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特許7021889スタイラス及びスタイラスの傾き検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】スタイラス及びスタイラスの傾き検出方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20220209BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20220209BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
G06F3/03 400Z
G06F3/044 B
G06F3/041 570
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017182572
(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公開番号】P2018085102
(43)【公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】15/360,570
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド チャールズ フレック
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-153954(JP,A)
【文献】特開2011-164801(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171976(WO,A1)
【文献】特開2015-222518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長の筐体の一方の先端部に設けられた電極が、互いに異なる第1の方向及び第2の方向に延在するセンサ配線を有するセンサとの間で静電場を形成するように構成されたアクティブスタイラスであって、
前記電極は、前記細長の筐体の中心軸の方向において、互いに異なる位置に配置された少なくとも第1の電極及び第2の電極から構成されているとともに、前記電極による信号の送受信を制御するスタイラスコントローラを備えており、
前記スタイラスコントローラは、前記第1の電極による前記センサに対する信号の送受信と、前記第2の電極による前記センサに対する信号の送信を制御するように構成されており、前記センサから送信された、前記第1の電極から信号を送信する時間スロット及び前記第2の電極から信号を送信する時間スロットを指定するコマンドの前記第1の電極による受信に対応して前記第1の電極及び前記第2の電極から、前記コマンドで指定された前記時間スロットで信号の送信を行うことで、前記第1の電極と前記第2の電極のそれぞれから送信された信号の前記センサでの受信に基づいて、前記センサにおいて前記アクティブスタイラスの前記センサに対する傾きが検出可能に構成されていることを特徴とするアクティブスタイラス。
【請求項2】
前記第1の電極から送信される信号と前記第2の電極から送信される信号は、互いに識別可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のアクティブスタイラス。
【請求項3】
前記第1の電極から信号を送信する時間スロットと前記第2の電極から信号を送信する時間スロットとは、時間的に互いに重ならないように時分割多重されていることを特徴とする請求項2に記載のアクティブスタイラス。
【請求項4】
前記第1の電極から信号を送信する時間スロットと前記第2の電極から信号を送信する時間スロットとは、時間的に重なるようにされていることを特徴とする請求項2に記載のアクティブスタイラス。
【請求項5】
前記第1の電極から送信される信号と前記第2の電極から送信される信号は、周波数重畳されていることを特徴とする請求項2または請求項4に記載のアクティブスタイラス。
【請求項6】
前記第1の電極から送信される信号と前記第2の電極から送信される信号は、符号分割多重されていることを特徴とする請求項2または請求項4に記載のアクティブスタイラス。
【請求項7】
前記第1の電極は筐体の中心軸に沿って配置されているとともに、前記第2の電極は前記第1の電極を囲むように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のアクティブスタイラス。
【請求項8】
前記第1の電極を囲むように配置された前記第2の電極は複数の分割電極から構成されていることを特徴とする請求項7に記載のアクティブスタイラス。
【請求項9】
細長の筐体の一方の先端部に設けられた電極が、互いに異なる第1の方向及び第2の方向に延在するセンサ配線を有するセンサとの間で静電場を形成するように構成されたアクティブスタイラスであって、
前記電極は、前記細長の筐体の中心軸の方向において、互いに異なる位置に配置された少なくとも第1の電極及び第2の電極から構成されているとともに、前記電極による信号の送受信を制御するスタイラスコントローラを備えており、
前記スタイラスコントローラは、前記第1の電極による前記センサに対する信号の送受信と、前記第2の電極による前記センサに対する信号の送信を制御するように構成されており、
前記センサから送信されたスタイラス機能情報を求める要求の前記第1の電極による受信に対応したアクティブスタイラスの傾き検出が可能であることを示す信号を前記センサに送信するとともに、
前記センサから送信された、前記第1の電極から信号を送信する時間スロットを指定する第1のダウンリンク時間スロット割当て情報及び前記第2の電極から信号を送信する時間スロットを指定する第2のダウンリンク時間スロット割り当て情報の前記第1の電極による受信に対応して、前記センサに対して、前記第1の電極から前記第1のダウンリンク時間スロットでの信号の送信が行われると共に、前記第2の電極から前記第2のダウンリンク時間スロットでの信号の送信が行われることで、前記センサにおいて前記アクティブスタイラスの傾き検出が可能に構成されていることを特徴とするアクティブスタイラス。
【請求項10】
互いに異なる第1の方向及び第2の方向に延在するセンサ配線を有するセンサのセンサ面に対するアクティブスタイラスの傾きを求める方法であって、
前記アクティブスタイラスが有する細長の筐体の一方の先端部に設けられた電極が、前記センサとの間で静電場を形成するように構成されおり、
前記電極は、前記細長の筐体の中心軸の方向において、互いに異なる位置に配置された少なくとも第1の電極及び第2の電極から構成されており、
