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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   A47C 31/02 20060101AFI20220209BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
A47C31/02 B
B60N2/58
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017189680
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019063096
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2019-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 豪也
(72)【発明者】
【氏名】山岡 俊介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博子
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171053(JP,A)
【文献】米国特許第03961823(US,A)
【文献】特開平09-164041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 31/02
B60N 2/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション部として構成されるシートパッドと、そのシートパッドを覆設するトリムカバーと、前記シートパッドに埋設される複数の被連結部材と、前記トリムカバーに配設され、前記トリムカバーを拘束する複数の第1ワイヤと、前記被連結部材及び前記第1ワイヤを複数箇所で連結する複数の連結部材と、を有するシートバックを備える車両用シートにおいて、
前記複数の第1ワイヤは、正面視において隣り合う前記第1ワイヤと所定の間隔を隔てて前記シートバックの短手方向に並設され、弾性変形可能な材料から形成されると共に前記シートパッドの表面形状に沿って弾性変形されて前記被連結部材に連結され、
前記シートパッドは、前記第1ワイヤの配設位置に沿って正面側から背面側に向かって溝状に凹設される溝部と、前記第1ワイヤと前記被連結部材とが連結される連結部分において、前記溝部の溝幅よりも小さい溝幅で前記溝部の凹設底部から背面側に向かって凹設され、前記被連結部材を前記シートパッドから露出させる複数の露出部と、を備え、
前記複数の露出部は、1の前記第1ワイヤに対し、その第1ワイヤの軸方向に沿って2箇所以上に形成され、
前記シートパッドの正面は、少なくとも一部の領域で背面側に向かって湾曲する形状に形成され、
前記複数の露出部のうち1の露出部は、前記シートパッドの正面の上端および下端を結ぶ仮想線に直交する方向において最も背面側に離間する位置に形成され、
前記被連結部材は、前記シートパッドの表面形状に沿って弾性変形された前記第1ワイヤの弾性回復力よりも前記シートパッドに保持される保持力が大きく設定されると共に、無負荷状態において直線状の第2ワイヤとして形成され、1の前記第1ワイヤの軸方向沿って2箇所以上に形成される前記複数の露出部のそれぞれに1ずつ配設されることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記第1ワイヤは、無負荷状態において直線状に延設され、前記シートパッドは、正面が曲面形状に形成されることを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記第1ワイヤは、断面円形に形成され、無負荷状態において断面の中心が直線状に延設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記第1ワイヤ及び前記第2ワイヤは、それぞれ同一の材料から断面円形に形成され、前記第1ワイヤは、前記第2ワイヤの直径よりも小さい直径で形成され、前記第2ワイヤの剛性よりも前記第1ワイヤの剛性が低く設定されることを特徴とする請求項3記載の車両用シート。
【請求項5】
前記複数の第1ワイヤは、無負荷状態における全長が同一に設定されることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に、トリムカバーにシワが形成されることを抑制できる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トリムカバーに配設され、トリムカバーを拘束する第1ワイヤと、シートパッドに埋設される第2ワイヤと、を連結部材で連結して、トリムカバーをシートパッドの表面に沿わせて配設する車両用シートがある(特許文献1)。
【0003】
通常、車両用シートは、乗員の背もたれとなるシートバックの正面中央部が乗員の背中に沿うように背面側に向かって凹形状に湾曲して形成される。また、正面視におけるシートバックの水平方向両端には、乗員が水平方向に移動しないように正面側に向かって突出する凸部が形成される。そのため、従来の車両用シートの第1ワイヤは、正面視におけるシートバックの水平方向の両外側に重力方向(正面視におけるシートバックの長手方向)に延設される2本の鉛直ワイヤと、それら2本の鉛直ワイヤの延設方向における略中間位置の間に水平方向(正面視におけるシートバックの短手方向)に延設される水平ワイヤと、の3本が配設される。