視認性で画像を提供することができることが分かる。
【0073】
本発明の第三の実施形態に係るミラー表示装置1Cは、優先透過方向X1の向きが真下方向に設定されているので、左右方向での透過率の差を小さくすることができる。したがって、ミラー表示装置1Cは、右ハンドル車及び左ハンドル車のどちらに適用された場合であっても、モニタ表示素子50による画像を表示して運転者P1又は運転者P2により好適に視認させることができ、ひいては右ハンドル車及び左ハンドル車において製品の共通化をより好適に実現することができる。
【0074】
<第四の実施形態>
続いて、本発明の第四の実施形態に係るミラー表示装置について、第二の実施形態に係るミラー表示装置1Bとの相違点を中心に説明する。
【0075】
図15及び
図16に示すように、本発明の第四の実施形態に係るミラー表示装置1Dのモニタ表示素子50及びミラー光学素子60は、第二の実施形態に係るモニタ表示素子50及びミラー光学素子60に対して、それぞれ、後方から見て時計回りに45度回転させて配置されている。すなわち、各偏光板52,54,61の光透過軸の方向は、右下から左上へ延びる斜め方向(鉛直軸に対して45度傾斜)に設定されており、吸収型偏光板63の光透過軸の方向は、左下から右上へ延びる斜め方向(鉛直軸に対して45度傾斜)に設定されている。また、液晶セル53,62も、かかる光透過軸の方向に対応して設置されている。
【0076】
また、本発明の第四の実施形態に係るミラー表示装置1Dにおいて、ミラー光学素子60の優先透過方向X1は、第三の実施形態に係るミラー表示装置1Cと同様に、真下方向(すなわち鉛直下方)に設定されている(
図12参照)。
【0077】
本発明の第四の実施形態に係るミラー表示装置1Dは、優先透過方向X1の向きが真下方向に設定されているので、左右方向での透過率の差を小さくすることができる。したがって、ミラー表示装置1Dは、右ハンドル車及び左ハンドル車のどちらに適用された場合であっても、モニタ表示素子50による画像を表示して運転者P1又は運転者P2の双方により好適に視認させることができ、ひいては右ハンドル車及び左ハンドル車において製品の共通化をより好適に実現することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、車両Cのルームミラーとして用いられるミラー表示装置1A~1Dの設置場所は、フロントウィンドシールド3の車幅方向中央部(車幅方向において、運転席4と助手席5との間)に限定されない。また、車両のルームミラーとして用いられるミラー表示装置1A~1Dは、車両Cの車室2の天井面の前端部から下方へ延設されている構成であってもよい。
また、ミラー表示装置1A~1Dは、当該装置全体をミラー状態と画像表示状態とに切り替える構成であってもよく、装置の表示面を例えば左部、中央部及び右部に3分割し、中央部を常にミラー状態とし、左部及び右部をミラー状態と画像表示状態とに切り替える構成であってもよい。
【0079】
また、本発明のミラー表示装置は、車両Cのルームミラーに限定されず、車両Cのインパネ等に設けられるモニタ装置、車両C以外ではスマートフォン等に適用可能である。本発明のミラー表示装置が車両Cのルームミラー以外に適用された場合には、ミラー光学素子の優先透過方向の向きは、利用者の視認方向に応じて設定可能である。
すなわち、ミラー表示装置が利用者の目よりも上に設けられる装置である場合には、ミラー光学素子の優先透過方向の向きは、利用者の視認方向に応じて下向き(水平方向よりも下向き)に設定されていればよい。
また、ミラー表示装置が利用者の目よりも下に設けられる装置である場合には、ミラー光学素子の優先透過方向の向きは、利用者の視認方向に応じて上向き(水平方向よりも上向き)に設定されていればよい。
【符号の説明】
【0080】
1A,1B,1C,1D ミラー表示装置
2 車室
3 フロントウィンドシールド
4 (右ハンドル車の)運転席
5 左ハンドル車の運転席(右ハンドル車の助手席)
50 モニタ表示素子
60 ミラー光学素子
61 反射型偏光板
62 液晶セル
63 吸収型偏光板
C 車両
P1 (右ハンドル車の)運転者
P2 (左ハンドル車の)運転者