前記アクティブスタイラスは、前記電極による信号の送受信を制御するスタイラスコントローラを備えており、
前記スタイラスコントローラは、前記第1の電極による前記センサに対する信号の送受信と、前記第2の電極による前記センサに対する信号の送信を制御するように構成されており、前記センサから送信された、前記第1の電極から信号を送信する時間スロット及び前記第2の電極から信号を送信する時間スロットを指定するコマンドの前記第1の電極による受信に対応して前記第1の電極及び前記第2の電極から、前記コマンドで指定された前記時間スロットで信号の送信を行うことで、前記第1の電極と前記第2の電極のそれぞれからの信号の前記センサでの受信に基づいて、前記センサにおいて前記アクティブスタイラスの前記センサに対する傾きが検出可能に構成されていることを特徴とするアクティブスタイラスの傾きを求める方法。
【請求項11】
前記スタイラスコントローラは、前記センサから送信されたスタイラス機能情報を求める要求の前記第1の電極による受信に対応したアクティブスタイラスの傾き検出が可能であることを示す信号を前記センサに送信するとともに、前記センサから送信された、前記第1の電極から信号を送信する時間スロットを指定する第1のダウンリンク時間スロット割当て情報及び前記第2の電極から信号を送信する時間スロットを指定する第2のダウンリンク時間スロット割り当て情報の前記第1の電極による受信に対応して、前記センサに対して、前記第1の電極から前記第1のダウンリンク時間スロットでの信号の送信を行うと共に、前記第2の電極から前記第2のダウンリンク時間スロットでの信号の送信を行うことで、前記センサにおいて前記アクティブスタイラスの傾き検出が可能に構成されていることを特徴とする請求項10に記載のアクティブスタイラスの傾きを求める方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スタイラス及びスタイラスの傾き検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
通常、アクティブスタイラスは、タブレットまたはモバイル電話などの電子装置に信号を送信し、当該電子装置は、送信された信号に基づいて電子装置の表面上におけるアクティブスタイラスの位置を判定する。例えば、電子装置は、アクティブスタイラスから受信した信号をサンプルし、サンプルした信号の信号強度に基づいてアクティブスタイラスの位置を判定し得る。
【0003】
現在、アクティブスタイラスには、電子装置との双方向通信(すなわち、信号を送受信すること)を容易にする様々な電子コンポーネントを備えたものがある。例えば、電子装置はスタイラスからのデータを求める要求を送信し得るとともに、スタイラスは要求されたデータを送信することによって応答し得る(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-126503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スタイラスの先端部に中心電極と周辺電極を配置し、中心電極と周辺電極のそれぞれから送信された信号をセンサ側で受信することで、センサのセンサ面に対するスタイラスの傾きが検出可能とされたスタイラスが知られているが、指示位置が検出できれば十分である状況においても中心電極と周辺電極からは常に信号が送信されており、駆動源が必要なアクティブスタイラスにおいては、駆動可能時間に大きく影響する。
【0006】
この発明は、センサ側でスタイラスの傾き情報が必要になった際にセンサ側から送信されてくる要求(コマンド)を受信して信号送信動作を制御することによって、センサ側でスタイラスの傾き情報を得るために必要な情報を、オンデマンドにて送信するスタイラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、一つの実施形態に記載される発明においては、
細長の筐体の一方の先端部に設けられた電極が、互いに異なる第1の方向及び第2の方向に延在するセンサ配線を有するセンサとの間で静電場を形成するように構成されたアクティブスタイラスであって、
前記電極は、前記細長の筐体の中心軸の方向において、互いに異なる位置に配置された少なくとも第1の電極及び第2の電極から構成されているとともに、前記電極による信号の送受信を制御するスタイラスコントローラを備えており、
前記スタイラスコントローラは、前記第1の電極による前記センサに対する信号の送受信と、前記第2の電極による前記センサに対する信号の送信を制御するように構成されており、前記センサから送信された、前記第1の電極から信号を送信する時間スロット及び前記第2の電極から信号を送信する時間スロットを指定するコマンドの前記第1の電極による受信に対応して前記第1の電極及び前記第2の電極から、前記コマンドで指定された前記時間スロットで信号の送信を行うことで、前記第1の電極と前記第2の電極のそれぞれから送信された信号の前記センサでの受信に基づいて、前記センサにおいて前記アクティブスタイラスの前記センサに対する傾きが検出可能に構成されていることを特徴とするアクティブスタイラスを提供する。

【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本明細書に開示した態様に係る、スタイラス及び電子装置を備えるシステムの例を示す図である。
図2】本明細書に開示した態様に係る、2つの電極を備えるスタイラスの例を示す図である。
図3】本明細書に開示した態様に係る、電子装置によって2つの電極を備えるスタイラスのチルトを算出する処理の例を示すフロー図である。
図4】本明細書に開示した態様に係る、図3の処理に供されるフレームフォーマットの例を示す図である。
図5】本明細書に開示した他の態様に係る、図3の処理に供されるフレームフォーマットの例を示す図である。
図6】本明細書に開示した態様に係る、スタイラスセンサの検知アンテナによってスタイラスの第1の電極及び第2の電極から受信された位置指示信号及びチルト算出信号の信号プロファイルの例を示す図である。
図7】本明細書に開示した態様に係る、スタイラスによって2つの電極を備えるスタイラスのチルトを算出する処理の例を示すフロー図である。
図8】本明細書に開示した態様に係る、4つの電極を備えるスタイラスの例を示す図である。
図9】本明細書に開示した態様に係る、電子装置によって4つの電極を備えるスタイラスのチルトを算出する処理の例を示す図である。
図10】本明細書に開示した態様に係る、図9の処理に供されるフレームフォーマットの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(概要)