これら3本の第1ワイヤの配置により、水平ワイヤがシートパッドの表面から離れることを抑制して、トリムカバーがシートパッドの表面から浮くことを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-140099号公報(段落0026,0030及び図2など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の車両用シートでは、水平ワイヤの両端が鉛直ワイヤに近づくため、水平ワイヤによるトリムカバーの拘束部分と、鉛直ワイヤによるトリムカバーの拘束部分と、の間隔が近くなる。そのため、水平ワイヤと鉛直ワイヤとの配置がずれてトリムカバーに弛みが発生する場合には、水平ワイヤと鉛直ワイヤとの間の領域でトリムカバーの弛みを逃がすことができず、トリムカバーにシワが形成されるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、トリムカバーにシワが形成されることを抑制できる車両用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の車両用シートは、クッション部として構成されるシートパッドと、そのシートパッドを覆設するトリムカバーと、前記シートパッドに埋設される複数の被連結部材と、前記トリムカバーに配設され、前記トリムカバーを拘束する複数の第1ワイヤと、前記被連結部材及び前記第1ワイヤを複数箇所で連結する複数の連結部材と、を有するシートバックを備えるものであり、前記複数の第1ワイヤは、正面視において隣り合う前記第1ワイヤと所定の間隔を隔てて前記シートバックの短手方向に並設され、弾性変形可能な材料から形成されると共に前記シートパッドの表面形状に沿って弾性変形されて前記被連結部材に連結され、前記シートパッドは、前記第1ワイヤの配設位置に沿って正面側から背面側に向かって溝状に凹設される溝部と、前記第1ワイヤと前記被連結部材とが連結される連結部分において、前記溝部の溝幅よりも小さい溝幅で前記溝部の凹設底部から背面側に向かって凹設され、前記被連結部材を前記シートパッドから露出させる複数の露出部と、を備え、前記複数の露出部は、1の前記第1ワイヤに対し、その第1ワイヤの軸方向に沿って2箇所以上に形成され、前記シートパッドの正面は、少なくとも一部の領域で背面側に向かって湾曲する形状に形成され、前記複数の露出部のうち1の露出部は、前記シートパッドの正面の上端および下端を結ぶ仮想線に直交する方向において最も背面側に離間する位置に形成され、前記被連結部材は、前記シートパッドの表面形状に沿って弾性変形された前記第1ワイヤの弾性回復力よりも前記シートパッドに保持される保持力が大きく設定されると共に、無負荷状態において直線状の第2ワイヤとして形成され、1の前記第1ワイヤの軸方向沿って2箇所以上に形成される前記複数の露出部のそれぞれに1ずつ配設される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の車両用シートによれば、複数の第1ワイヤは、正面視において隣り合う第1ワイヤと所定の間隔を隔てて並設されるので、それぞれの第1ワイヤ同士を離しておくことができる。従って、それぞれの第1ワイヤによるトリムカバーの拘束部分の間隔を空けておくことができる。その結果、それぞれの第1ワイヤの配置がずれて第1ワイヤ同士が近づいたとしても、それら第1ワイヤ同士が近づくことによるトリムカバーの弛みをそれぞれの第1ワイヤの間の領域に逃して、トリムカバーにシワが形成されることを抑制できる。
【0009】
また、複数の第1ワイヤは並設されるので、トリムカバーに第1ワイヤを配設した状態でトリムカバーを持ち運ぶ場合に、第1ワイヤの並設方向(正面視において複数の第1ワイヤが隣り合う方向)にトリムカバーを折り込んでトリムカバーを小さくした状態で持ち運ぶことができる。その結果、トリムカバーに第1ワイヤを配設した状態で、トリムカバーの持ち運びを簡易にできる。
【0010】
さらに、複数の第1ワイヤは、正面視におけるシートバックの短手方向に並設されるので、第1ワイヤの配設数を少なくしても、第1ワイヤによるトリムカバーの拘束量を確保できる。その結果、第1ワイヤのコストが増加することを抑制できる。
【0011】
また、トリムカバーに第1ワイヤを配設した状態でトリムカバーを折り込む場合には、正面視におけるシートバックの短手方向にトリムカバーを折り込むので、トリムカバーを折り込む量を少なくできる。その結果、トリムカバーを持ち運ぶ場合に、トリムカバーが嵩張ることを抑制できる。
【0012】
さらに、第1ワイヤは、弾性変形可能な材料から形成され、シートパッドの表面形状に沿って弾性変形されて被連結部材に連結され、被連結部材は、シートパッドの表面形状に沿って弾性変形された第1ワイヤの弾性回復力よりもシートパッドに保持される保持力が大きく設定されるので、トリムカバーをシートパッドに配設する場合に、第1ワイヤをシートパッドの表面形状に弾性変形させながら、第1ワイヤを被連結部材に連結できる。その結果、第1ワイヤを被連結部材に連結する前に第1ワイヤをシートパッドの表面に沿う位置に配置しなおす必要がなくなり、トリムカバー(第1ワイヤ)をシートパッド(被連結部材)に配設(連結)する組み付け作業性を向上できる。
【0013】
請求項2記載の車両用シートによれば、請求項1記載の車両用シートの奏する効果に加え、第1ワイヤは、無負荷状態において直線状に延設され、シートパッドは、正面が曲面形状に形成されるので、正面の形状が複雑(曲面形状)にされたシートパッドに対して、無負荷状態において直線状に延設された第1ワイヤをシートパッドの正面に沿って弾性変形させながら被連結部材に連結できる。従って、シートパッドの正面の形状が複雑であっても、第1ワイヤを直線状に延設した状態でトリムカバーに第1ワイヤを配設する作業を行うことができる。その結果、トリムカバーに第1ワイヤを配設する作業性を向上できる。
【0014】