アクティブスタイラスと双方向通信を行うとともに、アクティブスタイラスに設けられた2つ以上の電極を用いることで、電子装置のスタイラスセンサの表面に対するアクティブスタイラスのチルト(アクティブスタイラスのペン型の筐体の軸心方向とセンサの表面との成す角(傾き))を検出または計測し得る。本開示は、コンピュータ、タブレット、またはスマートフォンなどの電子装置のスタイラスセンサの表面に対するスタイラスのチルトを計測するシステム及び方法を対象とする。
【0010】
一態様によれば、本システムはスタイラス及び電子装置を備える。
【0011】
前記電子装置は、スタイラスセンサ、センサコントローラ、ホストプロセッサ、及びディスプレイを備え得る。前記スタイラスセンサは、ループコイルアンテナまたは線状導体アンテナなどの複数の検知アンテナ(すなわち、センサ配線)を備える。前記検知アンテナは、前記スタイラスからの信号を受信または検出する。前記センサコントローラは、前記スタイラスセンサの動作を制御し、前記スタイラスとの双方向通信を実行し、前記ホストプロセッサと通信する。前記ホストプロセッサは、前記センサコントローラと通信するとともに種々のアプリケーションまたは機能を実行する。前記ディスプレイは、テキストまたはグラフィックスを表示するように構成されている。一態様において、前記ホストプロセッサ及び/または前記ディスプレイは、前記電子装置の外部にある。
【0012】
前記スタイラスは、電源、情報マネージャ、データマネージャ、センサ、ボタン、通信モジュール、少なくとも2つの電極、電極スイッチ、及びスタイラスコントローラを備える。前記電源は、前記スタイラスに電源を供給する、バッテリまたは蓄電可能な電源などの任意の種類の電源からなり得る。前記情報マネージャは、前記スタイラスのスタイラス機能情報を記憶するメモリまたはキャッシュを備える。前記データマネージャは、前記センサによって生成された前記スタイラスの動作データを管理する。前記センサは、前記スタイラスの動作データを生成する、スタイラス先端圧力センサ(筆圧センサ)及びバレル圧力センサなどの1つまたは複数のセンサを備える。前記通信モジュールは、前記電子装置との双方向通信が可能である。前記電極は、前記筐体の先端部に配置されている。前記電極の一つを、前記スタイラスセンサによる通信及び座標計測に供される主電極として用い、その他の前記電極を、前記スタイラスのチルトを計測するときに用いる。前記電極スイッチは、前記電極の動作モードを送信モードと受信モードとの間で切り替え、前記電極を選択してアクティブにする(すなわち、信号を送信/受信する)、または非アクティブにする。前記スタイラスコントローラは、前記電子装置の前記センサコントローラとの双方向通信に対する前記通信モジュール及び前記電極スイッチの動作を制御する。
【0013】
一態様によれば、本方法は、前記スタイラスが、前記電子装置から機能情報を求める要求を受信し、前記スタイラスはチルト検出が可能であることを示す機能情報を前記電子装置に送信する。前記スタイラスは、前記機能情報に基づいて前記電子装置からダウンリンク時間スロット割当て情報を受信し、前記スタイラスが、前記ダウンリンク時間スロット割当ての時間に前記電極から前記電子装置に位置指示信号及びチルト算出信号を送信する。前記電子装置は、前記位置指示信号及び前記チルト算出信号に基づいて前記電極の位置を判定し、前記電子装置が、前記電極の前記位置に基づいて前記スタイラスのチルトを算出することを含む。
【0014】
他の態様によれば、本方法は、前記スタイラスの第1の電極及び第2の電極が、前記電子装置によって生成された信号を検出し、前記スタイラスが、前記第1の電極及び前記第2の電極によって検出された前記信号の強度を計測し、前記スタイラスが、前記第1の電極及び前記第2の電極によって検出された前記信号の前記強度に基づいて前記スタイラスのチルトを算出することを含む。
【0015】
他の態様によれば、前記スタイラスは、前記スタイラスの先端部に配置された1つの電極(中心電極)と、前記スタイラスの中心軸を囲むように前記スタイラスの前記筐体を取り囲む3つの電極(周辺電極)とを備える。2つの電極に代えて、例えば1つの中心電極と3つの分割電極(電極片)から構成された4つの電極を用いることにより、追加の計測値を生成してチルト検出の精度を向上させ得るとともに、前記スタイラスの軸回転を検出することが可能である。なお、スタイラスの傾きは、中心電極と、この中心電極を取り囲むように配設された1つの周辺電極で求めることができる。
【0016】
本態様において、本方法は、前記スタイラスが、前記電子装置から機能情報を求める要求を受信し、前記スタイラスはチルト検出が可能であることを示す機能情報を前記電子装置に送信する。前記スタイラスは、前記機能情報に基づいて前記電子装置からダウンリンク時間スロット割当て情報を受信し、前記スタイラスが、前記ダウンリンク時間スロット割当ての時間に前記スタイラスの前記先端部にある前記電極から前記電子装置に位置指示信号を送信する。前記電子装置は、前記スタイラスの前記先端部にある前記電極の位置を判定し、前記スタイラスが、前記ダウンリンク時間スロット割当ての時間に残りの3つの前記電極から前記電子装置にチルト算出信号を送信する。前記スタイラスは、前記チルト算出信号を用いて残りの3つの前記電極の位置を判定し、前記スタイラスが、前記スタイラスの前記先端部にある前記電極の前記位置と残りの3つの前記電極の前記位置とに基づいて前記スタイラスのチルトを算出することを含む。
【0017】
(詳細な説明)
以下の説明においては、本発明の完全な理解を提供するための説明を目的として数多くの具体的詳細に言及する。しかし、当業者にとって、これらの具体的詳細なしに本発明を実施し得ることは明らかであろう。他の例においては、本説明の理解を不必要に不明瞭にすることを避けるために、周知の回路、構造、及び技術を詳細に示さずに、ブロック図で示す。したがって、言及する具体的詳細は単なる例示である。特定の実施はこれらの例示的な詳細から変形し得るが、依然として本発明の範囲内にあると考えられる。説明における「一態様」または「態様」との呼称は、本態様に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。本説明中の様々な箇所に配置された「一態様において」との句は、必ずしも同じ態様のことを指さない。
【0018】
図1は、一態様に係る、スタイラス10及び電子装置12を備えたシステムの例を示す図である。
【0019】
電子装置12は、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、またはスマートフォンなどの、スタイラスを検知する任意の種類の装置からなり得る。電子装置12は、スタイラスセンサ14、センサコントローラ16、ホストプロセッサ18、及びディスプレイ19を備える。他の態様において、ホストプロセッサ18及び/またはディスプレイ19は、電子装置の外部にある。
【0020】
スタイラスセンサ14は、ループコイルアンテナ(電磁結合用アンテナ)または線状導体アンテナ(静電結合用アンテナ)などの複数の検知アンテナ15(すなわち、センサ配線)を備える。検知アンテナ15は、スタイラス10からの信号を受信または検出する。例えば、アンテナ15は、スタイラス10からの磁場を受けるように構成されたループコイルアンテナ、またはスタイラス10からの静電場を受けるように構成された線状導体アンテナからなり得る。検知アンテナ15によって受信または検出された信号は、しばしば走査信号と称される。スタイラスセンサ14は、任意数の検知アンテナを備え得る。一態様において、検知アンテナ15は、互いに異なる第1の方向及び第2の方向に延在するマトリクス状のセンサ配線内に配置される。例えば、検知アンテナ15は、複数のロウ及びコラムを備えるアレイ状に配置され得る。一態様において、スタイラスセンサ14は、スタイラス10のほかに、パッシブスタイラス及び指タッチを検出することが可能である。
【0021】
センサコントローラ16は、スタイラスセンサ14の動作を制御し、受信/送信を制御することでスタイラス10との双方向通信を実行し、またホストプロセッサ18と通信する。
【0022】
一態様において、センサコントローラ16は、スタイラス10からの手書き入力データを処理して、スタイラスセンサ14上における、スタイラス10によって示された、または指し示された位置の座標を判定し、当該座標をホストプロセッサ18に転送する。スタイラスセンサ14上における、スタイラス10によって示された、または指し示された位置の判定については、より詳細に後述する。
【0023】
一態様において、センサコントローラ16は、種々のコマンド及び他の情報をスタイラス10に送信する。コマンドは、スタイラス機能情報を送信するようにスタイラス10に求める要求と、チルト算出信号を送信するようにスタイラス10に求める要求と、スタイラス10に対する機能情報を設定する書込みコマンドと、アクティブスタイラスの動作データをセンサコントローラ16に送信するようにスタイラス10に要求するポーリングコマンドとを含み得る。
【0024】
一態様において、センサコントローラ16は、検知アンテナ15を介してスタイラス10と通信する。他の態様において、電子装置12は、さらに詳細に後述するように、通信モジュール30と同様の通信モジュールを備える。
【0025】
ホストプロセッサ18は、センサコントローラ16と通信するとともに種々のアプリケーションまたは機能を実行する。一態様において、ホストプロセッサ18はセンサコントローラ16から座標を受信し、受信した座標に基づいてアプリケーションまたは機能を実行する。センサコントローラ16とホストプロセッサ18とは、USB(Universal Serial Bus)ヒューマンインタフェースデバイスプロトコルなどの任意の適切なインタフェースを介して接続される。一態様において、ホストプロセッサ18は、メモリを備えた、コントローラまたはCPU(Central Processin Unit)からなる。
【0026】
ディスプレイ19は、テキストまたはグラフィックスを表示するように構成されている。一態様において、ディスプレイ19は、スタイラス10がスタイラスセンサ14によって検出されることに応答して、テキストまたはグラフィックスを表示する。当該ディスプレイは、図1に示すようにスタイラスセンサ14の上方に、スタイラスセンサ14の下方に、または電子装置12の外部に配置され得る。
【0027】
スタイラス10は、双方向通信(すなわち、信号を送受信すること)が可能である任意のスタイラスからなり得る。スタイラス10は、電源20、情報マネージャ22、データマネージャ24、センサ26、ボタン28、通信モジュール30、電極32及び34、電極スイッチ36、及びスタイラスコントローラ38を備える。電源20、情報マネージャ22、データマネージャ24、センサ26、ボタン28、通信モジュール30、電極32及び34、電極スイッチ36、及びスタイラスコントローラ38は、筐体40に収容されている。一態様において、筐体40はペンと同様の細長形状を有する。
【0028】
電源20は、スタイラス10に電源を供給する、バッテリまたは蓄電可能な電源などの任意の種類の電源からなり得る。
【0029】
情報マネージャ22は、スタイラス10のスタイラス機能情報を記憶するメモリまたはキャッシュを備える。スタイラス機能情報は、スタイラス10はチルト検出が可能であることを示す情報を含む。スタイラス機能情報は、さらに、スタイラス10の動作状態を示す情報を含む。例えば、スタイラス機能情報は、あらかじめ定義されたスタイラスの機能に関する情報と、ユーザにより調整可能なスタイラスの設定に関する設定情報とを含み得る。一態様において、情報マネージャ22は、ユーザがスタイラス色及びスタイラス線幅などのスタイラス設定を変更する度に設定情報を更新する。
【0030】
データマネージャ24は、スタイラス10の動作データを管理する。動作データは、スタイラス先端部圧力、スタイラスバレル圧力、スタイラスオリエンテーション(例えば、回転)、スタイラススイッチステータス、及びスタイラスバッテリレベルなどの、スタイラス10の動作状態を示す。動作データは、センサ26によって生成される。センサ26は、スタイラス先端部に加わる圧力を検知するように構成されたスタイラス先端部圧力センサ(例えば、可変キャパシタを利用)と、スタイラスバレルに加わる圧力を検知するように構成されたバレル圧力センサと、3軸ジャイロスコープ、3軸加速度計、及び3軸地磁気計のうちの1つ以上の組合せを含む9軸以下のIMU(Internal Measurement Unit)(内蔵計測ユニット)と、スタイラス10の回転を検知するように構成された回転センサとを備え得る。
【0031】
ボタン28によって、ユーザはスタイラス10を環境設定または調整することが可能である。例えば、ユーザは、ボタン28を用いてスタイラス色及びスタイラス線幅などの設定情報を更新し得る。ボタン28によって、さらに、ユーザはセンサコントローラ16に命令またはコマンドを送信することが可能である。例えば、ユーザは、ボタン28を用いてコンピュータマウスと同様の右クリックコマンドを電子装置12に指示し得る。スタイラス10は任意数のボタンを備え得るとともに、筐体40上のどこにでも配置され得る。さらに、ボタン28をスイッチ、ノブなどの他の種類の機械的入力に置き換え得る。
【0032】