請求項3記載の車両シートによれば、請求項1又は2に記載の車両用シートの奏する効果に加え、第1ワイヤは、断面円形に形成され、無負荷状態において断面の中心が直線状に延設されるので、第1ワイヤを周方向のどの向きに配置した状態からでも、シートパッドの表面形状に沿って第1ワイヤを弾性変形させる場合に必要な力を毎回同一にできる。よって、第1ワイヤをシートパッドの表面形状に弾性変形させる作業の作業性を向上できる。
【0015】
また、シートパッドの表面形状に沿って弾性変形した状態の第1ワイヤの弾性回復力を毎回同一に設定できるので、シートパッド、被連結部材、及び、連結部材を必要以上の強度に設定する必要がなくなり、製造コストが増加することを抑制できる。
【0016】
請求項4記載の車両用シートによれば、請求項3記載の車両用シートの奏する効果に加え、第1ワイヤ及び第2ワイヤは、それぞれ同一の材料から断面円形に形成され、第1ワイヤは、第2ワイヤの直径よりも小さい直径で形成され、第2ワイヤの剛性よりも第1ワイヤの剛性が低く設定されるので、第1ワイヤをシートパッドの表面形状に沿って弾性変形させやすくできると共に、第2ワイヤの剛性を高くして第2ワイヤ及び第1ワイヤによるシートパッドのクッション性能を確保できる。
【0017】
また、第2ワイヤと第1ワイヤとの剛性を直径の大きさで異ならせるので、その違いを見た目(太い又は細い)で判断させることができる。その結果、第2ワイヤと第1ワイヤとの配置を間違える(反対にする)ことを抑制できる。
【0018】
【0019】
請求項記載の車両用シートによれば、請求項1からのいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、複数の第1ワイヤは、無負荷状態における全長が同一に設定されるので、第1ワイヤの種類を1種類にできる。その結果、トリムカバーに第1ワイヤを配設する場合に、作業者にどのワイヤを配設するか選ばせる必要がなくなるので、トリムカバーに第1ワイヤを配設する組み付け作業性を向上できる。
【0020】
また、複数の第1ワイヤは、正面視において並設されるので、全ての全長が同一に設定されると、それぞれの第1ワイヤ間におけるトリムカバーの拘束方向を同一(第1ワイヤの並設方向)に設定できる。その結果、トリムカバーが複数の方向から引っ張られて、トリムカバーにシワが形成されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)本発明の一実施形態における車両用シートの斜視正面図であり、(b)は、シートバックの正面図である。
図2】(a)は、シートクッションの正面図であり、(b)は、トリムカバー及びカバー側ワイヤの斜視正面図である。
図3】(a)は、図1(b)のIIIa-IIIa線におけるシートバックの断面図であり、(b)は、図3(a)のIIIb-IIIb線におけるシートバックの断面図である。
図4】(a)は、図3(a)のIVa部におけるシートバックの部分拡大断面図であり、図4(b)は、図3(b)のIVb部におけるシートバックの部分拡大断面図である。
図5】シートパッドとトリムカバーとを分解した状態におけるシートバックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の一実施形態における車両用シート1について説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態における車両用シート1の斜視正面図であり、図1(b)は、シートバック3の正面図である。
【0023】
なお、以下の説明では、図1(b)に示す状態の車両用シート1に対して、紙面左側を右方側として、紙面右側を左方側として、紙面上側を上方側として、紙面下側を下方側として、紙面奥側を後方(背面)側として、紙面手前側を前方(正面)側としてそれぞれ説明する。さらに、図中の矢印F-B,U-D,L-Rは、車両用シート1の前後方向,上下方向,左右方向をそれぞれ示している。
【0024】
図1に示すように、車両用シート1は、車両(例えば、自動車、鉄道車両)に搭載されるシートである。車両用シート1は、着座者が着座するシートクッション2と、着座者の背もたれとなるシートバック3と、着座者の頭部を支えるヘッドレスト4と、を主に備える。また、シートバック3は、正面視において左右方向(矢印L-R方向)よりも上下方向(矢印U-D方向)の方が長く形成される。
【0025】
次いで、図2から図4を参照して、車両用シート1のシートバック3について説明する。図2(a)は、シートパッド20の正面図であり、図2(b)は、トリムカバー30及びカバー側ワイヤ40の斜視正面図である。図3(a)は、図1(b)のIIIa-IIIa線におけるシートバック3の断面図であり、図3(b)は、図1(b)のIIIb-IIIb線におけるシートバック3の断面図である。図4(a)は、図3(a)のIVa部におけるシートバック3の部分拡大断面図であり、図4(b)は、図3(b)のIVb部におけるシートバック3の部分拡大断面図である。なお、図2(a)では、メインクッション部21に埋設されるパッド側ワイヤ25の一部が鎖線で図示される。
【0026】
図2から図4に示すように、シートバック3は、軟質ウレタンフォームの合成樹脂発泡体により一体に形成されたシートパッド20と、そのシートパッド20の表面(意匠面)に覆設されるトリムカバー30と、を備える。
【0027】
シートパッド20は、乗員の背中を後方から支持するためのメインクッション部21と、乗員の背中を横から保持するためのサイドクッション部22と、それらメインクッション部21及びサイドクッション部22の背面側(矢印B方向)に凹設される収容部26と、を主に備える。シートバック3は、車両用シート1の図示しない金属フレームが収容部26に収容されることで、シートクッション2及びヘッドレスト4と連結される。
【0028】