通信モジュール30は、電子装置12との双方向通信が可能である。一態様において、通信モジュール30は、電極32及び/または電極34を介して電子装置12と通信する送信(TX)回路及び受信(RX)回路を備える。電極32及び34は、一般に、スタイラスセンサ14のセンサ配線15と電磁的または静電的に通信するのに用いられる。TX回路及びRX回路を、それぞれ信号発生器、信号受信器と称することがある。同じまたは他の態様において、通信モジュール30は、特定の通信プロトコルに専用の送信器及び受信器、または送受信器を備える。通信モジュールは、任意の1つまたは複数の種類の通信プロトコルを利用し得る。例えば、電磁的通信方式のプロトコル、静電的通信方式のプロトコル、または、ブルートゥース(登録商標)などの任意のRF(Radio Frequency)通信プロトコルを用い得る。通信モジュール30によって送信される信号は、符号分割多重、周波数分割多重、または時分割多重される。
【0033】
電極32及び電極34は、互いに異なる位置に配置されている。図2は、電極32及び電極34を備えるスタイラス10の例を示す図である。電極32は、筐体40の先端部に配置されている。電極34は、筐体40の先端部に近接しているとともに、電極32から離間している。一態様において、電極34は円環(リング)電極からなる(すなわち、電極34は筐体40を取り囲む)。一態様において、より詳細に後述するように、電極32を、センサコントローラ16による通信及び座標計測に供される主電極として用い、電極34を、スタイラス10のチルトを計測するときに用いる。
【0034】
電極スイッチ36は、電極32及び電極34の動作を送信モードと受信モードとの間で切り替える。例えば、電極スイッチ36は、独立に、電極32を電子装置12に信号を送信する送信モードに設定し、電極34を電子装置12に信号を送信する送信モードに設定し、電極32を電子装置12から信号を受信する受信モードに設定し、電極34を電子装置12から信号を受信する受信モードに設定し得る。
【0035】
さらに、電極スイッチ36は、電極32、電極34を独立に選択し、または電極32及び電極34の両方を選択してアクティブにする(すなわち、信号を送信/受信する)。例えば、電極スイッチ36は、電極32を選択して電子装置12との間で授受される信号を送信/受信するようにアクティブにし、電極34を選択して電子装置12との間で授受される信号を送信/受信するようにアクティブにし、電極32及び電極34を選択して電子装置12との間で授受される信号を送信/受信するようにアクティブにする。図1に示さないが、電極スイッチ36は、選択的に電極32及び電極34を送信モードまたは受信モードに設定し、電極32及び電極34を選択してアクティブにする、一つ以上のスイッチを備え得る。
【0036】
スタイラスコントローラ38は、電子装置12のセンサコントローラ16との双方向通信に対する通信モジュール30及び電極スイッチ36の動作を制御する。例えば、スタイラスコントローラ38は、電極スイッチ36を制御することによって電極32を、通信モジュール30及び電極32を介してセンサコントローラ16にスタイラス機能情報及び動作データを送信する送信モードに設定し得る。前述したように、スタイラス機能情報は、スタイラスの機能に関する情報と、ユーザにより調整可能なスタイラスの設定に関する設定情報とを含み得るとともに、動作データは、スタイラス先端部圧力データ(筆圧データ)、スタイラスバレル圧力データ、スタイラスオリエンテーションデータ、スタイラススイッチステータス、及びスタイラスバッテリレベルなどのデータを含み得る。
【0037】
スタイラス10及び電子装置12は、互いを接続して双方向通信を可能とするペアリング動作を実行する。ペアリング動作は、例えば電子装置12が、スタイラス10の存在を認識するために供されるビーコン信号を送信することによって開始される。ビーコン信号は、連続的または周期的に送信され得る。例えば、センサコントローラ16は、10ミリ秒毎に検知アンテナ15を介してビーコン信号を送信し得る。スタイラス10がビーコン信号を検出すると、スタイラス10は、ビーコン信号を確認する応答信号(例えば、ACK(ACKnowlidgement)信号)を作成して送信する。例えば、スタイラスコントローラ38は、通信モジュール30にてACK信号を作成して、電極32により送信し得る。電子装置12がスタイラス10から応答信号を受信すると、電子装置12は、スタイラス10との間に双方向通信の通信リンクを確立する。
【0038】
図3は、一態様に係る、電子装置12によってスタイラス10のチルトを算出する一例の処理41を示すフロー図である。図4は、一態様に係る、処理41に供されるフレームフォーマットの例を示す図である。
【0039】
ステップ42において、処理41が開始される。一態様において、処理41は、前述したペアリング動作によってスタイラス10と電子装置12との間の通信リンクが確立することに続いて開始される。
【0040】
ステップ44において、スタイラス10は、電子装置12から機能情報を求める要求を受信する。例えば、図4に示すように、センサコントローラ16は、フレームFnの時間スロットs0において、スタイラスコントローラ38に機能情報を送信するようにスタイラス10に要求する読出しコマンド(R)を送信する。一態様において、当該要求はベンダ固有のコマンドからなる。
【0041】
ステップ46において、スタイラス10は、当該スタイラスはチルト検出が可能であることを示す機能情報を電子装置12に送信する。例えば、図4に示すように、スタイラスコントローラ38は、情報マネージャ22から機能情報を取り出し、フレームFnの時間スロットs1において当該機能情報(CI)を送信する。
【0042】
一態様において、電極32を通信に供される主電極として用い、ステップ44において受信される機能情報を求める要求と、ステップ46において送信される機能情報とは電極32を介する。
【0043】
代替の態様において、ステップ44を省略し、ステップ46を前述したペアリング動作中に実行する。特に、スタイラス10が電子装置12によって送信されたビーコン信号を検出することに応答して、ステップ46を実行する(すなわち、スタイラス10が機能情報を送信する)。一態様において、機能情報は、ビーコン信号を確認する応答信号(例えば、ACK信号)に含まれる。他の態様において、機能情報は、ビーコン信号を確認する応答信号に続いて送信される。
【0044】
代替の態様において、ステップ44及びステップ46を省略し、スタイラス10は、電子装置12によってスタイラス10のチルトを算出する処理41を開始する。特に、ステップ44及び46を実行する代わりに、スタイラス10は、スタイラス10がベンダ固有の送信するデータを有することを示すコマンドを送信する。処理41は、次いでステップ48に進む。
【0045】
ステップ48において、スタイラス10は、電子装置12からダウンリンク時間スロット割当て情報(SA)を受信する(時間スロットs2)。割り当てられた当該ダウンリンク時間スロットは、それぞれ位置指示信号及びチルト算出信号を送信するのに用いられる。例えば、図4に示すように、センサコントローラ16は、フレームFnの第1のダウンリンク時間スロット(時間スロットs4及びs5)を、位置指示信号(P1)を送信するために割り当て、フレームFnの第2のダウンリンク時間スロット(時間スロットs6及びs7)を、チルト算出信号(T1)を送信するのに割り当てる。センサコントローラ16は、次いで第1のダウンリンク時間スロット割当て情報及び第2のダウンリンク時間スロット割当て情報をスタイラスコントローラ38に送信する。位置指示信号及びチルト算出信号については、より詳細に後述する。一態様において、ダウンリンク時間スロットの割当てはベンダ固有のコマンドからなる。
【0046】
電子装置12は、ステップ46においてスタイラス10から受信した機能情報に基づいて、ダウンリンク時間スロット割当ての数及び長さを決定する。例えば、機能情報は、アクティブスタイラス10が、2ミリ秒の位置指示信号及び2ミリ秒のチルト算出信号を利用するチルト検出機能を含むことを示し得る。したがって、図4に示すように、センサコントローラ16は、それぞれ2ミリ秒の長さである2つのダウンリンク時間スロット(例えば、時間スロットs4及びs5を含む第1のダウンリンク時間スロット、及び時間スロットs6及びs7を含む第2のダウンリンク時間スロット)をスタイラス10に割り当てる。
【0047】
ステップ50において、スタイラス10は、電極32、34からの位置指示信号、チルト算出信号を電子装置12に送信する。位置指示信号、チルト算出信号は、より詳細に後述するように、それぞれチルト検出に供される電極32、電極34の位置を判定するのに用いられる。
【0048】
位置指示信号及びチルト算出信号は、ステップ48において受信したダウンリンク時間スロットを用いて送信される。例えば、図4に示すように、スタイラスコントローラ38は、フレームFnの時間スロットs4及びs5の間に位置指示信号(P1)を送信し、フレームFnの時間スロットs6及びs7の間にチルト算出信号(T1)を送信する。位置指示信号、チルト算出信号は、それぞれ電極32、電極34から送信される任意の種類の信号からなり得る。例えば、位置指示信号及びチルト算出信号は、パイロットパケット、データパケット(例えば、スタイラス10のスタイラス機能情報を含むデータパケット)、ダミーパケット、通知パケットなどからなり得る。スタイラス10によって送信される位置指示信号及びチルト算出信号は、(1)異なる時刻(例えば、時分割多重)にスタイラス10から送信される位置指示信号及びチルト算出信号、(2)異なる周波数(例えば、周波数分割多重)を有する位置指示信号及びチルト算出信号、及び(3)固有に符号化された(例えば、符号分割多重)位置指示信号及びチルト算出信号、のうちの1つ以上に基づいて互いに識別可能である。
【0049】
一態様において、スタイラス10は、スタイラスセンサ14の表面上におけるスタイラス10の位置を判定するのに用いられる位置指示信号を電極32から連続的または周期的に送信する。電子装置12からコマンドまたは要求を受信することに応答して、電極34からチルト算出信号が送信されることで、電極32から送信された信号(位置指示信号)と電極34から送信された信号(チルト算出信号)とからスタイラス10のスタイラスセンサ14の表面上における傾きが算出可能とされる。
【0050】
他の態様において、位置指示信号及びチルト算出信号は、2つの異なる周波数を用いて同時に送信される。図5は、他の態様に係る、処理41に供されるフレームフォーマットの例を示す図である。図5に示すように、位置指示信号(P1)は、第1の周波数(F1)を用いてフレームFnの時間スロットs4及びs5の間に送信され、チルト算出信号(T1)は、第1の周波数とは異なる第2の周波数(F2)を用いてフレームFnの時間スロットs4及びs5の間に送信される。したがって、位置指示信号及びチルト算出信号を送信するのに用いられる時間スロットの数は最小限になり、ステップ48において割り当てられるダウンリンク時間スロットの数は低減される。
【0051】
ステップ52において、電子装置12は、電極32及び電極34の位置(すなわち、スタイラスセンサ14上における電極32及び34の位置または座標)を判定する。電極32、電極34の位置は、それぞれ位置指示信号、チルト算出信号に基づいて判定される。特に、センサコントローラ16は、位置指示信号、チルト算出信号の走査信号の変化を用いて、それぞれ電極32、34の詳細な位置を補間する。前述したように、走査信号は、検知アンテナ15によって受信または検出された位置指示信号及びチルト算出信号の信号強度からなる。通常はアンテナがスタイラス10に近接しているときに信号強度が最大であってアンテナがスタイラス10から遠ざかると減少することから、電極の位置を、信号強度が最大であるアンテナの近傍であると判定する。
【0052】
図6は、一態様に係る、スタイラスセンサ14の検知アンテナ15によって、それぞれスタイラス10の電極32、電極34から受信された、位置指示信号、チルト算出信号の信号プロファイルの例を示す図である。図5のx軸に沿って10個の検知アンテナを示し、図2Bのy軸に沿って位置指示信号及びチルト算出信号の強度を示す。受信された信号の強度は、電圧、電流、テスラ、及びボルト毎メートルなどの、信号強度を示す任意の種類の単位によるものであり得る。10個の検知アンテナによって受信された信号の信号強度を補間することによって、位置指示信号54の信号曲線及びチルト算出信号56の信号曲線が得られる。信号曲線54、信号曲線56の中央値または最大値は、それぞれ電極32、電極34の位置を示す。例えば、電極32の位置を検知アンテナ6または検知アンテナ6の近傍であると判定し得るとともに、電極34の位置を検知アンテナ4または検知アンテナ4の近傍であると判定し得る。一態様において、センサコントローラ16は、スタイラスに最も近い2つ以上のアンテナの強度を用いる補間アルゴリズムを用いて、アンテナ空間越しの計測位置の分解能を向上させる。
【0053】
ステップ58において、電子装置12はスタイラス10のチルトを算出する。スタイラス10のチルトは、スタイラスセンサ14の表面を基準とする。スタイラス10のチルトは、電極32及び34の位置に基づいて算出される。一態様において、センサコントローラ16は、電極32と電極34との間の位置差(すなわち、距離)に基づいてスタイラス10のチルトを算出する。ステップ60において、処理41は終了する。