メインクッション部21は、乗員の背中を均一にシートバック3の正面に当接させるために、正面視における上下方向(矢印U-D方向)の略中間位置に背面側(矢印B方向)に向かって凹設される第1湾曲部21aと、その第1湾曲部21aよりも下方(矢印D方向)に位置し、正面側(矢印F方向)に向かって膨らむ第2湾曲部21bと、を備える。これら第1湾曲部21a及び第2湾曲部21bにより、シートバック3の側面視におけるメインクッション部21の正面側の面形状が略S字の曲線状に形成される(図5参照)。第1湾曲部21a及び第2湾曲部21bによるメインクッション部21の正面の緩やかな曲面形状により、シートバック3に着座する乗員の乗り心地、及び、シートバック3のデザイン性(意匠性)を向上できる。
【0029】
また、メインクッション部21は、そのメインクッション部21の上下の端部に亘って、正面から背面側(矢印B方向)に向かって凹設される溝状部23と、その溝状部23の内面の一部から背面側に向かってさらに凹設される凹部24と、メインクッション部21の内部に一部が埋設された状態で配設され、メインクッション部21(シートパッド20)と一体形成されるパッド側ワイヤ25と、を主に備える。
【0030】
なお、後述するトリムカバー30がシートパッド20に覆設された状態時には、トリムカバー30によりシートパッド20が圧迫されて溝状部23の内部が塞がった状態とされるが、便宜上、各図には理解しやすいように拡がった状態の溝状部23が図示される。
【0031】
溝状部23は、正面視におけるシートパッド20の水平方向(矢印L-R方向)に所定の間隔を隔てて3箇所に形成される。なお、以下の説明では、3箇所の溝状部23に右側から順に23R,23C,23Lの符号を付して説明する。
【0032】
なお、溝状部23Cは、メインクッション部21の左右方向(矢印L-R方向)の略中央位置に形成され、溝状部23R,23Lは、メインクッション部21とサイドクッション部22との連結部分にそれぞれ形成される。また、溝状部23R,23Lは、正面視において溝状部23Cからそれぞれ左右反対の方向に同一距離離間する位置に形成される。
【0033】
パッド側ワイヤ25は、弾性変形可能な金属性の材料から、断面円形の棒状に形成される。パッド側ワイヤ25は、3箇所の溝状部23のそれぞれの背面側(矢印B方向側)に所定の間隔を隔てて一本ずつ配設される(合計3本)。これらパッド側ワイヤ25により、シートパッド20の内部の剛性を高くして、シートバック3のクッション性能を向上できる。なお、パッド側ワイヤ25は、初期形状が溝状部23の内面(メインクッション部21の表面形状)に沿って側面視略S字状に湾曲して(変形されて)おり、その湾曲(変形)した状態でシートバック3のシートパッド20と一体発泡される。
【0034】
また、3本のパッド側ワイヤ25は、それぞれ同一の全長に形成され、軸方向の両端部が、上下方向においてそれぞれ略同一の位置に配設される。なお、本実施形態では、パッド側ワイヤ25は、硬鋼線(バネ材)から形成され、直径が2.6ミリに設定される。
【0035】
凹部24は、メインクッション部21に埋設されるパッド側ワイヤ25をメインクッション部21から部分的に露出させる凹みであり、溝状部23の凹設方向の内面からその凹設方向(パッド側ワイヤ25側)に向かってさらに凹設される。これにより、凹部24の内面にパッド側ワイヤ25が上下方向(矢印U-D方向)に挿通された状態で露出する。
【0036】
また、凹部24は、3箇所の溝状部23のそれぞれに上下方向(矢印U-D)方向に所定の間隔を隔てて4箇所に分散して形成される。従って、1の溝状部23の内側の4箇所からパッド側ワイヤ25が露出される(図3(a)参照)。なお、以下の説明では、4箇所の凹部24を上端の凹部24から下方の凹部24に向かって順に1番目の凹部24、2番目の凹部24、3番目の凹部24、4番目の凹部24と称す。また、それぞれの凹部24(1番目の凹部24、2番目の凹部24、3番目の凹部24、4番目の凹部24)の上下方向における形成位置は、それぞれの溝状部23に形成される凹部24(1番目の凹部24、2番目の凹部24、3番目の凹部24、4番目の凹部24)との間で略同一の位置に形成される。
【0037】
また、2番目の凹部24の形成位置は、第1湾曲部21aの背面側(矢印B方向)への凹設深さが最大となる位置に設定され、下端の凹部24の形成位置は、第2湾曲部21bの正面側(矢印F方向)への膨出寸法が最大となる位置に設定される。
【0038】
なお、第1湾曲部21aの背面側への凹設深さが最大となる位置とは、側面視におけるシートパッド20の正面に対して、第1湾曲部21aの上方と下方とで正面側に張り出す2点の頂点間を直線状に結ぶ仮想線S1(図5参照)からその仮想線S1と直交する方向においてシートパッド20の正面までの距離が最大限離間する位置である。また、第2湾曲部21bの正面側への膨出寸法が最大となる位置とは、第1湾曲部21aの下方側で仮想線S1がシートパッド20の正面と接する位置である。
【0039】
トリムカバー30は、シートバック3の表皮となる表皮部材31と、その表皮部材31に連結される配設部材32と、その配設部材32に配設されるカバー側ワイヤ40と、リング状に形成される連結部材50と、を主に備える。
【0040】
表皮部材31は、シートパッド20のメインクッション部21の正面を覆う2枚の第1カバー部材33L,33Rと、サイドクッション部22を覆う2枚の第2カバー部材34L,34Rと、を主に備え、それらカバー部材33L,33R,34L,34Rを縫合してシートパッド20を覆う1枚の表皮部材31として構成される。なお、本実施形態では、カバー部材33L,33R,34L,34Rは、織物から構成される。
【0041】
第1カバー部材33L,33Rは、正面視におけるシートパッド20の水平方向(矢印L-R方向)の略中央部で重力方向(矢印U-D方向)に分割され、正面視におけるシートパッド20の水平方向に並設された状態で配設される。
【0042】
なお、第1カバー部材33L及び第2カバー部材34Lと、第1カバー部材33R及び第2カバー部材34Rとは、第1カバー部材33L,33Rの分割部分を対称軸としてそれぞれ左右対称な形状に形成される。本実施形態では、対称軸の左側部分に配置されるカバー部材を第1カバー部材33L、第2カバー部材34Lとして、対称軸の右側部分に配置されるカバー部材を第1カバー部材33R、第2カバー部材34Rとして説明する。
【0043】
第1カバー部材33Lは、正面視における外縁側縁部に他のカバー部材33R,34Lと縫合される縫合片33L1を備える。第1カバー部材33Rは、正面視における外縁側縁部に他のカバー部材33L,34Rと縫合される縫合片33R1を備える。
【0044】
なお、縫合片33L1,33R1は、それぞれ第1カバー部材33L,33Rの正面視における左右方向(矢印L-R方向)の両外側外縁に形成され、左右方向に隣り合う他のカバー部材(第1カバー部材33L,33R、第2カバー部材34L,34R)と縫合される。
【0045】
第1カバー部材33L,33Rは、互いの正面側を合わせた状態で、縫合片33L1,33R1を図示しない糸で縫合することで連結される。この場合、縫合片33L1,33R1をシートパッド20側(背面側)に配置できるので、第1カバー部材33L,33Rを広げた状態で、正面側から縫合片33L1,33R1が視認されることを抑制できる。
【0046】
また、第1カバー部材33L,33Rの連結(縫合)部分は、シートパッド20の溝状部23Cと対向する位置に設定される(図3(b)参照)。従って、第1カバー部材33L,33Rとの連結部分の背面側に配置される縫合片33L1,33R1を溝状部23Cの内側に収容できる。よって、トリムカバー30をシートパッド20の表面に覆設した場合に、第1カバー部材33L又は第1カバー部材33Rと、シートパッド20と、の間に縫合片33L1,33R1を挟み込んで、第1カバー部材33L,33Rがシートパッド20の表面から浮くことを抑制できる。
【0047】
第2カバー部材34Lは、左側に形成されるサイドクッション部22を覆設する形状に形成され、第2カバー部材34Rは、右側に形成されるサイドクッション部22を覆設する形状に形成される。
【0048】
第2カバー部材34Lは、正面視における外縁側縁部に第1カバー部材33Lと縫合される縫合片34L1を備える。なお、縫合片34L1は、第2カバー部材34Lの正面視における左右方向(矢印L-R方向)の左側縁部に形成され、左側に隣り合う第1カバー部材33Lと縫合される。
【0049】
第2カバー部材34Lと第1カバー部材33Lとは、互いの正面側を突き合せた状態で、縫合片34L1,33L1を図示しない糸で縫合することで連結される。この場合、縫合片34L1,33L1をシートパッド20側(背面側)に配置できるので、第1カバー部材33L及び第2カバー部材34Lを広げた状態で、正面側から縫合片34L1,33L1が視認されることを抑制できる。
【0050】
第2カバー部材34L及び第1カバー部材33Lの連結部分は、シートパッド20の溝状部23Lと対向する位置に設定される(図3(b)参照)。これにより、縫合片34L1,33L1を溝状部23Lの内側に収容できる。よって、トリムカバー30をシートパッド20の表面に覆設した場合に、第2カバー部材34L又は第1カバー部材33Lと、シートパッド20と、の間に縫合片34L1,33L1を挟み込んで、第2カバー部材34L及び第1カバー部材33Lがシートパッド20の表面から浮くことを抑制できる。
【0051】
なお、第2カバー部材34Rと第1カバー部材33Rとの連結は、第2カバー部材34Lと第1カバー部材33Lとの連結と同様に、第2カバー部材34Rの縫合片34R1と、第1カバー部材33Rの縫合片33R1と、を縫合して連結される。
【0052】
また、第2カバー部材34R及び第1カバー部材33Rとの連結部分は、シートパッド20の溝状部23Rと対向する位置に設定される(図3(b)参照)。これにより、縫合片34R1,33R1を溝状部23Rの内側に収容できる。よって、トリムカバー30をシートパッド20の表面に覆設した場合に、第2カバー部材34R又は第1カバー部材33Rと、シートパッド20と、の間に縫合片34R1,33R1を挟み込んで、第2カバー部材34R及び第1カバー部材33Rがシートパッド20の表面から浮くことを抑制できる。
【0053】
配設部材32は、後述するカバー側ワイヤ40が配設される部分であり、各カバー部材33L,33R,34L,34Rが縫合される3箇所の縫合部分(縫合片34R1及び縫合片33R1の縫合部分と、縫合片33R1及び33L1の縫合部分と、縫合片33L1及び縫合片34L1の縫合部分)に配設される。配設部材32は、一方向に長い矩形状の布部材から形成され、短手方向の略中央部で折り返され短手方向における両端部を当接した状態で、その当接した両端部が各縫合部分に縫合される。これにより、配設部材32は、筒状に構成される。
【0054】
また、配設部材32は、その長手方向における寸法が溝状部23に形成される1番目(上端)の凹部24から4番目(下端)の凹部24までの離間距離よりも長く形成され、各凹部24と対向する位置に部分的に切り欠かれる切欠部32aを備える。よって、配設部材32の内側に配設されるカバー側ワイヤ40を各凹部24と対向する位置で切欠部32aを介して配設部材32から露出させることができる。これにより、切欠部32aから露出されるカバー側ワイヤ40と、凹部24から露出されるパッド側ワイヤ25と、を後述する連結部材50で連結できる。
【0055】
カバー側ワイヤ40は、トリムカバー30の配設部材32に配設されてトリムカバー30を拘束する部材であり、弾性変形可能な金属性の材料から断面円形の棒状に形成され、無負荷状態では、断面の中心が直線状に延設された状態とされる。なお、カバー側ワイヤ40は、断面の中心が直線状に延設された無負荷状態で、トリムカバー30の配設部材32に配設される。従って、カバー側ワイヤ40をトリムカバー30に配設しやすくできる。