【0054】
図7は、一態様に係る、スタイラス10によってスタイラス10のチルトを算出する処理61の例を示すフロー図である。
【0055】
ステップ70において、処理61が開始される。一態様において、処理61は、スタイラス10と電子装置12との間の通信リンクが前述のペアリング動作によって確立することに続いて開始される。
【0056】
ステップ72において、スタイラス10の電極32及び34は、電子装置12によって生成された信号を検出する。一態様において、当該信号は電極32及び34によって同時に検出される(すなわち、受信される)。他の態様において、当該信号は電極32及び34によって交互に検出される(すなわち、受信される)。例えば、電極34は、電極32が当該信号を受信することに続いて、電子装置12によって生成された当該信号を受信し得る。
【0057】
一態様において、電子装置12によって生成される信号は、スタイラス10を対象とする信号である。すなわち、電子装置12によって生成される信号は、特に、スタイラス10に送信されるように生成される。例えば、当該信号は、センサコントローラ16によってスタイラス10に送信される情報を求めるコマンドまたは要求からなり得る。他の態様において、電子装置12によって生成される信号は、スタイラス10を対象としない信号である。すなわち、電子装置12によって生成される信号は、特にスタイラス10向けではない。例えば、スタイラスセンサ14がパッシブスタイラス及び指タッチを検出することが可能である態様において、当該信号は、タッチ走査信号(すなわち、検知アンテナ15の駆動信号)などの、タッチ検出に対して生成される信号からなり得る。本態様において、電子装置12は、スタイラス10がスタイラス10のチルトを算出していることを認識しなくてよい。
【0058】
一態様において、ステップ72は、スタイラス10が待機中であるときに実行される。例えば、ステップ72は、スタイラス10が電子装置12に、位置指示信号またはデータ信号などの信号を全く送信していないときに実行され得る。スタイラスセンサ14がパッシブスタイラス及び指タッチを検出することが可能である態様において、ステップ72は、センサコントローラ16がパッシブスタイラスまたは指タッチの位置を判定しており、かつスタイラス10と通信していないときに実行され得る。
【0059】
ステップ74において、スタイラス10は、電極32及び34によって検出された信号の強度を計測する。すなわち、スタイラス10は、電極32によって検出された信号の強度を計測するとともに、電極34によって検出された信号の強度を計測する。
【0060】
ステップ76において、スタイラス10はスタイラス10のチルトを算出する。前述したように、スタイラス10のチルトはスタイラスセンサ14の表面を基準とする。スタイラス10のチルトは、ステップ74において電極32及び34によって検出された信号の強度に基づいて判定される。一態様において、スタイラスコントローラ38は、電極32によって検出される信号の最大(すなわち、ピーク)強度が発生するときと、電極34によって検出される信号の最大強度が発生するときとの時間差に基づいて、スタイラス10のチルトを算出する。電極32及び34によって検出される信号の最大値発生どうしの時間差は、スタイラス10のチルトに比例する。一般に、当該時間差が大きいほど、スタイラス10のチルト量が大きい。例えば、電極32によって検出される信号の最大値が、電極34によって検出される信号の最大値と同時に発生するならば、スタイラス10は垂直に配置されている。電極34によって検出される信号の最大値が電極32によって検出される信号の最大値よりも前に発生するならば、スタイラス10は、スタイラスセンサ14の番号が小さいほうのアンテナ15のほうに傾いている。
【0061】
一態様において、前述したように、当該信号は電極32及び34によって同時に検出される(すなわち、受信される)。本態様において、電極32及び34によって検出される信号の最大値が発生するときの時間差は、電極32によって検出される信号の最大値が発生する時刻から、電極34によって検出される信号の最大値が発生する時刻を減算することによって、またはその逆によって判定される(例えば、最大値どうしの時間差=電極34によって検出される信号の最大値が発生する時刻-電極32によって検出される信号の最大値が発生する時刻)。
【0062】
他の態様において、前述したように、当該信号は電極32及び34によって交互に検出される(すなわち、受信される)。本態様において、電極32及び34によって検出される信号の最大値が発生するときの時間差は、ステップ72において実行された検出の開始時刻を用いることによって判定される。特に、最大値どうしの時間差は、電極32によって検出される信号の最大値が発生する時刻と検出開始時刻との差から、電極34によって検出される信号の最大値が発生する時刻と検出開始時刻との差を減算することによって判定される(例えば、最大値どうしの時間差=(電極34によって検出される信号の最大値の時刻-検出開始時刻)-(電極32によって検出される信号の最大値の時刻-検出開始時刻))。
【0063】
一態様において、スタイラス10は、続いて、算出したスタイラス10のチルトを電子装置12に送信する。ステップ78において、処理61は終了する。
【0064】
他の態様において、スタイラス10は例えば4つの電極を備える。図8(a)は、一態様に係る、電極81、82、84、及び86を備えるスタイラス80の第1の側の例を示す図である。図8(b)は、一態様に係る、スタイラス80の第1の側と反対の第2の側の例を示す図である。スタイラス10の電極32と同様に、電極81は、スタイラス80の先端部に配置されている中心電極である。電極82、84、及び86は、スタイラス80の先端部に近接して配置されており、スタイラス80の中心軸を囲むようにスタイラス80の筐体を取り囲む周辺電極である。一態様において、電極82、84、及び86は、スタイラス80の先端部からほぼ等しく離間しており、ほぼ大きさが等しい。
【0065】
スタイラス80は、スタイラス80が4つの電極を有することを除いて、スタイラス10と同様である。付加的な電極を用いてチルト検出を向上させる。2つの電極に代えて4つの電極を用いることによって、追加の計測値を生成してチルト検出の精度を向上させ得るとともに、スタイラスの軸回転を検出することも可能である。図9は、一態様に係る、電子装置12によってスタイラス80のチルトを算出する処理88の例を示すフロー図である。図10は、一態様に係る、処理88に供されるフレームフォーマットの例を示す図である。
【0066】