【0056】
また、カバー側ワイヤ40は、軸方向寸法が配設部材32の長手方向寸法よりも若干大きく形成される。カバー側ワイヤ40は、3個の配設部材32のそれぞれの内側に一本づつ配設され(合計3本)、軸方向の両端が配設部材32の長手方向両端から突出される。カバー側ワイヤ40は、軸方向の両端に略U字状に曲げられる返し部41を備え、その返し部41が筒状に構成される配設部材32の外側に配置される(引っ掛けられる)。これにより、トリムカバー30に対してカバー側ワイヤ40が上下方向に位置ずれすることを抑制できる。
【0057】
3本のカバー側ワイヤ40は、それぞれの軸方向両端部の上下方向(矢印U-D方向)における配置が略同一の位置に配置(略同一の長さに形成)され、それぞれの軸方向を略平行な方向に向けた状態で左右方向(矢印L-R方向)に並設される。なお、本実施形態では、カバー側ワイヤ40は、硬鋼線(バネ材)から形成され、直径が2.0ミリに設定される。上述したように、パッド側ワイヤ25は、カバー側ワイヤ40と同材料から形成され、直径が2.6ミリに形成されるので、パッド側ワイヤ25は、カバー側ワイヤ40よりも剛性が大きく設定される。
【0058】
連結部材50は、カバー側ワイヤ40とパッド側ワイヤ25とを連結する部材であり、それらカバー側ワイヤ40とパッド側ワイヤ25とを連結する前では略C字状に形成される。連結部材50は、C字の開口部分からカバー側ワイヤ40とパッド側ワイヤ25とを内側に挿入した後で、専用の工具を使ってC字の開口部分を塞ぐことでカバー側ワイヤ40とパッド側ワイヤ25とを連結できる。
【0059】
また、連結部材50は、上述した配設部材32の切欠部32aを介してカバー側ワイヤ40が露出される位置に対応して配設されており、本実施形態では、全部で12箇所でカバー側ワイヤ40とパッド側ワイヤ25とが連結される。なお、カバー側ワイヤ40とパッド側ワイヤ25とを連結する連結部材50は、一例であり、その他の留付具を使用してカバー側ワイヤ40とパッド側ワイヤ25とを連結してもよい。
【0060】
次いで、図5を参照して、トリムカバー30をシートパッド20に配設(覆設)する方法を説明する。図5は、シートパッド20とトリムカバー30とを分解した状態におけるシートバック3の断面図である。なお、図5の断面は、図3(a)シートバック3の断面と対応する。
【0061】
図5に示すように、トリムカバー30をシートパッド20に配設する前では、配設部材32に配設される直線状のカバー側ワイヤ40により、トリムカバー30の正面が平坦な状態で配置される。一方、シートパッド20は、上述したように、メインクッション部21の第1湾曲部21a、第2湾曲部21bにより、正面が略S字状に湾曲される。
【0062】
従って、トリムカバー30をシートパッド20に配設する場合には、トリムカバー30がシートパッド20との間に隙間を空けて配設されることを抑制するために、カバー側ワイヤ40をシートパッド20の表面形状に変形させて、カバー側ワイヤ40とパッド側ワイヤ25とを連結部材50により連結する必要がある。
【0063】
しかしながら、カバー側ワイヤ40の初期形状がシートパッド20の表面形状に沿って湾曲している場合には、トリムカバー30にカバー側ワイヤ40を配設した段階ではカバー側ワイヤ40の周方向における配置がシートパッド20の正面(表面)に対して合っていないため、トリムカバー30をシートパッド20に配設する前に、カバー側ワイヤ40の配置をシートパッド20の表面形状に沿う位置に配置しなおす手間がかかるという問題点がある。
【0064】
本実施形態では、カバー側ワイヤ40は、弾性変形可能な金属材料から形成され、パッド側ワイヤ25は、メインクッション部21に埋設され、シートパッド20の表面形状に弾性変形された状態のカバー側ワイヤ40の弾性回復力よりも強い力でメインクッション部21に保持されるので、トリムカバー30をシートパッド20に配設する場合に、カバー側ワイヤ40をシートパッド20の表面形状に沿って弾性変形させながら、カバー側ワイヤ40をパッド側ワイヤ25に連結することで、カバー側ワイヤ40をシートパッド20の表面形状に沿って配置することができる。その結果、カバー側ワイヤ40の初期形状をシートパッド20の表面形状に沿って湾曲させる必要や、初期形状がシートパッド20の表面形状に沿って湾曲されたカバー側ワイヤ40をシートパッド20の表面に沿う位置に配置しなおす必要がなくなるので、トリムカバー30(カバー側ワイヤ40)をシートパッド20(パッド側ワイヤ25)に配設(連結)する組み付けの作業性を向上できる。
【0065】
また、本実施形態では、正面が緩やかな曲面形状に形成されて、シートバック3に着座する乗員の乗り心地、及び、シートバック3のデザイン性(意匠性)が向上されたシートパッド20に対して、無負荷状態において直線状に延設されたカバー側ワイヤ40をシートパッド20の正面の形状に沿って弾性変形させながらパッド側ワイヤ25に連結できるので、シートパッド20の正面の形状が複雑(曲面形状)であっても、カバー側ワイヤ40を直線状に延設した(無負荷)状態でトリムカバー30にカバー側ワイヤ40を配設する(トリムカバー30の配設部材32にカバー側ワイヤ40を配設する)作業を行うことができる。その結果、トリムカバー30にカバー側ワイヤ40を配設する作業性を向上することができる。
【0066】
さらに、溝状部23に凹設される複数の凹部24のうち2番目の凹部24は、第1湾曲部21aの背面側への凹みの最深部(凹みが最大となる位置)に形成されるので、カバー側ワイヤ40を弾性変形させてパッド側ワイヤ25に連結させた場合に、カバー側ワイヤ40が第1湾曲部21aの凹みの最深部に対して隙間を隔てて配設されることを抑制できる。その結果、トリムカバー30がシートパッド20との間に隙間を空けて配設されることを抑制できる。
【0067】
以上のように配設されるトリムカバー30及びシートパッド20によれば、3本のカバー側ワイヤ40は、左右方向(矢印L-R方向)に隣り合うカバー側ワイヤ40と所定の間隔を隔てて並設されるので、カバー側ワイヤ40によるトリムカバーの拘束部分を離間しておくことができる。従って、それぞれのカバー側ワイヤ40の配置がずれてカバー側ワイヤ40同士が近づいたとしても、それらカバー側ワイヤ40同士が近づくことによるトリムカバー30の弛みをそれぞれのカバー側ワイヤ40の間の領域に逃がして、トリムカバー30の表面にシワが形成されることを抑制できる。
【0068】
また、カバー側ワイヤ40を並設するので、カバー側ワイヤ40同士の間のトリムカバー30の拘束方向を同一(カバー側ワイヤ40の並設)方向に向けることができる。これにより、トリムカバー30にシワが形成されることを抑制できる。
【0069】
例えば、水平方向に延設されるカバー側ワイヤ40と、重力方向に延設されるカバー側ワイヤ40と、が混在する場合には、水平方向に延設されるカバー側ワイヤ40によりトリムカバー30が重力方向に拘束され、重力方向に延設されるカバー側ワイヤ40によりトリムカバー30が水平方向に拘束される。この場合、異なる方向に拘束された領域が重なると、拘束方向が異なるためにトリムカバー30にシワが形成されやすくなるところ、本実施形態では、拘束方向を同一(カバー側ワイヤ40の並設)方向にできるのでトリムカバー30にシワが形成されることを抑制できる。
【0070】
なお、3本のカバー側ワイヤ40が左右方向(矢印L-R方向)に隣り合うカバー側ワイヤ40と所定の間隔を隔てて並設される形態とは、1本のカバー側ワイヤ40の両端を結ぶ直線と、隣り合うカバー側ワイヤ40の両端を結ぶ直線と、の正面視における交差角度が0度(平行)~5度であれば良く、正面視における隣り合うカバー側ワイヤ40との最小の離間距離が、100ミリ以上離れていれば良い。この範囲であればカバー側ワイヤ40同士が近づくことによるトリムカバー30の弛みをカバー側ワイヤ40の間の領域に逃がすことができる。また、トリムカバー30の拘束方向を同一方向にすることができる。本実施形態では、左右方向中央のカバー側ワイヤ40の両端を結ぶ直線と、左右方向両外側のカバー側ワイヤ40の両端を結ぶ直線と、の正面視における交差角度が0.3度に設定され、正面視におけるカバー側ワイヤ40との最小の離間距離が210ミリに設定される。
【0071】
また、複数の3本のカバー側ワイヤ40は、略同一方向に延設され、左右方向(矢印L-R方向)に並設されるので、トリムカバー30にカバー側ワイヤ40を配設した状態でトリムカバー30を持ち運ぶ場合に、カバー側ワイヤ40の並設方向(左右方向)にトリムカバー30を折り込んでトリムカバー30を小さくした状態で持ち運ぶことができる。その結果、トリムカバー30にカバー側ワイヤ40を配設した状態で、トリムカバーの持ち運びを簡易にできる。
【0072】
この場合、3本のカバー側ワイヤ40は、正面視におけるシートバック3の短手方向(矢印L-R方向)に並設されるので、トリムカバー30にカバー側ワイヤ40を配設した状態でトリムカバー30を折り込む場合に、正面視におけるシートバック3の短手方向にトリムカバー30を折り込むことができる。よって、トリムカバー30を折り込む量(短手方向の全長から所定の(持ちやすい)長さとなるまで折り曲げる寸法)を少なくできる。その結果、トリムカバー30を持ち運ぶ場合に、トリムカバー30が嵩張ることを抑制できる。
【0073】
また、3本のカバー側ワイヤ40が正面視におけるシートバック3の短手方向(矢印L-R方向)に並設されるので、カバー側ワイヤ40の本数を増加しなくても、カバー側ワイヤ40によるトリムカバー30の拘束量を多くできる。その結果、カバー側ワイヤ40のコストが増加することを抑制できる。
【0074】
カバー側ワイヤ40は、断面円形に形成され、無負荷状態において断面の中心が直線状に延設されるので、カバー側ワイヤ40を周方向のどの向きに配置した状態からでも、シートパッド20の表面形状に沿ってカバー側ワイヤ40を弾性変形させる場合に必要な力を製品毎に同一にできる。よって、カバー側ワイヤ40を弾性変形させる途中で手に伝わるカバー側ワイヤ40の弾性回復力からカバー側ワイヤ40を曲げるために必要な力を作業者が考える必要がなくなる(製品毎に同じ力で曲げられる)ので、カバー側ワイヤ40をシートパッド20の表面形状に沿って弾性変形させる作業性を向上できる。さらに、シートパッド20の表面形状に沿って弾性変形した状態のカバー側ワイヤ40の弾性回復力を製品毎に同一に設定できるので、シートパッド20、パッド側ワイヤ25、及び、連結部材50を必要以上の強度に設定する必要がなくなり、製造コストが増加することを抑制できる。
【0075】
パッド側ワイヤ25は、カバー側ワイヤ40と同一の材料から断面円形の棒状に形成され、その直径がカバー側ワイヤ40の直径よりも大きく設定され、パッド側ワイヤ25の剛性がカバー側ワイヤ40の剛性よりも高く設定されるので、カバー側ワイヤ40の剛性を低くしてカバー側ワイヤ40をシートパッド20の表面形状に沿って弾性変形させやすくできると共に、パッド側ワイヤ25の剛性を高くしてカバー側ワイヤ40及びパッド側ワイヤ25によるシートバック3のクッション性能を確保できる。即ち、パッド側ワイヤ25とカバー側ワイヤ40との剛性の差を利用して、カバー側ワイヤ40をシートパッド20の表面形状に沿って弾性変形させやすくしつつ、カバー側ワイヤ40及びパッド側ワイヤ25によるシートバック3のクッション性能を確保できる。
【0076】