処理41のステップ42、44、46、48を、それぞれ処理88のステップ90、92、94、96においても行う。具体的には、ステップ90において処理88が開始され、ステップ92においてスタイラス80は電子装置12から機能情報を求める要求を受信し、ステップ94においてスタイラス80は電子装置12に当該スタイラスはチルト検出が可能であることを示す機能情報を送信し、ステップ96においてスタイラス80は電子装置12からダウンリンク時間スロット割当て情報を受信する。
【0067】
ステップ98において、スタイラス80は、スタイラス80の先端部にある中心電極(すなわち、電極81)から電子装置12に位置指示信号を送信する。位置指示信号は、ステップ96において受信したダウンリンク時間スロット割当て情報を用いて送信される。例えば、図10に示すように、スタイラスコントローラは、フレームFnの時間スロットs4およびs5の間に電極81から位置指示信号(P1)を送信する。前述したように、位置指示信号は任意の種類の信号からなり得る。例えば、位置指示信号は、パイロットパケット、データパケット、ダミーパケット、通知パケットなどからなり得る。
【0068】
ステップ100において、電子装置12は、スタイラス80の先端部にある電極(中心電極)の位置(すなわち、スタイラスセンサ14の表面上における電極81の位置または座標)を判定する。電子装置12は、ステップ98において受信した位置指示信号に基づいて電極81の位置を判定する。前述したように、スタイラスコントローラは、位置指示信号の信号強度の変化を用いて電極81の詳細な位置を補間する。電極81の位置を、信号強度が最大であるアンテナの近傍であると判定する。
【0069】
ステップ102において、スタイラス80は、周辺電極としての、電極82、84、及び/または86から電子装置12にチルト算出信号を送信する。一態様において、スタイラス80は、電極82から第1のチルト算出信号を送信する。他の態様において、スタイラス80は、電極82、84からそれぞれ、第1のチルト算出信号、第2のチルト算出信号を送信する。他の態様において、スタイラス80は、電極82、84、86からそれぞれ、第1のチルト算出信号、第2のチルト算出信号、第3のチルト算出信号を送信する。より詳細に後述するように、チルト算出信号を用いて、チルト検出に供される電極82、84、及び/または86の位置を判定する。追加のチルト算出信号を用いることによって、追加の計測値を生成してチルト検出の精度を向上させ得るとともに、スタイラスの軸回転を検出することも可能である。
【0070】
チルト算出信号は、ステップ96において受信したダウンリンク時間スロット割当て情報を用いて送信される。例えば、図10に示すように、スタイラスコントローラは、フレームFnの時間スロットs6及びs7の間に電極82から第1のチルト算出信号(T1)を送信し、フレームFnの時間スロットs8及びs9の間に電極84から第2のチルト算出信号(T2)を送信し、フレームFnの時間スロットs10及びs11の間に電極86から第3のチルト算出信号(T3)を送信する。前述したように、チルト算出信号は、任意の種類の信号からなり得る。例えば、チルト算出信号は、パイロットパケット、データパケット、ダミーパケット、通知パケットなどからなり得る。
【0071】
ステップ104において、スタイラス80は、周辺電極としての、電極82、84、及び/または86の位置(すなわち、スタイラスセンサ14の表面における電極32及び34の位置または座標)を判定する。すなわち、スタイラス80は、ステップ102においてチルト算出信号を送信した電極の位置を判定する。前述したように、スタイラスコントローラは、位置指示信号の信号強度の変化を用いて電極82、84、及び/または86の詳細な位置を補間する。電極の位置を、信号強度が最大であるアンテナの近傍であると判定する。
【0072】
ステップ106において、スタイラス80は、スタイラス80のチルトを算出する。スタイラス80のチルトは、ステップ100において判定された中心電極としての電極81の位置と、ステップ104において判定された周辺電極としての、電極82、84、及び/または86の位置とに基づいて判定される。一態様において、センサコントローラ16は、中心電極としての電極81の位置と電極82、84、及び/または86(周辺電極と総称する)の各々の位置との間の位置差(すなわち、距離)(すなわち、電極81と電極82との間の距離、電極81と電極84との間の距離、及び/または電極81と電極86との間の距離)に基づいて、スタイラス80のチルトを算出する。複数の距離を用いてスタイラスのチルトを算出することによって、処理41のステップ58における単一の距離と対照して、チルト検出が向上する。一態様において、スタイラス80は、さらに、スタイラス80の軸回転を検出する。チルトと同様に、スタイラス80の回転は、ステップ100において判定された電極81の位置と、ステップ104において判定された電極82、84、及び/または86の位置とに基づいて検出される。ステップ108において、処理88は終了する。
【0073】
なお、スタイラス80は4つの電極を備えるが、スタイラス80は、チルト検出をさらに向上させるようにさらなる電極を備えてもよい。例えば、一態様において、スタイラス80は5つの電極を備え、電極81と残りの4つの電極の各々との位置差(すなわち、距離)に基づいてスタイラス80のチルトを算出する。
【0074】
一態様において、複数の電極を用いて、より強い、すなわち増幅した信号を送信する。複数の電極を同時に駆動することにより増幅した信号を生成して、同じ信号を送信する。例えば、図10に示すように、電極82、84、及び86は、フレームFnの時間スロットs14において同時にデータパケット(DP)を送信する。より強い信号を送信することによって、スタイラス80は、より大きい距離において電子装置12と通信し得る。
【0075】
上述した種々の態様を組み合わせて他の態様を提供することが可能である。これらの、または他の変更を、上記の詳細な説明に照らして当該態様に施し得る。一般に、以下の請求項において、用いられる用語が、請求項を明細書及び請求項において開示された特定の態様に限定すると解釈すべきではなく、すべての可能な態様を、このような請求項が当てはまる等価物の全範囲とともに含むと解釈すべきである。したがって、請求項は本開示によって限定されない。
【符号の説明】
【0076】
10…スタイラス、12…電子装置、14…スタイラスセンサ、30…通信モジュール、32,34…電極、36…電極スイッチ、38…スタイラスコントローラ、40…筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10