なお、シートバック3のクッション性能を確保できるとは、乗員を背面側に押し込む方向に外力が作用した場合に、所定の外力までは弾性変形しやすいメインクッション部21を弾性変形させてその力を吸収して、所定の以上の外力が作用する場合には、メインクッション部21に比べて弾性変形しにくいパッド側ワイヤ25を弾性変形させて所定以上の力を吸収できることをいう。
【0077】
また、パッド側ワイヤ25と、カバー側ワイヤ40と、の剛性を直径の大きさで異ならせるので、その違いを見た目(太い、又は、細い)で判断させることができる。その結果、パッド側ワイヤ25と、カバー側ワイヤ40との配置を間違えることを抑制できる。
【0078】
3本のカバー側ワイヤ40は、無負荷状態において、それぞれの軸方向両端部の上下方向(矢印U-D方向)における配置が略同一の位置に配置され、それぞれの軸方向を略平行な方向に向けた状態で左右方向(矢印L-R方向)に並設されるので、それぞれのカバー側ワイヤ40の間に位置するトリムカバー30の拘束方向を同一方向(カバー側ワイヤ40の並設方向)に設定できる。その結果、トリムカバー30が複数の方向から引っ張られて、トリムカバー30の表面にシワが形成されることを抑制できる。
【0079】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0080】
上記実施形態では、第2カバー部材34L,34Rが、それぞれ1枚の織物から形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第2カバー部材34L,34Rが、それぞれ2枚の織物から形成されてもよい。例えば、第2カバー部材34L,34Rは、サイドクッション部22の正面側と、サイドクッション部22の側面側と、で分割され、その分割面で縫合してあるものでもよい。
【0081】
上記実施形態では、各カバー部材33L,33R,34L,34Rが織物から形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、各カバー部材33L,33R,34L,34Rが、合成皮革、人工皮革から形成されていてもよい。
【0082】
上記実施形態では、パッド側ワイヤ25が各溝状部23の背面側に1本ずつ配設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、パッド側ワイヤ25が、複数個に分割されてもよい。例えば、パッド側ワイヤ25は、各凹部24に対応する位置にそれぞれ配設されて、各溝状部23の背面側に4本ずつ配設されてもよい。また、この場合、それぞれのパッド側ワイヤ25は、棒状に形成されるものでなくてもよく、例えば、パッド側ワイヤ25は、鈎状に形成され、その先端に連結部材50が係合されるものであってもよい。
【0083】
上記実施形態では、3本のカバー側ワイヤ40が、上下方向に延設され、左右方向に並設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、4本のカバー側ワイヤ40が、左右方向に延設され、隣り合うカバー側ワイヤ40が上下方向に所定の距離離間して並設されていてもよい。
【0084】
この場合、上記実施形態と同様に、トリムカバー30を拘束するカバー側ワイヤ40同士を離して配置しておくことができるので、それぞれのカバー側ワイヤ40の配置がずれてカバー側ワイヤ40同士が近づいたとしても、それらカバー側ワイヤ40同士が近づくことによるトリムカバー30の弛みをそれぞれのカバー側ワイヤ40の間の領域に逃がして、トリムカバー30の表面にシワが形成されることを抑制できる。
【0085】
上記実施形態では、カバー側ワイヤ40及びパッド側ワイヤ25が金属材料から形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、カバー側ワイヤ40及びパッド側ワイヤ25は、弾性変形可能な樹脂材料や、弾性変形可能なゴム状部材から形成されていてもよい。
【0086】
上記実施形態では、カバー側ワイヤ40を弾性変形させてトリムカバー30(カバー側ワイヤ40)をシートパッド20(パッド側ワイヤ25)に配設(連結)する場合について説明したが、カバー側ワイヤ40は、トリムカバー30をシートパッド20に配設した場合に正面視において隣り合うカバー側ワイヤ40同士が所定の間隔を隔てて並設されていればよく、シートパッド20の正面の曲面形状に沿って塑性変形されるものであってもよい。
【0087】
上記実施形態では、シートパッド20の正面が曲面形状に形成され、カバー側ワイヤ40が無負荷状態で直線状に延設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、シートパッド20の正面が平坦面に形成され、カバー側ワイヤ40が無負荷状態で湾曲形状に延設され、トリムカバー30(カバー側ワイヤ40)をシートパッド20(パッド側ワイヤ25)に配設(連結)する場合に、シートパッド20の正面の平坦面形状に合わせてカバー側ワイヤ40を直線状に弾性変形させるものであってもよい。
【0088】
上記実施形態では、メインクッション部21は、第1湾曲部21aと第2湾曲部21bとを備え、正面の面形状が側面視において略S字に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、メインクッション部21の正面は、背面側に凹設される湾曲形状が複数箇所に形成されてもよく、それらの湾曲形状の半径および曲率がそれぞれ異なるものであってもよく、背面側に向かって凹設される湾曲形状でなく正面側に向かって突設される湾曲形状であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 車両用シート
3 シートバック
20 シートパッ
23 溝状部(溝部)
24 凹部(露出部)
25 パッド側ワイヤ(被連結部材、第2ワイヤ)
30 トリムカバー
40 カバー側ワイヤ(第1ワイヤ)
50 連結部
S1 仮想線
図1
図2
図3
図4
図5